更新日:2021/08/14
CoCo債とはどういう金融商品なのか? 安全性やリスクについてわかりやすく紹介!
- CoCo債の仕組み
- CoCo債の特徴や利回り
- CoCo債の安全性やリスク
- CoCo債の今後の見通し
内容をまとめると
- CoCo債とは、発行元の自己資本率の低下によって、元本が減ったり、株式に転換される社債
- 主に欧州の金融機関で販売されているが、日本では投資信託の「グローバルCoCo債ファンド」が購入できる
- 投資家がリスクを判断することができないため、その分、他の社債よりも利回りが良いのがメリット
- デメリットは、元本割れのリスクがある、必要資金が大きい、安全性が保証されていないなど
- CoCo債の今後の見通しは、ドイツ銀行がAT1債を償還しないというニュースもあるが、将来的にはCoCo債市場は拡大の見通し
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目次を使って気になるところから読みましょう!
CoCo債(偶発転換社債)とは
最初に、CoCo債についてなるべくわかりやすくご紹介していきます。
CoCo債のCoCoは、「Contingent Convertible Bonds」の頭文字の略称で、日本語では、「偶発転換社債」と呼ばれています。そして、CoCo債の読み方は「ココ債(ここさい」と読みます。
CoCo債、または偶発転換社債という名称からして、債券の1種と思われがちなのですが、厳密には、債券と株式の両方の要素を持った新しいタイプの債権で、主に、ヨーロッパの金融機関で販売されています。
この、債券と株式の両方の要素を持つという点が、cco債の主な特徴です。
次に、
- CoCo債の仕組み
- 日本で販売しているCoCo債
について、ご説明していきます。
CoCo債の仕組み
CoCo債の特徴は、債券と株式の両方の要素を持つことだとご紹介しましたが、具体的にどういうことなのかご説明します。
まず、CoCo債の日本語の名称の「偶発転換社債」からもわかるように、CoCo債は、偶発的に起こる条件によって、元本が減ったり、株式に変換される仕組みになっています。
そして、偶発的に起こる条件とは、CoCo債の発行元の金融機関の自己資本比率が一定の割合を下回った状態のことで、このことをきっかけ(トリガー)として、元本が減ったり、株式に転換されることから、この条件を「トリガー条項」といいます。
通常の転換社債は、例えば株価が上がったことなど、投資家の判断で株式に転換するかどうかを決められるのに対して、CoCo債(偶発転換社債)は、発行元の金融機関の自己資本率の低下によって株価が下がり、その結果株式に転換されてしまうことが、両者の大きな違いです。
日本で販売しているCoCo債
CoCo債は、主にヨーロッパの金融機関で販売されていると前述しましたが、日本でもCoCo債の投資信託を購入することは可能です。
例えば、日興アセットマネジメント株式会社による「グローバルCoCo債ファンド」というCoCo債のファンドがあり、日本では以下の証券会社で販売されています。
- 十六TT証券
- 東海東京証券
- 西日本シティTT証券
- ほくほくTT証券
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 楽天証券
- ワイエム証券
この「グローバルCoCo債ファンド」には、為替ヘッジのない「ヘッジなしコース」と為替ヘッジのある「円ヘッジコース」があります。
「ヘッジなしコース」は、為替の影響を受けやすいというリスクがありますが、その分、円安の際には為替差益が期待できます。一方、「円ヘッジコース」は、為替変動のリスクが抑えられています。
また、「グローバルCoCo債ファンド」は、原則として、毎月、収益の分配を目指すとされています。2020年4月~2020年8月の分配金(税引き前 1万口当たり)の実績は以下のとおりです。
- ヘッジなしコース:55円/月、660円(直近1年間)
- 円ヘッジコース:50円/月、600円(直近1年間)
ただし、注意点としては、分配金は預金の利息とは異なり、純資産から支払われるため、その分、基準価額は目減りしていきます。
また、「グローバルCoCo債ファンド」には以下のコストがかかります。
- 購入時手数料:基準価額の3.24%(税抜3%)以内
- 信託報酬:純総資産額に対し年率1.766%(税抜1.69%)
- その他・手数料:純総資産額に対し年率0.1%
「グローバルCoCo債ファンド」は他の債券と比較して高い利回りも期待できますが、分配金によって基準価額が減ることや、運用するためのコストなども十分理解した上で投資するようにしてください。
なお、CoCo債を投資対象とするETF(上場投資信託)は、日本では販売されていません。
CoCo債の特徴 利回りも解説
「CoCo債の仕組み」のところでご紹介したように、CoCo債は、発行元の金融機関の自己資本率が一定の割合を下回ることをトリガーとして、元本が減ったり、株式に変換されることから、金融機関にイニシアチブがあります。
通常の転換社債は、投資家の判断で株式に転換するかどうかを決められるため、この点が大きく異なっています。
また、CoCo債のトリガーのポイントとなる自己資本率ですが、国際的な銀行の自己資本率の基準としてバーゼル3という基準があります。
このバーゼル3では、自己資本の段階として、Tier1とTier2があり、それぞれ以下のように分類されています。
- Tier1:普通株式など、AT1債
- Tier2:劣後債(れつごさい)
CoCo債はTier1のなかのAT1債に含まれていますが、AT1債は永久債として分類され、償還日が設定されていません。
その代わりに償還可能日が設定されており、発行元は償還するかしないかを選択することができ、この点がCoCo債との違いです。
CoCo債と劣後債の違いとは
バーゼル3による自己資本の内容を前述しましたが、次に、劣後債(れつごさい)についてご説明します。
劣後債とは、その名称から想像できるように、元本と利息の弁済の優先度が低い債券のことです。
弁済義務の順位からすると、
- 借入金
- 普通社債
- 劣後債
- CoCo債
- 株式
の順に、弁済の優先度は低くなっています。
CoCo債よりも劣後債の方が弁済順位が高いことがわかりますね。
CoCo債が、発行元の金融機関の自己資本率の低下によって元本の削減や株式への転換によって弁済されますが、劣後債は、金融機関の破綻が発生した場合など、普通社債の弁済完了後に弁済されます。
CoCo債の利回りは?
CoCo債は、発行元の金融機関の自己資本率によって、元本が削減されたり、株式に転換されたりなどのリスクを伴います。
つまり、投資家サイドではリスクの判断ができないということなのです。
このことから、通常の転換社債よりも利回りは高めに設定されています。リスクが低ければ利回りも低く、逆にリスクが高ければ利回りも高くなるということです。
例えば、日本の10年国債は安全性は高いですが、利回りは0.05%と非常に低いですよね。
これに対して、CoCo債の利回りは約5.5%です。これは、金融商品全般のなかでも、高い水準を誇っています。
CoCo債は危険? 安全性やリスクは?
次に、CoCo債のリスクやデメリットについて、ご紹介していきます。
何度もご紹介している、CoCo債のトリガー、つまり金融機関の自己資本率の低下のリスクに関しては、実はそれほど心配する必要はないようです。
というのも、トリガーでは、自己資本率とされる中核的自己資本比率は5.125%とされていますが、実際には10〜14%くらいあり、金融機関においても十分な余裕をもっているからです。
しかしながら、CoCo債の歴史はまだ浅く、2010年頃にヨーロッパの金融機関から発生しました。
従って、リーマンショックのような全世界的な金融危機を経験しておらず、実際にこのような大規模な金融危機が起こった場合、どうなるのかという点もリスクのひとつといえるでしょう。
以下では、さらに具体的なリスクについて、それぞれご説明していきます。
元本割れリスクが高い
「CoCo債と劣後債の違いとは」のところでご説明したように、CoCo債は、債券といっても、株式の次にリスクが高い商品です。
投資家によってリスクの判断ができないことから、他の債権よりも利回りが高いことが魅力的ですが、一方でリスクも高いことがデメリットです。
金融機関の自己資本率の低下というトリガーが引き起こされた場合、元本を償却することで不足した資本に充てられます。つまり、元本割れのリスクがあるということなのです。
必要資金が大きい
もうひとつのリスクは、CoCo債に投資するにあたって必要な最低資金が高額であるということです。
CoCo債に限らず、現物の債券を購入する場合、約2,000万円程度必要といわれています。
2,000万円もの現金を用意できる人は、かなりの富裕層など非常に限られていると思われ、一般の個人投資家では、そう簡単に投資することはできないでしょう。
しかし、「日本で販売しているCoCo債」のところでご紹介した、「グローバルCoCo債ファンド」のような投資信託であれば、個人でも手頃な金額で購入することができます。
安定性や実績が保証されていない
3番目のリスクは、CoCo債は運用の歴史が浅いため、実績が不安定であるという点です。
CoCo債は、2010年頃にヨーロッパの金融機関から発行されました。発行されてから10年余りしかたっておらず、日本やアメリカでは発行されていないので、その存在を知っている人もまだそれほど多くありません。
また、2008年のリーマンショックのような全世界的な金融危機を経験しておらず、実際にこのような大規模な金融危機が起こった場合どうなるのか、だれにもわからないのが現状です。
このような将来的な不安定さも大きなリスクのひとつといえるでしょう。
CoCo債の今後の見通しは?
CoCo債をめぐる欧州の状況として、ドイツ銀行が4月30日に償還可能日を迎える、総額12億5,000万ドルのAT1債(CoCo債も含まれる)を償還しないことを決めました。
これは、新型コロナウイルス感染拡大による市場の混乱が原因といわれており、このドイツ銀行の決定によって欧州の他の銀行も影響を受ける可能性があります。
しかしながら、ここにきて、各国でのワクチン接種の拡大などにより、経済の正常化も期待できるようになりました。
また、コロナによる経済の落ち込みがある程度改善するまでは、主要国の中央銀行による金融緩和政策も継続されると思われます。
その結果、経済の回復までに時間はかかりますが、将来的には利回りの高いCoCo債の市場への資金の流入が期待されます。
また、現在の市場は銀行が中心ですが、今後は保険会社が参入することが予測され、それによって、CoCo債の市場は長期的には拡大すると考えられます。
まとめ:CoCo債は活用するべきか
CoCo債について、色々な観点からご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。少し難しい内容もあったかもしれませんね。
もう一度、大切なポイントをおさらいしておきましょう。
- CoCo債とは、発行元の金融機関の自己資本率の低下により、元本が減ったり、株式に変換される社債
- 主に、欧州の銀行が発行しており、その歴史はまだ10年程度
- 日本では、「グローバルCoCo債ファンド」が購入できる
- 投資家によってリスクの判断ができないため、元本割れなどのリスクもあるが、その分、利回りも高い
- 投資に必要な資金が大きい、歴史が浅いため安定性や実績がわかりづらいなどがデメリット
- CoCo債市場の今後の見通しは、ドイツ銀行によるAT1債の不償還などで短期的には混乱の可能性があるが、長期的には市場拡大が予測される
CoCo債は、まだ歴史も浅く、欧州以外の国では認知度も低い金融商品ではありますが、債券のなかでも高い利回りが見込める金融商品です。
日本では、「グローバルCoCo債ファンド」という投資信託の商品を購入することができますので、興味を持たれた方は、まずは、投資信託から始めてみてはいかがでしょうか。