二宮和也、波瑠共演の話題作『アナログ』より場面写真が解禁された。ビートたけしによる原作小説を映像化した本作は、携帯を持たないみゆき(波瑠)と主人公・悟(二宮和也)の“会うこと”を大切にする温かな関係を描く感動作。この度解禁されたのは、二宮和也演じる主人公の悟のキャラクターを捉えた場面写真。みゆきに一途に思いを寄せる悟は、手作りの温もりを大切にするこだわりを持つキャラクターだ。朝起きると飼っている魚に餌をやり、窓から差し込む柔らかな日の光に目を細める。部屋は雑誌や模型、工具などに溢れ、仕事である建築デザインへ真摯に向き合っている姿勢も感じさせる。眠そうな表情で向かうのはキッチン。焼き魚、味噌汁、納豆など手際よく朝食を作り、顔を綻ばせながらご飯に舌鼓をうつ。またキッチンに置かれた小さなプランターではいくつかの葉物野菜を栽培し、漬物を自作で漬けるなどその暮らしぶりは丁寧かつ豊かだ。そしてその性格は仕事ぶりにもよく表れている。悟が手掛ける建築物のデザインはグラフィックではなく模型を作り、デザインイラストも自ら鉛筆で線を描き、水彩で色を付けるというこだわりよう。みゆきとの出会いの場となった喫茶店「ピアノ」も悟がデザインを手掛けた店舗で、こだわり抜いた店内の装飾品にみゆきが気づいてくれたことをきっかけに、2人は関係を深めていく。みゆきを演じた波瑠は二宮さんが演じた悟について「二宮さんだからこの悟のキャラクターがうまくいったというか、嘘に見えないんです。二宮さん自身の魅力が悟という人物にすごく自然に流れ込んでいるようなところがありました。でも、二宮さんが狙っているのか、狙わずにそうなっているのかが分からないっていう。だからすごいなと思うばかりですね」とその演技に感服した様子でコメントを寄せた。『アナログ』は10月6日(金)より全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:アナログ 2023年10月6日より全国にて公開©︎2023「アナログ」製作委員会 ©︎T.N GON Co., Ltd.
2023年08月03日新国立劇場バレエ団ダンサーの柴山紗帆と速水渉悟が、2023/2024 シーズンよりプリンシパルに昇格することが発表になった。この決定は、17日の夜に行われた『白鳥の湖』のカーテンコールで吉田都芸術監督より観客の前で発表された。柴山紗帆Photo by Masatoshi Yamashiro柴山紗帆は、東京都出身で、これまでに田中洋子、スヴェトラーナ・オシエヴァ、デニス・マーシャル、マジョリー・グルントヴィに師事。バレエスタジオ DUOや、ハリッド・コンサーヴァトリー、ピッツバーグ・バレエシアター・スクールで研鑽を積んできた。2014年にソリストとして新国立劇場バレエ団に入団し、『くるみ割り人形』『シンデレラ』『白鳥の湖』などの公演に出演。2021年にはファースト・ソリストに昇格していた。速水渉悟Photo by Masatoshi Yamashiro速水渉悟は京都府の出身。ジョン・クランコ・バレエ学校を経て、2015年にヒューストン・バレエに入団。同年にはユース・アメリカ・グランプリ NY ファイナルシニア男性の部で金メダル、審査員特別賞を受賞している。2018年に新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。2020年『ドン・キホーテ』で全幕主演デビューを果たし、『ジゼル』『くるみ割り人形』『コッペリア』などの公演に出演した。柴山と同じく2021年ファースト・ソリストに、そしてこのたびプリンシパルに昇格した。新国立劇場では通常のバレエ公演だけでなく、こどものためのエデュケーショナル・プログラムなども実施しており、7月には「こどものためのバレエ劇場 2023 エデュケーショナル・プログラム 白鳥の湖」が開催。柴山と速水も出演する。こどものためのバレエ劇場 2023エデュケーショナル・プログラム白鳥の湖7月28日(金)~7月30日(日)新国立劇場 オペラパレス■チケット情報月28日(金)13:00【オデット/オディール】米沢 唯【ジークフリード王子】渡邊峻郁7月28日(金)16:00【オデット/オディール】木村優里【ジークフリード王子】速水渉悟7月29日(土)13:00【オデット/オディール】柴山紗帆【ジークフリード王子】井澤 駿7月29日(土)16:00【オデット/オディール】米沢 唯【ジークフリード王子】 渡邊峻郁7月30日(日)13:00【オデット/オディール】木村優里【ジークフリード王子】速水渉悟7月30日(日)16:00【オデット/オディール】柴山紗帆【ジークフリード王子】井澤 駿【振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー【美術・衣裳】フィリップ・プロウズ【照明】ピーター・タイガン【指揮】冨田実里【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
2023年06月22日『恋せぬふたり』のカズくん役、『鎌倉殿の13人』の平維盛役での好演が記憶に新しい濱正悟さん。放送中の『何かおかしい』が、民放連続ドラマ初主演となる。人間の恐ろしさや狂気にゾクゾクさせられる新感覚ホラー。「これまで連続ドラマではゲスト出演が多く、レギュラー出演すらあまりなかったのに、いきなり主演のお話が来て、最初はビックリしてフリーズ。少し経ってから、遅れて喜びをかみしめました(笑)」本作はミステリー小説『変な家』で知られるオカルトホラー作家の雨穴さんが原案&ストーリーテラーを担当。ラジオブースを舞台に、生放送中に起こるちょっとした違和感が、後戻りできない恐怖に変わっていく、リアルタイム進行型ヒューマンホラードラマだ。その中で濱さんは、若手構成作家の花岡を演じる。「僕自身、小さい時から実録モノの作品を見て育ち、学生時代も深夜帯に放送されていたホラー作品にハマっていたので、そんな馴染みのあるホラードラマで初主演を務められることに縁を感じています。脚本を読んで、バッドなニュアンスが多く含まれたストーリーと攻めた作りに、これは絶対におもしろくなると確信しました。撮影自体も生放送のリアル感を出すために、15台以上の機材を使って長回しで一発撮りの連続!通常のドラマでは考えられないような撮影方法で、緊張する余裕もなく始まり、毎回怒涛の結末を迎えるので、アトラクションに乗ったような疾走感がありました。そのぶん集中できたし、出演者やスタッフとあれこれ相談しながら進めていったので、現場の一体感も強かったですね」濱さんが演じる花岡は、生放送中に悲劇が起こっているにもかかわらず、してやったりとほくそ笑む少々不気味な役柄で、興味をそそられる。「花岡は、タチの悪いタイプの人間ですね(笑)。序盤ではどんなキャラクターなのか見えてこないかもしれませんが、回を重ねるほどに人間性が明らかになってくるので、そこも見どころのひとつです。人間の恐ろしさを感じられる衝撃的な話ばかりで、先の読めないバッドな展開が繰り広げられるので、目が離せなくなると思います。オカルトではなく、私たちの身近でも起こりえる話ばかりで、実際に起こった話も盛り込まれています。もしかしたらドラマで出てくるストーリーに近い経験をしたことがある方もいるかも?毎回、ゾクゾクハラハラしてください」『何かおかしい』花岡(濱)が構成作家を務める『オビナマワイド』の生放送中に悲劇が巻き起こるヒューマンホラー。毎週火曜24:30~テレビ東京ほかにて放送中。テレビ東京のYouTubeチャンネルでは第3話まで、Paraviでは全話先行配信中。はま・しょうご1994年8月22日生まれ、東京都出身。「GirlsAward×avex BoysAward Audition」で特別賞を受賞しデビュー。『恋せぬふたり』『鎌倉殿の13人』(共にNHK)などドラマに出演。映画『辻占恋慕』も公開中。ジャケット¥68,200トップス¥18,700パンツ¥39,600(以上ザ ヴィリディアン/ザ ヴィリディアン TEL:03・5447・2100)※『anan』2022年6月15日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・徳永貴士(SOT)インタビュー、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2022年06月12日DisGOONie Presents Vol.11 舞台『Little Fandango』の航海ゲネプロが10日に東京・EXシアター六本木で行われ、萩谷慧悟(7ORDER)、長妻怜央(7ORDER)、渡辺みり愛、校條拳太朗、瀬戸利樹、萩野崇、松田賢二、西田大輔(作・演出)、司会の長友光弘(響)が取材に応じた。同作は西田大輔主催によるDisGOONie(ディスグーニー)11作品目の公演。アメリカの西部開拓時代、21人を殺し、21歳でその生涯を閉じた「ビリー・ザ・キッド」の遺した伝説を中心に、ニューメキシコ州の街に生きた少年たちの運命と、隠された歴史を描く。稽古について聞かれると、萩谷は「2週間前に稽古に入って、2週間で作ったんだという感想なんですけど、今回ゲネプロができるということも奇跡なんですよね。座組みが揃ったのも奇跡ですし、みなさんの前でゲネプロができるのも奇跡で、ここから良い航海を切れるように奮闘していければと思っています」と気合い十分。長妻は「若いキャストが多くて、すごく勢いがあって素敵だねって西田さんにも萩野さんにも賢二さんにも言っていただける。でも弱点が2つあると。油断することと、忘れちゃうこと。すごくいいんだけど忘れちゃうようで、忘れないように頑張ります」と語り、司会の長友が「けっこうでかい弱点だね」とつっこんでいた。萩野は「西田大輔さんが11作目で、DisGOONieがセカンドシーズン、新たな船出のスタート。尺に関しても今までは3時間45分だとか、終電までやる、朝までやるみたいな豪快なものでやってきたんですけど、今回なんと約3時間というスピーディーさになっていまして、そういった意味では我々も何か挑戦している作品になってきています」と明かす。また、激しいガンアクションが満載の作品に、萩谷は「刀がないんだな、どうやって殺陣を表現するんだろうなと思った方も多いと思うんですけど、いつもと違った殺陣で、銃やナイフ、近距離や遠距離といろんなところに視点が移るようなアクションになってます」と紹介し、長妻は「僕は銃を回すのをめっちゃ練習しました。ずっと練習してたので落とすことはないんじゃないかな。センスがあるキャラなので、意識して見てほしいです」とアピールする。男性陣はさらに「距離感がすごくあるから、息を合わせる部分はすごく大変。西田さんがそれぞれのキャラクターの味が出ている殺陣をつけてくださったので、楽しんでいただきたい」(校條)、「ガンアクションと聞いた時は『すぐ撃っちゃいそうだけど、どうするの?』と思ったんですけど、納得できるような台本を書いてくださっている」(瀬戸)とそれぞれ感想も。一方、松田は「ド派手なアクションはお若い方達にお任せして、(自分が演じる)タンストールというおじさんは、ある意味、僕の話す言葉がアクションになってるかなと。うまいこと言ってますよね、僕」と語った。6月5日が誕生日の長妻は稽古中に24歳になったそうで、「誕生日にちょうど配信がありまして、その時にキャストの皆さんから色紙みたいなのを……萩谷慧悟くんが用意してくれてこう、なんですかね? 前開きのこういうやつにちっちゃく紙があって、なんか一人ひとりのつらつらとメッセージが」と概要の説明から入り、萩谷が「嬉しそうじゃないけど!」とつっこむ。長妻は「色紙の言葉にすごく個性があるキャストさんたちだなと感じまして、すごく嬉しかったです。家に保管してあります。たまに元気がなくなった時に見ようかなと思います」と喜びを表していた。東京公演は東京・EXシアター六本木にて6月10日~6月19日、大阪公演はCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて7月2日~7月3日。東京公演では、6月16日18:00公演限定で、観客カーテンコールの写真撮影(スマートフォンのみ)が可能で、さらに大阪千秋楽公演(7月3日13:00)のイープラス「Streaming+」での生配信も決定した。
2022年06月10日DisGOONie Presents Vol.11 舞台『Little Fandango』の初日前会見が10日に東京・EXシアター六本木で行われ、萩谷慧悟(7ORDER)、長妻怜央(7ORDER)、渡辺みり愛、校條拳太朗、瀬戸利樹、萩野崇、松田賢二、西田大輔(作・演出)、司会の長友光弘(響)が登場した。同作は西田大輔主催によるDisGOONie(ディスグーニー)11作品目の公演。アメリカの西部開拓時代、21人を殺し、21歳でその生涯を閉じた「ビリー・ザ・キッド」の遺した伝説を中心に、ニューメキシコ州の街に生きた少年たちの運命と、隠された歴史を描く。のちに「ビリー・ザ・キッド」として知られることとなるヘンリー・マカーティ役の萩谷は「影のある役で、自分の本質とは真逆にある役に挑戦させていただいています。若くして伝説を作ってると、いろんな作品にも取り上げられてますし、西部劇自体、俳優人生で演じるのはあまりないと思うので光栄に思っています」と役について説明する。「僕はすごくおしゃべりなんですけど、マカーティは口数も少ないですし、一匹狼で何か気になるなと思わせるようにやっていきたいなと思っています」と意気込む。司会の長友も「慧悟はおしゃべりだからな」と納得していた。マクスウェル/ピートの2役を演じる長妻は「ひゃい!」と甲高い声で手を上げ、喉が詰まったような声で文字で表せないような挨拶を続ける。「ずっと昨日から準備してこのボケを考えてきて、面白いですか?」と尋ねる長妻は「今回ピートとマックスの2役をやらせてもらって、僕とは真逆のキャラでめちゃくちゃおしゃべり」と萩谷のコメントにかぶせてさらにボケる。「なんかミスりましたかね?」と聞く長妻に、萩谷は「大ミスしてるよ!」と指摘していた。長妻は改めて「西田さんが以前に書いて、僕らもやらせてもらうということでアレンジが加わって、僕にすごく当てはまるようなキャラクターに書いていただいて、僕はそれをもうただまっすぐ馬のように走るだけだなと感じてお芝居をさせていただいます。物語の中で色々なシーンがあるんですけど、気持ちの落差が激しい役なので、皆さんにどれだけ心を動かしていただけるのかが、このキャラクターの醍醐味だと思うので、全力で頑張っていきたいと思います」と真面目に語った。また父の日が近いということで親孝行のエピソードについて聞かれると、萩谷は「ちょうど母の日の時に、両親に会いまして。この舞台があるので、父の日には父親には会えないということで、合同でやったんですけど、父親が趣味でギターを始めて今後のライフワークにしていきたいと言ってて、習い始めたんですって」と語り始める。「『上手くなったら良いギターを買おうと思ってるんだよ』言ってたので、『だったら今からいいギターを僕が買うよ』と言って、いいギターを買いました」と明かす。長妻も「僕もちょうど……」と言いながら、「親に車を買いました。僕は免許持ってないんですけど、ありがたいことにお仕事もさせていただいて、ちょうど車検が切れるということで、新車にしようとプレゼントしました」と、豪華プレゼント話を披露した。東京公演は東京・EXシアター六本木にて6月10日~6月19日、大阪公演はCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて7月2日~7月3日。東京公演では、6月16日18:00公演限定で、観客カーテンコールの写真撮影(スマートフォンのみ)が可能で、さらに大阪千秋楽公演(7月3日13:00)のイープラス「Streaming+」での生配信も決定した。
2022年06月10日7人組アーティスト・7ORDERの萩谷慧悟と長妻怜央が、DisGOONie Presents Vol.11 舞台「Little Fandango」でW主演を務めることが1日、明らかになった。同作は西田大輔主催によるDisGOONie(ディスグーニー)11作品目の公演。アメリカの西部開拓時代、21人を殺し、21歳でその生涯を閉じた「ビリー・ザ・キッド」の遺した伝説を中心に、ニューメキシコ州の街に生きた少年たちの運命と、隠された歴史を描く。W主演の萩谷、長妻をはじめ、渡辺みり愛、校條拳太朗、山口大地、内堀克利、村田洋二郎、大海将一郎、吉川友、中村嘉惟人、横井翔二郎、瀬戸利樹、萩野崇、松田賢二が出演。東京公演は東京・EXシアター六本木にて6月10日~6月19日、大阪公演はCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて7月2日~7月3日。○萩谷慧悟 コメント3年前にvol.7で初めてディスグーニーに乗船し素敵な仲間と出会ってからまたあの船に乗りたいと願っていましたところ、こうして再び乗船できて嬉しく思っています。今回の作品が西部劇ということで、あまり演じる機会が少ない世界をこの座組みで挑戦できるのが楽しみです!人の信念と正義、さまざまな解釈を皆様に楽しんでいただきたいです。○長妻怜央 コメントディスグーニーさんとの出会いはDECADANCEという作品でした。その作品をやらせていただいてからお芝居に対する考え方だけではなく、僕の根本の部分が変わった作品に出会えたと思いました!そんなディスグーニーさんにそれも主演という形で出させていだけることを本当に光栄に思います!出させていただくからには全力の全力投球でやらせていただこうと思っています!見ていただいた方の心にブッ刺さるような作品にしていけるように頑張りたいと思います!よろしくお願いします!○渡辺みり愛 コメントDisGOONieさんの舞台は今までに何人かメンバーも出ていて、私が今回出させて頂けることがとてもびっくりで不安ですが、誠心誠意努めてまいります。この舞台を通してまた新たな表現を身に付けたり、色々な発見が出来たらいいなあと思っています。是非、沢山の方々に見に来ていただきたいです。宜しくお願い致します!○西田大輔(作・演出・プロデュース) コメントまた力強く、ディスグーニーの航海が始まります。物語は、西部開拓時代。今から150年前のフロンティア精神溢れるアメリカ。困難の中で何かを産み出そうともがく、ならず者たちの生き様を、若き彼らと精一杯描いてみようと思います。荒波を越えるような想いを一緒に。
2022年04月01日阪本奨悟が、4月10日に日本橋三井ホールにてワンマンライヴを開催することを発表した。ミュージカルや舞台と幅広く活躍を続ける阪本奨悟。5月からは、ミュージカル『「刀剣乱舞」~真剣乱舞祭2022~』に堀川国広役として出演が決定しており、大型ライブ公演アリーナツアーで全国8都市を回る。ライブタイトルは『阪本奨悟 ONE-MAN LIVE 2022「Re:Starting Over」』。今回のワンマンは、阪本が「これまでの集大成を見せる」と意欲を燃やすように、新旧織り交ぜたベストのセットリストとなっており、久々のバンドスタイルでのライブとなっている。<ライブ情報>『阪本奨悟 ONE-MAN LIVE 2022「Re:Starting Over」』2022年4月10日(日) 日本橋三井ホール1部:14:45 開場 / 18:15 開演2部:15:30 開場 / 19:00 開演【チケット料金】全席指定:6,600円(税込)※ドリンク代別途必要※オリジナルポストカード付き(数種類からランダムに一人一枚 / 1部2部は別バージョン)※未就学児童入場不可 / 6歳以上チケット必要チケットはこちら:問い合わせ:ホットスタッフプロモーション:03-5720-9999(平日12:00~18:00)■阪本奨悟 OFFICIAL SITE
2022年03月19日「呪術廻戦」の原点であり、愛と呪いの物語を描く『劇場版 呪術廻戦 0』。この度、最強の呪術師である五条悟の劇場版最新ビジュアルが到着した。五条悟は、東京都立呪術高等専門学校の教師で、強力な術式である「無下限呪術」の使い手だ。結婚の約束をした幼なじみ・里香を目の前で亡くし、呪いとなって自らに憑りついたことで苦しみ、死刑を望んでいた乙骨憂太の前に現れ、学校へ導くことになる。TVアニメシリーズからの黒色のアイマスクが、今回のビジュアルでは大きく変化。普段のマイペースさや軽薄さは鳴りを潜め、白色の包帯から左目が覗く、クールなビジュアルとなっている。『劇場版 呪術廻戦 0』は12月24日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:劇場版 呪術廻戦 0 2021年12月24日より全国東宝系にて公開© 2021 「劇場版 呪術廻戦0」製作委員会©芥見下々/集英社
2021年09月27日12月24日(金)に公開となる『劇場版 呪術廻戦 0』より、人気キャラクター五条悟の劇場版最新ビジュアルが発表された。『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)にて連載中、10月4日発売の17巻でシリーズ累計発行部数5500万部を突破する大人気コミック『呪術廻戦』(芥見下々・著)。それを原作としたTVアニメシリーズは、2020年10月2日から、毎週金曜日深夜1時25分よりMBS/TBS系全国28局ネット“スーパーアニメイズム”枠にて放送され、MBS/TBS深夜アニメ枠歴代1位の視聴率を獲得、今なお原作・アニメ共に一大ムーブメントを起こし続けている。そんな『呪術廻戦』初の映画化となる『劇場版 呪術廻戦 0』が、ファンにとって重要な“百鬼夜行の決行日”である12月24日(金)に公開されることとなった。そしてこの度、主人公・乙骨憂太、乙骨の同級生となる禪院真希、狗巻 棘、パンダの設定画に続き、“東京都立呪術高等専門学校”の教師であり、最強の呪術師である五条 悟の劇場版最新ビジュアルがついに公開となった。強力な術式である「無下限呪術(むかげんゅじゅつ)」の使い手である五条悟は、TVアニメシリーズから黒色のアイマスクが大きく変化。普段のマイペースさや軽薄さは鳴りを潜め、白色の包帯から左目がのぞいているクールなビジュアルに仕上がった。結婚の約束をした幼馴染・里香を目の前で亡くし、呪いとなって自らに憑りついたことで苦しみ、死刑を望んでいた乙骨憂太の前に現れ、東京都立呪術高等専門学校へ導くことになる五条悟。最強の呪術師として、スクリーンでどんな活躍を見せてくれるのか。『劇場版 呪術廻戦 0』12月24日(金)より公開
2021年09月27日トリックスターエンターテインメント株式会社、西川悟平サポーターズクラブ、株式会社コットンクラブ・ジャパンでは、2021年10月1日(金)~2日(土)まで、東京・コットンクラブにて、「西川悟平ソロライヴ~クラシカルクロスオーバー/西洋と東洋の文化の出会い~」を開催いたします。西川悟平ソロライヴ■ニューヨークで20年間活躍してきた西川悟平が再び東洋の文化と出会う特別なライヴを開催します。ピアニスト・西川悟平が自身の原点である東洋文化や音楽にリスペクトの気持ちを込め、日本の伝統文化を牽引するアーティストを迎えてソロライヴを開催します。会場は、多くの著名アーティストによる上質かつエキサイティングなステージと、本格的な美味とお酒が楽しめる大人の社交場「コットンクラブ」。今回は西川悟平初のコットンクラブでのライヴ開催を記念し、日本で活躍する和楽表現者を招いて特別なコラボレーションを行います。■奇跡の「7本指」のピアニスト・西川悟平×日本を代表する表現者による上質なコラボレーション。難病“ジストニア”と診断され、一時は両手の演奏機能を失うも、懸命なリハビリの末、「7本指」で奇跡の再起を果たし、唯一無二の演奏で世界中の聴衆を魅了している西川悟平。氏の魂を揺さぶる演奏に、和太鼓奏者として世界各国での演奏経験を持ち、作曲家・アレンジャー・楽器の製品開発に携わるなど幅広い活躍をみせる坂本雅幸の和太鼓と、その高い表現力から、若手トップの舞踊家として日本舞踊界を牽引する花柳幸舞音による舞がクロスする。唯一無二の西川悟平ワールドに、同じDNAを持つ東洋文化が掛け合わされることで起こる化学変化をどうぞご期待ください。■9月6日(月)12:00より、一般発売開始。本公演のチケット一般発売を9月6日(月)12:00よりコットンクラブチケットサイトにて開始いたします。2日間・全4公演限定の特別なステージをお楽しみください。※本公演は1st.showと2nd.showで料金、セット内容が異なります。出演アーティスト西川悟平<ピアノ>カーネギーホールをはじめ世界各国の会場で観客を熱狂させているピアニスト。15歳からピアノを始め、3年後にニューフィルハーモニー管弦楽団とピアノコンチェルトを共演。輝かしいキャリアの中、突如難病“ジストニア”と診断されるが、10年以上にわたる懸命なリハビリの末、再起を果たす。国内外でのライヴ活動に加え、CMや映画への楽曲提供、ベストドレッサー賞の受賞など、話題が絶えない。2021年9月かねてから夢であった「東京2020パラリンピック閉会式」にて演奏。西川悟平急遽、名古屋・しらかわホールにてクリスマスライブ決定!2021年12月25日(土)しらかわホールにて『西川悟平ソロライブ/クリスマスライブ2021奇跡は起きる』を開催決定。チケット先行発売開始!チケット詳細は以下URL: 坂本雅幸<和太鼓>太鼓とロックのバックグランドを融合させた次世代の表現が世界から注目を集めるアーティスト。鼓童在籍時代は新人の時からソロ、センターで演奏し、10年以上舞台を牽引。研ぎ澄まされた肉体と鋭い感性、圧倒的な技術が観客を魅了し、2018年よりソロ活動開始。あくなき探究心により電子和太鼓や調律桶太鼓の発案・開発にも携わり、常に未踏の世界に挑んでいる。坂本雅幸花柳幸舞音<日本舞踊>NHK Eテレ「にっぽんの芸能~今輝く若手たち~」で特集されるなど、表現力に優れた若手トップの舞踊家。これまで、FIFAワールドカップ決勝戦前夜祭などに出演。「TEDxSeeds」では、ユーコ・スミダ・ジャクソンと即興によるパフォーマンスを披露し、オープニング・パフォーマンスの振付も注目された。テレビ・演劇・ミュージカルの振付、舞踊所作指導や講師として活躍している。花柳幸舞音<概要>【タイトル】西川悟平ソロライヴ~クラシカルクロスオーバー/西洋と東洋の文化の出会い~【出演】西川悟平(ピアノ)坂本雅幸(和太鼓)、花柳幸舞音(日本舞踊)【スケジュール】2021年10月1日(金)~2日(土)全4ステージ[1st.show] open 2:00pm / start 2:45pm[2nd.show] open 4:45pm / start 6:00pm※ステージ90分予定※2ステージ完全入替制:2ndのみ全席ディナーコース(ウエルカムドリンク付き)【会場】コットンクラブ(東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2F)【料金(税込)】[1st.show]テーブル席 :¥10,000ボックスシート・センター(2名席):¥15,000(ウエルカム・シャンパン付)ボックスシート・サイド(2名席) :¥12,500ボックスシート・ペア(2名席) :¥13,000ペア・シート(2名席) :¥12,000※料金は1名様あたりの金額となります。[2nd.show]★全席食事付(ディナー・コース)ウエルカム・ドリンク付テーブル席 :¥19,500ボックスシート・センター(2名席):¥30,000(ボトル・シャンパン付)ボックスシート・サイド(2名席) :¥22,000ボックスシート・ペア(2名席) :¥22,500ペア・シート(2名席) :¥21,500座席表はこちらをご確認ください ※料金は1名様あたりの金額となります。※本公演は1st.showと2nd.showで料金、セット内容が異なります。※通常と異なる座席レイアウトになっております。【お知らせ】[1st.show]★ボックスシート・センターはウエルカム・シャンパン付(1名様につき1杯)[2nd.show]★全席食事付(ディナー・コース)/ウエルカム・ドリンク付≪ディナー・コース≫アミューズ・前菜・メイン・デザート※2nd.showのボックスシート・センターはボトル・シャンパン付(1BOXにつき1本)※アレルギーなど召し上がれない食材がございましたら、ご予約時にお知らせください。※開演60分前までのご来場をお勧めいたします。【チケット発売スケジュール】■一般発売受付URL : 電話番号: コットンクラブ|03-4215-1555(12:00pm - 7:00pm)受付期間: 9月6日(月)12:00~注意事項・営利目的の転売は不可とさせて頂きます。・車椅子でご来場されるお客様は、必ずご来場日の前日までにお問い合わせ先までご連絡ください。・複数枚ご購入の際、情勢や感染対策等の関係でお席を連番でご用意できない場合がございます。予めご了承ください。・会場における感染症(COVID-19)に対する取り組みについては下記の公演サイトにてご確認下さい。【公演サイト】 【主催】トリックスターエンターテインメント/西川悟平サポーターズクラブ/コットンクラブ・ジャパン【ご予約/お問い合わせ】コットンクラブ:03-3215-1555(12:00pm - 7:00pm) 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年09月06日アーティスト・青山悟の新作展『Everyday Art Market@GINZA TSUTAYA BOOKS』が、銀座蔦屋書店(東京都 中央区 GINZA SIX6F)店内インフォメーションカウンター前にて、7月17日(土)~8月7日(土)の期間に開催される。青山は東京を拠点に活動する現代アーティスト。工業用ミシンを用いて、世相をポップに表現した刺繍作品を制作し、国内外の多くのアートファンの支持を集めている。そして「Everyday Art Market」は、2020年4月の緊急事態宣言直後に青山がスタートした活動。「非日常」な毎日であっても「日常」的に制作を続けることをモットーに、即興的に刺繍するシリーズを発表している。今回の新作展では、青山の定番となっているワッペンタイプの作品や、初めての試みとなるジャケットに刺繍を施した作品などを制作し、店頭、オンラインにて販売する。photography by Ayaka Aoyamaphotography by Ayaka Aoyamaまた、洗練されたモードやカルチャー、ファッションが並ぶGINZA SIXを意識して、アートやファッション、デザインなど既存の枠組みを横断しながら、日々を楽しく過ごす作品を提案する。作品は、銀座蔦屋書店の店頭・オンラインストアにて7月17日(土)10時半より販売開始される。Everyday Art Market@GINZA TSUTAYA BOOKS期間:2021年7月17日(土)~2021年8月7日(土)会場:銀座 蔦屋書店 インフォメーションカウンター前
2021年07月16日Broadway Musical『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』に出演する、阪本奨悟さんのインタビューをお届けします。いま、世界が最も注目する劇作家で作曲家でもあるリン=マニュエル・ミランダ。『イン・ザ・ハイツ』は、リンを一躍スターダムにのし上げた出世作であり、ヒップホップやラテン音楽を使い、ミュージカル界に大きな影響を及ぼした作品だ。「ラップやラテンのリズムとセリフとがキレイに繋がって続いていて、気持ちいい作品なんです。僕も初挑戦のジャンルだし、観た方もきっと新鮮なんじゃないかなと思います」そう話すのは、シンガーソングライターで、ミュージカル『刀剣乱舞』などで俳優としても活動する阪本さん。自身の音楽性とは違うジャンルゆえ、「いま稽古場でDef TechのMicroさんを見ながらグルーヴ感を勉強している」最中。「Microさんのラップは言葉ひとつひとつが全部リズムになっていて、聴いていても楽しいんです。ただビートを刻むだけじゃなく、+αで自分のリズムをのせてみたり、時に敢えて外してみたり。そこがとても演劇的な表現に繋がる気がしていて。今まで僕があまり掘り下げてこなかったジャンルの楽曲ですが、だからこそ新しい扉を開かせてもらっているような気持ちです」NYで移民たちが暮らすワシントンハイツを舞台に、雑貨店を営むウスナビら移民たちの姿を描いた群像劇。阪本さんが演じるのは、ウスナビの従弟で共に店を手伝うソニー。「ソニーは生意気で憎たらしい口はきくけれど、ウスナビのことが大好きな可愛い弟キャラです。そんな彼の愛あふれるところをちゃんと伝えられたらいいなと思っています。ペルーで生まれ育った共演者のエリック・フクサキさんの話を聞くと、ここで描かれているようなラテン系の人たちと僕らでは、人と人とのコミュニケーションのとり方も、恋愛のアプローチの仕方も全然違うんだそうです。今の日本人的な価値観を一回リセットして、ラテンの人たちの生き方や考え方をインプットした上で、演じたいと思っています」阪本さんにとっては、これが初めての海外ミュージカル作品への挑戦。「この作品に出てくる移民の人たちと同じように、僕も今を抜け出して、大きな夢を掴みたいと思って上京したひとり。今の自分に満足して、何もせずに現状維持でいるのは嫌なんです。いま27歳。うかうかしていたらあっという間に30ですよね。時代に置いていかれないよう、いろんな現場でいい刺激を受け、自分がやるべきことは何かを見つけたいです」『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』プレビュー公演・3月27日(土)~28日(日)鎌倉芸術館 大ホール東京公演・4月17日(土)~28日(水)TBS赤坂ACTシアター原案・作詞・作曲/リン=マニュエル・ミランダ脚本/キアラ・アレグリア・ウデス演出・振付/TETSUHARU出演/Micro/平間壮一(Wキャスト)、林翔太/東啓介(Wキャスト)、田村芽実、石田ニコル、阪本奨悟、エリアンナ、青野紗穂、エリック・フクサキ、山野光、戸井勝海、未来優希、田中利花ほかS席1万2000円ほか(税込み)公演事務局(平日10:00~18:00)information2@pia.co.jp大阪、名古屋公演ありさかもと・しょうご1993年6月13日生まれ、兵庫県出身。昨年リリースした2ndアルバム『=+』が現在好評発売中。俳優としては、ミュージカル『刀剣乱舞』堀川国広役で高い人気を誇る。ジャケット¥57,000(アンバー/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)ニット¥48,000(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス/スタジオ ファブワーク)Tシャツ¥12,000(ジョン メイソン スミス/ヘムト PR TEL:03・6721・0882)※『anan』2021年3月31日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・森田晃嘉ヘア&メイク・永瀬多壱(VANITES)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年03月29日テノールの西村悟が新境地、ドイツ歌曲の世界に臨む。自身初のリート・リサイタル[3月31日(水)Hakuju Hall]でベートーヴェンの歌曲集とシューマン《詩人の恋》を歌う。コロナ禍による活動停止中、自宅でひたすら自分の声と向き合ううち、テクニックの進化に気づいたと語る。「声のコントロールです。若い頃はオケに負けない声の“圧”を出すことが前提でしたが、声を繊細に操るテクニックが身につき始めていることに気づいた。そんな自分の声だけで表現することに魅力を感じて、だったら歌曲を歌ってみようと」学生時代からイタリア・オペラひとすじだった西村。数年前から、宿命が彼をリートの世界に導いていたようだ。まずは2017年にびわ湖ホールの《ラインの黄金》でローゲを歌ったこと。「沼尻竜典さんのご指名。初のドイツ語オペラでした。ローゲはすべて語り口調のような、流暢なドイツ語が必要です。しかもドイツの大御所ミヒャエル・ハンペの演出。1年かけて徹底的に仕込まれ、最終的にはとても好評をいただきました」その翌年には、クラウス・フロリアン・フォークトのリート・リサイタルで衝撃を受けた。「彼はヒロイックな声でわーっと持っていくようなワーグナー歌いではなく、一本のラインの上で声を操るような感覚の現代的な歌い手。オペラ歌手のリートはいいなと、その時に思いました」そして、ドイツ語体験と自らの声の変化が徐々にリンクしてリート挑戦を思い描き始めた頃、ピアニストの仲道郁代から、彼女のリサイタルで《詩人の恋》を歌ってみないかと誘われた。「二つ返事でやらせていただきました。仲道さんの音から、僕が感じていたのと同じ景色が見えて、漠然としていた感覚が確信に変わりました」「僕の表現力はオペラで培ってきたものです。大劇場で歌うオペラは、表現を拡大する世界。一方、歌曲の繊細な世界でも、その表現を凝縮して届けることで、より幅が広がるんじゃないかと思っています」もうひとつ、物語性へのこだわりもオペラと繋がる。「特に《詩人の恋》。物語性がオペラと似ているように感じています。詩の言葉だけでなく、歌の旋律やピアノ伴奏からも物語の背景が見えてくる。僕の感じた背景を知っていただき、同じ目線で物語を見ることで、より面白く感じていただけると思います」いわばオリジナルの「標題」だ。そんな丁寧な姿勢からも、彼の「リート愛」がひしひしと伝わってくるではないか。西村悟の新たな顔、新鮮な《詩人の恋》を目の当たりにできそうだ。(宮本明)
2021年03月26日結局楽しみにしていた同窓会に行くことを断念した私は、悟からの愛情に疑問を感じ始めるようになりました。悟の言動は明らかに行き過ぎたものだったけれど、普段私がおとなしくしていれば優しく接してくれていたのです。しかしある休日の夜、同窓会をドタキャンしたことを心配して電話をかけてきてくれた友人に悟の束縛について初めて相談したのです。悟が盗み聞きしていることなど知る由もなく……。これまで見たことのない鬼のような形相で怒り狂う悟。そんな悟を見て、張りつめていた心の糸がプチンと切れる音がしました。これまで我慢していた感情があふれだし、自分自身の心の声に気づいたのです。もっと私自身が幸せに暮らしていくためにも、悟からは離れるべきだと……。その後、すべてを両親に話した私は離婚に向けての一歩を踏み出すことにしました。まずは、夫と過ごしながら離婚できる準備を虎視眈々と進めることに。悟の束縛を愛情だと勘違いしていた私は、悟に罵倒されるたびに何も言い返せず、自分ばかりを責めていました。そんな夫婦関係はとても健全とは言えないのに、子どもたちのためにも家庭のいう居場所を壊したくないがために、ずっと見て見ぬ振りしていたのかもしれません。だけどこれからはもう心を殺さず、母親として、そして一人の人間として、自分自身を信じることを忘れず私らしく生きていきたいなと思います。※この漫画は実話をべースにしたフィクションです原案・ウーマンエキサイト編集部/脚本・ 倉沢れい /イラスト・ もちふわ
2020年08月27日結婚後は子宝に恵まれ親になった私たちですが、悟の束縛は変わることはありませんでした。むしろ子どもが生まれてからの方が「母親なんだから」と都合のいい口実を見つけたかのように私の行動をますます制限するようになったのです。そしてますます悟の束縛はエスカレートしていき……会社の男性社員と電話することさえも許せないという悟家庭内が平和であることが何より大切だった私は、その後、悟の要求通り、派遣先を変えることにしました。常に悟からは監視され、人付き合いも制限され、どんどん孤立していく日々。そんなある日、大学時代の同級生から同窓会の連絡がありました。孤独に耐えかねていた私は悟に頭を下げてお願いしたところ、珍しく参加することを許してくれたのです。しかし当日、準備をして出かけようとしたところ…お願いしたのはつい1週間前のこと。私の行動を逐一チェックしたがる悟がこのことを忘れるわけがありません。おそらく悟は私が行けなくなるように、あえて当日にこう言うことを言ってきたのかもしれません。その後、悟の束縛はますますエスカレートし、私が愛情と信じていたものが、絶対的な支配欲だったことに気づいていくのでした。次回に続く※この漫画は実話をべースにしたフィクションです原案・ウーマンエキサイト編集部/脚本・ 倉沢れい /イラスト・ もちふわ
2020年08月26日いつの時代も親は子どもを心配するものですが、少子化が進んでいるいまは、心配性の親が増加していると言われます。子どもを保育園に預けるとき、「ちゃんと園生活を楽しめるかな……」「誰かに迷惑をかけないかな……」と心配する人もいることでしょう。そこで、保育現場で実際に子どもたちの様子を見ているカリスマ保育士・てぃ先生に、心配性のみなさんに向けてメッセージを頂きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹幼いときから集団生活になじめることが重要ではないお父さんやお母さんはとても心配性です。「うちの子は、園になじめていますか?」「集団生活になじめる子とそうではない子では、どこに違いがあるのでしょう?」なんて質問を受けることもあるほどです。でも、あまり心配しないでください。これはあくまで個人的な考え方になりますが、幼いときからうまく集団生活ができることは、そんなに重要ではないと感じるのです。就学前の幼い子どもが、「みんながやるから、僕もこれをやる」というふうに考えすぎることのほうが、私からすれば心配。むしろ、「みんなはこれをやっているけど、僕は違うことをやりたいんだ!」なんて思う子のほうが、将来はすごい人間になるのではないかとも思っています。親御さんとしては、「集団生活ができずに、先生たちや友だちに迷惑をかける子どもにはなってほしくない」という思いがあるのでしょうね。でも、保育士たちは、子どもに対応するプロフェッショナルです。多少自分勝手で集団生活になじめないような子に対しても、うまく対応するすべはいくらでももっていますから、安心してお子さんを預けてほしいと思います。子どもが暴力をふるったときに有効な「代弁」でも、「そうはいっても、さすがに友だちを叩くなどの暴力をふるうのはまずい」と感じる人は多いでしょう。そういうことが起きた場合の対応法をお伝えします。そもそも、子どもが友だちなど他人を叩くといった行動をするのは、自分の気持ちをうまく表現できないからです。幼い子どもは言語能力が未発達なので、頭のなかでイメージしたり考えていたりすることをうまく言葉にできません。そのため、なにか嫌なことがあったときには、言葉ではなく手が出るということになるのです。そこで必要になるのが、子どもが思っていることを大人が言葉にする「代弁」という作業です。子どもが友だちを叩いた理由を推測し、「おもちゃを取られちゃった?」「なにか嫌なことを言われたの?」というふうにどんどん投げかけるのです。そうして、子どもが友だちを叩くという行為に至った本当の理由を見つけ、「あなたの気持ちはちゃんとわかったから大丈夫だよ」と子どもに共感したうえで、「でも叩いたらだめだよ」と伝えてあげなければなりません。そうでないと、その子からすれば、自分の気持ちをなにひとつ受け止めてもらっていないのに、ただただ「お前が悪い」「手を出すな」と一方的に叱られていることになってしまいます。また、子どもの暴力は、保育園の先生や友だちだけではなく、親に向かうこともあります。そんなとき、たいていの親は「叩いたらだめでしょ!」と、子どもを非難する叱り方をするものです。でも、この叱り方では子どもの心にあまり響きません。子どもたちには、自分を否定されるよりも、相手が嫌な思いをしているとわかることのほうが強く響きます。その相手が、本当は大好きなお父さんやお母さんだったらなおさらです。ですから、もし子どもに叩かれたりかみつかれたりした場合には、「ママ、痛かったよ」「パパ、悲しいな」といった言葉をかけてみてください。きっと、子どもなりに反省してくれるはずです。具体的な質問で、子どもの園生活をイメージするこのような、子どもが園になじめているか、子どもが困った行動をしていないかといったことが気になる親は、子どもが家に帰ってきたときに、園でなにをしていたのかを聞きたがるものです。その質問は、たいてい「今日、なにやったの?」というものでしょう。でも、この質問では子どもはうまく答えることができません。なぜかというと、子どもにとっては質問されている内容が広すぎるからです。そのため、どのことを答えていいのかわからず、結果的に「わからない」「知らない」といった答えを返すことになります。そうではなくて、具体的に質問しましょう。そもそも、質問するからには親には聞きたいことがあるはず。それら聞きたいことの要点を絞って細かく聞くのです。「今日はなにをして遊んだの?」ではまだ広いですね。「今日はブロックで遊んだ?」「おままごとした?」というふうに具体的に聞くべきです。子どもが「おままごとしたよ」と答えたら、「おままごとでどんなことをしたの?」ではなく「お料理したの?」というふうに聞くという具合です。要は、子どもが「イエス」「ノー」でぱっと答えられる質問をするのです。そうすれば、親からしても、子どもの園生活の自分には見えない部分も具体的にイメージすることができるようになると思います。こういった心配性の親は、「100点満点の親」を目指しているのかもしれませんね。満点を目指すから、子どもに関するあらゆることが気になってしまうのでしょう。でも、冷静にまわりを見回してみてください。100点満点の親なんてどこにもいませんよね?100点満点の子どももいません。親も子どもも65点や70点で十分ではないですか?そういう考えが心に余裕をもたせてくれるはずです。そして、なにより親であるみなさん自身の幸せをもっと追求してください。親は、子どもの幸せばかりを願うものです。でも、まず親が笑顔でなければ子どもも笑顔になれません。親が自分の幸せを追求することが、結果的に子どもの幸せにもつながるのではないでしょうか。『保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!』てぃ先生 著/マガジンハウス(2019)■ カリスマ保育士・てぃ先生 インタビュー記事一覧子どものイヤイヤを減らすコツは、こっそり○○すること【てぃ先生インタビューpart1】子どもが甘えん坊すぎて困るなら、親はシンプルにコレをすればいい【てぃ先生インタビューpart2】「ひとり遊び」に熱中してこそ、友だちとも遊べるようになるワケ【てぃ先生インタビューpart3】園生活の様子が心配なら、子どもにこんな質問をしてみよう【てぃ先生インタビューpart4】【プロフィール】てぃ先生(てぃせんせい)1987年2月8日生まれ。関東の保育園に勤める男性保育士。ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は50万人を超える。著書『ほお…、ここがちきゅうのほいくえんか』(KKベストセラーズ)は15万部、Twitter原作の漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)は20万部を超えるヒットを記録。他に、『ハンバーガグー!』(ベストセラーズ)、『せんせい!きいて! 園児がくれた魔法のことば』(リクルートホールディングス)などの著書がある。現在は、保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディア等で発信。全国での講演活動は年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」の創設と就任など、保育士の活動分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年07月20日「うちの子は、友だちと一緒に上手に遊べているのかな?」。友だちとの関わりのなかで社会性を身につけてほしいと願うばかりに、そんな心配をしている人もいるでしょう。カリスマ保育士として各種のメディアでも活躍するてぃ先生にアドバイスをお願いすると、その答えはちょっと意外なものでした。「子どもにとっては、友だちと遊ぶこと以前の『ひとり遊び』がとても大切」なのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹大人と子どもの、「一緒に遊ぶ」に対する認識の違い「子どもに友だちと上手に遊べるようになってほしい」と考える人に前提としてお伝えしたいことがあります。それは、子どもが自分で友だちと遊んでいると思う感覚と、大人が見て子どもが友だちと遊んでいると思う感覚はまったく違うということです。たとえば、積み木のコーナーでふたりの子どもがそれぞれ別々に遊んでいたとします。一緒になにかをつくっているわけでもないし、「僕は赤いおうちをつくろう」「じゃ、僕は青いおうちにしよう」というふうに声をかけ合いながら遊んでいるわけでもない。この状況を大人が見ると、子どもが一緒に遊んでいるとは思いませんよね?でも、その子が家に帰ってきたときに、「今日はなにをして遊んだの?」と聞くと、子どもは「○○君と一緒に積み木で遊んだ」と言います。大人は、なにか直接的な関わりがないと一緒に遊んでいると認識しませんが、子どもはその場にいる別の子の姿を見ながら遊ぶだけでも、一緒に遊んでいると認識するのです。つまり、大人の勝手な基準を子どもに対して押しつけているだけのこと。このことを前提として知っておかないと、「うちの子は友だちと上手に遊べない」という間違ったレッテルを貼ることになってしまいます。それこそ「もっと友だちと遊んだら?」「ちゃんと友だちと遊べてないんじゃないの?」なんてことを子どもに言ってしまえば、「僕は友だちとちゃんと遊べないんだ……」と、子どもをマイナス思考に陥らせてしまうことにもなるのです。「ひとり遊び」を経験してこそ、友だちと遊べるようになるそもそも、子どもにとっては友だちと遊ぶことだけが大切なのではありません。特に3歳くらいまでの子どもには、ひとり遊びがとても重要。幼い子どもは本能的にそのことをわかっていて、夢中になってひとりで遊び込もうとします。そうするなかで、集中力を育んでいるのです。それなのに、「友だちと一緒に遊ぶことが大切だ」と勝手に考える大人が無理やり子どものひとり遊びを中断させてしまえば、子どもは集中力を育むことができなくなるでしょう。そうすると、保育士や親の言うことを聞かずに走り回るような子どもになってしまいかねません。また、子どもの集中力を育むこと以外にも、ひとり遊びが重要な理由があります。ひとり遊びをしっかりすることで、大人が求めるような「友だちと一緒に上手に遊べる」子どもになれるのです。ひとり遊びを徹底的に経験した子どもは、「もっと自分の遊びを広げたい」という発想をもつようになります。そして、自分が遊んでいる場にいる別の子の遊び方に目を向けるようになり、「○○君の遊び方、すごくおもしろそう!」と思う。これが、子どもにとって友だちとの関わりにおける最もいい最初のステップです。友だちの遊び方に魅力を感じた子どもは、まずはそのまねをするでしょう。そこからさらに進んで、「○○君、それどうやってるの?」「一緒にやりたいな」というふうに直接的な関わりをもつようになる。自分ひとりでじっくり遊べるようになることこそが、結果的に友だちと一緒に遊べるようになることにつながるのです。家庭で「順番」や「貸し借り」を経験させるそうして子どもが友だちと遊ぶようになっても、親の心配は尽きません。友だちと一緒に遊ぶようになったらなったで、今度は遊びのなかでのトラブルについて心配します。たとえば、「遊びの順番を守れるのか」「おもちゃの貸し借りがきちんとできるのか」といったことです。でも、子どもが順番の概念を理解できるのは3歳頃、そしてきちんと順番を守ることを実行できるのは4歳頃からです。子どもの年齢によっては、そもそもできないことを親が求めているだけというケースもあるのです。また、別の問題として、順番や貸し借りの経験をいきなり「本番」でさせてしまっているというケースもあります。公園で子どもたちが遊んでいるなかで、遊ぶ順番やおもちゃの貸し借りをめぐってトラブルになったとしましょう。そのときに、いくら順番を守らせたりきちんと貸し借りをさせたりしようとしても、経験がなければそうできるはずもありません。ですから、順番を守ったりおもちゃを貸し借りしたりする経験を家庭で積ませてあげる必要があります。親であるみなさんが「この絵本、パパに貸して」と言って、貸し借りとはどういうものかを子どもに経験させるのです。おもちゃで遊ぶときにも、「ママが最初に取ったから1番、○○君は2番ね」と順番を守ることを経験させましょう。そうすれば、「本番」でもきちんと順番を守り、貸し借りができる子どもになっていくはずです。『保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!』てぃ先生 著/マガジンハウス(2019)■ カリスマ保育士・てぃ先生 インタビュー記事一覧子どものイヤイヤを減らすコツは、こっそり○○すること【てぃ先生インタビューpart1】子どもが甘えん坊すぎて困るなら、親はシンプルにコレをすればいい【てぃ先生インタビューpart2】「ひとり遊び」に熱中してこそ、友だちとも遊べるようになるワケ【てぃ先生インタビューpart3】園生活の様子が心配なら、子どもにこんな質問をしてみよう【てぃ先生インタビューpart4】(※近日公開)【プロフィール】てぃ先生(てぃせんせい)1987年2月8日生まれ。関東の保育園に勤める男性保育士。ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は50万人を超える。著書『ほお…、ここがちきゅうのほいくえんか』(KKベストセラーズ)は15万部、Twitter原作の漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)は20万部を超えるヒットを記録。他に、『ハンバーガグー!』(ベストセラーズ)、『せんせい!きいて! 園児がくれた魔法のことば』(リクルートホールディングス)などの著書がある。現在は、保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディア等で発信。全国での講演活動は年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」の創設と就任など、保育士の活動分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年07月17日「うちの子はとにかく『甘えん坊』で……」と、甘えん坊であることはよくないというイメージをもっている人も多いかもしれません。ところが、カリスマ保育士として各種のメディアでも活躍するてぃ先生によれば、甘え行動は子どもの成長にとって非常に重要なものだそう。子どもの甘え行動がもつ意味、甘えん坊の子どもに対する接し方について教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹子どもは親に甘えて「基地」の安全を確かめる子どもの甘え行動は、例えて言うと、「『基地』の安全を確かめる」行動で、お父さんやお母さん、保育園の先生が「基地」にあたります。子どもは、その基地が安全だと確かめたうえでいろいろな冒険をする。やったことがないこと、やったことはあるけどうまくいくかどうかわからないことなどにチャレンジします。もちろん、そうするなかで失敗することもある。やりたいことがうまくいかなかった、保育園で友だちとトラブルになったなど、子どもにはさまざまな失敗があります。そのとき、戻ってこられる安全な基地が必要なのです。そして、基地でお父さんやお母さんに十分に甘えられれば、「やっぱりここは安全だ」と感じられます。そうして、しっかりと充電をしてまた冒険に出かけていくことができるというわけです。でも、その基地で親が十分に甘えさせてくれないとなると、再び冒険に出かけられず、基地から離れられなくなります。子どもからすれば、大事な基地が安全ではないのに、外に出かけているような場合ではありません。そのため、基地の安全を確かめるために、子どもは甘え行動を延々と続けるということになるのです。そこでどうすればいいのかというと、子どもが甘えてきたときには十分に甘えさせればいい。ただそれだけのことです。「大丈夫だよ」「あなたのことが大好きだよ」「いつでも応援しているよ」といった言動を見せてしっかりと甘えさせておけば、子どもの甘え行動はおのずと解決する問題です。もちろん、年齢など関係ありません。「子どもが小学生になっても甘えてきて……」と心配している人もいるかもしれませんが、それは、子どもが必要としている甘えをしっかりとさせていないだけなのです。「子ども発信」かどうかで、「甘やかす」「甘えさせる」を判断子どもは、必要だと感じているから甘えます。そう考えると、親が頭を悩ませる問題のひとつも簡単に解決できます。それは、「甘やかす」と「甘えさせる」の違いがわかりにくいという問題です。言葉の響きから多くの人が感じられることだと思いますが、必要以上に子どもを「甘やかす」ことは、子どもの自立性を育てるうえでもよいことではありません。では、「甘やかす」と「甘えさせる」の違いはどこにあるのでしょうか?それは、「子ども発信」かどうかという点です。子どもが自分から甘えてきたときに、その気持ちに応えてあげる。これは「甘えさせる」になります。一方、子どもが求めてもいないのに甘やかすのは、言葉どおり「甘やかす」になるというわけです。たとえば、小さい子どもが靴を履こうとしているときをイメージしてください。その子は、本当は自分ひとりで靴を履けるにもかかわらず、「お母さん、これ履けないよ、履かせて」と言ってきたならどうですか?本当は自分で靴を履けるのですから、これは明白な甘え行動です。だとしたら、「大事な○○君のためだからね、お母さんが手伝ってあげる」といって靴を履かせてあげればいい。それで、子どもは次の冒険に向けて充電をすることができます。でも、子どもが求めていないのに親が勝手に靴を履かせてあげたり、子どもが「抱っこして」なんて言ってもいないのにかわいいからと抱っこしたりするのは「甘やかす」ことになるので注意が必要です。子どもが甘えてきたときの愛情行動が自己肯定感を高める最後にお伝えしたいのは、「自己肯定感」の話です。自己肯定感は、子どもの健全な発達のために欠かせないものとして頻繁にメディアでも取り上げられるものですから、みなさんも何度となく見聞きしているでしょう。また、「日本人は外国人と比べて自己肯定感が低い」ということを聞いたことがある人も多いはずです。では、なぜ日本人の自己肯定感は低いのでしょうか?その理由は、日本には「大好きだよ」「愛してるよ」といった気持ちを口にしたりハグをしたりする文化がほとんどないからです。子どもに対しても、2~3歳くらいまでならそういった言葉をかけたりハグをしたりするかもしれませんが、小学生や中学生にもなれば、そのような愛情表現をする親はほとんどいないでしょう。でも、子どもの自己肯定感を高めてあげるには、やはり親の愛情表現が大切。特に、子どもが甘えてきたときには、「あなたが大好きだよ」と愛情を表現してあげましょう。恋愛中の女性は、「言葉にしてくれないとわからない!」なんてことを男性によく言いますよね(笑)。子どもに対してもまったく同じことが言えますから、子どもを愛している気持ちをきちんと言葉にしてあげてください。『保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!』てぃ先生 著/マガジンハウス(2019)■ カリスマ保育士・てぃ先生 インタビュー記事一覧子どものイヤイヤを減らすコツは、こっそり○○すること【てぃ先生インタビューpart1】子どもが甘えん坊すぎて困るなら、親はシンプルにコレをすればいい【てぃ先生インタビューpart2】「ひとり遊び」に熱中してこそ、友だちとも遊べるようになるワケ【てぃ先生インタビューpart3】(※近日公開)園生活の様子が心配なら、子どもにこんな質問をしてみよう【てぃ先生インタビューpart4】(※近日公開)【プロフィール】てぃ先生(てぃせんせい)1987年2月8日生まれ。関東の保育園に勤める男性保育士。ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は50万人を超える。著書『ほお…、ここがちきゅうのほいくえんか』(KKベストセラーズ)は15万部、Twitter原作の漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)は20万部を超えるヒットを記録。他に、『ハンバーガグー!』(ベストセラーズ)、『せんせい!きいて! 園児がくれた魔法のことば』(リクルートホールディングス)などの著書がある。現在は、保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディア等で発信。全国での講演活動は年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」の創設と就任など、保育士の活動分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年07月15日子育てにおいて、多くの親の頭を悩ませるもののひとつが、子どもの「イヤイヤ期」です。そもそも、イヤイヤ期にはどんな意味があり、その時期の子どもにはどう接するのがいいのでしょうか。カリスマ保育士として各種のメディアでも活躍する、てぃ先生にアドバイスをもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹ただ成長している子どもに、親がついていけないだけ子どもの「イヤイヤ期」は、一般的に1歳半くらいから始まり、終わりの時期はまちまち。ピークは2〜2歳半です。この時期の子どもにはなにが起こっているのでしょうか?それは、自我の芽生えです。それまではお父さんやお母さんに言われたことに素直に従っていたのに、「そうしたくない!」といった感情や思考が自分にあることに気づき、親の言うことになかなか従わなくなります。もちろん、これは子どもの成長にとって重要なプロセスです。ところが、それまでは人形のように言うことに従っていた子どもが突然歯向かってくるため、親の側はびっくりしてしまいます。子どもはただ順調に成長しているだけなのに、その変化に親がついていけず、親が勝手に困ってしまうという状態になるのです。もちろん、必要な成長のプロセスにいる子どもの側には、「よし、親を困らせてやろう」なんて気持ちはまったくありません。でも、この時期の子どもは、「お父さんやお母さんに負けたくない!」という気持ちはもっています。スーパーでお菓子をねだるのも、そのお菓子を本当に欲しいと思っているわけではなく、親にお菓子を買ってもらうことで、「お母さんに勝った!」という気持ちを得たいがための行動である場合もあるわけです。子どもの「嫌」という言葉に込められた気持ちは?では、イヤイヤ期の子どもに対して、親はどう接するべきなのでしょうか。イヤイヤ期の子どもは、感情や思考が自分にあることに気づくと同時に、たくさんの葛藤やストレスも感じています。なぜかというと、言語能力が未発達だからです。1歳半の子どもでも、頭のなかでイメージしたり考えたりしていることはたくさんある。でも、それらを言葉にする力はまだありません。そのために生じる、「自分はこう思っているのに、わかってもらえない」といった葛藤やストレスが、イヤイヤ行動につながるのです。そこで、子どもの気持ちをわかろうとする努力が必要になります。子どもの「嫌」という2文字の言葉には、どんな気持ちが込められているのか?そこをしっかりと考えましょう。着替えを嫌がっているとしたら、「まだ遊んでいたいから着替えたくない」と思っているのかもしれないし、「この服が好きじゃない」とか「お母さんはまだパジャマのままなのに、なぜ僕だけ着替えないといけないのか」と思っているのかもしれません。そうして、「嫌」という言葉に込められた子どもの気持ちを推測したら、「まだ遊んでいたいの?」「この服が好きじゃないの?」と、どんどん言葉にして投げかけましょう。幼い子どもは自分の気持ちを言葉にできないのですから。子どもの気持ちを推測し、投げかけ、「あなたの気持ちがわかったよ」と共感すれば、子どもの葛藤やストレスは軽減し、イヤイヤ行動も減っていくはずです。こっそり手伝って、子どもに達成感を味わわせるまた、「自分でできた!」「自分で決めた!」という気持ちを子どもにもたせることも大切です。子どもが葛藤やストレスを抱えてしまう要因には、自分の気持ちを言葉にできないことのほか、理想の自分と現実の自分とのギャップも挙げられます。自我が芽生えた子どもは、理想の自分像をもっています。着替えをするにも、「自分はうまくできる!」と思っているわけです。でも、実際にやってみると、袖のほうに頭を入れてしまうなどうまくいきません。その事実に葛藤やストレスを感じてしまうことが、イヤイヤ行動につながるのです。そういった葛藤やストレスを感じさせないように、「自分でできた!」という気持ちをもたせることが大切になります。子どもがうまく着替えられないときに、「じゃ、お母さんがやってあげるね」と言ってあからさまに手伝ったとしたらどうでしょう?「自分はうまくできる!」と思っている子どもに「うまくできなかった……」と感じさせてしまいますよね。また、先にお伝えしたように、「お父さんやお母さんに負けたくない!」と思っている子どもに「負けた……」と感じさせてしまうことにもなる。これでは、イヤイヤ行動は収まりません。そうではなく、こっそりと手伝うことを意識しましょう。着替えだったら、子どもが服に顔を突っ込んでもがいているときに、気づかれないように服を引っ張るなどしてうまく着られるようにリードすればいい。そのタイミングで、お父さんやお母さんから「ひとりで着替えられたね!」と言われたら、子どもは強い達成感と満足感を得られ、イヤイヤ行動は減っていくでしょう。また、「自分で決めた!」という気持ちを子どもにもたせるには、子どもにチョイスさせることを推奨します。イヤイヤ期の子どもは、なんでも自分で決めたいという時期にあります。そこで、「この服を着なさい」と親が決めるのではなく、2パターンでもいいので「この服とこの服、どっちがいい?」と選ばせるのです。そうすれば、「これは自分で選んだ服なんだ、自分で決めたんだ」と子どもは感じて、達成感や満足感を得られます。それでも、子どものイヤイヤ行動に対してつい感情的になって叱ってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、素直に謝りましょう。大人は難しく考えすぎです。「子どもの行動に対して叱ったのに、それを自分から謝るのは変じゃないか」なんて考えるかもしれませんが、子どもはそんな複雑なことを考えていません。親は子どもに対する自分の行動を反省したなら、素直にシンプルに「さっきはごめんね」と謝ればいいのではないでしょうか。『保育士てぃ先生のつぶやき日誌 きょう、ほいくえんでね…!!』てぃ先生 著/マガジンハウス(2019)■ カリスマ保育士・てぃ先生 インタビュー記事一覧子どものイヤイヤを減らすコツは、こっそり○○すること【てぃ先生インタビューpart1】子どもが甘えん坊すぎて困るなら、親はシンプルにコレをすればいい【てぃ先生インタビューpart2】(※近日公開)「ひとり遊び」に熱中してこそ、友だちとも遊べるようになるワケ【てぃ先生インタビューpart3】(※近日公開)園生活の様子が心配なら、子どもにこんな質問をしてみよう【てぃ先生インタビューpart4】(※近日公開)【プロフィール】てぃ先生(てぃせんせい)1987年2月8日生まれ。関東の保育園に勤める男性保育士。ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、フォロワー数は50万人を超える。著書『ほお…、ここがちきゅうのほいくえんか』(KKベストセラーズ)は15万部、Twitter原作の漫画『てぃ先生』(KADOKAWA)は20万部を超えるヒットを記録。他に、『ハンバーガグー!』(ベストセラーズ)、『せんせい!きいて! 園児がくれた魔法のことば』(リクルートホールディングス)などの著書がある。現在は、保育士の専門性を生かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディア等で発信。全国での講演活動は年間50本以上。他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」の創設と就任など、保育士の活動分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年07月13日我が子に立派な人間になってほしい――。そう願うのなら、子どもが好ましくない行動をとったときにはある程度叱ることも必要だと考えるのは当然のことかもしれません。ところが、「基本的に、子どもは叱らなくても大丈夫」と言うのは、株式会社子育て支援代表取締役の熊野英一さん。その真意はどんなものなのでしょうか。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会の正会員でもある熊野さんが、アドラー心理学の観点から教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人ほめるも叱るも、子どもを「操作」しようとしているだけ「ほめて育てる」子育てが注目されている昨今ですが、アドラー心理学に基づく子育てでは、基本的に子どもをほめません。それなら、子どもを叱り飛ばしてばかりいるのかというとそうではなく、アドラー心理学では子どもを「叱らない」ことも大切にしています。子どもをほめないのは、「子どもを自分の思い通りにしよう」という「操作」の下心によって親子の信頼関係が壊れてしまわないようにするため。または、ほめすぎることで子どもの人格形成に悪影響を与えないようにするためです(インタビュー第3回参照)。では、「叱る」という行為はどうかというと、これもまた「操作」なのです。親が怒りやイライラなどの感情を子どもに対してぶちまけて叱ることには、「怖い顔をして大きい声を出せば、この子は言うことを聞くだろう」といった、操作の下心があります。その点で、叱ることもほめることと同様に、親子の信頼関係を壊してしまう危険性をはらんでいるのです。ほめるのも叱るのも、親が子どもを思い通りに操作するための作戦の違いに過ぎません。子どもに早く起きてほしいとき、多くの親は、「いい子だから、早く起きようね」と、まずほめる作戦から始めます。そして、どんどん時間が過ぎていくと、「なにやってるの!早く起きなさい!」と今度は叱る作戦を使うという具合です。もちろん、ほめることも叱ることも、たいていは子どものためを思っての親の行動です。「我が子にきちんとした人間に育ってほしい」と思って、ほめてみたり叱ってみたりと、親は一生懸命なのです。でも、結果はというと……親子の信頼関係を壊してしまったり、子どもの人格形成に悪影響を与えてしまったりと、あまり好ましくない方向に向かいます。つまり、その作戦自体が間違っていると考えるべきです。怒りではなく、「一次感情」を落ち着いて伝えるでは、どうすればいいのでしょう?その答えは、子どもの言動に対する怒りやイライラの感情の前にある、「落胆」「心配」「不安」「寂しい」「悲しい」といった一次感情に着目することです。怒りをそのまま子どもにぶつけるのではなく、怒りに達するほど「あなたを心配しているんだよ」だとか「嘘をつかれると悲しいんだよ」といった一次感情を子どもに伝えてください(インタビュー第1回参照)。すると、子どもの心に響く度合いがまったく違ってきます。「なんで嘘つくの!」と叱り飛ばされるのではなく、「お母さん、嘘をつかれると悲しいな……」と言われたなら?子どもは子どもなりに、「本当に悪いことをしたんだな」と感じて反省してくれるはずです。一方、ただ大声で子どもを叱るようなやり方では、「なにか大声で怒鳴っているな」という事実はわかっても、ではどうしてほしいのかということも、親の素直な一次感情も、子どもには伝わりません。だから子どもは同じ過ちを繰り返し、そのたびにまた親が叱るという悪循環に陥ってしまいます。怒りに飲み込まれないようにして、自分の素直な一次感情を落ち着いて伝えるのです。そうすれば、幼い子どもにもその気持ちは必ずきちんと伝わります。「インタビュアー」になれば、親のやるべきことが見えるそのように、子どもを叱りたくなるときにも落ち着いて子どもと接するために、子どもに対しては「インタビュアー」になることを意識してみてください。子どもが約束を破ったとか嘘をついた、暴力をふるったというような、子どもを叱りたくなる場面では、親はつい裁判官のような「評価者」になりがちです。そうして、「あなたは駄目だ!」と評価を下すことが自分の仕事だと思ってしまうのです。でも、子ども自身からすれば、ただどうしていいかわからなくて、親が叱りたくなるような言動をしてしまっただけということもよくあるケース。友だちにおもちゃを取られて、「返して」という言葉が出てこなくてつい手が出てしまった……。そんなときに、「子どもが暴力をふるった」という事実だけに目を向けて叱るのではなく、インタビュアーになって「なぜ手を出したのか」ということを聞き出してほしいのです。子どもの言動にはその子なりの理由が必ずあります。しっかりと子どもに向き合って話を聞いて、子どもなりの理由を聞き出すことができたら、頭ごなしに叱るのではなく、「そういうときは『返して』って言えばいいんだよ」というふうにアドバイスするなど、親としてやれることがはっきりと見えてくるのではないでしょうか。『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』熊野英一 著/小学館(2018)■ 株式会社子育て支援代表取締役・熊野英一さん インタビュー記事一覧第1回:「○○ファースト」がポイント!アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく第2回:大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険第3回:子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法第4回:つい叱りたくなるときでも、親は「インタビュアー」になれば落ち着いて我が子に向き合える【プロフィール】熊野英一(くまの・えいいち)1972年1月22日生まれ、フランス・パリ出身。株式会社子育て支援代表取締役。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設の立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を設立し、代表取締役に就任。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員。主な著書に『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館)、『アドラー子育て・親育て 家族の教科書 子どもの人格は、家族がつくる』(アルテ)、『アドラー子育て・親育て 育児の教科書 父母が学べば、子どもは伸びる』(アルテ)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月18日子育てにおけるキーワードとして頻繁に見聞きする「ほめて伸ばす」という言葉。ただ、株式会社子育て支援代表取締役であり日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員でもある熊野英一さんは、「ほめて伸ばす」子育てに潜む危険性を指摘します。アドラー心理学に基づく子育てでは、ほめるのではなく、「勇気づける」ことが大切だとされているのだそう。その理由とはどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)親子の信頼関係を壊す、子どもを操作しようとする「下心」アドラー心理学に基づく子育てでは、「ほめない」ことを大切にしています。その代わりに、子どもを「勇気づける」のです。こう言うと、「ほめることで子どもは伸びるのではないか」と思う人も多いでしょう。「ほめ言葉」が駄目だという意味ではありません。大切なのは、親の声かけのなかに「下心」をもたないこと。子どもをほめるときには、どこかで「子どもを自分の思い通りにしよう」という「操作」の下心が入りやすくなるものです。「いい子だから早く寝ようね」「こんなに勉強ができてすごいね!」と言って子どもをその気にさせようとする。そういった操作の下心があると、子どもとの信頼関係をきちんと築けなくなります。なぜなら、親の下心を子どもは敏感に察知するからです。最初は、子どももよろこぶでしょう。お父さんやお母さんから「いい子だね」と言われて嬉しくない子どもはいません。でも、親の下心は、表情やしぐさなどどこかににじみ出るものですから、そのうち必ず子どもにバレます。自分に置き換えて考えてみてください。仕事相手でもプライベートの知り合いでも、妙にお世辞を言うなどしてあなたのことをうまく転がそうとしてくるような人間と、いい関係を築けると思うでしょうか?そんなことはないはずです。ほめすぎることが子どもの人格形成に与える悪影響また、下心をもっているかどうかは別として、子どもをほめすぎることは、子どもの人格形成に悪影響を与えることもあります。ひとつは、「ほめられないとなにもしない子どもになる」ということ。ほめられることが当たり前になるために、ほめてくれないのなら勉強もしない、部屋の片づけもしない、といったことになります。また、「指示待ち人間になる」というのも、ほめすぎることが子どもに与える悪影響です。なぜなら、ほめるという行為の前提は、上下関係があるということだからです。子どもをほめすぎることは、「親は上に立って命令し、結果を評価する人であり、子どもは言うことを聞いたり親に依存したりして、その評価に左右される人」という関係をつくってしまう。その関係のなかで、子どもは指示待ち人間になっていきます。そして、最終的には子どもが「勇気を失ってしまう」ことにもなる。子どもを大げさにほめすぎるような親は、反面、子どもがちょっとしたミスをしたようなときには必要以上に叱りがちです。そういう親は、子どもが勉強の基本問題で正解できたようなときにも「わあ、すごい!」なんて大げさにほめ、「あなたは頭がいいから、応用問題もやってみようか」とけしかけます。でも、子どもは「基本問題だけでいい」とチャレンジから逃げてしまう。なぜなら、難しい応用問題でもいい結果を出せなければ、叱られることを知っているからです。ほめられないとなにもしない、自分で考えて行動できない、チャレンジする勇気がない――そんな子どもが、将来、自立した人生を歩んでいけるでしょうか?答えは考えるまでもなく「NO」ですよね。子どもを認めることが、子どもに「勇気」を与える大切なのは、ただ子どもをほめることなどではなく、子どもをひとりの人間として信頼してリスペクトすることにあります。もちろん、親と子、大人と子どもという立場の上下は存在する。でも、親子でコミュニケーションをするときには、縦ではなく横の関係であるべきです。それは、子どもを「認める」、子どもに「共感する」ことであり、そして子どもを「勇気づける」ことにつながります。テストで100点とったかそうではないのか、スポーツでいいプレーをできたかそうではないのか――そういった子どもがやったことの結果ではなく、子どもの気持ちに関心を寄せるのです。仮に結果がよくなかったとしたら、悔しさや恥ずかしさなど、子どもはさまざまな気持ちを抱いています。その気持ちに共感して寄り添うのです。そして、「じゃ、今度はどうしようか?」「なにか手伝えることはある?」と親が伴走してくれたなら、子どもにとってこれほど頼もしいことはない。きっと子どもは「よし、もう一回やってみよう!」という勇気を手にすることができるはずです。このように、子どもがなにかに失敗した場面でなら、「認める」「共感する」「勇気づける」ための親の振る舞いはイメージしやすいものでしょう。でも、逆に子どもがなにかに成功した場面ならどうでしょうか?それこそ、手放しでほめたくなるものですよね。下心のないほめであればいいですが、やはりほめることに重点は置かないようにしましょう。ほめてあげるよりも、もっと子どもを勇気づけるのは、「自分の気持ち」、そして「感謝」を伝えることです。子どもが打ち込んでいるなにかでしっかり結果を出した。そのとき、お父さんとお母さんから、「すごく嬉しいよ、ありがとう!」と言われた――。それこそが、子どもにとって最高の勇気づけです。『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』熊野英一 著/小学館(2018)■ 株式会社子育て支援代表取締役・熊野英一さん インタビュー記事一覧第1回:「○○ファースト」がポイント!アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく第2回:大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険第3回:子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法第4回:つい叱りたくなるときでも、親は「インタビュアー」になれば落ち着いて我が子に向き合える(※近日公開)【プロフィール】熊野英一(くまの・えいいち)1972年1月22日生まれ、フランス・パリ出身。株式会社子育て支援代表取締役。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設の立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を設立し、代表取締役に就任。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員。主な著書に『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館)、『アドラー子育て・親育て 家族の教科書 子どもの人格は、家族がつくる』(アルテ)、『アドラー子育て・親育て 育児の教科書 父母が学べば、子どもは伸びる』(アルテ)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月16日子育てに関する考え方は家庭それぞれです。「子育てに欠かせないものはなに?」と問われたら、みなさんならどう答えるでしょうか。この問いに、株式会社子育て支援代表取締役の熊野英一さんは「信頼」だと答えます。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員でもある熊野さんが、アドラー心理学の観点から、子育てにおける「信頼」の重要性、その築き方を教えてくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)子どもは、生まれた瞬間から親の「信頼」を確認するみなさんは、自分の子どもを「信頼」していますか?「もちろん!」と思った人もいるかもしれませんが、じつはなかなか難しいことでもあります。でも、子どもを「信用」している人は多いはず。どういうことかと言うと、「信用」と「信頼」はまったく別の意味を持つ言葉なのです。簡単に言えば、「信用」は「条件つきで信じる」こと。対して、「信頼」は「無条件で信じる」ことです。「テストで100点とれたからいい子だね」「早く起きてくれたからいい子だね」――。これらの言葉には条件がありますから、「信用」になります。子どもを信用することも子どもを信じることには変わりありませんが、これらの言葉は、「あなたがいい子であるためには、なんらかの条件をクリアしないとだめだよ」と伝えていることになります。これは、子どもにとってはよくないこと。そうやって条件をつきつけられ続けた子どもは、「もし条件をクリアできなかったら、いい子じゃなくなっちゃう……」と怖がり、さまざまなチャレンジを回避するような生き方しかできなくなってしまうでしょう。子育てにおいては、子どもを無条件で信じる「信頼」こそが大切です。これは、「愛」と言い換えてもいいでしょう。子どもに対する信頼が大切になるのは、子どもが生まれたその瞬間からです。生まれたばかりの子どもは、2歳くらいまでのあいだに親からの「信頼」を確認していきます。一番近くにいる親――たいていは母親の振る舞いから、「この世界は、そして自分は、生きるに値するのか」と確認するのです。赤ん坊は、自分ではなにもできない存在です。それでも、そんな自分に対して母親はあらゆる世話をしてくれる。そのなかで、「ありのままの自分が受け入れられている」「なにも価値を生み出さなくとも、ありのままの自分がすでに価値を持っているんだ」と確認します。それが、その後の人生をしっかり歩んでいくうえで欠かせない重要なステップなのです。親の過剰な期待によって、「信頼」が減り「信用」が増えるもちろん、ほとんどすべての親が、子どもが生まれた瞬間には「この世に生まれてきてくれただけで嬉しい!」と感動し、ありのままの子どもを受け入れ信頼します。ところが、時間が経つにつれて、ほかの子どもや自分の理想の子ども像と現実の我が子を比べ始めてしまう。そうして、「こんなふうに育ってほしい」という思いから子どもに条件を突きつけ、徐々に信頼の割合が減って信用の割合が増えることになるのです。このことは、先にもお伝えしたように、子どもがチャレンジを回避するような生き方しかできなくなるといったデメリットを生みます。さらに、ほかのデメリットとして、親子関係を悪化させることも挙げられます。親は「こんなふうに育ってほしい」と子どもに対して過剰な期待をしてしまいますから、そのあとには必ず「落胆」がある。落胆は、コミュニケーションの大きな障害となる「イライラ」や「怒り」を生む一次感情です。そうして必要以上にイライラや怒りの感情を抱えてしまうことになり、親子関係は悪化してしまうでしょう。そう考えると、子どもをしっかり信頼するための方法のひとつが、前回の記事でお伝えした、まず子どもの気持ちに共感する「共感ファースト」ということになります(インタビュー第1回参照)。子どもの言動にたとえ同意できなくとも、まずは共感する。そうすることが、よりよい親子関係、親子間のコミュニケーション、信頼の構築につながるはずです。子どもに対する強い信頼をつくる「課題の分離」子どもを信頼するためのもうひとつの方法として、アドラー心理学でいう「課題の分離」というものも紹介しておきましょう。「勉強をしない」「きょうだいげんかをする」といった子どもの言動に「イライラする」とき、その主述関係を整理して、課題を親子それぞれにきちんと分けるのです。このケースなら、「イライラする」のは「親」です。つまりこれは「親の課題」となる。一方、「勉強をしない」「きょうだいげんかをする」のは「子ども」ですから、これらは子どもの課題。そのように切り分けて、子どもの課題に親が手出し口出ししないようにするのです。これは、日本を含むアジア圏でとても有効な方法です。小さい子どももひとりの人間として扱う個人主義が強い欧米に比べ、アジアでは「子どもは親が助けてあげなければならない存在」と考えがちです。そのため、子どもの課題も親の課題であるかのように考えて介入したくなってしまう。そうして、必要以上にイライラしていく構造だというわけです。でも、親子それぞれの課題を明確にすれば、そういったことは激減するでしょう。もちろん、子どもが本当に困ってしまって助けを求めてきたなら、助けてあげる必要はあります。でも、そうなるまでは信頼して子どもを見守るべきです。その姿勢が、子どもに対する強い信頼をつくっていきます。『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』熊野英一 著/小学館(2018)■ 株式会社子育て支援代表取締役・熊野英一さん インタビュー記事一覧第1回:「○○ファースト」がポイント!アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく第2回:大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険第3回:子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法(※近日公開)第4回:つい叱りたくなるときでも、親は「インタビュアー」になれば落ち着いて我が子に向き合える(※近日公開)【プロフィール】熊野英一(くまの・えいいち)1972年1月22日生まれ、フランス・パリ出身。株式会社子育て支援代表取締役。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設の立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を設立し、代表取締役に就任。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員。主な著書に『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館)、『アドラー子育て・親育て 家族の教科書 子どもの人格は、家族がつくる』(アルテ)、『アドラー子育て・親育て 育児の教科書 父母が学べば、子どもは伸びる』(アルテ)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月14日家庭教育の話題としても耳にすることが増えている「アドラー心理学」。そもそも、アドラー心理学とはどんなもので、子育ての場面ではどのように生かせるのでしょうか。そのポイントを、株式会社子育て支援代表取締役であり、日本アドラー心理学会/日本個人心理学会の正会員でもある熊野英一さんが教えてくれました。熊野さんは、アドラー心理学の考え方を生かすことにより、親子間のコミュニケーションが格段にスムーズになると言います。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人一般人でも実践的に使えるアドラー心理学アドラー心理学は、心理学の一分野です。その創始者であるオーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーは、フロイト、ユングと並ぶ心理学の3大巨頭ですが、日本ではほかのふたりと比べて少しマイナーな存在でした。それが大きく変わったのが、2013年。アドラーの教えを伝える書籍『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社/岸見一郎・古賀史健 著)が大ヒットしたことで、日本にもアドラーの名が知れわたったのです。もちろん、アドラー心理学が注目を集めるようになった要因は、書籍のヒットだけではありません。なにより、その使い勝手の良さが大きかったと思います。アドラー心理学は、非常にシンプルでわかりやすい理論のため、子育てのほか、夫婦関係や職場での人間関係など、さまざまな対人関係に適用しやすいのです。では、アドラー心理学とは具体的にどういうものなのでしょうか。アドラーは、簡単に言うと、「どうすれば人は仲良くできるのか」ということを追求した人です。アドラー以前の心理学は、基本的に、心の問題を抱えている人を精神分析したりトラウマなど心の闇をまさぐったりして、「問題の原因を解明していく」というスタンスでした。でも、それでは即座に問題を解決することは難しい。いままさにけんかしている目の前の人とどうすれば仲直りできるのか、これから仲良くできるのか――。アドラーはそこにフォーカスしました。だからこそ、心理学について特別に学んでいない人たちであっても実践的に使える心理学として、アドラー心理学の注目度がどんどん増しているのだと思います。「子育ての最終目標」とは「子どもを自立させる」ことそのアドラー心理学の観点から、「子育ての最終目標」とは「子どもを自立させる」ことだと私は考えています。普通に考えると、親は子どもより長く生きることができません。そうであるなら、子どもが親から離れて自活し、自らの幸せをつかめるような人間に育てること、すなわち自立させることが親の役割だと言えます。また、自立に加えて、もうひとつの大事なキーワードが、アドラー心理学の専門用語で「共同体感覚」と呼ぶものです。わかりやすく言うと、「公共心」とか「思いやり」になるでしょうか。どんな人間にとっても自分は大事ですから、必要以上に自分を犠牲にする必要はありません。その一方で、社会生活を営む人間としては、「自分さえよければいい」という考え方はNGでしょう。自分を大事にして自らの幸せを追求しながらも、困っている他者に対して手を差し伸べることができる感覚――。共同体感覚を誰もがもっていたとしたら、その社会はきっとハッピーであるはずです。そういう点では、自分も他者も大事にできる共同体感覚をもっている人間が、自立している人間だと定義できるかもしれません。もちろん、アドラー心理学を学んだ経験がない人でも、親であれば誰もが「子どもに自立してほしい」「自分も他人も思いやれる人になってほしい」と願うものでしょう。ところが、実際の子育てとなると、さまざまな問題に直面します。その筆頭が、子どもに対する「イライラ」や「怒り」の感情ではないでしょうか。親は子どもを愛しているからこそ、イライラしてしまうでは、イライラや怒りとはなにか?それらは、心理学的には「二次感情」と呼ばれるものです。でも、二次感情以前に別の感情である「一次感情」があります。それらが増大して沸点に達した結果、イライラや怒りになるのです。代表的な一次感情は、「落胆」「心配」「不安」「寂しい」「悲しい」の5つ。「いい子に育ってほしい」と期待しているから落胆がある。「健康でいてほしい」と願うから心配するし不安にもなる。子どもと離れると寂しいし、子どもと愛し合えなくなったら悲しい。どれも親が子どもに対してもちやすい感情ですよね。つまり、これらの感情は親としての子どもへの愛情とセットのものです。親はみんな子どもを愛しています。だからこそ、一次感情が膨らんでイライラや怒りを抱えてしまうのです。つまり、親が子どもに対してイライラや怒りを覚えるのは当然のこと。問題は、親の気持ちの伝え方にあるのです。二次感情のイライラや怒りをそのままぶつけるから、親子関係がうまくいかなくなる。そうではなく、冷静に一次感情を伝えることを考えましょう。親子間に欠かせない「共感」は、「同意」とはまったくの別物そして、それ以前に子どもの話をきちんと聞くことを心がけてください。その際のキーワードとなるのが、「共感ファースト」。まずは子どもの話を聞いて、その思いに共感することが重要なポイントです。ただ、注意してほしいのは、「共感」と「同意」はまったく別物だということ。「共感=同意」だと考えると、すべて子どもの言いなりになるしかありません。それではやはり、親としては納得できない。「同意できないから、私は共感もしない」と考えてしまい、きちんと子どもの話を聞いてあげられなくなり、親子間の衝突が起きるのです。同意しなくてもいいのです。でも、まずは共感してみましょう。たとえば子どもが友だちに暴力をふるったとします。その行為自体はいいものではありませんから、絶対に同意はできないでしょう。でも、その行為の裏には、暴力をふるってでも守りたかった自分の正義があったのかもしれない。その本心をきちんと聞いて共感してあげないことには、子どもはいつまでたっても「どうしてわかってくれないんだ!」と親に対して不信感を募らせるだけです。でも、親がしっかり子どもの話を聞いて共感してくれたら、「お父さん、お母さんは、自分のことを本当にわかろうとしてくれているんだ」と子どもは思いますよね。そうすれば、そのあとのコミュニケーションもスムーズになる。「あなたの気持ちはよくわかった、でもやっぱり暴力はよくないと思う」と同意できないことを伝えても、自分に共感してくれた親の言葉になら、子どもは素直に耳を傾けてくれるはずです。『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』熊野英一 著/小学館(2018)■ 株式会社子育て支援代表取締役・熊野英一さん インタビュー記事一覧第1回:「○○ファースト」がポイント!アドラー心理学で親子間のコミュニケーションがうまくいく第2回:大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険(※近日公開)第3回:子育てでは“ほめないこと”が大切なわけ。アドラー流・子どもを「ほめずに勇気づける」方法(※近日公開)第4回:つい叱りたくなるときでも、親は「インタビュアー」になれば落ち着いて我が子に向き合える(※近日公開)【プロフィール】熊野英一(くまの・えいいち)1972年1月22日生まれ、フランス・パリ出身。株式会社子育て支援代表取締役。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本人事部門に勤務後、米国Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。約60の保育施設の立ち上げ・運営、ベビーシッター事業に従事。2007年、株式会社子育て支援を設立し、代表取締役に就任。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員。主な著書に『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館)、『アドラー子育て・親育て 家族の教科書 子どもの人格は、家族がつくる』(アルテ)、『アドラー子育て・親育て 育児の教科書 父母が学べば、子どもは伸びる』(アルテ)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月12日子どもに対して、「勝手に育ってくれ」なんて思っている親はまずいません。親それぞれに理想の子育てがあるからです。そのため、自分の理想から外れるようなことを子どもがすると、どうしても親子でぶつかりがち。アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練プログラム「親業」のインストラクターである親業訓練協会の瀬川文子さんは、親子間の問題を解決するには「勝負なし法」がベストだと言います。しかも、この方法には子どもの創造性を伸ばすというメリットもあるのだそう。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人親子間における問題の解決法は3種類「親業」においては、親子間における問題を解決するには3つの方法があると考えています。よく使われるのが、親の意見や考えを無理やり子どもに押しつけて従わせる方法です。これをわたしたちは、「第1法」と呼んでいます。一方で、スーパーで子どもに「お菓子が欲しい」と駄々をこねられ仕方なく親が従うということもある。これは、子どもが自分の考えを押し通したケースで、「第2法」と呼ぶものです。これら第1法と第2法には、勝ち負けが存在します。第1法なら親が勝ちで子どもが負け、第2法なら子どもが勝ちで親が負け。これら勝ち負けがある「勝負あり法」は、力技です。力を使われて負けたほうは、勝ったほうに対してもどうしても不満を持ってしまう。そのため、いい関係を築きにくくなります。でも、3つ目の問題解決の方法である「第3法」と呼ぶものは、勝ち負けがない「勝負なし法」です。この方法では、本来、子どもより力を持っている親は、その力を使わずに子どもとの話し合いのテーブルにつきます。いわば、横並びで対等になるわけです。そして、子どもと同じ目線に立ち、互いが納得できる解決策を話し合いながら探していくのです。もちろん、子どもの側も子どもなりに考えて解決策を出します。そのため、互いに不満が残らないのです。「勝負あり法」が子どもの育ちに与える悪影響もちろん、「勝負なし法」で親子間の問題を解決することが信頼関係を強めます。第1法、第2法では、親子のどちらかに不満が残ること以外にも、大きなデメリットがあります。それは、子どもの育ちに悪影響を与えるということ。第1法では、指示命令によって親の言いなりに子どもを育てることになります。そのため、子どもは、「言われたことはやるけど、言われなければやらない」という、いわゆる「指示待ち人間」になってしまうでしょう。これからの時代に大切だとされる、自立心や主体性がまったく育たないということになりかねません。また、第2法の場合には、子どもは常に自分の要求が通るために、すごくわがままで傍若無人に育ってしまう可能性を秘めています。もちろん、その要求を親だけに向けるのではなく、友だちなどまわりの人にもそうするでしょう。それでも、未就学児の頃までならなんとか社会生活ができるかもしれません。でも、小学校に入学したらそうはいかない。先生からは叱られ、友だちには嫌われる……。そうして、不登校になるといったことだって否定できません。さらに、第2法を使い続けると、年齢に応じて要求が大きくなることも問題です。スーパーでお菓子をねだるくらいならまだかわいいものですが、10代も後半となったら、バイクや自動車をねだるといったふうに要求はエスカレートするでしょう。そのときになって「これじゃ駄目だ」と慌てて第1法に変えようものなら、それこそ親子間のバトルが勃発してしまいます。子どもが一生懸命に考えることで、創造性が伸びる一方、「勝負なし法」である第3法の場合には、親子双方に不満が残らないことのほかにもメリットがあります。それは、子どもの創造性が伸びるということ。なぜなら、子どもが自分で「どうしたらこの問題を解決できるんだろう?」と一生懸命に考えるからです。いろいろな経験があるために「こういうケースはこうするべきだろう」と考えがちな親よりも、むしろ子どものほうがよほどおもしろくて自由な解決策を提案するということも珍しくありません。これは親子が衝突したケースではありませんが、かわいらしくて楽しいエピソードをひとつ紹介しましょう。わたしたちが行なっている親業訓練講座(インタビュー第1回参照)を受講したお母さんから聞いたお話です。そのお母さんには3人の子どもがいます。そして、問題となっていたのが、「寝るときにお母さんの隣を3人の子どもが取り合う」ということでした(笑)。子どもは3人なのに、お母さんの隣はふたつしかありませんからね。どうすればいいかと話し合ってみると、子どもたちは、じつにおもしろくて自由な解決策をどんどん提案しました。たとえば、「ひとりはお母さんの上で寝る」とか。それから、「みんなで寝られる大きい布団を買う」という意見も。その子の視点からは、同じ布団に入っていたら隣で寝ているという感覚なんですね。そんな発想は大人にはありません。このケースのように、なにか問題が生じたとしても「勝負なし法」によって子どもの発想を面おもしろがるような姿勢が、親子間の問題解決には大切なのかもしれません。子どものおもしろい発想に親が笑ってしまったら、それこそ衝突どころではありませんからね。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月10日「何度言っても子どもが言うことを聞かない」「いつも同じことで叱っている気がする」――。これはもう、親にとっての「あるある」でしょう。そういうことが起こる原因はどこにあるのでしょうか。アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練プログラム「親業」のインストラクターである親業訓練協会の瀬川文子さんに、対処法と併せて教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)「あなた」を主語にした叱り方が子どもの反発を招くNGな叱り方をひとことで言うと、「『あなた』を主語にした叱り方」です。子どもを叱るのは、たいてい子どもの行動に対して親が気に入らないとき。すると、「どうしてそんなことするの!」というふうな表現になります。主語を省略することが多いのが日本語の特徴であるためにわかりづらいかもしれませんが、これは、「(あなたは)どうしてそんなことするの!」と、「あなた」を主語にした叱り方です。「(あなたは)なにやってるの!」「(あなたは)またそんなことして……」も同様。そして、これら「あなた」を主語にした叱り方には、相手を責めるニュアンスが強く含まれます。そのため、責められたほうは言い訳をしたり反発したりしたくなるのです。親からしたら気に入らない行動も、子どもからすれば「親に迷惑をかけてやろう」なんて思ってやっているわけではありません。汚れた靴下を脱ぎっぱなしにしたのもただ忘れてしまっただけとか、おもちゃを片づけないのも夢中になって遊んでいるうちに結果的に散らかってしまっただけということがほとんどでしょう。そこで、「まったくこの子は!」というふうに子どもを責めるのはお門違いです。叱るときは、怒りではなく「第一次感情」に注目そうではなくて、親は「(私が)困っているんだ」ということを丁寧に子どもに伝えていかなければなりません。「私」を主語にした「私メッセージ」で子どもに感情を伝えることが大切なのです。そうすれば、子どもは親の感情をきちんと受け取って、行動を変える可能性が高くなります。でも、親も自分の感情にはなかなか気づけないものです。私たちが行なっている親業訓練講座(インタビュー第1回参照)の受講者のみなさんに、「私メッセージ」をつくる練習のために、親子にありがちなシチュエーションのなかでの自分の感情を挙げてもらうと、「嫌だ」「困る」「イライラする」くらいなもの。普段からそこに注目していないために、自分の感情が見えなくなっているわけです。でも、感情がそんなに単純なものだけであるはずはないですよね?そこで、自分の感情に注目するトレーニングをしましょう。注目してほしいのは、いわゆる「第一次感情」です。子どもを叱るとき、多くの親は先に挙げた3つの感情などを含む「怒り」を感じています。でも、怒りというものは、たいてい別の感情の次に湧いてくるもの。その怒りより先に湧いてくる感情こそが第一次感情です。子どもが遊園地で迷子になったとします。親が最初に感じる感情はなにかといったら、当然「心配」や「不安」でしょう。「どこに行っちゃったんだろう……」と親なら誰もが我が子を心配して不安になる。でも、子どもが無事に見つかったら、最初にどんな言葉をかけるかというと……「(あなたは)なにやってんの!」です。これでは、心配されていたことがわからないまま、怒られたという事実だけが子どもの印象に残ってしまう。つまり、親子間のコミュニケーションにとって好ましくない誤解を生むことになるのです(インタビュー第1回参照)。親の「私メッセージ」が、子どもの「思いやり」も育むもちろん、場合によっては叱らなければならないこともあるでしょう。でも、その前にまずは親の心配や不安といった第一次感情を「私メッセージ」で伝えるほうが効果的です。そうすれば、叱られた子どもに親の気持ちがしっかり伝わり、子どもの反省の度合もまったく違ってきます。それこそ迷子になった子どもが見つかったときであれば、親に「よかった、すごく心配して不安だったのよ」と言われたなら、子どもも「こんなに心配させてしまうんだったら、今度から気をつけよう」と思うでしょう。そのあとのお説教も素直に聞いてくれるはずです。最後に、子どもの行動や言葉が嫌だなと思ったときの、「私メッセージ」の伝え方のコツを紹介しておきます。以下の「3部構成」にすることが効果的です。【「私メッセージ」のコツ】子どもの行動:非難がましくなく、目に見える、耳に聞こえる事実を伝える行動から受ける自分への影響:できるだけ具体的に伝える私の感情:正直に素直に伝えるこの「3部構成」で「私メッセージ」を伝えることにより、子どもは自分の行動が親を困らせたり悲しませたりすることを理解できるようになる。ひいては、他人に対する「思いやり」を育むことにもつながります。そのためにも、「こうしてちょうだいね」という言葉をつけ加えて「4部構成」にしないことです。それでは結局、指示命令になってしまい、子どもの思いやりが自発的に生まれることを阻害することになりますから注意してください。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響(※近日公開)【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月08日アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練のプログラム「親業」。そのインストラクターである親業訓練協会の瀬川文子さんに、具体的なメソッドを教えていただきます。今回、取り上げるポイントは、「聞き方」です。瀬川さんは、「子どもが育っていく過程において、親による話の聞き方は非常に重要」だと言います。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカット)聞き方には「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」がある「親業」においては、聞き方には「受動的な聞き方」と「能動的な聞き方」の2種類があるとしています。受動的な聞き方とは、子どもがなにかを話しているときに「相づちを打つ」「黙って聞く」「話が止まったら促す」といったことを指します。これも、親子間のコミュニケーションにおいては大切なことです。でも、受動的な聞き方が適さないケースもあります。子どもが深刻な悩みを打ち明けているのに、親が「へえ」「ふうん」とただ相づちを打っているだけだとしたらどうでしょうか?子どもは、自分の言っていることがきちんと親に伝わっているのか、親が自分を受け入れてくれているのかがわからず、不安に陥ります。そのような不安を招かないために効果的なのが、「能動的な聞き方」です。能動的な聞き方とは、「あなたの話を私はこう理解したけれど、それで正しい?」というふうに、相手に確認する聞き方のこと。具体的には、「相手の言葉を繰り返す」「言い換える」「相手の気持ちを汲む」です。子どもに問題や悩みを客観視させる「能動的な聞き方」じつは、この聞き方は、カウンセラーがよく使うものです。カウンセラーは、基本的に依頼者の話を聞くだけで、解決策を与えることはしません。与えなくとも、この能動的な聞き方によって依頼者自身が解決策を見いだすことができるからです。友だちと喧嘩したことを悩んでいる子どもが、どうしたらいいかと親に相談していたとします。そこで、「いまのあなたの話って、こういうことだよね?」と親から確認されると、子どもは自分の悩みや問題、喧嘩の経緯を鏡で見ているような状態になる。そのために、「僕の言葉にも悪いところがあったかも……」といったふうに客観視ができ、「じゃ、どうしたらいいんだろう」と子どもが自分で考えて解決策を導き出すことができるのです。もちろん、ただ能動的な聞き方をすればいいわけではありません。子どもが悩みを打ち明けているようなケースなら、それこそ子どもの気持ちに共感してあげる必要がある。それなのに、親業をちょっと学んだ人のなかには、表面的なテクニックに走る人も見受けられます。能動的な聞き方の具体的な方法は、「相手の言葉を繰り返す」「言い換える」「相手の気持ちを汲む」ことだとお伝えしました。このなかで一番簡単なものが「繰り返す」ですよね。そのため、「なんでもかんでも子どもの言葉を繰り返せばいい」と考える人もいるのです。でも、子どもが困っているケースにもいろいろなものがあります。これは少し極端な例えですが、先の予定がわからなくて困っている子どもから、「お母さん、来週の予定ってどうなってたっけ?」と聞かれたのに、それを繰り返したところでなんの解決にもならないですよね。あるいは、子ども自身が親の考えを見抜くということもあります。ただ表面的にテクニックを使って「とにかく繰り返せばいいや」と思っていたら、そのいい加減な気持ちは表情や声のトーンなどどこかに出てくるものです。子どもは敏感ですから、そういうサインを見逃しません。そのため、むしろ親子の信頼関係を壊してしまうことにもなりかねないのです。気持ちを3つに整理して、親がやるべきことを知るそんな悲劇を招かないためにも、「気持ちを整理する」ことを意識しましょう。親業においては、気持ちを大きく3つに分けて考えます。その分類基準は、「自分(親)が受け入れられるか受け入れられないか」ということ。子どもが汚れた靴下を脱ぎっぱなしにしていることを「嫌だなあ」と思ったら、それは親としては受け入れられない――「非受容」の行動として整理します。非受容の行動については、「嫌だなあ」と思っているのは親ですから、親自身がきちんと表現しない限り子どもには伝わりません。だから、「靴下を脱いだままにされると困るんだよね」というふうに表現する必要がある。非受容の行動についてはきちんと表現しなければならないのだと自動的に判断できます。一方、受け入れられる――「受容」に整理したもののなかにも、親は嫌ではなくても子どもが嫌だと思っていたり困ったりしている行動もあります。これが2つめの分類です。たとえば、子どもが「お母さん、抱っこして」と言ってきたとします。「嫌だなあ」と思う親はほとんどいませんよね?でも、子どもの様子をよく見ると、なんだかいつもと違って元気がない。「なにか嫌なことがあったのかも」「困っていることがあるのかな」というふうなサインをキャッチできたら、今度は逆に子どもの話を聞くことで問題の解決を図れます。要は、誰が困っているのかを親自身の感じ方で整理し、対応を決めるのです。もちろん、親子ともに困っていない行動もあります。これが3つめの分類です。この行動に関しては、親子ともに落ち着いている状態ですから、特にやるべきことはありません。自由になんでもできる状態といっていいでしょう。このように、「親は子どもの行動に困っている(非受容)」「子どもが困っている(受容)」「親も子も困っていない(受容)」の3つに気持ちを整理することで、親が話すのか、子どもに話を聞くのか、特になにも気にしなくてもいいのか、やるべきことが明白になるのです。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して(※近日公開)第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響(※近日公開)【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月06日どんな親も、我が子との関係をよりよいものにしたいと思っているもの。ですが、子育てをするなかでは、「子どもを思っての言葉なのに、反発ばかりされる……」という経験をして、「子どもへの愛情が伝わっていないのではないか?」と感じることもあるはずです。その問題解決の鍵を握るのは「双方向」のコミュニケーションだと語るのが、「親業」というコミュニケーション訓練プログラムのインストラクターである瀬川文子さんです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人「子どもがどう育つか」ではなく、「親がどう育つか」「親業」とは、アメリカの臨床心理学者であるトマス・ゴードン博士が、心理学、教育学、発達心理学をベースに開発したコミュニケーション訓練のプログラムです。この親業には、ほかのプログラムにはない大きな特徴があります。子育てに役立つとされるほかのプログラムの場合、そのほとんどが「子どもをどう育てるか」という視点でつくられているものです。一方の親業は、「親がどう育つか」という視点でつくられています。親自身が学んで成長することで、子どもとの接し方や関係を改善できるというわけです。このプログラムを開発した当時、ゴードン博士はカウンセラーとして活躍していました。そのため、いわゆる非行少年と呼ばれる子どもたちに接する機会が多くあったそうです。ところが、家や学校では問題児扱いされてカウンセリングを受けさせられることになった子どもたちに会ってみると、子ども自身にはまったくおかしなところがないと感じることが多かったといいます。そして、むしろ親や教師の対応の仕方に問題があるために子どもが反発しているのではないかと考え、親向けのコミュニケーション訓練プログラムを開発するに至ったのです。この親業訓練講座(Parent Effectiveness Training)は、1962年にアメリカのカリフォルニアで開催されたのをきっかけにして全米に広がり、現在では世界50カ国に広まっています。日本では、ゴードン博士の著書『親業 子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方』(大和書房)を翻訳された近藤千恵氏が設立し、私も運営に関わっている親業訓練協会が、1980年から講座を提供しています。コミュニケーションの仕方次第では、愛情は伝わらない親子間のコミュニケーションにおける問題には、じつにさまざまなものがありますが、親業の視点から見て大きな問題のひとつだと感じるのが、「子どもが問題に直面したときに、親が性急に解決策だけを与えようとする」ことです。子どもが悩んだり困ったりしていれば、子を愛している親なら助けたくなって当然です。すると、子どもよりはるかに多くの経験をしている親には、「こういうときはこうすればいい」というふうに解決策が見えます。そして、親が考える解決策や意見を子どもに押しつけ、なるべく早く子どもの問題を解決させてあげようとしてしまうのです。もちろん、その言動は子どもへの愛情からくるものです。でも、子どもからすれば、自分が悩んだり困ったりしている気持ちをまったく受け取ってもらえないまま、「こうしなさい」とただ解決策だけが押しつけられたに過ぎません。そのため、どうしても反発や抵抗をしたくなるのです。大人だって同じではないですか?悩んだり困ったりしているときは、悩みを解決したいという気持ちはもちろんですが、なによりまず「誰かに話を聞いてもらいたい」と思うものでしょう。親は、子どもにとってのその「誰か」になってあげなければなりません。「一方向」のコミュニケーションが誤解を生じさせるでは、親業のトレーニングを積んだあとには、子どもとどんな関係を築いていけるのでしょう。大きなメリットとして、「誤解が減る」ことが挙げられるでしょうか。親業訓練講座では、実際の生活のなかで使えるように、さまざまなシチュエーションを想定し、参加者が親役になったり子ども役になったりしながらロールプレイのトレーニングを数多く行ないます。そのトレーニングにより、親子間で「双方向」のコミュニケーションができるようになります。すると、たとえば先に挙げた子どもが悩んだり困ったりしているケースなら、「子どもを愛しているから、早く問題を解決してあげたい」という親の気持ちと、「話を聞いてほしいだけなのに、意見を押しつけられた」という子どもの気持ちのすれちがい――すなわち誤解を減らしていけるのです。逆に、コミュニケーションが「一方向」の場合には、親子間に誤解が生じます。たとえば、子どもに対する「早く起きなさい」「歯を磨きなさい」「宿題をしなさい」という指示命令の言葉がそれにあたります。これらももちろん、子どもを思っての言葉ですが、完全に一方向のものですよね?そのため、子どもには「なぜそうするべきなのか」という理由や、親が子どもを思う愛情は伝わりません。そうした誤解だらけのコミュニケーションを続けていると、子どもが思春期になった頃には、親がなにを言っても「うるさいないあ」としか反応しないようなことになってしまうでしょう。でも、双方向のコミュニケーションにより親子間に強い信頼関係ができていれば、子どもも不要な反発や反抗はしません。このことは、私自身が実感しています。息子が中学生くらいのとき、普段の口調は少し生意気になっても、本当に困ったときは私に相談をしてくれました。普段からの双方向のコミュニケーションの積み重ねにより、息子は「僕が悩んだり困ったりしたときには、お母さんはちゃんと向き合って話を聞いてくれる、僕の気持ちを理解しようと努力してくれる人なんだ」と思ってくれていたはずです。そんな関係性を築き、子どもが親を頼ってくれることは、間違いなく親としての大きな喜びとなるでしょう。『あっ、こう言えばいいのか! ゴードン博士の親になるための16の方法 家族をつなぐコミュニケーション』瀬川文子 著/合同出版(2013)■ 親業訓練協会インストラクター・瀬川文子さん インタビュー記事一覧第1回:子どもが反発ばかり……親子関係の問題を劇的に改善する「双方向」のコミュニケーションとは第2回:繰り返す、言い換える、気持ちを汲む。親の「能動的な聞き方」が、子どもを問題解決に向かわせる(※近日公開)第3回:「私メッセージ」の叱り方で子どもが変わる! 親は怒りではなく“第一次感情”に注目して(※近日公開)第4回:親子の衝突を解決するには「勝負なし法」がベスト。勝敗を決めるのは、子どもの育ちに悪影響(※近日公開)【プロフィール】瀬川文子(せがわ・ふみこ)1954年8月28日生まれ、東京都出身。親業訓練協会シニアインストラクター。1973年、日本航空に客室乗務員172期生として入社。14年間の国際線勤務の後、結婚のために退社。1998年、コミュニケーション訓練のプログラム「親業」の指導員資格を取得。2002年、CAP(子どもへの暴力防止プログラム)スペシャリストの資格を取得。2003年、親業シニアインストラクターの資格を取得。2006年、『ママがおこるとかなしいの』(金の星社)で絵本作家としてデビュー。同年、親業訓練協会インストラクター養成担当となる。2015年、日本アンガーマネジメント協会ファシリテーターの資格を取得。現在は、親業訓練協会の運営に関わりながら、医療、介護、教育の各機関、企業、家庭を対象に、「想いが伝わるコミュニケーション」を軸とした講演会等を全国各地で行うなど活躍の場を広げている。主な著書に、『聞く、話す あなたの心、わたしの気もち いじめない、いじめられない子どものためのコミュニケーション』(元就出版社)、『ほのぼの母業のびのび父業 ゴードン博士に学ぶ 21世紀の家庭へ わかりあえるコミュニケーション訓練』(元就出版社)、『職場に活かすベストコミュニケーション ゴードンメソッドが職場を変える』(日本規格協会)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月04日みなさんは「しつけ」をどのようにとらえているでしょうか。その言葉の響きから、「子どもを押さえつけるもの」といったイメージを持っている人もいるかもしれません。そうであるなら、子どもが自ら考えて行動する「自主性」とは対極にあるものとも言えます。ところが、幼稚園の園長を務めた経験もある東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生は、「しつけこそが、子どもの自主性を育てる」と語ります。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子「しつけ」と子どもの「自主性」は対極にあるものではない子育て中の親御さんから耳にする言葉に、「しつけもしっかりしたいけど、子どもの自主性も育てたい」というものがあります。この言葉には、大きな間違いがあります。「しつけとは親が子どもを押さえつけるもので、それによって子どもの自主性が育たないのではないか」という大いなる勘違いをしているようです。この、「しつけによって自主性が育たなくなる」というのは完全に間違いです。なぜなら、しつけというのは、最終的には子どもが自分自身でこの世の中を生きていける力、つまり、自主性を育てるためにあるものだから。しつけと子どもの自主性は、対極にあるものではないのです。しつけによって社会のルールや価値をきちんと知ることができた子どもは、それに基づいて自信を持って自分を出していけます。また、なかには居心地の悪い社会のルール、変えていかなければならない社会のルールもあるでしょう。そこで、その悪いルールを変えていこうと自ら動き始めることもできる。それもまた自主性が育っているからこそできることです。まずはしつけによって社会のルールを知ることが大切です。でも、そのなかに留まっている必要はありません。社会のルールを知り、それを行動基準としながらも、なおかつそれを、自主性を持って乗り越えていく。そういうことが、人間らしく生きていくにはとても重要なのではないでしょうか。自主性が育つベースにある自己肯定感と自己信頼ただ、大切となるのは、しつけによって社会のルールや価値を子どもに教えることだけではありません。なぜなら、子どもの自主性が育つには、そのベースとして子どもの自己肯定感や自己信頼が必要だからです。ですから、子どもがなにかを自分からすすんでやってくれたようなときには、そのことを認めてしっかりほめてあげることが大切になります。いま、「ほめる子育て」に対しては研究者によってさまざまな意見がありますが、わたし自身は、叱り続けるような子育てよりは、ほめる子育てのほうが絶対に子どもは伸びるというふうに考えています。これはもう、基本原理と言っていいでしょう。臨床心理学でも教育学でも、さまざまな研究が「ほめる子育てがいい」ということを示しています。ですから、まずは子どもをほめることを考えるべきです。もちろん、子どもがやることのなかには好ましくないこともあるでしょう。誰もが認める社会の基本的なルールから逸脱してしまうようなことです。そんなときには、きちんと叱ってあげることが大切。怒鳴りつけるように叱るのではなく、その都度、「こういうことはやらないほうがいいよ」「お母さんはこうしてほしくないな」といったようにマイルドにメッセージを伝えてあげるのです。そういう子育てをすれば、子どもは悪く育ちようがないと思うのです。自己肯定感と自己信頼が低い子どもは問題行動を起こす逆に言えば、自己肯定感や自己信頼が非常に低い子どもは、いろいろな問題行動を起こしてしまう傾向にあります。「自分なんてどうでもいいや……」と投げやりになっていて、「自分はできるんだ!」と思えない。だからさまざまな問題行動を起こすし、自主的になにかにチャレンジすることもできません。すると、問題行動を起こしてまた厳しく叱られ、さらに自己肯定感や自己信頼が下がってしまうという悪循環に陥ることにもなりかねないのです。この自己肯定感や自己信頼が大切だということは、大人であるみなさん自身に置き換えても想像しやすいものであるはずです。一生懸命に仕事や家事、子育てを頑張っているのに、パートナーから「あなたは全部だめ」「いいところはなにもない」なんて言われたとしたらどうですか?せっかく頑張っていた仕事や家事、子育ても投げ出したくなりますよね。それこそ、まだ自分自身でできることが大人に比べて少ない子どもに対しては、しっかりとほめてあげて、「自分はお父さんとお母さんに大事にされている!」「自分はいまの自分であっていいんだ!」「僕には自分でできることがある!」と思わせてあげることがなにより大切なのです。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年06月02日「先回り」をする親が増えている――子育てや家庭教育関連のメディアで頻繁に目にする内容です。それらのメディアは、「先回りはよくないもの」として扱っていることが多いよう。ただ、「先回りにも『いい先回り』と『悪い先回り』がある」と言うのは、幼稚園の園長を務めた経験もある、東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生。その真意を教えてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子(インタビューカット)社会の情報化と少子化が招いた、先回りする親の増加いま、「先回り」をする親、「手出し口出し」をする親が増えていると言われています。このことには、社会の情報化が進んだことが大きく影響しているのでしょう。以前と比べれば、インターネットなどを介して子育てに関する情報に触れる機会が増えましたよね。それらのたくさんの情報に基づいて、「最高の子育てをしたい!」と考える親が多いのです。また、少子化もそういった親が増えていることの一因でしょう。むかしのように4人も5人も子どもがいれば、子どもひとりひとりの子育てに十分に手をかけられません。でも、いまは子どもがひとりかふたりですから、「絶対に子育てを成功させなければならない」といった意識が強く働き、「こうあるべき」「こうしなければならない」というふうに考え、先回りや手出し口出しをしまうのです。でも、子どもは親の思うとおりに育ってくれません。子育てというのは、子ども自身の発達がまずベースにあります。それに対して親がどのような働きかけをするかで、子どもがどんなふうに成長していくかが決まるのです。いくら親が「バイオリニストにしたい」「学者にしたい」と思ったところで、そうなる可能性は高くはありません。ですから、親にとって重要となるのは、子どもをしっかりと見て、子どもが持つ可能性を最大限に伸ばす働きかけをすること。そのことを第一に理解してほしいと思います。子どもから学びのチャンスを奪う「悪い先回り」さて、親の先回りについてですが、子育て関係の記事では「先回りはよくない」というふうに語られることが多いようですね。ただ、わたし自身は、先回りにも「いい先回り」と「悪い先回り」があると見ています。「悪い先回り」とは、それこそ子育て関係の記事でNG行為として語られるような、子どもの力を奪ってしまう先回りのこと。なぜ子どもの力が奪われるかというと、「失敗」の経験を積めないからです。人間という生き物は、失敗から多くのことを学びます。でも、なんでもかんでも親が先回りをしてしまうと、子どもは失敗することなく育つことになる。親の先回りが、学びのチャンスを子どもから奪ってしまうのです。ただ、子どもに失敗をさせることが重要だと言っても、そのバランスは大切。たとえば、10回挑戦して9回失敗するようなことになれば、子どもはチャレンジする勇気ややる気を失ってしまうでしょう。そこで、もう少し成功率を上げられるようなお膳立てを、親であるみなさんに考えてほしいのです。もちろん、あからさまに手出し口出しをすることはよくありません。なぜなら、子どもには子どもなりのプライドがあるからです。そのプライドによって、親の手出し口出しに反発して、やろうとしていたことを結局投げ出してしまうことにもなりかねません。ですから、こっそりとお膳立てをしましょう。それこそが「いい先回り」です。たとえば、料理をお皿に盛りつけるお手伝いをするような場合なら、長い菜箸だとうまく使えないということもあるでしょう。ならば、子どもでも扱いやすいトングを用意するといった具合です。それでうまくできたなら、しっかりとほめてあげる。そのことが、子どもの自己肯定感や、自分に対する信頼を高めてくれます。「いい先回り」とは、親としてしておくべき「予測」「いい先回り」とは、親としてしておくべき「予測」と言い換えてもいいかもしれません。たとえば、子どもと電車に乗って出かけるとします。すると、移動中の車内でぐずってしまうようなことが予測できます。それなのに、親がそのことを予測せず、なんの準備もしていなかったら、いざ子どもがぐずってから場当たり的に対処することになります。でも、しっかり予測ができていたら、お出かけグッズを入れるバッグのなかに、子どもの機嫌がよくなるようなものを忍ばせておくこともできるでしょう。また、子どもは親のやることをやりたがるものですが、まだ成長段階の途中にある子どもには親と同じようにはできないことや、危険が伴うようなこともたくさんあります。親が食器を洗っていたら、子どももやりたがるというのもよくあることですよね。そのとき、子どもが皿を落としたとしても割れる心配がないプラスチック製の食器を用意しておくとか、あるいは床が濡れてもいいようにビニールシートを敷いておくのです。もちろん、子どもは親と同じようにはやれませんから、時間もかかります。親には根気も必要だと認識したうえで、「いい先回り」ができるように工夫してください。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由(※近日公開)【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月31日「早く!」「だめ!」――親が子どもについ言ってしまう言葉です。でも、いくらそう声をかけても、子どもは親の思い通りに早く行動してくれませんし、だめなことだと理解してくれたのかもわかりません。いったい、どうすれば子どもに「早く!」「だめ!」と言わずにすむのでしょうか。幼稚園の園長を務めた経験もある、東京家政大学子ども学部教授の岩立京子先生にアドバイスをもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/山本未紗子(インタビューカット)大人と子どもはそれぞれ違う世界に住んでいる「早く!」「だめ!」という言葉を一度も言わないまま子育てをすることは不可能でしょう。なぜなら、大人には大人のリズムがあり、子どもには子どものリズムがあるからです。大人は、社会を中心にして生きていて、子どもは自分の好きなことを中心に生きています。そもそも住んでいる世界が違うために、どうしても両者のリズムがずれてくる。そうして、子どものリズムが自分に合わないと感じると、親はつい「早く!」「だめ!」と言ってしまうのです。もちろん、イライラして子どもをたたくなんてことはご法度です。かつては、そういう子育てがすすめられていたときもありました。子どもがなにかしてはいけないことをした場合、0歳台の子どもなら足の裏を、1歳台の子どもならお尻をぽんとたたくという教育メソッドが存在したのです。でも、たとえ0歳台の子どもでも、親の表情などから言わんとしていることが理解できることがわかってきたため、いまはきちんとコミュニケーションを取ることが重要だと考えられています。そのコミュニケーションとは、ただ「早く!」「だめ!」と言うだけのことではありません。大切なのは、なぜ早くしてほしいのか、なぜだめなのか、その理由を必ず伝えること。なぜなら、子ども自身が納得して「じゃあ、そうしよう」と思えなければ、しつけは成功しないからです(インタビュー第1回参照)。「ニンジン作戦」で子どもを楽しい方向にいざなうしかし、子どもに早くしてほしい理由をどんなにきちんと伝えたところで、時間感覚や価値観が違う世界に住んでいる子どもは、なかなかそうできません。子どもの住む世界は大人とは違うということをしっかり認識したうえで、子どもが早くできるような、だめなことをだめだと理解できるような工夫やお膳立てを、親の側がする必要があります。そのコツは、早くしてほしい理由やだめな理由を子どもに伝える際に、「楽しい方向」に導いてあげるということ。「誰かに怒られるよ」といった内容ではなく、たとえば幼稚園に遅れそうになっている場合なら、「幼稚園に早く行けたらお友だちとたくさん遊べるよ」というふうに、子どもが「じゃあ、早くしよう」と思えるような声かけをするのです。基本的に、ただ「早く!」「だめ!」と言ってもコントロールしにくいのが子どもなのです。でも、「早くしたら楽しいことがある」とか「これをやめたら次にいいことがある」などと思えたら、子どもはきちんと気持ちを切り替えることができます。これは、いわゆるニンジン作戦です。心理学における「強化」の理論をベースに、「子どもに対してニンジンを使うと、その後はずっとニンジンを増やし続けていかなければならない」という考え方も前にはありましたが、いまはそうは考えられていませんし、わたし自身もうまくニンジンを使うことには賛成です。その理由は、子どもの世界を広げるきっかけになるからです。ニンジンをうまく使って子どもを楽しい世界にいざなってあげる。そうすることが、結果的に子どもにとってはプラスに働くはずです。わかりやすいニンジンの例として、甘いジュースやお菓子があります。それらを完全に禁止している家庭もあるでしょう。でも、お菓子を食べたい子どもと食べさせたくない親のあいだでバトルが繰り広げられたら、それこそ親子関係自体が悪くなってしまう。そう考えると、適度にニンジンを使うことはなにも悪いことではないと思うのです。お膳立てで、子どもに「早くしよう!」と思わせる忙しい朝に早く子どもに起きてほしいのなら、朝食だって立派なニンジンになりますよ。ただ「早く起きて!」という言葉をいくらかけても、子どもは大人とは違う世界に住んでいますから、なかなか起きてくれない。そんなことに悩んでいる人も多いでしょう。でも、まだ寝ていたい子どもに対して、「早く!」と言うばかりか、まして「まったくもう!」なんて怒ったところで、子どもが素直に起きてくれるでしょうか?人間には、心理学における反発理論という行動原理が働きます。怒られると、ますます反発しようとするのです。大人だって同じですよね?自分に対して攻撃的な人に対しては反発したくなるでしょう。そこで、子どもの好物をニンジンに使ってみましょう。トーストのにおいを漂わせたり、「今日はあなたが大好きな卵焼きだよ」「焼きたてを食べたほうがおいしいよ」と言ったりして、子どもが「早く起きよう!」と思えるような方向にいざなってあげるのです。そのようにお膳立てをして、「早く!」「だめ!」と言わないですむように考えてみてください。『遊びの中で試行錯誤する子どもと保育者 子どもの「考える力」を育む保育実践』岩立京子 監修/明石書店(2019)■ 東京家政大学子ども学部教授・岩立京子先生 インタビュー記事一覧第1回:イヤイヤ期には“気そらし方略”がうまくいく。3歳の子育てを楽にする、2歳までの「しつけ」のコツ第2回:もう「早く!」なんて言わなくていい。“ニンジン作戦”で子どもを楽しい世界にいざなってあげて第3回:子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?(※近日公開)第4回:「しつけもしっかりしたいけど、自主性も育てたい」親のこの考えが“完全に間違っている”理由(※近日公開)【プロフィール】岩立京子(いわたて・きょうこ)1954年生まれ、東京都出身。東京家政大学子ども学部教授。東京学芸大学名誉教授。東京学芸大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科修士課程を経て、筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学心理学系技官を経て、1986に東京学芸大学講師となり、1991年に筑波大学で博士(心理学)を取得。その後、東京学芸大学で34年間にわたり保育・幼児教育の専門家養成に関わった後、現職に就く。2014年から2017年まで、東京学芸大学附属幼稚園長を兼任。主な著書に『幼児理解の理論と方法』(光生館)、『保育内容 人間関係』(光生館)、『たのしく学べる乳幼児の心理』(福村出版)、『乳幼児心理学』(北大路書房)、『新幼稚園教育要領の展開』(明治図書出版)、『子どものしつけがわかる本 がまんできる子、やる気のある子を育てる!』(主婦の友社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年05月29日