人間の知の基本フレームは、小学生のときに形成される!? 新たな美術鑑賞法「対話型鑑賞」が育む7つの力
も伸びていきます。対話を通して培われた「鑑賞する力」は、次第に「表現する力」を育てることにつながっていくのです。
もちろん、対話型鑑賞に参加する子どもたちだけでなく、親御さんにも大きなメリットがあります。子どもたちとの対話を通して親御さん自身も、自分の思考の特性に気づかされるはずです。そして、我が子の思考や感性、そこから生じる行動を、より深く理解することができるようになるでしょう。
人間の知の基本フレームは、小学生の時期に形成される
発達心理学の観点では、人間の知の基本フレームは小学生の時期に形成されると言われています。
思考や感性が形成されるこの大切な時期に、あらかじめ定められた解答を単に繰り返すだけの作業や、一問一答式のテスト結果などの目先の成果を優先してしまうと、どうなるでしょう。子どもたちの自ら学び創造する力、じっくりと考える力、他者を理解する力を削いでしまうのではないでしょうか。
作品とのまっすぐな対話を通して、将来役に立つであろうさまざまな能力を育んでいくために。他者との深い対話を通して、子どもたちの想像力に富んだ未来を切り拓いていくために。親子の豊かな対話を通して、家族の幸せな時間を共有し、相互理解を実現するために。
ぜひ、親子で「対話型鑑賞」に取り組んでいただけたらと思います。次回からは、私がこれまで「対話を通した創造的鑑賞」と称して子どもたちと行なってきた数多くの事例を示しながら、実際の対話による鑑賞の方法をご紹介していきましょう。
(参考)
■対話型鑑賞法
フィリップ ヤノウィン 著, 京都造形芸術大学アートコミュニケーション研究センター 訳(2015),『学力をのばす美術鑑賞』,淡交社.
岡崎大輔(2018),「なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか」, SB Creative.
鈴木有紀(2019),「教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方 」,英知出版.
エイミー・E・ハーマン著(2016), 「観察力を磨く 名画読解」,早川書房.
上野行一(2011),「私の中の自由な美術-鑑賞教育で育む力」,光村図書出版.
上野行一(2014),「風神雷神はなぜ笑っているのか(対話による鑑賞完全講座)」,光村図書出版.
奥村高明(2015),「エグゼクティブは美術館に集う(「脳力」を覚醒する美術鑑賞)」