夫の愛が冷めてゆく…それは、妻に
モンスターワイフの影が見えるから…。
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「親しき仲にも礼儀あり」とは、人生の真実。とはいえ「親しい」どころのレベルではなく「運命共同体」である夫婦の間で、このことをきちんと理解できていないケースが多いのは非常に残念なことです。
夫婦としてどれだけ親しい、近しい関係にあろうとも、
夫はあなたとは別の人間。あなたとは違う感じ方、考え方、好み、ポリシーを持っていて当然なのです。
ところが、そんな当然のことを認められない、認めたくない場面が出てきてしまうのが、夫婦生活の難しいところ。
「この人の、こういうところがどうしても理解できない。苦手」
「親身になってアドバイスしてるのに、まったく聞く耳を持ってくれなくて頭にきちゃう」
相手が知人や友人ならば、距離を置くという選択をすることも可能です。
けれども、夫婦となると、そうはいきません。毎日顔を合わせなければならないし、簡単に距離を置くことなどできない。今後もおそらく、ずっと一緒にいる相手。お墓もおそらく一緒…。
だからこそ、
夫を自分の都合がいいようにしたい。夫に気になる言動があったら、直して欲しい。夫にも、自分のやり方に従って欲しい。そう思うようになってしまうのです。
「長い人生を共にする、代えなどきかないパートナー」だと思うからこそ、「相手と自分は違う人間」という当たり前過ぎる事実が見えなくなる。
相手を支配したいと思うようになってしまう…。
妻の中のこうした傾向は、夫の人格を否定する
「モラハラ系モンスター」の卵。このタイプのモンスターワイフは、夫という自分とは別の人間の存在を無意識に否定し、夫婦仲を崩壊させます。
あなたも知らないうちに、モラハラ系モンスターへの第一歩を踏み出し始めていないでしょうか?
悪気などまるでなく、けれども気づけば完全なモラハラモンスターと化していた友梨佳さんのケースを参考にしてみてください。
■断捨離に狂ったモラハラ系妻「家から次々とモノがなくなっていく…」
「モラハラ系モンスター 暴走ダンシャリアン」代表:友梨佳(仮名)34歳の場合
裕貴は我が家のドアの前に立つと、ドアノブに手をかけて大きくひとつ深呼吸をした。最近ではこの瞬間が、一日の中で最も緊張する時間かもしれない。
意を決して家の中に入る。
リビングに異変はない。そこから見えるキッチンも、問題なさそうだ。鍋の中をのぞき込みながら「おかえり」とつぶやくように言った妻の友梨佳の様子も、いつもと変わりない。
よかった。
今日我が家では、何も起こらなかったようだ…そう胸をなで下ろして洗面所のドアを開けた裕貴はギョッとした。洗面所が、異様に広々として見える。
それもそのはず、1年半前に友梨佳に懇願されて渋々購入した
乾燥機が、跡形もなく消え去っているのだ。裕貴が唖然としていると、いつの間にか彼の背後に立っていた友梨佳が、不気味な笑いを浮かべて言った。
「どう?スッキリしたでしょ。乾燥機も断捨離しちゃった。やたら場所を取るし、やっぱり服を傷めちゃうし。それにね、ネットで見たんだけど、乾燥機にかかる平均的な1カ月分の電気代って…」
裕貴は嬉々としてしゃべり続ける妻の声が、遠のいていくのを感じた。
勘弁してくれ。
毎日毎日、家の中から何かしらなくなっていく。最初は、去年のクリスマスにねだられたホームベーカリーだった。
次はトースター。
続いて炊飯器が消えた。そして、今度は乾燥機?
裕貴は文字通り頭を抱えると、
「断捨離」の素晴らしさについてお決まりの熱弁を続けている妻をその場に残して、フラフラと寝室に逃げこんだ。
■浪費と衝動買いを繰り返す「片づけられない妻」
友梨佳と裕貴は、ともに27歳の時に結婚した。いわゆる「授かり婚」で、長女の芽衣は今年7歳。2歳下には長男の海斗もいる。
少々いい加減でだらしないところはあるが、基本的に明るくニコニコしている友梨佳。優柔不断なところもあるけれど、穏やかで優しい裕貴。2人の結婚生活は、それなりにうまくいっていた。
けれど、経済的な不安はあった。裕貴は小さなメーカー勤務で、収入はそれほど多くない。それなのに働くのが嫌いな友梨佳は第一子妊娠を理由に、ほとんど独断でショッピングモールの販売員の仕事を辞めてしまったのだ。長男の幼稚園入園後、夫にせっつかれてようやく友梨佳は重い腰を上げ、パート先を探し始めた。
友梨佳の口癖は
「好きなことしかしたくない」。そんな調子なので彼女の仕事探しはなかなか進まず、夫婦けんかも増えた。
妻の「好きなこと」は、世の中にあまりないように裕貴には見えた。しょっちゅう「何か楽しいことないかなぁ」などと言いながらダラダラとネットサーフィンを続け、その時々の流行の商品やサービスを購入したりする。
だが、どれも1カ月もしないうちに、友梨佳はきれいサッパリ忘れ去ってしまう。
そんな性格の反動なのか、数年に一度、何かにハマると友梨佳は
すさまじい勢いで熱中した。彼女が好条件とは言えない雑貨屋のパートの職にあっさり収まったのも、そのショップの雑貨にハマったからだった。
キッチン小物やらベランダ用の置き物やらガーデニング用品やら、友梨佳はしょっちゅう細々したものを購入してパートから帰って来る。稼いだそばから浪費してしまうのも困りものだったが、それ以上に裕貴を困惑させたのは、どんどんひどくなる
家の散らかりぶり。
「春になったらハーブを植えるのよ。そのハーブを使ってお料理するの。すてきじゃない?」
友梨佳はそんなことを言って自分の妄想にうっとりしているが、実際に春が来る頃にはそんな妄想などすっかり忘れているに違いないと、裕貴はため息をつく。
一体どうして妻は、「ベランダ」というより「エアコンの室外機置き場」と言ったほうがいい小さな小さなスペースのために、これだけ
大量のモノを購入してくるのだろう。
キッチンだってそうだ。同じようなものをすでに持っていても、「デザインがすてき」、「ひと工夫あって使いやすい」などと言って、似たようなものを山ほど買ってしまう。おかげでキッチンも、モノだらけでグチャグチャ。その収納のために「すきま収納」家具が欲しいと友梨佳が言い出した時には、さすがの裕貴も異議を唱えた。
「家具を増やして収納することより、少しはモノを減らすことも考えてくれよ。似たようなものがいっぱいあるじゃないか。同じようなものは処分するなり、ネットで売るなりできないのか?」
自分の要望が通らず、友梨佳は逆上した。
「何よ。私は家族のためにおうちをすてきな場所にしようと思って、そのためのアイテムを買いそろえてるのに。それに、料理なんてほとんどしない裕貴に、キッチン用品の使い勝手なんて分からないでしょ。
何にも分からないくせに、口出ししないでよ」
こうして始まった冷戦は結局、友梨佳が自分のパート代ですきま収納家具を購入し、裕貴がそれを黙認するまで続くことになった。
この家が足の踏み場もない状態になるのも、時間の問題だな…。さらに狭くなったキッチンをながめながら、裕貴はがっくりと頭をたれた。