大長編をゆるみなく高水準に─新国立劇場《ウィリアム・テル》開幕
の初期代表作に挙げられる《ウィリアム・テル》。「グランド・オペラ」様式の特徴のひとつとして大規模な合唱とバレエの要素は必須。
第2幕前半以外はほぼ出ずっぱりと言っていいぐらいの合唱が、濃厚な声のエネルギーを浴び続ける快感を与えてくれる。新国立劇場合唱団(合唱指揮=冨平恭平)の高水準なコーラスは、精彩かつ壮麗。
いっぽう、ダンスは第1&3幕に組み込まれている。オペラのバレエ・シーンによくある、取ってつけたようなバレエが唐突に挿し込まれるのではなく、物語の流れに沿った自然な使われ方。ただし今回は、13人のダンサーたちが、村人や兵士といった物語上の登場人物だけでないキャラクターも演じて楽しい。このダンス・シーンだけを切り出してもひとつの小品として成立しそう。
ちょっと不思議なインパクトは見どころのひとつだ(振付=ナタリー・ヴァン・パリス)。
オーケストラは、有名な序曲だけとっても、しょっぱなのチェロ独奏や、〈静けさ〉の部分のイングリッシュ・ホルンとフルートのソロの掛け合いなど聴きどころ満載。3時間半を超える長尺の音楽を、大野がゆるみなくまとめ上げた。
静かに、しかし強く、自由の意味を訴えかける演出

撮影:堀田力丸提供:新国立劇場
舞台美術家としても活躍するヤニス・コッコスの演出は、派手ではないが美しい。