チケットぴあがお届けする新着記事一覧 (94/342)
「中二の時は『どうやって童貞を捨てよう?』ってことばかり考えていましたね」――。柄本時生が真面目にそう語れば、篠山輝信はその言葉にうなずき「当時は“中二病”なんて言葉はなかったけど、まさにそれ!世界の中心にいると思ってました(苦笑)」と14歳の頃を語る。【チケットの詳細はこちら】2017年の初演に続く再演舞台『チック』で彼らが演じるのが、無断拝借した車で旅に出る14歳の少年たち。29歳(柄本)と35歳(篠山)の大人が演じるからこそ見えてくるものとは?ふたりに話を聞いた。ドイツ人作家ヴォルフガング・ヘルンドルフによる児童文学を原作に、世界中で上演されてきた本作。サエない少年・マイク(篠山)とロシア移民の転校生・チック(柄本)の冒険を描く。演出の小山ゆうなは、柄本と篠山の関係性を「お芝居のアプローチが正反対。だからこそバランスがいい」と評する。冷静に計算し組み立てる“静”の篠山と自由気ままな“動”の柄本。この関係は、マイクとチックという役柄そのまま。篠山は「ヘルンドルフさんのあて書きなんじゃないか?」と笑い、「僕は“これをしてはいけない”という枠組みから始まるので、柄本さんの自由さに憧れます。劇中に出てくるラジコンカーが、初演の本番中に故障したことがあったんですけど、スペアがあるのを知ってて、うまく入れ替えたんです。僕としては“危機を救った”くらいの気持ちだったけど、柄本さんは“あれはそのままやった方が面白くない?”って(笑)。今回もさっそく稽古場で、初演で1度もやらなかった動きをして僕らをビビらせてます」と語る。一方、柄本は「篠山さんが絶対にぶれないし、フレームの中にきちんといてくれる。それってすごいことなんです」と篠山の存在感が動かずにあるからこそ、自らは自由を得ていると彼への信頼を口にする。柄本がここまで気儘に動けるのは、小山の演出によるところも大きいようだ。柄本曰く「小山さんは“チックはロシア移民で、ケンカが強くて、こんな性格で…”と玄関とドアノブだけ作って“あとはお願いします!”という、極論と言える演出をする人(笑)。それは、毎回、同じことをやってもいいし、やらなくてもいいということでもある。すごく怖いことをされるなぁって思います」14歳という設定に囚われることはない。篠山は「設定上、14歳だけど何歳にもなり得るし、誰もが“当事者”になりうる物語。実際の年齢と離れている僕らが舞台で演じるからこそ、幅広い層の人の心に響くんじゃないかと思います。どこにも居場所のないふたりが、旅を通して“変な”他者と出会っていく姿が面白いと思います」と語る。社会から疎外されたふたりが旅の末に手にするのは希望か?それとも…。「チック」は7月13日(土)よりシアタートラムにて上演。※手話付公演あり。※公演期間中、『チック』に登場する不思議な少女、「イザ」を主人公とした作品、『イザぼくの運命のひと / PICTURES OF YOUR TRUE LOVE』リーディング公演あり。取材・文:黒豆直樹
2019年06月24日アメリカの4人組ハードロックバンド、KISSが12月8日(日)の宮城・ゼビオアリーナ仙台を皮切りに最後の来日公演を開催する事が決定した。【チケットの詳細はこちら】KISSの来日公演は2015年以来4年ぶり12回目。全国5会場で行われる。『END OF THE ROAD WORLD TOUR』と銘打たれた今回のツアーは、今年1月にカナダのヴァンクーヴァーからスタートし、その後、北米、ヨーロッパと各国を巡っている。KISS史上最大級のステージ・セットによる、最後の来日公演。チケット発売の詳細は後日発表される。■KISS『END OF THE ROAD WORLD TOUR』12月8日(日)ゼビオアリーナ仙台(宮城県)12月11日(水)東京ドーム(東京都)12月14日(土)盛岡タカヤアリーナ(盛岡市総合アリーナ)(岩手県)12月17日(火)京セラドーム大阪(大阪府)12月19日(木)ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)(愛知県)
2019年06月24日仲道郁代が芸術監督として主宰する、その名も「仲道郁代ピアノ・フェスティヴァル」(7月14日(日)・東京芸術劇場)は昨年に続く2回目の開催。今年も、仲道郁代、横山幸雄、菊池洋子、實川風、松田華音、藤田真央と、若手からベテランまで、6人の実力派ピアニストたちが、2台&5台ピアノで超絶技巧の妙技を繰り広げる。このメンバーが一堂に会して5台のピアノを鳴らす、その壮観な様子を想像するだけでもわくわくするではないか。「全員がぴたりと揃うキレと、それぞれが絡み合う時の凄みは、ピアニストでもめったに体験できない新しい感覚のサウンド。去年最初に5台で合わせた時は、鳥肌が立ちました」【チケットの詳細はこちら】普段お目にかかる機会がない5台ピアノの合奏。第一線で活躍するピアニストたちにとっても難物なのだそう。演奏するのは《美しく青きドナウ》や《トルコ行進曲》などおなじみの名曲ばかり。しかし、「せっかくこれだけのメンバーが集まるのだから、みんなが本気を出さないと弾けないような編曲を選びました。だから大変で、去年の出演者のひとりは、これは“参加”じゃなくて“参戦”だと言っていました(笑)。ピアニストが技を掛け合わせたとき、これほどまでにエキサイティングなサウンドが生まれるのか! と私たちも驚いています。この面白さをぜひ“体験”していただきたいです」コンサート前半は2台ピアノ。モーツァルトの《2台ピアノのためのソナタ》を、1楽章ずつふたり×3組が交代で弾いたり、《白鳥》(サン=サーンス)や《だったん人の踊り》などの名曲が並ぶが、こちらもまた、よく知った名曲でピアニストによる個性の違いを楽しめる、というだけではない。「2台ピアノならではの複雑な音の妙技。ピアノの音の華麗さ、色気、色彩を堪能してほしい」ピアノという楽器のポテンシャルは、洗練されたピアニズムを持ち寄って2台、5台で奏でると、いったいどこまで広がるのか。その極みに挑戦するのがこのピアノ・フェスティヴァルの意図だという。ピアニストたちの意地とプライドをかけた本気のエンターテインメントだ。開演前には「ピアニスト・クロストーク」があり、6人全員が舞台に出て、あらかじめ募集した同じ質問に答える。「来ていただいて、つまらなかったとは絶対に言わせない」と自信に満ちた意気込みを語る仲道。間違いなくスペシャルなコンサートになりそうだ。取材・文:宮本明
2019年06月21日ニューヨークを拠点に活躍するジャズ作曲家・挾間美帆。権威のある米国のジャズ誌『ダウンビート』の「未来を担う25人」に、アジア人で唯一選ばれた注目のアーティストだ。この夏、新たに始まる「ネオ・シンフォニック・ジャズ at 芸劇」をプロデュースする。【チケットの詳細はこちら】シンフォニック・ジャズとは、ガーシュウィン《ラプソディ・イン・ブルー》(1924年)を発端とする、クラシック音楽のオーケストラ編成によるジャズのこと。「とにかくオーケストラが好きで、エレクトーンでオケの曲ばかり弾いているような子供だったので、今でも頭の中で最初に鳴るのはオケの音なんです」大学まではクラシックの作曲を学んでいた。「音楽のジャンル分け自体がもはやナンセンス」と、クラシックとジャズを分けて考えることはないが、ジャズの特徴に「即興演奏」があることはポイントとして挙げる。「私も作曲科の学生時代、ジャズは敷居が高いというか、音符が書かれていない音楽への恐怖心がありました。実際には即興は努力とトレーニングのたまものなのですが、当時は、天才たちが、降って来たものをそのまま演奏していると思っていたんですね」だからクラシック奏者のための作品では、基本的に即興を用いないし、今回も、通常のクラシック・オーケストラ編成で演奏できる曲だけを集めた。ガーシュウィン、バーンスタインから、シンフォニック・ジャズの「中興の祖」的な重要作曲家クラウス・オガーマン(1930~2016)とヴィンス・メンドーサ(1961~)。そして挾間自身の新作《ピアノ協奏曲第1番》の世界初演。「初演から90年以上。でもいまだに《ラプソディ・イン・ブルー》ばかりが演奏されて、シンフォニック・ジャズの発展はストップしている。『その次』として残せるような、スタンダードとして末長く楽しんでもらえる作品を作りたい」と意気込む。独奏者にはイスラエル出身の世界No.1ジャズ・ピアニスト、シャイ・マエストロを迎え、ピアノのカデンツァ部分は彼の即興に委ねる。「ゆくゆくはクラシックのピアニストでも弾けるように楽譜を書きますけれども、今回はジャズ・ピアニストとクラシック・オーケストラのバランスをうまくとって作曲したいと思っています」クラウス・オガーマンも彼女の「推し」。この取材の数日後にあった関連レクチャーでは、オガーマンの紹介に多くの時間を割いていた。アントニオ・カルロス・ジョビン、ビル・エヴァンスらとの仕事で知られる名アレンジャーであり、クラシカルな現代作品も手がけた作曲家。挾間いわく「オガーマン、マジ良い!」ジャズやクラシックに限らず、あらゆる音楽ファンに入り口のあるコンサートだと語る「ネオ・シンフォニック・ジャズ at 芸劇」は、8月30日(金)、東京芸術劇場で。原田慶太楼指揮・東京フィルのクールなサウンドで、シンフォニック・ジャズの歴史を浴びる一夜。取材・文:宮本明
2019年06月21日2016年、健康上の理由もあり表舞台での歌唱活動の無期限休業を発表した宮沢和史が、昨年の秋から再始動。【時を泳げ魚の如く】コンサートをマイペースで行なっている。ファンの歓喜に迎えられた本格的な復帰から半年余を経た今、心境あるいは音楽的な変化は何かあったのだろうか。【チケット情報はこちら】「過去に全都道府県をコンサートで周りましたが、今回のツアーはゆっくり間を空けて全国を周っているので、一本一本への準備期間での思いと余韻が、今まで以上に大きく、長いため、コンサート前後、当日、本番中の一挙手一投足が記憶の印画紙に焼き付けられています。今まで何度も訪れた場所でさえ、とても新鮮で、再発見がいくつもあります。これからもこういう姿勢で音楽が届けられたら自分らしい音楽活動のペースが出来上がるかな、と思っています」もうひとつの嬉しい知らせは、5月に約3年ぶりのソロアルバム『留まらざること 川の如く』を発表したことだ。それぞれの曲の歌詞に、自身の偽らざる「今」が投影されている。詩作の変化は何に起因しているのだろうか?「一旦完全に音楽、音楽シーン、から離れたことが大きかったです。10代の頃から音楽漬けで、そういったことは一度もなかったので、「ヴォーカリスト宮沢」ではなく、「人間宮沢」という視点で自分を見つめることができました」中でも胸に突き刺さるのは「歌手」の一節 “僕はもう 歌手じゃないから”。 この言葉を生み、歌った背景には、大きな覚悟があったのではと想像する。どんな時期にどんな思いで作詞したのだろう?「歌手を引退してから数ヶ月後です。もう人前で自分の作品を発表することは二度とないとわかっているのに、この詩を書いたことが不思議でした。さらに、メロディーをつけやすい字数の作詞になっていました。染み付いた職業病でしょうか?」アルバムの1曲目『Paper Plane』の歌詞は、生命には終わりがあることに根ざしている一方、”キリストが見下ろす街”(=リオ)、”エイサーが踊る島”(=沖縄)への旅も歌いこんでいる。これまで世界中を旅し、様々な出会いと経験を通じて自身の音楽をさらに豊かなものにしてきた宮沢和史。彼の旅はこれからも続くのだろうか?「自分の飛行、すなわち人生の航路が“ぶざま”であると自覚したことはとても素晴らしいことだと思っています。これからはカッコつけず、自然な旅ができる気がしています」宮沢和史が自らライフワークに位置づけている【時を泳げ魚の如く】コンサートは、ニューアルバムの発表を経て、新たな局面を迎えた。7月5日(金)に世田谷区民会館にて実施されるチケットは好評発売中。取材・文:中原仁
2019年06月21日モダンスイマーズの蓬莱竜太が作演出を担い、藤原竜也と鈴木亮平がダブル主演を務める新作舞台『渦が森団地の眠れない子たち』。そこでビジュアル撮影中の藤原と鈴木を直撃、現在の心境を聞いた。【チケット情報はこちら】骨太な人間ドラマを、笑いとリアリティのある会話で紡ぎ出してきた蓬莱。その魅力について、「お客さんに対していろいろな変化球を投げてくるんですけど、訴えかけてくるメッセージはとても強い。物語のつくり方が非常に優れている作家さんだと思います」と藤原。また鈴木は、「セリフがとにかくうまいですよね。伝えたいことをはっきり見せるのではなく、その一歩手前、想像の余地は残しつつもしっかりと伝わる。そのバランス感覚が素晴らしいと思います」と絶賛する。藤原は2013年に蓬莱が書き下ろした『木の上の軍隊』に出演。それを機に親交を深め、今回の企画が実現したという。今回蓬莱から提案されたのは、“団地の王座を争う少年ふたりの物語”。小学生役だと聞かされたふたりは…。「特に違和感はありませんでしたね。皆さんは僕の体の大きさや顔の老け方が気になるでしょうけど、僕からは見えませんから(笑)」と鈴木。そんな鈴木を見つつ、「こんな小学生いたよね」と笑う藤原。だが「たぶん蓬莱さんは、竜也くんを見てこの設定を思いついたんだと思いますよ。だってここまで童心を持ち続けている人ってなかなかいないですから」と鈴木も笑う。内容としては、蓬莱いわく「団地の子供たちのスペクタクルものになる」と。そんな本作の主軸となる子供たちについて、藤原は蓬莱にこんなことを言われたと明かす。「“すごく力のある俳優に直接声をかけて集めるから。きっと彼らにとってもビッグチャンスになるだろうし、いい芝居をしてのし上がるための土台を僕はつくるんだ”って。それって企画として本当に面白いと思いますし、僕らにもいい化学反応が起きると思います」。さらに10年ぶりの共演となる藤原と鈴木が、いかなる化学反応を見せてくれるかも楽しみのひとつだ。「僕と藤原くんはキャリアが全然違いますから。こうしてふたりで並んでやらせてもらえるということで、自分の成長を見せられたらなと。そして竜也くんを受け止める、キャッチャー的な存在でいい仕事ができればと思っています」と鈴木。藤原も「10年ぶりの共演でがっちり組ませてもらえるということで、亮平の存在は本当に頼もしいです」と久々の顔合わせに期待を寄せていた。取材・文:野上瑠美子
2019年06月21日米国のマーチングバンドを進化させた世界的人気パフォーマンス集団「ブラスト!」。全編ディズニー音楽で綴る最新作『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー2019』の関西公演に向けて、ヤマハミュージック大阪なんば店にて、公開記者会見を開催した。当日はパーカッションの石川直、トランペットの米所裕夢、トロンボーンのリサ・ライザネック・チャペルの3名が登壇。会見では生演奏に加え、ミニ・ワークショップも行われた。「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニーチケット情報「あらゆる人を幸せにするディズニーの物語。そこに紐付く音楽を、僕らブラスト!が技と統一美とパフォーマンスでさらに刺激的なものとしてお届けする舞台です」。冒頭、キャストを代表して最新作についてアピールする石川直。石川は日本人初のメンバーとして2000年に入団。その超絶技巧でブロードウェイの聴衆をも魅了してきたスネアドラム界の雄だが、入団20年目の今年、本作をもっての「ブラスト!卒業」が宣言された。自身のキャリアの中で最高の節目にしたいと話す石川。「刺激的なパワー充電型のエンタメなので、観客の皆さんもグイグイ前のめりで楽しんでいただければと思います」。続く生演奏では、『リトル・マーメイド』より「アンダー・ザ・シー」、『ピノキオ』より「星に願いを」など、本番の予定リストより数曲がメドレーで披露された。その後は、パーカッションの石川とトランペットの米所が講師となり、ミニ・ワークショップへ。会場から1名ずつ希望者を募り、石川らによる簡単なレクチャーの後、参加者が見守るなか実際に楽器を鳴らすまでを行うもの。トランペットに初挑戦した女性は「意外と重いです」と新鮮な感触に驚きつつも、米所から「初めてなのに最初から音が出せるのはすごい」と高評価を受け笑顔を見せた。ドラムに参加した男性はスティックを回すなどの“魅せる演出”にも挑戦。石川からベストな手の位置を教わり、見事離れ業を成功させると場内から拍手が起こった。男性は「嬉しい経験でした。ドラムを始めてみたくなりました」と刺激を受けた様子だった。ファンとの距離が近いのはブラスト!ならではの魅力のひとつ。本公演でも幕間にはロビーでの演奏があり、終演後はキャストが見送りに立つミート&グリート付き。今年は映画『メリー・ポピンズ リターンズ』より「小さな火を灯せ」をはじめ、新曲も続々登場予定。会場を包み込む熱気と一体感、そして石川最後の勇姿をぜひライブで見届けてほしい。公演は8月11日(日・祝)、12日(月・休)に京都・ロームシアター京都メインホール、8月14日(水)・15日(木)に大阪・オリックス劇場、9月4日(水)に兵庫・神戸国際会館こくさいホール、9月7日(土)・8日(日)に奈良・なら100年会館・大ホールで上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年06月21日4月に13年ぶり6回目の欧州公演を成功させた日本フィルハーモニー交響楽団。その帰国報告と、今秋から始まる「ベートーヴェン生誕250年」シリーズの発表会見が行なわれた(6月6日・杉並公会堂)。【チケット情報はこちら】4月2日から14日まで、フィンランド、オーストリア、ドイツ、英国をめぐった欧州公演(全10公演)。最初のフィンランド公演には、日本フィルにとっていくつかの大きな意味があった。日本-フィンランド外交関係樹立100周年の今年は、同時に、楽団の創立指揮者で、フィンランドの血を引く渡邉曉雄の生誕100年でもある。その渡邉が日本での紹介に尽力したシベリウス作品を、日本フィルとして初めて、作曲家の母国で演奏したのだ。そして現首席指揮者ピエタリ・インキネンもフィンランド出身。首都ヘルシンキだけでなく、彼の生地コウヴォラでも公演を行なった。「日本フィルにとっても私自身にとっても、意味のある大きな節目。私が日本フィルと過ごしたなかで、最も集中し、最も密度の高い2週間だった。連日ハード・スケジュールで移動と演奏を重ねたことも、チームとしての結びつきを高め、オーケストラとして大きく成長したと思う」(インキネン/以下同)その成長の証がたとえば帰国後の4月の東京定期演奏会だった。欧州公演の演目で組んだ帰国報告プログラムだったが、インキネンは、知り尽くしたサントリーホールで、それまで日本フィルで経験したことのない響きを実感したという。「メンバー全員サプライズだった。サントリーホールは変わっていない。変わったのは私たちの響きなのだから」その経験と成長を土台に臨む「ベートーヴェン生誕250年」シリーズ。2019年10月から足かけ3年、全9回(10公演)にわたって、9曲の全交響曲と、ピアノ協奏曲4曲(3番を除く)、ヴァイオリン協奏曲、《エグモント》序曲を演奏する。しかもユニークなのは、ベートーヴェンだけでなく、ドヴォルザークのレアな序曲を組み合わせたり、さらにはメイン・プロ自体が、ドヴォルザークやブルックナー、R・シュトラウスだったりする回もあること。発想が自由だ。「そのほうが面白いと思ったから。私自身も楽しみ」インキネンは日本フィルに特有のDNAを「明るく繊細な響き」と定義づけ、「日本フィルとは、これから初めて一緒にベートーヴェンを体験するが、そのDNAは変わらない。そこに、ツアーで得た互いの信頼が生きて、怖れを知らない、エネルギーに満ちた方向に向かうだろう」とヴィジョンを語った。そして最後にインキネンは、「まだ《運命》を聴いたことのない、新しい世代の聴衆のためにも演奏しなければならない」と力を込めた。飾らない発言に漂う、新鮮なベートーヴェンの予感。われわれ聴き手も「知っているつもり」になってはいけない。もう一度襟を正して、インキネンと日本フィルのベートーヴェンに向き合ってみよう。取材・文:宮本明
2019年06月20日稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)による3人芝居『エダニク』が6月22日(土)に東京・浅草九劇で開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】『エダニク』は横山拓也(iaku)が2009年に書き下ろし、さまざまな演出家、出演者によって再演を重ねられている作品。今作では、鄭義信が演出を手掛ける。とある食肉加工センターを舞台に、そこで働く若者・沢村(稲葉)と同僚のベテラン・玄田(中山)、そして取引先の新入社員・伊舞(大鶴)が休憩室で一緒になり、屠畜という作業への言及や、企業間の駆け引き、立場の保守など、各々のアイデンティティに関わる問題をぶつけ合い議論を白熱させる――。と、あらすじを書くとやや硬質なイメージになってしまうが、稽古場ではとにかく笑わされた。稲葉が演じる沢村は、ラジオから流れる音楽に合わせて激しくカップ焼きそばを作るシーンからおもしろく、けれど戯曲を読んでみると、そんなスタイルで作ることは書かれていなかった。つまりこれが鄭バージョンということだろう。中山演じる玄田のキャラも新鮮。マイペースさと図太さとミステリアスさがごっちゃになったような男を、中山にとって初めてという関西弁で演じている。大鶴が演じる伊舞は、そんなふたりとは一線を画すキャラクター。軽く、ゆるく、おっとりしていて、けれどやや癇に障る話し方が強烈だ。彼が会話に参加すると、ことごとく稲葉と中山の会話のテンポが崩れていくのがおかしい。それぞれの芝居は濃厚で、どこか楽しそう。例えば伊舞が「30歳までニートで、つい最近就職した」と聞いて思いっきり先輩風を吹かせるも、伊舞の秘密を知った沢村は、気が動転して能のような口調で謝り始める。その姿はおもしろいのだが、“急に態度を変える調子がいい若者”というより“家族のために仕事をクビになりたくない父親”に見えるのがさすがだった。また、秘密を知っても特に態度が変わらない玄田にも「こういうふうに生きてきた人なんだろうな」と思わせる説得力があるし、それぞれの反応に対する伊舞の案外わかりやすい表情も見どころ。そういったひとつひとつの積み重ねで、この芝居がどんどん深みを増していくのを感じた。ドタバタでありながらも、そこが屠場、つまり豚などの家畜を殺し、解体し、食肉として整えていく場であることで、話題は「命」「生き物」「食べ物」「仕事」も絡む議論に発展していく。生々しい題材だが、この3人だからこそ何を語るのか聞きたい、と思わされる稽古場だった。『エダニク』は6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2019年06月20日お笑い芸人キャイ~ンのふたり、天野ひろゆきとウド鈴木がカナダのサーカス・エンターテインメント集団シルク・エロワーズの日本最新作『サルーン』のスペシャルサポーターに就任した。【チケット情報はこちら】1993年、カナダ・モントリオールで産声を上げたシルク・エロワーズは「稲妻サーカス」という意味を持つサーカス・エンターテインメント集団。彼らにとって6年ぶりの来日公演となる『サルーン』はアメリカ西部開拓時代の酒場を舞台に、ミュージカルとアクロバットを融合させたミュージカル・サーカスだ。美声で知られる天野はミュージカルの出演経験もあり、「物語の中で信じられないようなサーカスの技を見せながら歌やダンスまで。さらに舞台上で生演奏までするミュージカルなんて見たことない。エンターテインメントの全てが詰め込まれている」と絶賛。「ティーターボード(ジャンプ台)で天野君と一緒に跳んで空中でキャイ~ンのポーズをやってみたい」とウドも興奮の面持ち。キャイ~ンの出演するテレビCMが7月中旬(予定)からオンエアされるなど、ふたりは今後様々な形で『サルーン』日本公演を盛り上げていくという。公演は10月25日(金)から11月4日(月)まで、東京・東急シアターオーブ、11月13日(水)から11月17日(日)まで、大阪・オリックス劇場にて。現在10月27日(日)15:30公演と11月1日(金)19:00公演のぴあ半館貸切公演の先行発売中!6月22日(土)からは全公演対象の先行発売が開始。
2019年06月20日福岡ソフトバンクホークスの福岡移転30周年を記念して、6月30日(日)に福岡・ヤフオクドームで初開催される都市型音楽フェス「FUKUOKA MUSIC FES」。同フェスの追加出演者が発表された。出演が決まったのは、日本を代表するシンガーToshlとワールドワイドな活躍を続けるギタリストMIYAVIの2組。チケットは発売中。■FUKUOKA MUSIC FES日時:6月30日(日) 10:00開場12:00開演会場:福岡 ヤフオク!ドーム(福岡県)出演者:アンジュルム / きゃりーぱみゅぱみゅ / THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / C&K / Toshl / DOBERMAN INFINITY / ナオト・インティライミ / MIYAVI※アンジュルム和田彩花さんの出演はございません。OPENING ACT=BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE / RYUCHELL※OPENING ACTの「BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE」と「RYUCHELL」は開場後、開演時間までにパフォーマンスを行います。(50音順)
2019年06月19日今年も古川雄大、大野拓朗のW主演で上演された、小池修一郎演出のミュージカル『ロミオとジュリエット』。若さゆえの衝動、苛立ち、興奮が軸となる本作で、見事ダンスという手法でそれらを表現したのが京都出身の振付師KAORIalive。若手俳優の登竜門的作品は、今や若手ダンサーらの憧れのステージにもなっている。とりわけ情感豊かな群舞の振付に定評があり、小池とのタッグでは他にミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』などの大ヒット作でも知られる。そんな彼女が主宰する表現系ジャズダンスチームMemorable Momentが、昨年好評を博した最新ダンス公演『ロミオが描いたジュリエット』を関西で初めて上演する。Memorable Moment「ロミオが描いたジュリエット」チケット情報物語は、クラウンが「ロミオとジュリエット」に魔法の筆でいたずら書きをする所から始まる。ページを破り他の童話と混ぜ合わせると、自らも本の中に吸い込まれてしまう。対立し合う王国、幸せの青い鳥が見えない子供たち。離ればなれになったロミオとジュリエットは、いつしか自分たちの手で“真実の物語”を描き始めて……。純愛劇の一方でKAORIaliveは現代性も重視。童話に出てくる「青い鳥」をツイッターに見立てるなど(!)、SNS依存が蔓延する現代の風潮にも警鐘を鳴らす。同時に情報過多の時代に「人生は自分の手で切り拓く」という大きなテーマを盛り込んだ。曰く、「原作では主人公らが互いへの愛ゆえに死を選びますが、今作ではまた違った決断をふたりが下す。死の描き方にもこだわりました」。見学に訪れた稽古場では、ロミオ役の大柴拓磨ら主要メンバーが和気あいあいと振付の最終確認を行っていた。見学したのは登場人物の紹介場面。本番では誰もが知る童話のキャラクターが映像から飛び出たような趣向で楽しませる。「しかも弱虫のピノキオがマッチョに変身したり。クラウンのいたずらでそれぞれの性格が少しずつ変化する」のも見もの。コミカルな芝居仕立ての場面から華麗なジャンプ、ターン、決めポーズまで。流れるような場面転換で一瞬たりとも飽きさせない。本番ではさらに映像や音楽、衣裳の効果も加わり、これが台詞のない公演であることを忘れるほど、物語に見入ってしまうはずだ。じつは作品が完成した一昨年前、開演直前に暴風警報が発令され上演が中止となった過去がある。内容に磨きをかけて挑んだ翌年の初演では、「感動で涙が止まらなかった」など、大きな反響を呼んだ。KAORIaliveたちもいつになく手応えを感じ、今回の関西初演に踏み切った。「ダンスへの興味のあるなしに関わらず多くの人が楽しめる作品を目指しました。劇場に入った瞬間から始まる物語の世界をお楽しみください」。公演は6月22日(土)、23日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。ゲストダンサーに大柴拓磨、SAWADA(WRECKING CREW ORCHESTRA)、KIMIKO(chore0ringz)、TUKI(TUKIとKUMA)を迎える。取材・文:石橋法子
2019年06月19日東京・上野の駅前に建つ国立西洋美術館が1959年に開館してから、今年で60年。日本を代表する公共美術館として知られる同館だが、その礎となったのが、実業家・松方幸次郎(1866-1950)による「松方コレクション」だ。明治の元勲・松方正義の三男として生まれた幸次郎は、エール大学などで学んだ後、神戸の川崎造船所の初代社長となる。財界で活躍する一方、日本に本格的な美術館がないことに気づいた幸次郎は、やがて美術館設立の構想を抱くように。さっそくロンドンやパリで自ら買い付けた美術品は、その数なんと3000点以上!絵画から彫刻、素描、版画など、大作から小品まで多岐にわたる作品群には、モネやゴーガン、ゴッホ、ロダンなど超一流の作品も多数。今回はその「松方コレクション」が流転の運命を経て再び西洋美術館の礎となるまでを、時代背景と共にたどる展覧会だ。6月10日、同美術館で行われた報道内覧会に足を運んだ。【チケット情報はこちら】内覧会ではまず主任研究員の陳岡めぐみ氏が、「『松方コレクション』のこれほど大規模な展覧会は初めての開催。松方幸次郎が収集を始めた1916年から現在まで約100年の中で、コレクションの形成から散逸、一部が国立西洋美術館に所蔵されるまでの歴史をたどる構成となっています」と解説。また「特にここ数年で調査研究が進み、行方の知れなかった美術品の発見など、新たな成果も展示。西洋美術館をよく知る方も、新しい楽しみ方ができるはず」と自信をのぞかせた。内覧会の後半では研究員の邊牟木尚美氏が、2016年にパリで発見され、同館に寄贈されたことで話題を集めたモネの大作『睡蓮、柳の反映』の前でレクチャー。幸次郎がモネから直接購入したことでも知られるが、発見時には上半分が失われ、残った部分も損傷が激しい状態。今回は1年をかけて細かい修復を繰り返し、現存部分が復元されたことが紹介された。実際に観てみると、たしかに欠けた上半分は痛々しいものの、修復された残りの部分はモネならではの美しさ。中ほどにちょこんと描かれたピンクの花が、まるで本物の花のように浮き上がって見えることに驚かされる。展示はルノワール『アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)』、ミレイ『あひるの子』、ロダン『考える人』など同館おなじみの作品に加え、戦前に散逸して以来、初めて「松方コレクション」として公開される作品も多数。今ではオルセー美術館に所蔵されているゴーガン『扇のある静物』やゴッホ『アルルの寝室』、バーゼル美術館所蔵のマティス『長椅子に座る女』などの作品が登場。貴重な“再会”を果たしているのも見どころとなっている。松方コレクション展は9月23日(月・祝)まで、東京・国立西洋美術館にて。取材・文/佐藤さくら
2019年06月19日アガサ・クリスティの長編推理小説『オリエント急行殺人事件』の舞台化作品が、7・8月に日本へ初上陸する。2017年にリバイバル映画が公開され、同年にはケン・ルドウィックの脚本でアメリカにて初演された本作。河原雅彦が演出を手がけ、小西遼生が主演を務める今回の日本版にキャスティングされた、乃木坂46・伊藤純奈に話を聞いた。【チケット情報はこちら】ビジュアル撮影だったこの日、伊藤は“若く麗しい貴婦人”ことアンドレニ伯爵夫人の装いで取材に応じた。オファーの率直な感想を尋ねると、本作の上演期間が乃木坂46の全国ツアーに重なっており「お引き受けするか葛藤しました」と吐露。だが次第に「ベテランのスタッフやキャストの皆さんが勢揃いする恵まれた環境でストレートプレイの経験を積みたい」気持ちが芽生える。そこで最終的には所属事務所のスタッフと話し合い出演することに決定。作品に懸ける強い思いをにじませた。アンドレニ伯爵夫人は、ケネス・ブラナーが監督・主演した2017年の映画を観て「演じるならこれ」と伊藤が密かに狙いを定めていた役。映画では常に夫に守られる、闇を抱えた繊細な役どころだが、舞台の脚本を読んで「知的で上品、しっかり者の女性像が浮かびました」と分析する。主人公・名探偵ポアロのそばで事件解決の手助けをするシーンも控えるらしく、映画とは180度異なる人物像に筆者が驚きの声を上げると「医大生なんですよ」と畳みかけた。「舞台にはオリエント急行に同乗する旦那さますらいません。ひとりで長旅に出る、リバイバル映画とはひと味違った伯爵夫人をご覧ください」とアピールも欠かさない。本作は1934年の出版以降、何度も映像化された偉大なタイトル。結末を知る原作ファンにも楽しんでもらえるよう、伊藤は「謎解きや伏線の回収以外にも見どころを散りばめられたら」と意気込む。「今日はポアロ(探偵)視点で観たから次は伯爵夫人に注目しよう、みたいにひとりひとりの登場人物に細かくフォーカスしてみていただきたいです」と複数回の鑑賞をオススメしつつ、自身は「セリフがない時の“オフ芝居”に注力します」と笑ってみせた。公演は、7月26日(金)から28日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。その後、8月1日(木)・2日(金)に愛知・ウインクあいち 大ホール、8月9日(金)から18日(日)まで東京・サンシャイン劇場と巡演する。チケットの好評発売中。取材・文:岡山朋代
2019年06月19日笑いすぎてお腹がよじれるかと思えば、時には涙しそうにもなる。歌、ダンス、ミュージカル、スケッチ(コント)など盛りだくさんの『CLUB SEVEN ZEROⅡ』が、6月15日に日比谷・シアタークリエで開幕した。ミュージカルなどそれぞれ活躍するメンバーがそろう本シリーズもついに17年目。2度目の出演となる大山真志や、ゲストの沙央くらま、北翔海莉も加わり、歌に笑いにと多彩な姿を見せた。【チケット情報はこちら】テーマ曲で幕をあけ、激しいダンスで一気に観客を惹き付ける。踊りは一体感がありながら、それぞれに個性も溢れる。脚本・構成・演出・振付をつとめる玉野和紀や、吉野圭吾、東山義久、西村直人は「レジェンド」と呼ばれるのも納得の存在感。各自が色の違う色気を放つ。沙央、北翔も華やかさと優雅さでチームの魅力を引き立たせ、若手の大山は大きな体で機敏に踊り、群舞に勢いをつけた。5つのスケッチは抱腹絶倒。学園モノ、職業モノなど様々なシチュエーションが登場。公演ビジュアルでもあるウェスタン風の作品も。元宝塚歌劇団ふたりの男役を彷彿とさせるシーンもあれば、宝塚からかけ離れたギャグの連発にも驚く。アドリブのシーンでは、出演者らも互いの即興芝居に素の笑いを浮かべる。毎日なにが起こるのか!?上演回によってAとBの2バージョンのスケッチがあるので、どちらも観たくなる。20分の休憩を挟んで2幕冒頭は、ミニミュージカル『F』。1920年代のNYではマフィアとギャングの対立が激化していた……。笑いに溢れるスケッチとは一転、そこは裏切りと血の匂いが漂う闇の世界。響き合う歌声にそれぞれの苦悩が重なり、裏社会に住む男女の生き様が描かれる。大人の色気溢れる1作だ。大人気の「50音順ヒットメドレー」も期待を裏切らない!全77曲を歌って踊る怒濤のエンタメショー。懐メロ、アイドル、CM曲などに乗せて、1曲ごとに衣装が変わったり、小芝居が繰り広げられる。次になにが来るのかわからないおもちゃ箱のようなメドレーだ。表現力豊かなダンスと歌、フィルム・ノワールのような演技からバカバカしいギャグまで。長年、技術と経験を積み重ねてパワーアップし、観客ひとりひとりを受け止めるような懐の深いショーとなった。上演時間は3時間超だが、何時間観ていても飽きない……が出演者達は「大変だからやめて」と笑いそうだ。それでもどっぷりと浸っていたい贅沢な時間だった。ツアー公演は7月に愛知、大阪にて。取材・文・撮影:河野桃子
2019年06月19日渡辺えりが主宰するオフィス3○○の新作『私の恋人』で、女優・のんが初舞台を踏む。かねてより渡辺作品への出演を熱望していたという小日向文世とともに、のん、渡辺のたった3人で30役を演じきるという異色の音楽劇。渡辺とのんに話を聞いた。チケット情報はこちらのんの魅力を「あざとさがない。でも演技に狂気がある、奥底に何か闇みたいなものが見えるところが『あまちゃん』で共演したときから好きなんですよ」と語り、今回の出演は「やっと」だと喜ぶ渡辺。のんの方も同じ気持ちのようで「ドラマで共演した後も、お食事に誘っていただいたり、お話させていただいたりしていて。そのたびに「出てよ!」と言ってくださっていました。私も「出たいです」と答えていたのですが、今回本当に声をかけていただけました!」と嬉しそうに話す。そのやってみたい、という前向きな気持ちは、初舞台の不安を大きく上回ったようで「えりさんの舞台は本当に素敵なんですよ。哲学的な言葉遊びと、ぐねぐねっと時空を飛び越えていくあの感じに、胸が高鳴ります。人を混乱させる、悪夢のようなファンタジーを作る方。えりさんご本人は、乙女の心があって、一方で破天荒でもある。“乙女と破天荒がせめぎあっている”ところが素敵です。もちろんえりさんと小日向さんとご一緒するというのは、重ねてきたものの差が大きすぎて、こりゃ大変だぞ!と思いました。でも勉強になるし、なによりも楽しそう!と思ってしまったんです。これはもう、やるしかないなと」と力強く話す。原作は芥川賞作家、上田岳弘の同名小説。渡辺は昨年、同じく上田作品『塔と重力』をベースにした『肉の海』を上演した。「もともと『私の恋人』が、私の戯曲『ガーデン』とテーマと構成が似ているなということがきっかけで交流が始まりました。『肉の海』では30人の出演者で上田さんの小説をベースにした物語をやったのですが、今度は3人で上田作品の登場人物全役をやったら面白いのではとパっとひらめいちゃったんですよ(笑)」と渡辺。物語はクロマニョン人、大戦中のユダヤ人、平成日本を生きる青年……と、10万年の時を超え3つの人生を生きた“私”を中心に描かれる壮大なドラマ。「悲惨な戦争が繰り返され、人類の滅亡が繰り返されていく。それをなんとか止められないか……という、深い人類愛の話だと思っていますし、そこを目指していきたいです」。渡辺に見どころを尋ねると「とにかく今まで見たことがないような、面白くて破天荒で、だけど心がキュッとなるようなものになります。あと、のんちゃんの歌も見どころ。5曲くらい歌ってもらいますし、ギターも弾いてもらいます!」とのこと。のんも「演技の中で歌ったり踊ったりするのは初めて。でも実はミュージカルに出たいなとずっと憧れていて、数年前からバレエも始めたんです。……あと、えりさんには「男の子をやってもらうよ、低い声出してね!」とも言われています。男装するの、大好きなのでそれも楽しみ」と期待を話した。国民的朝ドラ女優と、小劇場界の重鎮のタッグは一体どうなるのか。公演は8月28日(水)から9月8日(日)に東京・本多劇場にて。ほか各地公演あり。
2019年06月18日村上春樹の小説を原作にした舞台『神の子どもたちはみな踊る after the quake』が7月から8月にかけて上演される。ヒロイン・小夜子を演じる松井玲奈に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、阪神・淡路大震災(1995年)後、「地震のニュースを見た人たちの心の中で何が起こったのか」をテーマに書かれた短編小説集『神の子どもたちはみな踊る』(英語タイトル「after the quake」)から「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」を取り上げた舞台作品。蜷川幸雄演出×村上春樹原作の舞台『海辺のカフカ』と同じフランク・ギャラティによる脚本で、2005年にアメリカで初演され、日本では初めての上演となる。演出を手掛けるのは倉持裕。「舞台は定期的に、できれば毎年やりたいと思っています。去年は映像が続いて出られなかったぶん、今回は待ちに待ったという感じです」と約1年7か月ぶりの舞台出演を喜ぶ松井。そのタイミングで挑む本作は「挑戦したことのないものがたくさん詰まっている作品。自分がまだ行ったことのない場所に行くような気持ちでいます」と意気込んだ。原作小説を「答えをハッキリとは言わない文章だったり結末だったりするので、読む人によって着目するところが違う。だから人の感想を聞くのが楽しい」と言う松井自身の感想は「簡単な言葉で言うと“めでたし、めでたし”です。小夜子役が決まって読んだというのもありますが、小夜子と(古川雄輝演じる)淳平の長い恋愛のお話なのかなって」と語る。ふたつの短編をミックスした脚本については「最初に読んだときはちょっと難しいと思ったのですが、それはつまり舞台を観る方にもそうだと思うので。そういう方々にも“楽しかった”“観てよかった”と思ってもらえるようにつくっていけたら」夫と離婚し娘と暮らしている女性、という初めて挑む役柄。「小夜子は思っていることをはっきりと口にせず、そこにある空気感を読み取ってほしいタイプなのかなと思います。それに“母親”というよりは“女性”なんだなということもすごく感じました。だけど娘がいるから1歩を踏み出せない。魅力的な人です」と印象を語る。大学時代からの友人である淳平との関係の変化は「なぜ今なのかというところにある心理はまだ見つけられていないのですが、そこは村上さんが読む人に委ねている部分なのではないかとも思うんです。この作品での答えは、稽古の中で見つけていけたらと思っています」公演は7月31日(水)から8月16日(金)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。取材・文中川實穗撮影川野結李歌スタイリスト佐藤英恵[DRAGON FRUIT]ヘアメイク白石久美子
2019年06月18日10月5日(土)・6日(日)に幕張メッセ イベントホールにて行われる週刊少年ジャンプ「NARUTO-ナルト-」20周年記念『NARUTO to BORUTO THE LIVE 2019』。同公演の出演アーティスト及び豪華キャスト第1弾が発表された。【チケット情報はこちら】ライブを披露するアーティストは、KANA-BOON、ゲーム実況者わくわくバンド、DISH//、FLOW、Little Glee Monster。また、オリジナルエピソード朗読劇に、竹内順子(うずまきナルト役)、中村千絵(うちはサクラ役)、三瓶由布子(うずまきボルト役)、菊池こころ(うちはサラダ役)、木島隆一(ミツキ役)などの声優が出演する。そして、2.5次元舞台 ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」のスペシャルステージには、舞台キャストの松岡広大らが出演。ゲーム実況者わくわくバンドをゲストにゲーム実況を行う。チケットの最速先行受付は本日6月17日(月)昼12時より開始。■NARUTO to BORUTO THE LIVE 2019日時:10月5日(土)15:00開場 / 16:00開演予定10月6日(日)14:00開場 / 15:00開演予定会場:幕張メッセ 幕張イベントホール(千葉県)出演:<出演アーティスト>10月5日(土): KANA-BOON / ゲーム実況者わくわくバンド / FLOW / Little Glee Monster …and more ※五十音順10月6日(日): KANA-BOON / ゲーム実況者わくわくバンド / DISH// / FLOW …and more ※五十音順<出演キャスト>竹内順子(うずまきナルト役) / 中村千絵(うちはサクラ役) / 三瓶由布子(うずまきボルト役)菊池こころ(うちはサラダ役) / 木島隆一(ミツキ役)…and more ※順不同<出演舞台キャスト>松岡広大(うずまきナルト役) / 佐藤流司(うちはサスケ役) / 良知真次(うちはイタチ役)・・・and more
2019年06月17日TENDREが10月13日(日)北海道・BESIE HALLを皮切りに6都市を周るツアーを開催する。【チケット情報はこちら】同ツアーは10月2日(水)に新作EP『IN SIGHT -EP』がリリースされることに伴うもの。ツアーファイナルは東京・恵比寿LIQUIDROOMでの開催となる。ベースに加え、ギター、鍵盤やサックスなども演奏するマルチプレイヤー、河原太朗のソロ・プロジェクト=TENDRE。Yogee New Waves、sumika、Charaなど様々なバンドやアーティストのレコーディングに参加し共同プロデュースも務めるなど、その活動は多岐に渡る。昨年10月、1stアルバム『NOT IN ALMIGHTY』をリリース。今年10月リリース予定のEPは、4月に配信リリースされた『SIGN』を含む待望の新作だ。チケットの一般発売に先駆け、チケットぴあではオフィシャル先行を実施中。受付は6月23日(日)午後11時59分まで。■TENDRE「IN SIGHT - EP」release tour10月13日(日)BESIE HALL(北海道)10月15日(火)LIVE HOUSE enn 2nd (宮城県)10月20日(日)The Voodoo Lounge (福岡県)11月4日(月・祝)Shangri-La (大阪府)11月5日(火)池下CLUB UPSET (愛知県)11月15日(金)LIQUIDROOM (東京都)
2019年06月17日「新歌舞伎座開場60周年記念特別企画『松平健川中美幸特別公演 中村玉緒特別出演』」の第一部『いくじなし』で六助おはな夫婦を演じる、松平健と川中美幸が揃って取材会に出席、それぞれの思いを明かした。「松平健 川中美幸 特別公演 中村玉緒 特別出演」チケット情報共演は、新歌舞伎座での公演以来5年ぶり。普段は口数の少ない六助と、全くその逆であるおはな夫婦という役柄に「今までとは全く違うので、楽しみです」と期待を寄せる川中。松平も「川中さんとだったら、とにかく明るい舞台ができるので、私自身も期待して、楽しみにしています」と話した。江戸の裏長屋に暮らす人々の姿を生き生きと描いている本作。「長屋の夫婦の話なので、華やかさはないかもしれませんが、物語はしっかりと楽しんでいただけます。健さんは立ち回りで泥んこになるので、そこが面白いと思います」と見どころを語る川中。続けて松平も「中村玉緒さんや鷲尾真知子さんなど、大変おもしろい。鷲尾さんが長屋の大家さん役で、おはなとの丁々発止も面白いです」とアピールした。第二部のショーでは、『いくじなし』の出演者たちも登場。松平は川中をはじめ、中村玉緒とのデュエットも用意している。また、新曲『マツケン・アスレチカ』も披露、「ハンカチや手ぬぐいを持参して、一緒に楽しんでください」といざなった。川中も6月5日に発売したばかりの『笑売繁昌』をはじめ、「おもちゃ箱をひっくり返したかのような華やかなショーになります」と意気込んでいる。公演は6月28日(金)まで大阪・新歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:岩本和子
2019年06月14日日本舞踊協会の新作舞踊公演シリーズ「未来座 SAI」の第三回公演が行われる。【チケット情報はこちら】日本舞踊松本流の家元で、シリーズの立ち上げメンバーでもある歌舞伎俳優の松本幸四郎は、「日本舞踊協会ではもともと2月に古典、7月に新作を上演していて、新作は少しお休みしていたのですが、古典と新作は両輪という考えから、2017年にこのシリーズが誕生しました」と語る。毎回、SAIに異なる漢字を当てて公演を行う同シリーズ。第一回では「賽」の字を掲げて“水”がテーマの新作4つを上演し、第二回では「裁」として『カルメン』が原作の新作舞踊を再構成して送ったが、今回は「彩」の字のもと、2つの新作を上演する。その1つ目、『=ぴのきお=』は、童話『ピノキオ』を日本に置き換えた作品で、檜の人形=ぴのきおが、様々な人形と出会い、幾多のトラブルを乗り越えて成長する姿を描く。「皆様に馴染みのある題材ですし、ファンタジーなので、心情や風景、人間ではないものなどを表すことのできる日本舞踊には適していると思います。脚本・演出・振付の西川扇与一さんは新作の経験も豊富な方ですから、日本舞踊にもともとある人形振りという技術を駆使しつつ、新しい踊りを見せてくれるでしょう。檜男のWキャスト、花柳大日翠(おおひすい)さんと藤間爽子さんは対照的な雰囲気なので、見比べる楽しみもあります。語り(録音)で参加する坂東流家元の坂東巳之助さんは、役者の技も使ってくれるはずです」2つ目は、四季を描いた『春夏秋冬』。京舞・井上流の家元であり人間国宝の井上八千代が未来座に初出演する話題作だ。「舞踊協会の新作公演に、井上八千代先生が出演するのは初めて。若い舞踊家達から出てきたアイデアで、彼らの熱意が先生に伝わって実現に至ったのだと思います。京舞という踊り、そして先生の芸は、非常に洗練され、それでいてリアルで、素晴らしい。どうやっても届かない憧れであり、だからこそ日本舞踊家として何ができるか考えさせられます。例えるなら、歌舞伎にとっての能狂言のような存在ですね。皆様に堪能していただくのは勿論、若い舞踊家には同じ舞台上でぜひ、色々なものを吸収してもらいたいです」「日本舞踊にはまだ身体だけでストーリーが展開する舞踊劇が、本当の意味では確立されていない」とし、「書割と共に平面的に進化してきたのが日本舞踊。立体的な群舞を入れるなどして奥行きを使うこともできるし、逆に映像を含め書割にこだわることもできる。まだまだ様々な可能性があると思う」と語るなど、幸四郎の日本舞踊への情熱は尽きない。「昔は花嫁修業や役者の心得であった日本舞踊も、今ではプラスアルファの特別な世界になりました。着物で踊るカッコよさや美しさを味わっていただき、浮世離れした別世界を楽しんでいただければと願っています」取材・文:高橋彩子
2019年06月14日鈴木勝秀が脚本・演出を手掛け、佐藤流司と仲万美がロミオとジュリエットを演じるRock Opera『R&J』が6月14日(金)に開幕する。それに先駆け前日に囲み取材と公開ゲネプロが行われ、取材には佐藤、仲、ロレンス神父役の陣内孝則、そして鈴木が出席した。【チケット情報はこちら】本作は、ウィリアム・シェイクスピアの恋愛悲劇『ロミオとジュリエット』をモチーフに、鈴木による大胆なアレンジと、大嶋吾郎による音楽で生み出されたロックオペラ。囲み取材で佐藤は本作について「『ロミオとジュリエット』で今までに観たことがないくらい破壊的な舞台になっています。『ロミジュリ』だけど『ロミジュリ』じゃない」と表現。音楽については「心臓に悪い楽曲と言いますか(笑)、Rock Operaというタイトルにふさわしい楽曲が揃っていて、普段ミュージカルや舞台を観る方は聴いたこともないような曲もあるんじゃないかと思います。僕自身も舞台ではしたことのない歌い方をしているので、ぜひ聴いていただきたいです」と熱く語った。マドンナのツアーなどにも参加するなど世界的に活躍するダンサーで、しかし舞台で芝居するのはこれが初となる仲は「感じたことないことばかりです。舞台上で踊ることはたくさんありましたが、喋るとか歌うというのは初めて。本番前は不安になるかなと思ったけど、快感と興奮しかないです!」と笑顔。そんな仲について佐藤は「初舞台とは思えないクオリティ。高めてくれる存在です」と話し、劇中で披露されるダンスについては「別次元」と明かした。鈴木はそんなふたりの印象を「佐藤流司のような強いハートを持っている若者と出会えて僕は本当に嬉しかった。それだけで感動してしまう。万美ちゃんはその強いハートに激しく共鳴することができる人。そのふたりがロミオとジュリエットとして最後に立っている姿を見ると、劇場全体が震えるような気がします。そういったものはなかなか観られないと思います」と絶賛。さらに陣内はロレンス神父役について「原作では作品の良心のような役だと思うのですが、今回はエキセントリックです。この役で自分の新たな一面が、スズカツ(鈴木)さんの演出によって引き出されたような気がします」と明かした。近未来を舞台に、「一目惚れって信じる?」という言葉で動き出す物語。鳴り響く音の中、がなり、叫びながら、直感だけを頼りに突き進むロミオとジュリエットが行き着くのはどこなのか。ぜひ劇場で確認してほしい。公演は6月23日(日)まで東京・日本青年館ホールにて上演後、7月4日(木)から7日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。取材・文:中川實穗
2019年06月14日10月30日(水)から11月4日(月・振休)まで、東京、大阪の2都市で開催される『BBC Proms JAPAN 2019』。11月1日(金)に東京・Bunkamura オーチャードホールで行われる公演の詳細が発表された。出演は、現代のカリスマ・スーパーギタリスト、リー・リトナー。映画「卒業」などでアカデミー賞受賞やコンテンポラリー・ジャズのパイオニアとして活躍し続ける名コンポーザー&アレンジャー&ピアニスト、デイヴ・グルーシン。ブラジリアン・ミュージックの現在進行形を常にリードするコンポーザー&シンガー、イヴァン・リンス。この3人をはじめとする一夜限りのドリームバンド。そしてニューヨークを拠点に世界中で活躍する日本人ジャズ作曲家の挾間美帆によるバンド、m_unitの2組。リー・リトナー、デイヴ・グルーシン、イヴァン・リンスの3人をはじめとするドリームバンドには、日本でおなじみの大物の特別出演が決定している(後日発表)。コンサートフィナーレは、2組のミュージシャンによる共演も予定されている。チケットは発売中。■Lee Ritener & Dave Grusin Dream Band featuring Ivan Lins― BBC Proms JAPAN 2019 Prom3 (プロム3)“JAZZ from America(ジャズ・フロム・アメリカ)” ―日時:11月1日(金)開場18:00 開演18:30会場:Bunkamura オーチャードホール(東京都)出演:<前半 18:30~(予定)>挾間美帆 “m_unit”挾間美帆(ジャズ/作・編曲、指揮)土井徳浩(アルトサクソフォン)、庵原良司(テナーサクソフォン)竹村直哉(バリトンサクソフォン)、ジョナサン・パウエル(トランペット)林育宏(フレンチホルン)、金子飛鳥(ヴァイオリン)、沖増菜摘(ヴァイオリン)吉田篤貴(ヴィオラ)、島津由美(チェロ)、香取良彦(ヴィブラフォン)佐藤浩一(ピアノ)、井上陽介(ベース)、ジェアード・ショニグ(ドラムス)<後半 19:50~(予定)>Lee Ritener & Dave Grusin Dream Band featuring Ivan Linsリー・リトナー(ジャズ/ギター)デイヴ・グルーシン(ジャズ/作・編曲、ピアノ)イヴァン・リンス(ヴォーカル)エイブラハム・ラボリエル(ベース)、ウェス・リトナー(ドラムス)+特別ゲスト(後日発表)ご注意:※公演内容は都合により予告なく変更となる場合がございます。※未就学児の入場はご遠慮ください。
2019年06月14日大海赫の同名絵本を原作にした舞台『ビビを見た!』が7月4日(木)に開幕する。上演台本・演出を手掛ける松井周に話を聞いた。【チケット情報はこちら】“伝説の絵本”とも言われる『ビビを見た!』は、生まれたときから目が見えない主人公ホタル(岡山天音)が突然7時間だけ目が見えるようになり、逆に目が見えていた人たちは見えなくなることから物語は動き出す。町には正体不明の敵があらわれ、人々がパニックに。逃げるために乗った電車の中、ホタルは美しい緑色の少女・ビビ(石橋静河)と出会う――。松井はこの物語について「ホタルは最悪の日に目が見えるようになったなという感じなのですが、だからこそなのか、自分にとって本当に大事なことを見つけようとする。そこで出会うビビは超越的な存在で、現実が狂気に満ちるなかの宗教的な希望の光にも見えるし、もしかしたら恐怖をもたらすものにも見える。“自然”にダイレクトに繋がっている、ものすごい話だと思っています」と明かす。そんな物語を体現する主演・岡山の印象を聞いてみると「ホタルは“初めて”世界を見るのですが、岡山くんはその目線を身体全体で表現できると思いました」。ビビ役の石橋は「ビビは希望や光みたいなものも纏う人。石橋さんはコンテンポラリーダンスを踊られるので、ビビの人間離れした存在感をは身体の動きでも表現してもらおうと思っています」なぜ今、この作品なのか。その理由のひとつは「ある種の全体主義というか、パニック状態になってみんなが同じ方向に流れていってしまっていたり、タガが外れて歯止めがきかなくなってしまっている状況を取り上げたかった」と松井。「僕は今、“一寸先は闇”という言葉にリアリティがあると思っているんです。これまで考えられなかったようなことが普通に起きる。僕らはその緊張感の中で生きている。これは、僕が演劇のいいところだと思うことですが、自分の中の妄想や恐怖がパンパンになったとき、それを舞台上の人がやっているのを観ることが、ひとつの治癒にもなるというか。膨れ上がったものの空気を抜くような作用があるし、自分ならどうするかを考えるきっかけにもなると思うので、そういう状況をつくってみたいと思いました」「この作品は“見える”“見えない”がすごく重要。お客さんにもその体験をしてもらいたいなと思っています」と、本作ならではの体験ができそうな作品。「トラウマ絵本と言われて怖い感じがするかもしれませんが、作品には恐怖だけではなくユーモアもたくさん入っているので、そこも舞台に乗せたいです」という舞台『ビビを見た!』は、7月4日(木)から15日(月・祝)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>にて上演。チケット発売中。取材・文:中川實穗
2019年06月14日6月、R・シュトラウス《サロメ》を高いレベルで上演して好評のうちに2018/19シーズンを終えた東京二期会だが、早くも2シーズン先、2020/21シーズンの主催公演ラインアップが決まっており、5月末に発表会見が開かれた。【チケット情報はこちら】まず2020年9月、シーズン開幕を飾るのは、この年が生誕250年のメモリアル・イヤーであるベートーヴェンの唯一のオペラ《フィデリオ》(新国立劇場オペラパレス)。二期会初登場となるダン・エッティンガーの指揮、これが3度目の登場の深作健太の演出。2020年11月の日生劇場でのレハールのオペレッタ《メリー・ウィドー》はフレッシュな顔ぶれで。指揮は、昨年の第18回東京国際音楽コンクールで女性初の優勝者となった期待の若手・沖澤のどか。演出の眞鍋卓嗣は劇団俳優座の所属。自身のバンドでメジャー・デビューの経験もあるというミュージシャン出身で、オペラ演出では、オペラシアターこんにゃく座の《オペラ・クラブ・マクベス》(林光)や《遠野物語》(吉川和夫、萩京子、寺嶋陸也共作)などを手がけている。歌詞も台詞もすべて日本語での上演。年が明けて2021年2月には、フランスのラン歌劇場との提携によるワーグナー《タンホイザー》。指揮はライン・ドイツ・オペラ音楽総監督のアクセル・コーバー。バイロイト音楽祭にも5年連続で出演するドイツ本流の指揮者で、これが日本デビュー。演出は、新国立劇場の「トーキョー・リング」で日本のファンにもおなじみのキース・ウォーナー。本人も来日して直接稽古をつける。2021年5月には、バロック・オペラ・シリーズとして定着した『二期会ニューウェーヴ・オペラ劇場』でヘンデルのオペラを取り上げる。演目は調整中だが、指揮は2015年の『ジュリオ・チェーザレ』、2018年の『アルチーナ』(ともにヘンデル)に続き鈴木秀美。管弦楽も引き続き特別編成のピリオド楽器オーケストラ「ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ」。そして2021年7月には、ヴェルディ最後のオペラ《ファルスタッフ》がシーズンの掉尾を飾る。二期会では2001年以来の上演演目。ベルトラン・ド・ビリー指揮、ロラン・ペリー演出。テアトロ・レアル(マドリード)、ベルギー王立モネ劇場、フランス国立ボルドー歌劇場との共同制作公演で、すでにマドリードでは今年4月にプレミエ公演を終えており(ダニエル・ルスティオーニ指揮)、ブリュッセル、ボルドー初演を経て、最後を飾る東京での初演には演出家も来日予定。以上5演目はすべて新制作。出演歌手については後日発表予定。なお会見では、東京二期会の新たなロゴマークも発表された。漢数字の「二」をモティーフに、歌う口の形のようにも、劇場の舞台のようにも見えるシンプルで多義的なデザインは、なんと所属会員から公募したものというから驚き!ホームページなど、すでにこのロゴに切り替わっている。取材・文:宮本明
2019年06月14日松本白鸚が1969年の日本初演から主演し続けるミュージカル『ラ・マンチャの男』が今年9月から10月にかけて上演される。6月13日、都内にて製作発表会見が行われ、50周年の記念すべき公演にむけての意気込みを白鸚ら出演者が語った。【チケット情報はこちら】セルバンテスによる小説『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』と、宗教裁判で捕えられた作者セルバンテス自身の姿、現実と虚構から“人間のあるべき姿”を力強く描きだすミュージカル。1965年にブロードウェイで初演され、翌1966年にはトニー賞を受賞した名作だ。日本では1969年に当時26歳だった市川染五郎(現・松本白鸚)が主演、以降も白鸚がライフワークとして上演し続けて、これまでの総上演回数は1265回にのぼる。50年という節目を迎えるにあたって白鸚は「初演から50年の『ラ・マンチャの男』にまた灯がともる。自分にとっては奇跡で、胸がいっぱい」と心境を語った。長く続いている作品だが、「今年は真新しい『ラ・マンチャの男』になります」と白鸚。その理由を昨年、親子三代で「高麗屋三代襲名」を行い、九代目松本幸四郎から二代目白鸚になったことにかけ、「何しろ、主演俳優の名前が変わりましたので」と茶目っ気たっぷりにアピール。同時に「昨年は松竹で高麗屋三代襲名興行をやりましたが、『ラ・マンチャの男』は東宝での襲名披露興行だと思っている」とも。『ラ・マンチャの男』と白鸚の偉業は、国内だけに留まらない。1970年にはブロードウェイから招待を受け、名門マーチンベック劇場にて海外の俳優の中で主演し、全編英語のセリフで60ステージをこなした。会見では「亡き中村勘三郎君がNY公演を行ったとき、「兄さん、あなたはこんなところで何十ステージも主演したのか。あなたは歌舞伎界の野茂だ!」と電話をかけてきた」といったエピソードなども披露されたが、「ですが、それらは“思い出”。私はこの先しか見ない。振り返らず、前を見て歩きたい」と、あくまでも前向きだ。また、これだけ長く続いた理由を問われると「平和だったからだと思う。先日、天皇陛下がご退位なさいましたが、平成の30年間が平和だったから『ラ・マンチャの男』が続けてこられたんだと思う」と、平和への感謝を語り、「この作品はずっと続いてほしい。ドン・キホーテの精神だけはいつの時代にも生き続けてほしい」とこれからも上演が続くことへの期待をしみじみと話してもいた。共演は瀬奈じゅん、駒田一、松原凜子、宮川浩、上條恒彦ら。公演は10月4日(金)から27日(日)まで、東京・帝国劇場にて。9月には大阪、宮城、愛知でも上演される。
2019年06月14日「ヨーロッパ企画」第39回公演の全国ツアーが8月よりスタートする。昨年20周年を迎えた人気劇団が、21年目を踏み出すにあたって作り出すのは、『ギョエー!旧校舎の77不思議』と題するオカルトコメディ。作・演出の上田誠と、出演者の中から6名の劇団メンバーが集まって、作品について語った。【チケット情報はこちら】七不思議ならぬ“77不思議”は、実は上田がずっと温めてきた題材。それをいよいよ実現させるのには、「20周年を迎えた前回の公演が集大成的な感じがあったので、今回は、ここからまた面白くなっていきそうだと予感させるようなものをやりたかった」からだと上田は言う。「ギョエー!」という叫び声まで付いたパンチのあるタイトルは、出演する劇団メンバー8名全員の賛同を得た。「みんなも勢いのあるものをやりたいんだなと感じた」そうだ。目指すのは、「ホラー映画やお化け屋敷が怖がらせる装置で出来上がっているのと同じく、77個の不思議が出てくる装置がある舞台」。さらに、「ホラーでありつつ、コメディや学園ものとしての物語性もプラスしたものにしたいなと思っているんです」と言う。怖がらせる側になるのか驚く側になるのか、配役はまだ決まっていないが、上田の構想を聞いて劇団メンバーもそれぞれに声を上げる。「オカルト、ホラーと付いてますが、観てよかったと思ってもらえるものにしたい。あと、不思議を77個も観るという点も、飽きないようにやらなきゃなと思いますね」と語るのは石田剛太。上田の案から「そのゴーストバスターの役をやりたい」と名乗り出たのは酒井善史。発明が特技の酒井のアイデアがまた活かされるかもしれない。角田貴志は「普段俺はビビらないよという空気を全面に出している中川(晴樹)さんのような人を驚かせたい」と早くも乗り気。その驚かし合いのバトルに興味を持ったのは諏訪雅。「驚かせるときのみならず、驚くリアクションを面白くするとか、役者同士のぶつかり合いとして負けたくないですね(笑)」。また角田に名指しされた中川は、「中川さんが吊るされて逆さまに落ちてくるとか」という案が石田から出されたり、「何か変なことをやらされそうで怖い(笑)」とビビっている様がすでにおかしい。そして、「自分自身がすぐ“うわーっ!”って驚くほうなので、劇場がそういう感じになればうれしいです」と言うのは本多力。この日の本多が、宣伝用イラストを提供する楳図かずお風のボーダーTシャツを着ていたのもまさしく「ギョエー!」であるが、ヨーロッパ企画の手にかかれば、諏訪の言う「悲鳴と笑い声が渦巻く」特別な空間が生まれることは間違いない。チケットぴあでは6月15日(土)より先行抽選の受付を実施。取材・文:大内弓子
2019年06月14日昨年7月に亡くなった劇団四季の創立者で演出家・浅利慶太氏の追悼公演として、劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』(エルサレム・バージョン)の名古屋公演が6月12日(水)に開幕を迎えた。公演に先駆け11日には、公開舞台稽古が行われた。本作は1976年に初演となった、“浅利演出”を代表する作品の一つ。イエス・キリストが十字架にかけられるまでの最後の七日間を描いた物語。劇場のロビーには、過去の公演で指導する浅利氏の写真パネルが飾られていた。客席に入ると、土ぼこり舞うイスラエルの荒野を表現した、急傾斜の舞台が待ち構える。人々から「神の子」「救い主」と崇められたキリストの孤独、彼を深く愛するマグダラのマリア、そして仲間による裏切り…。それぞれの心の叫びを鮮烈なロックミュージックで綴る105分ノンストップの舞台は、まさに圧巻の一言。急傾斜の舞台を用いた迫力ある演出や、十字架にかけられるシーンの芸術性の高さにも必見だ。“浅利演出”が息づくエネルギーあふれる舞台を、ぜひ劇場で。■劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』エルサレム・バージョン 名古屋公演日時:7月7日(日) まで上演中会場:名古屋四季劇場 (愛知県)チケット料金:S1席-10800円/S2席-10800円/A1席-8640円/A2席-8640円/B席-6480円/C席-3240円※公演当日3歳以上はチケット必要(膝上観劇不可)。2歳以下は入場不可。
2019年06月13日秦建日子のベストセラー小説を舞台化。昨年の『アンフェアな月』に続いて『殺してもいい命』が、6月21日(金)東京・サンシャイン劇場で幕を開ける。そこで主人公の雪平夏見役を続投することになった、篠田麻里子に話を聞いた。【チケット情報はこちら】“無駄に美人”と揶揄される、捜査一課のスゴ腕刑事。演じる雪平について、篠田はこう捉える。「一見クールですけど、その根っこには母性的なものも持っている女性だと思います。あと何より正義感が強い。正義感だけで動いているというか。そして素直で、一途で、不器用な女性かなって。自分の弱い部分を隠すために、必死に事件に取り組んでいる。不安とかいろんなものを抱えているからこそ、捜査に没頭していき、結果として検挙率ナンバーワンの雪平が出来上がったのかなと思います」そんな彼女を支えているのが、娘の美央と相棒の安藤。「子どもの存在ってすごく大きいって言いますよね。やっぱり守るべきものがあると、人間って変わるんだろうなって。それは私も結婚したことで実感しましたし。安藤は前作に比べるとかなり頼もしくなって、雪平を引っ張ってくれるようなところもあります。安藤とともに雪平も成長していると思いますし、より良いパートナーになっているんじゃないかと思います」雪平の元夫・佐藤が死体で発見されたことから始まる本作。事件を追っていく面白さはもちろん、登場人物それぞれの人間ドラマもこのシリーズの大きな魅力だ。「前作は“母親”としての雪平を見せる部分が多かったですが、今作は刑事もそれぞれ人間であり、それぞれ人生を抱えているんだってことが大きなテーマとして描かれています。それぞれの背景を考えて観ると、観え方が一気に変わってきますし、そんなことを気づかせてくれるのも、この作品の面白さかなと思います」キャスト陣には今回から初参加のメンバーも多数。安藤を演じる松田凌もそのひとりだ。「松田くんはすっごく真面目ですね。こんなにも真面目な人がいるんだ!?ってビックリしましたし、ちょっとイジりたくなるくらい(笑)。山口(馬木也)さんとか先輩方がアドバイスをくださるんですが、それも素直に受けて、試して、自分のものにしていく。そんな松田くん以外にもだいぶ顔ぶれが変わったので、まだ見えていない部分もたくさんあると思うんです。それが本番までにどうなっていくのか、私自身すごく楽しみです」公演は6月21日(金)より東京・サンシャイン劇場にて開幕。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年06月13日朗読劇『いつもポケットにショパン』が6月11日より新国立劇場小劇場で始まった。1980~1981年に「別冊マーガレット」(集英社)で連載された、くらもちふさこによるコミックが原作で、ピアノの生演奏を交えながら、日替わりキャストによる朗読劇として上演する。【チケット情報はこちら】本作は、ピアニストを目指す主人公・須江麻子と、彼女の幼馴染である緒方季晋のすれ違いと交流を軸に、ふたりの両親の問題や交友関係などを複雑に絡ませながら、甘酸っぱい青春模様やふたりが成長していく様子を丁寧に描いている。連載から40年近く経った今でも強く人々の心に残り、2018年にNHK連続テレビ小説『半分、青い。』に劇中マンガとして登場して、反響を呼んだ。そんな本作が、今回、男女ふたりの朗読劇として蘇った。アニメ『けいおん!!』などのヒット作を手掛けてきた吉田玲子が脚本を担当し、ファンタジックな世界観を描くことが得意な映画監督・酒井麻衣が演出を担当。キャストは日替わりで、愛原実花×下野紘、北原里英×藤田富、三戸なつめ×小早川俊輔、工藤遥×北川尚弥、内田真礼×小南光司の計5組が演じる。本記事では、初日の愛原と下野による上演をレポート。舞台上には1台のピアノ、そのほかいくつかの箱が置かれ、左右の天井からは淡い色の布が垂れ下がる。透け感のある黄色いワンピースを着た愛原と、茶色のジャケットを着た下野が、大きなボールを投げ合い、子どものように戯れるというやや抽象的なシーンから始まる。そして、ふたりは本を手にし、麻子と季晋の物語を情感たっぷりに語っていく。それぞれの配役のほかに、麻子の母である須江愛子や、麻子の指導教官である松苗先生などの登場人物もふたりが朗読するのだが、その役幅の広さには驚かされた。本作の見どころのひとつは、ピアノが生で演奏されること。生演奏ならではの迫力ももちろん感じられたが、幾何学的なイメージ映像や照明の変化も相まって、より世界観が広がる演出となっていた。単なる朗読劇というカテゴリーを超えて、ぜひショパンの美しい旋律に酔いしれてほしい。公式パンフレットで、脚本の吉田は「5組10名の役者の方々の声と個性と解釈の違いもまた、作品に豊かな彩りを加えてくれるのではないでしょうか。愛も幸せも忘れていた思い出もポケットの隅っこに隠れているかもしれません。ぜひ、この朗読劇を通して、探してみてください」。演出の酒井は「世代を渡って語り継がれる名作を、今、この瞬間に皆様にお届けできる事を光栄に思います」とコメントしている。上演時間はおよそ1時間40分(休憩なし)。公演は6月16日(日)まで。チケット発売中。文・写真:五月女菜穂
2019年06月13日