世界の無形文化遺産に登録されている「和食」の食文化ですが、和食に欠かせないものと言えば「だしのうま味」。京都大学の伏木亨教授や英国のサセックス大学のマーティン・ユーマンズ教授(実験心理学)の研究によると、「うま味」は食事の満足感を高め、食欲を抑える効果があることが分かったそうです。(※)ダイエットにも活用できる「うま味」の効果と活用法を知っておきましょう。だしのうま味成分は、満腹感を感じやすく食欲を抑える研究では、27人の被験者を2つのグループに分け、同じ朝食をとってもらった後、昼食の45分前に一方には旨味成分であるグルタミン酸とイノシン酸が入っているスープを、もう片方のグループには両方とも入っていないスープを飲んでもらう実験を4日間行ったところ、旨味の入ったスープを飲んだ被験者は、満腹感を感じやすくなり、昼食の摂取量が減ったそうです。(※) だしのうま味成分で満足感を感じる理由その理由はうま味成分が「タンパク質(アミノ酸)」であることに由来します。糖質・脂質・タンパク質(アミノ酸)は、カラダを維持するのに必須な栄養素であるため、自然とカラダが欲しがるようにできています。また、口にするとβ-エンドルフィンなどの快楽物質が放出されるので満足感を感じ、病みつきになることも知られています。糖質+脂質のスイーツが無性に食べたくなるというのもこの理由からです。同じように、「うま味」もタンパク質(アミノ酸)として脳に認識されるため、脂質や糖質と同様の満足感がもたらされます。ダイエット中は、糖質や脂質が多いものは避けたいところ。代わりにヘルシーな「だしのうま味」をもっと利用していきましょう。 だしのうま味で食べ過ぎを防止するコツだしを効かせた汁物を最初に飲む普段の食事では、最初にうま味を効かせた汁物を食べると食べ過ぎ防止に繋がります。また、遅い時間の夕食として食べると、胃腸の負担が減るのでおすすめです。減塩効果でご飯の量を減らすだしは素材の味やおいしさを引き立てるため、調味料を減らしても美味しい料理ができます。味が濃い料理だとついついご飯の量が増えてしまいがち。味を薄くすることで、ご飯の量を減らすことができます。だしは手軽に作ることができ、保存も可能です。時間があるときに多めに作って作り置きしたり、いりこや昆布を水に浸したものを常備したりすると便利です。 だしのうま味成分を含む食材うま味物質として知られているものにグルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸などがあります。それぞれ多く含まれる食材があるので、料理の素材として利用してみましょう。グルタミン酸昆布・パルメザンチーズ・トマトなどイノシン酸カツオ節・煮干し・さばなどグアニル酸干ししいたけ・きのこ類など満足感や満腹感をもたらしてくれるうま味を活用すれば、心が癒されるだけでなくダイエットの成功も近づきますよ。 【参考・参照】(※)保健指導リソースガイド「うま味」には食欲を抑える作用がある海外で和食が注目される理由〈〉(最終閲覧日:2017/9/7) 【執筆者】コントラクトフードサービス大手(株)グリーンハウスに入社、社員食堂のメニュー提案や栄養指導業務を経て、2009年「あすけん」に参加。アドバイス作成やサービス開発に携わる傍ら、年間150件以上の栄養指導やプロアスリート選手の食事サポート、セミナーなどを実施。現在はフリーランスに転向し、幅広く活躍。
2019年06月24日京都大学は5月8日、食事性肥満の鍵となる分泌性因子を同定したと発表した。同成果は伊藤信行 薬学研究科教授(現名誉教授)、木村郁夫 同研究科客員准教授(現東京農工大学テニュアトラック准教授)、太田紘也 同研究科特定研究員(現神戸薬科大学研究員)らの研究グループと、中尾一和 医学研究科メディカルイノベーションセンター特任教授、伏木亨 農学研究科教授、小西守周 神戸薬科大学教授らの共同研究によるもので、英科学誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。分泌性因子は細胞間や組織間の情報伝達に重要な物質で、生物の恒常性維持に不可欠とされる。白色脂肪組織由来の分泌性因子レプチンは肥満の発症に関わることが知られるなど、肥満の発症に関わる分泌性因子は、抗肥満薬開発の標的として注目されている。今回の研究では、新たに発見した分泌性因子の1つであるneudesinに着目し、その役割を調べるためにneudesin遺伝子を欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を作成し、解析を行った。その結果、ノックアウトマウスは高脂肪食を与えても極めて太りにくく、肥満に伴って発生するインスリンが効きにくくなる状態や脂肪肝の発症にも耐性を示した。これは、交換神経が活性化したことで、エネルギーを貯める白色脂肪組織で脂肪分解が亢進し、エネルギーを消費する褐色脂肪組織でも熱産生や脂肪酸酸化が高まり、エネルギー消費が向上したためだとわかった。研究グループは「今回の成果を通じて、同因子を抗肥満薬創出の標的として利用する上での基盤となる知見が得られることが期待される」とした。
2015年05月11日