更新日:2020/12/11
出産費用は高額療養費制度の対象になる?限度額適用認定証との併用がおすすめ!
- 医療費が高額になったときにいくらくらい請求されるんだろう
- 入院したときにかかる費用が不安
- 高額療養費制度とは何か
- どんな医療行為を受けたら高額療養費制度を使えるのか
- 限度額適用認定証を使うと医療費がどれくらい免除されるのか
- 出産は医療費控除制度が使える
内容をまとめると
- 高額療養費制度を利用すると決まった上限を超えた医療費がかかったときにお金が戻ってくる
- 妊娠中や出産のときに何事もなかった人は使えない
- 帝王切開や鉗子分娩など医療行為が行われた出産なら高額療養費制度は使える。ただし差額ベッド代や食事代などは除外される
- 限度額適用認定証を前もって準備しておくと病院の窓口で限度額を超えたときに立て替える必要がない
- 医療費の限度額は収入によって変わる。ただし世帯年収ではなく、個人の年収が基準になるので夫婦共働きでも合算される心配はない
- 高額医療費の申請は保険証の窓口で行い、申請すると1ヶ月程度で手元に返ってくる
- 限度額適用認定証は持っている保険証によって申請場所が違うので、保険証を交付している窓口に問い合わせよう
- 高額療養費制度は月をまたぐと損をしてしまう恐れがある
- お金に困ったときは無料のオンライン相談がおすすめ!
目次を使って気になるところから読みましょう!
出産後に費用が戻ってくる!高額療養費(高額医療費)制度とは?
日本の国民は基本的に公的保険制度を使っています。
医療を受けると医療費の全額分から割合に基づいて自己負担分を支払っています。
ただし自己負担する月の上限が決まっていて、高額療養費(高額医療費)制度を使うと上限を超えた分が払い戻しされます。
つまり月にどれだけ高額な医療費になっても上限を超えた分は自分で払う必要はありません。
疾病と判断されない妊娠・出産でも高額医療制度を使えることがあります。
医療が介入した場合は妊娠・出産でも届け出ればお金が戻ってきます。
妊娠高血圧症や切迫早産などのトラブルに見舞われず、自然分娩を予定していても出産するまで何が起こるか分かりません。
そのため妊娠中に高額療養費(高額医療費)制度を届けておくといざというときに困りません。
出産費用は高額療養費制度の対象になる場合とならない場合がある
出産費用は医療の介入の有無によって高額医療制度が使える人と使えない人にわかれます。
そこで出産の高額医療制度を
- 使えない出産
- 使える出産
を解説します。出産は疾病ではないので、基本的に自己負担です。
しかし妊娠中や出産時のトラブルには使うことができます。
何事もなく過ごせば自己負担ですが、今はトラブルがなくても出産するまで何が起こるか分かりませんので念頭に置いておくと役立ちます。
また高額医療制度は入院中の
- 食事代
- 差額ベッド代
- 病衣代
などは対象にはなりませんので注意しましょう。
高額療養費制度の対象とならない出産
複雑なように見えて高額医療制度が使えない基準はとても単純です。
妊娠中や出産時に何事もなく自然分娩で出産できた人は高額医療制度を使えません。
出産は病院や助産所で行いますが、自然分娩は医師でなくても赤ちゃんをとりあげることができます。
つまり医療行為が全く行われていないので対象外になってしまいます。
そのため自然分娩で出産した人は全額自己負担でまかなう必要があります。
自然分娩でお産ができることはとても素晴らしいことですが、出産費用に関しては高額医療制度が受けられないので金銭的には大変です。
しかし自然分娩で出産した場合でも助成金や出産手当金などの別の公的制度はありますので、それらを上手に活用しましょう。
高額療養費制度の対象となる出産(帝王切開、陣痛促進剤、吸引分娩など)
次に高額医療制度を使える出産を解説します。
高額医療制度を使える出産は
高額療養費制度の対象となる妊娠・出産時のトラブル | |
---|---|
妊娠中 | 重度の悪阻がある 児頭骨盤不均衡の検査 逆子や前置胎盤の検査 子宮頸管無力症 妊娠高血圧症候群 前期破水 切迫流産・切迫早産 流産・早産 |
出産時 | 帝王切開で出産 陣痛促進剤を使って陣痛を促した 吸引分娩・鉗子分娩で出産 会陰切開して止血処置や点滴を行った 死産してしまった |
です。どんな形であれ医療が介入して出産したときは高額療養費制度を使えます。
例えば妊娠中は何事もなく過ごせたけど出産のときになかなか陣痛が起こらなくて陣痛促進剤を使った場合、高額療養費制度の対象となります。
参考:無痛分娩で出産した場合、高額療養費制度の対象になる?
最近は無痛分娩で出産を考えている妊婦さんもいるでしょう。
無痛分娩をしたときは高額療養費制度を使えるのでしょうか。
自然分娩では赤ちゃんが骨盤や産道を頭で押し広げて生まれるため、かなりの痛みを伴います。
無痛分娩はその痛みを麻酔を使って緩和し、痛みを感じないようにして出産する方法です。
麻酔を使うので医療行為ですが、残念ながら日本では保険適応外となります。
そのため無痛分娩に関しては高額療養費制度も対象にはなりません。
ただしお産のときに吸引分娩や鉗子分娩を行うなどの処置が行われた人は使うことができます。
出産で高額療養費を適用させる際は限度額適用認定証を事前申請しよう!
高額療養費制度を使う際に大事なのが限度額適用認定証です。
ポイントは限度額適用認定証の
- メリット
- 提示した場合の自己負担額
- 共働き夫婦の場合の負担額
です。
高額療養費制度は後からお金が戻ってくるシステムなので病院の窓口で一度、費用を自分で立て替えます。
しかし限度額適用認定証があれば病院の窓口で限度額以上の請求をされる心配がありません。
ですので、入院する前に前もって準備することが重要になります。
限度額適用認定証とは?どんなメリットがある?
限度額適用認定証は入院するときに提出しておくことで月の支払いが法定自己負担限度額となります。
そのため妊娠中にトラブルが起こった人はもちろんですが、何もなく順調に経過している人もあらかじめ用意しておくといいでしょう。
限度額適用認定証をあらかじめ用意するメリットは
- 退院のときに窓口に支払う金額が決まっているので余分にお金を準備しなくていい
- 払い戻しの手続きをする手間がない
と言う点です。高額療養費制度だけだと窓口に一旦、お金を納める必要があります。
しかし限度額適用認定証があればその手続きの手間が省けるので事前に用意しておくことをおすすめします。
限度額適用認定証を提示した場合の窓口での自己負担限度額
限度額適用認定証を持っている人が入院したときに提示したら、窓口に払うお金をいくら用意すればすむのでしょうか。
区分 | 計算式 | 目安金額 |
---|---|---|
健保:標準報酬月額83万円以上 国保:総所得901万円超 | 252,600円+ (総医療費-842,000円)×1% | 約25万円 |
健保:標準報酬月額53万~79万円 国保:総所得600万~901万円 | 167,400円+ (総医療費-558,000円)×1% | 約17万円 |
健保:標準報酬月額28万~50万円 国保:総所得210万~600万円 | 80,100円+ (総医療費-267,000円)×1% | 約8万円 |
健保:標準報酬月額26万円以下 国保:総所得210万円以下 | 57,600円 | 57,600円 |
住民税の非課税者等 | 35,400円 | 35,400円 |
です。一般的な会社員に多いのは三段目の目安金額が約8万円のところです。
また年に4回以上、使うと減額の対象です。
夫も妻も会社勤めをしている場合の自己負担限度額はどうなる?
夫婦で共働きをしている人の場合は限度額適用認定証を使ったときの自己負担限度額がどういう扱いになるのでしょうか。
夫婦の収入が合算で計算されてしまうと限度額が高くなってしまうと心配している人もいるはずです。
でも実は共働き夫婦の場合、夫・妻はそれぞれでカウントされます。
例えば夫の年収が500万円、妻の年収が400万円とすると世帯年収は900万円です。
しかしそれぞれでカウントされますので出産のときは妻の年収から区分が決まります。
妻の年収が400万円なら自己負担限度額は約8万円で収まります。
【注意】限度額適用認定証は事前申請!入院期間中に申請しても間に合わない
妊娠中や出産のときのトラブルで医療行為が入ると限度額適用認定証があれば医療費が決まった金額以上に請求されません。
限度額適用認定証を取得する上で注意してほしいのが交付を申請する時期です。
限度額適用認定証は申請した月から使うことができますが、月末に申請してしまうと交付が翌月になってしまう恐れがあります。
例えば切迫早産で月の終わりに入院することになったとき、医療費がかかると気付いて慌てて申請を始めても届くのは翌月になるでしょう。
この場合は高額療養費制度を利用して後から申請します。
ただ窓口で一度、立て替えることになるので、できれば妊娠中に限度額適用認定証を前もって申請しておくと支払いが楽なのでおすすめです。
出産費用は高額療養費制度の適用でいくら戻る?シミュレーションで解説
出産に医療行為が行われると限度額を超えた分は高額療養費制度が利用できます。
では実際に出産の際の申請したときにどれくらい戻るのかを計算しましょう。
例えば
- 年収が400万円
- 出産した月に医療費は100万円
とすると計算式は
80,100円+ (総医療費-267,000円)×1%
を使います。健康保険証を使うと3割負担なので
100万円÷3割=30万円
です。つまり実際に支払う金額は30万円です。高額療養費制度の自己負担額が
80,100円+ (1,000,000-267,000円)×1%=87,430円
となります。自己負担額から3割負担で支払った金額を引くと
300,000円-87,430円=212,570円
です。つまり出産の際に医療行為があって医療費が高額だった人は限度額以上にかかった部分のほとんどが返ってくる計算です。
高額療養費の申請方法と限度額適用認定証を事前申請する場合の方法
出産のときに限度額適用認定証や高額療養費制度を使う準備をしておくと心強いですが、事前に申請するのはどうすればいいのでしょうか。
そこで
- 高額医療費の申請方法とお金が戻るタイミング
- 高額医療費支給申請書の記入の仕方
を紹介します。高額療養費を請求する上で大事なことなので理解してもしものときに役立ててください。
申請してどれくらいで手元に入るのかを知っておくと不安が減ります。
また書き方も紹介しますのでぜひ参考にしてください。
高額療養費はいつ戻ってくる?申請方法と振込までの予定期間
高額医療制度を利用する際はあらかじめ限度額適用認定証を所持している人は病院で上限を超えた分は支払わなくて大丈夫です。
申請する必要があるのは限度額適用認定証を持っていない人です。
申請は保険証の保険者名称に書いてある場所で行います。
例えば
- 国民健康保険なら市町村の役場
- 協会けんぽなら都道府県の協会
- 組合保険はそれぞれの組合
です。それぞれ問い合わせる窓口が異なるので注意してください。
申請をしてから発行されるまで約1ヶ月を要するのが一般的なので、届く前に医療行為が必要な事態に直面した人は後から高額医療制度を利用することになります。
この場合は先に病院へ支払うお金は本人や家族が準備することになりますので、できれば早めに限度額適用認定証を準備するといいでしょう。
高額療養費支給申請書の書き方
続いて高額医療費支給申請書の書き方を紹介します。
高額医療費支給請求書は所持している保険証によって多少変わりますが、そこまで難しくはありませんので順番に埋めていきましょう。
高額医療費支給請求書に記載する事柄は主に
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- 生年月日
- 保険証に記載されている記号・番号
- 振り込みを希望する銀行口座
です。保険証に記載されている記号・番号はそのまま写して書けば大丈夫です。
なお記入欄には受取代理人を書くところがありますが、これは申請する人が死亡したときに代わりに受けとる人の名前などを記入するので妊娠・出産では必要ないでしょう。
公務員の場合は?国保など、社会保険ごとの限度額適用認定証のもらい方
先述しましたが健康保険証の種類によって限度額適用認定証を申請する窓口が違います。
限度額適用認定証のもらい方を健康保険証の種類別に解説します。
国民健康保険
国民健康保険は自営業の人が主に所持しています。
窓口はお住まいの市区町村の役場にある国民健康保険の窓口に行けば申請ができます。
住居のある地域ですので窓口にも赴きやすいでしょう。
申請用紙の記入などに不安がある人は窓口で係の人に聞きながら記載すると間違いがなく、申請がスムーズです。
協会けんぽ
協会けんぽ各都道府県の支部で行います。
方法は郵送と直接窓口に赴く方法の2種類から選べます。
お住まいの地域から支部が遠い人は郵送で書類を送ってもらいましょう。
またインターネットからダウンロードすることもできます。
組合保険
会社員の人などが多く所持している組合保険は、会社によって使っているものが違います。
そのため自分が所持している保険証の名前を見て、どこの組合保険を使っているのかを調べましょう。
健康保険証に書いてある組合保険の名前をインターネットで検索するとアクセスができます。
窓口に行って手続きすることもできますが、住んでいる地域から遠い人はインターネットを活用して手続きを行うのがおすすめです。
参考:出産費用に高額療養費制度を適用させる場合、月またぎだと損?
高額医療費制度を利用する上で注意したほしいのが月またぎをすると請求額が増えてしまうことです。
実は高額療養費制度は1日から月終わりまでが一括です。
例えば20日から月終わりまで入院して月が変わる前に退院できた人は限度額の範囲内で支払いがすみます。
しかし25日から入院して翌月の5日まで入院すると月をまたいでいるため、入院した月と翌月の両方が請求されます。
単純にどちらも限度額いっぱいまで医療費がかかったとしたら約16万円の請求がきます。
つまり月をまたいで入院した人は一月で退院できた人の倍の金額が必要になります。
参考:出産費用に医療費控除制度は適用される?
出産費用は医療行為の有無に関わらず医療費控除制度を利用できます。
期限は5年以内と決まっていますが、すぐに申請すれば問題ないでしょう。
重要なのは申請できる範囲が決まっていて、それに準じて計算することです。
医療費控除制度で申請できる項目とできない項目は
利用できる | 利用できない | |
---|---|---|
項目 | 出産した人の入院費 赤ちゃんの入院費 分娩でかかったお金 公共機関を利用したときの交通費 緊急の際のタクシー代 妊婦健診の費用 産後1ヶ月検診 治療や指導してもらうための診察費用 不妊治療にかかったお金 | 妊娠を確定するための検査費用 車で通院したときのガソリン代 予防接種 差額ベッド代 里帰り出産するときの実家に帰省する交通費 入院に持ち込む物の費用 赤ちゃんのミルクやおむつ代 |
です。健診の費用や緊急時のタクシー代など、誰もが必要な事柄が認められているのがわかるでしょう。
一方で認められていないものもたくさんあるので、該当するものを入れないように注意して申請してください。
まとめ:出産費用は高額療養費制度と限度額適用認定証の併用がおすすめ
出産のときに少しでも医療行為を受けた人が使える制度について解説しました。
記事のポイントは
- 医療が介入した出産なら高額医療制度が利用できる
- 限度額適用認定証も一緒に使えば、決まった金額を用意すればいい
- 限度額適用認定証は発行までに1ヶ月ほどかかるので、早めに準備しよう
- 限度額適用認定証の申請方法は保険者名称を見て、適切な場所で行おう
- 出産方法に関わらず医療費控除は使える
でした。妊娠中や出産は思いの外、お金がかかります。
しかし公的な制度を使うとお金の不安が減るので上手に活用しましょう。
また限度額適用認定証は発行までに時間がかかるため、何もないからと安心せずに早めに用意しておきましょう。
他にもお金に関する記事を多数掲載していますのでぜひ参考にしてください。