じめじめした梅雨シーズンのお悩みのひとつは、雨に濡れたサッカー用具や洗濯物をいかに早く乾かすか、ではないですか。「翌朝になってもスパイクが乾かず、濡れたスパイクで試合に出場しなくてはならなかった」という経験がある方も多いのでは。そこで、川崎フロンターレで長年ホペイロ(用具係)を努める伊藤 浩之さんに、梅雨どきの洗濯方法と用具メンテナンス方法を伺いました。子どもが気持ちよくサッカーをするために心得たいノウハウが満載です。(取材・文:小林博子)選手たちの商売道具であるユニフォームやスパイクは、ホペイロさんの手によって管理されている©KAWASAKI FRONTALE<<前編:川崎フロンターレも実践!ユニフォームの"においと汚れ"をすっきり落とす「洗濯」のコツ■洗濯の基本をおさらい前編では、天候にかかわらずユニフォームやソックスなどの衣類をすっきり洗う洗濯方法を、川崎フロンターレのやり方にそって伺いました。おさらいをすると、・洗濯洗剤や柔軟剤は市販のものでOK!規定量を守る・一度に洗う衣類の量は洗濯槽の8割まで・40度のお湯で洗うとベター・パワフルコースなど、汚れ落ちに特化したコースを活用する・脱水後はすぐ干す。衣類は5cm以上の間隔をあけるなどが大切なポイントです。■川崎フロンターレでは常に「部屋干し」また、前回の記事でわかるように、フロンターレには「乾燥室」があり、ユニフォームをはじめスパイクなどもすべて部屋干し。施設の都合上そうである事情はありつつも、必ずしも外に干すのがベストとはいいきれないようです。紫外線の殺菌や消臭効果はもちろん期待したいところですが、紫外線は同時に衣類を傷める要因のひとつでもあります。それよりも衣類の乾燥に大切なのは「風」。フロンターレの乾燥室は風が循環する仕組みを施し、しっかり乾かしていると伊藤さんは言います。なお、スパイクなどもこの乾燥室で乾かしているそう。雨の日でもしっかり乾くこの部屋があれば無敵ですが、家庭には当然ありません。プロクラブのような施設がない家庭でできる梅雨の乾燥対策を伺ったのでご紹介します。■子どもにもできる、スパイクの基本の手入れ法長年選手をサポートしてきた伊藤さんは、用具を大事にすることはプレーにもつながるといいます。©KAWASAKI FRONTALEスパイクは濡れているかどうかにかかわらず、脱いだ後はその日のうちに汚れや芝、泥などを毎回落としておくのがベターです。人工芝やゴムチップなども丁寧に取り除きましょう。これは子どもでも自分でできることなので、習慣化できるといいですね。サッカー場などに芝やチップを飛ばす「エアクリーナー」が設置されている場合は、それも活用すると良いでしょう。最近では、空気で埃や繊維を飛ばす「エアダスター」と呼ばれる商品も市販されているのでそういったものを活用するのも手です。「用具を大切にすることはプレーにも良い結果につながります」と、伊藤さん。クラブ創設当時からホペイロを20年以上勤め、その間多くの選手を見てきました。そんな伊藤さんのお言葉に重みを感じます。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」■雨で濡れたスパイクを早く乾かす方法スパイクが雨などで濡れてしまい、翌日も試合で履く予定というケースは梅雨どきに頭を悩ませる困りごとのひとつです。少しでも早くすっきりと乾かす方法はあるのでしょうか。伊藤さんに伺うと、そのコツは「アイテム使い」にあるようです。スパイクを早く乾かす便利アイテムをご紹介します。その1)靴乾燥機(シュードライヤー)家電量販店などで、靴専用の乾燥機が販売されているのをご存じでしょうか。さまざまなメーカーのものがあり、靴2足をさしてスイッチを入れるというもの。「ヘアドライヤーでいいのでは」と思いがちかもしれませんが、靴乾燥機は出る温風の温度が低めで靴を傷めないところがおすすめの理由だそうです。また、靴をさしてスイッチを入れるだけでいいので、手間がかかりません。消臭タイプのものや、パパの革靴にも使えるモードがあるものなど、機能はいろいろで、販売価格は3,000円前後となっています。その2)靴用の乾燥剤スポーツメーカーなどから販売され、吸湿剤が入っているバッグ状のものがあります。靴の中にいれておくことで、靴の乾燥を早めるのだそう。昔ながらの「新聞紙を詰めておく」という方法に近い手法ですが、吸湿剤がパワフルに湿気を吸い取ってくれるので新聞紙より時短になります。吸湿剤の他に消臭剤が入っているものも。販売価格は500円~1500円程度が目安で、繰り返し使えます。複数個使って靴の中に詰めることで素早く乾くのだそう。子どもでも簡単にできるので、スパイク管理を自分で体験することで、物を大事にすることを身につけさせるのにもお勧めです。その3)コインランドリー最近ではコインランドリーに靴専用の乾燥機が置いてあるところもあります。業務用でスピーディーに乾きますので、近くにある場合は利用するのも手です。■さらに早く乾かすためのひと手間とは?靴乾燥機やシューズドライヤーを使うとき、さらにひと手間加えることで乾くスピードをアップさせることができます。すぐにできる2つのコツを教えてもらいました。その1)水分を吸い取ってから乾燥させる濡れたスパイクやシューズは、雑巾やキッチンペーパーなどで水分をある程度吸い取ってから乾燥させるといいそうです。衣類のように脱水機にかけられないシューズ類にはこの方法がてきめんに効果を発揮してくれるそうですよ。その2)中敷は外して乾かす中敷を外すのも早く乾かすためにできることの一つなのだとか。外したら軽く洗ってから干すことで汚れやニオイ対策にもなるそうです。■子どもが思いっきりサッカーを楽しむサポートをサカイクで提唱している「サカイク10箇条」では、「子どもがサッカーを楽しむことを最優先に考えよう」を1項目目に掲げています。私たち親にできることは、それをサポートすること。「洗濯」もその一つといえます。もちろん、スパイクの日々の手入れや洗濯の手伝いなどは積極的に自分でやってもらうことも大切ですが、特に雨が続く時期の洗濯は難易度が高めなので、大人がノウハウを駆使してサポートしてあげるのがよさそう。最近では洗浄力の高い洗剤もたくさんありますし、濡れた靴を乾かす便利なアイテムも販売されているので、そういったものも使って親御さんも負担になりすぎないようにしてほしいものです。そして、子どもにはすっきり清潔な用具を身につけて、気持ちよくサッカーを楽しんでもらいたいですね。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年06月17日練習着などの洗濯は、サッカーを楽しむ子どものために親ができるサポートのひとつです。たくさん汗をかいてしっかり汚してきた洗濯物は、次に着る時に気持ちよく身につけてもらいたいですね。そこで、Jリーグ川崎フロンターレでホペイロとして活躍する伊藤浩之さんに、ユニフォームやスパイクの洗濯や手入れのコツを伺いました。前半では一般的な洗濯術について、後半ではこれからの季節に気になる梅雨時の洗濯についてご紹介します。(取材・文:小林博子)選手たちのユニフォームやスパイクはホペイロの伊藤さんが準備している©KAWASAKI FRONTALE■サッカー選手を支える「ホペイロ」とはどんな仕事?今回お話を伺った伊藤 浩之さんの職種は「ホペイロ」。ホペイロはポルトガル語で、日本語に訳すと「用具係」です。仕事内容は主にユニフォームやスパイクなど試合時に身につける用具の管理や準備、メンテナンスなどを行うことで、選手がサッカーをスムーズにするために重要な役割を担うポジションです。ちなみに、今回お話をうかがった伊藤さんは1997年のクラブ発足時からホペイロを努める最古参スタッフの一人だそう。近年の川崎フロンターレの躍進を支えています。今回洗濯術を教えてくれたフロンターレのホペイロ、伊藤浩之さん©KAWASAKI FRONTALE■プロクラブの洗濯方法は家庭でも再現可能なことばかり!川崎フロンターレで実践している洗濯方法は、聞いてみると家庭でもできることばかりでした。まずは基本の洗濯方法をおさえましょう。その1)仕分けと部分洗い数多くの選手の衣類を洗濯するため、まずは色柄物と白物、そしてアイテム別に分けます。その際に1つずつ検品し、目立つ汚れがあった場合は事前に部分的につまみ洗いをしておきます。その2)使う洗剤は3種類洗濯機に衣類を投入後、洗剤を入れます。3種類の内訳は・液体洗濯洗剤・液体酸素系漂白剤・柔軟剤(消臭タイプ)です。3種類は業務用の特別なものではなく、ドラッグストアで販売しているごく一般的な商品だそうです。酸素系漂白剤は黄ばみ予防やニオイ対策のために使うと教えてくれました。なお、柔軟剤は衣類の「着心地・履き心地」を良くするために必要なもの。とくにソックスは柔軟剤を使うと使わないとでは大きく差が出てしまうとのことです。ユニフォームもソックスも汗をたっぷり吸収するため、消臭タイプであることもポイントのひとつ。汗による雑菌の繁殖を抑える効果も期待できます。その3)「汚れ強め」コースで洗濯川崎フロンターレで使用する洗濯機は業務用のもの。さまざまなコースがある中で普段使っているのは「汚れ落ちコース」です。家庭用洗濯機にも多彩なコース設定がありますが、同様のコースに該当する「汚れが強めな衣類を洗濯するコース(例:パワフルコース)」を選ぶとよいでしょう。その4)「乾燥室」に干す川崎フロンターレでは、クラブハウスをリニューアル後に「乾燥室」が設けられました。それまでは家庭と同じように外干しをしていたそうです。乾燥室では常に空気が循環する空調が設置され、衣類に風が当たるようになっています。これを家庭で再現するなら、浴室乾燥または部屋干しで扇風機やサーキュレーターの風を当てるという方法だそうです。■しっかり洗い、すっきり乾くためのコツご紹介した4つのフローは、ごく一般的な洗濯方法となんら変わりがないことがわかりますね。そのフローの中にちりばめられたちょっとしたコツがあるそうです。その1)洗剤類は表示通りの量を厳守汚れやニオイがひどいときに、洗剤類をたくさん入れてしまうことはありませんか?それはNG!洗剤を使いすぎると衣類に成分が残って衣類を傷めてしまったり、かえってニオイの原因になってしまったりと、いいことはありません。「適正量」を守りましょう。その2)40度以上のお湯で洗うフロンターレの洗濯機はお湯で洗うことができ、設定温度は40度。その理由は、雑菌は40度以上で死滅するからだそうです。家庭用の洗濯機の中には温水が使用可能な物もありますが、まだまだ少数派かもしれません。温水洗浄ができない場合は、予洗い時にお湯でつけおき洗いをすることでも応用できます。その3)洗濯槽に入れる衣類は「8割まで」洗濯槽にぎゅうぎゅうに入れて洗濯機をまわしてしまうと、汚れ落ちが悪くなってしまいます。入れる衣類の量は洗濯槽の半分〜8割までを目安にします。その4)すぐ干す!脱水までできたら、なるべく早く干すのが重要。濡れたまま洗濯機の中に放置する時間が長くなると、雑菌が繁殖してニオイやカビの原因になってしまうからです。その5)5cm以上あけて干す乾きを少しでも早くするためのコツは、衣類同士の干す間隔を開けること。フロンターレの乾燥室では「5cm以上」にしているそうです。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」■家庭の"ホペイロ業"も楽しんで!今回はプロが行う洗濯方法をご紹介しました。もしかしたら「目からウロコ」という特別なノウハウはなかったかもしれません。言い換えると、みなさんが普段行っている洗濯が、プロサッカーチームで行われているホペイロさんたちのお仕事の一部とほぼ同じということですね。子どもたちがサッカーを楽しむために、家庭での洗濯や用具のメンテナンスはとても大切なこと。それを担う親御さんは、子どもの専属ホペイロです。選手の活躍を支える大切な役割です。後編では、雨の日の洗濯&用具メンテナンスのノウハウを伊藤さんに伺いました。梅雨シーズン真っ只中の今こそ必読です。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年06月13日