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あなたにとって、おりものはどんなものですか? 下着をぬらす不快な存在? それとも、においや色が気になる心配の種?
いずれにしても、おりものは女性にとってデリケートな問題です。体のためには必要で、つきあいの長いおりもの。快適に過ごせるよう、おりものの働きやもたらす影響について知りましょう。
【監修】
成城松村クリニック院長 松村圭子先生
婦人科専門医。1995年広島大学医学部卒業、同年広島大学付属病院産婦人科学教室入局。2010年、成城松村クリニックを開院。女性の「体の健康」「心の健康」のために、一般の婦人科診療だけではなく女性のあらゆる面をトータルにケア。講演、執筆、TV出演など幅広く活動。
著書に、『女30代からのなんだかわからない体の不調を治す本』(東京書店)、『医者が教える女性のための最強の食事術』(青春出版社)など多数。
■そもそもおりものとは
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おりものの役割
おりものには腟(ちつ)をうるおして乾燥や汚れから守るという大切な働きがあります。おりものを漢字で書き表すと「下り物」。子宮や腟の雑菌や老廃物を排出するという働きを知ると、「下り物」という表記には大きくうなずけます。
おりものの役割は腟の自浄作用だけではありません。
セックスの際に分泌されるおりものは通常時よりも量が多くなります。これは、腟をうるおわせて摩擦から守るため。さらに、このときのおりものは粘度が低く、精子が子宮内に侵入するのを手助けする働きをするそう。
排出させたり、守ったり、手助けしたりと、おりものにはさまざまな働きがあるのですね。
月経周期や年齢によっても変わるおりもの
普通に生活していても、女性の体はめまぐるしく変化します。そんな変化がおりものにも影響を与えているのです。
ひとつめは、生理。月経の周期によっておりものは変わります。月経後2、3日の間はおりものの量が少なく、排卵期が近づくにつれておりものの量が増加。そして排卵後、またおりものの量が減り、月経直前にはふたたび量が増える…といった繰り返しをしています。
このように、月経周期によっておりものの量が変化するのです。量だけでなく、形状やにおいにも変化があり、排卵日直前には生卵の白身のようなおりものになり、月経前には少しにおいがきつくなることがあります。
こうしたおりものの変化から、自分の体のサイクルを知ることができそうです。
妊娠すると、また違ったおりものの変化がみられます。妊娠中はホルモン環境が大きく変わるため、腟からの分泌物が増えておりものの量が増えます。こういった変化を迎えるのは、妊娠2カ月ごろと妊娠後期の妊婦さんに多いようです。
月経の周期がおりものの量に影響するのは、おりものとエストロゲンという女性ホルモンと密接な関わりがあるから。女性ホルモンの量は年齢によって変化することから、おりものの量も年を重ねるごとに変化します。健康な腟にはうるおいがありますが、年齢を重ねるごとに女性ホルモンが減り、うるおいが減少していくのです。
最初、初潮を迎えるころからおりものが分泌されるようになり、20、30代にピークを迎えたあとは女性ホルモンの減少とともにおりものの量も減り、閉経後はさらに少なくなります。
おりものの正常な量とは
おりものの量は人それぞれなので、量について正常か異常かを判断するのはむずかしいもの。人と比べて量が多い、少ないというよりも、自分の通常の状態を知っておくことが大切です。
先にご紹介したように、おりものの量が増えるのは、排卵期や生理前、そして妊娠中です。このほかに気をつけておきたいのが、睡眠不足や疲れがたまっているときにはおりものが増えることがあるということ。
また、毎日大量におりものが出る場合は、カンジダ腟炎やクラミジアなどの感染症にかかっている可能性もあります。
おりものは体のコンディションがよくないときに増える傾向がありそう。せっかくわかりやすいサインを出してくれているのですから、普段から自分のおりものについて少し気にかけておきたいところです。