【医師監修】子どもの近視が増えている!?「あなたの子どもの目大丈夫?1」
自分の子どもの目がどれくらい見えているか、ご存じですか? 眼科に行くと、子どもが多く来院していたり、近所の子どもが眼鏡をかけていたりするのを見る機会が増えたような気がします。子どもから「黒板の字がよく見えない」と聞いて、あわてて眼科にかけつけたという人も。
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そこで子どもの近視にまつわる疑問を解決するべく、
『あなたのこども、そのままだと近視になります。』の著者で慶應義塾大学医学部眼科学教室の
坪田一男教授に話を聞きました。
坪田教授は、NHK
『あさイチ』にも出演されたことがあり、子どもの視力低下についてお話されています。
■日本では子どもの近視が増えている!?
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――世界中で近視の人が増えているというのは本当ですか?
本当です。2012年の調査では、世界人口の約22%にあたる約14.4億人が近視だとされていて、世界保健機関(WHO)をはじめとする保健衛生機関や、各国の政府も危機感を抱いています。
とくに日本をはじめとした東アジアの国々では、
パンデミックと呼びたくなるほど近視の人が増えています。本来パンデミックとは、感染症の世界的流行を指す言葉です。近視は感染しませんが、それほどまでの急増な増加ということでパンデミックといわれるようになりました。その背景には何らかの要因があると考えています。
――日本では子どもの近視も増えているのでしょうか?
2013年に行われた文部科学省の調査では、裸眼視力が0.3未満の小学生は8.14%いて、1949年に比べて
3倍以上も増えていることがわかりました。
高校生では、裸眼視力が1.0未満の近視率は65%にものぼります。
もっとも急激に近視が進行するのが、
小学生から高校生までの期間であることがわかっていて、その数は年々増えているといえます。
――なぜ、子どもの近視が増えているのでしょうか?
近視の原因は、主に
目の形状により起きます。多くは目の奥行き(眼軸)が長くなってしまい、網膜よりも前で像が結ばれてしまうことで、遠くのものにピントが合わなくなります。
●「光が結像する位置と遠視・近視の関係」
出典:『あなたのこども、そのままだと近視になります。』
子どもは生まれたときは目の奥行き(眼軸)が短く遠視の状態ですが、体の成長とともに目も成長して、眼軸が伸びます。これは正常なことなのですが、これがちょうど良いところ(「正視」の状態)で止まらずに、さらに伸びてしまうと近視化していきます。
日本人の眼軸の平均の長さは24mm程度といわれています。
1~2mm眼軸が長くなっても軽度から中程度の近視となります。3mm伸びたら強度の近視です。なかには5mmも伸びてしまうこともあり、そうなるとピントが合うのが目の前10cmの距離といった深刻な近視となります。
過去100年の間、子どもの平均身長は、14歳の男子で18.5cm、女子で13.8cmも伸びています。こうした身長の著しい伸び方も、もしかしたら近視の子どもが増えていることと相関があるのかもしれません。