独立に思わぬ落とし穴が!? “美容師”に多い法律トラブル事例集
誓約書、就業規則等により、退職後も、会社の利益を守るために一定の正当性があって同業他社に就職しない等の競業避止義務を負わせる定めをすることがあります。
このような定めをすることは、退職者の職業選択の自由や営業の自由を制限するものなので、全てが有効とは考えられていません。
しかし、その従業員の地位、競業避止義務を負う期間や地域、禁止行為の範囲や代償措置の有無など、具体的な事情に照らし、法律上有効とされることはあります。
もし違反してしまうと、会社に対して損害賠償義務を負うことがあります ので、約束をしてしまう前に、約束の内容を吟味することも大切です。
●美容院で起こりやすいトラブルって?
美容室でのカット等は、美容師は客の注文したカット等をして客の希望する髪型にする義務を負い、これに対して客は料金を支払う美容契約 が成立します。
もちろん、年齢やコンディションなど個人差がありますから、客の希望と完全に一致させることはどうしても現実的に不可能です。
しかし、できるだけ客の希望に近づくよう、デザインに見合ったカット手法を採用すること、デザイン、カラー等に疑問が生まれたら客に確認する 義務を負うと考えられますので、これらを怠り、明らかに切り過ぎてしまったときは、店は客に対して、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うといえます。
また、美容師は、美容契約に基づいて施術をする際に、危険な刃物や染髪料等を使いますから、契約の性質上、客に対して生命や身体を害さない安全配慮義務も負っているといえます。
義務を尽くさず、不注意でたとえば薬剤のかぶれやはさみで皮膚を傷つけるなど、客の身体を傷つけたときも債務不履行となり、損害賠償責任を負うと考えられます。
いずれにせよ、実際に損害賠償請求をできるかどうかは、オーダーややりとりの内容等も踏まえ、ケースバイケースの判断になります。
ですから、客も美容師に任せっきりにはせず、おかしいと思ったらすぐに伝え、トラブルになる前に確認する ことが大切ですね。
●まとめ
上記のとおり、美容師業を巡っては、開業前にも開業後にも難しい法律問題が付きまといます。
「顧問弁護士を雇うような規模ではない」「顧問弁護料が高額で払えない」といった声も聞かれますが、最近では、特に個人のお店や中小企業向けに顧問弁護士の低額プランなどを打ち出している弁護士事務所も多くあります。