「ひどい指導者がいる」と批判するだけでは何も変わらない、元ビジャレアル佐伯夕利子さんが日本の指導現場に提言
20年以上に渡ってスペインで指導者として現場に立ち、アトレティコ・マドリードやビジャレアルのアカデミーなどで活動してきた、佐伯夕利子さん。なかでも2014年にビジャレアルのアカデミーが実行した「育成改革」には、指導者人生を揺るがすほどの影響を受けたと言います。
インタビュー第3回では、佐伯さん自身の変化について、話をうかがいました。
(取材・文鈴木智之)
ビジャレアルが行った育成改革改革のおかげで、これまで選手をジャッジして来たことに気付いたと佐伯さんは語ります(写真はサッカー少年のイメージ)
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■「これまで選手をジャッジし続けてきた」と気づいた
――ビジャレアルの育成改革では指導風景を撮影し、映像をもとに指導者間でディスカッションしたとおっしゃっていましたが、佐伯さん自身フィードバックを受けて、どのような変化があったのでしょうか?
まず、選手に対するアプローチの仕方が、ガラリと変わりました。なかでも強く感じたのが「私はこれまで、選手をジャッジし続けてきたんだ」ということです。たとえば、「この選手は良い選手」「この選手はそうでもない」というのもジャッジです。誰しも指導者にはお気に入りの選手がいて、どんな状態でもピッチにいてほしい。説明のつかない信頼感を寄せている選手がいます。
その子に対するジャッジは、文句なしに「良い選手」です。でもいま振り返ると、それは思い込みだったのではないだろうかと。もしかすると、良い選手であるという先入観のもと、ラベリングをしていたのかもしれません。
――ご自身の考えを、客観的に見られるようになったのですね。
他に変わったのが、口から出る言葉です。人間は無意識のうちに、習慣化した言葉を使っています。指導中にも、頻繁に口をついて出ます。ビジャレアルの育成改革ではメソッド部門のメンタルコーチたちが、私の近くに影のように寄り添い、練習中にカメラを回し、メモをとりながら「佐伯コーチは練習中、何を言っているのか?」を記録しました。
そして、私の口から出てくる言葉を全部「仕分け」してくれるんです。ポジティブな言葉とネガティブな言葉を分け、選手に対してポジティブなフィードバックが多かったのか、ネガティブなフィードバックが多かったのかに分けます。
■言葉を可視化したことで、選手が自分の言葉をどう感じるかに気付けた
――どんな言葉をかけているか、可視化されるわけですね。