50代を迎え、“おとな"には十分な年になった今だから思うこと、日々のことを、海辺の家に住む料理家・飛田和緒さんが「自分の言葉で伝えたい」と飾らない言葉で綴りました。著者にとっては10年ぶりのエッセイ集。読むほどに、年を重ねることが楽しく思えてきます。本書の一部をご紹介します【01:料理家という仕事をしていても】料理家という肩書ではあるが、料理をつくるのが根っから好きなのかと自問する。もし、いつも隣にわたし好みの味をつくってくれる人がいて、食べたいときにさっと料理が出来上がってくるとすれば、きっとわたしは台所に立たないのではないかと思うときがある。それが実際にはままならないから、自分でつくるしかないのだ。どちらかといえばつくるより、食べることが好き。おいしいものを食べたい一心。ただ食いしんぼなのだ。わたしの料理は18歳のときに親元を離れて自分の台所を持ったときから始まった。最初はテレビや雑誌で見かけたレシピをつくってみたり、バイトをしていた洋食屋さんのまかないや居酒屋のおいしかったメニューをまねしてみたり。お金もない学生だから、そんなにぜいたくなものを食べていたわけではないが、自分がおいしいと思ったものは、できる限りその味に近づくようつくってみたいと台所に立っていた。お店ではひと皿しか食べられないけれど、家で同じようにつくれば食べたいだけ食べられる、そんな食い意地が実験的な料理を生むこともあった。おいしいものを食べると台所仕事にも変化がある。わたしの母は歳で父のところへお嫁にきた。その当時はなんにも食べられない、なんにもつくれないただのやせっぽちだったと聞いている。父は食べる、飲むがとても好きな人だったので、母をあちこち付き合わせてせっせとおいしいものを食べさせたのだそう。いろんな味を食べた結果、母は少しずつ偏食がなくなり、料理への興味がわいてきて、わたしがもの心ついたときには、母は料理上手なお母さんになっていた。お客さんの多い家だったこともあり、母は家族以外の人にもごはんをつくり、酒の肴をこしらえるという毎日。相当鍛えられたんだろう。今ではわたしと争うようにして新しい料理にも果敢に挑戦している。わが夫もふたり暮らしが長かったこともあり、外食にはいろいろと連れていってくれた。外国へ旅しても中心は食べることばかり。若い頃はきっと情熱的な思いもあったんだろうが、もう知り合って四半世紀を過ぎようとしている今は食べることだけでつながっているのではとさえ思う。わが家はちょっと出遅れた子育ての真っ最中。そんな中でもなんとかやりくりしておいしいものを食べに出かける機会をつくるようにしているが、おかしいことに夫婦の外食事情が変わってきた。夫はせっかくだからおいしいお酒をゆっくり楽しみたい。わたしは食べることに真剣になりたい。お酒なら家でゆっくり飲んだほうがいいと思うように。子連れだから、外食の時間も限られるので、母親はそんな考えになるのかもしれない。そんなこともあって、最近わたしはひとりで大好きな味を食べに出かけるように。といっても3、4か月に一度くらいの割合。そこで食べる時間のために働いているといってもいいくらいに、熱をあげている味がいくつかある。軽井沢で食べるモロッコ料理(残念ながらこのお店はクローズした)、熊本の桜肉、長野で食べる江戸前寿司、山奥で食べるきのこづくしの料理。まったくジャンルは違うが、それぞれわたしの舌にどんぴしゃり。わざわざその料理を食べるだけのために飛行機に乗り、新幹線に乗って移動する。うまいものを食べたい気持ちになることも、たいへんなエネルギーがわいてくるものなのだ。そして、それらの料理は、まねしようとも思わない。あれこれと考えずに一心不乱に食べるのみ。そんな恋しい味があるって幸せだなとしみじみ思う。さて、おいしいものを食べて帰ってきたわたしの料理に変化が見られるかどうかは?......そんなわがままを許してくれる家族に感謝しなければならない。【本書のもくじ】storyI:仕事の話storyII:食いしんぼの話storyIII:家の話storyIV:おしゃれの話storyV:ものの話storyVI:日々の話著者プロフィール飛田和緒(ひだかずを)東京都生まれ。高校3年間を長野で過ごし、山の幸や保存食のおいしさに開眼する。現在は、神奈川県の海辺の町に夫と高校生の娘と3人で暮らす。近所の直売所の野菜や漁師の店の魚などで、シンプルでおいしい食事をつくるのが日課。気負わずつくれる、素材の旨味を生かしたレシピが人気の料理家。Instagram@hida_kazuo書誌情報タイトル:『おとなになってはみたけれど』発売:2021年3月2日定価:1650円(本体1500円+税)判型:四六判発売元:株式会社扶桑社ISBN:978-4-594-08738-8【購入リンク】Amazonへ楽天ブックスへ本書の内容、取材などについては下記へお問い合わせください株式会社扶桑社宣伝部PR担当fusoshapr@fusosha.co.jp企業プレスリリース詳細へ TIMESトップへ
2021年03月20日書籍『絵本のようにめくる 世界遺産の物語 色彩の魔術編』が、2021年3月26日(金)より全国発売。“色で巡る”「世界の絶景」ビジュアルブック「絵本のようにめくる」シリーズ最新作は、世界遺産の「色彩」にフォーカス。1,100件以上登録のある世界遺産の中から、鮮やかなカラーのスポットに焦点を当て66件を厳選した。各スポットは、桃・赤・紫・青・緑・黄・橙・金・茶・黒・白と、色をキーワードに11のグループに分別。赤のグループには、日本を代表する「富士山」やアメリカの「キラウエア山」が、 緑のグループには、日本の「屋久島」やイタリアの「オルチア渓谷」などがラインナップし、世界各国の名所とともに、日本の世界遺産も紹介される。色分けしてみると、特徴的な建造物の鮮やかなカラーや自然や動植物が放つ色のマジックが強調され、より世界遺産の美しさが際立って映る。贅沢“見開き”絶景写真&学べる“ウンチク”も世界遺産の写真は、見開きページでたっぷりとお届け。さらに、各スポットににまつわる“ウンチク”もシンプルなテキストでまとめて収録した。ページをめくるたびに新たな発見があり、世界旅行気分で読書時間が楽しめそうだ。【詳細】『絵本のようにめくる 世界遺産の物語 色彩の魔術編』1,540円(税込)発売日:2021年3月26日(金)仕様:A5変判、本体144頁出版社: 株式会社 昭文社取扱店舗:全国の主要書店
2021年03月19日【おとな向け映画ガイド】米アカデミー賞有力候補『ミナリ』など、ぴあ水先案内人おすすめの4本をご紹介ぴあ編集部 坂口英明21/3/14(日)佐々木俊尚さん(フリージャーナリスト)「……おばあちゃん役の人の演技が絶品。ちょっと毒舌で過激で、でも憎めなくて、好人物っていうキャラクターって昔の日本映画にはよく登場してた。そういう懐かしさも含めて、日本人的な情緒でも共感できる物語。……」渡辺祥子さん(映画評論家)「……最悪の事態になってもきっと乗り越えられる、と思える温かみがあって胸をなでおろす。」紀平重成さん(コラムニスト/元毎日新聞記者)「……複数のルーツを持つカマラ・ハリスさんがアメリカ副大統領になったことも、語られるべき移民の歴史が無視できないほどに大きな潮流となっている」植草信和さん(編集者/元キネマ旬報編集長)「……主題歌が我が国のテレビドラマの名作『北の国から』に類似していることもあって、親子の情愛に感動させられる。」会話のテンポが抜群に楽しい!『まともじゃないのは君も一緒』数学一筋の予備校教師(成田凌)に、恋愛経験ゼロの教え子(清原果耶)が、いかにして女の子と付き合うか、をコーチする、そんなラブコメですが、傑作です。ちょっと小生意気な女子高生、とんちんかんでどこかまともじゃない独身男、ふたりの会話のやりとりは、おしゃれなハリウッド・スクリューボール・コメディのようです。いや、おおげさじゃなく。【水先案内人のコメントから】笠井信輔さん(フリーアナウンサー)「……またも清原果耶にやられてしまった。この人はどうしてこうも芝居がうまいのだろう。……」ダメサッカーチームを救ったのは?『クイーンズ・オブ・フィールド』フランスで90年の歴史を誇るサッカーのクラブチーム。試合中にまさかの大乱闘騒ぎを起こし、メンバー全員が出場停止になってしまいます。控えはなし。このまま行くとチーム存続の危機です。そこでたちあがったのは、選手の妻たち。ある奇策を思いつきますが……。肩のこらない、遊び心満載のコメディ作品です。【水先案内人のコメントから】夏目深雪さん(著述・編集業)「……女たちの疾走と反撃が加速しこのうえない爽快感を生む。……笑って感動できる大人のための作品。」ライブビューイング『メリー・ウィドウ』NYメトロポリタン・オペラの舞台を収録し、映画館で上映するMETライブビューイング。コロナ禍で公演がなく、新作はありませんが、過去の名作を集めた「プレミアム・コレクション2021」の連続上映が始まっています。2月の『椿姫』に続いて、19日からはレハールの『メリー・ウィドウ』を公開。古き良きパリを舞台にリッチで陽気な未亡人をめぐるロマンチック・コメディ。当代随一といわれるソプラノ、ルネ・フレミングが主演の舞台です。【水先案内人のコメントから】朝岡聡さん(コンサートソムリエ/フリーアナウンサー)「……歌も芝居も衣装もセットもMETならではの贅沢さいっぱいで届けられる。これぞ、究極のオペレッタの楽しみ!」
2021年03月14日スマホの存在がおとなたちを翻弄するさまを描いた伊アカデミー賞受賞作を、東山紀之主演でリメイクした日本版『おとなの事情 スマホをのぞいたら』のブルーレイ&DVDセットのリリースが決定した。スマホに届くメールと電話の内容をパートナーや友人たちとさらし合う、そんなゲームを始めてしまった大人たちは全員誰にも言えない秘密を抱えている。彼らは必死でウソをつき、言い訳を繰り返し、スマホが鳴らないように祈る緊張の夜を過ごすことに。そして、ついに決定的なメールが舞い降りる!本作は、衝撃と毒のある笑いが観客を魅了し、世界18か国でリメイクされたコメディの日本版。東山紀之が10年ぶりに映画主演。ストイックな役作りに定評のある彼が物語を牽引する“最大の秘密”を抱えた冴えない独身男性を熱演。そして、鈴木保奈美と常盤貴子が奇跡の初共演を果たし、益岡徹、田口浩正、木南晴夏、淵上泰史も加わり、火花を散らす。世界各国で人種・宗教を超えて支持された傑作コメディに日本独自のアイデアを加え、“誰もが他人事ではいられない”脚本に仕上げたのは、数々の名作ドラマを手掛けてきた岡田惠和。ブルーレイ&DVDにはキャストのインタビューや、撮影現場の裏側に迫るメイキングなど、約85分の貴重な映像特典を収録。リリース決定に合わせて、東山紀之、鈴木保奈美、常盤貴子のコメント動画も公開されている。『おとなの事情 スマホをのぞいたら』は4月30日(金)より デジタル配信、ブルーレイ&DVDリリース。(text:cinemacafe.net)■関連作品:おとなの事情 スマホをのぞいたら 2021年1月8日より全国にて公開©︎ 2020 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
2021年03月07日【おとな向け映画ガイド】残された人生あと92分!『ワン・モア・ライフ!』と、新感覚のサスペンス・ホラー『ビバリウム』の2本をオススメぴあ編集部 坂口英明21/3/7(日)イラストレーション:高松啓二今週末(3/12・13)に公開される映画は11本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『ブレイブ ‐群青戦記‐』『映画しまじろう「しまじろうと そらとぶふね」』の2本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『ワン・モア・ライフ!』交通事故に遭い、突然天国に召された中年男のパオロが、天国の入口で、「こんなに寿命が短いはずがない。野菜のスムージーだって飲んでいたのに!」と猛反発します。「野菜のスムージー?」、受付係の天使(でしょうか? 老人ですが)が、待てよ、と反応。調べてみると、スムージーのことは寿命の計算に入っていませんでした。申し訳ない、前代未聞のこちらのミスだ、とパオロはスムージーの分だけ、地上に戻されることになります。その時間は、92分!というわけで、人生があと1時間半、映画1本分にもみたないとしたら、自分なら何をする?てなことを考えながら、楽しんでいただきたいイタリアのコメディです。映画に天国の入口はよく登場します。『素晴らしき哉、人生!』や『天国から来たチャンピオン』といった名作が頭に浮かびます。死者を迎え入れてくれるのは大抵、人の良さそうな男性の天使。本作でも、メガネをかけ、白い顎髭を蓄えた天使がパオロに与えられた92分の地上生活を見張ることになります。演じているのはレナート・カルペンティエーリ。イタリアの名優です。『取るに足らない幸せの瞬間』と『取るに足らない不幸の瞬間』というイタリアでベストセラーになった短編集が原作です。人生において取るに足らないことだけれど「それ、あるある。私もある。」と共感するような瞬間をスケッチのように書き連ねたものだそうです。それをダニエーレ・ルケッティ監督は、著者のフランチェスコ・ピッコロとともに脚本化しました。主役のパオロ役に抜擢されたのは、俳優のみならず、脚本家、監督、テレビ司会者など多彩な活躍をするピエールフランチェスコ・ディリベルト。自分勝手で楽天的に生きてきたパオロが「死んでみて」初めて気づいた家族の大切さ、でも与えられた時間はごくわずか! 彼に何ができるのか?撮影の舞台になった、イタリア・シチリア島のパレルモという町がなんとも素敵です。1990年代までは犯罪組織コーザ・ノストラが牛耳る町だったそうです。『ゴッドファーザー』にもでてきましたね。今では人気の観光地です。こういう人生讃歌の映画に、ぴったりです。首都圏は、3/12(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、3/12(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、3/13(土)から名演小劇場で公開。関西は、3/12(金)からテアトル梅田他で公開。『ビバリウム』タイトルバックに、エサをせがむ鳥のひなが映し出されます。ところが、このひな、ちょっと変。実はカッコウのひなでして。カッコウは他の鳥の巣にそっと卵を産み落として、子育てを代行させるのです。托卵、という習性だそうです。あこがれの新居を求め、開発中の新興住宅地を訪れたカップル。案内してくれたのは、挙動がなんとなくおかしい不動産屋のセールスマン。しかし、内見の途中で彼が姿を消してしまいます。やむなく、カップルは車で分譲地を去ろうとするのですが、どうしてもここから外に出られない。どこまでも同じ住宅が並び、気づけば、内見した家の前にまた戻ってしまいます。いつの間にか、家には食料が届けられ、翌朝は、乳児の入った段ボールが玄関の前に置かれています。そこには「育てれば解放される」という謎のメッセージが! つまりこれは、托卵!?カップルには事情が飲み込めません。どうしたら良いのか。これは誰の陰謀なのか。なんとかここを抜け出そうと、ふたりは悪戦苦闘します。そして次第に精神が崩壊していくのです。それでも食料はきちんと届けられ、赤ちゃんは、驚くほど短い間に成長していき、「ママ」と呼び出し始めます。ベルギーとデンマーク、アイルランドの合作で、監督はアイルランド出身のロルカン・フィネガン。使われている言語は英語です。カンヌ国際映画祭の批評家週間でプレミア上映され、新しいクリエイター発掘を奨励するギャン・ファンデーション賞を受賞しています。主人公のカップルは、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグと『グリーンルーム』のイモージェン・プーツ。舞台は謎、ヨーロッパのどこかみたい。住宅地はライトグリーンを基調にして、おしゃれです。絶叫ホラーではなく、恐怖はさざなみのようにやってきます。バックにそら恐ろしい世界がひかえているような、不気味なサスペンス・ホラー。上品な作りですが、それだけに途中の、あっと驚く仕掛けは効果的です。
2021年03月07日6歳~小学生低学年は、どんどん長いお話を聞けるようになり、絵本から読み物へシフトしていく時期。子どもの想像力と好奇心を大きく広げ、感性を刺激してくれるおすすめの絵本を、さまざまなシーンやジャンル別にご紹介します。お気に入りの1冊をぜひ見つけてみて。– CONTENTS –1. 知的好奇心を刺激する おすすめ絵本2. 寝る前に読みたいおすすめの読み聞かせ絵本3. 子どもから大人まで楽しめる!アートな絵本4. 一生の宝物にしたいクリスマスの絵本5. 親子で読みたい ハロウィン絵本 知的好奇心を刺激する おすすめ絵本好奇心旺盛な子どもには、学びにつながる絵本をチョイス。動物や世界の風景など知識になる図鑑や、正しい生活習慣が身につく本、仕事への興味を育む本など、親目線でも読ませたくなるラインナップをご紹介。『アニマル アトラス 動きだす世界の動物』アレクサンダー・ヴィダル(青幻舎刊)愛らしいイラストの動物図鑑としても楽しみながら、アプリをダウンロードして本にかざすと、本物の野生動物の迫力映像が味わえる。可愛い動物たちは500種類以上登場、ナショナル・ジオグラフィックなどの迫力映像は100本見られる。『大人になったら行ってみたい! 世界のふしぎな風景図鑑』(パイ インターナショナル刊)子どもの「なんだろう?」「どうなってるの?」の探究心をくすぐる、視野を世界に広げる風景図鑑。ベルギーのフラワーカーペット、サウス・ジョージア島のペンギンの群れなど、世界遺産を含む自然風景・建築物50カ所を紹介。子どもが読みやすい豆知識も。『せいかつ絵カードずかん ことばと習慣がぐんぐん育つ! 入園・入学準備に役立つ』 絵:カモ、監修岩澤 寿美子(KADOKAWA)日常生活に欠かせない「あいさつ」「食事」「トイレ」「身支度」などの生活習慣や言葉を528枚の絵カードに。絵カードを使って、コミュニケーションを取ったり、お互いの気持ちを伝えたり、イラストと言葉で生活習慣を身につける。入園・入学前に使って、新しい生活に備えるのもおすすめ。『やっぱり・しごとば』鈴木のりたけ(ブロンズ新社)人気の「しごとば」シリーズ第6弾が、6年ぶりに登場。今回は、子どもに大人気のプロサッカー選手や厩務員(きゅうむいん)、恐竜学者、プログラマー、探検家、オーケストラ団員、料理研究家、吹きガラス職人、医師らを収録。仕事の楽しみや面白さをぎゅっと閉じ込めた、親子で楽しめる本。関連記事旅行に行った気分になれる! ママ向けの本6選&キッズ向けの絵本3選ママのひとり時間に読みたい 新刊&キッズにおすすめの新刊寝る前に読みたいおすすめの読み聞かせ絵本子どもを寝かしつける時間は、1日の中でもゆっくりと親子のコミュニケーションが取れる貴重な時間。そんな幸せを感じるひと時には、子どもと世界を共有できる、絵本の読み聞かせが最適です。ママのやさしい声で語られる物語に、子どもも心地よく夢の世界へ。6歳~小学生低学年には、ちょっと長い絵本を何回かに分けて読んであげて。夢中になって、そのうち自分ひとりで読み始めるかもしれません。『おとうさんおはなしして』作・絵:佐野 洋子(理論社)「おとうさん、おはなしして」そうせがまれたお父さんが話し始めたのは、ひとりっきりで住んでいる男の子のお話。創作話に慣れていないお父さんと息子のやり取りが、なんとも微笑ましい一冊です。『ぐらぐらの歯きかんぼのちいちゃいいもうと』作:ドロシー・エドワーズ、訳:渡辺茂男、絵:酒井駒子(福音館書店)「ずっとまえ、わたしが小さかったとき、わたしよりもっと小さいいもうとがいました。」お姉ちゃんの目線から語られる、おてんばな妹との日常が描かれた10編のお話集。きかんぼで、わがままで、やんちゃな妹の姿が愛情たっぷりに表現されています。『クレヨンマジック』作:舟崎 克彦、絵:出久根 育(鈴木出版)雨の日にあるおまじないをした男の子に、次々と不思議なことが起こる物語。子どもの想像力をかきたてる魅力的なファンタジーの世界が広がります。全て読み終わった後には、思わずおまじないを試してみたくなるはず。関連記事寝る前に読んであげたいおすすめの読み聞かせ絵本3選【6歳~小学生低学年向け】子どもから大人まで楽しめる! アートな絵本子どもがアートな感性を養える絵本やオモチャみたいに楽しい仕掛け絵本、お部屋に飾っておきたくなるおしゃれな見た目の絵本など、様々な “アート絵本”を集めました。わが子への誕生日プレゼントや、ギフト選びの参考にも◎。『太陽をかこう』『木をかこう』作:ブルーノ・ムナーリ、訳:須賀敦子(至光社刊)デザインの巨匠、ブルーノ・ムナーリによる名著。自然をさまざまな角度からの観察することと、見たものを自由に描写する楽しさを教えてくれるシリーズ。子どもにもわかる言葉で展開されていくのもありがたい。木や太陽についての知識や仕組みの紹介からはじまり、さまざまな手法で描かれる木や太陽の紹介まで、新しい世界の見方に気付く。きっと読んだ後には、絵を描きたくなるはず。まだ言葉が読めない子どもも、大人が読んでも、広い年代から愛される名作。『あおのじかん』文・絵:イザベル・シムレール、訳:石津ちひろ(岩波書店刊)太陽が沈んで、夜が訪れるまでの一瞬。「マジック・アワー」「ブルー・アワー」とも言われる美しいひとときが描かれたフランスの絵本。どのページをめくっても、風景や動物、虫たちが青を主役に描かれる。薄い青、濃い青、さまざまな青で表現される、唯一無二の世界に魅了されること間違いなし。『闇の夜に』著:ブルーノ・ムナーリ、訳:藤本和子(河出書房新社刊)ブルーノ・ムナーリの代表作『闇の夜に』の新装版が、生誕110周年を記念して待望の復刊。夜の町から夜明けの草原へ、そして洞窟探検のあと、また闇の夜に戻るストーリー。夜のシーンは、暗闇の中に青一色で表現。一方、草原のシーンでは、半透明の透ける紙が使用され、小人の世界に入り込んだような目線を楽しめる。一冊の中でサイズや素材が違う紙が使用されていたり、遊び心がいっぱいの一冊。『穴の本』作:ピーター・ニューエル、訳:高山宏(亜紀書房刊)少年が銃を触っているうちに銃が間違って発砲されてしまい、その一発の弾丸が街中のあちこちに穴をあけていくという物語。実際に。本のすべてのページに穴があいていて、ページをめくるたびにその穴からストーリーが展開していく。水道管が破裂したり、木の枝が折れたり、ブランコの紐が切れたり……。弾丸が引き起こすトラブルがときどき笑いを誘う。100年前にアメリカで誕生し、そのレトロな表紙やイラストが長く愛されている一冊。関連記事【プレゼントにもおすすめ!】年齢別 アートな絵本20選 一生の宝物にしたいクリスマスの絵本クリスマスに読んでほしい絵本を、人気のベストセラーから今年の新作、不朽の名作まで、一生の宝物にしたいものをラインナップ。素敵なクリスマス物語の数々をお届けします。『おおきいツリー ちいさいツリー』作:ロバート・バリー、訳:光吉夏弥(大日本図書)自分のお家にちょうどよいサイズにするために先っぽを切られたツリーが、誰かのお家のツリーになっていく。人や動物、みんなのお家の飾りつけもそれぞれで可愛らしく、見どころのひとつです。4歳~5歳からも読めますが、6歳くらいになると繊細なイラストも楽しめるように。『さむがりやのサンタ』作・絵:レイモンド・ブリッグズ、訳:菅原啓州(福音館書店)「やれやれまたクリスマスか! 」面倒くさそうに目を覚ましたのはサンタクロース。寒さに愚痴を言いながら町の子どもたちにプレゼントを配ります。皮肉屋だけど実はやさしい、人間味あふれるサンタクロースは、ユーモアが分かる年齢にぴったり。コマ割りで進んでいくので、字の多い本や漫画へステップアップさせるきっかけづくりにも。『サンタさんのお仕事マニュアル』文:クリストファー・エッジ、絵:ティム・ハッチンソン他(大日本絵画)サンタさんのお仕事が楽になるようにそしてトラブルが減るようにお助けエルフたちがマニュアルをつくりました。たとえば、トナカイのあやつり方、子どもに見つかった時の対応、身だしなみ……その内容は子どもだけじゃなく大人も知りたかったワクワクする内容。『サンタクロースっているの?ほんとうのことをおしえてください』文:フランシス・P・チャーチ、絵・訳:いもとようこ(金の星社)「サンタクロースっているの? 本当のことをおしえて」。子どもにそう聞かれたら、あなたはなんと答えますか? 1897年、8歳の少女がニューヨークの新聞社に送った質問に、記者が社説に掲載する形で答えた世界的名文を絵本化したもの。ママ、パパになった大人にも響く名作。関連記事【年齢別】 一生の宝物にしたいクリスマスの絵本親子で読みたい ハロウィン絵本“ハロウィン”をテーマに、ちょっぴり怖くて可愛い絵本をご紹介。子どもの想像力を育む1冊をレコメンド。『魔女からの手紙』角野栄子(ポプラ社)ある女の子のもとに20人の魔女から届いた手紙。その手紙を手がけるのは、ディック・ブルーナ、荒井良二、五味太郎、和田誠ら有名作家20名。それぞれの絵に合わせて、角野さんが文章を綴るユニークな合作絵本。作家によって、全く異なるシチュエーションの手紙が描かれていて、ページをめくるたびにイマジネーションの扉が開くはず。関連記事【年齢別】親子で読みたい ハロウィン絵本10選0・1・2歳のおすすめ絵本はこちら >3・4・5歳のおすすめ絵本はこちら >
2021年03月05日【おとな向け映画ガイド】韓国プロ野球に挑戦する『野球少女』と、ベトナム戦争秘話『ラスト・フル・メジャー 』の2本をオススメぴあ編集部 坂口英明21/2/28(日)イラストレーション:高松啓二今週末(3/5)に公開される映画は13本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『太陽は動かない』『野球少女』『ラーヤと龍の王国』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が10本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『野球少女』高校球児に性別は関係ないはずですが、男子をイメージしてしまいます。それがプロ野球選手となれば、なおさら女子は考えにくい。でも現在、規約上では女子もあり得るのです。これは、ひたむきな女子高生が本気で男性と同じプロリーグに挑む!という韓国映画です。リトルリーグで野球を始め、天才少女といわれ、高校でも野球部で活躍する主人公チュ・スイン。彼女のプロへの道を阻むものは? 社会の偏見、親の反対、それもありますが、最大の壁は身体能力、体力の差でした。スインは球速130キロを投げる力があって、女子では最高レベル。けれども、プロの男子にはその上が沢山います。これではプロテストには受かりません。どう乗り越えるか……。ひとりのコーチとの出会いで、道が開けていきます。コーチは、スインのピッチングの特徴からある秘策を提案するのです。さっしのいい野球好きなら、ははーんあの手かな、と思い当たるでしょう。日本のコミックで映画にもなった先駆者『野球狂の詩』では、ヒロイン水原勇気がドリームボールをあやつり、大活躍をしました。スインも、魔球とはいいませんが、変化球に活路を見いだします。これも大変な練習が必要ですし、マスターしたとしても、プロの壁は相当厚い。それでも夢に向かって突き進むスインに周囲も動かされていきます。スインを演じるのは大ヒットドラマ『梨泰院クラス』でブレイクしたイ・ジュヨン。ピッチングもとても自然ですし、唇をかみしめ、前を見続ける負けず嫌いな姿に、思わずエールを送りたくなります。閉塞状況の今日このごろ、観終わって、自分も元気をもらったような気持ちになる作品です。『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』1975年に終結したベトナム戦争。アメリカにとって悪夢のような負け戦です。過酷な戦場のトラウマに加え、帰還したあとも冷たい扱いを受けて、精神的に大きな痛手を負った兵士が多いとききます。そのベトナム戦争下の1966年、作戦遂行中にベトコンの待ち伏せにあい、全滅寸前となった地上部隊をヘリで救援に向かい、傷ついた多くの兵士を救出し、自らは戦死した、ある空軍医療兵の実話です。兵士の名はウィリアム・H・ピッツェンバーガー。戦友や彼に命を救われた兵士たちが、アメリカの軍人にあたえられる最高の栄誉である“名誉勲章”を彼に授与してほしいと請願します。しかし彼に与えられたのは、空軍十字章だけでした。それから30年間、請願は続き、クリントン政権下で実を結ぶことになります。映画は、国防総省のエリート職員スコット・ハフマン(セバスチャン・スタン)による関係者への聞き取り調査と、激戦の再現が並行して描かれます。調査が進むなかで、請願が無視され続けた理由、隠ぺいされていた真相が明らかになっていきます。生き残った兵士たちが語る戦闘の様子だけでなく、彼らの復員後の生き方、おかれた立場、不安定な精神状態といった厳しい現実がこの映画のもうひとつのテーマといってよいでしょう。特筆すべきは、名優たちを起用した豪華なキャスティングです。ウィリアム・ハート、ジョン・サヴェージ、サミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス……まるでハリウッド70-80年代「脇役グラフィティ」のような顔ぶれです。エンド・クレジットでは「ピーター・フォンダを偲んで」という献辞が書かれていましたが、ピッツェンバーガーの父親役で出演していたクリストファー・プラマー(21年2月5日没)にとっても遺作となりました。タイトルの『ラスト・フル・メジャー』はリンカーンの演説から。「最後の全力を尽くして」といった意味です。まさに。首都圏は、3/5(金)からシネマート新宿他で公開。中部は、3/5(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、3/6(土)から名演小劇場で公開。関西は、3/5(金)からシネマート心斎橋他で公開。
2021年02月28日【おとな向け映画ガイド】異色の2本をオススメ。息子のゲイバーを相続した『ステージ・マザー』、男性が『MISS ミス・フランスになりたい!』ぴあ編集部 坂口英明21/2/21(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/26・27)に公開する映画は23本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『あのこは貴族』の1本、中規模公開とミニシアター系の作品が22本です。そのなかから2本を厳選し、ご紹介します。『ステージ・マザー』都会で小さな店を経営していた息子の訃報をきいて、田舎から出てきた母が、持ち前の明るい性格と周りの人たちに助けられ、傾きかけていた息子の店を見事に盛り返し、めでたしめでたし、という下町人情物語なんですけど。舞台がサンフランシスコ、息子がドラァグクイーン、店はショーを売り物にするゲイバーとなると、ドラマは急に現代的な様相を呈します。この設定で、もう勝ったも同然と言いましょうか、期待を裏切らない面白さと充実感のある作品です。母メイベリンが住んでいるのは米南部テキサス。今回トランプ元大統領は負けましたが、とても保守的な地区です。息子のリッキーは勘当状態。夫は訃報を聞いても動こうとはしません。彼女は夫の反対を押しきって最愛の息子の葬儀に駆けつけます。サンフランシスコ、カストロ・ストリートといえば、世界有数のLGBTQ+コミュニティがあることで知られています。リッキーはそのなかで、ゲイバーを経営していました。人気者で、パートナーもいます。不慮の死だったため、遺書もなく、なんと店の経営権はメイベリンが継ぐことに。経営はうまくいっておらず、大した価値はない。どうせつぶしてしまうんだろという周りの冷たい視線の中で、息子の想いを繋ごうと、決意するメイベリンですが……。メイベリンを演じるのはジャッキー・ウィーヴァー。最近では『チア・アップ』でダイアン・キートンとチアリーダーにチャレンジするシニア役が印象に残ります。そんなに美形ではないけれど、愛嬌があって、観ているうちにどんどん魅力にハマっていきます。他に『キル・ビル』などでおなじみのアジア系女優ルーシー・リューが、息子の友人で子供を持つ自由奔放な隣人の役。メイベリンを応援するひとりです。監督はトム・フィッツジェラルド。クラシックなハリウッド・コメディに、自立する女性を描く映画の要素を加え、『キャバレー』のように華やかなショーで味付けしたハートウォーミング・コメディに仕立てています。『MISS ミス・フランスになりたい!』男性しか門戸が開かれていない世界に女性が挑戦しパイオニアになる、実話の映画化も含めてそういった作品はいくつもあります。女性オンリーの世界への男性進出も、主夫ものとか、ないわけじゃない。しかし男性がミスコンに、というのは思いつきませんでした。子どもの頃に将来何になりたいかと聞かれ、ボクサーになりたい、サッカー選手になりたいとクラスメートがいいます。アレックスの夢はミス・フランスになることでした。それから幾星霜。24歳になった彼は、その夢の実現に向けて動き出します。そう考えてもおかしくないほど彼は美しいのです。パリのごたごたした下町の下宿屋。ごうつくばりだけれど生きる知恵のある家主、少々とうが立った女装の娼夫、起業を目指すIT系の移民青年、インド人のお針子さんたちといったさまざまな住人と友人の助けをかり、男性であることを隠して「ミス・フランス」コンテストに挑戦します。アレックスは偽造パスポートを手に入れ、まず、パリを中心にした「イル・ド・フランス」地区の予選に参加します。ミスコンなんて、美女を選ぶ男性社会が作り出した遺物なんじゃないの、と思っている人がいるとしたら、驚くと思います。コンテストで重視されるのは受け答え。女らしさ、よりも自分らしさ、自己表現です。アレックスは見事な受け答えで優勝。全国大会に進出します。さて、ここからどんな展開になるか。全国から地区代表が一箇所に集められ、共同生活や旅をしながら決勝に進む、その過程のすべてが審査対象です。この年は、ベルギーへエコ旅行という設定。海岸でゴミ拾いをしたり、産業廃棄物処理場で撮影、もちろん、エコに対する姿勢も大きな審査です。ミス・コンテストというイベントそのものも見どころなのです。ジャン=ポール・ゴルチエのレディースコレクションに出演し話題となったフランスのジェンダーレス・モデル、アレクサンドル・ヴェテールの映画初主演作。この存在感なしではあり得ない企画です。そんな彼の魅力に加え、主人公をとりまく人間模様も多様性に富んでいて、奥深い映画になっています。首都圏は、2/26(金)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、2/26(金)からユナイテッドシネマ豊橋18、2/27(土)から名演小劇場で公開。関西は、4/2(金)からテアトル梅田他で公開。
2021年02月21日おとな向け映画ガイド人生、最期はこうありたいー『痛くない死に方』と、ISによる監禁からの解放を描く『ある人質 生還までの398日』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明21/2/14(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/19・20)に公開する映画は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』『ライアー×ライアー』『あの頃。』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。そのなかから『痛くない死に方』と『ある人質 生還までの398日』の2本をご紹介します。『痛くない死に方』臨終の席。息を引き取ったばかりの祖母を家族が囲み、医者も入って、「おばあちゃんありがとう、お疲れ様でした」と記念写真を撮る。これはあり?痛くない治療をめざしたはずが、患者に苦しみの最期を迎えさせてしまうことが続き、思い悩む若い在宅医療医が、先輩医師に同行して見た看取りのシーンです。痛みもなく、生を全うし、家族に見送られての最期なら、故人も家族もきっと喜んでくれるんじゃないか。白衣を身に着けず普段着で在宅診療を続ける型破りな先輩医師はそういいます。悩める若い医師・河田役は柄本佑。先輩医師・長野は奥田瑛二が演じています。河田は長野のクリニックで働くようになります。「大病院の医者は臓器という断片を見る、俺たち町医者は物語を見る。患者の人生と向き合うんだ」と語る長野の治療法は、河田にとって驚くことの連続です。実は、長野にはモデルがいます。日本の在宅医療のスペシャリストで尼崎市の町医者、長尾和宏さん。彼の著書『痛くない死に方』『痛い在宅医』がこの映画の原作です。脚本も担当した高橋伴明監督は、長尾さんご自身ではなく、『赤ひげ』で加山雄三が演じた新米医師・保本を彷彿とさせる河田を主人公にし、彼の成長物語のなかで、医師はどうあるべきか、人はどう死と向き合うのか、平穏死、尊厳死を問います。長野のもとで2年がたち、河田は、大病院から在宅医療に変更したステージ4の肝臓がん患者・本多さんを担当します。演じているのは、高橋監督の代表作『TATTOO〈刺青〉あり』で主演した宇崎竜童。その妻役は大谷直子です。彼らの視点で、直面する在宅医療、延命治療、リビング・ウィル(生前意思)、もっと具体的に食べること、待ってくれない痛みといった問題も描かれます。ラスト近く、息をひきとったあとで、妻が夫にかけた言葉。こんなことをいわれたら最高だな、と思いました。ぜひ、映画館できいて下さい。首都圏は、2/20(土)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、2/20(土)からミッドランドスクエアシネマ名古屋他で公開。関西は、3/5(金)からテアトル梅田他で公開。『けったいな町医者』『痛くない死に方』で奥田瑛二が演じた医師長尾和宏を描いたドキュメンタリーが同時公開されています。兵庫県尼崎市の在宅医、2500人を看取り、幸せな最期とは何か、を追求する長尾医師に密着し、その日常を追います。監督・撮影・編集は毛利安孝。ナレーションを柄本佑が担当しています。『ある人質 生還までの398日』イスラム過激派の人質となり、13ヶ月拘束されたデンマーク人写真家の、実話をもとにした、いわば再現ドラマです。拷問、監禁の想像を絶する様子と、彼を救いだすために奔走する家族の行動が並行して描かれます。日本人ジャーナリストの拘束や、時には処刑されるというショッキングなニュースで断片的に伝わるこの種の事件の真実に迫る映画です。2013年から14年のシリア。イスラム過激派組織のIS(イスラム国)は活動の初期段階です。このあと、16年にかけて支配拡大していく、その前段階で数十名の西欧人を人質にとりました。この映画の主人公ダニエルも人質のひとりでした。22歳。デンマーク体操チームの一員でしたが、怪我をしてリタイア。もともと憧れていた写真家の道を選び直し、キャリアを積み始めたばかりの新米です。戦場を撮ろうとしたわけではなく、紛争下の庶民の暮らしがテーマでした。取材は非戦闘地区で、夜になれば隣国のトルコに引き上げる。自由シリア軍の許可もとり、現地の人にエスコートもされて、安全なはずでした。が、過激派にあっというまに捕らえられます。デンマーク政府はテロリストとは交渉しないという方針。窮地に立たされたダニエルの父母と姉は、何とか彼を救おうと人質救出のプロと連絡をとります。実行犯とのコンタクト、交渉、そして何より大変なのは法外な身代金の調達です。最終的に、約2億8500万円まで膨れ上がります。監督は、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で世界的に知られるデンマークのニールス・アルデン・オブレヴと、人質解放のプロ役で出演もしているアナス・W・ベアテルセン。デンマークのジャーナリスト、プク・ダムスゴーが『ISの人質 13カ月の拘束、そして生還』としてまとめたノンフィクションを原作にしています。生死の狭間で、人質たちが必死で助け合う姿も感動的です。究極の恐怖を受けながらも、「ヤツらの憎悪に負けたくない。僕の心にあるのは愛だけだ」と語り皆を励ますアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーもつらい死をとげます。拘束されたダニエルはもちろんですが、「無力という精神的拷問に何ヶ月も耐えなければならない」(監督のコメントから)一般人である家族の日々に心が痛みます。あってはならないことです。
2021年02月14日親子のコミュニケーションに大切な絵本の読み聞かせ。今回は、子どもとのお家時間をもっと豊かにしてくれる絵本をシーン別にご紹介! 0歳~2歳の頃は、子どもが体中のいろんな感覚を使って絵本を楽しむ時期。ママがゆっくりと絵本を読んであげることで、子どもの想像力と好奇心を大きく広げ、感性を刺激してくれるはず。寝かしつけ時におすすめの絵本や、夏休み、クリスマス、ハロウィンなど季節のイベント時に読みたい絵本など、さまざまなシーンに合った絵本を紹介するので、お気に入りの1冊をぜひ見つけてみて。– CONTENTS –1. 寝る前に読んであげたいおすすめの読み聞かせ絵本2. 赤ちゃんから大人まで楽しめる!アートな絵本3. 夏休みに読みたい おすすめ絵本4. 一生の宝物にしたいクリスマスの絵本5. 親子で読みたい ハロウィン絵本 寝る前に読んであげたいおすすめの読み聞かせ絵本子どもを寝かしつける時間は、1日の中でもゆっくりと親子のコミュニケーションが取れる貴重な時間。そんな幸せを感じるひと時には、子どもと世界を共有できる、絵本の読み聞かせが最適。ママのやさしい声で語られる物語に、子どもも心地よく夢の世界へ。0~2歳の赤ちゃんには、リズム感の良い言葉やはっきりした絵・写真の絵本がおすすめ。『くらい くらい』作:長谷川摂子絵:柳生弦一郎(福音館書店)暗い部屋の中、謎の黒い影に向かって「でんきをつけてちょうだい」とお願いをすると……ぱっと明るくなった部屋の中にはだれがいるかな? 闇が光へと変わる瞬間の高揚感が、赤ちゃんを嬉しい気持ちにしてくれます。『しっぽがぴん』作:おくはらゆめ(風濤社)繰り返しのリズムが癖になる、何度も声に出して読みたくなる絵本。きつねのしっぽがぴん!たらり。ねこも、かめも真似してぴん!たらり。軽快なリズムとほのぼのした動物たちの表情に大人もハマる中毒性の高い1冊。『おきたらごはん』作:岩合 光昭(福音館書店)野生動物たちの寝顔とご飯を食べる姿で構成した写真絵本。動物たちは寝て、起きて、ご飯を食べることで、それぞれの持つ生きる力を育んでいます。しっかり寝て、いっぱい食べるといいことがあるよ、と子どもに教えるのにも最適。『ねぶしろとおいしいまる』作:あべはまじ 絵:ひらさわまりこ (mille books)アベカズヒロさんと“はまじ”こと浜島直子さんによる夫婦創作ユニットが手がける、寝かしつけ絵本の続編。ちょっと臆病でいつも寝不足の男の子“ねぶしろ”が森の中で迷子に。ねぶしろが帰り道を見つけられた理由とは? 心温まるストーリーと愛らしいイラストに癒されること間違いなし。イラストは、平澤まりこさんが担当。関連記事寝る前に読んであげたいおすすめの読み聞かせ絵本3選【0~2歳向け】ひとり時間に読みたい 今月の新刊&絵本 6冊ママのひとり時間に読みたい 新刊&キッズにおすすめの新刊赤ちゃんから大人まで楽しめる! アートな絵本子どもがアートな感性を養える絵本やオモチャみたいに楽しい仕掛け絵本、お部屋に飾っておきたくなるおしゃれな見た目の絵本など、様々な “アート絵本”を集めました。わが子への誕生日プレゼントや、ギフト選びの参考にも◎。『LITTLE EYES 3:いろ・いろ・いろ』作:駒形克己(偕成社刊)デザイナーで造本作家の駒形克己氏による、赤ちゃんのためのカード絵本「リトルアイシリーズ」。カード形式になっていて、赤ちゃんが初めてのかたちや色に触れるきっかけに。1作目はわずか3ヵ月から楽しめるので、月齢に合わせて楽しみたい。今回紹介するのは、5ヵ月くらいにおすすめのシリーズ3作目。5ヵ月にもなると、赤ちゃんは見たものを吸収する力が一気に芽生える。カードを開けたり閉じたりするたびに起こる形の組み合わせと変化が、赤ちゃんの刺激を掴むよう工夫されている。パラパラと眺めながら、楽しく造形に触れることができる。『まるまるまるのほん』作・絵:エルヴェ・テュレ訳:谷川俊太郎(ポプラ社刊)フランス発・ポップな色づかいが楽しい一冊。赤ちゃんでも目につきやすい赤、黄、水色の鮮やかな丸たちが、絵本の中で躍動感たっぷりに動き出す! 絵本をさまざまな角度に傾けてみたり、好きな色の丸を触ってみたり、赤ちゃんにとっては刺激に。2歳くらいになったら、自分で文章を読めるようになってさらに楽しみ方が広がる。谷川俊太郎氏による素敵な翻訳に導かれて、どんどんページをめくりたくなること間違いなし!『BABY NUMBER BOOK』作:リサ・ラーソン/ヨハンナ・ラーソン(トンカチ刊)赤ちゃんが初めて数に触れるきっかけになる、数字絵本。陶芸家のリサ・ラーソンと、娘のヨハンナ・ラーソンの初の共作。ヨハンナがデザインを手がけた。北欧らしい色使いが、飾っていたくなるほどおしゃれ。また、出産祝いのギフトとしても喜ばれそう。1から10まで、見開きごとに数字と動物のイラストがリンク。ページをめくるたびに数字と動物の数が増えていき、うれしい気持ちになる! 赤ちゃんが楽しく数字に触れることができる一冊。ハードカバーなので、かじったりしても安心。『とびだす絵本 おもちゃばこ』作:ジェラール・ロ・モナコ訳:うちだ さやこ(アノニマ・スタジオ刊)仕掛け絵本の名手、ジェラール・ロ・モナコによるワクワクする仕掛けのアイディアがいっぱいの絵本。厚みがあるのに、やわらかさとあたたかみがある紙質も、大切にしたくなる魅力のひとつ。本を開くと、ヨットやトラック、消防車など世界共通で子どもに愛されるモチーフたちが次々に登場。ページをめくるたびに飛び出す仕掛けに、物語の中に入ったかのような気分になれる。オモチャのように遊べる一冊。『あかい ふうせん』作・絵:イエラ・マリ(ほるぷ出版刊)イタリアミラノの絵本作家、イエラ・マリによる“字のない絵本”。子どもがふくらませたひとつの真っ赤な風船が、リンゴや蝶、お花へと次々と変わっていく様子が描かれる。ページをめくるたびに新しい展開になるので飽きずに楽しめる。まだ視力のはっきりしていない赤ちゃんにとっても、目にとまりやすい赤色が想像力を刺激してくれる。子どもの自由な感性に任せて、無限に楽しみたい一冊。『かおノート』作・絵:tupera tupera(コクヨ株式会社刊)うれしい顔、困った顔、照れた顔、悲しい顔……。いろんな顔をつくって、遊んで、笑える大人気のシールブック「かおノート」シリーズ。顔に見立てた写真やイラストに、目・鼻・口・ひげなどのシールを貼って、オリジナルの顔がつくれる。作者・tupera tuperaによる遊び心いっぱいのページやパーツで顔をつくって、お正月の福笑いのように家族で楽しみたい! シールを貼るわずかな角度の違いでも、異なる表情が生まれるのできっと子ども心を掴むはず。関連記事【プレゼントにもおすすめ!】年齢別 アートな絵本20選夏休みに読みたい おすすめ絵本「夏」や「夏休み」をテーマにした楽しい絵本をご紹介。やさしい世界観のなかで展開する心躍るストーリーは、夏のワクワクした気分を後押ししてくれるはず。『おばけのアイスクリームやさん』作:安西水丸(教育画劇)数々の名作絵本を手がける安西水丸さんの愛らしい絵と言葉のリズムが楽しい絵本。森でアイスクリームやさんをしているおばけのぼんちゃんの元に、「アイスクリームちょうだい」とやってくる動物たち。ほのぼのしたタッチとゆったりした世界観が、小さな子の読み聞かせにぴったり。『さんパピプペぽ』作:よしこ・オズボーン絵:ゆら・オズボーン(若芽舎)写真家の若木信吾さんがプロデュースする絵本レーベル・若芽舎のミニサイズ絵本。おさんぽに出かけた主人公が出合う、さまざまな生き物たち。造形が面白い流木を生き物に見たて、躍動感あふれる世界観を表現。ストーリーを母のよしこさん、イラストを娘のゆらさん、流木の写真を父のブルースさんが手がけた親子共同作品。関連記事【年齢別】夏休みに読みたい おすすめ絵本6選 一生の宝物にしたいクリスマスの絵本クリスマスに読んでほしい絵本を、人気のベストセラーから今年の新作、不朽の名作まで、一生の宝物にしたいものをラインナップ。素敵なクリスマス物語の数々をお届けします。『さんかくサンタ』作:tupera tupera(絵本館)手づくりの12色の色紙を、さんかく・まる・しかくで切ったり貼ったりして完成した、愛らしいクリスマスのおはなし。カラフルなイラストにリズミカルな言葉が、子どもの気持ちをぐっとつかみます。あたたかみのある手触り感は、tupera tuperaならでは。『クリスマスいないないばあ!』著:インゲラ・アリアニウス(岩崎書店)子どもが大好きな「いないいない… ばあ!」をクリスマスのサンタさんやゆきだるまさんたちが披露。ポップなイラストにあるカラフルなフェルトをめくって「いないいない… ばあ!」。さいごにかくれているのは「きみ!」という仕掛けで、思わず笑顔に!『クリスマスのかくれんぼ』作:いしかわこうじ(ポプラ社)赤ちゃんに大人気の型抜きしかけ絵本のシリーズ10作目。ページの中にかくれんぼしているクリスマスツリー、靴下、サンタクロースなどにくりぬかれた型抜きのページをあてて遊ぶ仕組み。発見するたびに、子どもの気分も高まり楽しく読み進められる。『サンタさんどこにいるの?』作:ひらぎみつえ(ぽるぷ出版)仕掛けを動かすと、愛らしいサンタさんが「ここじゃよ!」と現れるユニークな絵本。簡単なので0歳からも楽しめますが、2歳くらいになると自分で仕掛けを動かすことにはまりそう。「サンタさんはどこかな?」というママやパパの問いかけに、ノリノリで答えてくれるはず。『クリスマスのおばけ』作:せな けいこ(ポプラ社)「うれしい、うれしいクリスマス。だけど、おばけにとってはどうかしら?」と、女の子がクリスマスの日におばけのことを思います。そして、おばけがさみしくないようにおもてなしの準備。そんなふうに自分が楽しい時も誰かのことを思いやれるって素敵。優しい気持ちが育まれる絵本。『サンタのおまじない』作:菊地 清(山房)この絵本は、楽しい“切り絵”の絵本。野菜の形をした色紙が、『いち にい サンタ!』と おまじないを言って、どんどんハサミを入れていくとまさかのものに。その変わりようは見事。これは大人でも感激してしまいます。「この野菜は、何になるんだろう?」と、親子で考えるのも楽しい。関連記事【年齢別】 一生の宝物にしたいクリスマスの絵本親子で読みたい ハロウィン絵本“ハロウィン”をテーマに、ちょっぴり怖くてかわいい絵本をご紹介。おばけに魔女、ガイコツ、透明人間と、愛らしいキャラクターのとぼけた様子に子どもたちも大喜び。ハロウィンのコスプレのアイディアに活用しても良さそう。『おばけのコンサート』作:たむらしげる(福音館書店)古い家に住む小さなおばけはハーモニカが得意。いつものように吹いているとドアを叩く音がして、ちょっぴりシュールで愛嬌たっぷりな珍客が次々にやって来ます。オーケストラのように盛り上がってきた時、家がぐらりと揺れて、大きな仲間も参加する大パーティに。愉快な音遊びとほのぼのした色鉛筆のイラストが楽しい絵本。『おばけが ぞろぞろ』作:ささきまき(福音館書店)『ぶたのたね』『やっぱりおおかみ』などを手がける佐々木マキさんによるおばけの絵本。木の“うろ”から出てきたおばけは、「ぞぞまる」ちゃん。ガラス瓶の中からは「もものり」ちゃん、ゴミ箱の中からは「おろむか」くん、次々におばけの仲間たちが登場。ユニークで個性あふれるおばけの様子に注目! ラストの展開には、ちょっぴりドキドキするかも。関連記事【年齢別】親子で読みたい ハロウィン絵本10選3・4・5歳のおすすめ絵本はこちら >6歳〜のおすすめ絵本はこちら >
2021年02月14日おとな向け映画ガイド役所広司がうますぎ! 西川美和監督『すばらしき世界』と、おとなのファンタジー『マーメイド・イン・パリ』をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明21/2/7(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/11〜13)に公開する映画は18本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『ファーストラヴ』『すばらしき世界』『劇場版「美少女戦士セーラームーン Eternal」《後編》』『名探偵コナン 緋色の不在証明』の4本、中規模公開とミニシアター系の作品が14本です。そのなかから『すばらしき世界』と『マーメイド・イン・パリ』の2本をご紹介します。『すばらしき世界』笑福亭鶴瓶が偽医者を演じた『ディア・ドクター』、松たか子と阿部サダヲの結婚サギ師『夢売るふたり』といった、個性的な犯罪者をとりあげ、善悪あわせもつ人間の複雑な心理を描き続けてきた西川美和監督、5年ぶりの新作です。実在の人物をモデルにした佐木隆三の小説『身分帳』を映画化したもの。早くもとびだした2021年ベストムービーといっていい傑作だと思います。役所広司演じる主人公・三上正夫は、前科10犯、殺人の罪で旭川刑務所を出てきたばかりです。強面ですが、ちょっといい男でどこか愛嬌があり、実直そう。ただし背中や腕にタトゥーあり。心を入れ替えて「今度こそ堅気ぞ」という言葉に偽りはないのだけれど。殺した男について問われると「いきなり刀を持って乗り込んできたんだ、あのバカが」と急に感情をむき出しにして、激昂します。チンピラ集団がサラリーマンを脅しているのを町でみかければ、黙っていられず、あっというまにチンピラたちをボコボコにしてしまう。直情径行、正義感の人です。しかも腕っぷしが強い。安アパートでのひとり暮らし、生涯の多くを刑務所で過ごした男の部屋は小綺麗です。ミシンとか裁縫も上手。そんな不思議な魅力を持つキャラクター。役所広司は、もうハマりすぎ、憑依したような演技です。その三上をとり巻く人々。できれば接したくないのに関係せざるを得ない人、好意的につき合おうとする人、それぞれのとまどいながら対応する姿や心理描写、人間模様が、とてもきめ細かく描かれていて、しかもいい役者さんを揃えています。この作品のもうひとつの魅力です。彼に目をつけ、その更生の過程をとりあげようと近づくテレビマンふたり。相手の事情を忖度せずにずんずん食い込むプロデューサー役の長澤まさみと、三上の人間味に惹かれていくディレクター仲野太賀。旬な役者のなんとぜいたくな起用。最初は万引をしたと疑い、逆ギレされてびびるスーパーの店長に六角精児。“反社”の人は生活保護は受けられませんとつっぱねながら、なんとか救う手立てがないかと考えるケースワーカーに北村有起哉。他にも、橋爪功と梶芽衣子は身元引受人の弁護士夫妻、やくざ仲間の白竜とその妻キムラ緑子。助演賞がいくつあってもたりません。世の中は敵ばかりではない。きっと手をさしのべてくれる人がいる。確かに不寛容で生きにくい世界ではあるけれど。観た人により、ちがう受け止め方ができる奥深いタイトルです。『マーメイド・イン・パリ』パリに出没すると、人魚姫もポップでおしゃれです。大洪水でセーヌ川に迷い込んでしまった人魚、名前はルラ。美しい歌声で男の心を虜にし、ついには心臓を破裂させてしまうという能力を持っています。その力で自分の身を守っていました。ある日、彼女が負傷して川岸に打ち上げられていたところを、パフォーマーのガスパールが助けます。自宅に連れ帰り、とりあえずバスタブへ。やがて、めざめたルラは、いつものように歌い出すのですが、ガスパールには効きません。彼は失恋の痛みで、恋する心を失っていたのです。と、文字にすると、ププッと一笑にふされるかもしれませんが、これぞファンタジーですから。このあと、ふたりに恋心が生まれ、ルラは海にもどらなければならない、というストーリーもおなじみのもの。そんなメルヘンのような世界をオススメするわけではありません。フランスのティム・バートンともいわれる監督、マチアス・マルジウの作品です。夢見ごこちなだけでなく、毒気もあります。ルラ(マリリン・リマ)は可愛いだけでなくセクシー。イケメンのガスパール(ニコラ・デュヴォシェル)は王子様キャラというよりは不器用なオタク。そんなふたりのロマンティック・コメディ。これぞ、おとなのためのファンタジーです。それをさらに魅力的にしているのは、はじけるようなマルジウのビジュアル・センスです。ガスパールがパフォーマーとして働く、川に浮かぶ老舗のバー「フラワーバーガー」で繰り広げられる妖艶なフレンチショー、石畳のパリはまるでポップアップ絵本のなかの街のようです。ガスパールが住む家も、おしゃれな小物やフィギア、色とりどりのブリキのおもちゃやドールであふれ、ヨーロッパのアンティークショップのようで目が離せません。ふたりを見守るジョニー・キャッシュと名付けられた猫、スペインの名優ロッシ・デ・パルマが演じるお隣の世話焼きおばさんも愉快な脇役です。とにかく細部に凝っているのです。アンデルセンやディズニーというよりは、今でもファンの多い寺山修司が、宇野亜喜良とともに作り出した人魚姫を思い出しました。人魚の真珠の涙、なんてまさに。
2021年02月07日おとな向け映画ガイドこんな映像は観たことがない! 中国新世代が描く現代の山水画『春江水暖』と、スクープ満載の『ディエゴ・マラドーナ』。ぴあ編集部 坂口英明21/1/31(日)イラストレーション:高松啓二今週末(2/5・6)に公開する映画は10本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『樹海村』『哀愁しんでれら』の2本、中規模公開とミニシアター系の作品が8本です。今回は、2/11公開の『春江水暖』と今週公開の『ディエゴ・マラドーナ二つの顔』の2本をご紹介します。『春江水暖~しゅんこうすいだん』古典の風格を持った傑作が誕生した、とやや興奮気味におすすめしたい中国映画です。山水画という絵画ジャンルがあります。背に山を抱き流れる川、岩や樹木や、ときに人間を自然の一部のように配した風景画。この映画には、まさに「現代の山水画」の趣きがあり、描かれるドラマも大きな川の流れのように、ゆったりと、さまざまな人生をのみこんで進みます。上海の南に位置する杭州市 富陽が舞台です。富春江という大河があり、歴史は秦朝まで遡る古い街。2022年にアジア競技大会がこの地で開催されるため、街全体が大改装中。映像でとらえると、山水画の山は、高層ビルにとって変わられつつあります。この街に住むある大家族。家長の老母を中心に、四人の息子、その妻や孫たちに起きること、その波紋やいさかい、苦悶が、四季折々の行事とともに繊細に描かれます。母の誕生日を祝う宴から始まり、満月の秋があり、雪の旧正月、そして富春江の水も暖む春。辛いこともあれば、楽しいこともある。わたしたち日本人も共感できる、すこし懐かしくもある風景です。この作品がデビュー作という、まだ33歳のグー・シャオガン監督は、『悲情城市』『ヤンヤン 夏の想い出』『東京物語』、そして『ゴッドファーザー』といった家族を描いた名作に影響を受けているようです。富陽は実は監督のふるさと。そのふるさとのリアルな姿を映し出すために、大半の役を監督の親戚や地元の知り合いが演じています。脚本も監督自身の家族におきたエピソードをもとにしているそうです。特筆すべきは、映像のすばらしさです。孫娘グーシーと恋人ジャン先生とのデートのシーン。富春江にとびこみ泳ぐジャンをとらえたカメラは、横にそのままゆっくり移動していきます。岸辺の景色をなめながら10分以上。グーシーの待つ岸に上がり、ふたりは並んで歩き出します。ここまで1ショット。まるで、絵巻物のように、映像がつながっていきます。そんな息をのむようなシーンの数々。撮影チームの「チャレンジ・スピリット」の賜物です。首都圏は、2/11(木)からBunkamura ル・シネマで公開。中部は、2/19(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、2/19(金)からテアトル梅田他で公開。『ディエゴ・マラドーナ二つの顔』なんというドラマチックな人生! そのアップダウンは、次から次へと驚きがおしよせるジェットコースターのようです。 昨年11月に他界したサッカー界の巨星、ディエゴ・マラドーナを描いたドキュメンタリー。急ごしらえの追悼ものでは、もちろんありません。『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』で英国アカデミー賞受賞、『AMY エイミー』で米アカデミー賞受賞のアシフ・カパディアが、過去の貴重な映像を掘り起こし、マラドーナのインタビューにも成功した決定版。いわば本人公認の一代記ですが、サブタイトルにある「二つの顔」にいつわりなく、ダークサイドのマラドーナ像がきっちり描かれていて、それが実にすさまじいものなのです。すでにスーパースターだったマラドーナが、FCバルセロナからセリエAでは弱小だったSSCナポリへ移籍したのが1984年。映画はその入団記者会見のあと、そのまま大観衆の待つスタジアムの前に姿を見せるシーンからはじまります。至近距離の映像は、長くエージェントをつとめたマラドーナの友人シテルスピレールが専属カメラマンを雇って撮り続けていたもの。81年から87年あたりまで、実に数百時間に及ぶ貴重な記録の一部です。このお宝映像が最大のスクープ、です。マラドーナはナポリをほぼ独力で強豪チームにおしあげ、86-87シーズンにはついにクラブ史上初のセリエA優勝とコッパ・イタリア優勝を果たします。故国アルゼンチンのナショナルチームでも86年のメキシコWC で大会MVPに輝きます。続く90年のWCはイタリア開催のうえ、準決勝がアルゼンチンとイタリア、しかもその会場がナポリなんて、すごいめぐり合わせです。一方で、ナポリ入団会見でも記者から厳しい質問がとんだマフィアとの関係は、入団後、さらに深まります。加えて愛人とのゴシップ、隠し子疑惑、コカイン中毒など、スキャンダルのデパートのようなもうひとつの顔。それによって、評判も地に落ちます。これが頂上からまっさかさまで、いっそ痛快。それでもまた立ち上がる、そんな不屈のスーパースター。清濁ともに魅力にみちたキャラクターです。
2021年01月31日今週の「おとな向け映画ガイド」今週公開、小津安二郎を敬愛する海外監督ふたりの新作『天国にちがいない』と『わたしの叔父さん』をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明21/1/24(日)イラストレーション:高松啓二今週末(1/29・30)のロードショー公開は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『花束みたいな恋をした』『名も無き世界のエンドロール』『ヤクザと家族 The Family』の3本、中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。そのなかから選りすぐりの2本をご紹介します。『天国にちがいない』パレスチナ系イスラエル人の名匠エリア・スレイマン監督の作品です。パレスチナ、と聞いてあなたがイメージされることを、見事にくつがえしてくれる映画だと思います。主人公は映画監督。スレイマン自身が演じています。一見、松尾スズキさんのような雰囲気。ごま塩のひげ、下が透明なフレームのメガネをかけ、ハットをかぶり、ショルダーバックは斜めがけ。街を散歩して、カフェに入り、エスプレッソを飲みながら、ぼーっとする……。新作の出資者をもとめてパリとニューヨークへ旅に出るのですが、どこの国に行ってもこのスタイルは変わりません。旅の中で起こるあれこれをスケッチのように描いていきます。ワイドスクリーンいっぱいのシンメトリカルな映像。その中心に彼をおくと、これが不思議と落ち着く構図です。どれもが、どこかユーモラスで、ホッコリとしたもの。おそらく実体験に想像力をふくらませて作り出した彼独自の世界です。彼のセリフは全編通してふたつだけ。映像ですべて物語ります。例えば、パリのヴァンドーム広場に突然戦車が何台も現れたり、地下鉄では妙な男にガンを飛ばされてビビったり、救急車がホームレスに食事のデリバリー? をしたり……。ニューヨークでは、公園に天使がいたかと思うと、子連れの女性やスーパーの店員がカービン銃をまるでアクセサリーのように身に着けていたり……。パレスチナが危険だというのなら、世界こそパレスチナ化しているんじゃない? という彼のちょっとブラックな暗喩もあります。肝心の新作の売り込みがどうなったかというと……これも笑ってしまう結末です。来日したとき、まず墓参をしたという小津安二郎ファンのスレイマンらしい、とても上品な映像、ほのかなユーモア、よい後味の映画です。首都圏は、1/29(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、2/6(土)から名演小劇場で公開。関西は、1/29(金)からシネ・リーブル梅田で公開。『わたしの叔父さん』一昨年の東京国際映画祭で最高賞である東京グランプリと東京都知事賞を獲得した作品。監督はフラレ・ピーダセン。彼もまた、小津安二郎を師と仰ぐひとりです。デンマークの農村で、初老の叔父さんとふたり、酪農を営む27歳の娘クリスの物語。静かなあたたかい映画です。小津の作品同様、大きな事件があるわけではありません。朝、足の不自由な叔父さんを起こし、服の着替えを手伝い、朝食の支度をする。叔父さんはパンにスプレッドを塗って食べる。クリスはシリアルに牛乳。仕事は、乳牛の世話、畑仕事も少し。訪れる人は牛乳の回収業者だけ。出かけるのも週に一度スーパーへ買物をするくらいです。その繰り返し。淡々とした穏やかな日々が続きます。ふたりの会話はほとんどありません。実の父娘のような絆で結ばれているがゆえ、のようです。中盤からドラマが動き出します。といっても少しだけ。牛の治療にやってきた獣医から仕事の手伝いを頼まれるのです。実は彼女、獣医を夢見たことがあり、もう一度その気持ちに火が灯ります。さらに、教会で出会ったマイクという青年とのほのかな恋。人生の新たな期待と不安の一方で、叔父さんと離れることにも辛さがあり、ゆれるクリスの姿は、小津の映画『晩春』の原節子を彷彿とさせます。実の叔父と姪が演じているそうです。姪のクリスは女優イェデ・スナゴ―ですが、叔父役のペーダ・ハンセン・テューセンは酪農家で演技未経験。監督が取材で彼の農場に滞在したときに、本物の持つ魅力はなににもに代えがたいと起用を思い立ったそうです。撮影も実際にその農場で行われました。まるでドキュメンタリーのような作り。ハンディカメラを固定し、引き気味の自然な映像は、まるで彼らの生活をそっと、横で見守っているようです。首都圏は、1/29(金)からYEBISU GARDEN CINEMA他で公開。中部は、2/13(土)から名演小劇場で公開。関西は、2/5(金)からテアトル梅田で公開。
2021年01月24日今週の「おとな向け映画ガイド」ラピュタのモデルを舞台にした『天空の結婚式』と、イ・ビョンホンの衝撃作『KCIA 南山の部長たち』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明21/1/17(日)イラストレーション:高松啓二今週末(1/22・23)のロードショー公開は10本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『さんかく窓の外側は夜』の1本、中規模公開とミニシアター系の作品が9本です。緊急事態宣言対応で公開本数が少なくなっていますが、選りすぐりの2本をご紹介します。『天空の結婚式』若いカップルが親の反対でつきあえない、結婚できない、というのはシェイクスピアの時代からトラブルの火種です。古くは身分違い、家と家の仲が悪い、人種、宗教とか。いまなら、相手が同性だから、というのはあるかも。ベルリンに住むゲイのカップル、イタリア人のアントニオとパオロが主人公です。結婚を決めたふたりは、アントニオの両親に報告するため、帰国します。驚く親たち。父親は猛反対です。ところが母親は2つの条件がクリアできれば賛成するといいだします。そのひとつは、彼らの住んでいる村で結婚式をあげること。アントニオの故郷、それは、チヴィタ・ディ・バニョレージョという、断崖絶壁の上に残された小さな集落、あの『天空の城ラピュタ』のモデルともいわれる「天空の村」なのです。父はその村長。観光客だけでなく、難民の受け入れにも理解をしめすリベラル派ですが、頑固です。母親は息子が選んだ人なら間違いない、嫁姑争いもなさそう、と直感したのか、この「天空の結婚式」をモーレツに進めていきます。ママが考えたとびきりロマンチックな結婚式、そしてこの絶景の村がなんといっても最高の舞台です。イタリアでは、2016年に同性カップルの結婚についての権利が認められたこともあり、映画は話題作として大ヒットしています。元は『My Big Gay Italian Wedding』というオフ・ブロードウェイのお芝居。それをイタリア・コメディの旗手、アレッサンドロ・ジェノベージが映画化しました。カップルをとりまく周囲の人間群像とそのコミカルな大騒ぎも楽しい、おおらかで、ハッピーなロマンチック・コメディです。首都圏は、1/22(金)からYEBISU GARDEN CINEMA他で公開。中部は、2/19(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、3/12(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。。『KCIA 南山の部長たち』1979年10月26日。調べてみると、日本では『3年B組金八先生』の第1回が放送された日でした。総理大臣は大平正芳。決して大昔のことではありません。この日、韓国では、歴史的大事件が起きていました。現職のパク・チョンヒ大統領が側近の中央情報部(KCIA)部長キム・ジェギュに射殺されたのです。この事件の顛末を描きベストセラーになったノンフィクションの映画化。驚きを禁じえない作品です。最近の韓国映画は戦後史の暗部にきりこむ社会派の力作が多く、しかも興行的にも成功しています。光州事件を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』、民主化闘争の『1987、ある闘いの真実』、対北朝鮮スパイ戦『工作 黒金星と呼ばれた男』……。そして、韓国最大の政治スキャンダルに挑んだこの作品、2020年、興行収入第1位という大ヒットとなりました。主演にトップスター、イ・ビョンホンを起用したこと、これが大成功した要因のひとつです。映画は、事件にいたる40日間を、キム部長の動きを中心に追っていきます。米下院議会聴聞会でパク大統領の汚職を暴露した前任部長の“始末”や、大統領の側近である警備室長と忠誠心争いの“暗闘”など……なぜ惨劇に至ったかを浮き彫りにします。大統領とキム部長は1960年の軍事クーデターの仲間。日本陸軍とも関係のある元軍人です。スパイさながらのハードなアクションや銃器の手慣れた扱いも、キャリアから考えるとありうる動き。日本がらみのエピソードも、うなずけます。
2021年01月17日多くの優れた絵本作家を輩出してきたスイスから、エルンスト・クライドルフ、ハンス・フィッシャー、フェリックス・ホフマンの3人の巨匠の貴重な原画やリトグラフ、手描き絵本など約150点を、長野県の「小さな絵本美術館」協力のもと一堂に展示します。フェリックス・ホフマン 絵本『おおかみと七ひきのこやぎ』より小さな絵本美術館蔵 ©フェリックス・ホフマンヨーロッパの絵本の中で、スイス作家の作品は線や色彩の美しさで人気を獲得してきました。エルンスト・クライドルフ(1863~1956年)は、アルプスの草花を擬人化した「花のメルヘン」などの作品で知られ、ヨーロッパの絵本作家の先駆者となりました。また「こねこのぴっち」などの作品で世界中の子どもたちに愛されるハンス・フィッシャー(1909~1958年)の絵は流麗な線によって、生き生きと躍動しています。さらに、フェリックス・ホフマン(1911~1975年)は、病気だった小さなわが子に贈った「おおかみと七ひきのこやぎ」など、優しさと厳しさが共存する絵画の世界が愛されてきました。本展は、スイスを代表する3人の巨匠を取り上げ、長野県にある「小さな絵本美術館」の協力で、貴重な原画やリトグラフなど約150点を一堂に紹介します。おなじみのグリム童話や、スイスの伝説…。同国の美しい風土、歴史、そして世界共通である親の愛情から生まれたスイス絵本の魅力、そのどこか怖くて楽しい世界へといざないます。●開催概要(1)タイトル こわくて、たのしいスイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~(2)会 場 神戸ファッション美術館(神戸市東灘区向洋町中2の9の1)電話078・858・0050 FAX078・858・0058(3)開催期間 2021年1月30日(土)~3月28日(日)※新型コロナウイルス感染拡大の影響で変更の場合があります。(4)休館日 月曜日(5)開館時間 10時~18時(入館は17時30分まで)(6)観覧料 一般1000(800)円65歳以上・大学生500(400)円高校生以下無料※神戸市内在住の65歳以上の方は無料※カッコ内は有料入館者30人以上の団体料金※小学生以下は保護者(大学生以上)の同伴が必要※神戸ゆかりの美術館、小磯記念美術館の当日入館券(半券)で割引(7)主 催 神戸ファッション美術館、神戸新聞社、毎日新聞社(8)後 援 在日スイス大使館、サンテレビジョン、ラジオ関西(9)協 力 小さな絵本美術館、アサヒビール大山崎山荘美術館(10)展示協力 大阪樟蔭女子大学●展示構成〈グリム童話〉・エルンスト・クライドルフ「ふゆのはなし」〈白雪姫との別れ〉・ハンス・フィッシャー「ブレーメンのおんがくたい」・フェリックス・ホフマン「グリムの昔話」〈スイスの世界〉・エルンスト・クライドルフ「花のメルヘン」・ハンス・フィッシャー「こねこのぴっち」・フェリックス・ホフマン「スイスの伝説」エルンスト・クライドルフ 絵本『花のメルヘン』より小さな絵本美術館蔵エルンスト・クライドルフ 絵本『花を棲みかに』より小さな絵本美術館蔵ハンス・フィッシャー 絵本『こねこのぴっち』より小さな絵本美術館蔵 ©ハンス・フィッシャーハンス・フィッシャー 絵本『ブレーメンのおんがくたい』より小さな絵本美術館蔵 ©ハンス・フィッシャーフェリックス・ホフマン 絵本『おおかみと七ひきのこやぎ』より小さな絵本美術館蔵 ©フェリックス・ホフマン●お問い合わせ神戸ファッション美術館(指定管理者:神戸新聞地域創造・神戸新聞事業社共同事業体)TEL:078-858-0050URL::press@fashionmuseum.or.jp●ご来館者には下記をアナウンスして対応し、安全を第一に運営してまいります。・入館時の体温測定にご協力ください。咳、発熱など体調不良の症状がある方は、ご来館をご遠慮いただきますようお願いいたします。・マスク着用をお願いいたします。咳エチケットをお守りください。・手指消毒にご協力ください。館内に消毒液をご用意しております。・館内では会話をお控えいただき、お静かにご鑑賞ください。・近くの方とできるだけ間隔をおいて、ご鑑賞ください。このほか状況により、入館制限・禁止をお願いする場合があります。・感染予防や拡散防止のため、美術館スタッフはマスクを着用しています。企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2021年01月09日今週の「おとな向け映画ガイド」東山紀之主演の傑作ブラックコメディと、カッコ良すぎるスタントウーマンのドキュメンタリー、2作品をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明21/1/3(日)イラストレーション:高松啓二今週末のロードショー公開は15本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『おとなの事情 スマホをのぞいたら』『銀魂 THE FINAL』『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 前編』の3本。中規模公開とミニシアター系の作品が12本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』映画製作の裏方を描いたドキュメンタリーは数々作られていますが、このテーマは初めてではないでしょうか。アクションシーンのスタント・ウーマン、命知らずの女性たちにスポットをあてています。テレビの『ワンダーウーマン』や『チャーリーズ・エンジェル』、女性のアクションが人気をよんだあたりから、需要も志願者も増えたようです。最近ではマーベルものや『ワイルド・スピード』シリーズ、SFアクションなど、たしかにCGとは一線を画す彼女らの活躍には目をみはるものがあります。そんなスタントウーマンの歴史を切り開いてきたベテランから現役まで30人以上の証言と、出演作のフッテージ、さらにこの映画のために実演してくれた映像などで、彼女たちの世界を知ることができます。エイプリル・ライトという女性監督の作品です。奥が深いと驚くのは、専門分野が存在すること。ビルから落ちるのはこの人が名人とか、カーアクションならまかせて、逆に車にはねられるプロもいたり。それぞれが独自にトレーニング方法を開発し、研鑽をおこたりません。キックボクシング、太極拳、体操、ダンス……、様々な分野を志していた人が、先駆者者たちの活躍に刺激を受け、この世界に流入してきたのです。この映画がきっかけとなってスタント・ウーマンをめざす女性も多いのでは。それぐらい、カッコよくて生き生きとしています。『おとなの事情スマホをのぞいたら』イタリアのオリジナル版、韓国版、フランス・ベルギー版(Netflix)と観てきて、日本版ができないか、と楽しみにしていました。それがついに完成。しかも東山紀之が主演というではありませんか。本国で大ヒットしたあと、すでに世界中で18本が公開または製作発表されていて、日本版は19本目なのだそうです。世界共通のストーリー設定はこんな風ー。月食の夜。3組の夫婦と1人の独身男、職業もライフスタイルもちがう7人が年に一度集まる食事会の席で、スマホを使ったゲームが始まります。全員のスマホを机の上に出し、これから届くメールやSNSの通知、電話をすべてさらけだすというもの。「やましいことがないなら、OKでしょ?」と 言われると、皆、断る理由がみつからず、内心ハラハラドキドキでゲーム開始、です。やがて、それぞれの隠していたとんでもない事実が明らかになってしまい……。イタリア版『おとなの事情』は、40代後半の男女が幼馴染の食事会に集まってパスタやワインでの宴、でした。フランス・ベルギー版『ザ・ゲーム〜赤裸々な宴〜』はフォアグラのミルク煮?がでてきたり、食後のチーズがおいしそうでした。韓国版『完璧な他人』は同郷の仲間たちが新居披露で郷里の料理とマッコリ、チャミスル。集まる場所、食事のちがいなど、各国特有のライフスタイルが反映されています。さて日本版。脚本はドラマ『ひよっこ』などの岡田惠和。7人がなぜ、定期的に集まることになったかが大きな意味を持ちます。会場も食事もいまの日本を感じさせる設定。なるほど、と納得です。益岡徹と鈴木保奈美、田口浩正と常盤貴子、淵上泰史と木南晴夏、以上がカップル。三平くんというややコミカルで気弱な独身男の役を東山紀之が演じるというのはアイデア、ですね。常盤貴子の大胆なあのシーンとか、鈴木保奈美の開き直った表情とか……、秘密がばれたときの、それぞれのリアクションに「おとなの事情」がにじみでています。
2021年01月03日長男が1歳のころ、市の支援センターでおこなわれている絵本の読み聞かせに連れて行きました。しかし他の子たちが絵本に夢中になっているなか、長男だけは走り回りまったく興味がない様子……。長男が絵本に興味を持つために、私が取り組んだことをお話ししたいと思います。 読み聞かせに興味のない長男…私自身絵本が大好きな子どもだったのもあり、長男にも絵本を好きになってほしいと思っていました。絵本を読み聞かせすることで語彙力や想像力を育むと聞いたことがあったので、自宅でも積極的に読み聞かせをしていました。しかし長男は絵本にあまり興味がない様子……。 そこで市の支援センターで週に1回おこなわれている絵本の読み聞かせ会に連れて行ったのですが、なんと長男は脱走。本棚に並んだ絵本を出して遊び始めたのです。 読み聞かせの回数を増やしてみることにどうにかして絵本を好きになってほしかった私は、毎週支援センターの読み聞かせ会に長男を連れて行きました。それだけでなく、図書館でおこなわれている読み聞かせ会に行ったり、自宅での読み聞かせの回数を増やしました。しかし読み聞かせ会に行っても、毎回のように脱走する長男……。 そこで私は支援センターの先生に、長男のことを相談しました。すると「毎回連れてきているだけでもすごいことだよ」と励ましてもらえたのです。その言葉を励みに、私は読み聞かせ会に通うことを続けました。 半年読み聞かせを続けてようやく成果が!読み聞かせ会に通うものの、長男の脱走は半年間続きました。しかし半年を過ぎたころに、奇跡が起きたのです。じっと座っていられなかった長男が、先生の読み聞かせを聞くようになりました。最前列に座って絵本を指し、登場する人物や動物に反応するようになったのです。 自宅での読み聞かせもあまり興味がなさそうだったのに、自分から絵本を選んで持ってくるようになりました。支援センターの先生からも「ママが頑張って続けたからだよ」と褒めていただけました。 長男は読み聞かせの機会を増やすことで絵本が大好きになりました。諦めずに絵本に触れる時間を持ち続けたことで、絵本を好きになってくれたのかなと思っています。現在小学校3年生になった長男は、2歳の弟に読み聞かせをしてあげることも! これからも子どもたちには、たくさんの絵や言葉に触れてもらいたいと願っています。 監修/助産師REIKO 著者:河津明香2男1女の母。旅行代理店勤務をしながらの育児を経て、フリーランスのライターへ転身。現在は発達障害の長男のサポートをおこないながら、旅行・育児・生活雑貨などの記事を中心に執筆。
2021年01月01日今週の「おとな向け映画ガイド」新年1月1日公開!あのゾンビ大作続編『新 感染半島 ファイナル・ステージ』と、東京が舞台の香港アクション『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/12/27(日)イラストレーション:高松啓二元日と2日に公開される作品は6本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開されるのは『新 感染半島 ファイナル・ステージ』の1本。中規模公開とミニシアター系の作品が5本です。その中からスリリングな2本をご紹介。『新 感染半島 ファイナル・ステージ』前作では、謎のウィルスによって国民が次々とゾンビ化し、1日で国の機能が停止してしまった韓国。あれから4年。ゾンビがいなくなったわけではありません。まだ立ち入り禁止は続いています。国に残された資産も凍結状態。その資産金目当てに再上陸をはかった命知らずがいて……という新展開です。主人公は命からがら香港に逃げ延びた元韓国軍人ジョンソク。これを、是枝裕和作品の出演も予定されている国際派スター、カン・ドンウォンが演じています。香港では、ましな仕事もなく、お酒を飲んでいても、韓国人とわかると、出ていけ、と罵声をあびせかけられます(コロナ感染でも欧米ではアジア人に対し当初似たようなことがありました……ね)。そんな生活の中で自暴自棄になっていた彼に、香港のギャングから声がかかります。韓国内に置き去られた現ナマ2000万ドルを回収してくれば分け前は半分。危険この上ないやばい仕事です。同じようにかき集められた命知らずのメンバーは5人。夜陰に乗じてひそかに入国します。監督・脚本は前作と同じヨン・サンホ。韓国内にはゾンビから逃れて生き延びている人たちもわずかにいるのですが、631部隊と名付けられた私兵組織が牛耳っているという設定です。ゾンビと狂気の集団、両者に挟まれたなかで展開されるノンストップ・サバイバル・アクション。特に廃墟のなか、薄汚れた車でのカーチェイスは『マッドマックス』シリーズを連想させる迫力です。ジョンソクとともに立ち向かうのは、訳ありの生存家族、ミンジョン母娘。母役は石田ゆり子にちょっと似たイ・ジョンヒョン、そして14歳の少女ながら、超絶ドライビング・テクニックで場をさらうイ・レに、必ずや魅了されるはずです『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』同じタイトルですが、サモ・ハン・キンポー作品の続編ではありません。原題も同じですので、オマージュを捧げているのかもしれません。何といっても、主演がハリウッドでも活躍する現代中国のトップ・アクションスター、ドニー・イェン。監督は『るろうに剣心』などを手がけ、香港でもアクション監督として大活躍する谷垣健治です。内容は相当ふざけています。その香港映画らしい力いっぱいのおふざけぶりがオススメの理由です。香港警察のやり手刑事フクロン。犯人逮捕の成績は優秀なのですが、あちこちぶっ壊すし、熱血が過ぎてついに閑職に左遷されます。部下たちはそれを悲しむかと思いきや、やっと休みがとれると大喜び。つまり人望がないのです。その後、フクロンは仕事が暇なあまり、暴飲暴食に走って、なんと体重120キロのおデブに。そんな彼に、出世した昔の仲間が、ある特別ミッションの仕事を振ってきます。うまくいけば刑事にもどれるかもしれません。その仕事とは、香港で逮捕された日本のヤクザを東京へ護送することです。冒頭の15分は、きびきびとしたカー・アクションとカンフー・シーンの連続。舞台が日本に移ってからは、コミカル度数がパワーアップします。日本からは竹中直人、渡辺哲、注目のダンサー&アクション俳優・丞威らが出演。竹中さんはおなじみのカツラを使ったギャグを繰り出し、楽しそうに演じています。香港の人気監督ウォン・ジンが、フクロンの元先輩刑事いまは歌舞伎町の甘栗屋という、カンフー使いの重要な役で大活躍です。撮影は豊洲移転前の築地などでもロケをしているようですが、歌舞伎町の飲み屋街はかなり精巧なセット、ヘリも使った東京タワーでのアクションシーン、我々はその高さをよく知っているだけに、ど迫力です。
2020年12月27日絵本専門士として絵本を紹介する中で、図書館の利用をすすめることがよくあります。近所の図書館もどんどん活用していってほしいのですが、全国には魅力的な図書施設がたくさん。今回は、私のおすすめの西日本の3施設をご紹介します。ぜひ親子で絵本のある空間をたっぷり楽しんでください。今年オープン!まさに絵本の森「こども本の森 中ノ島」(大阪府大阪市)「こども本の森 中ノ島」は、今年の夏にオープンした大阪市中ノ島公園内にできた施設。壁面全体が本棚になっていて、そこに絵本がぎっしり並んでいる様は圧巻です。360度本に囲まれることであらゆる角度から本に出合うことができるように作られているそうです。蔵書はなんと1万8000冊!また、建築家安藤忠雄さんが設計した建物は、どこでも座れる大階段や階段裏の背の低い空間、天井光の差し込む円筒空間、本棚に埋め込まれた小さなベンチなど、子ども達が絵本を開いてその世界に入りやすい空間に工夫されています。子どもに空間を自由に歩かせてみましょう「こども本の森中ノ島」に行ったら、まずは子どもがその空間にいることを楽しめるよう、自由に歩かせてみるのがいいと思います。何がどう並んでいるかわからない中で、壁一面絵本の世界を子どもの感性で味わってもらいましょう。本の貸し出しはしていませんが、中之島公園内で、1冊だけ貸出の手続きをして持出して読むことができます。天気のいい日はピクニック気分で絵本を広げるのもいいですね。入場は事前予約制でゆったり現在は予約制で入場制限を設けているので、事前の申込が必要ですが、その分ゆったりと絵本のある空間を満喫することができます。人気施設ですので、申込開始日をチェックして早めに予定をたてましょう。※2020年12月23日現在は2021年1月14日までの予約が終了しています。次回の予約に関しては下記の公式ホームページからご確認ください世界最大規模のマンガ数!絵本も楽しめる「京都国際マンガミュージアム」(京都府京都市)「京都国際マンガミュージアム」は、名前の通りマンガがいっぱい!マンガの単行本が約5万冊、古いマンガ雑誌や貴重な資料が約25万点と世界最大規模の品ぞろえ。マンガを読むのはもちろん、常設展やワークショップも充実していて、見る・描く・聞く・作るなど、マンガを多方面から満喫できます。マンガということで小さな子どもは楽しめない?と思われがちですが、実はマンガだけじゃないんです。ミュージアム内のこども図書館には、小さな子ども達も楽しめる絵本を中心に約3000冊が並んでいます。そのため、地元では乳幼児親子がゆっくりと過ごせる場として活用されているんですよ。レトロな空間で大人も子どももくつろげる昭和初期に建てたられたという小学校校舎を活用した建物は、レトロで懐かしい雰囲気。芝生の敷き詰められた広い校庭も魅力です。絵本やマンガを持ち出して、芝生にゴロンとしながら読むこともできますよ。なお、ミュージアムショップ以外の館内は入場料が必要です。こども図書館は、靴をぬいで入る空間です。現在は清掃・消毒のため午後の時間帯で利用できない時間があるとのこと「かみしばいがはじまるよ~」の掛け声でスタートする昔ながらの紙芝居の時間。コロナ対策もしっかりとされているので、安心してお子さんとおはなしの世界に入り込みましょう!国内で発行された児童書を全点購入している「岡山県立図書館」(岡山県岡山市)「岡山県立図書館」は、国内で発行された児童書を全点購入しています。人気の絵本は図書館で利用可能になった途端、予約でいっぱいでなかなか読めなかったりするのですが、当館は、発行から1年間は研究用として貸出をしない形で所蔵されているため、いつでも手に取ることができます。また、必要に応じて貸出できる新刊書も購入されています。その他、季節や行事、話題のテーマなど、バラエティに富んだ展示を行っていて、楽しい本をたくさん手に取ることができます。感染症対策を取りながら、おはなし会を定期的に催しており、人気のイベントとなっています。無料で利用できるのもうれしいですね。ほかにもたくさんおすすめの図書施設があるのですが、現在は感染拡大防止のため閉館中のところも。今後も感染症対策をしっかりとりながら、おうち時間を充実するきっかけとして、絵本に囲まれた施設をたっぷり活用してほしいと思います。【年末年始の開館時間、予約、入場料など詳しくは公式ホームページをご確認ください】■■■<文・写真:ライター鳥山由紀>
2020年12月23日もうすぐクリスマス。おうちにツリーを飾ったり、ケーキの予約をしたり、気分が盛り上がっているころでは? そんな今、読んでほしいクリスマスの絵本を、人気のベストセラーから今年の新作、不朽の名作まで、一生の宝物にしたいものをラインナップ。まずは子どもの年齢別で、そして大人も一緒に読める、素敵なクリスマス物語の数々をお届けします。【クリスマス絵本おすすめの対象年齢】10歳~1歳くらい22歳~3歳くらい34歳~5歳くらい46歳くらい~5ママも一緒に 1.0歳~1歳くらい0歳~1歳くらいの子どもは、当然ながら内容をすべて理解しているわけではありません。だからこそ体中の色々な感覚を使って絵本を楽しんでいます。目に鮮やかな色彩、心地の良いリズムの言葉、型抜きの凹凸の感触、それらの刺激が好奇心を育てます。 クリスマス絵本#01『さんかくサンタ』手づくりの12色の色紙を、さんかく・まる・しかくで切ったり貼ったりして完成した、愛らしいクリスマスのおはなし。カラフルなイラストにリズミカルな言葉が、子どもの気持ちをぐっとつかみます。あたたかみのある手触り感は、tupera tuperaならでは。『さんかくサンタ』作:tupera tupera(絵本館) クリスマス絵本#02『クリスマスいないないばあ!』子どもが大好きな「いないいない… ばあ!」をクリスマスのサンタさんやゆきだるまさんたちが披露。ポップなイラストにあるカラフルなフェルトをめくって「いないいない… ばあ!」。さいごにかくれているのは「きみ!」という仕掛けで、思わず笑顔に!『クリスマスいないないばあ!』著:インゲラ・アリアニウス(岩崎書店) クリスマス絵本#03『クリスマスのかくれんぼ』赤ちゃんに大人気の型抜きしかけ絵本のシリーズ10作目。ページの中にかくれんぼしているクリスマスツリー、靴下、サンタクロースなどにくりぬかれた型抜きのページをあてて遊ぶ仕組み。発見するたびに、子どもの気分も高まり楽しく読み進められる。『クリスマスのかくれんぼ』作:いしかわこうじ(ポプラ社) 2.2歳~3歳くらい話せる言葉も多くなり、意思表示をするようになる2歳。「いやいや期」と合わせて、笑ったり、泣いたり、怒ったり、とにかく忙しい年齢です。また、3歳になると知識欲も強くなり「なんで?」と、ママやパパを質問攻めにすることも。観察力や想像力がついてくるので、絵本の楽しみ方がぐんと広がります。 クリスマス絵本#04『サンタさんどこにいるの?』仕掛けを動かすと、愛らしいサンタさんが「ここじゃよ!」と現れるユニークな絵本。簡単なので0歳からも楽しめますが、2歳くらいになると自分で仕掛けを動かすことにはまりそう。「サンタさんはどこかな?」というママやパパの問いかけに、ノリノリで答えてくれるはず。『サンタさんどこにいるの?』作:ひらぎみつえ(ぽるぷ出版) クリスマス絵本#05『クリスマスのおばけ』「うれしい、うれしいクリスマス。だけど、おばけにとってはどうかしら?」と、女の子がクリスマスの日におばけのことを思います。そして、おばけがさみしくないようにおもてなしの準備。そんなふうに自分が楽しい時も誰かのことを思いやれるって素敵。優しい気持ちが育まれる絵本。『クリスマスのおばけ』作:せな けいこ(ポプラ社) クリスマス絵本#06『サンタのおまじない』この絵本は、楽しい“切り絵”の絵本。野菜の形をした色紙が、『いち にい サンタ!』と おまじないを言って、どんどんハサミを入れていくとまさかのものに。その変わりようは見事。これは大人でも感激してしまいます。「この野菜は、何になるんだろう?」と、親子で考えるのも楽しい。『サンタのおまじない』作:菊地 清(山房) 3.4歳~5歳くらい身体も心も大きく成長する4~5歳くらいの時期に読む、絵本の存在は大! ストーリーや絵に込められたメッセージを自分なりに理解し、感じ取っています。色々な感情に対応してあげられるよう、様々なジャンルの絵本を読んであげるのがおすすめ。 クリスマス絵本#07『あしたはクリスマス』今年発売のクリスマス絵本。タイトルは『あしたはクリスマス』。… そう、クリスマスイブのお話。澄んだ青色が美しいイラストと、アナウンサーの久保純子さんが翻訳した心温まるお話に癒される一冊。表紙には透明なジェルとキラキラ光る雪のパーツが入っていて、まるでスノードームのように遊べる。『あしたはクリスマス』絵・ネッド・テイラー、訳・久保純子(文化出版局) クリスマス絵本#08『サン・サン・サンタひみつきち』ママやパパが子どもだった頃から、日本中の子どもたちが愛読している“かこさとし”作品。こちらは1980年に描かれた名作を新装丁で復刻した大型絵本。北極にある誰も知らない大きな工場。そこでは、あのサンタクロースの奇想天外な“ほんとうの姿”が…… そして、画面いっぱいのオモチャにも目が釘付け!『サン・サン・サンタひみつきち』作:かこさとし(白泉社) クリスマス絵本#09『はたらくくるまたちのクリスマス』大人気“はたらくくるま”シリーズにクリスマスのお話が登場! 工事現場で今年最後の大仕事に励むブルドーザーやショベルカー、ミキサー車、ダンプカー、クレーン車たち……働きものの彼らに待っていたのは、とっても素敵なプレゼントでした。乗りもの大好きな子どもは夢中で読むはず。『はたらくくるまたちのクリスマス』作:シェリー・ダスキー・リンカー、絵:AG・フォード、訳:福本友美子(ひさかたチャイルド) クリスマス絵本#10『サンタおじさんのいねむり』プレゼント配りの途中で眠ってしまったサンタさんの代わりに、森の動物たちが大活躍。最後に目覚めたサンタのおじさんへの、森の動物たちからのメッセージにほっこり。助け合うことや善意のあたたかさが、淡い色彩の温かみのある絵とあわせて、ほのぼのと伝わる絵本。やさしい気持ちを育ててくれる。『サンタおじさんのいねむり』作:ルイーズ・ファチオ、絵:柿本幸造、訳:前田三恵子(偕成社) 4.6歳くらい~もうすぐ小学1年生になる6歳。個性や好みをはっきり主張する一方、環境の変化に対応する順応性も出てきます。自分のまわりの世界が大きく広がるので、他者との信頼関係や協調について考えるもの良さそう。どんどん長いお話を聞けるようになり、絵本から読み物へシフトしていく時期でもあります。 クリスマス絵本#11『おおきいツリーちいさいツリー』 自分のお家にちょうどよいサイズにするために先っぽを切られたツリーが、誰かのお家のツリーになっていく。人や動物、みんなのお家の飾りつけもそれぞれで可愛らしく、見どころのひとつです。4歳~5歳からも読めますが、6歳くらいになると繊細なイラストも楽しめるように。『おおきいツリー ちいさいツリー』作:ロバート・バリー、訳:光吉夏弥(大日本図書) クリスマス絵本#12『さむがりのサンタ』「やれやれまたクリスマスか! 」面倒くさそうに目を覚ましたのはサンタクロース。寒さに愚痴を言いながら町の子どもたちにプレゼントを配ります。皮肉屋だけど実はやさしい、人間味あふれるサンタクロースは、ユーモアが分かる年齢にぴったり。コマ割りで進んでいくので、字の多い本や漫画へステップアップさせるきっかけづくりにも。『さむがりやのサンタ』作・絵:レイモンド・ブリッグズ、訳:菅原啓州(福音館書店) クリスマス絵本#13『サンタさんのお仕事マニュアル』サンタさんのお仕事が楽になるようにそしてトラブルが減るようにお助けエルフたちがマニュアルをつくりました。たとえば、トナカイのあやつり方、子どもに見つかった時の対応、身だしなみ……その内容は子どもだけじゃなく大人も知りたかったワクワクする内容。『サンタさんのお仕事マニュアル』文:クリストファー・エッジ、絵:ティム・ハッチンソン他(大日本絵画) クリスマス絵本#14『サンタクロースっているの?ほんとうのことをおしえてください』「サンタクロースっているの? 本当のことをおしえて」。子どもにそう聞かれたら、あなたはなんと答えますか? 1897年、8歳の少女がニューヨークの新聞社に送った質問に、記者が社説に掲載する形で答えた世界的名文を絵本化したもの。ママ、パパになった大人にも響く名作。『サンタクロースっているの?ほんとうのことをおしえてください』文:フランシス・P・チャーチ、絵・訳:いもとようこ(金の星社) 5.ママも一緒に大人になってから絵本を開くと、子どもの頃とはまた違った感動がありますよね。言葉が心に染みたり、美しい絵に見惚れたり。絵本は子どもだけじゃなく、大人の心も動かすもの。いくつになっても、発見や学び、ユーモアや癒しなど、さまざまなものに気づくきっかけを絵本は与えてくれます。 クリスマス絵本#15『もみのきそのみをかざりなさい』夜空に光るひとつの星の絵に添えられた言葉は「ほし めざめなさい」。そこから始まる21枚の味わい深い絵とユニークな言葉には、時代や国を超えて愛される五味太郎さんの神髄が詰まっています。大人にこそ読んでほしい素敵な絵本。『もみのきそのみをかざりなさい』作:五味太郎(アノニマ・スタジオ) クリスマス絵本#16『サンタクロースのおてつだい』全編、写真で綴られるクリスマスの絵本。この写真を撮っているのは写真家のパパ、文章を書いているのはスタイリストのママ。娘のオンヤとトナカイが一緒にいる姿からインスピレーションを受け、この物語を考えたんだとか。真っ赤なほっぺたで、雪の中を行くオンヤの可愛さもたまらない!『サンタクロースのおてつだい』文:ロリ・エベルト、写真:ペール・ブライハーゲン、訳:なかがわちひろ(ポプラ社) クリスマス絵本#17『モミの木』数々の名作を遺した童話作家アンデルセンが手掛けたクリスマスのお話。モミの木の思いや願いが切なく、しんみりと心に響きます。マリメッコのデザイナー、サンナ・アンヌッカのイラストも美しく、宝物にしたい絵本。大切な人への贈り物にもよさそう。『モミの木』作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン、絵:サンナ・アンヌッカ 、訳:小宮由 (アノニマ・スタジオ)photography/Chiharu Fukutomi
2020年12月21日今週の「おとな向け映画ガイド」アカデミー賞有力候補作がこんなにも!ー『Mank/マンク』『ミッドナイト・スカイ』など劇場公開されたNetflixオリジナル4作品をオススメ。ぴあ編集部 坂口英明20/12/20(日)イラストレーション:高松啓二今週末のロードショー公開は11本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『劇場版ポケットモンスター ココ』『映画 えんとつ町のプペル』『ジョゼと虎と魚たち』の3本です。今回ご紹介するのは、いま話題のNetflixオリジナル作品4本。館数は少ないですが、今なら映画館でご覧になれます。この年末年始は、おうちでゆっくり配信を観るという楽しみ方も。『ミッドナイト・スカイ』ジョージ・クルーニー主演・監督・製作、世界の静かな終末を描くSF大作です。2049年、地球は壊滅の危機にあります。クルーニーの役は、避難をせずに北極圏の天文台にひとり残った老宇宙物理学者オーガスティン。食料の備蓄もあるこの観測施設で死を待つ状態です。施設内で、家族とはぐれ取り残された少女アイリスを見つけるのですが、彼女を救うすべもありません。ある日彼は、木星の探査を終え地球に帰還する宇宙船からの無線をキャッチします。彼らは、地球との連絡が途絶え、混乱状態のなか、情報を求めてあてのない発信を続けていたのです。オーガスティンは、よりよい通信設備のある遠く離れた別の基地へ氷原のなかをアイリスと移動します。映画は、そのサバイバルの旅と、宇宙船の地球帰還を並行して描いていきます。原作はリリー・ブルックス=ダルトンの『世界の終わりの天文台』。なぜ地球は滅亡するのか?木星探査のミッションは? 宇宙船内の人間関係は?オーガスティンはなぜ残ったのか? 少女アイリスの謎?などなど、原作とは異なる部分もあったり、観た人の想像力に委ねられるところも多くて、映画を観終わっても話題はつきません。氷とオーロラの北極圏、宇宙空間でのスリリングな船外活動シーンや、船内のライフスタイル、といった映像の見どころも盛りだくさんです。12/11(金)から劇場公開。ヒューマントラストシネマ渋谷他で上映中。12/23(水)からNetflixで配信開始。『ザ・プロム』ブロードウェイとハイスクール・ラブコメをガッチャンコさせた良いとこ取りミュージカル。しかもメリル・ストリープ、ニコール・キッドマンら大物俳優を起用するという大盤振る舞いの、ゴージャスなNetflix映画です。ルーズベルト大統領夫人を主人公にした新作ブロードウェイ・ミュジーカル『エレノア』、劇場前の派手なキャンペーンで華々しく初日を迎えるのですが、酷評であえなくクローズ。やけ気味の主演女優ディーディー(メリル・ストリープ)とその仲間たちは起死回生のアイデアをSNSでみつけます。それは、インディアナ州の田舎町の高校で、同性の恋人とプロム(卒業パーティ)に参加する予定の女子高校生がいるため、PTAがプロムそのものを中止したという記事。この女子高生をブロードウェイのスターが応援しよう、というわけです。ディーディーたちの出現に、現地は大騒ぎ。監督は学園シリーズ『glee グリー』のライアン・マーフィ。女子高生エマを演じる新人ジョー・エレン・ペルマンは、どこか『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンを彷彿とさせます。学園ミュージカルの躍動感とベテランたちの円熟の芸の見事な交配。メリル・ストリープ扮する大女優のセルフ・パロディは余裕を感じますし、彼女や、ニコール・キッドマン、ジェームズ・コーデン(トニー賞受賞男優)らが歌い踊るシーンは一見の価値あり、です。12/4(金)から劇場公開。ヒューマントラストシネマ渋谷他で上映中。Netflixで配信中。『Mank/マンク』米アカデミー賞レースで最有力候補といわれている作品です。監督は『ゴーン・ガール』などのデヴィッド・フィンチャー。映画史上燦然と輝く名作中の名作『市民ケーン』は監督で主演のオーソン・ウェルズの功績が語られますが、この映画は脚本を担当した”マンク”こと、ハーマン・J・マンキーウィッツにスポットをあてた新味の“名作誕生秘話”になっています。脚本を担当したのはジャック・フィンチャー。監督の実父です。『市民ケーン』のモデル、新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストや、MGMの創始者メイヤー、『ラスト・タイクーン』の主人公、タルバーグなど、実在したハリウッド・レジェンドが実名で描かれています。1930年代、黄金時代のスタジオらしい熱病のような浮かれた雰囲気と、きらびやかな世界の裏で展開するどろどろとした人間模様。ハリウッド内幕ものの魅力にあふれています。評判をよんでいるひとつは映像です。モノクロの、まるで『市民ケーン』(1942年作品)と同じようなテイスト。様々な時制のシーンをインサートする構造は、フラッシュバックを多用した『市民ケーン』を連想させます。役者も高い評価を得ています。マンクを演じているのは、個性派ゲイリー・オールドマン。今回も、この酒びたりで、毒舌、ハリウッドの暴れん坊を魅力的に演じています。『市民ケーン』はいまや世界の映画ベスト1にも選ばれますが、当時、ハリウッドからは総スカンで、アカデミー賞9部門にノミネートされるも、受賞したのはこのマンキーウィッツ(とオーソン・ウェルズ)の脚本賞だけ。さて、『マンク』はどんな結果になりますか。11/20(金)から劇場公開。アップリンク吉祥寺他で上映中。Netflixで配信中。『シカゴ7裁判』1968年シカゴでおきたベトナム戦争への抗議デモ弾圧事件の、今からみると衝撃的で理不尽な裁判を描いた物語です。事件は、大統領選挙に向けて民主党全国大会が行われたシカゴにベトナム反戦の活動家が集結したなかで起きました。デモ隊と警察、州兵が対立し、なかば暴動状態となり、デモ指導者が逮捕されました。映画は翌年に行われた裁判を追いながら、事件の背景も描いていきます。シカゴ7とよばれた被告は、新左翼の学生団体SDSのリーダー、トム・ヘイデンや、政治に傾斜したヒッピー集団イッピーのアビー・ホフマンとジェリー・ルービン、非暴力の活動家など7人。さらに過激派ブラック・パンサーのリーダーも告発されていました。監督・脚本はアーロン・ソーキン。『ホワイトハウス』などTVシリーズのヒット脚本家として知られ、最近は映画監督として活躍しています。当初、この作品はスティーブン・スピルバーグが監督するといわれていました。トム・ヘイデンといえば、その後、カリフォルニア州議会議員となりますが、映画ファンにはよく知られた名前。ジェーン・フォンダの元夫です。この映画では、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのエディ・レッドメインが演じています。フランク・ランジェラが演じた超タカ派の裁判官の横暴、意外な証言者の登場(マイケル・キートン扮する前司法長官など)、被告団の内輪もめ……といった裁判ドラマならではの展開の面白さ。そして感動のラスト!アメリカではベトナム反戦、フランスの五月革命、日本では全共闘運動と、若者たちの関心が政治に向けられた時代の物語です。それが、トランプが再選をめざし、さまざまな政治対立が現出した今年に公開されたことに意味があります。これもアカデミー賞の有力候補の一本です。10/9(金)から劇場公開。アップリンク渋谷他で上映中。Netflixで配信中。
2020年12月20日今週の「おとな向け映画ガイド」おひとりさま のんちゃんの『私をくいとめて』と、フェリーニにオマージュ『声優夫婦の甘くない生活』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明20/12/13(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は17本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『約束のネバーランド』『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』『ワンダーウーマン 1984』『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』の4本。中規模公開とミニシアター系の作品が13本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『私をくいとめて』現代の独身女性を描かせたら大九明子監督はピカイチ、そう思います。同世代の女性からの圧倒的支持を受けた『勝手にふるえてろ』と同じ綿矢りさ原作で、しかも今回はアラサーの主人公に、のんちゃんを起用。女性たちは「あるある」と共感するでしょうし、おじさん含む男子は「ふーん、そういうものなのか」と納得できる映画です。今年の東京国際映画祭正式出品作。コロナ禍、コンペのなかったこの映画祭で唯一の賞、観客賞を受賞しています。おひとり様の気軽さは最高なのに、まわりからは、恋人はいないんだという視線のプレッシャーもある。そんな時に年下の男性からアプローチされたら……。さまざまな思いがめぐる脳内。のんちゃん扮する主人公みつこの味方は、力強いのにやさしくアドバイスをくれる癒し系男子「A」です。あ、これ空想上の存在ね。声だけの出演ですが、あの役者が、という起用です。もうひとりのスペシャル・キャストは、イタリアに住んでいる大学時代の友人役、橋本愛。テレビ『あまちゃん』以来の「潮騒のメモリー」コンビ復活は、心ときめきます。大九監督の細部への心配りにも注目です。例えば、みつこの家のベッドから台所の棚にあるもの、着ている服など。食事だって、ひとり鍋、ひとり焼肉、ひとりパンケーキとか。それからお酒!前作『甘いお酒でうがい』でもグッドチョイスでしたが、今回はイタリアのリモンチェロがいい感じ。さらに大滝詠一『君は天然色』がこんな風に流れるとは!大九作品の常連といってもいい前野朋哉は今回はあっと驚く役で出演。片桐はいりはみつこの上司役です。一瞬の出演で場をさらっていた古舘寛治が今回出ていないのは残念ですが、みつこが年下の多田くん(林遣都)と出会うシーンで登場する下町のコロッケ屋役・岡野陽一がいい味、染み出してます。『声優夫婦の甘くない生活』冷戦時代のソ連で、実は人気のあったハリウッドや西欧映画。そのロシア語吹き替えを担当していた有名なユダヤ人の声優夫婦が、1990年、ソ連崩壊の前年、悲願の地、イスラエルに移住します。新しい土地では、ゼロからのスタート。歳も60を超えていますし、そんなに「甘い生活」ではありません。そんななかでも、自分たちの才能を活かした仕事をみつけていきます。もちろん、声がいい、というのがこの夫婦のウリです。ポスター貼りのアルバイトのような仕事しかできない夫ヴィクトルにくらべ、世間知らずのように見える妻ラヤの方が新世界への順応力はあり、早速、高給の職に就きます。でも、それはかなり怪しげなテレフォン・セックスの店。夫も、なんとか映画のロシア語吹き替えに活路を見出しますが、海賊ビデオ用……。おたがい、仕事の内容をさすがにうちあけられません。ロシアからイスラエルに渡ったユダヤ人は2000年までに120万人を超し、人口の2割を占めたといいます。これなら海賊ビデオの需要もあるはずです。日本でもテレビのゴールデンタイムに外国映画を放送した時代は、アラン・ドロンは野沢那智さん、イーストウッドは山田康雄さんとか、吹き替えのスター声優がいましたが、この映画のヴィクトルもそんな声優さん。闇のレンタルビデオ屋で、モニターに映った『クレイマー、クレイマー』にあわせてセリフを完璧に語りだし、驚いた店の主人にその場でスカウトされます。そう、ダスティン・ホフマンの声は彼だったのです。エフゲニ・ルーマン監督はこの映画の主人公と同じ、家族とともに子供の頃にソ連から移住してきたひとり。脚本はその経験をもとに書かれています。ヴィクトルが尊敬するのはフェデリコ・フェリーニ、という設定も監督の趣味のようです。実際にフェリーニは『8 1/2』でモスクワ映画祭に参加したことがあり、そこでヴィクトルと会っていたかもしれないと、空想をふくらませました。随所に、フェリーニへのオマージュが感じられる映画です。
2020年12月13日おとな向け映画ガイド男がSMに目覚めるフィンランド映画『ブレスレス』と、タイのおしゃれな断捨離映画『ハッピー・オールド・イヤー』をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明20/12/06(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は18本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『新解釈・三國志』『天外者』の2本。中規模公開とミニシアター系の作品が16本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『ブレスレス』SMの世界は実はよくわからんのですが、もしも、ですよ。万が一、この主人公と同じことがおきたとしたら、私とて、その深みに足をつっこむやもしれません。2019年のカンヌ国際映画祭 監督週間に正式出品されたフィンランド映画です。SMを扱ったアート系フィルム。種類は違いますが、例えば、自動車事故に快感を覚えてしまう男女を描いたデヴィッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』なんて好きな人は興味を持たれると思います。最愛の妻を水の事故で亡くした優秀な外科医が、10年後、たまたま、本当に偶然、街のSMクラブに迷い込んでしまいます。客と間違われて、プレイにひきずりこまれ、首を絞められ、窒息し、意識を失いそうになる刹那、水死した妻の像が見えたのです。その一瞬の幻想が忘れられず、クラブを再訪し……、彼の生活は一変していきます。BDSMというそうです。B=ボンデージ(拘束)、D=ディシプリン(調教)、SM=サディズム&マゾヒズム。「お前は犬だ、這いつくばれ」とか「足をおなめ」とか。一応すべてでてきます。そのケがない人にとってはどこかブラック・ユーモアも感じます。でもこの主人公の場合、ちょっと切ない。主演のぺッカ・ストラングはフィンランドを代表する名優。この作品で、ユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞)の最優秀男優賞を受賞しています。昨年日本でも公開された『トム・オブ・フィンランド』で伝説のゲイアート・イラストレーター、ラークソネンを演じ、注目されました。彼をいたぶる女王様役のクリスタ・コソネンは『ブレードランナー2049』に起用された国際派。日本では来年公開予定の、ムーミンの原作者トーベ・ヤンソンの生涯を描いた『TOVE』にヤンソンの女性の恋人役で出演しています。首都圏は、12/11(金)からヒューマントラストシネマ渋谷で公開。中部は、1/9(土)から名演小劇場で公開。関西は、1/1(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。『ハッピー・オールド・イヤー』主人公のジーンは、スウェーデンの留学経験を鼻にかける駆け出しのデザイナーで、二言目には北欧風「ミニマルなスタイル」を口にする気取り屋さんです。でも、現実とは驚くほどのギャップが。母と兄の三人で暮らす実家は、かつて商売をしていたこともあり物で溢れかえっています。彼女は、その実家をリフォームし、1階を自分の仕事場にしようと一大決心するのです。無駄なものが一切なく、白一色、シンプルそのものの「ミニマルなオフィス」の実現。その前に立ちはだかる最大の難関は母です。楽器の修理店と音楽教室を営んでいた父は、家族を捨てて出ていったのですが、父愛用のピアノなど、母は思い出の品々を捨てようとしません。新年1月のリフォーム着工まで、時間はあと1カ月と少し。ミニマルな暮らしをめざし、ジーンの「断捨離」が始まります。もらったもの、借りたもの、買ったもの。ものは人の思い出につながります。捨てようとして、初めて、ジーンはこれまでの自分の行いや、目を背けていたこと、いま本当に何が必要なのかに気づきます。晴れて、自分と家族、友だちと元カレ、みんながハッピー・ニュー・イヤーとなるかどうか。タイ映画で、高校生がカンニングをビジネスにしようとする『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』という傑作がありました。そのチームGDH559が製作。同作で主演したチュティモン・ジョンジャルーンスックジンがジーン役を演じています。涼し気な目元、9等身の女優さん、日本のどこかにいそうな親近感があります。
2020年12月06日もうすぐクリスマス。お子さんへのクリスマスプレゼントは決まりましたか?今回はインスタグラムで【絵本×英語×おもちゃ】をテーマに多くの英語絵本や工作を紹介している英語講師のSatokoさんにプレゼントにぴったりな絵本を紹介してもらいました!「絵本の遊び方は自由!親子でスキンシップを取りながら、触ったり、めくったり、どんなふうにも遊べるのが絵本のいいところだと思っています」とSatokoさん。自宅には英語絵本がなんと約1000冊もあるのだとか。絵本の部屋があり、ちょっとした図書館のようになっているそう。触って開いて、ドキドキしながら楽しもう!「もともと英語圏で始まったクリスマス。英語の絵本は、クリスマスの文化や起源に触れるのにぴったりです。クリスマスのプレゼントにも最適なオススメ絵本を4つのカテゴリーに分けて紹介します」触って楽しめる絵本Baby’s very firstTouchy-Feely Christmas book著者:Fiona Watt、出版社:Usborne Publishing Ltd「ページごとにそれぞれ異なった素材のしかけがついていて、触って楽しめます。クリスマスの単語と一緒に、fluffy (ふわふわ)prickly(ちくちく)soft (やわらかい)などの形容詞も学ぶことができ、ボードブックでしっかりとした作りなので、小さいお子さんにも安心です」めくって楽しめる絵本Dear Santa著者:Rod Campbell、出版社:LITTLE SIMON「クリスマスに手紙を受け取ったサンタさん。プレゼントを包みます。しかしプレゼントは小さすぎたり、大きすぎたりして…。lift-the-flap book (めくりしかけのある絵本)なので、“このしかけの中には何が入っているのかな?”と想像力が膨らみ、ワクワクしながら楽しめる一冊です」数えて楽しめる絵本Merry Christmas, Mouse!著者:Laura Numeroff、イラスト:Felicia Bond、出版社:Harper Collins「If You Give a Mouse a Cookie(もしねずみにクッキーをあげると)というねずみが主人公の絵本です。1つの星、2人の天使、3つの雪の結晶…クリスマスツリーに飾るオーナメントを、英語で数えていきます。最後のページにはちょっぴり驚きなオチがついているのもおもしろい!数に興味を持ち始めたお子さんには特にオススメです」動いて楽しめる絵本DON’T SHAKE THE PRESENT!著者:Bill Cotter、出版社:Sourcebooks Jabberwocky「シリーズが50万部の大ヒットとなった『ぜったいにおしちゃダメ?』のクリスマス絵本です。クリスマスプレゼントを開けたいけど…。ノックしちゃおう!振ってみちゃおう!どうなるかな?knock(ノックする)や shake(振る)shrink(縮ませる)などの動詞を聞きながら、実際にその動作を行ってみると、楽しくインプットできます」絵本を読んだ後は、親子でクラフトに挑戦!Satokoさんに、『Merry Christmas, Mouse!』にちなんだ親子でできるクラフトも教えていただきました。「今年のクリスマスはおうちで過ごされる方も多いのではないでしょうか。簡単に作れるクラフトをご紹介しますので、ご家族・親子で作ってみてくださいね」毛糸のオーナメント《材料》・毛糸(適量)・段ボール・はさみ・えんぴつ、ペンなど《作り方》1.段ボールにお好みのクリスマスモチーフの絵を描き、ハサミで切り取ります2.毛糸の端をテープで固定し、くるくると毛糸を台紙に巻き付けていきます「毛糸を2色混ぜても素敵です。縦や横、斜めに自由にぐるぐるするだけなのに、可愛い雰囲気が出てしまうクラフトです。紐をつけてツリーのオーナメントにしたり、壁にかけてもよいですよね。今年のクリスマスにぜひ作ってみてくださいね」子どもだけでなくママにも楽しんでもらいたい私がSatokoさんのインスタに出会ったとき、読み進めるほどにワクワクしたのを覚えています。紹介されている絵本や工作を子ども達といっしょにやったときの笑顔が次々と思い浮かびました。そして、子どもだけでなく、ママも心がほっこりするそんな投稿が並んでいます。Satokoさんいわく、「子ども達に喜んでもらいたいのはもちろんですが、ママ達にもほっとする瞬間だったり、子どもとのスキンシップのヒントになってほしいと願っています」とのこと。お話を伺いながら、その想いは私達ママにちゃんと届いています!と伝えたい気持ちでいっぱいになりました。Satokoさんの想いが詰まったインスタを多くのママに知ってもらえたらうれしいです。■■野口さとこさん長年児童英語講師として子どもに英語や英語リトミックを教える。都内自宅に英語絵本1000冊とおもちゃを揃えた《えほんの部屋》が。絵本に関連したクラフト製作も得意。《今回紹介した絵本》■■■■<文・写真:ライターよこも>
2020年12月06日おとな向け映画ガイド今週は、ベストテン入り間違いなしの『燃ゆる女の肖像』と、アン・ハサウェイが怪演!『魔女がいっぱい』の2本をオススメします。ぴあ編集部 坂口英明20/11/29(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は17本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『サイレント・トーキョー』『魔女がいっぱい』『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』の3本。中規模公開とミニシアター系の作品が14本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『燃ゆる女の肖像』絵画の名作を静かな美術館でみたような、クラシックの名曲を良質なホールで聴いたような、このうえなく美しい映画を観た、としばし思いました。これから年間ベストテンや映画賞が発表されますが、そんななかに必ずや加えられる、観逃せない1本だと思います。時代は18世紀。フランス北西部、ブルターニュ地方の孤島が舞台です。この島に住む伯爵夫人から、娘の肖像画を描くよう依頼され、やって来た女性画家マリアンヌと、娘エロイーズの、激しくも密かな恋の物語です。冒頭に登場する「燃ゆる女の肖像」と題された暗示的な絵から、万感迫るラストまで、心の動きが繊細に描写され、実に精緻に作られたストーリーです。脚本はセリーヌ・シアマ監督のオリジナル。彼女はこの作品で昨年、カンヌ国際映画祭・脚本賞とクィア・パルム賞を受賞しています。クィア・パルム賞は、LGBTをテーマにした作品に与えられる特別賞です。ふたりが恋におちていく、海辺のシーンがとても美しいです。空と海の青、砕ける白い波……。音楽は、ヴィヴァルディの『四季 夏』と、焚き火のシーンで歌うオリジナルの2曲だけですが、とても効果的ですし、随所にでてくる炎もまた、ふたりの感情の象徴です。理知的で顔には強い意志が感じられるマリアンヌ役のノエミ・メルラン、情熱を内に秘めたエロイーズ役のアデル・エネル。美しきふたりの、お互いを思いやり、慈しみあうようなラブシーンも魅力的。恋に燃ゆる女、の官能的な美しさです。『魔女がいっぱい』ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の『チャーリーとチョコレート工場』という映画を覚えてますか?あの原作者がロアルド・ダール。彼が書いたもうひとつの名作が『魔女がいっぱい』です。今回それを映画化したのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの大監督ロバート・ゼメキス。これまで『ポーラー・エクスプレス』など、3DCGアニメを手がけたこともあり、ファンタジーには定評があります。さらに、『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロが脚本・製作、『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロンも製作に加わるという豪華な顔ぶれ。映画好きが、みな面白がって参加した感ただよう、おもちゃ箱を部屋中に広げたような、ウキウキ気分のエンタテインメントです。1960年代の終わり頃。アラバマの田舎町の、お城のようなホテルに、突然、世にも恐ろしい魔女の集団がやってきて大集会を開きます。彼らの陰謀は、大嫌いな子供たちを謎の秘薬を使って動物に変えてしまうこと。運悪くネズミの姿に変身させられてしまった主人公の男の子、ブルーノとその友だちたちは、魔女軍団の悪だくみと戦うことになります…。CGを使ったネズミたちの可愛い動きも楽しいのですが、この映画の最大の魅力は、大魔女グランド・ウィッチ役アン・ハサウェイ。『プラダを着た悪魔』では純な女の子役、『レ・ミゼラブル』ではつらい娼婦役に挑戦した大女優が、口裂けのド派手なメイクで、世にも恐ろしく、そしてポップな魔女という新境地を実にノリノリで演じています。魔女の数々の秘密(例えば、実は髪の毛が……とか)が笑えます。キャラクター作りがしっかりしているので、子供が観れば、ねずみに変えられる少年たちの気持ちになり、女性は魔女の60’sファッションに興味津々、それぞれ見どころが違うかもしれません。すごいアトラクションに乗った時のようなつぎつぎと襲うスリルと爽快感。ハリウッド映画ならではの、ひとときをどうぞ。
2020年11月29日トモコ フルサワ ジュエリー(TOMOKO FURUSAWA JEWELRY)の新作「おとなのピアス」が、日本最大級のジュエリーイベント「ジュエリーウィーク 2020」に登場。2020年12月4日(金)から表参道・スパイラルにて、2020年12月16日(水)から銀座三越にて、期間限定で発売される。「おとなのピアス」全780通りの組み合わせを提案デザイナー自ら買い付けた天然石を用いた1点物ジュエリーで人気のトモコ フルサワ ジュエリーから、「おとなのイヤカフ」に続いて、「おとなのピアス」が新たに登場する。18金イニシャルやダイヤモンドなどモチーフ39種「おとなのピアス」は、シンプルかつ繊細な18金バーピアスに、18金のイニシャルやダイヤモンド、アコヤ真珠、誕生石など39種類のモチーフから好きなモチーフ1つを組み合わせたピアス。華奢なバーピアスの先端でかすかに揺れるモチーフが、さりげなくも個性を演出してくれる。全780通りのデザインコンビネーションが実現可能となっており、片耳で着けたり、左右で異なるモチーフを組み合わせて着けたりと楽しみ方も様々。自分だけのお気に入りを探すのも楽しく、自分へのご褒美や毎日着ける“お守りジュエリー”としてもおすすめだ。「おとなのイヤカフ」新作やオーダー会も「ジュエリーウィーク 2020」会期中は「おとなのピアス」に加え、ピアス穴がなくても楽しめる「おとなのイヤカフ」の新作も販売。また、ジュエリーを仕立てる前のルースの状態から石を選べるジュエリーオーダー会も開催される。【詳細】トモコ フルサワ ジュエリー「おとなのピアス」価格:シングル 45,000円+税~60,000円+税※2つ(ペア)購入の場合は税抜き価格より2,500円引き、3つ購入の場合は5,000円引きで販売。・「おとなのイヤカフ」参考価格帯:55,000円~170,000円・オーダージュエリー 参考価格帯:60,000円~■「ジュエリーウィーク 2020」期間限定ショップ・表参道開催期間:2020年12月4日(金)~6日(日) 11:00~19:00場所:スパイラル 1F New Jewelry TOKYO住所:東京都港区南青山5-6-23・銀座開催期間:2020年12月16日(水)~25日(金) 10:00~20:00場所:銀座三越 1F住所:東京都中央区銀座4-6-16
2020年11月28日おとな向け映画ガイド今週の公開作品から、人間は弱くて強い、そう感じる2本をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明20/11/22(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は21本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『10万分の1』『君は彼方』の2本。中規模公開とミニシアター系の作品が19本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。『アンダードッグ』『ロッキー』を始めとする、アンダードッグ(負け犬)が、最後のプライドを賭けて戦うというボクシング映画の系譜に、またひとつ名作が生まれました。主人公を演じるのは森山未來。女性ボクサーに安藤サクラを起用した『百円の恋』で強烈な印象を残し、大成功を収めた監督・武正晴、脚本・足立紳、プロデュース・佐藤現のチームが、再集結。前編・後編あわせてなんと4時間36分の、どうだ!文句あっか、という男の映画です。晃(森山未來)は、元日本ライト級1位。タイトル戦に敗れて以降、鳴かず飛ばず。今や、若手ボクサーの踏み台にされる「かませ犬」という立ち位置で、なんとかボクシングの世界にしがみつき、デリヘルの運転手をして糊口をしのいでいます。そんな彼が、ふたりの男と宿命ともいえる出会いをし、リングで対決することになるのです。バラエティ番組の企画で初めてボクシングを経験するお笑い芸人の宮木(勝地涼)、そして、晃を倒すことを夢見てきた前途あるボクサー龍太(北村匠海)。ふたりにとっても、晃との試合が人生の大きな岐路となります。かつて晃に夢を託したこともある父(柄本明)、別れた妻(水川あさみ)と息子(市川陽夏)、デリヘルで働く謎の女性(瀧内公美)とその娘(新津ちせ)、対戦相手の宮木や龍太をとりまく環境など、細部がきっちり描かれているし、意味深な伏線もあとできっちり回収されて、複雑な人間ドラマを観ていると時折感じるフラストレーションはありません。長時間でも飽きさせません。中心となる3人だけでなく、登場人物の多くが、それぞれどこか「アンダードッグ」的な裏面をもち、そこからはい出そうとしている、群像劇のようでもあります。鬱屈した感情の爆発する象徴がファイトシーン。鍛えられた肉体がぶつかりあい、ほとばしる血と汗、それを撮るカメラワークもリアル、生半可なものではありません。特に、ダンサーでもある森山の身体能力と肉体が、活きています。早朝の町。スカイツリーを近くに見上げる下町が、晃のトレーニングコースです。スタローンはフィラデルフィアの薄汚れたダウンタウンを、『あゝ、荒野』では菅田将暉とヤン・イクチュンが新宿の朝を駆け抜けました。ボクシング映画でファイト場面と並んで、いつも感動するのは、朝のシーンです。『ヒトラーに盗られたうさぎ』ヒトラーの台頭に身の危険を感じ、ドイツをあとにした、ユダヤ人一家の亡命の旅。ベルリンから、スイス、フランス、そしてイギリスへ。世界的に有名な絵本作家ジュディス・カーが、少女時代の実体験をもとに著した『ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ』という小説、その映画化です。監督はドイツ出身のカロリーヌ・リンク。『名もなきアフリカの地で』で米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した女性監督です。9歳の主人公アンナ。父親は、ドイツでは知られた演劇批評家。辛口の批評で敵は多い。ヒトラーを批判した政治がらみの発言も鋭く、ナチスが政権をとれば、弾圧の対象にされるに違いありません。母は音楽好きで社交家。いざとなると父よりも頼りになります。少し年上の兄がひとり。それまでは自分がユダヤ人であることすら意識していなかったアンナでしたが、大好きなうさぎのぬいぐるみをおいて、ベルリンの思い出深い家をあとにします。この時代、演劇批評家では外国で食べていくのは大変です。職を求めて、父と母は奔走します。そんななかで、すこしずつ成長していくアンナの日常が描かれます。言葉を覚え、友だちを作り、トラブルに立ち向かう姿はポジティブです。豊かな感受性は、将来の絵本作家の片鱗を感じさせます。同じ時代のユダヤ人の子どもの映画というと、東欧で家族と離れ、ひとり地獄の日々をすごした少年が主人公の『異端の鳥』や、不安におびえる『アンネの日記』のような、つらい物語が多いですが、この話は、のびやかで明るく、いいあと味が残る映画です。「帰る場所は、土地ではない、家族のいるところ」、という言葉が印象的です。首都圏は、11/27(金)からシネスイッチ銀座他で公開。中部は、12/12(土)から名演小劇場で公開。関西は、12/4(金)からシネ・リーブル梅田で公開。
2020年11月22日おとな向け映画ガイド今週の公開作品から、人間って…の3本をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明20/11/15(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は17本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『STAND BY ME ドラえもん2』『フード・ラック!食運』の2本。中規模公開とミニシアター系の作品が15本です。その中から、3本を厳選し、ご紹介します。『ホモ・サピエンスの涙』スウェーデンの“映像の魔術師”、世界のなかで異彩を放つロイ・アンダーソン監督の最新作。ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した作品です。今年のぴあフィルムフェスティバルでも、コンプリート特集が行われ、特別上映されました。観ている途中で黒澤明監督の『夢』という映画を連想しました。「こんな夢を見た」で始まる黒澤の夢の数々。少年の頃の思い出や、悪夢もありました。最後は牧歌的な楽園で終わります。この作品もロイ・アンダーソンの夢の世界といえなくもありません。難解、という人もいるかもしれませんが、夢の世界なんて不可解なもの。ほとんど脈絡がない33シーンが続きます。どんよりとした空気の北欧の街。陰気にみえる人たちの謎の行動……。1シーン1カットによる5分以内の映像。意表をつく発想もあり、人間の内面がさらけだされる寓話のようでもあり。そのどれもが緻密な構造で描かれた絵画みたい。まさに万華鏡のような映画です。少し紹介すると、恋人たちが戦禍のドイツ・ケルンの上空を舞っている。シャガールの絵『街の上で』からインスパイアされて作られたシーン。牧師が心理カウンセラーの診察室にやってきて「神は去った。私はどうしたらいいのか」と打ち明けるシーン。高台の公園のベンチにすわった中年のカップル、女は「もう9月ね」と、ただ、ぽそっとつぶやくシーンなど。どれが琴線にふれるか、は観る人次第です。ロイ・アンダーソンは独特の映画作りで知られています。すべての撮影が、ロケではなく、自分の所有する巨大なスタジオのセットのなかで、行われます。CGはほとんど使いません。模型を使ったり、遠近法を利用した背景画など、昔ながらの映画のテクニックが駆使されています。有名な役者はキャスティングせず、一般人をオーディションで起用するやり方も、リアル感を高めています。どこかおかしい、愛すべき人間たち。ちょっとブラックなところもあります。絶望的にさせる話もありますが、希望がほの見えるシーンもあります。ほんわりとした後味。不条理を楽しむ、そんな気分で気楽にどうぞ。首都圏は、11/20(金)からヒューマントラストシネマ有楽町他で公開。中部は、11/27(金)から伏見ミリオン座で公開。関西は、11/20(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。『フードラック! 食運』もう、肉好きにはたまりません。がぜん、“みすじ”が食べたくなります。 いやいや、滅多に焼肉食べないんだよなぁ、って人も焼肉店に行きたくなってしまうかと思います。これほど焼肉が美味しそうに見える映画は初めてです。食通で知られる、ダチョウ倶楽部・寺門ジモンの初監督作品。これまで番組や雑誌記事で彼の食レポを目にしたことはありましたが、その舌体験がそこここに素敵なスパイスとなり、彼にしかできない、おいしい食と人の映画になりました。EXILE NAOTOがフードライター佐藤くんで、土屋太鳳がサイトの編集者竹中さん。このふたりが、グルメの新サイトで究極の焼肉をとりあげることになり……、と一見『美味しんぼ』的設定。ふたコトめには「この店は食べログ上位です」と、にわか知識をふりかざす竹中さんに対し、佐藤くんは、個人的な食体験から磨きあげた超人的な味覚と嗅覚、そして持って生まれた、おいしいものにめぐりあえる「食運」がついているようです。おそらくジモン監督が食めぐりをするなかで見聞きしたエピソードや、出会った食の達人たちの反映でしょう。でてくる焼肉屋主人たちの一家言がなるほどの連続。演じる役者さんの味のある顔もほれぼれとしますし、確かにこんな感じの親父さんやおかみさん、いますね。寺脇康文、大和田伸也、東ちづる、そして渋いね白竜が。天才佐藤くんのルーツは、りょう演じる母にあったというあたり、泣かせてくれます。彼の肉の焼き方、これ、店でやったら嫌われそうだなぁ、という感じのかなりオーバー・アクション。でも、真似したくなるんだなぁ。『泣く子はいねぇが』大みそかの夜。青年たちが、鬼の赤や青の仮面をつけ、髪をふりみだし、「泣く子はいねぇが」と大声をあげて家々を襲う秋田の伝統行事「男鹿のナマハゲ」。それを受け継ぎ、郷土の文化を守る若者たちの美談とか、そした話ではねえだす。仲野太賀が演じる主人公・たすくは、一応ナマハゲを受け継ぐひとりですが、仕事もなく、だから金もない。結婚して子どもができたのに、妻には愛想をつかされて途方にくれるだけ、そういうどちらかというとみっともない青年です。その年は、テレビの中継も入り、ナマハゲの映像が全国に流されるという晴れの舞台になるはずだったのですが、心にくったくがあったのでしょう。各家でだされる振る舞い酒をしこたま飲んだたすく君は、なんと、とんでもないことをしでかしてしまい……。そこから始まる苦闘の日々。彼が、それでも何とか一人前のおとなの男になろう、父親になろうともがく姿を描きます。監督は、初の自主制作長編作品『ガンバレとかうるせぃ』がPFFアワード2014で映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)と観客賞をW受賞した佐藤快麿(たくま)。この作品が劇場デビュー作になります。佐藤監督の原案をバックアップし、映画化にむけた原動力になったのは是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」(企画協力)。仲野太賀のほか、妻・ことね役に吉岡里帆、親友・亮介役に寛一郎、余貴美子、山中崇、柳葉敏郎(秋田出身)といった豪華な配役が並びます。すでにいくつかの国際映画祭でも上映され、撮影の月永雄太はサン・セバスティアン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞しています。最初と最後に登場するナマハゲ。幼い子どもにとって、その姿は怖いなんてもんじゃないだろうな、と思います。そのナマハゲを見事に活かしたラスト。涙です。「がんばれよ!青年」と声をかけたくなります。
2020年11月15日おとな向け映画ガイド今週の公開作品から、観れば納得の3本をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明20/11/8(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は29本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。かなりの多さです。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』『ホテルローヤル』『水上のフライト』『魔女見習いをさがして』の4本。中規模公開とミニシアター系の作品が25本です。その中から、3本を厳選し、ご紹介します。『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』『シラノ・ド・ベルジュラック』といえば、フランス演劇史上の名作。鼻が巨大で醜い剣客シラノの悲恋物語です。毎年、世界のどこかで演じられていて、例えば日本では、今年の12月に宝塚星組が公演しますし、英国ナショナル・シアターの最新公演も「ライブ・ビューイング」で上映されます。この映画は、作者であるエドモン・ロスタンが、この傑作劇を生み出だすまでの、色恋あり、ドタバタありのロマンチック・コメディです。1897年、瀟洒なベルエポック時代のパリ。売れない劇作家で詩人のエドモンに、名優コンスタン・コクランのための戯曲を書く仕事が舞い込みます。紹介してくれたのは、彼を唯一気にかけてくれていた大女優サラ・ベルナール。が、これから2時間後に脚本を持って行け、という無理難題!200年も前に実在したシラノ・ド・ベルジュラックを主人公にするという付け焼刃なアイデアを、アドリブを加えてプレゼンすると、これが意外にウケて、大成功。なんと、3週間後に舞台にかけることになります。恋愛中の友人へのアドバイスを脚本に入れてしまったり、エドモン自身におきる事件や、次から次へと出てくるバックステージのトラブル、それらがどう解決され、無事初日を迎えられるかが、この映画の楽しいところです。監督・原案・脚本のアレクシス・ミシャリクは、映画『恋におちたシェイクスピア』から想を得たといいます。エドモン・ロスタンが登場する「『シラノ・ド・ベルジュラック』ができるまで」、それをまずは舞台化。2016年の初舞台で大成功させ、この映画につなげました。エンドクレジットには実際のエドモンやコクラン、シラノ役を演じた歴代の役者の写真も紹介されます。『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』この映画、ストップモーション・アニメーションで作られているんです。パペット(人形)を少しずつ動かして撮影し、それを繋ぎ合わせる手法のアニメ。『ウォレスとグルミット』を観たときは、その手作り感の映像にホッコリし、すっかりファンになりましたが、良くも悪くも、これは別物。目をみはる背景の美しさ、ビクトリア朝時代の家具や小道具、衣装など細部へのこだわり。パペットの動きがスムーズで実に表情豊かなこと。最高なのは、そのなんともユーモラスな造形の楽しさと、最新技術も取り入れて表現されたスケールのデカい躍動感、そしてストーリー。ストップモーション・アニメーションのトップランナーと言われている、アメリカのスタジオライカの作品です。19世紀後半のイギリス。有閑貴族で、ちょい自分本位な英国紳士、ライオネル卿の冒険物語です。シャーロック・ホームズにも似たいでたち、好奇心の赴くままに、世界中の謎に挑む探検家。夢は伝説の生物を発見し、探検界の憧れ「貴族クラブ」の会員になることです。ネス湖の怪獣とおぼしき未確認生物を取り逃したあと、アメリカで身長2メートルの「ビッグフット」に出会い、彼を相棒にヒマラヤにある伝説の谷、シャングリラを目指すのですが……。いま注目のライカ作品というだけあって、声優陣も実に豪華。主人公ライオネル卿の声を担当しているのはヒュー・ジャックマン。他に、ザック・ガリフィアナキスやゾーイ・サルダナ。なるほど、ライオネル卿のパペットはヒューをイメージして作られていますし、みな雰囲気が似ています。『インディ・ジョーンズ』シリーズにも似た、おとなも観てワクワクするアニメの傑作です。『音響ハウス Melody-Go-Round』東京は銀座の早朝。和光、三越、そして歌舞伎座の前を、雨の日も風の日も、同じ時刻に通る男性の姿が映し出されます。その人が通う先は、神の宿るレコーディングスタジオ『音響ハウス』。彼は、このスタジオのメンテナンス・エンジニアなのです。40年にわたり様々な機材を調整、修理してきた「マイスター」。直せないものはない、が信条です。きちょうめんな彼のチェックで、音響ハウスの朝がはじまります。スタジオができて昨年で45年。場所がら、CMなどの音楽制作に使われることが多く、その録音に参加したCITY-POPのミュージシャンの間で、評判がひろがっていったそうです。実際に、この映画のために作られた主題歌「Melody-Go-Round」を、さまざまなミュージシャンがパーツを少しずつ演奏しながら収録。それと平行して、松任谷由実、矢野顕子、坂本龍一、佐野元春……。ビートルズが使用したアビーロードスタジオにも匹敵する、いやそれ以上だと、このスタジオを愛するミュージシャンたちの証言がインサートされます。いくつもあるスタジオのうち、坂本龍一が「2スタ」をいかに愛したか、とか……、さまざまな伝説が紹介され、この偉大なレコーディングスタジオの秘密が浮き上がります。企画・監督を務めたのは、レコーディング・エンジニア出身の相原裕美です。首都圏は、11/14(土)から渋谷・ユーロスペースで公開。中部は、12/18(金)からセンチュリーシネマで公開。関西は、11/20(金)からシネ・リーブル梅田で公開。
2020年11月08日おとな向け映画ガイド今週の公開作品から、世代を超えて共感できる3本をご紹介します。ぴあ編集部 坂口英明20/11/1(日)イラストレーション:高松啓二今週のロードショー公開は19本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』『おらおらでひとりいぐも』『461個のおべんとう』の3本。中規模公開とミニシアター系の作品が16本です。その中から、3本を厳選し、ご紹介します。『461個のおべんとう』お弁当、作る方も、作ってもらう方も、思いは十人十色です。これは、ロックミュージシャンが、高校に通う息子のお弁当を毎日作った、という実話をもとにしたその3年間のお話。原作は「TOKYO No.1 SOUL SET」のボーカル&ギタリスト渡辺俊美によるエッセイです。とても優しい息子さんです。15歳の多感な時期にパパとママが離婚、受験に失敗し、1浪の末に高校に入ります。年下のクラスメートのなかで、苦労はないだろうか。そんな心配をした料理の得意なパパは「3年間休まず登校する」という息子に、じゃあパパも「3年間、毎日お弁当を作る」と約束します。売れているミュージシャン、シングルファーザーの奮闘が始まります。なんといってもこのパパ役に、V6の井ノ原快彦が、ぴったりハマっています。無理がない感じ、慌ただしい音楽の世界にいてもちょっと余裕の、すてきなパパです。息子役に関西ジャニーズJr.内ユニット「なにわ男子」の道枝駿佑。ふたりで歌うシーンもあります。親子ともに卵焼きが大好き。卵に入れる具材を工夫して日々のお弁当を彩ります。子供の頃から居酒屋に連れていったせいか、息子の渋〜い味の好みにもクスッと笑えます。(1)調理は30分以内 (2)1食単価300円以内 (3)おかずは材料から(出来合いを使わない)が信条の、弁当箱にまでこだわる愛情べんとう。息子の甘じょっぱい高校生活、バンド仲間との濃厚な日々など、いろいろなおかずが詰まっている、後味のいい映画です。『おらおらでひとりいぐも』専業主婦で夫に先立たれ、子供たちと物理的にも精神的にも距離があり、郊外の戸建てにひとり住まい、という75歳の女性、桃子さんの日常を描いた映画です。若竹千佐子の芥川賞受賞作を映画化したのは『モリのいる場所』の沖田秀一監督。桃子さんを演じているのは田中裕子です。朝起きて、トーストの食事をとり、病院へ。延々と続く待ち時間は、テレビの画面にでる時刻表示で表現してくれます。3時間近く待ってもお医者さんとかわす会話はほんの一瞬。たまに来る娘は、金の無心。そんなこと、気にしてはいられない。桃子さんの最大の関心事は、「地球46億年の歴史」なのです。図書館で何冊も図鑑を借り、ノートにイラスト入りでまとめます……。東北出身の桃子さん、故郷を飛び出して上京し55年たちますが、ひとりごとになると、お国なまりがぬけません。桃子さんが心のなかでつぶやく言葉もしっかり東北弁です。映画ではそれをなんと擬人化。寂しさ1(濱田岳)、寂しさ2(青木崇高)、寂しさ3(宮藤官九郎)という脳内キャラクターで見えちゃう化しています。彼らと桃子さん、しんみりと会話したり、時にはどんちゃん騒ぎをしたり。そんなぶっ飛び方が、ともすれば陰気になりそうなムードを楽しいものに変えています。もうひとり、「どうせ」(六角精児)というネガティブキャラもいて、これもかなりウケます。そして回想のなかに登場する、若かりし昭和の桃子さん役は蒼井優。かれら全員で、桃子さんが表現されます。人生、気持ちを解放して謳歌すべし、「おらは、ひとりで生きていっても大丈夫だあ」そんなふうに明るく思える作品です。『PLAY 25年分のラストシーン』ユニークな発想で作られたフランス映画です。1980年生まれの男性が、25年間、自分の周りの出来事をホームビデオカメラで撮りためていて、その大量の映像を整理しながら観ているという設定です。13歳のクリスマスにプレゼントでもらったビデオカメラから始め、現代のiPhoneまで、いかにもアマチュアらしい映像が続きます。だんだん画質がよくなっていくのもリアリティがあります。パーティや結婚式とか、その頃の人間関係、考えていたことをそっとおりこんでいて、男の子の成長や家族の一部始終を覗いているかのようです。映像をつないで見せるだけで、説明的なナレーションもありませんが、1998年のサッカーW杯や、2000年ミレニアムの馬鹿騒ぎも巧みにとりいれていて、時代背景もわかり、ちゃんと映画らしい展開になります。監督はアントニー・マルシアーノ。彼の自伝的作品です。いたずら好きでやんちゃな子供たち。恋の時代をむかえ。それぞれの人生を歩みだし。そして……。どんなラストシーンが待っているか!首都圏は、11/6(金)から新宿武蔵野館他で公開。中部は、11/6(金)からセンチュリーシネマ他で公開。関西は、11/13(金)からシネ・リーブル梅田他で公開。
2020年11月01日