上の学年の試合に出してもらうが、ミスしたときなど試合中に泣いている息子。監督には「そのままでいい」と言われているが、上級生の親に「雰囲気が悪くなるから泣くのをやめろ」と注意された。監督は良いと言っているのに、他人の親に注意されてイラっとする。このことを監督に相談してもいい?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに心を軽くするアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<サッカーが嫌で辞めたい息子のやる気を引き出したいが、どこまでやれば過干渉かわからない問題<サッカーママからのご相談>10歳の息子が上の学年の練習や試合に呼ばれているのですが、ミスをして干されることがあり、試合中や練習中に泣いていたため、監督に泣くことの是非を問いかけたところ「何を考えているか分からない子どもより良いから、そのままで」と言われています。しかし、同じクラブの別の子の親がうちの息子に対し「上級生の雰囲気が悪くなるため、試合や練習で泣くことはやめろ」と注意します。他の親が人の子どもに対してのこのような発言をすることに対し、イラっときます。このような場合、監督に相談しても良いのでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。お母さんのお気持ち、察します。その保護者と、お母さんたち親子の関係性というか、親しさの度合いによっては「雰囲気悪くなるね。どうしたらいいのかなあ?」と相談に乗ってもらえそうです。が、それほど付き合いのない方から注意されると、ちょっとイラっとしますね。■本人を飛び越え監督に話をすると、問題が拗れる可能性があるしかしながら、イラっとしたからと言って、監督に話を持ち込むのはトラブルの素になりそうです。結論から申し上げると、監督に相談しないほうがいいでしょう。息子さんに注意した上級生の親御さんの発言を問題にするというわけですよね。こういった場合、お付き合いのルールとして、まずは注意してきたその親御さんに、お母さんからお話しするのが筋だと思います。本人を飛び越えて監督さんに相談した結果、そのことを監督さんからその方に万が一「○○さんから苦情が来た」などと伝わるとしましょう。その上級生の保護者は「なぜ、直接言わないのか?」と憤りを覚えるかと思います。仮に、お母さんが何かあって他の子どもを注意したら、その子のお母さんが自分には言わずに監督さんに「○○さんが......」と相談していたことを知ったら、どんな気持ちになるでしょうか。■イラっとするが、基本的には放っておくに限るしたがって、まずはその方にやんわり話すことをお勧めします。例えば、こんなふうに言ってみることが考えられます。「息子は悔しがりなので、すぐに泣いてしまいますが、大目に見てもらえませんか?監督からも、このままでいいと言われました」そこで、相手の方が反論してきたら「一度、一緒に監督に話しませんか?」と提案してもいいかと思います。ただし、基本的に放っておくに限ると私は思います。放っておくのは、この上級生の保護者もそうですし、干されると泣いてしまうお子さんのこともです。「泰然自若」という言葉をご存知かと思います。何事にも動じない。何かトラブルが起こっても慌てない姿勢を指します。人は皆そうありたいと思いつつ、ついついジタバタしてしまいがちだから、このような四文字熟語が生まれたのでしょう。泰然としていられないけれど、せめて「そうあろう」と心がけることは大切です。イラっとするし、「悪いのはあっちの親」と思われるかもしれませんが、そこを受け流す寛容さをぜひ身につけてください。■ミスをしたら干す指導法に疑問そのほかに、気になることが二つありました。息子さんがミスをしたからと言って干す指導法については、お母さんは何も感じられないのでしょうか?上級生の親御さんの発言云々よりも、私はそのことが気になりました。ミスすると交替させられると思うと、息子さんは思い切ったプレーができません。手を使う競技以上に、足でプレーするサッカーは「ミスのスポーツ」と言われます。トラップミス、パスミス、判断ミス。さまざまな失敗をしてこそ、「じゃあ、次はどうするか」と自分で解決法を探って、次の練習や試合に活かす。そうやって上達するのがスポーツです。このままでは息子さんは委縮して、自分で考えてサッカーをすることができなくなるのではないでしょうか?もし、監督さんと話しやすい関係性を築いているのであれば、ぜひそのことを話してみてはいかがでしょうか。■他者に意見を求める前に親としてすべきこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)二つめは、監督さんに相談することが多いようですが、まずはお母さんご自身の考えをまとめてみることも重要ではないでしょうか。今回、私に相談してくださったのは嬉しいのですし、他者に意見を求めることは重要です。しかし、もっと重要なのは、ご自分が母親としてどう考えるかです。短い相談文のなかからお母さんの意見や気持ちを探るのは限界があるので「いや、私は自分の意見を持ってますよ」とおっしゃるかもしれません。そうであれば、まずは最初に自分が思ったように動いてみてください。「島沢さんがこう言ったから」「監督からはこう言われた」と他者の意見を過度に尊重してしまうと、うまくいかなかったときに辛い気持ちになりますよね。子育ては難しい場面もあります。私自身、家族や、ママ友や専門家の意見、本を読んだりして乗り越えてきた気がします。少し視点を変えて、ゆったりと息子さんを見守ってみませんか。泰然自若。なかなかそうなれませんが、そうありたいと思う気持ちが大切かと思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年10月20日18年9月15日に樹木希林さん(享年75)が亡くなってから今日で3年。もう希林さんが出演する新作を見ることはできないが、泰然自若とした生き方を貫き通した彼女が生前に遺した多くの作品や言葉は今も多くの人々に力を与えている。60年近いキャリアを持つ希林さんだが、本誌は活動初期から何度も取材をともにしてきた。そんな本誌ならではの秘蔵写真やエピソードとともに、希林さんの意外な素顔を改めて、振り返りたいーー。1961年に文学座一期生として演劇研究所に入り、「悠木千帆」として俳優活動を始めた希林さん。杉村春子さん(享年91)の付き人を務めながら、64年には俳優で劇作家の岸田森さん(享年43)と結婚。その結婚生活はわずか4年で幕を閉じたが、本誌が2人を取材した際は屈託のない笑顔を見せていたのが印象的だった。73年10月にはロックシンガー・内田裕也さん(享年79)と結婚。女性問題や暴力沙汰などとにかく破天荒な裕也さんだったが、希林さんも決して負けていない。結婚発表会見では、笑顔をあまり見せることなく、終始クールな受け答え。そして、葉巻をふかしながら記者の質問に応えるその姿に取材陣も惹きつけられた。一人で東京大学の学園祭に現れ、軽音楽サークルのコンサートに出演したことも。74年に国民的ドラマ「寺内貫太郎一家」(TBS系)に出演し、その人気を不動のものに。そうかと思えば77年には芸名の「悠木千帆」をオークションにかけ、たった数万円で売却してしまうなど、常に“先の読めない人”だった。すべての物事に対して超然とした態度を取る希林さんだったが、それは自身の家族にも同じ。76年に一人娘・内田也哉子(45)が誕生するも、希林さんは決して甘やかしたりはしなかった。“やけど”を教えるためにわざと也哉子の手を熱い鍋に近づけたり、余計なものを買い与えず、おもちゃに至っては一つも買ったことがないという。その姿勢は、生まれた孫たちにも不変だった。本木雅弘(55)と也哉子の間には3人の子供が誕生し、2世帯住宅で希林さんも生活をともにしていた。孫に対しても容赦はなく間違っていると思えば、「そんな考え方はおかしい」とぴしゃりと言い放ち、泣かせることもざらにあったようだ。しかし、決して希林さんはただ厳しいわけではなかった。孫の雅樂(24)がモデルデビューするかを迷っていた際は、「人の作った洋服やモノを身につけ、それも輝かせなければならない。それを活かすも殺すもあなた次第」と背中を押すことも。そして、UTAとしてモデルデビューした雅樂は希林さんが生前愛した車「トヨタオリジン」を乗り継ぐなど、その意志は着実に受け継がれている。昨年の希林さんの三回忌に際し、本誌が雅樂に話を聞いた際、彼はこう言っていた。「はい、大好きなおばあちゃんでした。晩年までいろんなことに興味を持っていて。よく言っていた『なんでも面白がりな』という言葉は今でも強く、僕の胸に残っています」今日も希林さんは空から家族の活躍を見守っていることだろうーー。
2021年09月15日