ラジカル塗料は、油性溶剤や硬化剤による塗装面強化による従来型の耐候性ではなく、塗装面の劣化の要因に着目した「ラジカル制御技術」を用いて耐候性を高めた新塗料です。まだ知名度は低いですが期待も大きいラジカル塗料について、特徴や使用例、注意点をご紹介します。ラジカル塗料の特徴とは?ラジカル塗料は、日本ペイントが2012年に初めて商品化し、2015年頃から他のメーカー製品も出てきた新しい住宅用外壁塗料です。【ラジカルってどんな塗料?】これまでの外壁塗装で代表的な「アクリル/ウレタン/シリコン/フッ素」は、使われる樹脂の性能が塗料の特質を表しています。一方、ラジカル塗料の「ラジカル(radical)」とは、樹脂ではなく劣化を引き起こす要因のことです。塗料に含まれる酸化チタンが紫外線を吸収することで発生するラジカルは、塗料表面の樹脂を破壊してチョーキング(白亜化現象)と呼ばれる劣化を引き起こします。そこで、やっかいなラジカルを封じ込める「抗酸化チタン」や、働きを抑える「光安定剤」などのラジカル制御技術によって、外壁塗装の高い耐候性を実現した点が、ラジカル塗料の大きな特徴です。【高品質なのにコストが抑えられる点が魅力】ラジカル塗装の耐久年数は約8~15年と長く、最高レベルのフッ素塗装の約15~20年に次ぐ位置しています。しかも1平米当たりの平均的な塗装単価はシリコン素材と同程度の約2,000~3,000円で施工が可能です。コストを抑えながら外壁塗装の美観を長期にわたって維持するのに効果的な塗料といえるでしょう。【作業のしやすさと防汚染性の高さ】従来の塗料には、水を溶剤とする水性タイプと油やシンナーなどが溶剤の油性タイプがあり、硬化剤の有無によって「1液型」「2液型」に分かれていました。紫外線などによる劣化対策としては、硬化剤を加えて壁面の塗膜を強化する「2液型」が一般的ですが、油性溶剤や硬化剤は壁面の劣化を防ぐのに有効な反面、水性に比べて塗料の匂いが強く、2液型は扱いづらいという難点がありました。ラジカル塗料は、ラジカル制御技術を備えているため、油性タイプや硬化剤による補強の必要がありません。塗料のタイプは「水性1型」であり、塗料が良く伸びて塗りやすい水性塗料ならではの高作業性が特徴です。また、汚れやカビ、藻などがつきにくい防汚染性にも優れています。ラジカル塗料に向いている外壁や屋根【あらゆる外壁や屋根にOK】ラジカル塗料は、アクリルやシリコンをベースにした水性塗料であるため、「モルタル、コンクリート、ALCパネル、サイディングボード(窒素系・金属系)、木部」など、あらゆる外壁や屋根に幅広く使うことができます。紫外線と結びついて発生するラジカル制御に優れているため、日光にさらされる屋根はもちろん、紫外線量の多い午前10時~午後14時頃に日光が当たる外壁には特に向いています。【日陰や湿気の多い場所にも効果的】ラジカル塗料には、塗装面にツヤのある美しい光沢があります。この塗膜は、汚れやカビがつきにい機能を持っているため、風通しの悪い場所や陽の当たらない壁面の美観保持にも効果的です。ツヤなしのタイプもありますが、防汚染の効果は若干低くなります。【油性溶剤の匂いが気になる方におすすめ】壁面塗装で気になるのが溶剤の匂いですが、水性塗料であるラジカル塗料は、油性よりも溶剤の匂いが穏やかです。水性塗料にも溶剤は用いられてはいますが、揮発性を抑えて拡散を防ぐ対応がなされたものも多いため、小さな子どもや高齢者などの住宅にも向いています。外壁塗装の費用を無料で比較外壁塗装でラジカル塗料を使う際に注意したいことここまで、ラジカル塗料の特徴や適性についてご紹介してきましたが、「ラジカル制御技術」を使った登場してまだ数年という新しい塗料であるため、ラジカル塗料自体がまだまだ塗装業者に浸透していないというのが現状です。ここでは、新しいラジカル塗料を使う場合に注意しておきたい点を上げていきます。【信頼できる塗装業者を選ぶこと】外壁塗料の中でも新しいラジカル塗料は、さほど普及していないだけに、悪徳業者の狙い目でもあります。一般の情報量が少ないのをいいことに、メリットだけアピールし、適切な工事をしてもらえないケースもありますから、塗装の正しい知識を持ち、きちんと説明をしてくれる塗装業者を選ぶことが大切です。特に「最新塗装技術を激安で実現」「期間限定!〇日までのご成約ならこの価格!」といった訪問業者には要注意です【実績はこれから!】機能的に優れたラジカル塗料ですが、販売から実際の施工例から耐用年数の実績が出ていないという現状は理解しておきましょう。もちろん、商品データは、販売メーカーの実証研究から割り出された信頼できる数値として商品化されています。しかし、最初の発売が2012年ですから、耐用年数を経過した実際の一般施工例というのは2017年現在にはまだ出ていません。このことから、ラジカル塗料の細かな年数経過による状態把握などの説明ができる人がまだまだ多くはありません。一方で、ラジカル塗料には、これまでの塗料になかった高耐性や作業性の高さ、コスト面など、今後需要を伸ばしていく新塗料としての注目度は高まっているのも確かです。発売から一般の耐久実績のデータが出始める2030年代には、現在主流を占めるシリコン塗装に代わる外壁塗装と躍進する可能性も秘めた、いわば新時代の外壁塗料がラジカル塗料なのです。まとめ塗装面の劣化の要因となるラジカルを制御するという新発想で注目を集めるラジカル塗料。まだ知名度や実績は少ないですが、外壁を長年にわたって美しく保ち、塗り替えコストを抑える新時代の塗料として期待されています。よく知られていない新商品には悪徳業者もつきものですから、施行の際には、きちんと知識を持った塗装業者を選びましょう。外壁塗装の費用を無料で比較
2017年10月29日京都大学は7月14日、不斉有機分子触媒の新技術として、ラジカル反応を促進・制御する不斉有機硫黄ラジカル触媒を実現したと発表した。同成果は、同大 理学研究科の橋本卓也助教、川又優博士課程学生、丸岡啓二教授らによるもの。詳細は、英国化学誌「Nature Chemistry」に掲載された。農薬や医薬品などに使われる分子は、実際には立体的な構造をしており、その空間的な広がり方が薬としての作用に決定的な役割を果たす。構造が単純で安価な分子から医薬品などに使えるような、複雑で付加価値の高い分子を作るには、そのような空間的配置をコントロールしながら、分子と分子を繋げることのできる不斉触媒を用いることが効果的である。このような触媒としては、金属を活性中心に持つものが多用されているが、資源量・環境毒性などが懸念されている。そこで、持続型・環境調和型の不斉触媒として、炭素・窒素・酸素といった地球上どこにでもある元素を巧みに利用したメタルフリー有機分子触媒が注目され、目覚ましい発展を遂げている。しかし、この十数年、盛んに研究されてきた不斉有機分子触媒は簡単なイオン反応という形式でしか分子を繋ぐことができず、原料に使える分子・作られる分子(成物)ともに金属触媒の汎用性には遠くおよんでいない。今回、研究グループでは、この現状を打開する手段として、従来の不斉有機分子触媒では利用されてこなかった、ラジカルという化学種を使うことに着目した。具体的には、有機分子である有機硫黄ラジカルに、不斉触媒としての機能を持たせラジカル反応をコントロールしながら、分子を繋ぐという技術の開発である。ラジカル反応は、イオン反応と相補性のある反応形式で、アクリル樹脂のような日用品に含まれる高分子を作る際に使われている。また、ラジカルは元来高い反応性を示す化学種であることから、医薬品など複雑な立体を持つ低分子の合成に使う研究はほとんど行われていなかった。中でも、有機硫黄ラジカルは不安定な化学種であり、安定なジスルフィドという分子に光(紫外線)を当てて、硫黄と硫黄の結合を均一開裂させることで発生させる。しかし、光の照射を止めると、ジスルフィドに戻ってしまうため、この有機硫黄ラジカルを触媒として使うには反応を行っている間、光を当て続ける必要がある。通常の実験では光源として水銀ランプを用いているが、環境調和の観点から太陽光を利用することもできるという。将来的には、この研究を拡張していくことで、不斉有機分子触媒がより汎用性の高い有機合成ツールになると期待される。しかし、現状では未熟な技術であるので、触媒の単純化、触媒量の低減、触媒概念の一般化を検討し、さまざまな化合物の効率的供給ができる技術になるよう、研究を推し進める。また、今回の研究で得られた知見を基に、有機分子触媒と太陽光を組み合わせた新しい環境調和型不斉触媒の発展にも努めていきたいとコメントしている。
2014年07月15日