失敗は自己責任? 個人の責任はどこまで追及されるべきか…【石井ゆかりの幸福論】
は起こらないのです。
もとい、人生にはもうひとつの「出口」があります。それは「出産・育児」です。
自分の生命力は、自分という個体の中ではかならず終わりますが、新しい人間に燃え移って、継承されていきます。一人の人の人生から、もう一つ別の新しい人生が「放出される」のです。
子供を生み育てることもまた、大きなリスクを引き受ける営為です。
でも、私たちの内なる激しい生命力は、そのリスクを負って、命を次世代につなげていきます。
こうして考えてみると、「幸福」とは、かなり複雑なものであることに気づかされます。
というのも、多くの人が「しあわせになりたい」と願うとき、最初に念頭に置くのは、自分自身の幸福であるはずです。
ですが、「自分の幸福とは何か」を考えていくと次第に、愛する人や子供の幸福が最大の条件となることは、珍しくありません。
さらに、「幸福とは何か?」という問いの答えが「苦しみや悲しみが訪れないこと」となる場合もあります。これは、ここまで長々と述べてきた「ゲートの開閉」の問題です。
喜びやゆたかさが私たちの生活に入ってくるとき、責任や義務、罪悪感などが一緒に流れ込んでしまうことも、よくあります。