深田恭子&松山ケンイチ演じる五十嵐夫婦の妊活を中心に、多様な家族について描かれてきた『隣の家族は青く見える』。不妊治療についても丁寧に描くことで共感を得てきた物語が、いよいよ最終回を迎える。3月15日に放送された第9話では、奈々の妊娠から流産までが描かれ、涙する視聴者が続出。妊活をする五十嵐夫婦がぶち当たった壁、さらには奈々の心情の変化を追うことで、あらためて見えてきたものとは?■妊活は妻のため? 不妊治療で感じる夫婦の温度差第1話で「念のため」という気持ちで不妊治療専門クリニックを受診したにもかかわらず、早々に「不妊症」という言葉を告げられてしまった五十嵐夫婦。「子どもはいずれできる」と悠長に構える大器(松山)は治療に難色を示すが、年齢的なリミットも鑑みて奈々(深田)は前向きに治療(タイミング法)をスタートする。終わりの見えない治療の始まりではあるが、このときは“治療をすれば、きっと子どもはできる”という思いが強く、希望に満ちていた。とはいえ大器は、アルコールを控える奈々の横で平然とビールを飲んだり、精子に異常がなければ“ガッツポーズ”をしたり…。このような夫婦の温度差は、不妊治療をする際に大きく立ちはだかる壁ではなかろうか。本来、妊活は夫婦ともに同じ立場で行うものだが、命が宿るのは女性の体であるゆえ、夫は妻に「協力している」、一方の妻も「夫に協力してもらっている」という考え方に至ってしまいがち。このためどうしても女性が率先して治療を行うことで、その状況次第で落ち込んだり、考え込むことも少なくない。だが五十嵐家の妊活は、夫が不妊治療について“知ること”で、道が開けていく。大器は「知らないから怖い」という奈々の言葉に刺激を受けて自主学習し、良い精子を提供すると高らかに宣言。ここから、奈々と大器は足並みをそろえて妊活に取り組むこととなったのだ。■不妊ストレスが起こるとき…親プレッシャー、他人の幸せ子どもはいらないと考える人もいれば、子どもがほしくてもかなわない人もいる。人生には当たり前なんて存在しないのだが、結婚したら子どもができてあたり前と考えている人がまだまだ多いのが実情。なかでも妻にとって一番の脅威は、夫の母ではないだろうか。孫見たさに、義実家に行けばその話ばかり、あげくにはお守りやら健康食品やらを送りつける…。大器の母・聡子(高畑淳子)もまた悪意のない「孫はまだか」攻撃も凄烈だった。そして義妹の琴音(伊藤沙莉)の妊娠によって、奈々の「どうして私だけ…」という気持ちが募っていく。人の幸せを素直に喜ぶことができない感情は当然ともいえるが、「それで喜んでたら、お人よし通り越してバカだよ」と言う大器に、「だったらバカのほうがいい」とつぶやいた奈々。不妊治療の最中に起こる自分のマイナス感情を受け入れられない姿が印象的だった。第5話ではタイミング法から人工授精へステップアップするが、リセットを繰り返してしまう奈々。さらには琴音の出産に立ち会うという精神的に厳しい状況に置かれるが、「妊娠できないわけじゃなく、まだ妊娠していないだけ」と、自分の中の嫉妬心を乗り越えようとする。一方、奈々の不妊治療を知った聡子は自分の言動を猛省。自分の発言や態度を何度も謝る聡子だったが、おそらく自分の失態をすなおに謝ることができる人はほぼいない。何気ない一言が人を傷つけることもある。思いも寄らないことに悩んでいる人は意外と近くにいるのかもしれない。そして自分の気持ちを言葉に表せばわかってくれる人もいる。ドラマはそんな一言の大切さにも気づかせてくれた。■不妊治療と仕事を両立させことの厳しい現実不妊治療を始めるときに、女性にとって大きなネックとなるのが仕事。治療のスケジュール次第では仕事を休む必要が出てしまうが、会社に「不妊治療」をしていること自体を言い出すことができない。それは女性として恥ずかしさもあるし、病気の治療という必然性もないから。ダイビングスクールで働く奈々は、治療スケジュールの都合で急な休みが増え、「ヤル気がないならやめてもいい」とまで言われてしまう。体外受精へのステップアップを機に、職場に不妊治療の事実を伝えることになるのだが、不妊治療経験者の上司を除く同僚の目はとにかく冷たかった。“子どもがほしい”という気持ちは尊重されて然るべきなのに、働きながら子どもを産むこと、育てることは、どうしてこんなにも窮屈なのだろうか。かといって、子どもを産まなければ産まないで文句を言う人も出てくるのだから弱ってしまう。大器は「今日は人工授精終わってから出勤します」と言える世界を望んでいた。しかし、女性は不妊治療を理由に仕事を辞めざるを得ない状況に陥ることも珍しくない。奈々の同僚の態度から、そんな悲しい現実をひしひしと感じるのだった。■妻だけがつらい? 不妊治療で疲れていく夫の存在不妊治療は女性ばかりがつらくなるもの。そう思い込んでいる人も多いだろう。そのとき夫はどうなのだろうか。態度や言葉に表さないから、「妻だけ苦しんで、夫は何も考えていない」と思っていないだろうか。第7話では、大器がじつは精神的に追い込まれ、カウンセリングに通っていたことが明かされる。治療が長くなることで、気づけば奈々に腫れ物に触るかのごとく接するようになっていたのだ。不妊治療を「もうやめよう」という大器に対して、奈々は「諦めたくない」と本音でぶつかり合う。相手の気持ちを思うことも大切だが、やはり本心は伝えなければわからないもの。これによって、奈々と大器は夫婦の絆を再認識することとなり、晴れて迎えた体外受精で、ついに妊娠することになる。■幸せの光を一瞬で奪う、流産の残酷さマタニティマークをつけ、母子手帳をもらい、妊娠の喜びをかみしめていたのも束の間。奈々は腹痛で倒れ、そのまま流産してしまう。「一生子どもはできないかもしれない」という不安に駆られながら、「大器を父親にしてあげたい」という一心で頑張ってきた努力の賜が、一瞬にして奪い去られてしまう残酷さ。奈々の気持ちを思うと胸が締め付けられ、涙を流さずにはいられなかった。『隣の家族は青く見える』が一貫して描いてきたのは、多様性を認めることの大切さ。もちろん他人に対してだけでなく、自分自身に多様性を認めることで新たに生まれる幸せもあるのだが、自分のことだからこそ、やすやすと受け入れられないのが現実である。岐路に立たされた五十嵐夫婦は、どんな選択をし、どんな展開を迎えるのか…? どのようなカタチであれ、二人が“幸せ”だと思える結末を祈りたい。『隣の家族は青く見える』第10話は、3月22日夜10時から放送。木曜劇場『隣の家族は青く見える』ドラマ公式サイト:
2018年03月21日コーポラティブハウスに住む、事情を抱えた4家族を描く『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。物語が進むに連れて、登場人物たちが育ってきた環境も徐々に明らかになってきた。第1話から強烈なインパクトを放ち続ける大器(松山ケンイチ)の母・聡子(高畑淳子)をはじめ、奈々(深田恭子)の母、渉(眞島秀和)の母、そして3月1日に放送された第7話には深雪(真飛聖)の母が登場。そんな母親たちに注目すると、子どもに「幸せな人生を送ってほしい」と願う気持ちは同じでも、一歩間違うとその思いは子どもを苦しめる毒になると気がつかされる。それでは私たちはどう子どもに接していけばいいのか、ドラマから読み取れる育児のヒントを探ってみたい。■母としての自分を顧みることができますか?ドラマの名物キャラクターともいえる大器の母・聡子は、嫁の奈々も大切に思う、心優しき肝っ玉母ちゃん。悪気なく「孫が見たい」と大器と奈々に伝え続けてきたが、夫婦が不妊治療に取り組んでいると知り、自分の言動を猛省する。第6話で「子供なんて産みたくなかったよ!」と本音を吐く実娘に「あんたが言った言葉は、どれだけ残酷で、無神経で、ひどい言葉か。謝りなさい!」と声を荒げてビンタする姿は、母親としてのやりきれなさと、奈々への思いやりに満ちていた。そして、なかなか子どもができないことを謝る奈々に対し「奈々ちゃんがお嫁さんになってくれて本当によかったと思ってるの。だから、子どもができようができまいが、そんなことどうでもいいの。あんたたちが幸せに暮らしてくれてるならそれでいいのよ。もう、私たちのためにがんばって作ろうなんて思わなくていいからね」と涙を流して訴える姿も印象的だった。第7話では、聡子夫婦が経営する焼き鳥店に大器、真一郎(野間口徹)、亮司(平山浩行)が訪れる。はじめは「愚痴のひとつも言いたいときはありますよねぇ」と笑顔だった聡子だが、男たちのちっぽけなプライド話を耳にすると、「バカなこと言ってないで、帰って女房の手伝いでもしなさいよ。バカ亭主どもが!」と一喝。子どもたちを叱咤激励しながらも、母親としての自分を顧みることも忘れない聡子は、どんなときも愛にあふれている。■「母の思い=子どもの思い」は毒親寸前か!?初登場となった深雪の母・百合恵(多岐川裕美)は、経済安定第一主義。お金の無心に行った深雪を、夫が「一流商社にお勤めなら、お金の苦労だけはしなくてすむ」と制し、娘の心を慮る様子はない。だれに対しても自分の意見を主張してきた深雪だが、母親に対しては事情が違うようだ。おそらく深雪は、幼いころから母親の前では自己を抑えて生きてきたのだろう。「あなたは受験に失敗したところから、人生狂ってしまったから」という母親の言葉から、深雪がこれほどまでに娘の中学受験に固執する理由が表面化。つらかった自分の過去と同じ道を娘に歩ませたくないという母としての願望が垣間見えた。もしかすると、深雪は母を憎んでいるのかもしれない。だが、やるせないのは、実娘に対して同じように自分の気持ちを押し付けている現状に気づいてないこと。ダンスの練習に励む娘の優香は、いまだ母親に自分の本心を言えずにいる。今後、深雪が母親としての自分の在り方と向き合うときは来るのだろうか。■“普通”な幸せは、子どもの幸せなのか?渉の母・ふみ(田島令子)は、“普通”であることを重んじる母。それを知る渉は「カミングアウトしないのが親孝行」と、自分が同性愛者であることを隠し続けてきた。だが第7話で、母が壁に飾られた“誓約書”に気づいてしまったことをキッカケに、急きょカミングアウト。そこで母から出たのは「私の何がいけなかったのかしら」という言葉だった。第4話で、不妊治療の話を聞いた奈々の母も「ごめんね。普通に妊娠できる体に産んであげられなくて」と話しており、子どもに何かあれば自分自身を責めてしまうのは母親として必然なのかもしれない。もちろん、息子の突然すぎる告白をすぐに受け入れられる母親はそうそういないだろうが、渉には朔(北村匠海)という最愛の人がいて、幸せに暮らしている。そんな息子の幸せを受け入れることができず、自分を責めてしまうのはあまりに切ない。母親は子どもがいくつになっても母親で、子どもには自分自身が思い描く“幸せな暮らし”をしてほしいと願うもの。そこにあてはまらない幸せを“普通じゃない”と否定してしまうのはナンセンスだが、何の疑いもなく息子の結婚を望み続けたふみの気持ちを思えば、現状を受け入れられないというのも理解できる。■子の“幸せ”を願う、母としての在り方とは一方、母になることを願わずに母(の立ち位置)になってしまったちひろ(高橋メアリージュン)は、心を開かない亮司の息子・亮太に「何か不満があるなら言ってね。私、お母さんじゃないから、心で思っていることまでくみ取ってあげらんないからさ」と話しかけてみたり、子どもが欲しいものを与えるだけの亮司に、「亮太くんに嫌われたくないから必死に機嫌を取っているだけ」とNOを突きつけたり、母親とは少し違った立場から正論をぶつける。そして、娘の成績が下がっているのは亮太のせいだと決めつける深雪に対しては「うちの亮太のせいで、成績が下がったっていう証拠はあるのか」と反論。なんだかんだ言いながら、いざという時に子どもを守るちひろの姿にはグッときた。母親の願いは“子どもが幸せに暮らすこと”であって、自分が思い込んでいる“幸せのカタチに当てはめること”ではない。大切なのは、子どもを一個人として尊重し、信頼し合うような関係をいかにして築くか。“子ども”というものを客観的に捉えるちひろの考え方には、親子の関わりについての大きなヒントが詰まっているように思えた。予告では、主治医から「妊娠してますよ」と告げられる奈々の様子も映し出され、早くも「無事に生まれて欲しい」と願う声が続出中の『隣の家族は青く見える』。第8話は、3月8日夜10時から放送。木曜劇場『隣の家族は青く見える』ドラマ公式サイト:
2018年03月07日2月15日、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)第5話が放送された。いままでも、かなり気になる存在ではあった小宮山深雪(真飛聖)だが、ついに夫・真一郎(野間口徹)と“子育て”を巡って口論が勃発。深田恭子&松山ケンイチ演じる五十嵐夫婦との対比も明瞭で、“夫婦の教訓”がヒシヒシと伝わる物語だった。■「幸せな家庭」を演じ続けるワンオペ育児の闇どんな人でも隣の芝生は青く見えるもの。しかしその感情が顕著なのが小宮山深雪だろう。SNSをとおして自分が幸せであることを周囲にアピールしまくる専業主婦。しかし実際にはコーポラティブハウスを購入して早々、商社マンとして働いていた夫が失業。周囲はもちろん子どもにもバレないようにと、「幸せな家庭」を必死で演じているのだった。第5話では、なんと“リア充代行サービス”まで利用していることが発覚。“夫の失業”という、深雪にとってはあってはならない状況が長引くことで、彼女の虚栄心がよりヒートアップしているようだ。あまりに強すぎる嫉妬心から、浮世離れした母親かと思われた深雪だったが、「自分がやらなきゃ」と気負い過ぎた結果、ここまで追い込まれてしまったというワンオペ育児のリアルな闇がチラリ…。もちろん、子どもを持つことが正しいと思っていたり、同性愛者を批判したりする心理は理解できない。だが、だれにも弱さを見せずにひとりで戦い続けてきた深雪を思うと、「じつは私も深雪予備軍かも」という恐ろしさと、ゆがんだ愛情への切なさが込み上げるのだった。■こじれた夫婦に必要なのは夫の一念発起!?しかし、悩んできたのは妻ばかりではない。夫・真一郎は、出張ばかりの仕事にも励んできたが、「家族と一緒に過ごす時間がほしい」と退職。けれども深雪の理解は得られず、再就職が決まるまでいままでどおりの時間に家を出て、夜遅く帰るように強要されている。長女・優香がダンスの練習に励んでいることを知った真一郎は、オーディションのため塾に遅刻した娘が深雪に詰め寄られる姿を見て、「俺が連れ出したんだ」とウソをつく。娘を思っての行動だが、その後、深雪から浴びせられたのは「このまま出てってほしいくらいよ」という辛辣(しんらつ)な言葉だった…。真一郎が中学受験は娘の意思なのかと問えば、「将来を考えれば、中学受験は最善の策」だと返され、「10歳の子どもにも意思はあると俺は思う」と言えば、「この10年、私ひとりに子育てさせておいて、よくそんなえらそうなことが言えるわね」と深雪に一蹴されてしまう。だが、よくよく考えて見れば、「子どもと一緒にいたいと願う夫」、「子育てを自分ひとりでがんばってきたと嘆く妻」。両者が欲しているものは同じであり、ただただ、ボタンの掛け違いがあるだけ。大黒柱の失業はたしかにマイナスなことかもしれないが、それによって得た幸せもある。それなのに深雪は「暇になったからって急に口出さないで」と、その幸せに気づくことができないでいるのだ。朔(北村匠海)が「違う環境で育った人間同士が心を通わせるなんて、そもそも無理なことしてるんだから、恋愛関係が続くこと自体奇跡なんだよ」と話していたが、本当にそうだ。夫婦であっても、心を通わせ続けるのは奇跡。一度できてしまった感情のズレを取り戻すのは難しいが、ここから小宮山夫婦がどう歩み寄っていくのか。そこには、夫の一念発起が必要なのかもしれない。■不妊治療に前向きな社会、夫になるためには一方、五十嵐家の夫・大器は「そこまでしなくても」と考えてきた不妊治療への考え方が大きく変わっていた。後輩に対する「“今日は精子とってから出勤しまーす”とか、“今日は人工授精終わってから出勤しまーす”とか言える社会であるべきだと思うんだよ。助けが必要なときはお互いさまって感覚が、もう少しあってもいいと思うんだ」という言葉には、胸が熱くなった視聴者も多いはず。突然のふんどし姿には笑ってしまったが、そんな大器の言動はどれも妻である奈々を思うからこそ。もちろん、自分自身にも子どもがほしいという気持ちもあるが、何より奈々の願いをかなえてあげたいという気持ちが強いのだろう。妻の負担を少しでも減らすためにも、つらさを一緒に背負おうとする大器の夫としての在り方には頭が下がる。互いを認め合い、同じ方向を向いて歩みを進める五十嵐夫婦。そして、互いの本音を共有できずに、心が離れかけている小宮山夫婦。「あなたはどちらの道を選びたい?」と聞かれれば、答えは簡単。それを実現するためには、深雪のように夫にばかりに何もかもを求めていてはいけない。大器に感謝の心を抱き続ける奈々のように、妻も夫の気持ちに気付き、寄り添うことが必要なのだ。真一郎が優香を連れ回したことに対して「昔あんなことがあったのに、誘拐みたいなことするなんて…」と深雪がこぼした小宮山家の過去、そして、朔が渉(眞島秀和)の家に転がり込んだ理由は一体何なのか…?さらに、子ども嫌いを宣言してきたちひろ(高橋メアリージュン)が、亮司(平山浩行)の息子・亮太との生活を通じてどんな変化を見せるのかも気になるところ。物語が折り返しを迎え、ますますおもしろくなってきた『隣の家族は青く見える』。第6話は2月22日夜10時から放送。木曜劇場『隣の家族は青く見える』ドラマ公式サイト:
2018年02月21日