「正当な要望」と「クレーム」の線引きポイントとは?教師をやる気にさせる3つのステップも――保護者と教師がパートナーとなるために【明治大学教授・諸富祥彦】
という点もポイントになります。
では、どこからが過剰な要望なの?
もうひとつ、小学校の支援級に通うお子さんの保護者による相談を紹介しましょう。
「うちの子はなんでも一番にならないと気がすまないタイプで……朝も一番に登校したがります。これまで7時半に登校していたのですが、先日、副校長先生から登校時間を守って、8時10分以降に登校してください、と言われてしまいました。
学校は個別対応をしてくれないのですね」
登校時間については、学校側の管理責任や登校後の安全面の問題もあります。先生がその分、早く出勤せざるをえない時間に登校されてしまうと、その先生の負担は増えてしまいます。
「うちの子だけ7時半登校を認めてほしい」というのは、要望が過ぎるのではと思います。
また、「7時半に登校できない」というのがお子さんの「困りごと」かというと、そうでもないでしょう。
むしろ、お子さんには「一番になれないこともある」「ルール(登校時間)がある」ということを学ぶいいチャンスだと思って、定時での登校にチャレンジさせてほしいと思います。
保護者と教師は「パートナー」
保護者と教師は、子どもを育てるパートナーです。
保護者の方は、先生との会話の中で「うちの子がすごく喜んでいました」「ありがとうございます」と、まず先生への「感謝」や「ねぎらい」の気持ちを伝えることが大切です。
先生の頑張りに対して、まずお礼を言うだけで「教師のその子へのやる気」はアップし、子どものメリットにつながります。
保護者の方々には〝子どものために〞ぜひ先生に「感謝とねぎらいの言葉」を伝えていただければと思います。
その上で、先生に伝えるべきことを伝え、〝変えてほしいこと、見直してほしいこと〞をお願いするのです。先生のプライドを大事にする言い方をすれば、先生のやる気を失わせず、なおかつ、現実的なリクエストならば、それも聞き入れてもらいやすくなるでしょう。
【著者プロフィール】
千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。
教育学博士。 臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーなどの資格を持つ。「教師を支える会」代表。 著書に『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)、『プロカウンセラー諸富祥彦の教師の悩み解決塾』(教育開発研究所)、『孤独の達人』(PHP新書)