子育て情報『線虫の性はランダムに決まる!?線虫の性決定には発生ノイズの影響が大きいことが判明』

2022年6月3日 10:30

線虫の性はランダムに決まる!?線虫の性決定には発生ノイズの影響が大きいことが判明

日本国内では古くからマツ枯れや松くい虫病として知られてきました。その病原体であるマツノザイセンチュウにはメスとオスの2性が存在しますが、雌雄比は1:1ではなく通常メスが多く生まれます。また、B. okinawaensisには雌雄同体(注4)とオスの2性が存在し、通常99%以上が雌雄同体で、ごくまれにオスが生まれます。雌雄同体とオスの交尾により生まれる子孫も同様に99%が雌雄同体であるため、性染色体性決定ではない別の仕組みにより性が決定されることが疑われました。

■ 研究手法と成果
まず、本研究チームは両線虫種において、メス(雌雄同体)とオスの染色体構造を観察し、染色体構造に雌雄差がないことを確認しました。次に、染色体観察ではわからないゲノム上の小さな違いがあるかを確認するためにゲノム配列情報を雌雄別に取得しましたが、やはり雌雄間で違いは確認されませんでした。これらの実験により、性染色体の存在は否定されたので、その後、環境性決定やその他既知の性決定機構に合致するかを詳細に調べましたが、線虫はさまざまな環境下においても常にほぼ一定の雌雄比を示し、その仕組みは既知の性決定機構のいずれとも違うことが明らかになりました(図1)。
B. okinawaensisは雌雄同体単独で遺伝的にほぼ同一な子孫を残せるにもかかわらず、均一培養条件下においても、低い一定の確率でオスが生まれます。
そして、このオスとメスのゲノム情報には違いがありません。これら数多くの状況証拠をそろえることにより、今回調べた線虫種のうち少なくともB. okinawaensisは発生ノイズを主因としてランダムに性が決まると結論付けました(図2)。
本研究では、B. okinawaenesisにおける遺伝学解析により、初めて植物寄生性線虫を含むグループにおける性決定遺伝子の同定に成功しました。モデル生物である線虫Caenorhabditis elegansの性決定カスケードと比較すると、B. okinawaensisではtra-1を含む一部の下流遺伝子のみが保存されており、改めて線虫内における性決定機構の多様化が明らかになりました(図3)。

■ 今後の展開
発生ノイズが生物の多様性(個性)を生み出す要因の一つであることは以前から知られてきました。性決定に関しても、理論生物学的な見地から発生ノイズの関与を主張する研究者もいましたが、その証明の難しさからこれまで大きく注目されることはありませんでした。

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