すべての子どもたちに音楽を――フランスの “感性を育てる” 音楽教育
『オーケストラ・クラス』という映画があります。テーマは、“子どもの音楽との出会いと成長”。
楽器に触れたこともなかった子どもたちが、1年後にあのフィルハーモニー・ド・パリでの演奏会を成功させるという、無謀とも思える目標のために練習を重ね、音楽に触れ、魅了されていくなかで、人としても成長していく物語です。
フランスでは、すべての子どもたちに音楽を学ぶチャンスが用意されています。フランス建国の理念「自由・平等・博愛」の精神は、ここにも宿っているのですね。それはどのようなものなのでしょうか。
フランス全土にある、6歳から学べる本格的音楽院
フランスでは、音楽を専門的・本格的に極めるための高等音楽教育機関のコンセルヴァトワールが有名ですが、初心者の子どもも通える公立音楽院もあります。ここはアフタースクール形式で、6歳以上の小学生から、音楽、舞踏、演劇を学ぶことができます。
運営地方行政によって、地方音楽院(41校)、県立音楽院(105校)、コミューン立音楽院(245校)の3つのカテゴリーに分かれていますが、なかでも地方音楽院が一番規模が大きく、設備も整っているので人気です。公立なので格安で学べる環境を全国的に提供しているところに、フランスの芸術に対する懐の深さを感じます。
地方音楽院では学べる楽器の種類も豊富で、その教育は本格的です。準備課程と本課程3段階があり、厳しい昇級試験が行なわれます。設備や先生が整ったとても恵まれた環境ですが、学び続けるには本人の強い意志も必要になりそうですね。
音楽教育プログラムDEMOS
映画『オーケストラ・クラス』で子どもたちが受けているのは「オーケストラDEMOS」という音楽教育プログラム。映画では、通っている学校の選択科目で音楽を選んだ子どもたちが、初めてバイオリンを習うのです。
「オーケストラDEMOS」はパリ・フィルハーモニーが2010年に始めたプロジェクト。
子どもたちは楽器を提供され、プロの演奏家から3年間レッスンを受けることができます。なんと、すべて無料です。集大成は、年末に行なわれるコンサートホールでの演奏。特に1年目は全くの初心者で楽器を持つ手もおぼつかなかった子どもたちが、大ホールで大勢の観客を前に演奏できるようになるまでには、どれだけの学びと成長が詰まっていることでしょう(映画でその感動の過程を見ることができます)。