古くから熱いファンの多いジャズの世界ですが、最近は若いプレイヤーも増えて新たな流れが!注目ユニットのsorayaが、楽しみ方をご案内。才気溢れるアーティストが次々と誕生し、メディアや映画でも盛り上がりを見せるジャズ・シーン。その楽しみ方や“ご自愛”的な聴き方を注目アーティストのsorayaにお聞きしました。――おふたりがジャズを演奏するきっかけはどういうものでしたか。壷阪健登さん(以下、壷阪):僕はクラシックからピアノを始めたんですが、中学生のときにジャズピアニストの山下洋輔さんがテレビで演奏されているのに衝撃を受けて。日比谷野外音楽堂に山下洋輔トリオの公演を観に行ったことがきっかけです。そこでフリージャズのカッコよさに魅了されて。そこからジャズにのめり込んで、いろんな音楽や歴史に触れていきました。石川紅奈さん(以下、石川):私は高校生でジャズバンド部に入ったことがきっかけでした。元々洋楽が好きでマイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーなどを聴いていたのですが、彼らの音楽の中にあるグッとくる感じやワクワクする感じが何なのかわからずに好きで。ジャズを始めてから、ブルーノートスケール(ジャズで用いられる音階)をはじめ自分が今まで聴いてきた洋楽はジャズとの共通点がたくさんあることを知って。そこからもっとジャズが好きになりました。――壷阪さんはボストンでジャズを勉強されたそうですね。壷阪:はい。バークリー音楽大学院で勉強しました。そこではジャズ以外にもポップスやR&B、映画音楽などいろんな音楽をやっている友達ができて、一緒に演奏をしたんですけど。みんなジャズの語法を持っているからこそセッションできるところはありました。――帰国してsorayaを結成されたいきさつは?壷阪:大学は卒業したもののコロナ禍で演奏活動ができなくなり、日本に帰国しました。ちょうどその頃に紅奈ちゃんがはっぴいえんどの「風をあつめて」をカバーしているのをYouTubeで見て。それまでジャズベーシストとしての彼女しか知らなかったから「歌うんだ!」って驚きだったのと、素晴らしいなと思って。ホームシック気味だったのか(笑)、日本語の歌が心に沁みたんですよね。石川:私はジャズベーシストとしてもソロでも活動をしていますがsorayaでは季節も時間帯も関係なく、どんなときにも聴けるようなポップスをやりたいなと思って始めたんです。壷阪:毎日食べても飽きない小さなケーキみたいな音楽をsorayaではやりたいんですよね。――普段はどんなふうにジャズを聴いて楽しんでいますか。石川:私はドライブが好きなのでよく運転しながらジャズを聴いています。高速道路は車の走行音が大きいので、ベース音があまり聞こえないんですよね。なのでベースがカッコいい曲を聴くのは一般道を走るときって決めてます(笑)。壷阪:ジャズはアート的な側面も大きいので、僕は美術館に行くような気持ちで聴くことも多いです。芸術って幸せや癒しをもたらすものだけでなく、後味が悪かったり不安をもたらすものもある。でもそういうものに触れることで出てくる自分の感情がある。普段生きていて味わえないようなすごいものに触れる醍醐味がジャズにはあるんじゃないかな。――生々しいセッションの高揚感もジャズの魅力ですよね。壷阪:そうですね。いろんな考えを持った演奏者が集まって「せーの!」で音を出すのは本音で語り合うようなもの。そこで「わかるわかる!」ってなることもあるし、ケンカみたいにぶつかり合うことも(笑)。そのスリリングな感じをお客さんは楽しんでくれるし、やってる方もそれが楽しいんです。石川:ジャズのセッションって、音で自分を曝け出す感覚。言いたいことを音にする能力って、やっぱりひとりで練習しているだけじゃ身につかない。人と演奏をし続けて、自分という人間を強くしていった後にできることなのかなと思います。私自身、ジャズを始めてからは人とどうコミュニケーションをとるかを普段から意識するようになりました。――おふたりがジャズに癒されたと感じるのはどんなときですか。壷阪:ジャズを演奏するときは即興もあるし、大きなエネルギーを発散するんですけど、共演者やお客さんから僕らもエネルギーをもらうんです。すごく疲れるのに浄化されて癒されるみたいな現象が起こるんですよね。もちろん温かい部屋でハーゲンダッツを食べるときみたいな癒しもジャズにはあると思うんだけど(笑)。演奏者も聴く側も、ジャズのエネルギーに圧倒された後で、心がすっと癒されることはあるんじゃないかな。石川:私もいろんなジャズの楽しみ方をしていますが、寝っ転がって聴きながら癒されたいときはシンプルにメロディが好きな曲を選びます。自分の体でいい音を感じるのってとても癒されること。ライブ録音とスタジオ録音でも癒され方って違うと思うので、そのときどきの耳心地の良さを自分で試してみるのもおすすめです。soraya壷阪健登と石川紅奈、ジャズのフィールドで活躍するふたりによるポップユニット。2022年に1stシングルをリリースし、ライブ活動も行っている。いしかわ・くれな埼玉県出身。ベーシスト、ボーカリスト。今年3月にアルバム『Kurena』をリリースし、ウッドベースで弾き語るソロでも活動中。ワンピース¥74,800(カレンテージ/メルローズ TEL:03・6682・0054)シューズ¥74,800(カチム TEL:03・6303・4622)イヤーカフ¥13,200リング、右手¥111,100左手¥143,000(以上イー・エム/イー・エム アオヤマ TEL:03・6712・6797)つぼさか・けんと神奈川県出身。ピアニスト、作曲家。慶應義塾大学卒業後に渡米し、バークリー音楽大学院を卒業。様々なミュージシャンと共演しライブ活動中。シャツ¥36,300(ウィーウィル TEL:03・6264・4445)パンツ¥16,500ベルト¥11,000(共にカイコーcontact@kaiko-official.com)シューズ¥37,400(セサ フットウェア/ノウ ショールームhello@ontheparkstreet.com)※『anan』2023年6月21日号より。写真・川村恵里スタイリスト・和田ミリヘア&メイク・Norikata Noda取材、文・上野三樹(by anan編集部)
2023年06月19日