「ダメでしょ!」と叱るのは意味がない。親子で問題解決をするための対話テクニック
「学校コミュニティに安心感が増した」「恥ずかしい場面でもうまく対処ができるようになった」などの声が子どもたちからあがっており、その効果が認められています。
特にいじめは、被害者にとって本当につらい体験です。しかし、加害者となった子どもと納得するまで対話をすることで、もやもやとした気持ちが軽減され、場合によっては絆が強くなる――。最終的にクラスの雰囲気が変わるのです。
■アメリカでの修復的実践
オーストラリアで始まった試みを体系化したのが、元中学校教師のワクテル氏です。NPO団体を立ち上げ、修復的司法の原理を福祉、教育の場に応用すべく、概念化、組織化し、指導者育成を進めました。その結果、問題解決策としてだけではなく、コミュニケーションスキルを身につけるための人格教育として、最近では学校でのさまざまな話し合いの場などに取り入れられるようになっているそう。
その際、重要とされたのは、問題に対して、その場にいる全員が当事者意識を持つことです。
まずは、教育者側(教師や親)が自分の感情を伝え、さらに子どもの感情を引き出し、ひとつの問題を共有することで有意義な話し合いにつなげます。それが最終的に、よりよいコミュニティづくりに貢献するのです。
子ども同士の対話だけでなく、教師や親までもが同じ目線で、同じ問題についてとことん話す。いつもは絶対的な存在である教師が「正直言っちゃうとさ、先生もね……」と腹を割って話してくれたとしたらどうでしょう?子どもだって、「本音を言ってもいいんだな」と自分の気持ちを第三者に伝えることへの抵抗が少なくなりますよね。
■イギリスでの修復的実践
ヨークシャー州ハル市では、治安の悪化により地域コミュニティが崩壊し、学校も荒れていました。その中のひとつ、コリングウッド小学校に2004年新しい校長先生としてマクドナルド氏が赴任し、「修復的実践」の指導手法を取り入れると、2年後にはOfsted(教育監査局)による学校評価が、なんと最低から最高ランクにまで急上昇したそうです。
このとき、校長がまず教師たちに伝えたのは、「ポジティブで未来志向型の言葉づかいで学校を満たそう」。起こってしまったことをとがめるのではなく、「これからどうすればよいか」にフォーカスして考え、対話を促し、子どもの自主性を引き出したのです。
この顕著な効果を受けて、ハル市内のほかの小中学校でも手法が取り入れられ、環境が大きく改善されました。