介護したのはワタシ! “義父の遺産”は離婚時に財産分与してもらえるか
【ママからのご相談】
30代女性です。夫と現在、離婚協議中です。3歳の息子の親権や養育費などはスムーズに決まったのですが、財産分与で現在もめています。
というのも、夫が1年前に義父の遺産を受け継いだからです。
義母は早くに亡くなっていて夫は一人っ子なので全て夫が相続します。義父は、晩年は足腰を痛めており、同居というのもあって子育てとともに介護も頑張っていました。
よく義父は「本当の娘だと思っている」と言ってくれていたし、半分とはいかなくても、一部ぐらいもらえる権利はないのでしょうか?
●A. 義父の遺言がない限り、遺産を分けてもらうのは難しいです。
ご相談ありがとうございます。
アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。
離婚し、小さなお子さんをひとりで育てていく場合、少しでも経済的な安定を確保したいですね。
しかしながら、遺言等が存在しない以上、義父の遺産を取得することは難しいのが現状です。
●財産分与とは?
財産分与とは、離婚の際に、「夫婦間で築いた財産を原則半分に分けよう」 という制度です。
“夫婦で協力して築いた財産”である以上、名義のいかんに関わらず、預金や不動産も全て2分の1に分けるというのが原則です。
専業主婦であっても、家事という仕事をし、夫婦生活を支えたわけですから、2分の1の割合を主張できるのが基本です。
夫が10年間会社勤めをしてたまった貯金も、たとえ夫名義であっても、これを妻が半分もらえるわけです。
例外として、芸能人や芸術家など、夫婦の一方の特殊な才能により財産が増えたという場合は、割合が修正されることがあります。
過去には、「宝くじの当選金」について、夫婦の一方の運によるところが大きいとして、割合を修正した裁判例があります。
●夫の父の遺産は、対象にならない?
このように、財産分与は、「夫婦の協力があっての財産だからこそ、離婚の際には半分に分けよう」という考え方によるものです。
逆にいえば、結婚前からためていた貯金や、夫婦の一方が純粋に単独で得た財産などは、“夫婦の協力”が観念(認識)できない以上、財産分与の対象とならない とされています。
このように財産分与の対象とならない財産を『特有財産』 と呼んでいます。今回問題となる「義父の遺産」は、夫が相続によって取得する財産ですから、夫が単独で得る財産と考えられています。