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「突発性発疹」という病名を聞いたことがあるでしょうか。これはほとんどの日本人が抗体をもっている(かかったことがあって、そのウイルスを認識して闘うことができる)「ヒトヘルペスウイルス6型」あるいは「7型」というウイルスに乳幼児が初めて感染したときに発症することが多い病気です。
かかってしまったら、どんな症状があって、いつから登園できるのでしょうか。ママの疑問に一つずつ答えていきます。
【監修】
赤坂ファミリークリニック院長 伊藤明子 先生
小児科医師、公衆衛生専門医、同時通訳者。東京外国語大学イタリア語学科卒業。帝京大学医学部卒業、東京大学医学部附属病院小児科入局。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。同大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。2017年より赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。
著書・共著に『小児科医がすすめる最高の子育て食』など。テレビ番組「林修の今でしょ!講座」などに出演中。
二児の母。
■突発性発疹とは
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▼突発性発疹の症状
突発性発疹は生後4カ月から1歳の子どもがかかりやすい病気で、はじめての高熱が突発性発疹という赤ちゃんも多いでしょう。
症状は、38度から40度の高熱が3〜4日ほど続きます。その後、熱が下がってきたころに発疹がでてきます。発疹はおなかや背中など胴体を中心に出て、その後、顔や手足に広がることもあります。発疹は小さな赤みがあって少しだけプツっと隆起した発疹で、2日から4日で自然に消えていきます。ほかの症状としては便が少しゆるくなることもあります。
高熱が出ていても比較的元気で、機嫌よくミルクや母乳を飲めていれば慌てなくも大丈夫です。むしろ、解熱時の発疹が出てからが不機嫌になる場合が多いでしょう。
▼突発性発疹の感染経路
突発性発疹は「ヒトヘルペスウイルス6型」あるいは「7型」というウイルスによる感染症です。4歳以上の日本人ではそのウイルスへの免疫をほとんどの人がもっています。家庭内で感染することが多いと考えられています。
感染経路は、はっきりわかってはいませんが、ママや大人の唾液が赤ちゃんの口に入る「経口感染」が一番多いと考えられています。せきやくしゃみによる「飛沫(ひまつ)感染」や、あるいは、ウイルスを含む唾液を赤ちゃんが触れたとときの「接触感染」もあります。
突発性発疹をおこすウイルスは「6型」「7型」とあり、一般的には「6型」に先に感染します。突発性発疹を2回発症した子では、2回目は「7型」に感染していることが多いです。
▼突発性発疹の治療法
突発性発疹の治療法としては、ほとんどが自然に治るので、抗ウイルス薬などの治療法はありません。
おうちでのケアとしては、1日に数回、熱を測って体温の変化を記録しておくとよいでしょう。急に熱が高くなることもあるでしょう。夜になると熱が上がりやすいのは自然な仕組みです。体は夜間に「治るモード」に入るため、ウイルスを攻撃する反応である発熱は、夕方から夜間に起こるのです。
発熱のほか、観察のポイントは
機嫌や顔色、食欲があるかどうか、おしっこの状態、便の状態などです。おしっこの色が濃く、量が少ない場合は
水分補給をさせましょう。高熱のときは脱水症状になりやすいため、まめな水分補給が必要です。
湯ざましや麦茶、幼児用イオン飲料、うすめた果汁、野菜スープ、経口補水液などがおすすめです。
食欲がなさそうな時は、離乳食の段階を若干前にもどしてやや柔らかめなものを与えてもよいでしょう。感染症から治るには、たんぱく質と微量栄養素が治癒のポイントになるので、おかゆやうどんだけではなく、卵や魚などのたんぱく質と野菜も与えたほうがよいです。甘いものを与えるのはおすすめできません。
室内では、安静が第一ですが、無理に寝かしつけなくても構いません。抱っこをしてあげたり、添い寝をしてあげたりし、子どもがゆっくり休めるようにしてあげましょう。
また、熱が高いときは厚着や布団のかけすぎに注意します。室内で厚着にさせる必要はなく、機嫌よくすごしていれば、普段のような服装で十分です。
発熱のし始めは寒気を伴うことが多いため、多めに着せてあげましょう。毛布やタオルケットも1枚増やしてあげ、熱が下がったら元の枚数に戻しておきます。
高熱でつらそうな場合は少し体を冷やしてあげるのもいいでしょう。小さな保冷剤などをビニール袋に入れて、靴下などの布製の袋に詰めます。それを、わきの下や首筋、足のつけ根などにあててあげると気持ちよく寝られます。
子どもを観察していて、全体状態が悪くなったり、呼吸が苦しそうだったり、呼びかけても反応が弱くひどくぼんやりとしているときは、すぐに病院で診てもらいましょう。首が硬直して曲げにくい、耳を痛がる、などのときも受診するといいでしょう。
気をつけたいのは、高熱が出ることによる
合併症です。突発性発疹の合併症については最後の章「突発性発疹になったら気をつけたいこと」で説明します。
参照サイト:
東京都福祉保健局 東京都こども医療ガイド「突発性発疹(とっぱつせいほっしん)-解説-」
東京都感染症情報センター「突発性発しん Exanthem subitum」
神戸大学大学院医学研究科・研究部「よくわかる突発性発疹症、その症状と対応~発熱受診患者解析結果を交えて~」
▼突発性発疹は大人にもうつる?
突発性発疹の原因は「ヒトヘルペスウイルス6型」というウイルスですが、このウイルスは現在の日本人の成人ならほとんど感染しているものです。そのため、大人が突発性発疹を発症することはほぼないと考えていいでしょう。
厚生労働省の突発性発疹の「臨床的特徴」にも「乳幼児期、特に6カ月から18カ月の間に罹患(りかん)することが多い。5歳以上はまれである」と記載されています。
参照サイト:
Medical Note「写真でみる突発性発疹症の症状―原因や対処法は?」
厚生労働省「突発性発しん」