「褒める」にひそむ意外な盲点。本当に褒めるべきこととそうでないことの違い
その対応に対して、僕は当然褒めました。だけど、それ以上に僕はうれしかった。だからよろこんだわけです。そういう大人の姿を見れば、子どもたちのなかでも褒められる以上のよろこびが生まれ、自己肯定感が高まり、やる気が生まれるということになるのです。
「教える」は減点法、「褒める」は加点法
また、教育には、「褒める」やり方の他に、「教える」やり方があります。「教える」やり方は、「こうあってほしい」という100点満点の理想がある減点法です。一方、「褒める」やり方には100点満点はありません。前に進めば進んだ分、評価する加点法といえるでしょう。
まったく別のスタイルですから、それぞれに特徴があります。
たとえば、東京から大阪に行くという理想があるとしましょう。子どもたちが京都で立ち止まった場合、100点満点にはあと少し足りません。減点法の「教える」やり方の場合、叱らなければならない。そのため、子どものモチベーションは上がりにくいというデメリットがある。だけど、目標を達成するための力のレベルはキープしやすいという一面もあります。
一方、加点法の「褒める」やり方の場合、たとえば東京からほんの少しだけ進んで品川に着いただけでも褒めることになる。子どもたちも、「僕たち、なかなかできるじゃん」なんて思って、モチベーションを保つことができるでしょう。
でも、結果はほんのわずかな距離を進んだだけに過ぎず、目標を達成するための力のレベルは上がりにくいのです。
どちらのやり方にも、メリットもデメリットもある。だとしたら、バランスを考えてそれぞれを使いわけていくことが大切だと思います。そのためには、なによりも子ども本人の個性をしっかり見てあげることが重要でしょう。
「親の気持ち」ではなく「子どもの気持ち」に注目
親御さんにとって子どもへの対応が難しいのは、先の例なら目標の大阪にまであと少しの京都までたどり着いたという場合かもしれません。テストでいうなら90点というところでしょうか。普通に考えればしっかり褒めてあげていい点ですが、親御さんには「あと少しで100点だったのに」という気持ちもある。「もう少し頑張ったらよかったのに」なんていいたくもなるかもしれません。
でも、それはあくまで親の視点からの気持ちです。注目すべきは、「子ども本人がどう思っているか」ということのはず。子どもが子どもなりに目標を掲げて、90点で「やった!」