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*画像はイメージです:もし、盗まれた自転車を1年後に発見したら、あなたはどうしますか?鍵がかかっていなかった場合はそのまま持ち帰ってしまうかもしれません。しかし、それは誤りです。このような場合には、まず、110番通報して、警察に来てもらうことです。なぜなら、盗まれた自転車が投棄され、遺失物取扱所が遺失物として管理し、一定期間所有者が現れないと、売りに出されることもあります。その自転車を買った人は、正規の所有者になります。元の所有者の所有権は消滅します。つまり、その正規の所有者が管理しているのに、窃盗犯が管理していると勘違いし、警察にも連絡せずに持ち帰ると、元の所有者は窃盗罪に問われます。それでは想定できる次の3つのケースでは、どのような対応を取るべきでしょうか? ①誰も管理していなかった場合もし、その自転車を誰も管理していないか、あるいは、窃盗犯が管理していたような場合は、警察官立ち会いの下、持ち帰りが許されます。もしかしたら、証拠品としてしばらく警察が保管するかも知れませんが、保管後、所有者に返還されます。 ②窃盗犯が管理していた場合窃盗犯が管理している場合でも、警察に通報せず、勝手に持ち帰ると窃盗罪になります。 ③盗まれてすぐに発見した場合それでは、盗まれて30分後に自転車を発見した場合はどうでしょうか。そのような場合でも、警察に通報せず、勝手に持ち帰ると窃盗罪になります。 ■不当な理由でも所有者ではなくなってしまう自転車が盗まれると言うことは、所有者の管理(法律用語だと占有と言います)を離れ、窃盗犯が管理(占有)することになります。一旦、他人が管理しているものを管理者に無断で持ち帰ると窃盗罪になります。管理者が正当な管理者であろうが、違法な管理者であろうが、窃盗罪が成立します。それは、他人が管理しているものをいくら所有者とは言え、勝手に持ち帰っては、社会秩序が維持できないからです。盗まれたものを取り返すのだから、正当防衛にならないのかと疑問を持つ方もいると思います。国によっては、盗まれた直後であれば正当防衛が成立することもあるようですが、日本では、正当防衛になりません。その理由は、仮に正当な権利者であっても自分の権利を実現するときに法律の手続を踏まなければならないからです。法律の手続を踏まずに権利を回復することを自力救済と言いますが、日本では、ほとんどの自力救済が違法だと判断されます。権利を回復するには、警察とか裁判所とか正規の機関を利用してしなければならないと日本では考えられています。アメリカの開拓時代とかあるいは内戦状態にあるような地域では、正規の機関を利用など出来ませんから、広く自力救済も許されるようですが、日本では違うのが現実です。もし、盗まれた自転車を発見したら面倒でも警察に連絡をするようにしましょう。 *この記事は2014年10月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)【画像】イメージです*mokuren / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月04日11月30日、モデルの押切もえさんの電子メールのサーバーに不正接続したなどとして、日本経済新聞社デジタル編成局の男性社員が、不正アクセス禁止法違反と私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕されました。このようなサイバー犯罪も近年では目立つようになってきましたが、一方で飲食店などの従業員が有名人の来店情報やその有名人の住所を入手したことをSNSなどで拡散してしまい、その従業員の勤め先が対応に追われるといった事件も後を絶ちません。とはいえ、家族に対してはつい気が緩んで、業務上知った秘密を話してしまう人は実際には多いのではないでしょうか。そこで、今回は、業務上知った秘密や個人情報を家族に話すのはNGなのか等について解説したいと思います。 *画像はイメージです:■そもそも個人情報の社外持出しは絶対ダメ金融機関はもちろん、一般的な会社では、個人情報を社外へ持ち出すことを禁止し、守秘義務に関する誓約書を従業員に提出させることが一般的ですから、母親の行為は守秘義務(契約)違反に当たります。そして、守秘義務違反を行った従業員は懲戒や損害賠償請求の対象になりますので、安易な気持ちで個人情報を社外に持ち出すことは絶対にやめましょう。 ■家族に有名人の来店情報を知らせるのもダメなの?業務中に有名人が来店したことを不特定多数の第三者に知らせるのは何となくアウトな気がする人も、家族に対しては気が緩んでしまうと思います。公開ロケ等で有名人が来店していた場合であれば、帰宅後に家族に対してこれを話しても違法となることはならないでしょう。しかし、有名人がプライベートで来店していた場合、その情報は業務上知り得た秘密に当たり得るため、厳密には家族に対して話すことも禁止されます。また、そもそも業務中に来店情報を電話やLINE、SNSで家族に知らせることは、労働者の職務専念義務違反に当たることが多いです。したがって、家族に有名人の来店情報を知らせることは、場合によっては懲戒や損害賠償請求の対象になり得ますので、原則として行わないほうがよいです。 ■家族から聞いた来店情報や個人情報をSNSに流すことはどうか?「今日の10時くらいにお母さんが働いている○○銀行△△支店に、●●●●が美人と一緒に来てたんだって!うちも見たかった(ToT)」というようなことをSNSに投稿した場合は、理屈としてはプライバシー侵害に当たり、損害賠償請求の対象になります。ここで、プライバシー侵害に当たるか否かのポイントは、(1)プライベートでの来店か、(2)その情報は一般的に人に知られたくない類のものか、(3)一般的に知られている情報かという点にあります。上記の例でいうと、イケメン俳優の●●●●であれば美人と一緒に行動することは珍しくないかもしれません。しかし、場所が銀行なだけにプライベートの来店である可能性が高く、また、●●●●は結婚しておらず彼女もいないことになっているので一般的には知られたくない情報といえましょう。なお、ここで挙げた例はフィクションであり、実在する人物とは一切関係がありません。プライバシー侵害になるかどうかは判断が難しいですので、自慢したくなる気持ちを抑え、家族から聞いた来店情報や個人情報についてはSNSに投稿しないほうがいいでしょう。以上のように、たとえ家族であっても業務上知った秘密や個人情報を話したり、家族から聞いた情報を不特定多数に拡散したりすると思わぬ不利益を受けることがありますので、秘密や個人情報は誰にも漏らさないほうが安全です。 *この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)【画像】イメージです*チータン / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月04日photo by 編集部奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人である北弁護士。ちょうど転換期を迎えつつあるという弁護士業界が、相談者のためにどのようなサービス提供を目指していくべきかについて、北弁護士独自の見解を伺いました。北 周士(きた かねひと)弁護士東京都千代田区、最高裁に隣接する平河町にオフィスを構える。離婚・相続といった問題はもちろんのこと、ベンチャー企業の若手経営者の支援や士業の開設・運営支援などに注力していることで注目されている。北周士弁護士は、奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人なだけに、困難な状況にいる人を支援したいという熱意に溢れている弁護士である。 ■弁護士業界には人材難の波が押し寄せている!?___事務所として注力している取り組みについて教えてください。1番目はベンチャーないし中小企業の支援で、2番目は離婚問題や相続問題といった感じですね。パートナーの長谷見峻一弁護士は、相続や信託に注力しています。私個人としては、士業の開業と経営の支援に力を入れています。いままで士業のサポートは、弁護士がメインだったのですが、今後は会計士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士など他の士業の方々も、開業とか経営の支援をしていければなと思っていますね。士業は、他人を助ける仕事ですが、他人を助けるためには、自分が経済的・精神的に余裕がないといけないと思います。ですので、私が開業して経験した事柄を、うまく伝えていければ良いなと思っています。 ___今後、弁護士業界はどうなっていくでしょうか?今後、弁護士業界は、人材難が起こると予想しています。そう考える理由は、弁護士になりたがる人がすごく減ってしまったことと、一時的に増やした層が、弁護士登録から5年以上立ち、採用側に回り始めているので、需要と供給のバランスが崩れると考えられるからです。あとは、弁護士一人の事務所の比率は減っていくということも予想しています。現在、東京には、全弁護士の約3万7,000人のうち、約1万7,350人がいます。さらにその1万2,000人が、千代田区、新宿区と、港区、中央区にいるのです。統計局による売上統計を見ると、儲かっている事務所と、そうでない事務所の二極化が起きていますね。そうした中では、経営的な視点をもって、事務所を運営していく必要性が出てくるのではないかと思います。一人事務所は経費的な負担が相対的に重いことや対応できる業種が限られることから、相対的な比率としては減少していくのではないかと思います。 ■法律トラブルも医療と同じく早期発見、早期治療が大切___今、弁護士に相談しようか迷っている方にメッセージをお願いします。弁護士に相談にいくというのは最後、というイメージはいまだに存在します。法律トラブルは、医療と同じで早期発見、早期治療が本当に大切です。早い段階であれば、打てる手はいっぱいあるのですけれども、時間がたってしまうと手の打ちようがなくなります。法律問題は、自分でなんとかしようとして失敗し、問題が重篤化してから助けを求めてくるケースが少なくないのです。最初に問題が起こった時点で、相談に来てくれれば、本人も弁護士も負担が軽く、費用も安く押さえられる可能性が極めて高くなります。例えば会社をたたむのにも、費用がかかります。弁護士の法律相談は、なんとなく料金が高いというイメージで敬遠しているのであれば、今は初回無料相談の事務所も多いので、気軽に助けを求めに来てほしいですね。どの弁護士が良いかといったことを考えなくても、大都市圏の法律事務所の場合、自分の専門外だと思ったら、その分野のエキスパートを紹介してくれることが多いです。弁護士が担当する事案でなくても、怒る人はいませんので、どの士業に相談すればいいかわからないときも同様です。「Yahoo!知恵袋」などの掲示板で、法律相談をする人がいますが、ベストアンサーは、質問者に気持ちの良い回答をした人ですという意味でしかなく、それ以上の正確性は担保されていません。ですので、ネットだけに頼らずに、私でなくても良いので早めに弁護士に、相談することをおすすめします。 *北弁護士のインタビュー記事母子家庭で育った弁護士が語る「離婚問題で相談者のストレスを軽減させる」ことの重要性ベンチャー支援を続ける弁護士が「労務・法務のリスクマネジメント」を重視する理由とは *取材協力弁護士:北 周士(きた かねひと)弁護士(1981年生まれ、静岡県出身。本籍地は佐渡。長野県立上田高等学校卒業。中央大学法学部法律学科卒業。大学在学中の2005年に、司法試験に合格。青山総合法律事務所、安藤武久法律事務所を経て、きた法律事務所を開設。事務所名を北・長谷見法律事務所に変更し現在に至る。企業・個人を問わず困難な状況にいるクライアントの利益を最大化することを目標にしたサポートを行なっている。ベンチャー企業支援や、士業の開設支援などを得意分野にするほか、母子家庭で育った自身の経験をもとに、離婚問題や相続問題などに関する親切なアドバイスが評判の弁護士である。著書に『弁護士-独立のすすめ』(第一法規株式会社)、共著本に『弁護士 独立・経営の不安解消Q&A』(第一法規株式会社)などがある。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月04日photo by 編集部企業が個人情報を流出するという不祥事を起こすと、大きく報道されることの多い昨今ですが、つい先日も佐川急便が近畿大学に在籍する学生約100名の「名簿」を紛失したとして各種メディアで報じられました。現在のところ直接の被害は発生していないようなのですが、紛失した名簿には学生の氏名や住所、電話番号などが記載されていたため、悪用される危険性は非常に高く、紛失した佐川急便側の責任は重大であると考えられます。ただ、自分の個人情報は流出してしまったものの、実際に被害がない場合、流出させた側に損害賠償は請求できるものなのでしょうか。また、もし実際に被害があった場合にもどの程度の損害賠償を請求できるのでしょうか。今回の記事ではこれらの疑問点について民事法務に詳しいピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお話を伺いました。*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。) ■名簿紛失した学生は佐川急便に損害賠償請求は可能?まず、今回の事案について、学生は佐川急便に損害賠償を請求することは可能なのでしょうか?「個人情報漏洩のケースでは、これまでの判例からみますと、実際に実害が生じない場合でも流出自体の慰謝料として一人当たり3万円程度が最高額で認められる場合はあります。実際に「個人情報を悪用された」場合については、その悪用によってどの程度損害が生じたかによって責任を追及できる限度は異なってくるでしょう。」(森川弁護士)実際の被害がない場合、請求できる金額はそこまで大きくないのですね。また、仮に損害があったとしても、どの位の損害賠償が行われるかは被害の大小によってケースバイケースになるようです。 ■個人情報が悪用された場合、責任は重くなる?現在のところ被害は確認されていないようなのですが、もし今回の紛失が原因で個人情報が悪用されてしまった場合、佐川急便が負うべき責任はより重くなるのでしょうか?「個人情報の紛失→その個人情報が悪用される→実際に損害が発生する、という因果関係が証明されることが前提となりますが、その紛失した情報が“悪用”されたことが原因で直接損害が発生した場合は、その額を請求できると思います。よって佐川急便が負うべき責任はより重くなると言えます」(森川弁護士)現状、まだ被害は確認されていないため仮定の話にはなりますが、もしも紛失した個人情報が悪用されてしまう結果となった場合、佐川急便の責任は重大化する事になりそうですね。 ■誰に対して損害賠償が可能になるのか?最後に、仮に今回のような個人情報流出の被害者になってしまった場合、誰に損害賠償を請求できるのでしょうか?「誰に請求できるかですが、まずは、その個人情報を悪用した人に対して損害賠償を行う事になります。ただ、それが誰なのか判明しないときに、今回の事件であれば流出元である佐川急便に対して損害賠償請求をできるかどうかということですが、上記で解説したように情報流出によって損害が発生したという因果関係を証明することができれば可能になると思います。」(森川弁護士)まず損害賠償請求をすべきなのは悪用した人物が先になる、というのは意外に感じる方も多いのではないでしょうか。ただ、個人情報流出被害の場合、悪用者を特定するのは難しいため、やはり森川弁護士の解説通り因果関係を証明した上で流出元に損害賠償請求を行うことが確実な方法だと言えるのではないでしょうか。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】編集部
2016年12月04日終電間際、慌てて満員電車に乗ったら空いている場所が!そこに行ってみたら床には嘔吐物が…なんてことはありませんか?12月の忘年会シーズンには特にありがちで身近な問題ですが、電車内で嘔吐して汚す等することは犯罪かどうかについて、検証します。*画像はイメージです:まず、刑事上の犯罪になるかどうかですが、故意に嘔吐物を相手に引っかけた場合には、「暴行罪」、働いている人に同じようなことをすれば「威力業務妨害罪」になる可能性はありますが、そうでない限りは大丈夫です。誰かの大事な物を嘔吐物によって使い物にならなくしてしまった場合は、「器物損壊罪?」と思うかも知れませんが、この罪は故意犯しか罰しませんので、やはり罪にはなりません。また、嘔吐物が相当悪臭を放ちますので、迷惑防止条例の「悪臭行為」に当たるのか?と考えられる方もいるかと思いますが、基本的には当たりません。ですので、電車内での嘔吐で、警察の世話になることはまずないと思っていただいて結構です。では、民事上は何らかの法的責任が発生するでしょうか?3つのケースに分けて、個別に見ていきましょう。 ①吐いた上に処理をしない場合は?吐いたものをそのまま放っておくと、当然の如く鉄道会社の方が清掃などの処理をすることになります。嘔吐行為は、通常はお酒の飲み過ぎによっておきるもので、いわゆる不注意によって清掃などをさせる手間を発生させることになりますので、本来は損害賠償請求の対象になります。ただ、通常、吐くような人は、既に自分の嘔吐物を処理することなどできないでしょうし、鉄道会社もそのことを見越して清掃の大勢を整えているようですので、特に損害賠償請求をしないそうです。 ②誰か(人・物)を汚した場合は?理屈は同じで、不注意によって嘔吐し、それによって誰かを汚してしまうわけですから、それによってクリーニング代が発生したり、その物が使い物にならなくなったりするわけです。従って、それに掛かった費用は、損害賠償請求されることになります。 ③車内清掃で遅延などした場合は?車内清掃で遅延した時間にもよるでしょうけど、通常の嘔吐物程度であれば、最短での時間によって清掃が可能でしょうし、損害を発生させるほどの遅れがでるとも思えませんので、特に遅延させたことそのものについて損害賠償請求されることはないものと思います。 *この記事は2014年6月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*TungCheung / Shutterstock.com
2016年12月03日*画像はイメージです:ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーといえば、3人の養子を含む6人の子供を育て家族を大事にしていることで有名な夫婦でしたが、今年9月、離婚を申請したことが発表されました。また、6人の子供の親権をめぐり争いがあったことも報じられています。日本でも、子供を持つ夫婦が離婚する場合、子供の親権をどちらが持つかを決めた上で離婚届に記入する必要があります。親権者は子供を養育し、その財産を管理する権利や義務を持つことになります。現代では8割以上のケースで母親が親権を獲得しており、父母の双方が親権を主張した場合、母親が有利だと言われています。では、父親はなぜ親権を得にくいのでしょうか?和田金法律事務所の渡邉寛弁護士にお聞きしました。*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。個人事案は子どもいじめ事件から相続争いまで、企業事案は少額の債権回収から渉外買収案件まで、あらゆる案件に携わる。) ■なぜ父親は親権を獲得しにくいのか?一般的に父親は親権を獲得することが難しいと言われますが、その理由をお教えください。「親権者は、子供の成長、幸せのために父母どちらに持たせるのがいいか、親の側の事情、子供の側の事情を総合的に比べて決められます。しかしながら、従前から子供が幼いうちは母性的な養育と愛情が重要であるという、母親優先の考えがあります。現代では家庭の在り方や父母の役割が変化していることもあり乳幼児の母親優先が理由とされることは減っていますが、実際に主に母親が育児を担ってきて、別居時に母親の元に子供がいる状況が多いため、養育の継続性・実績から、母親が親権者となることが多いです。別居時に母親の元に子供がいると、離婚の際に父親が親権を得るのは相当難しいです。両親を行き来して環境が不安定になるのは子供のために好ましくないこともあり、養育環境に問題がなければ、現状を維持して母親を親権者とする判断がされやすいです。」(渡邉寛弁護士) ■子供が親権者を選ぶことはできないのでしょうか?「子供の年齢が高くなるにつれて子供の意向が尊重されます。10歳くらいから本人の意思として配慮され、15歳以上になると子供の意向が親権者の判断において大きな要素になります。」(渡邉寛弁護士)子供の意志も重要ではあるものの、子供の物心がつくまでは育児を担った実績がある親が親権を得やすいのです。家庭において主に収入を得る役割を担うことが多い父親は、必然的に親権獲得が難しくなります。 ■親権獲得を望む父親がしておくべきこと親権者となるのが難しい父親ですが、実際に親権を得たケースではどんなものがあるでしょう?「母親が子供を連れて家を出て行ったケースで、父親が親権を得たことがありますが、このケースでは、母親に健康面で不安があり、子供も度々父親の元に戻っていたという事情がありました。」(渡邉寛弁護士)上記のケースは少々特殊な状況かもしれません。一般的に、親権獲得を望む父親は離婚にあたりどのような準備をしておけばよいでしょうか?「父親に限りませんが、親権者となるには、子供を手元において、健全で安定した養育を継続して実績を伴わせることが大事です。仕事の安定も大事ですが、ご実家の協力を得るなどして環境を整える必要があります。」(渡邉寛弁護士) 親権者を決定する時、離婚の原因が夫婦のどちらにあったかは基本的には考慮されません。子供の年齢が低いほど、どれだけ子供の養育にとって望ましい環境を用意できるかが決め手になってきます。経済面だけでなく、生活面の安定を図ることが必要なのです。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月03日11月30日に、権利者の許可なく、書籍を電子データ化し販売を行う、いわゆる“自炊”を代行する業者が逮捕されたという報道がなされました。差止や損害賠償などを求める「民事」の事件はこれまで何度か報道されましたが、逮捕など「刑事」の事件が報道されたのは今回が初のようです。“自炊”で逮捕に至るのか、疑問に思われるか方や不安をおぼえる方もいらっしゃると思いますので、今回は“自炊”の問題点についてまとめてみます。*画像はイメージです:■そもそも「自炊」ってどんな行為?“自炊”とは、本や雑誌などをスキャナなどを使ってデジタルデータにする行為です。タブレット端末などの普及により、本や雑誌をデジタルデータとして閲覧することがますます便利となりました。また、デジタルデータは場所をとらないのでスペースの節約ができ、劣化もしません。このような理由から、手持ちの本や雑誌をデジタルデータ化する行為、つまり“自炊”は一般的なものとなっています。ただ、“自炊”の作業は楽ではありません。一般的な“自炊”の方法は、背表紙を裁断するなどしてページをばらばらにし、それをスキャナに流すというものです。一冊だけでもそれなりの労力を使うものですから、これを膨大な量の本や雑誌について行おうとすると、かなりの手間と時間がかかってしまいます。そこで登場したのが“自炊”の作業を本人に代わって行うとする業者で、これが「自炊代行業」と呼ばれるものです。 ■「自炊」は違法なの?「私的使用のための複製」(著作権法30条)にあたる限り、“自炊”は違法ではありません。合法であるためのポイントは、①私的使用目的で行うこと②使用する者が自分で行うことこの2点です。つまり、自分で楽しむために自分で作業を行う限り、違法ではありません。一方、自炊代行業は、このうちの②が欠けますので、違法と判断されます(2016年に最高裁で確定しました)。ただ、自炊代行業も一定のニーズがあるところで、これを違法と判断することは時代に合わないなどといった批判も根強く、“自炊”についての議論が終わったわけではないようです。 ■今回のケースは何が問題だった?報道によれば、今回逮捕された自炊代行業のケースは、“自炊”によって得られたデータを他人に転売などしていたという点が特徴です。つまり、②が欠けるばかりか、そもそも①すら欠けていたというケースです。自炊代行業肯定論の根拠となっているのは、“業者は顧客の作業を手伝っているだけ” つまり “業者側は得られたデータは使用せず、データはあくまで顧客が私的使用をするためだけのものである” というものでした。今回のケースは、業者側もデータを販売するなどしていますから、そもそも私的使用目的ですらなく、どのような考え方によっても違法となる悪質なものでした。 ■安心して「自炊」を行うためには?やはり自分自身で“自炊”の作業を行うのが無難でしょう。(“自炊”の目的で裁断機やスキャナを貸し借りする行為は適法です)近しい人に手伝ってもらって一緒に作業を行う程度であれば許され得るでしょうが、自炊代行業を利用する際はやはり著作権に留意しなければいけません。他人の著作物を無断で複製して販売するなどの行為は犯罪ですから、注意しなければ思わぬところで犯罪に巻き込まれることもあります。著作権違反の責任は決して軽いものではありません。“自炊”を行う際は、ルールやマナーを正しく守って行いましょう。 *著者:弁護士 渡辺 泰央(四谷コモンズ法律事務所。インターネットトラブルやWEBに関する事案を多く取り扱う。運営サイト「WEBに関わる法律講座」)【参考】古書店へ転売も、書籍の「自炊代行業」男性を逮捕 (平成28年11月30日一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)HPより)【画像】*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月03日photo by 編集部実家がお寺という経歴を持つ八坂弁護士。東京都中野区にある「野方」で「マチベン」として活躍する彼に、和解という解決方法が難しいといわれる「行政トラブル」をどのように勝訴へと導いたのかを語ってもらいました。八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士東京都中野区、西武新宿線「野方」駅にある「しいの木法律事務所」は、地元に密着した法律事務所で、現在、経験豊富な3名の弁護士が在籍している。所長の八坂玄功弁護士は、いわいる“マチベン”として地域住民のために弁護活動を行う傍ら、行政事件のエキスパートとして数多くの難事件を解決。自身の利益よりも、依頼者の利益を優先する人情派の弁護士である。 ■「行政トラブル」は訴訟を当事者以外の人をいかに巻き込むかがカギ___これまでに解決した事件の中で、もっともやりがいを感じたのはどんな時ですか?私は、行政事件や行政を相手とする事件を比較的多く請け負っています。比較的最近の事件では、千葉県松戸市が原告、NPO法人「コミュニティ・コーディネーターズ・タンク」が被告となった補助金相当額の損害賠償請求事件の弁護活動があります。この事件は、千葉県が厚生労働省の雇用創出助成金制度を利用するかたちで、県内各地に事業を募集。そこに応募し委託事業を行っていた松戸市の同NPO法人が、補助金を出していた松戸市から訴えられた事件です。千葉県のほうから助成金の要件などに間違いがあると指摘を受けた松戸市は、NPO法人側に詳しい事情を聞かないまま、すぐに3,000万円の助成金を県に返還してしまいました。それで即、 NPO法人に3,000万円返せといってきた乱雑な事件だったのです。私のほうに依頼があったのは、NPO法人側が一審で負けた後です。 NPO法人側は、高裁で過去の膨大な資料を証拠として提出し、やむをえない事情があったことなどを、相当丁寧に主張したことで、最終的には、ほぼ逆転勝訴で法人側に責任がないという判決を得ることができました。思い入れのある事件は色々ありますが、この事件は、なかなかやりがいがありましたね。 ___この事件を解決するために、どのような工夫をされましたか?住民訴訟や、行政相手の訴訟の多くは、支援者や応援団が沢山いて、裁判の傍聴人も多くの人数が集まってくれます。そういう人たちに、少し語弊があるかもしれませんが、有意義なかたちで裁判に向き合えるように工夫して弁護活動をしています。 事件の争点について、説明会や報告会をしばしば開催するなどして、直接の当事者だけではなくて、それを応援している人々に、事件の流れや争点、裁判で争う意義などを分かってもらい、一緒に力を合わせて戦うという雰囲気を醸成していくことが注意した点でもあるし、こうした事件をサポートする面白いところでもありますね。 ___行政事件を扱う件数は、他の弁護士事務所に比べると多いですか?多いと思います。行政事件というのは、和解で解決するということがめったにありませんので、ほぼ全ての事件が判決までいかなければいけません。したがって、かなり負担が重いのですが(笑)、勝つとうれしいですね。刑事事件で無罪判決を取るのに近いような感じがあるので、やりがいや面白みがあります。この分野は、これからも一生懸命やっていきたいと思っていますね。 ■制度認知が進んでいる「成年後見」はじめ、高齢者の法トラブルに注力___ほかに相談が増えている事案はありますか?高齢化社会が進んでいるので、やはり相続問題、高齢者の財産管理、成年後見などの件数が増えていると感じます。「成年後見(※)」については、制度の利用が普及してきて、だんだん認知されてきたことや、あるいは金融機関などが、企業におけるコンプライアンス強化によって、認知症の疑いがあるという人に成年後見を使うようにアドバイスせざるをえなくなってきていることも背景にあると思います。こうした増えている事案は、ニーズがあるということだと思いますので、今後もそういった事案に対しては力を入れていきたいと思っています。※成年後見…認知症などで判断能力が十分ではない方を法律的に支援・援助するための制度 *八坂弁護士のインタビュー記事解決が困難な「派遣社員の雇い止め」裁判…実家がお寺の弁護士が和解できた理由とは?相談者にはどんなメリットが?小さな法律事務所が「他士業と連携」する理由とは *取材協力弁護士:八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士(1968年生まれ、大分県出身。岡山県立岡山芳泉高校卒業。東京大学理科2類入学。東京大学教育学部中退。東京弁護士会所属、司法修習第52期終了、2000年4月弁護士登録。2000年4月~2005年7月、代々木総合法律事務所に勤務し、2005年8月に「しいの木法律事務所」を開設して現在に至る。宅地建物取引主任者資格も保有。民事・刑事・家事・税務・経営・労働・相続問題など、どのような問題でも対応する弁護士として活動している。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月03日「今夜は忘年会だから帰りは遅くなるね」…12月の週末ともなると、夫とのこんなやりとりが増えるかと思います。実は12月は探偵事務所や興信所で「浮気調査」が増える傾向にあるそうです。理由としては「忘年会で遅くなる」といったウソが成立しやすく、浮気相手との時間が作りやすい時期だからだそうです。というわけで、今回は配偶者が浮気(不貞行為)をしていた場合に、それを立証するために必要な証拠の集め方について、3つの代表的な方法を解説したいと思います。*画像はイメージです:■配偶者の不貞行為が発覚した場合の基本的な流れまず、配偶者に不貞行為があった場合には、離婚事由(民法770条1項1号)となるほか、配偶者及び不貞相手に対して、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることができます。もっとも、不貞行為をした配偶者に対して離婚を申し立てたり、あるいは慰謝料を請求したりする場合、配偶者が自分の不貞行為を認めている場合でない限り、離婚を申し立てたり、慰謝料を請求する側が、相手に不貞行為があったことを証明する必要があります。そして、当該証明をするためには客観的な証拠が必要となります。相手に不貞行為があるといくら主張したとしても、それを裏付ける証拠がなければ裁判には勝つことができません。以下、私のこれまでの裁判の経験を踏まえ、裁判において不貞行為を立証するためには、どのような証拠が必要となるのかについて説明をしたいと思います。 ①配偶者と不貞相手との性交渉の様子を撮影、録画した写真、ビデオ配偶者が不貞相手との性交渉の様子を自分の携帯電話等で写真を撮影したり、ビデオを録画したりしている場合、当該写真やビデオ映像は、不貞行為を立証する直接的な証拠となります。そのような写真やビデオ映像があり、そこに映っている人物が配偶者であると特定さえできれば、それだけで不貞行為を立証することができるでしょう。 ②配偶者と不貞相手とがホテルに入っていくときの様子を撮影した写真配偶者と不貞相手が二人でホテルに入っていくときの様子を撮影した写真も、配偶者の不貞行為を立証するための重要な証拠となります。なぜならば、大人の男女二人が、単にそこで休憩するためだけにホテルに行くことは通常考えられないためです。すなわち、男女二人がホテルに入った、という事実から、ホテル内で性交渉が行われたということが合理的に推認されるわけです。問題は、そのような写真を入手する方法ですが、配偶者に気づかれずに、1日中配偶者のことを尾行し、不貞相手とホテルに入る瞬間を写真におさめることは、よほど時間と体力がある人でない限り、難しいでしょう。そこで、探偵を雇って、配偶者を尾行してもらい、配偶者と不貞相手がホテルに入る瞬間の写真を撮ってもらう、という方法が考えられます。もっとも、探偵を雇うためには相当な費用がかかりますので、たとえば、恋人同士がホテルに行きそうな時間帯(例:毎週金曜日の午後8時~午後10時まで)に絞って探偵に尾行してもらえば、通常よりも料金を低く抑えることができます。 ③配偶者と不貞相手との間のメール配偶者と不貞相手との間で、恋人同士がするような内容のメール「愛してるよ。」「今夜はどこで会う?」「次はいつ会える?」等のやり取りをしている場合には、当該メールも、不貞行為を推認する証拠となり得ます。 以上、不貞行為を立証するための代表的な証拠を3つあげました。もし、配偶者に対して離婚や慰謝料の請求をすることを検討している方は、上記のような証拠をそろえることが重要となってくるでしょう。 *この記事は2014年4月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*astarot / Shutterstock
2016年12月02日12月に入り、忘年会シーズンがやってまいりました。この時期決まって起こる事の一つとして終電を逃した場合などによるタクシーでの帰宅。しかしながら、仕事納めやストレス発散のため、ついつい飲み過ぎてしまうことも多々あるかと思います。そこで、今回はそんな忘年会などで飲み過ぎてしまい「タクシー内で嘔吐してしまった場合」、法的な責任は発生するのかを説明してまいります。*画像はイメージです:■タクシー内での嘔吐は「善管注意義務違反」!タクシーに乗るということは、両名の間で旅客運送契約が締結されていることになり、運転手は、お客さんを安全に目的地まで運送し、お客さんは運賃を支払う義務を負うことになります。このことはご存じの方も多いでしょう。実は、このこと以外にも“互いに損害を生じさせないための善良なる管理者としての義務”(善管注意義務)が発生するのです。自身の嘔吐の可能性を考慮に入れず、タクシーの座席を嘔吐により汚損してしまうということは、この「善管注意義務」に違反したということになります。善管注意義務違反があった場合、乗客はそれにより生じた損害を賠償する必要がありますが、その賠償の範囲は、社会通念上生じる内容に限られます。 ■タクシー側の「逸失利益」を賠償しなければならないそこで、その賠償にあたるのが「逸失利益」によるものです。「逸失利益」とは、「本来であれば得られるはずだった利益」が得られない場合にそれを損害として賠償請求の対象とする概念をいいます。ですから、嘔吐したことによって、タクシー会社が本来得られたであろう利益を損なったか否か、という観点から考えることになります。タクシーの座席を嘔吐によって汚損してしまった場合、そのタクシーが座席交換ないしクリーニングを終えるまで、他の乗客を乗せることはできず、タクシーとしての営業ができなくなってしまうことは、社会通念上相当のことと言えます。とすると、理屈としては、このタクシーが稼働できなかった間に得られるべき利益を、逸失利益として損害賠償請求することはできると言いやすいのではないでしょうか。 ■タクシー側には全く責任がない?もっとも、逸失利益の存在は、請求をする側に立証責任が課せられます。その場合、その汚損したタクシーが稼働するはずであったこと、それによって得られた利益の具体的金額を含めて立証する必要が出てきます。そうすると、たとえば保有台数が何十台にも上るタクシー会社の場合には、配車を工夫するなどして逸失利益の拡大をある程度防止できる反面、個人タクシーの場合にはそれが難しいという点があり、請求できる逸失利益の額が異なってくる可能性もあるように思われます。なお、タクシーは正当な理由がない限り基本的に乗車拒否ができないとされており(道路運送法13条)、正当な理由の一例として、泥酔者が挙げられております(自動車運送事業等運輸規則第13条3号)。とはいえ、忘年会が終わって帰る足もなくなれば、必然的にお世話になりたいのもまたタクシー。飲みすぎてしまうとお金も記憶も、ときには理性も遥か彼方へ消えてゆきます。せっかく乗せてくれたタクシーの運転手さんに不愉快な思いをさせないためにも、これからの忘年会シーズン、飲みすぎにはくれぐれもご注意を! *著者 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)【画像】*BLACKY / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月02日11月30日、タクシー会社のチェッカーキャブは、同月28日に覚醒剤取締法違反で逮捕されたASKA容疑者を撮影した映像をテレビ各局に提供したことを認め、謝罪しました。これは、ASKA容疑者が逮捕直前に乗車中だったタクシーでの社内の様子を、ドライブレコーダー(ドラレコ)で撮影した映像でした。本来は、タクシーが事故を起こした際の証拠として、またはタクシー運転手と乗客との暴行などのトラブル原因を証拠づけるための意味合いが強かったはずですが、今回のような映像提供が認められると、プライバシーや個人情報の侵害につながるのではといった非難の声があがっているようです。そこで、タクシー会社がドライブレコーダーの映像を第三者に提供する事に対して、法的なルールはどうなっているのか、解説していきます。*画像はイメージです:■肖像権とプライバシー侵害が問題ドライブレコーダーによる撮影は、通常は事故状況を撮影したものであり、肖像権が問題となることはありませんが、車内に乗車している客の容貌も撮影できるタイプの場合は、肖像権の侵害、プライバシー権の侵害が問題となることがあります。まず、肖像権とは、憲法上の幸福追求権を根拠にしたみだりに撮影されない権利、あるいは撮影された写真をみだりに利用されない権利であると把握されています。プライバシー権とともに、法律ではなく、憲法を基に判例上認められているものです。今回は、刑事事件の被疑者になっているとはいえ、たとえ有罪判決を受けた受刑者であっても、肖像権やプライバシー権は保有します。 ■タクシー車内の撮影と無断公開タクシー車内でのドライブレコーダーによる撮影行為が違法か適法かは、法律上明確な基準があるわけではありません。違法となるかどうかは、一般には、被写体の肖像権・プライバシー権の尊重と撮影者の撮影の必要性の利益衡量で決まることになります。被撮影者による撮影の許諾の有無や目的外利用の有無も判断基準となります。タクシー車内における客の容貌撮影についてみた場合、まず、防犯の必要性から、乗車時にお客の黙示の撮影の同意があったものと評価することは可能です。撮影することをタクシー側が特に隠していたような場合を除き、他のタクシーも選択できた以上、黙示の撮影の同意があったと考えることは可能です。しかし、黙示の同意は、あくまで防犯に必要な範囲に限られ、むやみやたらに撮影した映像を公開することまでの同意は、擬制することは困難だと思います。また、防犯目的に限定して同意した撮影の目的外使用ともいえます。報道機関が事件を報じる際に撮影した被疑者の映像を放映するのと異なり、公益目的も公共の利益に適う映像公開の必要性も乏しく、本人の同意のないドライブレコーダー映像の公開は、プライバシー権侵害と判断される可能性が高いでしょう。 ■賠償責任を負う場合もある今回は、映像を公開したタクシー側がすぐに謝罪したようですので、プライバシー権侵害で訴えられることはないと思いますが、ホテルや飲食店の従業員が顧客の情報をインターネット上に公開したケースでは、賠償責任が認められることもありますので、安易なプライバシー権侵害には注意が必要です。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Molostock / Shutterstock
2016年12月02日DeNAが運営する医療・健康情報WEBメディア「WELQ(ウェルク)」が11月29日の夜に全ての記事を非公開としました。背景には、不確かな情報を元にした医療・健康系の記事を大量に公開していたことに対する批判が集まったことがあります。問題は、都の福祉保健局がDeNA担当者を呼び出す事態にまで発展しています。本件ではどのような点が具体的に問題とされたのか考えてみましょう。*画像はイメージです:■認められた効果・効能等以外を表示してはいけないWELQでは、医学的根拠が必ずしもないにもかかわらず、効果や効能を謳う内容が掲載されていました。薬機法68条は、1項で「何人も」虚偽又は誇大な記事を広告・記述・流布してはならないとし、2項で「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事」の広告等も禁止しています。医薬品の販売をしているわけではないから問題ないのでは?と考える方もいるかもしれませんが、禁止されている主体は「誰でも」であり、また禁じられるのは「広告」に限りません。したがって、ウェブ記事であってもこれに当たることになるのです。なお、記事には「ようです」といった形で結論を断定していないものも多かったようなのですが、記事全体としてみれば効果・効能等を表示しているとみなすことができるのであれば、これに抵触する可能性があります。 ■他の記事からの盗用はいけないまた、記事はインターネット上にある記事をほとんど丸々コピーして、語尾だけ変えるといったことをしているようですが、この点は著作権法に抵触しています。インターネット上に公開されているからといって、それを勝手に使って良いかというと、当然そのようなことはありません。私的使用は許されますが、インターネット上に公開することは公衆送信権という権利を侵害するため、許されません。そのため、侵害にならないためには、適切な「引用」といえることが必要です。裁判実務上、引用された部分が明確であること(明瞭区別性)、引用する側が「主」で,引用される側が「従」といえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。語尾だけ変えた記事は、このいずれも満たしていないため、適切な「引用」とはいえませんので、この点も問題といえます。なお、しばしば「無断利用」といわれたりしますが、適切な「引用」は事前・事後に許可を求めることは不要なので、「無断」かどうかという点は問題になりません。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*studiostoks / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月02日毎年12月には、探偵事務所や興信所で「浮気調査」が増える傾向にあるそうです。理由としては「今夜は忘年会で遅くなる」といったウソが成立しやすく、浮気相手との時間が作りやすい時期だからです。当然、既婚者が配偶者以外の女性、あるいは男性と性行為をした場合には、不貞行為として離婚原因に該当し、損害賠償責任を負うことはみなさんご存じかと思います。よく「どこからが浮気?」といった質問があったりしますが、では法的には「どこからが浮気(不倫)」なのでしょうか。キスはしていても性行為をしていない場合には、一切責任を負わないのでしょうか。今回はこの線引きについて説明します。*画像はイメージです:■そもそも不貞行為の定義とは?不貞行為とは、配偶者のいる人が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の人と性的関係を結ぶことをされています(最高裁昭和48年11月15日判決)。もっとも、この「性的関係」には、性行関係に限らず、夫婦間の貞操義務に忠実ではない一切の行為を含むと考えられています。そのため、性行為自体は行っていなくても、配偶者以外の人と性行類似行為を行ったり、同棲したりした場合には、夫婦間の貞操義務に忠実ではない行為として「不貞行為」に該当し、損害賠償責任を負う場合があります。同様に、配偶者以外の人とキスをする行為も、夫婦間の貞操義務に忠実ではない行為として「不貞行為」に該当し、損害賠償責任を負う場合があります。さらに、配偶者以外の人と、2人で頻繁に食事や遊びに行く程度の交際であっても、それが非常に頻繁だとか、配偶者に交際をやめるよう言われたあとも交際を続けているような場合には、夫婦間の貞操義務に忠実ではない行為として「不貞行為」に該当する場合もあるでしょう。 ■不貞行為を立証する証拠は?それでは、どのような証拠があれば、配偶者の不貞行為を立証することができるのでしょうか。不貞行為を立証する証拠については、以前に私が執筆した記事(不貞行為を立証するために必要な証拠とは)をご覧いただきたいのですが、上記のとおり、性的関係を結んでいない場合であっても不貞行為に該当する場合がありますので、たとえば、配偶者以外の異性との間の親しげなメールや、仲良く手をつないでデートしている場面の写真等も、不貞行為を立証するための証拠になり得るということになります。 *この記事は2014年9月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月01日家事の分担やお金の使い方など、一緒に生活するにあたり何かしらのルールを夫婦間で設けている家庭がほとんどかと思います。ルールが破られることなく円満に生活を送ることができれば何の問題もないのでしょうが、長年一緒に過ごしている以上、うっかりしていたり忘れてしまってルールを破ってしまうこともあるでしょう。ルールを破らないように、抑止力を持たせるために「浮気をしたら100万円を払ってね」といったルールを設けているご家庭もあるようです。この「浮気をしたら100万円」というルールですが、もしも一方が浮気をした場合は支払う必要があるのでしょうか?解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■「婚姻契約」の効力について民法は、夫婦間の契約は、婚姻中、いつでも取り消すことができる、と定めています。他人間で交わした通常の契約には、このような定めはありません。つまり、夫婦間の契約の拘束力は、他の契約に比べて弱いものということができます。しかし、だからといって、契約に効力がないというわけではありません。原則として、契約を交わせば、どちらかが取り消さない限りは、夫婦間の契約は原則として有効です。また、法律上は「婚姻中」いつでも取り消すことができる、とされていますが、判例には、離婚に至らなくても夫婦関係が破たんしてしまった後は、取消が認められないとしているものがあります。破綻してしまえば、たとえ戸籍上は夫婦となっていても、実質的には他人同士と考えて、契約に対する拘束力も同様に考える趣旨といえます。 ■「浮気したら100万円」ルールは有効か?「浮気したら100万円支払う」というルールは、社会道徳に反しているような内容ではありません。ペナルティの「100万円」も特に法外な金額とはいえないでしょう。このように「浮気をしたら」という条件が成就することによって契約の効力が発生する契約は、「停止条件付契約」といわれるもので、一応は、有効と考えられます。ただ、「浮気」という言葉は抽象的なもので、どこまでの意味を含むのかについては、いざというときに夫婦間で争いとなる可能性もあります。例えば「性交渉をしたら」「キスをしたら」など、ある程度具体的に内容を詰めておく必要があるでしょう(但し、内容を詰める段階で夫婦間に軋轢が生じる可能性も否定できません)。 ■ルールを定めることの懸念浮気・不貞の中には、いわゆる火遊び程度の軽いものから、「家族を捨てた」ともいえる悪質なもの(長期間に及ぶ、生活費を入れない、婚外子が生まれる)まであります。不貞による離婚については、その内容によって、高額の慰謝料を請求できる場合も少なくありません。しかし、このような契約を結んでしまうと、どんなに悪質な事案でも、100万円しか受け取ることができない可能性も否定できません。個人的には、このようなルールを定めるのであれば、(1)婚姻契約で定める「100万円」が慰謝料とは異なるペナルティの意味を有するもので、浮気された方は別途慰謝料を請求できる、あるいは、(2)最低100万円を支払う、などと、場合によっては、もっと高額の請求をしうる余地を残しておくべきだろうと考えます。ただ、結婚しようという時点で、このような約束を求めると、かえって相手からの信頼を損なう場合もあり得ます。いずれにせよ、安易なルール作りは、かえって将来的な責任追及の機会を失う可能性もあることに、ご注意いただきたいと思います。 *この記事は2015年2月に公開されたものを再編集したものです。*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】*わたなべ りょう / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月01日11月20日、福岡県北九州市の病院で、穴の開いた点滴1袋がみつかったことが判明。同病院では10月にも同様の事件が3件発生し監視体制を強化していましたが、まったく効果がありませんでした。医療機関としては致命的な事態であるだけに、不安が広がっています。*画像はイメージです:■事件当時は休診日だった警察の調べによると、事件が発生したのはいずれも9階のナースステーション。点滴袋に小さな穴が開けられており、何者かが針のようなもので差したものとみられています。病院側は監視カメラを設置するなどして再発防止に務めていましたが、事件当時は休診日で停電していました。穴のほかに薬品保管庫から鎮痛剤の容器2本と鍵束がなくなっていることも判明しており、事情に詳しい内部の犯行である可能性が高い状況です。病院はさらなる監視体制の強化と再発防止策をまとめて九州厚生局と北九州市に報告していますが、同じことが繰り返されているだけに、不安の声も多いようです。 ■病院に法的責任はないのか?今月見つかった穴が開いた点滴袋については、看護師が点検中に発見したため患者に投与されることはありませんでしたが、10月の事件では投与中に発見されたものもあったそうです。直接的な被害は報告されていませんが、同じ事件が頻発しており、患者に不安を与えている状況であることは確実です。このような場合医療従事者サイドには法的な責任はないのでしょうか?医療問題に詳しい三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士に見解を聞いてみました。*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。) ■誰が損害を被ったかが賠償責任の争点に「今回の件では看護師2名のチェックにより患者さんへの投与前に見つけられたとのことなので、その点はよかったと思います。ですが10月から同種の事件が続いているので、病院としては一旦講じた再発防止策が十分でなかったのでは、との視点でさらに検討する必要があると思われます。病院関係者、入院患者、見舞客が出入り可能な状態だったようなので、穴が故意に開けられたのか、過失によるのか、故意であるとして、“誰が、何のために”行ったのかなど、全く不明な状態ではあります。何者かが、故意に穴を開けたとすれば、そのことによって生じた損害について当該人物が賠償責任を負うこととなりますが、本件では患者さんに害は生じていません。したがって現時点で考え得る“損害”とすれば、“当該点滴袋が使えなくなったこと”すなわち点滴袋の所有者である病院の損害ということになります。故意行為であるとすれば病院側の予防にも限界はあると思われ、事実の解明が待たれるところです。」(伊東弁護士)病院側に道義的責任はあると思われますが、現状患者に直接的な害が出ていないため、病院側が「損害を受けた側」ということになるようです。患者さんに被害が出ていないことが不幸中の幸いですが、今後出ないとも限りません。早期の真相究明と犯人逮捕が望まれます。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月01日photo by 編集部実家がお寺という経歴を持つ八坂弁護士。彼が所長を務める、東京都中野区「野方」にある地域密着型の「しいの木法律事務所」では“税理士”や“社労士”といったほかの士業と、業務の連携を進めているといいます。まだまだ珍しいというこのような取り組みは、相談者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?八坂弁護士の考えを伺ってきました。 八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士東京都中野区、西武新宿線「野方」駅にある「しいの木法律事務所」は、地元に密着した法律事務所で、現在、経験豊富な3名の弁護士が在籍している。所長の八坂玄功弁護士は、いわいる“マチベン”として地域住民のために弁護活動を行う傍ら、行政事件のエキスパートとして数多くの難事件を解決。自身の利益よりも、依頼者の利益を優先する人情派の弁護士である。 ■なぜ近隣トラブルを扱わない? 地域密着型の法律事務所ならではのルール___事務所で注力している取り組みについて教えてください。当事務所のホームページを見てもらうとわかるように、地域の人が問題としていることに対して、幅広くなんでも対応できるようにしています。来るものは拒まずといった感じですね。事務所名の「しいの木」も、地元中野区の区の木に由来しています。クライアントは、当事務所近隣の地域の方が多いです。もちろん、地域の人だけに限定しているわけではなく、遠方から来てくれる方もいます。以前携わった行政事件では、松戸のNPO法人が、当事務所のウェブサイトで、私が行政事件を数多く担当してきた実績を見て、探して来てくださったみたいです。このように、なんでもやっているのですが、一つだけ決めたルールがあって、当事務所の近所の人の近隣トラブルはやらないことにしています。両方とも潜在的な顧客なので、近隣紛争は最低10キロくらい離れていないとやらないですね(笑)。それは、地域に密着した事務所でありたいという思いが強いからなのです。 ■他士業との連携でお互いの短所をカバーしあう___事務所のホームページには「他士業との連携」を掲げられていますが、この取り組みをはじめたきっかけを教えてください。当事務所は、もともと税理士事務所と同じ建物のフロアーで活動していました。そのフロアーには、税理士の他にも、社会保険労務士がいて、それら他士業の方々とも連携して依頼者をサポートしていたのです。弁護士資格を持っていれば税理士登録もできることになっているので、弁護士が税理士業務もやっているというケースはありますが、当事務所のように、税理士と弁護士が緊密に連携しているのは、それほど多くないのではないかと思いますね。現在も当事務所の近くに、税理士事務所がありますし、広い物件があったら、近いうちにまた再統合しようといった話もあります。税理士、社会保険労務士以外にも、司法書士などの他士業の方々との協力関係は緊密に築いています。他士業との連携は、双方にメリットがあると思っています。例えば、税理士のクライアントの多くは、会社経営者や個人事業主です。これらのクライアントが、ちょっとした法律的な問題について相談したいという時に、気軽に同じ場所、あるいは近くで、すぐに相談できるというメリットがあります。税理士は、法律の専門家ではありますが、民法や会社法といった法律について非常に詳しい訳ではない部分もありますから、弁護士に相談できれば安心です。また、弁護士の方としても、事件の解決に関わって税金の処理をどうするのかといったことを、すぐに税理士に相談できるのもメリットです。事件解決の時に、和解金を貰ったり支払ったり、さらには財産を分割する、ということになると依頼者は「変な税金を後でかけられたりしないか」といったことが心配になってくるものです。例えば、不動産に関係する事件だったら、事前に法務局や司法書士によく相談しないと、判決が下った後に、法務局で受け付けてもらえないということや、登記ができないといったことも起こりえます。そんなときに、すぐに税理士や行政書士に相談できるのはメリットですね。さらに、お互いにクライアントを紹介し合うことができるというメリットもあります。もちろん、これはクライアントである相談依頼者にとってもメリットのあることなので今後も、そうした協力関係は進めていこうと思っています。 *八坂弁護士のインタビュー記事解決が困難な「派遣社員の雇い止め」裁判…実家がお寺の弁護士が和解できた理由とは? *取材協力弁護士:八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士(1968年生まれ、大分県出身。岡山県立岡山芳泉高校卒業。東京大学理科2類入学。東京大学教育学部中退。東京弁護士会所属、司法修習第52期終了、2000年4月弁護士登録。2000年4月~2005年7月、代々木総合法律事務所に勤務し、2005年8月に「しいの木法律事務所」を開設して現在に至る。宅地建物取引主任者資格も保有。民事・刑事・家事・税務・経営・労働・相続問題など、どのような問題でも対応する弁護士として活動している。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年12月01日今月中旬から今月25日の間に覚せい剤を使用した容疑で11月28日に逮捕されたASKA容疑者ですが、報道陣に対して「不法侵入ですよ!」と声をだしていたようです。マスコミは警察の制止を無視してガレージ内に侵入したほか、ベンツのエンブレムを折るなどしたようです。今回のマスコミの取材に対して、インターネット上では「不法侵入では?」「器物損壊でしょ」といった声が上がっているようです。そこで、このような行為が実際に上記の罪に該当するのか、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■住居侵入罪、器物損壊罪が成立する可能性は高いまず、冒頭で書いたことが真実だと仮定してお話しを進めたいと思います。先に挙げたような、ガレージ内に侵入したり、ベンツのエンブレムを折ったりといった行為をしていた場合は違法なことと言えます。ガレージへの侵入については、インターネットでも声が上がっている通り、不法侵入(正確には住居侵入罪:刑法第130条前段)が成立します。住居侵入罪は、その住居の管理者の意思に反する侵入を罰する罪ですので、本件の場合、マスコミのガレージ内への立ち入りがASKAさんの意思に反するのであれば、同罪が成立するといえます。 次に、器物損壊罪(刑法261条)についてですが、この罪は他人の物を壊した場合に成立する罪ですので、ベンツのエンブレムを折った場合には成立する余地は十分にあります。罪自体が成立しないという可能性があるとすれば、エンブレムを折ったことが故意ではないという場合でしょうか。原則として、犯罪は故意犯のみを罰し、過失は罰しないということになっています。要するに、故意とは「わざとやった」ということです。当時のマスコミの状況は具体的にわかりませんが、人が大挙押し寄せ、揉みくちゃになりながら、圧力に耐えられず不可抗力で体の一部がエンブレムに当たって折れてしまったというような場合、故意の認定が少し難しくなる余地はあろうかと思われます。当然、住居侵入罪の成立にも故意の要件は必須ですが、「ガレージに入るつもりはなかったけど間違えて入ってしまった」という弁解は通る可能性が低いと思います。なお、器物損壊罪は親告罪といって、被害者つまりベンツの所有者(具体的には車検証の名義人)の告訴が無ければ罰せられることはありません。 ■マスコミの行動について思うことこういった注目事件の際のマスコミの他者の迷惑を顧みない行動は目に余ると個人的には考えております。僕のよく知っている弁護士も、とある有名事件を担当された際、裁判所から車で帰るに際し記者に追いかけられ、車(BMW)に無数の傷が付いていたことがありました。身近な人がそういう被害に遭ったということを聞き、非常に驚きました。また、自分としても、ある事件を担当した際に、事務所にアポも無しに次々と記者が来て、一方的に「話を聞かせてくれ」と言われ、断ってもなかなか帰ってもらえず困惑したことがあります。向こうも仕事だということは分からなくはないのですが、僕の業務や事務所のほかの人たちへの迷惑を顧みない態度は異様に見えました。価値観が違うと言ってしまえばそれまでですが、大袈裟に言えばちょっと洗脳されているような、そういう怖さを感じる一面を垣間見ました。もし、「犯罪者(容疑者)なのだからこれくらいされても仕方ない」というような意識があるのであれば、それは絶対に間違っていると思います。どういう価値観を持つかは勝手かもしれませんが、社会生活を営む上で必要な最低限のマナーやルールは守っていただきたいと思います。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活6年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*Brian A Jackson / Shutterstock
2016年11月30日和歌山県富田町に住む無職の男性A(26)とB(27)が、共謀したうえで故意に車を衝突させ、事故として保険金約380万円を騙し取る事件が発生。昨年9月に発生。この2人が11月21日に逮捕されことが、新聞などのメディアで報じられました。この詐欺事件の内容としては、Aが運転する軽自動車にBがわざと追突し、保険会社にAの責任であると報告。慰謝料名目で金を受け取り、私腹を肥やしていたようです。このような事件はほかにも発生しているだけに、厳罰に処してほしいところ。容疑者は容疑が確定した場合保険会社にお金を返す必要があると思われますが、法的にみて、いくら返済する義務があるのかでしょうか。道義的には、ある程度色をつけて返済するべきなようにも思えますが…。三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士に見解を伺いました。 Q.事故を自作自演し保険金を騙した取った犯人はいくら返済する義務がある?*画像はイメージです:.全額賠償する必要がある 「黙秘しているとのことなので事実かどうかはまだわかりませんが、仮に事実だった場合、2名が共謀して保険会社を騙し、保険金を詐取した『共同不法行為』になります。したがって2名が連帯して、保険金380万円全額の賠償する義務があります。また、この件に起因して保険会社側にさらに損害が生じていれば、その分も連帯して賠償しなければならないこととなります。(民法719条1項)」(伊東弁護士) *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*タカチン / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月30日11月29日の午後7時10分ごろ、京都市内の住宅街で、母親と一緒にいた男児がナイフを持った男に襲われるという事件がありました。駆け付けた京都府警北署員が、男にナイフを捨てるように警告しましたが、従わず、ナイフを持ったまま向かってきたため、威嚇射撃を含む5発を発砲し、4発はナイフを持った男に命中しました。署員の発砲に関して、横田政幸副署長は「現時点では適正な拳銃の使用だったと考えている」と話しているようですが、日本の法律では警察官はどのような場合に発砲、および、威嚇射撃ができるのでしょうか?解説していきたいと思います。 ■どのような場合に発砲できるのか警察官は拳銃を所持しています。一般人であれば、拳銃を所持するだけで、銃刀法違反で処罰されます。警察官が拳銃を所持して良いのは、それを使う必要があるということです。どのような場合に使えるのでしょうか。これは、国によって違います。治安の悪い国だと、被疑者が不審なそぶりをしただけで発砲が許されます。その段階で警察官が発砲しないと警察官の生命が危ういからです。例えば、交通違反をして警察に停められ、運転手が免許証を出そうとして、胸ポケットに手を入れただけで、発砲されてしまうことがあります。日本では考えられませんが、治安の悪い国だと、胸に手を入れること、すなわち拳銃を取り出すこととみなされているようです。日本では、警察官職務執行法第7条(武器の使用)が定められています。簡単に言えば、正当防衛や緊急避難の要件がある場合だけ、人に向かって発砲できます。つまり、人の生命、身体を守るためにやむを得ない時にだけ、人に向かって発砲できます。これは、非常に厳しい要件です。 ■威嚇射撃の場合は?また、人に向かって発砲するのではなく、空に向かって発砲したり、あるいは、拳銃を構えて威嚇するような場合でも、厳格な要件があります。詳しい内容は、警察官等けん銃使用及び取扱い規範に定められています。例えば、逮捕しようとしたところ、被疑者が逃亡したような場合は、威嚇射撃が許されますが、被疑者に向かって発砲することは許されません。逃亡する被疑者が第三者や警察官に攻撃したような場合は、上記の正当防衛や緊急避難の要件を満たせば、被疑者に向かって発砲することが許されます。警察官は、日常業務では、拳銃を腰に装備していますが、すぐに使える状態にはなっていません。それも規則によって定まっているからです。あらかじめけん銃を取り出しておくことができる場合やけん銃を構えることができる場合など細かく上記の規範によって規制されています。これだけ厳しい要件が求められているのは、日本がそれだけ安全だということです。今後治安が悪くなれば警察官の武器使用の要件も緩くなると思いますが、そうならないでほしいです。 *この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)【画像】イメージです*sakpat / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月30日一昨年に覚醒剤使用の罪で有罪判決を受けて執行猶予中だったASKA容疑者が、11月28日に覚醒剤取締法違反の疑いで再び逮捕されたことが報道されました。前回は懲役3年、執行猶予4年の判決が下されていました。この事件のように、執行猶予期間中の容疑者が再び同じ罪で逮捕された場合、法的にはどのような刑罰が待っているのでしょうか?Q.「覚醒剤取締法違反」容疑の執行猶予期間中に再逮捕…罪の重さはどうなる?*画像はイメージです:.より重い罪が、猶予された前回の実刑にプラス。ASKA容疑者の場合「トータル6~7年の懲役刑」が予想される ASKA容疑者は、あくまでも容疑を否認しているとの報道がなされていますので、仮に判決で有罪とされた場合ということで論を進めることとします。前回の刑が、相場に比べるととても重かったように思いますが、再犯ということになりますと前回の刑よりも重い刑が科される可能性が高いように思います(使用や所持の量にも拠りますが…)。最低でも3〜4年の実刑になるものと思います。ただ、執行猶予中の犯罪ということもあり、猶予された前回の3年と合わせて、懲役に行くことになります。したがって、トータルで6〜7年は懲役の実刑になるものと予想されます。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】*TAKA / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月30日photo by 編集部奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人である北弁護士に、弁護士を目指したきっかけや、それが現在の活動にどう影響しているのかを伺いました。北 周士(きた かねひと)弁護士東京都千代田区、最高裁に隣接する平河町にオフィスを構える。離婚・相続といった問題はもちろんのこと、ベンチャー企業の若手経営者の支援や士業の開設・運営支援などに注力していることで注目されている。北周士弁護士は、奨学金を貰いながら高校・大学を卒業した苦労人なだけに、困難な状況にいる人を支援したいという熱意に溢れている弁護士である。 ■母子家庭で育つ中、相続トラブルで出会った弁護士が自身の道標に___なぜ弁護士になったのか教えてください。小学校6年生か、中学1年生くらいのときだったと記憶しているのですが、私の家が裁判の当事者になりました。それが、私が最初に弁護士という職業に興味を持ったきっかけです。裁判の原因は、相続問題でした。私が4歳のときに、父が43歳で他界しまして母子家庭になり、母は私と一歳年下の弟を連れて実家の長野へ帰りました。その後、私が5歳の頃に父方の祖母が、6歳のときに母方の祖母が亡くなり、かなりバタバタした状態が続きました。父方の祖母には多少遺産があり、相続人は、父の兄と姉(つまり私と弟にとっての伯父と伯母)と、私たち兄弟でした。ですが父は先に亡くなり、母も仕事や家事に追われ、相続などを考える余裕はなかったので、遺産の管理は伯父にお任せし、預かってもらう形にしていたのです。しかし、当時バブル期だったので、伯父が預かっているお金を投資に使ってしまい、私たち兄弟の相続分を払えないということになりました。そこで、遺産相続分を、私たちの進学費用にと考えていた母は、裁判で争う決意をしたのです。これは母から聞いた話になってしまうのですが、最初にお願いした弁護士の方は、正直あまりよろしくなかったようです。その後、弁護士が変わったのですが、その方がとても優秀で、非常に話をよく聞いてくれた上で、何故それができるのか、できないのかということをしっかり説明してくださる方だったそうです。弁護士が変わってからは、母のストレスが軽減されたということが、子供ながらにも見て取れました。その時、裁判で争うという状況下で、ストレスを軽減できるのは、家族以外に弁護士という職業があるということを知ったのです。 具体的に弁護士になりたいと進路を決定したのは、高校2年生の文系コース・理系コース選択のときでした。私は文系科目があまり得意ではなく、圧倒的に理系科目が得意だったのですが、進路相談で「何か興味がある職業はないのかと」と聞かれたときに「弁護士です」と答え、文系コースを選択し法学部を目指すことになったのです。 ■離婚がゴールではなく、相談の核心にある問題の解決を目指す___このご経歴が、弁護士活動をするようになって、活かされていると感じることはありますか?やはり離婚の案件を担当する時ですね。私は母子家庭になることに対するネガティブなイメージはありません。両親の仲が悪く家のなかがギスギスしているよりは、片親でも安定している家のほうが、子供の養育には向いているのではないかと考えています。離婚は、不幸な現状から抜け出して、幸せになるためにするものです。何がなんでも離婚しろというわけではありませんが、離婚したいという人の意志は尊重します。ただ、離婚したいという人でも、例えば相談の核心部分が、相手方に借金があるといったケースであれば、相談者にとって離婚がゴールではなく、債務整理をしてしまえばいい訳なので、別の選択肢を促す場合もあります。目的はクライアントの利益を最大化することですから。日本での統計的な資料はないのですが、アメリカの論文で、仮に片親に対して、否定的な感情を持っている子供であっても、面会させ続けるほうが、成長に資するのだという報告があります。なので、私は、面会交流についてはかなり柔軟に認めるべきだと考えています。DVがある場合は問題外ですが、これに関しては、クライアントの利益というより、お子さんの利益を考えていますね。 *取材協力弁護士:北 周士(きた かねひと)弁護士1981年生まれ、静岡県出身。本籍地は佐渡。長野県立上田高等学校卒業。中央大学法学部法律学科卒業。大学在学中の2005年に、司法試験に合格。青山総合法律事務所、安藤武久法律事務所を経て、きた法律事務所を開設。事務所名を北・長谷見法律事務所に変更し現在に至る。企業・個人を問わず困難な状況にいるクライアントの利益を最大化することを目標にしたサポートを行なっている。ベンチャー企業支援や、士業の開設支援などを得意分野にするほか、母子家庭で育った自身の経験をもとに、離婚問題や相続問題などに関する親切なアドバイスが評判の弁護士である。著書に『弁護士-独立のすすめ』(第一法規株式会社)、共著本に『弁護士 独立・経営の不安解消Q&A』(第一法規株式会社)などがある。■「北・長谷見法律事務所」一門一答Q&A___事務所の理念を教えてください。一つはクライアント利益の最大化です。もう一つは、職人芸としての弁護士と組織体を両立させたいということです。こちらは目標であり、実現はまだできていません。弁護士は、職人的な仕事なので、非常に個人に依拠してしまう側面があります。ただ、その弁護士がいなくなると、仕事が滞るのでは困ります。ですので、番頭一人にアソシエイトを三人くらいといったユニットを作ることで、個人ではなく事務所に信頼性を持って依頼するという形を作っていけたらなと思います。___一番依頼が多い分野は何ですか?ベンチャー系の法務と労務という形になりますね。相談内容は、契約書チェック、新規ビジネスの適法性、従業員トラブルなどです。___初回の相談料はいくらですか?ご紹介案件については、初回相談は無料にしています。そのほかの初回相談は、30分5400円、1時間1万800円です。顧問料に関しては、将来的に変える可能性もありますが、現在は5万~という感じです。顧問での相談に時間制限はもうけていません。契約書のチェックは全部こちらでやりますし、福利厚生のような形で、従業員の個人的な相談についても顧問料の中で対応することもありますので、顧問料を使い倒すくらいの気持ちで利用していただければと思います。___着手金と報酬金の目安は?離婚のみのケースですと、着手金が40万~60万、報酬金も40万~60万なので、トータルで80万~120万程度になります。財産分与が多くあるような場合はその金額に応じて費用が発生します。企業の場合は、顧問を締結していただければ、顧問料の範囲内で日常使いのところは対応します。*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年11月30日神戸市立の高校で50代男性教諭が2014年夏から2015年夏にかけて、自身が顧問を務めているソフトテニス部の主将に対して約1年で500~600通のメールを送っていたことが明らかになりました。練習時に指導しきれなかった内容などについてメールを送っていたそうですが、「生徒の重荷になる」という理由で、メールの伝達をやめさせたそうです。神戸市の教育委員会によると、男性教諭は他の部員にもメールを送っていたが、主将へのメールは多い時で1日に約20件と突出しており、土日にも送っていたとのことです。メールの内容やメールでの連絡がいけないことではないですが、今回のような指導として行き過ぎとも言えそうな行為に違法性がないか解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■1.行き過ぎた指導の違法性について行き過ぎた指導について裁判例としてデータベース上で検索できるものは数える程しかありませんが、生徒が自殺したため損害賠償請求を認めたものもあれば、生徒が自殺していても「やや厳しかったことは否定できないが、指導による教育的効果を期待し得る合理的な範囲内のものといえるから、正当な指導として許容される」としたケースもあります。正当な指導として許容されるとしたケースは、担任教諭が小学5年生の生徒に対し、図形の作成をできるまで繰り返し訂正・再提出させたり、学校行事に際して演奏する楽器の居残り練習をさせたり、忘れ物したことに対し厳しく叱責したというものでした。行き過ぎた指導の違法性について、判断基準が確立されているわけではありませんが、結局は、指導の目的、指導の内容・方法・程度、生徒の年齢・性格・心身の発達の程度、指導による生徒への影響等の個別事情を総合的に検討し、正当な指導といえるかが判断されるのではと考えます。 今回のケースにおいて、男性教諭は、顧問を務めるソフトテニス部の女子主将に対し、1日約20件のメールを送ったり、プライベートな時間であるべき夜や土日にも送ったりしており、確かに指導として行き過ぎの感はあります。しかし、メールの内容は練習日の調整や練習内容などに関することや、練習の報告を求めるもので、この点は指導の域を逸脱しているわけではありません。また、今回のケースでは、学校の方で行き過ぎた指導を把握して教諭に対しメール伝達を止めさせたという事情もあります。したがって、この男性教諭が学校の指導に従わず従前の行き過ぎた指導を今後も継続して生徒に悪影響を与えれば違法となることもあると思いますが、男性教諭が学校の指導によって自身の行き過ぎた指導を自覚して改めるのであれば違法とまではいえないように考えます。 ■2.私立の学校か公立の学校かによって違いはあるのか私立の学校でも公立の学校でも、普通教育であれば「教育内容が正確かつ中立・公平で、地域、学校のいかんにかかわらず全国的に一定の水準であることが要請される」(第一次教科書裁判上告審)といった制約がありますが、教育目的を達成させるためにある程度の裁量が教員にも認められます。教育の目的が「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」であるところ、そうした目的を達成するためには教員の人格に基づいた指導が不可欠であり、そのためには教員の指導にある程度の裁量を認める必要があるからです。私立の場合、建学の精神や校風に特色がある場合もあり、それによって教員が指導できる範囲(裁量)が公立の場合よりも多少狭まる場合もあれば、多少広がる場合もあるのではと思います。例えば、ルールを守らせる厳しい校風に特色がある私立であれば教員もそれに従って生徒に厳しい指導をしていかなければならず、その意味で指導できる範囲が狭まるのではと考えます。逆に、自分の意見を言える伸び伸びした自立できる生徒を育てるための校風に特色がある私立であれば、教員は、生徒に厳しくしすぎてはいけないという意味では裁量が制約されるかもしれませんが、子供の人格を発現させる方向での教育指導であれば裁量が広くなるのではと思うわけです。 生徒のためを思っての厳しい指導も必要な場合があるかとは思いますが、生徒自身が自身の心身を守る力が十分とはいえないのが通常ですから、教育に携わる方には、本当にこれでいいのか、やり過ぎではないか、一方的な指導ではなく時には同僚や生徒自身に確認しながら教育に取り組んでいただきたいと思います。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージですGraphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月30日*画像はイメージです:月13日、滋賀県彦根市で開催された農産物PRイベント「ふれあいフェスティバル」で「おにぎりの早食い競争」に参加した男性がおにぎりを喉に詰まらせて救急搬送され、3日後に死亡したことがわかりました。主催者側は喉に詰まらせないようにお茶を用意するなど、参加者に対する安全配慮義務は怠っていなかったと認識をしているようですが、本当にそれだけで安全配慮義務を果たしたといえるのでしょうか。また、今回のような事故の場合、遺族は主催者を訴えることができるのでしょうか。そこで、今回の事故について桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に見解を伺いました。*取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。) ■今回の事故について責任の所在はどうなる?まず、今回のような早食い競争における事故の場合、主催者側にはどのような責任が発生するのでしょうか?「早食い競争の主催者が参加者に対し、安全配慮義務をしっかりと果たしていないということであれば、主催者側が法的責任を負うことになるでしょう」(大窪弁護士)主催者の安全配慮義務とは、具体的にはどのような内容を指しますか。今回の事故では、主催者は喉に詰まらないようにお茶を用意したということですが…。「安全配慮義務とは、事故を予見して回避する注意をする義務のことです。早食いについては、喉に食物を詰まらせて呼吸困難になる事故が過去にも発生しており、事故の危険が高いものと言えます。主催者側がそうした事故発生のリスクを把握し、事故を防止するために必要な措置をしっかりと講じていたかどうかが問題となります。今回の場合であれば、お茶を用意するといったこともそうですが、その他にも参加者に対して危険性の告知や、食べ方のルール、早食いで食べる食べ物の種類など、早食いを行う上で事故がおきないよう、さまざまな面で安全性に配慮していたかどうかが重要となります。」(大窪弁護士)確かに今回の事故を考えると、お茶を用意するだけでなく、喉に詰まりづらい食材を選ぶなど他の視点からも安全性についての配慮はできたのかもしれません。事故が起きないようにどれだけ安全性に配慮できていたのかという点が重要なのですね。 ■遺族はどこに損害賠償請求ができる?今回の事故を受けて遺族は損害賠償など、主催者であるJA東びわ湖に請求することができるのでしょうか?「主催者であるJA東びわ湖が安全配慮義務を果たしていないということであれば、損害賠償請求を行うことは可能ですただし、参加者側の側に過失がある場合(例えば、主催者側がつくったルールに反する危険な食べ方をしていた場合など)には、主催者側に安全配慮義務違反があったとしても損害賠償額は減額されるのではないかと思われます。」(大窪弁護士)大窪先生の見解を伺う限り、喉が詰まらないようお茶を用意していたというだけでは、主催者側が安全性配慮義務は果たしていると主張するのは厳しいのではないかと感じます。早食いの食材や食べ方のルールなど、もう少し安全面に配慮していればこのような事故は防げたのかもしれません。いずれにせよ、今回の事故だけでなく「早食い競争」は過去にも死亡者が出ており、事故発生のリスクが非常に高いものだということが今回改めて浮き彫りとなりました。たとえ安全配慮義務を十分に果たしていたとしても、「早食い競争」自体が危険であるということを、主催者側が認識する必要があったのだと思います。 取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)取材・文:伊藤あきら(フリーライター、AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。オフィシャルサイト「いとうノート」)【画像】イメージです*Hungry Works / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月29日photo by 編集部「しいの木法律事務所」の八坂弁護士に、弁護士を目指したきっかけや、長年の弁護活動の中でも印象深かったという派遣社員の「雇い止め」裁判のエピソードを中心に、お話を伺いました。八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士東京都中野区、西武新宿線「野方」駅にある「しいの木法律事務所」は、地元に密着した法律事務所で、現在、経験豊富な3名の弁護士が在籍している。所長の八坂玄功弁護士は、いわいる“マチベン”として地域住民のために弁護活動を行う傍ら、行政事件のエキスパートとして数多くの難事件を解決。自身の利益よりも、依頼者の利益を優先する人情派の弁護士である。 ■実家がお寺!? 保護司でもある父に受けた影響とは___弁護士を目指したきっかけについて教えてください。私の父親は禅宗の住職で、実家は大分県でお寺をやっていました。お寺には、檀家さんをはじめ、色々な人がきて、父に困ったことを相談しにやって来ていました。また、父は保護司という社会奉仕活動にも熱心でした。保護司とは少年院や刑務所に収容されていた人が、釈放後スムーズに社会復帰できるように、一時的に住居を提供や、生活上の助言や就労のサポートを行う人のことです。なので、私の家には常に「このお兄さん誰?」「このおじさん誰?」といった感じで、知らない人がよく寝泊まりしていたのです。当時は、そんなお寺での生活が嫌で仕方がなく、私は東京の大学に入り、弁護士を目指しました。なぜ、弁護士を目指したかというと、実のところ、学生時分に他にすることはなかったからなのですが、今思えば弁護士を目指そうと思うきっかけの根底には、困っていた人を助けていた父の影響があるのだと思います。 ___仕事における信条、ポリシーについて教えてください。弁護士法に書いてあるようなことになりますが「依頼者の正当な権利を実現するために全力を尽くします」というのが、私の信条です。 ■「死にたい…」と嘆く派遣社員の「雇い止め」裁判を和解に導く___弁護士になってから印象深いエピソードについて教えてください。弁護士活動をしていて嬉しいのは、依頼者も一生懸命頑張るし、弁護士も一生懸命頑張って、依頼者の利益になる成果が獲得できたときですね。ただ、正直なところ、苦しいと感じることのほうが多いですね。私は過去に、依頼者が弁護活動中に自ら命を絶たれるという、とてもつらい経験をしたことがあります。そのとき、命がけの思いで弁護士に助けを求めて来ている依頼者もいるのだということを、身にしみて感じました。もちろん、悲しい出来事ばかりではなく、依頼者が苦しんでいる事件が、良い方向に向かうということも沢山あります。以前、「雇い止め(※)」によって解雇されてしまった派遣社員の方を弁護したことがあります。その方は、あまりにも追い詰められて「私、死にたいです」といったことも口にしており、一体どうなることかと非常に心配していたケースでした。この事件は、派遣労働者が、派遣先のパワハラについて派遣元に改善を訴えたら、派遣契約を解除されてしまったという、とても難しい類型の事件でした。しかし、なんとか和解で解決することができて、依頼者本人も満足してもらえました。それはとても嬉しかったですね。こうした派遣社員の雇い止め問題は、大抵の場合、裁判を起こしても勝てないので、多くの方が泣き寝入りしていると思います。派遣先との直接の労働契約が成立することは、ほぼあり得ないという、あまり良くない最高裁の判決が確定してしまっているので、こうした問題で裁判の成果を得るのは難しいのです。ですからなおのこと、解決したときは心の底から良かったなと思いましたね。※雇い止め…雇用期間が定められた有期雇用契約において、雇用期間を更新せずに契約を終了させること。 ■弁護士には医師のような応召義務はないが…___読者の方にメッセージをお願いします。法律事務所にも、ビジネスとして儲けていかなければいけない側面があるのも事実です。医師には、応召義務(診療を求められたとき拒んではならないとする義務)があるのですが、弁護士の場合には受任義務がないので、儲からない事件は引き受けなくても良いのです。ですから、行政事件や労働事件といった利益があまり得られないケースが多い事案を、避ける傾向にある事務所も実際には存在します。もちろん、利益が少ないから受任しないと口に出せば問題がありますが、黙って受任しない分には問題ありません。しかし、それは職業倫理的には、良くないことだと思っています。当事務所は、もともと儲かっていないので、利益が良いか悪いかなんて考えていません(笑)。西武新宿線の野方駅という各駅停車しか止まらないような地域にあるので、それでもやっていけます。気軽に法律事務所に相談にいくというのは、なかなか難しいことだと感じる人も多いと思いますが、私たち「しいの木法律事務所」は、相談しやすい法律事務所だと自負していますので、他の事務所で、あまり話をきいてもらえなかったといった嫌な経験を持っている人の事件についても、きちんとお話を伺います。ですので、どうぞ安心して相談においでくださいということを伝えたいですね。 *取材協力弁護士:八坂 玄功(やさか もとのり)弁護士1968年生まれ、大分県出身。岡山県立岡山芳泉高校卒業。東京大学理科2類入学。東京大学教育学部中退。東京弁護士会所属、司法修習第52期終了、2000年4月弁護士登録。2000年4月~2005年7月、代々木総合法律事務所に勤務し、2005年8月に「しいの木法律事務所」を開設して現在に至る。宅地建物取引主任者資格も保有。民事・刑事・家事・税務・経営・労働・相続問題など、どのような問題でも対応する弁護士として活動している。■「しいの木法律事務所」一門一答【Q&A】___事務所の理念を教えてください。「依頼者の正当な権利の実現のために、全力を尽くします。」ということですね。それと、地域に密着した法律事務所として、地域の方のどんな相談にでも対応できるように心がけています。___一番依頼が多い分野は何ですか?相続関係です。次には、行政事件、成年後見問題、事業者の顧問契約といった感じですね。___初回の相談料はいくらですか?初回の相談料は30分まで無料にしています。それを超える場合は30分単位で5,400円いただいています。___着手金と報酬金の目安は?相続問題の場合、仮に法定相続分が900万円あると予想される人から依頼をうける場合には、その相続分の3分の1の300万円を基準として計算します。着手金が300万円×24%で、それに消費税の8%がかかり、25万9200円になります。報酬金がその倍で、51万8,400円です。最終的に900万円の法定相続分が確保できた場合は、着手金+報酬金になりますのでトータルで77万7,600円が必要になります。以前は、弁護士費用の基準があったのですが、公正取引委員会から意見で、その基準がなくなりました。もともとの弁護士会の基準は、当事務所のように、依頼者の法定相続分の3分の1を基準として計算するという文言が入っていたのですが、現在は、法定相続分の900万円を基準として計算する法律事務所もあります。着手金は安くなっていても、トータルで計算すると、高い弁護士報酬を払っているという場合もあるので、弁護士費用を気にされている方は参考にしてみてください。行政事件の場合は、着手金、報奨金については一概には言えないですね。その事件が難しいかどうかに応じて、例えば10万8,000円で受けることもありますし、54万円着手金もらうこともあります。 *取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部
2016年11月29日ジャニーズファンクラブに加入しているファンから「会費を払っているメリットが見えない」という声が上がり、NPO法人「消費者被害防止ネットワーク東海」が、運営元である「ジャニーズファミリークラブ(JFC)」に対し、今年10月に会員規約の変更を求める事態へと発展したようです。この申し入れを受けて、ジャニーズ事務所は来年にも見直す予定だと作業を進めていると、11月23日には新聞などのメディアで報じられました。具体的に変更を求められている項目は「利用規約の変更」「強制的な退会」「入会金及び年会費の不返還」の3点となります。では実際「消費者契約法」などの法律に抵触していたのでしょうか?また、抵触している場合はどの点が問題となっているのでしょうか?*画像はイメージです:■消費者契約法とは市場取引においては、企業などの事業者と、商品・サービスを購入する一般消費者との間に、情報格差があり、企業側の商品広告や説明に対し、消費者側がその真偽・正確性、品質を十分に検討できない場合があります。民法の原則では、契約当事者間で、合意がした以上、原則として合意の内容を守らなければならないことになっていますが、このような場合に、一律に合意があったことを重視し、修正を加えないと、消費者側が不当な不利益を被るケースが生じてきます。そこで、民法上の契約取消や違約金の定め、私人間で本来自由に合意できる規定を、消費者契約法において、消費者を保護するために、一部特別規定が設けられています。消費者契約法は、強行規定の性格を有しており、これと異なる約定を事業者が消費者と結んでも、無効となり、消費者契約法の規定が優先されます。したがって、消費者契約法の消費者保護条項に抵触するようなサービス約款は、無効あるいは取消可能となる場合があります。今回のジャニーズのファンクラブ会員規約にも、消費者契約法の適用があります。 ■問題となっている会員規約とは以下、問題となっている会員規約をみていきましょう。①利用規約の変更について第2条4.JFCは、本規約を予告なく改訂することがあります。改訂された本規約については、JFCより告知されるものとし閲覧可能となった時点から効力を有するものとします。事業者と消費者の合意内容は、本来、その都度合意があった時点で成立するはずですが、多数の消費者を相手とするサービスにおいては、統一の利用規約を用意し、サービス利用申込時に統一的に利用規約を適用することになります。利用規約は、一切変更できないわけではないため、事業者による変更も可能ですが、その場合は、一般的に、最新のサービス利用時に、再度、利用規約への同意を求める手続きをしてはじめて、変更後の利用規約が適用されます。ただ、黙示の同意でも変更後の規約を適用することは可能であるため、個別の同意まではなくとも変更後の規約を従前のサービス利用者に十分に周知した段階で、黙示の同意があったものとして変更後の利用規約を適用できる可能性はあります。他方、閲覧可能となった段階、というだけでは、現実的に利用者が変更後の内容を認識することが困難であり、特に不利益変更がある場合には、変更後の規約を全利用者に適用できるかどうかは、仮に裁判になった場合には問題となるでしょう。この会員規約の規定は、それ自体が無効というより、不利益変更があった場合の規約の適用の有無を巡って、争われる可能性があります。 ②強制的な退会について第4条2.強制的な会員資格の抹消以下の項目に該当する場合、会員は催告無く即時に会員の地位や一切の権利・債権を自動的に失うものとします。(1)(2)略(3)会員もしくは入会申込をした者が、各条件を満たしている場合でも、会員を退会処分とする場合があります。3.・・・退会処分とされた会員は、損害賠償請求等の一切の権利行使ができません。第5条1.「タレント」およびジャニーズ事務所は、タレントファンクラブのサービスに関し、いかなる責任も負わないものとします。何ら帰責性がない場合でも、事業者側が恣意的に強制的に退会させることができるとする条項は、消費者の利益を一方的に害するものとして、消費契約法10条により無効とされる可能性があります。事業者都合による強制的な退会は、見方を変えれば事業者の債務不履行によるサービス停止を自由にでき、かつ、何らの補償もしなくてもよいという条項であり、実質的には事業者の債務不履行責任の全部の免除を定めたものであって、やはり、消費者契約法8条で無効とされる可能性があります。ジャニーズ側がファンクラブのサービスに関しいかなる責任も負わないという規約も同様です。 ③入会金及び年会費の不返還第4条3.会員が資格を喪失した場合、理由の如何を問わず、支払済みの入会金および年会費の返還はできません。また、退会処分とされた会員は、損害賠償請求等の一切の権利行使ができません。入会金及び年会費の不返還は、実質的には、退会時の違約金を定めたものといえます。まず、事業者側の都合によるサービス終了の場合にまで適用するのは、消費者契約法10条もしくは8条で無効となる可能性があります。会員が事情の如何によらず、一切の損害賠償請求ができないという規定も、消費者契約法8条に抵触する疑いがあります。 ■自主改訂が望ましい不当な会員規約が存在していたとしても、基本的には、裁判で具体的に年会費や損害賠償を求める中で、問題となる規約が消費者契約法に抵触しないかが争われることになります。ただ、金額が少ない場合には、消費者が個人で裁判までするケースは現実には難しいことも多いですから、今回の問題提起をきっかけに、事業者側で、柔軟な自主改定が望まれるところです。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【参考リンク】産経ニュース「ジャニーズ会員規約改定へ消費者団体「不適切」指摘」ジャニーズファンクラブ会員規約【画像】イメージです*majivecka / Shutterstock
2016年11月29日*画像はイメージです:普段から電車通勤をしている会社員の男性にとって「痴漢冤罪」というのは決して他人事とは考えられない、という方は多いのではないでしょうか。もし自分が痴漢を疑われてしまった場合、どう対策すべきなのかというのは男性なら一度は考えたことがあるトピックだと思います。ただ、今回ご紹介する事件は少し特殊です。痴漢容疑で逮捕された容疑者男性が「実はスリをする目的で女性に近づいていて、スリ行為の途中でたまたま身体に触れてしまったのだ」と大阪地裁で主張し、痴漢行為についてはなんと11月15日に無罪判決が言い渡されることになりました。そこで今回の記事では、この事件の概要から、男性が痴漢を疑われないようにするノウハウまでを、民事法務に詳しい弁護士法人サリュ銀座事務所の竹内省吾弁護士にお話を伺いました。*取材協力弁護士:竹内省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。主に交通事故に注力している。法律相談は無料で、夜間も相談を受け付けている。) ■なぜ「スリ行為未遂」は無罪に?まず、今回の事案ではなぜ被告男性は無罪になったのでしょうか。「訴えられた事実そのものは痴漢行為であったのですが、実際の裁判において、被告人は、スリ(窃盗)のつもりだったと、痴漢行為に故意があった事を否認したところ、裁判所がこれを認め、痴漢行為には故意がなかったとされたため、訴えの事実となっている犯罪行為については、無罪となりました。痴漢と窃盗は、その罪の質が全く異なり、どちらかがどちらかの故意を含むという明確な相関性がないため、訴えの事実に窃盗が入っていない以上、『痴漢ではなく窃盗の故意があった』と認定する場合には、無罪とせざるを得ません。」(竹内弁護士)つまり、痴漢として被害届を出されて裁判に持ち込まれたものの、被告側は「痴漢ではなくスリ目的だった」と主張し、裁判官にこの主張が認められたため、痴漢に関しては無罪となったのですね。確かに痴漢とスリでは該当する法律も全く異なりますからね。 ■もし痴漢で捕まっても「スリ目的」だったと主張すれば無罪に?では、もし仮に痴漢目的の人が今回の事案を参考にして痴漢をして捕まったとしても、「実はスリ未遂だったんだ!」と主張すれば、無罪になる可能性はあるのでしょうか。「まったく同じ事案ではあり得るでしょうが、今回は、痴漢されたという被害者の女性の供述の信用性が減殺された点が、検察官側の痴漢行為の態様の立証を大きく妨げたと思います。何でもこの主張をすれば通るというものではないです。」(竹内弁護士)なるほど。痴漢を疑われた時の言い訳として「スリ未遂だったんだ」というのはあまり言わない方がいいのかもしれませんね。 ■痴漢冤罪から身を守るための予防策は?最後に、男性が痴漢冤罪に巻き込まれないためのアドバイスをお願いします。「両手を上げておく、女性の近くに行かない、というのはよく言われる話なので、実践している方も多いと思います。そもそも満員電車を避けられれば一番良いのでしょうが、難しいかもしれませんね。また、スマホ等で、メールやラインの送信記録があれば、例えば、『両手でずっと継続して触られていた』という被害者の主張に対し、反論の証拠となるかもしれません。また、痴漢に限らないのですが、いざという時に連絡する弁護士を決めておくといいと思います。」(竹内弁護士)満員電車、特に痴漢の多い路線で通勤している会社員の男性は竹内弁護士のようにいざという時に信頼できる弁護士との人脈を持っておいた方が、いざという時に安心かもしれませんね。 *取材協力弁護士:竹内省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。主に交通事故に注力している。法律相談は無料で、夜間も相談を受け付けている。)*取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*Matej Kastelic / Shutterstock
2016年11月29日結婚前、夫の年収は1,000万と聞いていたのに、実際に結婚してみたら500万だったことが判明した……。このような話は結構あるようです。そして、配偶者の年収を気にする人はかなり多いのではないでしょうか?このような嘘をつかれていたとなると、思い描いていた結婚生活ができなくなるなどの問題が生じるかもしれません。今回は、「夫が結婚前に年収1,000万と言ってたが、実際には年収500万だった」場合、妻からの離婚請求は認められるかどうかについて解説していきます。*画像はイメージです:■離婚ができる理由になるか「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すれば、離婚が認められます(民法770条1項5号)。この点、配偶者の年収の多寡は、一般的に結婚生活における重要な要素と言えます。そのため、夫が年収を偽って結婚した場合、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する場合があります。まず、妻が、夫の年収が1,000万円であることを決め手に結婚した場合、夫の年収が1,000万円であることは結婚成立の重要な動機となっています。そのため、結婚前に妻がかかる動機を夫に伝えていたとすれば、実際には夫の年収が500万円しかなかったような場合には、婚姻を継続し難い重大な事由ありとして離婚が認められる可能性があります。 ■結婚相手の年収を気にしていなかった場合一方で、夫の年収が1,000万円であることが複数ある結婚の動機の一つに過ぎないような場合(重要な動機とまでは言えない場合)、年収が500万円であってもなお経済的に平均水準以上の結婚生活を送ることができている場合には、婚姻を継続し難い重大な事由ありとはいえないので、離婚は認められないでしょう。以上のとおり、夫が年収を偽ったことを理由に離婚できるかどうかは、妻が夫の年収を結婚の重要な要素として考えていたかどうかによるということになります。 *この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*MaCC / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月28日*画像はイメージです:最近、銀座の整体院の院長や近畿大学の学生が「準強制わいせつ」という罪の容疑で逮捕されたというニュースを耳にしました。「強制わいせつじゃなくて、“準”強制わいせつってどういうこと?」と思われた方も多いのではないでしょうか。これらのニュースに何か共通点があるのか考えてみても、それぞれの内容や状況が大きく異なっており、なぜ同じ罪状となったのかわからない方も多かったと思います。ですので、今回は“準”強制わいせつがどういったものか、強制わいせつとの違いにも触れながら解説していきたいと思います。 ■準強制わいせつ罪とは準強制わいせつ罪とは、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした」場合に適用される罪です(刑法第178条1項)。強制わいせつ罪が、「暴行」や「脅迫」を手段とした場合であるのに対し、準強制わいせつ罪は、それ以外の抵抗できない状況を利用したり、そういう状況を作り上げてわいせつな行為をした場合に適用されるものです。分かりやすく表現するなら、強制わいせつ罪が強引な手法であるのに対して、準強制わいせつ罪は卑怯な手法でわいせつ行為をした場合とイメージしていただくと良いと思います。例えば、冒頭の整体院の事例の場合、整体院に施術しに来たお客さんに対して、骨盤矯正の施術であると誤信させて女性の下着の中に手を入れたということであれば、抵抗できない状態、つまり「抗拒不能にさせて」いるので、準強制わいせつ罪が適用されることになります。また、近畿大学の学生が逮捕された例のように、強いお酒で酩酊させてわいせつなことをした場合は、「心神喪失に乗じ」たか、「心身を喪失させた」という要件に該当するので、準強制わいせつ罪が適用されます。過去に、柔道の元金メダリストが教え子の酩酊状態に乗じて姦淫したという事件で準強姦罪という罪に問われたケースがありますが、これも同様の例といえます。わいせつな行為にとどまらず姦淫に至れば、準強姦罪という罪になります。 ■加害者とどれくらい関与していたら共犯となるのか近畿大学の学生が逮捕されたケースでは、パーティ会場として使われていたお店の経営者も逮捕されたと報道されていました。経営者がどの程度犯行に協力していたのかは明らかではありませんが、犯行場所を提供するという行為が、実際にわいせつな行為をした人と共犯となるケースは一般論としてあり得ます。関与の深さにもよりますが、関与が浅ければ「幇助」、深い場合は「共同正犯」として実際にわいせつな行為をした人と同等の責任を負う場合も有り得ます。この線引きは非常に難しいものがあり、一言で正確に表現することはできません。ただ、あえて表現するなら、「罪を犯すということにつきお互い意思連絡があり、共犯者も自分の犯罪として実現する意思がある」という場合には、お店の経営者についても正犯者として重く処罰されるといえます。例えば、打ち合わせなどをして女性にだけアルコール度数の高いお酒を出すように仕向けて、わいせつ行為をされる様を面白がってみていたような場合は正犯として処罰される可能性があります。逆に、打ち合わせなど何もないにもかかわらず、大学生がしようとしていることを察して女性に強いお酒を提供して人を近づけないようにしていたなど、ひそかに協力していたような場合は幇助にとどまるといえます。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活6年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*aijiro / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月28日国民的に人気のあるアイドルグループAKB48は、恋愛禁止ルールが有名で、過去には俳優との交際が発覚したメンバーが丸坊主になって謝罪するという騒ぎがありました。一般の会社でも就業規則に「社内恋愛禁止」を掲げているところは実際に存在しています。では、このような規則に反して社内恋愛をして、それが会社にばれてしまった場合、果たして降格や解雇などの処分を受けなければならないのでしょうか。今回はこの点について考えてみたいと思います。*画像はイメージです:■「社内恋愛しただけ」での処分は違法社内恋愛禁止の目的は、会社内の風紀や秩序が乱れるのを防ぐことにあります。そして、そもそも、恋愛は本来個人が自由に行えるものです。ですので、同じ会社の人間同士が単に恋愛関係になっただけで、会社の業務との関係で何ら問題を起こしていない場合にまで処分をすることは、違法となります。当然、降格や解雇処分は無効となります。 ■実際に社内恋愛が元で問題が起きれば処分も可能しかし、社内恋愛のために業務怠慢が続くであるとか、会社内で恋人同士が不適切な行為をしていたりしていた場合は話は別です。降格や配置転換などの処分が可能となりえます。実際に、社内恋愛を理由とする解雇が認められた例もあります。とあるバス会社で、妻子ある運転手とバスガイドの間の不倫交際、妊娠中絶が発覚し、バスガイドが退職。求人に悪影響をもたらしたうえ、会社の評判も落ちてしまったという件で、裁判所は運転手の解雇を有効と判断しました(東京高等裁判所昭和41年7月30日判決)。この件で会社側が行ったのは普通解雇でしたが、裁判所は懲戒解雇事由に該当すると認定しました。 ■アイドルグループの場合はどうなのか?アイドルは「夢を売る仕事」なので、恋愛禁止ルールは有効であり、恋愛がばれただけでグループを脱退させることも許されるようにも思います。このあたりは、判断が分かれるところかもしれませんが、筆者は、基本的には会社の場合と考え方は同じではないかと思います。アイドルであってもひとりの人間であることに変わりはありません。恋愛は本来自由なはずです。恋愛をすることによって、「アイドル」としての仕事に支障をきたし、グループの活動に大きな影響が出たようなケースでなければ、脱退させることはできないのではないかと考えます。いずれにせよ、本来自由な恋愛も、やはり、周囲に悪影響を及ぼすようなことがあれば、処分の対象になりうることを、誰しも肝に銘じなければならないのではないでしょうか。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*kikuo / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月28日*画像はイメージです:今や3組に1組が離婚するといわれるほど離婚は身近なものですが、離婚後にトラブルが起こるケースが少なくありません。中でも多いのが養育費や慰謝料などの金銭問題です。特に子の養育費や面会交流に関しては、離婚時に取り決めを行っているケースが6割ほどに留まり、後にトラブルとなることがあります。離婚時にはどのような項目について取り決める必要があるのでしょうか?和田金法律事務所の渡邉寛弁護士にうかがいました。*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。個人事案は子どもいじめ事件から相続争いまで、企業事案は少額の債権回収から渉外買収案件まで、あらゆる案件に携わる。) ■離婚時に特に決めておくべきこと4選(1)子の親権者(2)子の養育費(3)財産分与(4)慰謝料「夫婦間の話合いで離婚する協議離婚の際、子がいる場合は、親権者を決めて離婚届に記載しないと届けが受理されません。そのため、離婚するために法的に必須な合意事項は、離婚することと未成年の子の親権者ということになります。他に、子の養育費、財産分与、慰謝料になります。やはりお金が絡むことはトラブルになりやすいです。」(渡邉寛弁護士)これらを決めるにあたっては、どのように話し合いを進めるべきでしょう?「トラブルになったり不満を感じたりしやすいのは、一方が優位に話を進めて本音を言えない場合や、離婚を急いだり知識がなかったりすることで不利な条件を受け入れてしまう場合などです。疑問や不安があれば、弁護士に相談されることをお勧めします。養育費、財産分与、慰謝料などは、標準的な算定方法や相場がありますし、疑問や不安が解消されれば必ずしも弁護士を代理人に立てないでもご本人で話し合いを進められることもあります。話し合いが難航している時に、親族や知人・友人等の第三者を話合いに立ち会わせることは、かえってこじらせることも多く、あまりお勧めしません。」(渡邉寛弁護士)専門的な見地からアドバイスや交渉をしてくれる弁護士に相談してみるのは、後々のトラブルを防ぐために有効でしょう。 ■取り決めを確かなものにするために取り決めをしても、相手に反故にされてしまうこともあります。これを防ぐためにしておくべきことは何でしょうか?「他の契約と同じで、離婚条件は、書面(離婚協議書)で明らかにしておくことが望ましいです。また、離婚後、義務者の側が財産分与や慰謝料の支払いを渋ることはよくあります。これらは離婚と同時に支払いを受けてしまうのが1番です。」(渡邉寛弁護士)なるほど、離婚時にすっきり支払いが終われば後腐れはありませんね。「養育費や財産分与・慰謝料の分割払いなど将来の支払いがある時は、離婚協議書は公証役場で公正証書にしておくのが効果的です。公正証書の大きなメリットとして、強制執行認諾文言の条項を入れておくと、不払い時に、裁判をせずに強制執行(銀行預金や給与債権の差押えなど)をすることができます。面会交流など非金銭的な条件は対象になりませんが、これももちろん、公正証書でも離婚協議書の内容として記載すべきです。」(渡邉寛弁護士)お互い冷静に話し合い支払い等を済ませた上で円満に離婚できればそれに越したことはありませんが、離婚という局面ではそうもいかない場合もあります。そんな時こそ、後々トラブルにならないよう知識と法的な備えが必要なのです。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】*sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月27日