子育て情報『延命に意味はある? 日本人の「ターミナルケア」観は妥当なのか』

延命に意味はある? 日本人の「ターミナルケア」観は妥当なのか

延命に意味はある? 日本人の「ターミナルケア」観は妥当なのか

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

今回は、『日本人の国民性と消極的延命の意義について』というテーマでお話しをしたいと思います。

20世紀の最後の時期にあたる1990年代の終わり頃、筆者は北関東にある医療福祉系大学に事務系幹部職員として勤務しておりました。

その当時、仕事で関わった数多くの人たちのうち数人の方から、「日本には寝たきりの老人がたくさんいるのに、欧米にはいないと聞いたけれど、それは本当なのですか?」というような主旨の質問を受けたことがあります。

その当時は、「北欧などでは口から食べられなくなった高齢者を経管栄養で延命させることは少ないようです」と、その分野の権威である医師のお話の受け売りでお答えしていた記憶があります。

しかし、その当時でも90万人いたとされる寝たきり老人の数は、その後2010年には170万人前後に達し、2025年には230万人に達すると予想されています。

そんな現代においても「消極的な延命であれば、それを希望する」という家族が多いわが国においては、その独特な国民性というか、“ターミナルケアに関する感性”という視点を抜きにして、寝たきり老人の問題を語ることはできないのではないかと思います。


●「人工呼吸器=希望しない、経管栄養での延命=○」という私たちの感性

2015年に出版された、内科医の宮本顕二・礼子夫妻が書かれた『欧米に寝たきり老人はいない~自分で決める人生最後の医療』という本があります。

これは、長年にわたって医師として日本のターミナルケアのあり方に疑問を感じてきた著者夫妻が、タブーを破って「点滴で生きていて何の意味があるのか」 といった欧米的感性の視点から日本の終末期医療の現実を批判し、話題になりました。

しかしながら、この本が多くの日本人から共感を得たかというと、宮本医師ご夫妻には失礼かもしれませんが、答えは「ノー」だと言えるでしょう。

共著者の一人である宮本礼子さんは、『今や療養病床の半分以上、多分7~8割は、経管栄養や中心静脈栄養で延命されている人たちです。そのため、点滴や経管栄養を行わなかったり中止したりすると患者さんは2週間ほどで亡くなるので、病床が空き、病院経営が苦しくなります』と、医療経営学的な視点から日本の終末期医療の現実を批判しています。この論点に対しても、「“点滴くらいはやってでも、生きていてほしい”と家族が願うのは当然のことではないか」

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