■片付けも勉強もやらない「子どもなら当たり前!」
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――お母さんの悩みで多いのが、遊んだおもちゃを片付けなかったり、学校の宿題になかなか手をつけなかったり、やるべきことをやらない子どもに対する不満。このような状況にはどのように対処すればよいでしょう?
五百田さん:子どもがおもちゃを片付けないのも、学校の宿題をやらないのも当然です。だってやりたくないから(笑)。親がどんなにわが子の将来を思ってガミガミ言っても、子どもにはほとんど通じていませんよ。
自主的にやってもらいたいのであれば、まずはお母さんが一呼吸して。そして笑顔で声をかけてみましょう。「◯◯くん、大切なおもちゃが散らかっているね〜」と。
ここで相手が話をしてきたら、最後までしっかり聞いてあげます。
そして、子どもが片付けたくなるような声がけをしてみましょう。「◯◯くんとママ、どっちがおもちゃを片付けるのが早いか競争だよ〜」というのはどうですか。
これで動くかどうかは子どもの気分次第です。毎回、同じ声がけではなく、その時々の相手の様子をうかがいながら、やる気になる言葉を適宜選んでくださいね。
――子どもの食べ物の好き嫌いで悩むお母さんもいます。苦手な食べ物が好きになる、魔法の言葉なんて…ないですよね?
五百田さん:はい、ありません(笑)。お母さんが一言発しただけで子どもが心を入れ替える、そんな理想的な言葉はないですよ。ただ、ポジティブな言葉を継続的に発することで、子どもの自己肯定感が高まり改善されることはあります。
もし、苦手な食べ物で悩んでいるのであれば、ポジティブな声がけテクニックを応用すればいいのです。例えば、ピーマンが嫌いならば、まずはほんの少量からトライ。この時、お母さんは身構えずにリラックスして、明るく笑顔で話しかけましょう。
子どもが少しでも食べられたら、ウソでもいいから大喜びしてほめてあげてください。大げさなくらいのオーバーリアクションがいいですね。そんなお母さんの姿を見て、子どもは「そんなにすごいのか」「もうちょっと食べてみよう」と思うようになり、ストレスなく苦手を克服できるはずです。
■子どもと関係悪化「上から目線で理づめの説教」
――最近はゲームやスマホに依存してしまう子どもも少なくありません。ほどほどの付き合いをしてもらいたいのが親の心情です。
五百田さん:その通りですよね。 ただ子どもとしては、こんなに楽しいのにどうしてセーブしなくてはいけないのか、意味が分からないわけです。
子どもにゲームやスマホに執着してほしくない時、それを上から目線で理路整然と説得するのは“損な言い方”です。親から理づめで追いつめられたら、子どもはますますゲームやスマホの世界に逃げ込んでしまいますからね。
こんな時は、まず子どもの話を聞いてあげましょう。どうしてゲームやスマホがそこまで好きなのか、とことん聞き共感してあげることで、お母さんは信頼され、子どもとの距離も縮まります。
子どもの心の内を聞いた後は、ゲームやスマホ依存から脱するための効果的な会話の実践です。
まずは雰囲気作り。
お母さんは笑顔で朗らかムードで、「◯時まで楽しんだらやめようね」「(遊ぶ時間を守れたら)ちゃんと約束守れてえらいね」などの声がけをして、子どもがゲームやスマホにハマる手前でやめられるようなクセづけをします。ストレートに言ったり、ほめちぎったり、相手の反応や変化を見ながら、その都度、使う言葉を選んでくださいね。
ただ、忙しい毎日、そこまで言葉に凝れない日もあるでしょう。つい感情的になって「いいからやって!」と怒鳴ってしまうこともあるかもしれませんが、そんな時も自分を責めないで。お母さんだって人間なのですから。いつも完璧である必要はありません。日頃から使う言葉を“意識”するだけで、子どもとのコミュニケーションの質は十分高くなるはずです。
子どもになにかをさせたい時、ポジティブな会話を心がけることが“得する言い方”だと語る五百田さん。
子どもは気分よく能動的に行動でき、結果としてお母さんの眉間にシワも寄らず、健やかな親子関係が築けるようになるのかもしれませんね。
子どもの前では、イラっとしても、まずは笑顔をキープ。ここから始めてみましょう。
参考図書:
『話し方で損する人 得する人』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ベストセラー著者であり、話し方のプロフェッショナルである五百田氏渾身の話し方の決定版。話し方のちょっとした違いで、「損する人」にも「得する人」にもなる。よかれと思ってやっていたこと、ダメだなと思いつつ言ってしまっていること、その「損する話し方」を「得する話し方に」変えるだけで、こじれていた人間関係が改善したり、あたらしい出会いが広がる!? 本書では、各項目で「損」「得」2つの話し方を紹介。
取材・文/長谷部美佐