くらし情報『コム デ ギャルソン 2022年春夏コレクション - 川久保玲の“今の心境”』

2021年10月7日 11:45

コム デ ギャルソン 2022年春夏コレクション - 川久保玲の“今の心境”

今季は、身体に沿うことは一切排除され、まるで上流から流れカドが取れた石ころのように、あるいは美しく整えられたオブジェのように、滑らかな球体上のドレスルックがほとんどを占める。時に現れる、大胆にカットされたライン、あるいはカドのたったラインは、まだどこか未熟な部分を匂わせた。

そしてもうひとつ、今季は“ディテール”が不要であるということ。細やかさは一切いらない。チュールは大きなリボンにしてしまえばいいし、フラワーモチーフはそのままドレスにしてしまえばいい。シューズにあしらうリボンやバックルも、さりげなくではなく“主役”として鎮座する。

これらに通じて、では服の本質的な部分ともいえる“服作りの意図”さえも取っ払ってしまえばどうかと。これまでの常識が、ある一方で非常識にもなりうる現在において、これまでのファッションの固定概念へのアンチテーゼを改めて掲げる。
機能的であること、美しく見せること、それらも不要とみなすのだ。すべての不純物を取り除いた先に残るものが一番大切で、一番強いもの。それはきっと服を見て、服を着て、人間の心の中に湧き上がる、言葉では言い表せないような“何か”――。

時代の変革期ともいえる2021年、川久保玲の心を通したコレクションで、ファッションとは何か?という問いに改めて直面させられた。

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