写真家・笠原秀信がイタリア周遊旅行の途中で切り取ったランドスケープ「THE ROAD」の第3弾・ヴェネチア編をお届けします。第3弾の舞台は水の都 イタリア・ヴェネチアイタリア北東部、ベネト州の州都ベネチア県の県都で、アドリア海北岸に臨む港湾都市。英語名Venice。16世紀に木造橋を石組みに改造したもので、アーケードがついた形が美しく、観光名所となっている。市内には176の運河が縦横に走り、有名な大運河(カナル・グランデ)が市内を北西から南東にS字形に貫き、「水の都」「潟湖の都市」とよばれる世界屈指の観光都市となっている。1987年にベネチアとその潟は世界遺産の文化遺産として登録されている。主要な交通路は運河で、交通機関はモーター・ランチと、長さ約10メートル、幅1.5メートルほどのゴンドラである。ため息の橋(Ponte dei Sospiri)16世紀に建設された、ドゥカーレ宮殿と牢獄をつなぐ橋でした。そのため、宮殿の尋問室から牢獄へ渡る囚人が、嘆きため息をついたとして、“ため息橋”と呼ばれているとよく耳にしますが、事実ははっきりしていません。本島には150以上の運河本島には150以上の運河がめぐり、そこに架かる橋は400を超える。この水上の迷宮を移動するために誕生したのがゴンドラだ。約1000年の歴史を持つとされるゴンドラは船舶技術の傑作とされ、絶妙なバランスで水路を通行する。全長約11m、幅約1.5mの細長い船体で、オールは片側だけにある。漕ぎ手は船尾に立ち、オールを前後に漕ぐことで各方向に舟を操る。浅瀬も通れるように、船体が水に浸かる部分を最小限にしているのも特徴だ。共和国時代には貴族や富裕な商人の足だったが、今は運河クルーズに利用されている。「ゴンドリエーレ」ゴンドラの漕ぎ手は「ゴンドリエーレ」と呼ばれ、この街で900年以上の歴史を誇る職業だ。サンマルコ寺院イタリアのヴェネト州の州都ヴェネチアで最も有名な大聖堂である。ナポレオンが「世界一の美しい広場」と絶賛したサン・マルコ広場に面して建造され、ヴェネチア共和国の総督邸兼政庁であったドゥカーレ宮殿に隣接し繋がっています。ドゥカーレ宮殿サンマルコ寺院の鐘楼からサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会サン・マルコ広場ヴェネツィアの広場は方言でカンポ(campo)と呼ばれるが、サン・マルコ広場は別格であり、ピアッツァ(piazza)と呼ばれる。世界で最も美しい広場とも言われており、海からの玄関口でもある。イタリア・ベネチアの名産品として有名なベネチアンマスク。年に一度開催されるカーニバルでは、魔女のスタイルやカラフルな衣装に、このマスクを付けたコスチュームで舞台の中心、サンマルコ広場に集まります。カーニバル1162年に始まった、歴史あるお祭りで、観光客も参加できるところも魅力のひとつです。今のような仮面のスタイルが確立されたのは、18世紀の事で、一般市民も貴族も仮面をつける事で、身分や素性を隠して日常を忘れ、開放感に浸ったといいます。コロナの流行で世の中のリモート化が急速に進んだ一方、誰かとの他愛もない会話だったり、道端の花を愛でる時間だったり、アナログとして大事にしなければならないものが確かにある。そんな思いが交錯するかのような道と人々と街が織りなすストーリー「THE ROAD」。静かで温かな空気感をとらえる笠原秀信のアートのようなフォトグラフィーに、とくと注目したい。過去と現在、そして未来を見つめながら、私たちの道はまだまだ続いていく。「THE ROAD - in Venezia」 : Hidenobu Kasahara
2022年02月26日ヴェネチア、ベルリンの国際映画祭をドキュメンタリーで初めて制した名匠ジャンフランコ・ロージの最新作『国境の夜想曲』から、中東の紛争地の治安を守り続ける、女性のみの「ペシュメルガ女性部隊」の本編映像とオフショットが到着した。本作の舞台となる中東。その紛争地域に国家とは認められていないが実質的にクルド人が暮らすイラク北部クルド自治政府が存在する。そのクルド自治政府が統括する武装部隊が「ペシュメルガ」。クルド語で「死と対峙(たいじ)する者」を意味し、強力な装備と練度の高さから戦闘力は1国の軍隊に匹敵するとされる。兵力は約22万人ともいわれ、クルド自治区の治安維持を担う。2003年のイラク戦争では米国を支援し、クルド人を弾圧していたイラクのフセイン政権を崩壊に導いた。そのペシュメルガには女性部隊が存在する。家族や友人をISISによって失い、二度と同じことを繰り返さないために戦う者や、家族がすでに武装部隊として活動しており自然な成り行きとして参加する者など様々。本作では女性たちが大きな武器を持ち警備にあたる様子や、武器の手入れをし、束の間の休息にひとつの暖房とやかんを囲んで暖を取り、体を寄せ合って眠るなどの日常が記録されている。やかんにかざす手の中には、左手の薬指に指輪をしている者もいる。また、撮影時のオフショットとして、ロージ監督を囲む女性兵士たちの写真も公開。移動のバス内で撮られたもので、ぎこちない笑顔ながらも監督と兵士たちの間に和やかな関係が生まれたことを感じさせる貴重な1枚となっている。クルド自治区ではISISと対峙する形がいまも続いている。2019年、アメリカにより当時のIS指導者アルバクダディが殺害され、弱体化したかに見えたが、すぐに次なる指導者を擁立。しかし、その指導者アブイブラヒム・ハシミ・クライシも今月3日に米軍の急襲により自爆死。アメリカ政府はこの作戦により、「おぞましいテロリストはこの世を去った。我々は世界中のどこであろうとテロリストたちを追い詰める」と話すが、クルドの人々にとって、安住の日はまだ限りなく遠いといえるだろう。『国境の夜想曲』はBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:国境の夜想曲 2022年2月11日よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開©︎ 21 UNO FILM / STEMAL ENTERTAINMENT / LES FILMS D’ICI / ARTE FRANCE CINÉMA / Notturno NATION FILMS GмвH / MIZZI STOCK ENTERTAINMENT GвR
2022年02月14日ヴェネチア国際映画祭、トロント国際映画祭に続き、フランスでの記録的大ヒットを皮切りにドイツ、イタリア、スペイン、ロシアなどヨーロッパを中心に24の国と地域で公開を迎えると初登場No.1を獲得した『DUNE/デューン 砂の惑星』。本作の溢れ出る魅力を凝縮した15秒SPOT3タイプが解禁となった。本作は、IMAX(R)社全面バックアップのもと、クリエイターが意図したクオリティの映像&音響が劇場で変換(=劣化)することなく再現可能にし、IMAX(R)認証カメラで撮影されたまさに「Filmed for IMAX(R)」作品として、多くの観客に新たな価値観を生み出した。今回は2D字幕&吹替、IMAX(R)に加えて、<4D>、<Dolby CinemaTM>での上映が決定している。また、この度解禁された最新映像は、ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、オスカー・アイザック、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らが歓声に包まれた、ヴェネチア国際映画祭での“熱狂”を凝縮した世界熱狂編。激しいアクションシーンや、閃光舞降りる戦場、迫りくるサンドワームなどが画面から飛び出さんばかりの“迫力”満点のシーンで構成された未来体験編。“宿命”を背負う主人公ポールの葛藤と決意の表情を映し出したポール編の3本が解禁。世界熱狂編とポール編には、ティモシーから日本のためだけに寄せられたメッセージ映像が収録されており、ポールを演じている劇中に見せる、鋭い眼差しとはまた別の表情を見せる彼の愛くるしい表情を確認することができる。『DUNE/デューン 砂の惑星』は10月15日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:DUNE/デューン 砂の惑星 2021年10月15日より全国にて公開©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2021年09月22日第78回ヴェネチア国際映画祭で、金獅子賞はフランス人監督オドレイ・ディワンの『Happening』(英題)に決定した。同作はアニー・エルノーの小説を映画化したもので、舞台は1960年代初期のフランスで中絶が違法だった時代。主人公の予期せぬ妊娠をしてしまった女子大生の苦悩が描かれる。審査員長のポン・ジュノ監督は、金獅子賞の選出に関して「満場一致で決まった」と話している。ディワン監督は受賞スピーチで「私はこの映画を怒りを持ちながら作りました。また、心から強く望みながらも作りました。私の腹部、内臓、心臓、頭部とともに作った作品です。私は『Happening』を1つの体験にしたかったのです」と訴えた。オドレイ・ディワン/第78回ヴェネチア国際映画祭 Photo by Vittorio Zunino Celotto/Getty Images銀獅子賞は、ジェーン・カンピオンが監督・脚本を務めた『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が受賞。ベネディクト・カンバーバッチが主演、実生活で婚約中のジェシー・プレモンス&キルスティン・ダンストが夫婦役を演じている。主人公はカリスマ的な存在感を放つ兄(ベネディクト)。一緒に牧場を経営している弟(ジェシー)のもとに、息子を連れた女性が嫁いできてから兄弟の関係に亀裂が入り、事態は思わぬ展開を見せる。審査員大賞はパオロ・ソレンティーノ監督の『Hand of God -神の手が触れた日-』で、同作に主演したフィリッポ・スコッティが男優賞を受賞した。女優賞は、ペドロ・アルモドバル監督の『Madres Paralelas』(原題)に主演したペネロペ・クルス。マギー・ギレンホールが、脚本も手掛けた長編監督デビュー作『The Lost Daughter』(原題)で脚本賞を受賞した。(Hiromi Kaku)
2021年09月13日クリステン・スチュワート主演、ダイアナ元皇太子妃の人生を変えたクリスマス休暇が描かれる映画『スペンサー』(原題)が、現在開催中の第78回ヴェネチア国際映画祭(~9月11日)コンペティション部門でワールドプレミアとなり、公式上映とともに記者会見が現地時間9月3日(金)に行われた。監督は、『ジャッキー/ファーストレディ最後の使命』で第73回ヴェネチア映画祭脚本賞を受賞、主演のナタリー・ポートマンをアカデミー賞主演女優賞ノミネートに導いたチリのパブロ・ラライン監督。同映画祭では常連なだけに、本作でも受賞に期待がかかる中、すでに各メディアでのレビューも高く、「ザ・ガーディアン」「ザ・テレグラフ」はともに5つ星、「フィナンシャル・タイムズ」は4つ星。特にクリステンの演技への評価が集まり、「スリリングで勇敢で魅惑的な作品でクリスティンは見事にダイアナである」「クリステンは今年、最も煌びやかな変身を成し遂げた」「クリステンの演技は完璧」と評されている。約5分間のスタンディングオベーション<公式上映>メイン会場のサラ・グランデ前のレッドカーペットに主演のクリステン・スチュワートは、リボンベルトがポイントのペパーミント・グリーンの「シャネル(CHANEL)」のスリップ・ドレスに、同素材の細身のパンツを合わせた可憐なコーディネートのドレスアップで登場。タキシード姿のパブロ・ラライン監督と共に詰めかけたカメラマンたちの前でフォトコールに応じた。今年はコロナの感染対策を考慮し、一般観客の密を避けるためにレッドカーペット前には高い壁が設置され、クローズドで行われたレッドカーペットセレモニー。場外にあるモニターにレッドカーペット場のクリステンやラライン監督の姿が映し出されると大きな歓声が上がるなど注目の高さを感じさせた。映画祭ディレクターのアルベルト・バルベラ氏のエスコートで、1席空けながら満席のサラ・グランデ(1,200席)に入った2人は大きな拍手とともに迎えられ、会場には、今年のコンペ部門の審査員長である韓国のポン・ジュノ監督、同じく審査員で去年、『ノマドランド』で金獅子賞を受賞したクロエ・ジャオ監督も姿を見せた。コミカルなシーンは時折笑いが起こり、またサスペンスフルなシーンでは息を飲むような緊張感が走るなど、観客が集中している様子を感じさせる上映となったよう。エンドクレジットが流れ、場内が明るくなるや否や「ブラボー!」という声と共に拍手が起こり、スタンディングオベーションは約5分間続いた。クリステンとラライン監督も歓声に応え立ち上がり、普段はクールであまり表情を崩さない印象のクリステンが、恥ずかしそうにしながらも満面の笑顔で観客に応える姿が印象的だった。「彼女は本当に光輝くように飛び抜けた存在」とクリステン<記者会見>クリステンは、アイコニックな女優ジーン・セバーグを演じた『セバーグ』がプレミア上映された第76回以来、2年ぶりのヴェネチア映画祭参加。会見冒頭、司会者から「なぜ、ダイアナというテーマを選んだのか」という質問に対し、ラライン監督は「私の母に気に入ってもらえる映画を作りたいと思っていました。ダイアナは著名で美しさにあふれたアイコンでしたが、同時に彼女は母親でもあり、私の母のような普通の人々に深く共感させる力をもった人でした。非常に恵まれた環境に生まれ、貴族出身の人が、なぜあれほどまでにごく普通の人物でいられたのかに、私は長年興味があったんです」と応じる。クリステンも、監督の言葉を引き継ぎ、ダイアナの人々の心に訴えかける力について「彼女の生まれ持った力。この世界には、突き抜けたエネルギーを持っている人がいますから」と回答。「ただ、彼女がどんなにカジュアルで魅力的であったにも関わらず、孤独で寂しい思いをしていたことが、本当に悲しい。人に喜びを与える代わりに、心の中では嫌な思いをしている。人とのつながりを心から欲し、エネルギーを惜しみなく使っている…歴史上、そのような人はいなかったでしょう。だから、彼女は本当に光輝くように飛び抜けた存在となったのだと思います」とダイアナの魅力的な人となりについて触れた。さらに、「誰もが彼女のことを知っているような気がするのは、それが彼女の才能だからであり、親しみやすく、彼女が自分の友達や母親のように感じられるところに、彼女の美しさがありました。しかし皮肉なことに、彼女は心の内を知ることができない人物であり、心の底では孤独になりたくない人物だったのです」ともコメント。通常の伝記映画と異なり、ダイアナが離婚を決意する1991年の3日間に焦点を当てた構成としたことについて、監督は「彼女の長い人生を振り返るのではなく、大きな危機に瀕した瞬間を選べば、彼女の本質にうまく迫ることができるのではないかと思った」と、その意図を明かした。また、ダイアナと同様にパパラッチの標的となってきたクリステンだが、セレブリティの私生活をスクリーンで見せることについて聞かれると、「他人の私生活に立ち入ることと、芸術が世界にもたらす多様性には違いがあります。この映画は何か新たな情報を提供するわけではありません。この映画の狙いは人々の間にある溝を埋めることにあると思います。仮にもし誰かが私についての映画を作ることがあったとしても、私は盗用されたとか、何かが奪われたとは思わないと思います」と本作への誇りを滲ませていた。映画『スペンサー』(原題)は2022年、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:スペンサー(原題) 2022年、全国にて公開©Pablo Larraín
2021年09月06日2021年最大の超大作にして注目作、映画『DUNE/デューン 砂の惑星』が、現地時間9月3日(金)第78回ヴェネチア映画祭にてワールドプレミア。記者会見も実施された。多くのカルチャーに影響を与え続けている伝説のSF小説「デューン/砂の惑星」の映像化となる本作。壮大なスケールの世界観を持つため、完全な映像化は不可能と言われ続けてきたこともあり、その全貌がどのようなものになるのか、世界中から期待が寄せられていた。そしてついに、歴史あるヴェネチア国際映画祭にてそのベールを脱いだ。映画上映後には7分にもわたるスタンディングオベーションが巻き起こり、「映画館でしか味わうことの出来ない“映画の力“を再提示した作品だ」「『2001年宇宙の旅』を初めて観た時の感覚」「まったく新しい時代を立ち上げ、私たちを砂の惑星“デューン“とその先に連れていってくれる」など、世界中で数々の絶賛のレビューが相次いでいる。『ノマドランド』でアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督も、本作について「ドゥニ(・ヴィルヌーヴ)のようなフィルムメーカーが自分のビジョンをつなぎ合わせて、とても素晴らしく、とても映画的な何かを組み合わせることができるということに、私自身希望がもらえます。この映画体験にただただ圧倒されました」とコメントを寄せた。ワールドプレミアには、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督に「ポール役を演じることができる俳優は彼以外考えられなかった」と言わしめ、新時代の“プリンス・オブ・ハリウッド”として映画業界だけでなく、Z世代のスタイルアイコンとしてファッション業界からも注目され、いま世界中から熱視線を集めるティモシー・シャラメが登場。21歳にしてアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートを果たし、SNSのフォロワー数も1,000万人以上とまさに実力と人気を兼ね備えたティモシー。スタイリストはつけず、いつも自身でスタイリングするというファッションにも注目が集まった。巻き起こるティモシーコールにも笑顔で手を振り、ファンからの写真撮影に応じるなどその“神対応”を見せていた。彼を筆頭に他にもゼンデイヤ、オスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、ハビエル・バルデム、チャン・チェン、シャロン・ダンカン=ブルースター、ステラン・スカルスガルド、デイヴ・バウティスタらキャストとヴィルヌーヴ監督や音楽を手掛けたハンス・ジマーらスタッフが華やかな衣装をまとって勢揃い。超豪華メンバーの集結にファンからの熱い声援が飛び交った。「安全な環境があるのなら、ぜひビッグスクリーンで」と監督そして同日に行われた記者会見には、ヴィルヌーヴ監督やティモシー、ゼンデイヤ、オスカー、レベッカ、ジョシュ、ハビエルが登場。世界中の記者からの質問に答えた。本作への出演について「人生最高の栄誉」と語ったティモシーは、「ある意味、僕は導かれていかなければならなりませんでした。これまで自分が経験したことのなかった規模のプロジェクトだったものの、4~5か月の撮影期間を通してどこかの段階で、ここにいる人たち、アーティストたちすべてに、精神的に寄りかかることができたのは幸運でした。全員がこれまで僕が素晴らしいと思った作品に出演していた俳優たちでした」と、彼の演じたポール・アトレイデス同様、撮影でもまわりの人々に導かれながら乗り切ったことを明かす。ポールの夢にたびたび現れるチャニを演じたゼンデイヤも「ドゥニ監督とお仕事することについては、彼は類稀なフィルムメーカーで、ずっと尊敬していた監督でしたから。デューンという豪華なパズルの一つのピースであることが最高に光栄です。とても謙虚な気持ちになりましたし、特別な時間でした」と撮影を振り返った。本作における最大のチャレンジは?と質問を投げかけられたヴィルヌーヴ監督が、「何よりも大変だったのは、ティモシーの髪に対処し、それを極めることでした。あれは生き物です。私はティモシーだけでなく、ティモシーのヘアスタイルの演技指導もしなければならなかった」とジョークで返すと、思わずティモシーも照れ笑い。しかし、「もちろん今は誰にとっても非常に困難な時期で、安全第一というのは誰もが同意することだが、もし観客が問題ないと思ってくれて、安全な環境があるのなら、本作をぜひビッグスクリーンで観てほしいです。本作はIMAXを思い描き、念頭に置いて設計、制作、撮影されているから。それはサウンドデザインにしてもそうです。本作をビッグスクリーンで観てもらうというのはフィジカルな体験なのです。本作を最大限没入感のある作品として設計するよう努めました。ビッグスクリーンというのは、私にとって(映画の)言語の一部なんです」と、改めて『DUNE/デューン 砂の惑星』が劇場で観るために創られた映画であるという、本作に込められた自信と想いを語ると、会場からも拍手が巻き起こっていた。『DUNE/デューン 砂の惑星』は10月15日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:DUNE/デューン 砂の惑星 2021年10月15日より全国にて公開©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2021年09月04日イタリア・ヴェネチアに滞在中のジェイク・ギレンホールが、“ある人”との2ショットをインスタグラムで公開し、話題になっている。「ヴェネチアで、偶然古い友人に出会った」とだけキャプションをつけた写真には、アップのジェイクと、遠くに見える橋の上に立っているミステリオが写っている。ミステリオとは、ジェイクが2019年に『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で演じたキャラクター。ジェイクはミステリオのコスプレイヤーを遠目に発見し、近づいて直接会ったのか、2枚目の写真にはミステリオのコスプレイヤーだけが写っている。コスプレイヤーはヤーコポ・ルドヴィコさんというイタリア人の男性で、「写真をシェアしてくれてありがとうございます。私がその写真に写っているコスプレイヤーです」とジェイクの投稿にコメント。普段はトリノを拠点にコスプレ活動をしているというヤーコポさんは、「ミステリオのコスプレをしてヴェネチアに行くなんてそうあることじゃないのに、ジェイク・ギレンホールにまで会えてしまった。さらに、彼がぼくの写真を投稿してくれるなんて、本当にめったに起きることじゃない」と自身のインスタにも興奮した様子をつづっている。(Hiromi Kaku)■関連作品:スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム 2019年夏、全国にて公開予定
2021年09月03日ヴェネチア映画祭のオープニング作品が、ペドロ・アルモドバルの最新作になることが発表された。タイトルは『Madres Paralelas】で、主演はペネロペ・クルス。主人公は、ふたりの妊婦。どちらも計画外の妊娠で、病院で会話をするうちに絆ができていくという物語らしい。この映画祭ではほかに、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』、デビッド・ゴードン・グリーン監督の『Halloween Kills』の上映が確定している。映画祭は9月1日から11日まで。文=猿渡由紀
2021年07月20日ダイアナ妃の伝記映画『Spencer』(原題)が、9月1日から11日まで開催されるヴェネチア国際映画祭で世界初公開されることが分かった。コンペティション部門で上映されるという。「Variety」誌が報じた。主人公のダイアナ妃を演じるのはクリステン・スチュワートで、今年1月と3月にクリステンがダイアナ妃に扮した写真が公開されると「本物のダイアナ妃の写真かと思った」「思わず2度見した」と映画ファンを驚かせた。監督は『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』のパブロ・ラライン。『ジャッキー』も5年前にヴェネチア国際映画祭のコンペ部門で金獅子賞を争ったが、脚本賞の受賞となった。『Spencer』は、金獅子賞争いはもちろんのこと、今年から来年の賞レースに絡んでくる重要作品であるとして、各メディアでの話題性も高い。物語の中心となっているのは、ダイアナ妃がチャールズ皇太子との離婚を決意した1991年のクリスマスの週末。「スペンサー」とはダイアナ妃の旧姓である。チャールズ皇太子役はジャック・ファーシング(「風の勇士 ポルダーク」)が演じる。今年のヴェネチア国際映画祭では、映画ファンの待望作『DUNE/デューン 砂の惑星』も世界初公開を迎えるが、こちらはコンペ部門での上映ではないという。(Hiromi Kaku)
2021年07月13日ヴェネチア、テリュライド、トロント、ニューヨークという、秋の4つの映画祭すべてでかかる『ノマドランド』が、10月のニューヨークを除3つの映画祭で、ほぼ同時にプレミア上映された。テリュライドは今年、コロナのためにキャンセルされたが、L.A.のローズボウルに特設されたドライブインシアターで、「テリュライド・イン・L.A.」の名のもとに、一般に向けて上映されている。トロントでも現地の一般観客のためにドライブインシアターで上映が行われたが、マスコミ試写はデジタルのみだった。この同時プレミアの翌朝、今作は、ヴェネチアで、最高賞にあたる金獅子賞を受賞。主演のフランシス・マクドーマンドは受賞を逃したものの、オスカー候補入りはほぼ間違いないと思われる。『ノマドランド』は、夫を亡くし、勤めていた会社が倒産したために仕事も失った60代の女性ファーンが、RV車で移動しつつ、あちこちで仕事を探して生活していく様子を描くもの。原作であるノンフィクション本の映画化権を買った主演のマクドーマンドは、『Songs My Brothers Taught Me』と『The Ryder』でアメリカ西部を描写した中国生まれのクロエ・ジャオ監督にこのプロジェクトを持ち込んだ。ジャオは過去作品で、プロの俳優ではない、一般人を映画に起用してきたが、オスカー女優マクドーマンドが主演する今作でも、基本的にその方針を貫いている。その結果、映画は、時にドキュメンタリーを見ているような錯覚を起こす、とてもリアルなものに仕上がっている。ファーンをはじめとするノマド(遊牧民)たちが見せつけるのは、現代社会で見逃されている、リタイアする経済的余裕のない高齢者たちの実態だ。60代かそれ以上の彼らは、働きたくても安定した雇用がなく、アマゾンの倉庫業務など、季節労働の職を求めて動き回るしかない。だが、彼らには威厳があるし、決して不幸ではないのだ。そんな彼らを、温かな目線で、敬意を持って見つめるのが、この映画なのである。アメリカの話ではあるが、日本を含む多くの先進国では、多くの高齢者が同じような問題に直面している。それらの人々に共感を呼ぶであろう今作は、これからのアワードシーズンで健闘が期待されそうだ。アメリカ公開は12月4日、日本公開は来年1月。文=猿渡由紀
2020年09月14日黒沢清監督の最新映画『スパイの妻』(10月16日公開)が2日(現地時間)よりイタリアで開催されている第77回ヴェネチア国際映画祭で、銀獅子賞(監督賞)を受賞し、黒沢監督、蒼井優、高橋一生が喜びのコメントを寄せた。同作は黒沢清監督の最新映画で、蒼井優が主演を務める。1940年、神戸で貿易商を営む優作(高橋)は、赴いた満州で偶然恐ろしい国家機密を知り、正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。聡子(蒼井)は反逆者と疑われる夫を信じ、スパイの妻と罵られようとも、その身が破滅することも厭わず、ただ愛する夫とともに生きることを心に誓う。太平洋戦争開戦間近の日本で、夫婦の運命は時代の荒波に飲まれていく。ヴェネチア国際映画祭は、カンヌ・ベルリンと並ぶ世界三大映画祭のひとつであり、世界最古と呼ばれる歴史深い映画祭。メインであるコンペティション部門に、唯一の日本映画として選出された同作だが、9日22:00(現地時間)のワールドプレミアは早々に完売となり、世界の黒沢ファンが駆けつけた。上映後の評価も上々で、「近年の黒沢作品の最高傑作!」(Indiewire)、「純粋に楽しむことができ、国際的にも受け入れられるエンタテインメント」(Variety)、「黒沢監督はこの作品で、新たな野心的出発を遂げる」(Screendaily)といったメディアの言葉が並んだ。ヴェネチア国際映画祭の最優秀監督賞にあたる銀獅子賞の受賞は、日本映画としては2003年の北野武監督『座頭市』以来、17年ぶりの快挙。溝口健二監督が『雨月物語』(53)『山椒大夫』(54)で2度、黒澤明監督が『七人の侍』(54)、熊井啓監督が『千利休 本覺坊遺文』で受賞、と日本では5人目の受賞者となった。審査員のひとりクリスティアン・ペッツォルト監督は「大好きな作品です。オペラ的なリズムと画作りで政治ドラマを描く。このような作品には久しく出会っていませんでした。30~40年代の伝統的な世界を現代のスタイルで表現しています」と同作を絶賛した。○黒沢清監督 コメントスタッフと俳優の力が最高のかたちで組み合わさった結果だと思っています。映画の可能性は無限なのだと、この歳になって実感しました。○蒼井優 コメント黒沢監督、銀獅子賞受賞おめでとうございます。ケイト・ブランシェットさんから監督のお名前が呼ばれた瞬間、現場の片隅で、モニターを静かに並んで見つめられていた、監督と奥様の後ろ姿を思い出しました。たくさんの映画仲間から連絡が入り、みんなとても興奮し、感動し、喜んでいます。黒沢監督、本当におめでとうございます。これからも監督の映画を楽しみにしています。○高橋一生 コメントヴェネツィア国際映画祭監督賞受賞、心からお祝い申し上げます。この作品が世界で評価されることを嬉しく思います。黒沢監督のもと、あの空間、あのスタッフ、キャストと共に作品を作り上げていく時間は、最高の体験でした。これからも素晴らしい作品を楽しみにしております。おめでとうございます。
2020年09月13日9月9日昨日、「第77回ヴェネチア国際映画祭」コンペティション部門の公式会見に、『スパイの妻』主演の蒼井優、共演の高橋一生、そして黒沢清監督がリモートで登壇した。昨今の状況により、現地入りは実現出来なかったが、3人はスペースFS汐留に集まり、映画祭の会場であるイタリア・ヴェネチアと中継を繋ぎ、世界に向けて本作への思いを語った。このテーマを選んだ理由についてまず黒沢監督は「社会と個人が引き裂かれ、対立するわかりやすい職業・存在としてスパイがいました。それ以上に、スパイと聞いた瞬間、ある種の映画的魅力が発揮できるんじゃないか?と思うような、映画に撮って魅惑的な言葉のひとつだと感じました」とコメント。今回夫婦役で共演となった高橋さんと蒼井さんは「聡子と優作の関係性は非常に繊細です。互いに思い合う形が違う。表層的なものと、(実際に)内側で思っているもの違いを、黒沢監督が切り取ってくださった。優作を演じる際は、個人の主観やバイアスもあるでしょうが、脚本に忠実に、目の前にいる蒼井さんとお芝居を通して会話することを心がけていました」(高橋さん)。「優作さんがいるから、自分がいるという感覚だったのが、途中から優作さんと共に生きる喜び、一緒に何かを成し遂げようとする喜び、一心同体になっていく喜びを持つようになり、物語を動かしていると思い、その気持ちを大切に演じました」(蒼井さん)と思いを語った。また、日本マスコミ向けの会見も行われ、今回の会見について問われると、蒼井さんは「そこに行けないことを実感するとともに、この状況でも映画は海を渡るという喜びを噛みしめています。こういう形で映画を喜ぶ瞬間があり、映画祭の灯が消えないようにつながっている。それが今年限りであることを祈っています」と収束を願い、高橋さんは「残念という気持ちもありますが、リモートであっても参加させて頂けることを光栄に思い、汐留からヴェネチアを楽しみました。非常にいい経験ができたと思っています」とリモートでの参加をふり返る。そんな2人について魅力を聞かれた黒沢監督は「どこも素晴らしいけど、声が特に素晴らしい!」と言い、「声のすばらしさに関しては、世界のどの人が見ても、『この人はどんな人なんだろう?』と興味がわく強烈な魅力を持っていると思います」と賛辞を贈った。『スパイの妻』は10月16日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:スパイの妻 2020年10月16日より新宿ピカデリーほか全国にて公開©2020 NHK, NEP, Incline, C&I
2020年09月10日Netflix映画『オールド・ガード』で不死身の傭兵を演じ、いまSNSを中心に話題沸騰中のルカ・マリネッリ主演映画『マーティン・エデン』。昨年のヴェネチア国際映画祭で『ジョーカー』のホアキン・フェニックスを抑えて男優賞に選ばれた彼は、本作では独学で作家を目指す労働者階級の青年を熱演する。労働者地区に生まれ育った貧しい船乗りの青年マーティンが、上流階級の娘エレナと恋に落ち、教養に目覚める。本作は、作家を目指し、独学で底辺から高みへと上り詰めようとする彼の切望と激情をルカ・マリネッリが全身全霊で演じた青春文芸ドラマ。マリネッリは1984年生まれ、イタリア・ローマ出身。父、叔母が声優として活躍する俳優一家に生まれ、なんとイタリア語、スペイン語、英語、フランス語、ドイツ語の5か国語を使いこなすマルチリンガル。ローマの演劇学校シルヴィオ・ダミーコ国立演劇芸術アカデミーを卒業。映画の吹き替えでキャリアを積み、2006年から俳優として本格的に活動を始めた。名匠パオロ・ソレンティーノ監督の『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(14)での好演を経て、ベルリン国際映画祭において欧州出身の期待の若手俳優に与えられる「シューティング・スター賞」を受賞。永井豪原作のアニメ「鋼鉄ジーグ」にインスパイアされた『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(17)で潔癖症の悪役を怪演し、イタリアのアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞助演男優賞に輝くなど、若くして数多くの賞を受賞している実力派だ。2017年にはアカデミー賞監督ダニー・ボイルが手掛けたドラマシリーズ「TRUST/トラスト―ゲティ家のスキャンダル」に大富豪に孫の身代金を要求するマフィア役で出演、ドナルド・サザーランドと共演を果たしている。そして『マーティン・エデン』では、労働者階級で働きづめのマーティンを演じるにあたり、準備段階からトレーニングで身体を作りこんだ。撮影の1か月前からナポリでリハーサルをし、訛りや地元民らしいフィジカル・ランゲージを身に着け、上流階級の女性との恋、作家になる夢、目の前に押し寄せる貧困、独学で作家を目指す無学の青年の切望と激情が交錯する複雑な役柄を全身全霊で体現した。さらに7月に全世界配信されたNetflix映画『オールド・ガード』ではシャーリーズ・セロン率いる不死身の傭兵部隊のメンバー、ニッキーとして登場、全世界から注目を浴びる俳優へと進化している。次回主演作として、イタリアの人気コミックを原作にマルコ・マネッティとアントニオ・マネッティ兄弟が手掛けたクライム映画『Diabolik』(原題)の公開が控えているところだ。『マーティン・エデン』は9月よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:マーティン・エデン 2020年9月 シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE
2020年08月01日スウェーデンの奇才ロイ・アンダーソン監督5年ぶりの最新作で、第76回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した『ABOUT ENDLESSNESS』(英題)が、『ホモ・サピエンスの涙』の邦題で11月20日(金)より日本公開されることが決定した。前作『さよなら、人類』(14)で第71回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞(グランプリ)に輝き、5年ぶりとなる最新作となった本作で同映画祭受賞という快挙を成し遂げた巨匠ロイ・アンダーソン。CGはほぼ使わず、野外撮影ではなく巨大なスタジオにセットを組み、模型や手描きのマットペイント(背景画)を多用するという、アナログにこだわった手法で傑作を生みだし続けてきた。動く絵画のような唯一無二の映像美と、独特のユーモアが散りばめられた哲学的な世界観が持ち味で、『散歩する惑星』(00)、『愛おしき隣人』(07)、『さよなら、人類』とカンヌやヴェネチアなど各国の映画祭で受賞を重ねてきた。『ミッドサマー』アリ・アスター監督、『レヴェナント:蘇えりし者』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』アレハンドロ・G・イニャリトゥ、『ブラック・スワン』『マザー!』ダーレン・アロノフスキーなど、名だたる映画監督たちも敬愛する監督にロイ・アンダーソンの名を挙げている。本作で描かれるのは、時代も性別も年齢も異なる人々が織りなす悲喜劇。この世に絶望し、信じるものを失った牧師。戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル…悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。これから愛に出会う青年。陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー…幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける――。映像の魔術師アンダーソン監督が構図・色彩・美術と細部まで徹底的にこだわり、全33シーン全てをワンシーンワンカットで撮影した。圧倒の映像美にのせて「千夜一夜物語」の語り手シェヘラザードを彷彿とさせるナレーションが物語へと誘う。悲しみと喜びを繰り返してきた不器用で愛おしい人類=ホモ・サピエンスの姿を万華鏡のように映し出した本作には、「観た誰もが、この映画を愛おしく思うだろう」(Cineuropa)、「精巧で完璧!この映画は、人類の<幸福のための闘い>について描いた、悲劇的な絵画の集合体だ」(Little White Lies)と海外メディアも絶賛を贈っている。『ホモ・サピエンスの涙』は11月20日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2020年07月30日ヴェネチア映画祭のラインナップが発表になった。昨年の金獅子賞は『ジョーカー』だったが、コロナでアメリカからの渡航が難しいことも受け、今年はハリウッドの存在感が薄い。一方で、これまで批判が多かった、女性監督の作品が少ない問題は、今年、かなり改善されている。コンペに入ったのは、フランセス・マクドーマンド主演、クロエ・ジャオ監督の『Nomadland』、黒沢清監督の『スパイの妻』、ヴァネッサ・カービー、シャイア・ラブーフ出演の『Pieces of A Woman』、ヴァネッサ・カービー、ケイシー・アフレック出演の『The World to Come』など。また、ホライゾンズ部門で上映されるソフィア・コッポラの姪ジア・コッポラの『Mainstream』には、アンドリュー・ガーフィールドが出演する。アウト・オブ・コンペ部門では、ヘレン・ミレン、ジム・ブロードベント出演の『The Duke』が注目される。ヴェネチアは、コロナ勃発後に開催される初めての映画祭。これに先立つサウス・バイ・サウスウエスト、トライベッカ、カンヌ映画祭はすべてキャンセルとなり、ヴェネチアよりやや遅れて始まるはずだったテリュライドも、最近になってキャンセルを発表している。ヴェネチア映画祭は9月2日から12日まで。文=猿渡由紀
2020年07月29日蒼井優主演映画『スパイの妻』が、第77回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されることが決定。蒼井さんと共演の高橋一生、そして黒沢清監督からコメントが到着した。9月2日(現地時間)よりイタリアで開催される、世界三大映画祭のひとつ「ヴェネチア国際映画祭」。今回、本作が出品される映画祭のメインであるコンペティション部門には、毎年各国の実績ある監督たちが名を連ねている。近年では、『ジョーカー』『ROMA/ローマ』『女王陛下のお気に入り』『シェイプ・オブ・ウォーター』などが主要賞を獲得している。また、これまでも数々の国際映画祭で受賞を重ねてきた黒沢監督は、役所広司ら出演『叫』や、蒼井さんも出演した「贖罪」に続き、3度目の出品。コンペティション部門に選ばれるのは、本作が初。黒沢監督は「嬉しい、と同時にたいへん緊張しています。1940年代の日本を生きた夫婦の姿が海外の人の目にどう映るのか、今は予想もつきません」と現在の心境を語っている。主演の蒼井さんは、塚本晋也監督作『斬、』以来、2年ぶりのコンペ出品。「今回は残念ながら現地に伺うことが叶いませんが、会場の皆様にお会いできなくても、想いは通じると信じています。誰かの明日へつながる1本になればと心から祈っております」とコメント。そして出演作が世界三大映画祭に出品されるのは今回が初となる、蒼井さんと夫婦役を演じた高橋さんは、「この時代にこの作品で、このキャストスタッフの下、黒沢組に参加出来た事が夢のようですが、その上にまた、ヴェネチア国際映画祭に参加するという嬉しい知らせを頂きました。より多くの方々に観ていただければと思います」と語った。なお、コンペティション部門の映画祭公式の対象賞は、最高賞の金獅子賞、監督賞にあたる銀獅子賞、審査員大賞、男優賞、女優賞、マルチェロ・マストロヤンニ賞、脚本賞など。現地時間9月2日から12日まで行われ、受賞結果は映画祭最終日に発表予定となっている。『スパイの妻』は10月16日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:スパイの妻 2020年10月16日より新宿ピカデリーほか全国にて公開©2020 NHK, NEP, Incline, C&I
2020年07月28日新型コロナウイルスの影響で、数々の映画祭や授賞式が延期や中止、オンライン開催などの変更を迫られる中、ヴェネチア国際映画祭は9月2日から12日まで予定通り開催されることが明らかになった。イタリア・ヴェネト州のルカ・ザイア州知事が明らかにしたという。予定通りに開催するとはいうものの、同氏は今年の出品数を例年より少なくするだろうと語っていたとのこと。出品作品のラインアップは、例年通り7月下旬に発表されるとみられる。審査委員長はケイト・ブランシェットが務めることが1月に発表されていた。イタリアでは今週からはスポーツジムやプールなどの営業が再開可能に。6月3日からEU諸国からの入国が14日間の隔離措置を取らずに可能になるなど、経済や観光業の活動が徐々に再開されている。6月15日には社会的距離を守りながらの映画館の再開も見込まれている。ヴェネチア国際映画祭は今月初め、映画業界の重鎮たちに同映画祭に関して、今年はどうするべきか意見を求める手紙を送付。その手紙には、「映画祭を予定通り開催するにはどれだけのフィルムメーカー、俳優、プロデューサーが出席してくれるかが重要である」という旨が書かれていた。(Hiromi Kaku)
2020年05月25日コロナの影響で宙に浮いてしまったカンヌ映画祭が、ヴェネチア映画祭とコラボレーションを検討している。カンヌでの上映が決まっていた作品を、「カンヌ2020」というレーベルで上映するというものだ。ただし、来年春までに劇場公開が予定されている作品にかぎるため、コロナで1年以上公開が伸びたものは、資格からはずれる。今年のヴェネチア映画祭は9月2日から12日まで。ヴェネチアは、イタリアまで来られない海外の記者を配慮し、ヴァーチャルも取り入れる形で行うことを考えている。しかしその頃までにコロナが落ち着いているかは不明。もしヴェネチアがキャンセルになった場合、その後に行われるトロント、サンセバスチャン、ニューヨーク、釜山などとのコラボになる可能性もある。文=猿渡由紀
2020年05月11日コロナでイタリアが大打撃を受ける中、9月頭に予定されているヴェネチア映画祭は、まだ実施を諦めていないようだ。ベニス・ビエンナーレのプレジデント、ロベルト・チキュートが、イタリアの通信社に対して語ったところによると、映画祭は、今も通常のプログラムのまま準備を進めているとのことである。入国、出国規制やエアの欠航で現地に来られない海外の記者のために、デジタルで見せることも検討するとのこと。一方で、フランスのカンヌ映画祭は、コロナで元々の日程の5月から6月下旬または7月頭に延期を決めたものの、その新たな日程でも開催が難しいとの結論に達したばかり。ヴェネチア事務局は、カンヌと共同でやることを、現段階では考えていないそうだ。文=猿渡由紀
2020年04月21日昨年のヴェネチア国際映画祭で作品賞<InterFilm部門>&男優賞<オリゾンティ部門>を受賞し、東京国際映画祭でも話題となった『テルアビブ・オン・ファイア』から、驚きと笑い満載の予告編と日本版ポスタービジュアルが解禁となった。人気ドラマの結末をめぐり民族が対立!? 笑撃のラストに世界が喝采主人公となるのは、人気メロドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の制作現場で出演者の言語指導として働いている、エルサレムに住むパレスチナ人青年のサラーム。撮影所に通うために、毎日面倒な検問所を通らなくてはならない。ある日、サラームは検問所のイスラエル軍司令官アッシに呼び止められ、咄嗟にドラマの脚本家だとうそをついてしまう。アッシはドラマの熱烈なファンである妻に自慢するため、毎日サラームを呼び止めては脚本に強引にアイディアを出し始める。困りながらも、アッシのアイディアが採用されたことで、サラームは脚本家に出世することに。しかし、ドラマが終盤に近付くにつれ、結末の脚本をめぐって、イスラエル側を良く見せたいアッシとリアリティを求めるパレスチナ側のドラマ制作陣の間でサラームは板挟みに!果たして、彼が最後に振り絞った“笑撃”のエンディングとは!?今回解禁された予告では、TVドラマの現場で働くパレスチナ人の主人公サラームが、ひょんなことから検問所でイスラエル軍司令官と出会い、司令官からもらったアイディアによって脚本家へと出世していく姿が映し出される。その後も家庭料理のフムスと交換に、司令官から脚本の助言をしてもらい、民族も立場も違う2人が意気投合!しかし、ドラマ終盤になるにつれ、パレスチナ人のドラマプロデューサーとイスラエル人の検問所司令官との間で意見が食い違い、2人の民族間で板挟みとなるサラームは何者かに拉致されてしまう。さらには、降板すると言い始めた主演女優、幼なじみからもプレッシャーをかけられ、窮地に立たされるサラーム。彼がどんなエンディングを書いたのか、期待感を抱かせる映像となっている。また、日本版ポスターでは、パレスチナ人青年とイスラエル人の検問所司令官が対峙するも、“紛争なし!爆撃なし!笑いあり!”のコピーとともに映画のキーアイテムである中東の家庭料理フムスや、メロドラマの写真も配され、笑撃的な展開を予感させている。『テルアビブ・オン・ファイア』は11月22日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2019年09月11日アメコミ界きっての“ヴィラン”ジョーカー生誕の秘密をオリジナルストーリーで描いた『ジョーカー』が第76回ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞に輝いた。DCコミックスの映画化作品が同賞を受賞するのは、史上初めて。仮面の扇動者が映画史を“転覆”させた。そんな記念碑ともいえる本作は、もちろんDC映画史上最高傑作だ。『ダークナイト』以来の衝撃、それを凌駕するカオスと興奮がむせかえっている。「本当の悪は笑顔の中にある」。しかし、映画がクライマックスを迎えた瞬間、あふれる涙を抑えることができなかった。その理由はいったい何なのか、自分でもわからない。観終わった後には、世界の見え方がガラッと変わってしまった。この感覚、本作を見れば、きっと共感してもらえるはずだ。現代社会の病巣を鋭く投影しながら、現実/妄想をさまようジョーカーの「痛ましさと危うさ」を鮮やかに切り取る視線。社会派ドラマの側面を強調しつつ、まるで時限爆弾のように、巧みに仕掛けられた伏線が、時間差で連鎖反応を起こすエンターテインメント性も大きな魅力だ。コミックの世界観を“匂わせる”バランス感覚も絶妙で「バットマン」ファンも絶対に満足できるはず。ホアキン・フェニックスの“名演”は現時点で、オスカー最有力。悪魔がかったその姿が、神々しい。『ジョーカー』は10月4日(金)より全国にて公開。(Text:内田涼 @uchidaryo_eiga)(text:Ryo Uchida)■関連作品:ジョーカー 2019年10月4日より全国にて公開© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & © DC Comics”
2019年09月08日第76回ヴェネチア国際映画祭(8月28日~9月7日)にて初めての開催となる「ジャパン・フォーカス」が開幕。選出された『楽園』『人間失格太宰治と3人の女たち』『カツベン!』『蜜蜂と遠雷』の関係者が現地時間9月2日に行われた合同記者会見に出席し、『楽園』からは村上虹郎と二宮直彦プロデューサーが参加した。今回が初開催となるプレス・業界関係者向けの日本映画特集上映&交流イベント「ジャパン・フォーカス」。記者会見の場には各国から多くのメディアが集まり、本イベントに対する現地の期待の高さが感じられた。「日本を代表するキャスト陣が魂と心を削りながら演じてくれた」映画『楽園』からは、杉咲花演じる紡に思いを寄せる幼なじみ・野上広呂を演じた村上さんと二宮プロデューサーの両名が記者会見に出席。村上さんは「映画祭は色々な人と出会える、ご縁のある場所だと思っていて、僕もデビュー作で海外の映画祭に行かせていただき、様々な映画監督や俳優さんと出会えて、今もそのご縁が続いているのがありがたい」と語り、「こういった海外の映画祭で日本という国、そして日本映画の良さをもっともっと伝えて行きたい」と由緒あるヴェネチア国際映画祭への参加を真摯にコメント。二宮プロデューサーは「全世界共通だと思いますが、映画が完成するのは小さな奇跡の連続だと思っています」と前置きしながら、「『楽園』が完成したのは2つの奇跡がありました。一つは瀬々(敬久)監督の脚本。この脚本無くしてはこの企画は成立しませんでした。そしてもう一つは、主演の綾野(剛)さんやここにいる村上さんを始めとした、日本を代表するキャスト陣が魂と心を削りながら演じてくれたことです」と世界に向けて堂々と作品をアピールした。ヴェネチアは「日本と密接にある映画祭」蜷川監督と2ショット取材もまた、合同記者会見と同日に行われたレッドカーペットセレモニーには、「ジャパン・フォーカス」に選出された蜷川実花監督ら各作品の面々が登場すると会場は拍手喝采。レッドカーペットを囲うようメディアが溢れかえっており、様々な言語が飛び交い国境を越えた映画の祭典を盛り上げていた。レッドカーペットを歩いた村上さんは各国のメディアからのリクエストに丁寧に答え、ときには蜷川監督と2ショットでの取材に応じる姿も。村上さんは「今回は是枝裕和監督、塚本晋也監督、オダギリジョーさんなど日本映画界の先輩方が数多く来ており、改めて日本と密接にある映画祭だと感じました」と映画人としてヴェネチアの地に降り立った喜びを噛みしめていた。世界三大映画祭の一つで歴史あるヴェネチア国際映画祭にて、日本映画の最新話題作を集めた上映会の催しは今回が初めてであり、イタリアの映画業界並びに欧州で日本映画のプレゼンスをより高めることが期待されている。なお、日本での公開に先立ち、『楽園』は現地時間9月3日17時より公式上映される。『楽園』は10月18日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:楽園(2019) 2019年10月18日より全国にて公開© 2019「楽園」製作委員会カツベン! 2019年12月13日より全国にて公開©2019「カツベン!」製作委員会蜜蜂と遠雷 2019年10月4日より全国にて公開(C)2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会人間失格 太宰治と3人の女たち 2019年9月13日より全国にて公開© 2019「人間失格」製作委員会
2019年09月03日第76回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門へ正式出品され、現地時間8月31日(土)に世界初お披露目された『ジョーカー』に早くも絶賛の嵐。レッドカーペットセレモニーには主演のホアキン・フェニックス、共演のザジー・ビーツ、監督・脚本をつとめたトッド・フィリップスが参加、彼らは記者会見にも登壇した。本年度アカデミー賞の行方を占う本映画祭ほか、第44回トロント国際映画祭ガラ・プレミア部門にも選出され注目を浴びている本作。そんな本作のレッドカーペットセレモニーとあって、会場は炎天下にも関わらず世界中から集まった大勢のマスコミと早朝から陣取ったジョーカーのコスプレをしたファンや、ホアキン・フェニックスの写真や似顔絵を手にしたファンで溢れかえった。本作のスタッフ・キャストに先行して、是枝裕和監督最新作『真実』に主演するカトリーヌ・ドヌーヴ、『ブルージャスミン』『キャロル』のケイト・ブランシェット、『女王陛下のお気に入り』『トールキン旅のはじまり』のニコラス・ホルト、さらにホアキンの婚約者である『her 世界でひとつの彼女』『キャロル』のルーニー・マーラなど大物俳優たちがこぞって祝福に駆け付けた。熱気に包まれた会場にザジー・ビーツ、トッド・フィリップス監督、そしてホアキンが登場すると会場のファンからは大歓声が!3名がファンへのサインや撮影に応じると、中には感極まって泣き出すファンの姿も見られ、プレミア上映の時間が迫り、ホアキンが会場への移動を促されるも、押し切ってファンの元へ戻るひと幕もあった。8分間のスタンディングオベーション!「アカデミー賞の価値がある」その後の座席数1,032席を誇るSala Grandeで世界初お披露目となる上映が行われると、終映時には「ブラボー!」の声と今年の上映一番の拍手喝采が起き、スタンディングオベーションが8分間も続いた。その圧倒的な完成度とジョーカー誕生の衝撃の物語を目撃した評論家からは、「ホアキン・フェニックスにはアカデミー賞の価値がある」(Total Film)、「ホアキン・フェニックスに心奪われる」(Time Out)、「決して見逃してはならない作品」(Hollywood Reporter)、「大胆かつ衝撃的で、この上なく美しい」(Empire)など、早くも絶賛の声が続出中だ。監督「ジョーカーの完璧な狂気にたどりつくまで、ホアキンと毎日話し合った」過去に『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』でゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞したことのあるフィリップス監督は、「本作で最初からはっきりしていたのは、これまで描かれてきたジョーカーとは異なるアプローチをすること。ジョーカーの過去は原作でも詳しく描かれていないから、自由に創造できるスペースがあったんだ」と明かし、「だから、ジョーカーの完璧な狂気にたどりつくまで、ホアキンと毎日話し合って、撮影中ですら脚本を書き替えていったんだ」と、ジョーカーという人物を追及した過程をふり返る。「もともとはカオスをもたらすのが彼の目的だったわけじゃない。彼のゴールはあくまで『人々を笑わせたい』、『世界に喜びをもたらしたい』ということだったんだ。でもそれが様々な出来事が重なって、まったく異なる結末になってしまうんだ」と、記者会見では物語の行く末をにおわせた。ホアキン「役者人生で初めての経験」、ジョーカー役をふり返るさらに、これまでアカデミー賞3度のノミネート経験を持ち、本作での受賞に注目が集まっているホアキンは「アーサーの明るい部分に興味を持ち、深く探ってみたいと思った。彼には、苦悩もありますが、喜びもあり、幸せを感じ、人との繋がりや、温かさ、愛を求めている人物」と、“悪のカリスマ”ジョーカーのイメージとはかけ離れたアーサーの人物像に興味を抱いたことを告白。「彼が、単に苦痛を抱えたキャラクターだとは思っていませんし、私は演じる上でキャラクターをそういう風に決めつけることは、絶対にしない。8か月かけて探求したこのアーサーという人物を一言で語るのは難しいが、オファーを受けてからの数週間で感じた彼と撮影を終えるころに感じた彼とでは完全に異なっていた。常に変化していて、役者人生で初めての経験だ」と、改めてその役が与えた影響に言及、「“ジョーカーの笑い方のオーディションをして欲しい”とトッドに依頼したんだ。彼は“(役に決まっているんだから)お願いだからやめて!”って気まずそうにしていたけどね(笑)」とジョーク交じりに語っていた。本作には、本映画祭最高賞の“金獅子賞”受賞、および早くもアカデミー賞への期待もますます高まっている。『ジョーカー』は10月4日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ジョーカー 2019年10月4日より全国にて公開© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & © DC Comics”
2019年09月02日第76回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門オープニング作品に選出された是枝裕和監督最新作『真実』の公式上映が行われ、是枝監督やカトリーヌ・ドヌーヴらが出席。上映後には6分にも及ぶスタンディングオベーションが起こった。『真実』誕生のきっかけは――まず行われた公式記者会見では、「元々は、楽屋のシーンだけで出来上がる舞台を考えていました。しかし、実際に映画が動き出したのは、ジュリエット・ビノシュさんから一緒に映画を作る冒険をしないかと、2011年に提案をいただいたことがきっかけです」と本作製作の経緯を明かす是枝監督。続けて、「脚本が完全に固まる前の段階で、何度もお二人にお会いして、インタビューをさせていただき、女優という人生を送られている方の生の言葉を、どのように脚本に落としていくかという作業を、継続的な信頼関係のなかで、数年に渡って行っていきました。その結実したものがこの『真実』です」と語った。本作で大女優ファビエンヌを演じたカトリーヌも「是枝監督が言ったように、脚本の初稿を読んだ後で会いました。それからパリ、そしてカンヌで会って、日本でも会いました。こんなことが1年以上続きました。面会や本読み、コメントを通して、彼が言ったように、作られていったのです」と話し、ファビエンヌの娘リュミール役のジュリエット・ビノシュは「是枝監督と仕事をすることは数年前からの夢でした」「さらにカトリーヌとの共演も夢のようです」「だからこの映画は私にとって夢の実現なのです」と並ならぬ思いを明かしていた。是枝組に参加してみて――また、撮影については「とてもユニークで複雑な経験」とカトリーヌ。「最初の週は少し大変でしたね。ある人を見ながら、他の人の話を聞くのに慣れるまでに時間がかかりました。なぜなら話は是枝監督の通訳を通していたからです。でも時間が経つと…。まず質問したり、何か言いたい時は、肝心なことに絞って話します。撮影についてのおしゃべりがないのです。それはかなり特殊なことでした」ともどかしさを口にしつつ、「でも経験してよかったと思います。是枝監督と一緒に撮影できて幸せでした」と特殊な経験についてコメント。一方、撮影前にちゃんと準備してから入りたいタイプだというジュリエットは、「準備できるか尋ねた時に、『是枝監督は役者が準備することをあまり好まない』と聞いたので、戸惑いました。最初は是枝監督の指示を待ちましたが、撮影中に彼が私と一緒に演じていることに気付きました。私と一緒に呼吸し、言葉が理解できなくても、一緒に演じていたのです」とこれまた特殊な経験をしたそう。そして、ある夕食のシーンでジュリエットは深刻な側面を押し出し演じたそうで、「是枝監督はラッシュを見て、『シーンに重みを加えてくれてありがとう』と言ってくれました。穏やかに港を目指す船のようでした。他の役者たちを乗せてくれたのです。カトリーヌと私以外にも人物はいますが、この2人の関係が映画の中心です。これまで映画で共演したことも、他の状況で一緒になったこともない女優たちです。その2人が出会って、何年も待ち続けた映画に出るのです。そういう意味では映画の魔法です」と監督とのエピソードを明かした。子役について――子役が強い存在感を示すことが多い是枝監督作品。これまでにも多くの作品で子どもたちを撮ってきた是枝監督だが、今作でも注目の子役が登場。それが、リュミールの娘役のクレモンティーヌ・グルニエ。「オーディションで会ったとき、とても自由奔放で、彼女なら、おばあちゃん(ファビエンヌ役)の性格が隔世遺伝で孫に伝わっているという設定に出来るなと思いました」とクレモンティーヌ起用の決め手を明かし、「そこで彼女に合わせて、キャラクターを書き直しました。日本での撮影と同じように、事前に台本を渡さずに、おばあちゃんの家に遊びに行く話だよと言うことだけ伝えて、あとは現場では通訳を介して、『おばあちゃんにこういってごらん』、『ママのいったことを繰り返してごらん』と、口伝えで台詞を渡すというやり方で全編撮影しました」と撮影方法について説明。さらに「彼女の存在が大人たちのお芝居にもいい風を吹かせてくれたなと思っています。そして、ここに並んでくださった女性キャスト陣のアンサンブルの一角をちゃんと担ってくれたなと思っています」と称賛。クレモンティーヌは「撮影した時、最初は言われたことがよく分からなかったけど、途中から何を求められているか分かってきました。どこに立って、何を言えばいいかも。最初は、どこで何を言えばいいか、間違ってばかりだけど、途中から成長して、うまくなりました」と撮影に参加した感想を語った。オープニングのレッドカーペットに登場!ヴェネチア・リド島で開幕した今年のヴェネチア国際映画祭は見事な快晴に恵まれ、大勢のマスコミや観客が集結する中、オープニングのレッドカーペットに監督とキャスト陣が登場。是枝監督は、「ジョルジオ・アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のオーダーメイドタキシードにえんじ色の蝶ネクタイ姿で登場。カトリーヌは「ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)」の朱色と黒のドレス、ジュリエットは「アルマーニ・プリヴェ(ARMANI PRIVE)」のセクシーなドレスで現れたほか、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ、マノン・クラヴェルも登場。観客からは「コレエダ!」という歓声が上がり、是枝監督の国際的な人気ぶりが伺えたほか、ジュリエットと是枝監督は会場に集まった観客の元へ駆け寄り、サインなどのファンサービスも行っていた。公式上映でスタンディングオベーション!その後行われた公式上映では、笑いが巻き起こったり、涙したりと、観客もすっかり魅了された様子。上映終了後は6分にも及ぶスタンディングオベーションが続き、オープニングを飾るに相応しいワールドプレミアになった。上映後、是枝監督は「カトリーヌさんが『とても温かい良い上映だったわ』と、すごく笑顔で語りかけてくれたので、よかったなと思いました。なかにいると、観客の反応を確認するほどの余裕がないのと、僕自身出来上がってからまた何度も作品を観ていないので、編集の事を気にして見てしまっていて。(笑)でも良かったみたいです。ジュリエットさんも、『観ていて、いろんな感情の層が厚い映画になっていて楽しめた』と仰っていたので、まず2人の感想にホッとしました」と2人の反応に胸をなでおろす。また手応えについては「あります!ただ、最終的にはフランスの方がみてどのくらいこの映画が、もちろんフランスのスタッフが見てOKだしてくれてはいるんですけど日本語だと最終形をみても字幕を見てでしか判断が出来ないっていうところでどこかまだちょっと出来合上がったものにたいしての自己評価が最終的にどう落ち着くのかがつかめないところはあるんですけど。現場にかんしていうとほぼ自分の思い通りに、制作のプロセスも、出来上がった作品もですけどできたんじゃないかとそこは自信あります」と力強く語る。授賞式を控え――そして、9月7日(土)には授賞式が予定されている。監督も授賞式に参加するが「言葉の選び方が難しいですが、僕はオープニングで満足ですね」と監督。「作るたびにコンペで受賞を期待されるのは作り手にとってはプラスではなくて、色んなものを作りたいと思っているなかで、今回は本当に軽いタッチで秋のパリの水彩画を描くように、日差しに溢れてほかほかするような読後感で、観客の方には劇場を出ていってほしいなと思っていています。コンペの受賞に偏見を持っているわけではないのですが、三大国際映画祭のコンペの受賞って意外ともう少しこってりした油絵の方が好まれる傾向があると思うんです、いいか悪いかは別として。今作ではそことは違うところに球を投げているというか」と賞についてコメント。映画は作りたい方向で仕上がっていると、満足していると言うが、「でももし、今日のお客さんとは別の評価をしていただけることがあるのでしたら嬉しいです」と話していた。『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2019年08月29日28日(現地時間)、第76回ヴェネチア国際映画祭が開幕し、是枝裕和監督の『真実』がオープニングを飾った。同作ではフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴ&ジュリエット・ビノシュ、アカデミー賞にノミネート歴のあるイーサン・ホークと豪華キャストが共演。同映画祭において、日本人の監督作品がオープニング作品に選ばれるのは初めての快挙だ。コンペティション部門に出品されている作品は、『真実』を含めて21本。身近なアメリカを製作国としている作品は4本ある。木曜日に上映されるのは、ブラッド・ピット主演作『アド・アストラ』。ブラッドが宇宙飛行士に扮し、太陽系の彼方で行方不明になった父の謎に迫る。同日、ノア・バームバック監督によるNetflixオリジナル作品『マリッジ・ストーリー』も上映される。こちらは、アダム・ドライバー&スカーレット・ヨハンソン演じる夫婦の離婚劇。土曜日には、すでに「オスカー本命」との期待が高まっているホアキン・フェニックス主演作『ジョーカー』、日曜日にはスティーヴン・ソダーバーグ監督作でパナマ文書を題材とした『The Laundromat』(原題)が上映される。また、中国の作品『サタデー・フィクション』ではオダギリジョーがコン・リーと共演している。(Hiromi Kaku)
2019年08月29日10月11日(金)より公開となる是枝裕和監督最新作『真実』が、開催中の第76回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門オープニング作品に選出。この度、主演のカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、リュディヴィーヌ・サニエ、クレモンティーヌ・グルニエ、マノン・クラヴェル、そして是枝監督が記者会見とフォトコールに参加した。本作は、ドヌーヴ演じる大女優ファビエンヌが出した自伝本をきっかけに、彼女と娘(ビノシュ)の間に隠された、ある“真実”を巡る物語を映し出すもの。そのほか、イーサン・ホークやサニエら豪華な面々がキャストに名を連ねている。レースがあしらわれた優雅なプラダのドレスでドヌーヴが登場し、赤を基調としたグッチのジャケットスタイルでスタイリッシュにビノシュも登場。さらに、プラダのシャツスタイルで爽やかな装いのクラヴェル、ミュウミュウの白いブラウスで登場したサニエ、キラキラと光沢感のあるグリーンのディオールのドレスに身を包んだグルニエ、そして、是枝監督が記者会見場に登場した。会見場は報道陣で満員となっており、豪華な面々が現れるなり、マスコミ陣からは歓声と拍手が上がった。会見で、まず映画の制作、出演のきっかけ等の質問が挙がると、「まずはこの素晴らしいキャストとともに作り上げた本作をオープニング作品に選んでいただいたヴェネチア国際映画祭の方々に、この場で感謝したいと思います」と是枝監督。続けて「元々は、楽屋のシーンだけで出来上がる舞台を考えていました。しかし、実際に映画が動き出したのは、ジュリエット・ビノシュさんから一緒に映画を作る冒険をしないかと、2011年に提案をいただいたことがきっかけです。その時点では、日本で撮るのか、フランスで撮るのかといった確たる目標があったわけではないのですが、ふと、あの話をフランスで撮ってみようかと思いつきました。戯曲の主人公は、その国の映画史を代表する女優だったので、もしかすると、そのような女優さんを撮るチャンスが生まれるのではと思ったんです。そこで、大幅に戯曲を書き直して、母と娘の話に仕上げました。脚本が完全に固まる前の段階で、何度もおふたりにお会いして、インタビューをさせていただき、女優という人生を送られている方の生の言葉を、どのように脚本に落としていくかという作業を、継続的な信頼関係のなかで、数年に渡って行っていきました。その結実したものがこの『真実』です」と述べた。主演のドヌーヴは「是枝監督が言ったように、脚本の初稿を読んだ後で会いました。それからパリ、そしてカンヌで会って、日本でも会いました。こんなことが1年以上続きました。面会や本読み、コメントを通して、彼が言ったように、作られていったのです。是枝は映画の中で演じる人物を少しずつ私たちに近づけることを考えていました。私の場合、映画に出演する時は、人物を演じるにしても、自分というものを作品に投入します。特に今回は、関係が複雑なのは分かっていました。是枝は英語もフランス語も話さないので、いつも通訳を挟んでの会話です。それも悪いことではありません。大事なことを話すように促されるからです」と語る。ビノシュは「是枝監督と仕事をすることは数年前からの夢でした。是枝は2011年と言ったかと思いますが、私はもっと前からだと思います……。京都で一緒になりました。特別な機会でした。本当に夢のようでした。是枝監督の映画に出ることは、役者が監督に対して抱く夢を実現することです。さらにカトリーヌとの共演も夢のようです。『ロバと王女』は私が子供の頃大好きな映画でした。彼女と共演できたことは光栄で夢のようです。だからこの映画は私にとって夢の実現なのです。それに未来の頼もしい才能に出会うこともできました。私にとってとても鮮烈で、貴重な経験でした」と続けた。出演のきっかけを問われたサニエは、「最初に言いたいのは、私もかなり前から是枝監督を知っているので、彼の映画に出ることは夢の実現でした。ジュリエットほど昔ではありませんが、5~6年前に是枝監督に会いました。女優の役に私を考えてくれていたことに、驚きました。カトリーヌと同じように、私もこの女優と自分とが似ているとは思いませんが、演じるのは楽しいものでした。本物らしさを追求したからです。とても軽くて無邪気に見える人物ですが、何と言うか、問題を抱えています。楽しかった。それにコメディーも追求しました。この人物において、コメディーの喜びは、本物で具体的でした。私とは最も離れたところにいる人物を演じたいという欲求もありました」と語る。そしてクラヴェルは「第一に、私にとって初めての長編映画で、人生において最も美しく偉大な経験でした。それまでの経験はとても小さなものでした。今回の人物を演じるにあたっては、キャスティングから撮影までの間、さらに撮影中においても、常に話し合いを行いました。この人物を創作するための、真の会話でした。私の場合、この人物は、私に近いところがあります。是枝監督と一緒に作り上げたのです。これは本当に面白い経験でした。私から出発し、ある種の方向性を推し進め、神経症的な要素を加え、それを引き延ばし、ある種の夢や恐怖を加える。こうして私が演じる人物が出来上がりました」と役の成り立ちについても想いを述べた。子役への演出に定評のある是枝監督は、グルニエの立ち位置と演出について「オーディションで会ったとき、とても自由奔放で、彼女なら、おばあちゃん(ファビエンヌ役)の性格が隔世遺伝で孫に伝わっているという設定にできるなと思いました。そこで彼女に合わせて、キャラクターを書き直しました。日本での撮影と同じように、事前に台本を渡さずに、おばあちゃんの家に遊びに行く話だよと言うことだけ伝えて、あとは現場では通訳を介して、「おばあちゃんにこういってごらん」「ママのいったことを繰り返してごらん」と、口伝えで台詞を渡すというやり方で全編撮影しました。彼女の存在が大人たちのお芝居にもいい風を吹かせてくれたなと思っています。そして、ここに並んでくださった女性キャスト陣のアンサンブルの一角をちゃんと担ってくれたなと思っています」と語る。とうのグルニエは、是枝監督の映画に出演してみて「撮影した時、最初は言われたことがよく分からなかったけど、途中から何を求められているか分かってきました。どこに立って、何を言えばいいかも。最初は、どこで何を言えばいいか、間違ってばかりだけど、途中から成長して、うまくなりました」と感想を述べた。是枝監督がファンからのサインの要望に快く応える姿も見受けられ、フォトコールでもたくさんのメディアが集まり、「是枝!」「カトリーヌ!」「ジュリエット!」と歓声が止まらず、昨年『万引き家族』でカンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞し、今や世界中で注目を集める是枝監督の最新作である本作への注目度の高さが感じられるものとなった。■第76回ヴェネチア国際映画祭概要・正式名称:第76回ヴェネチア国際映画祭・開催期間:現地時間/8月28日(水)~9月7日(土)・実施場所:イタリア ヴェネチア リド島『真実』10月11日(金)より全国公開
2019年08月29日ネイト・パーカーが監督と主演を兼任する『American Skin』が、ヴェネチア映画祭で世界プレミアを行うことになった。コンペではなく“スコンフィーニ”セクションでの上映で、賞の対象にはならない。パーカーは、“#MeToo”が起こる1年前の2016年、過去のレイプ事件が浮上し、オスカー狙いの位置付けだった監督デビュー作『The Birth of a Nation』が大失敗に終わるという経験をしている。彼は被害者女性とのセックスは双方合意だったと主張しているが、その女性は後に自殺した。ヴェネチア映画祭は、“#MeToo”、“#TimesUp”の流れを真剣に受け止めていないと批判されている。例えば今年のコンペに、未成年の少女をレイプし、有罪判決を受けているロマン・ポランスキーの新作が含まれていること、また女性監督の作品が相変わらず非常に少ないことなどが挙げられる。文=猿渡由紀
2019年08月08日第76回ヴェネチア国際映画祭の主要賞を競うコンペティション部門に、中国の名匠ロウ・イエ監督の最新作にしてオダギリジョーも出演する『サタデー・フィクション』の正式出品が決定した。映画の舞台は第2次世界大戦が勃発する直前の、世界各国の諜報員が暗躍する東洋の魔都・上海。実在する「蘭心劇場」で巻き起こる愛と謀略の物語となる。主演は、ディズニー・アニメーションの実写版『ムーラン』に出演するなどハリウッドでも活躍する、中国を代表する女優のコン・リー。コン演じる主人公は、華やかなショー・ビジネスの世界で活躍しながら、諜報員という裏の顔をもつミステリアスな大女優。共演のオダギリジョーは、日本から来た暗号通信の専門家として物語のカギを握る重要な役どころを演じる。さらに、オダギリさん演じる専門家の護衛役として、先日「ラジエーションハウス特別編~旅立ち~」に出演するなど映画やテレビで活躍する中島歩も参加。そのほか、ドイツからは海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のジャクェン・フ=ガー役で知られるトム・ヴラシアがグランドホテルの支配人役を、フランスからは『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のパスカル・グレゴリーが、コン・リー演じる女優の養父役を演じる。また、台湾からは、国民的人気俳優のマーク・チャオが舞台演出家で「蘭心劇場」の支配人として出演するなど、国際色豊かなインターナショナルキャストが名を連ねる。カンヌ国際映画祭「ある視点部門」オープニング作品選出の『二重生活』、ベルリン国際映画祭コンペティション部門選出の『ブラインド・マッサージ』などで知られるロウ・イエ監督は、「1941年、太平洋戦争開戦までの1週間は、中国、ヨーロッパ、アメリカ、アジアにとって全てが変わってしまう直前にあたります。また、その時代の上海はショー・ビジネスとスパイの世界が交差した特異な場所でした。この映画が描くのは、策略とロマンス、裏切りに満ちた二つの世界です」と、本作についてコメントを寄せている。ヴェネチア国際映画祭は現地時間8月28日~9月7日まで開催。『サタデー・フィクション』は2020年、公開予定。(text:cinemacafe.net)
2019年07月25日『万引き家族』の是枝裕和監督初の国際共同製作作品『真実』が、第76回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門オープニング作品に決定。また、オープニング作品であると同時に、コンペティション部門へ正式出品されることも分かった。第76回ヴェネチア国際映画祭は、8月28日(水)~9月7日(土)までイタリアのヴェネチアにて開催。ベルリン、カンヌと並び“世界三大映画祭”と呼ばれ、世界最古の歴史を持つ。そんな同映画祭の中でも、本年度の顔として最も注目を集めるのがこのコンペティション部門のオープニング作品。昨年の第75回ではデイミアン・チャゼル監督の『ファースト・マン』、第73回は『ラ・ラ・ランド』(デイミアン・チャゼル監督)など、多くの話題作がオープニング作品となっていたが、ここに日本人監督が手掛ける作品が選ばれるのは、史上初の快挙だ。また昨年『万引き家族』で参加したカンヌ国際映画祭では最高賞を受賞した是枝監督だが、ヴェネチア国際映画祭には、監督デビュー作で金オゼッラ賞を受賞した『幻の光』(’95)、コンペティション部門に出品した『三度目の殺人』(’17)以来、3度目の参加となる。今回の決定を受け、是枝監督は「私の新作『真実』が、ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門オープニング作品に選ばれたという嬉しいお知らせを頂きました。大変光栄です」と喜び、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークら豪華キャストが出演する本作について「キャストは本当に華やかなのですが、物語の七割は家の中で展開していく、小さな小さな、家族のお話です。その小さな宇宙の中に出来る限りの後悔や嘘や見栄や寂しさや、和解や喜びを詰め込んでみました。どうぞ、お楽しみください」とコメントしている。ストーリー国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が自伝本【真実】を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)、テレビ俳優の娘婿ハンク(イーサン・ホーク)、ふたりの娘のシャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書…お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ1つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていき――。『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2019年07月19日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿・外苑前のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介。■『Cosmo-Eggs』5月11日から11月24日にかけてイタリア・ヴェネチアで開催されている「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」の一環として、カステッロ公園内にある日本館で行われている「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」展の公式カタログ。ブックデザインは、作家との協働によって数多くの優れた作品集を制作してきた田中義久が手掛けている。展示風景と出品作家4名の制作ノートを軸に構成され、作家それぞれの制作過程と作品世界を再現。デザイナー・作家・作曲家・人類学者・建築家・キュレーター、そして出版社・印刷所・製本所が手を携え(本展のテーマの一つとも言える“共異体の協働”がここでも体現されている)完成した本書は、“本”というメディアで新たな表現を追求した一冊に仕上がっている。展覧会のタイトルでもある「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」という概念は、「宇宙卵(Cosmo-Eggs)」から世界は誕生したという神話学における卵生神話をもとに、人間・非人間の共生や、複数の神話・歴史の共存という主題を喚起させるイメージを孕むもの。また本展では、“協働”も重要な要素となっている。集団(コレクティブ)で取り組むことの今日的意味や課題、複数的な思考や共生のあり方を探求するとともに、アーティスト・イン・レジデンスなどの機会における作家同士の触発が生む未知の想像や実験の可能性などを考える。本展には、韓国の光州ビエンナーレ2012や台湾の「Asian Art Biennial 2013」などグループ展への参加経験が多数ある美術家の下道基行、映像に映ったものを言葉で描写していくパフォーマンス「音楽映画」シリーズや、西洋音楽でも民族音楽でもない音楽「ゾンビ音楽」を代表作とする作曲家の安野太郎、芸術人類学・神話学を専門とし、『野生めぐり 列島神話をめぐる12の旅』など書籍も執筆する石倉敏明、2016年に開催されたヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示にて特別表彰を受けた若手建築家の能作文徳が参加。キューレターは秋田公立美術大学大学院准教授の服部浩之が務める。【書籍情報】『Cosmo-Eggs』出版社:Case Publishing言語:英語、日本語ソフトカバー/158ページ/280×240mm発刊:2019年価格:3,500円■Shelfオフィシャルサイトで『Cosmo-Eggs』を購入する
2019年06月08日