佐野 登一般社団法人日本能楽謡隊協会主催、「未来につながる伝統」能公演が2023年12月24日 (日)に宝生能楽堂(東京都文京区本郷1-5-9)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 大剛)にて10月19日(木)10:00発売開始です。カンフェティにて10月19日(木)10:00発売開始 公式ホームページ 2016年に始まり7回目の開催となりました。その名の通り、未来につなげるための能公演です。多くの皆さまが「能」に触れる機会を創出し、そこに込められた先人たちの想いや、長い年月の積み重ねを経て蓄積された知恵を感じていただく一つのきっかけとなる公演でありたいと思います。本会は芸道上の師であり伯父の佐野萌追善をきっかけとして始まりました。その伯父・萌が生前、「自分が死んだときには清経くらいは舞えるようになっていてくれ」と言っていたのを思い出します。今回の「清経」には“音取”という小書き(特別演出)が付いています。この清経の“音取”は私どもにとっては特別な演目です。そして私の祖父である巌が「『清経のクセの舞はまるで走馬灯の如く』と言っていた」と伯父が話していたことも心の中に残っておりました。自分自身の継承を未来へつながる能へ重ね合わせます。笛方にとっても大曲であり、普段より先駆的な活動をともにする一噌幸弘さんにご助演いただきます。この我々の“特別”を皆さまにもお伝えしたいと思います。そして、今回は公演の最後に能楽謡隊の取り組みとして能「猩々」を上演します。能楽謡隊は、伝統の知恵に学び、よりよく生きる「謡つながりのコミュニティ」をテーマに、2006年から活動が始まりました。謡曲を第九の合唱のようにうたい、ともに舞台をつくりながら、能を知らない、触れたことがないという方にも能の魅力を伝える取り組みです。当時の武将をはじめ、戦乱を終えた江戸幕府の将軍から各地大名たちは、能を観るだけでなく、自分たちも謡い、舞い、嗜みとしていました。能の魅力は観るだけでなく、自らやることで最大化します。今回は私のところで稽古に励むダンサーのSAMさんが初めて能に挑戦し、能楽謡隊が地謡として参加し、ともに舞台をつくりあげます。これも未来につながってほしいものの一つです。長時間の公演となりますが、ぜひ先人たちに心を寄せ、ともに未来に思いを馳せ、能に親しむ一日としていただけますと幸いです。能楽師シテ方・宝生流佐野 登鑑賞前の能楽講座鑑賞をさらに楽しく!これをきっかけに能にもっと知る!事前の能楽講座を開催します。チケットをご購入いただいた方は参加費無料です。■日時:2023年12月3(土)14:00~15:30■場所:芝礧荘舞台(しらいそうぶたい)文京区本郷1-5-7 宝生ハイツ202号室■申込方法:メールで「 shihoukai202@gmail.com 」宛にお名前・連絡先送信■募集人数:先着15名様詳細は(一社)日本能楽謡隊協会ホームページ( )公演概要「未来につながる伝統」能公演公演期間:2023年12月24日 (日)会場:宝生能楽堂(東京都文京区本郷1-5-9)■番組/出演者◇スペシャルトーク佐野 登(能楽師シテ方・宝生流)野村萬斎(狂言師)司会:本田勝之助(内閣府クールジャパン地域プロデューサー)◇能楽事始め[演目のご案内]解説:佐野 登案内人:小山龍介(京都芸術大学非常勤講師)◇仕舞「班女 -クセ-」宝生和英地謡:小倉健太郎、水上 優、髙橋憲正、藤井秋雅◇狂言「川上」シテ(盲目の夫):野村萬斎アド(妻):高野和憲後見:内藤 蓮◇能「清経 -音取-」シテ(平清経):佐野 登ツレ(清経の妻):和久荘太郎ワキ(淡津三郎):殿田謙吉笛:一噌幸弘小鼓:観世新九郎大鼓:柿原光博後見:宝生和英、水上 優地謡:辰巳満次郎、大友 順、小倉健太郎、小倉伸二郎、髙橋憲正、内藤飛能、田崎 甫、辰巳和磨◇能楽謡隊「猩々」シテ(猩々):SAM笛:一噌幸弘、小鼓:観世新九郎、大鼓:柿原光博、太鼓:桜井 均後見:佐野 登、辰巳和磨地謡:能楽謡隊■スタッフ主催:佐野 登、一般社団法人日本能楽謡隊協会■公演スケジュール2023年12月24日(日)開演14:00(開場13:00)■チケット料金S席[正面]10,000円A席[脇正面]8,000円B席[中正面]7,000円(全席指定・税込)自由席[脇正面後方]5,000円学生[自由席]3,000円(全席自由・税込) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年10月24日株式会社Global能楽社(東京都中野区)主催、ひとつのはな #10・11『船弁慶』が2022年10月8日 (土)に宝生能楽堂(東京都文京区本郷1-5-9)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 大剛)にて発売中です。カンフェティにてチケット発売中 公式ホームページ 二つの流儀で『船弁慶』を上演する貴重な立合公演!本公演は、観世流・宝生流という、二つの異なる流儀で、能の同じ演目を、それぞれが違う小書(=特別演出)で上演するという、能楽界でも殆ど行われていない立合公演です。今回の小書は、どちらの流儀でも大変重く扱われている、貴重なものです。シテ(=主演)の観世流・松木千俊と宝生流・辰巳満次郎の二人は、同世代で、同じ時期に東京藝術大学に在籍した先輩・後輩という、旧知の仲でもあります。演目と小書の重みに対して、地頭(=地謡のリーダー)は敢えて次世代の若手から抜擢しました。また、シテと地頭はもちろん、他の全ての役を立合として考慮した配役となっています。さらに本公演では、外国人及び初心者の来場に大きな期待を寄せ、日英仏の字幕付特別席を設けています。またとない貴重な公演をお見逃しなく。【番組】#10観世流『船弁慶』重キ前後之替シテ:松木千俊子方:清水義久ワキ:村瀬慧アイ:山本則秀地頭:武田文志笛:竹市学小鼓:田邊恭資大鼓:大倉慶乃助太鼓:林雄一郎#11宝生流『船弁慶』後之出留之伝シテ:辰巳満次郎子方:出雲路啓ワキ:江崎欽次朗アイ:山本則重地頭:野月聡笛:竹市学小鼓:大山容子大鼓:亀井洋佑太鼓:小寺真佐人「ひとつのはな」について「ひとつのはな」は、2018年に訪日外国人の観光オプションとして企画し、始まりました。多言語の字幕など、これまでの能楽公演では見られなかったサービスが話題を呼び、また、都市部に少なかった夜間エンターテインメントとして、旅行客はもちろん、国内のビジネス層にも注目されました。新型コロナウイルス感染症の流行が最も深刻だった時期には、無観客でインターネットによる生配信を行い、2021年には有観客の生配信にも成功しています。2022年からは、ご入場いただけるお客様数を緩和して、本格的な有観客公演とし、一部の座席に「字幕付特別席」を再開いたします。また、引き続き能楽堂へのご来場が難しいお客様に向けて、当日の公演の生の様子を収録し、後日インターネットにて多言語の字幕を付して配信いたします。※「字幕付特別席」は、各席に1台ずつタブレット端末を設置します。お客様ご自身で日英仏の言語から自由にお切り替えいただけます。【YouTube】 公演概要ひとつのはな #10・11『船弁慶』公演日時:2022年10月8日 (土)13時30分開場/14時開演会場:宝生能楽堂(東京都文京区本郷1-5-9)■スタッフ総合プロデューサー: 清水美穂子■公演スケジュール13時30分 開場14時00分 開演 解説、観世流 能「船弁慶」15時50分頃 休憩30分16時20分頃 解説、宝生流 能「船弁慶」18時10分頃 終演予定■チケット料金【前売】字幕付特別席:13,200円特等席:11,000円一等席:9,900円普通席:7,700円ハーフ席:4,400円(全席指定・税込)<カンフェティ限定>普通席:7,700円 → カンフェティ普通席:6,700円!(全席指定・税込) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年09月08日一般社団法人ARTJAPAN和SOCIETY(所在地:東京都稲城市、代表理事:伊東 正次)は新型コロナウイルスの感染対策を実施し、宝生能楽堂にて、大和絵師の日本画をバックに能楽と邦楽、そしてプロジェクション映像を交えながら、初の能楽堂で見事な日本の文化芸術の融合を表現します。詳細URL: 日本の伝統美 宝生能楽堂に集う 1昨今、凄まじいスピードでグローバル化が進展しています。特にコロナ後の世界を見越して、AIによるシステムの構築や管理が急ピッチで進んでいることは、ここで私が繰り返すまでもないことでしょう。そんな中で、人々の心や魂はどこへ向かうのでしょうか。生と死の領域が曖昧となったデジタルでバーチャル空間で人は生きてゆくことができるのでしょうか。そうした、均一化された社会に埋没して、平準化され、バーチャル的な意味で安定した心を描くこともできます。本当に人々の心はそれに慣らされてしまってよいのでしょうか。私は懐疑的な思いを抱いています。人々の心が、デジタルに慣らされてゆく一方、その対極にある人間の奥底に潜む魂の叫びが聞こえてきます。心や魂の問題に何らかの提言や示唆を与える、あるいは、魂の救済を図る最良の手立てを持っているのが「芸術」なのです。芸術は様々な心模様を生の形で扱いつつ、魂をある世界へと誘います。私たちの心や魂を取り扱う「芸術」は何によって、活性化され得るのでしょうか。それは、一人一人が「己の魂と向き合う」ことです。心や魂と向き合う時間と場を与えてくれるものの一つが「能楽堂」なのです。また、グローバル化の中での、もう一つの大きな問題は環境破壊です。人間社会は発展の名の下に、自然を破壊し管理してきました。今の環境問題は人間が今まで行ってきた様々な行為の結果です。そんな中、それとは違う生き方を教えてくれるのが日本の伝統文化です。それは、「自然との共生」から生み出されてきた文化なのです。四季折々、春は桜を愛で、夏には川遊びに興じ、秋には紅葉を楽しみ、冬は雪景色を良とする。自然と共に生きる。決して、人間中心にならず、人間と自然が対決するのではなく、「共に生きる」。それが、日本画や邦楽の根底にある思想なのです。この三者の伝統芸術がこの度、能楽堂で会い見えます。果たして、三者が競合するのではなく、融合しながら新しい精神世界を現出し得ることができるのか。お楽しみいただきましたら幸いです。■イベント概要名称 : 「日本の伝統美 宝生能楽堂に集う」日程 : 2021年12月20日(月)18:00開場18:30開演会場 : 水道橋 宝生会館所在地 : 東京都文京区本郷1丁目5ー9観覧料 : 10,000円定員 : 490名出演 : 辰巳大二郎 伊東正次 安島瑶山 阪元沙有理チケットの問合せ: 一般社団法人ARTJAPAN和SOCIETY(090-6933-5838)■お問い合わせ先一般社団法人ARTJAPAN和SOCIETY担当 : 長尾まこ電話 : 090-6933-5838Email: bi@artjapan-wa.org HP : なお、ロビーホールにて以下イベント開催予定です。こちらも合わせてお楽しみください。(16:00~17:45宝生会館ロビー)■️アーティスト展示・伊東正次、襖絵屏風絵展示・ドビレイ=ナオミ=フルマニウク(リトアニア、建築士)、インク画・小笠原由祠(和泉流狂言師)仮面能面展示とレクチャー、デモンストレーション・岸本雅之、能面展示■️工芸品展示・Love Japan Brand、苔玉ワークショップ、真田紐グッズなど・桐箪笥伝統工芸士、飯島勤「晴天無用」(傘立て作品)■️ビジネス展示コーナーUnique Brain Lab.鈴木俊介(株式会社経営技法) 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年12月01日「伝統芸能」そして「能楽」──それは人生を円熟させた一部の教養人のためだけにあるのでしょうか。実は能楽の舞台へ足を運ぶ人の中には、上演にはまったく目を向けず、仕事のアイデアや自分の人生について考えたことを紙に書いている方もいるんです。「忙しい日々を過ごす人ほど、自分に向き合う場として能楽を利用してほしい」そう話すのは、現役の能楽師である宝生和英(ほうしょう・かずふさ)さん。宝生流という流派の宗家に生まれ育ち、幼い頃から能楽に慣れ親しんできた彼に、現代における能楽の存在意義とはいったい何なのか、お話を伺いました。宝生流の第二十世宗家である宝生和英さん。22歳のときに家元を継ぎ、現在32歳の若き能楽師(能役者)だ。■エンターテインメントにはない能楽の魅力──宝生さんは「和の会」という自演会を主宰していらっしゃいますね。その「和の会」が今年10年を迎えられるということですが、発足のきっかけは何だったのでしょうか。10年前はちょうど私が家元となった初年度でした。そのきっかけとして、何か今までとは違うことをしたいという思いがあったんです。これまで宝生会(※)で行っていた定期公演とはまた別に、能楽の公演自体がひとつのビジネスとして成立するのか。そして、これまで能楽を観ていない人たちにどのような社会的価値を提供できるのか、という挑戦でもありました。※ 五流派ある能楽シテ方のひとつ、宝生流の公式団体。毎月の定期公演をはじめとする多様な公演を主催するほか、能楽の普及活動を行っている。昨年の『能楽カフェ』では参加者からの質問に応える場面も──昨年の企画「能楽カフェ」では「能は心を鎮める作用がある」という新しい楽しみかたを紹介されていました。「能楽カフェ」は、ブランディングのための試みでした。といいますのも、そもそも能楽が「伝統芸能」というジャンルにまとめられているということに対して懸念があったからです。たとえば歌舞伎と能楽では、お客様に与えるものがまるで違う。それなのに、その違いがまるで理解されていないのではないか、と。エンターテインメントは、驚きや楽しみなど、大きな感情の揺れ動きを与えるものです。それに対して、能楽は拍手の是非が問われるほど心を落ち着けて観るもので、主役はお客様一人ひとりです。どちらかと言えば、神社仏閣に行く感覚に近いものがあります。私は情報過多な現代だからこそ、能楽のように心を鎮めて自分と向き合う場が必要だと考えています。■今の時代に、能楽は絶対に必要──宝生さんは、いとうせいこうさんとタッグを組んで舞台に映像を投影したり、スカイツリーでVJ(ビジュアルジョッキー)とコラボレーションした公演を行うなど、多方面で普及活動をされていますよね。最先端技術を積極的に取り入れている背景にはどのようなお考えがありますか。まず大前提として、能楽が今の社会に絶対的に必要であるという確信があります。先ほど「心を鎮める」という表現をしましたが、能楽を観ていると、自分と向き合う時間が自然と生まれます。今の自分が本当に正しいのか、状況を捉え直す機会が作られ、自分の身に起きた良いこと・悪いことに対して一喜一憂する必要なんてないと教えてくれる場所にもなるんです。こういった能楽の魅力を幅広い層に伝えていくために、あえてエンターテインメントに寄せたコンテンツを上演したり、能楽の持つ言葉を生かす取り組みにチャレンジしたりしています。僕が一貫してやりたいのは、本来の能楽の良さ──アンビエントな、つまり、環境に溶け込める芸能であるという魅力を伝えていくことなんです。東京スカイツリーで行われた「能×VJ LIVE」では最新のサウンド・ビジュアルエフェクトを利用し、能『小鍛冶』をダイジェストで上演──アンビエントな芸能というのはどういうことでしょうか。もともと能楽は屋外で上演されていたこともあって、自然の力による演出が得意な芸能でした。決まったセットや人間の手によって演出されるのではなく、太陽の光や、そこに生える草花の香りなどによって、人間の五感を奮い立たせていた。ところが現代になって、能楽堂という建物の中に入ってしまった。これは能楽にとって、ひとつの悲劇なんです。どのようにしてそれを取り戻していくかということが、僕にとっての課題のひとつです。──でも、宝生さんは最新の技術をどんどん能楽に取り入れていますよね。能楽の魅力が「自然の力による演出」なら、むしろ反対のことをしているような気がするのですが……。そんなことはないんですよ。技術が急速に進化している現代だからこそ、失ったものを科学技術で補っても良いと思っています。実は、能楽は最先端技術ととても相性が良いんです。まわりの環境に溶け込むことが得意なので、それを彩るものがなんであれ、本来の味は失われない。技術に頼りきるのではなく、心を鎮めるための芸能である能楽を演出する要素のひとつとして溶け込ませていくことが大切だと考えています。昔どういうやり方をしていたか、というだけではなく、これからどのように社会に提供していくか。それを考えるのが自分の仕事だと感じています。そのために、どういう手段があるか、その手段を使って能楽の魅力をどう表現していくか、ということを常々探求しています。■最初はボーっとするだけでもいい。能楽を楽しむ3ステップ──まだ能楽に触れたことのない人はどうやって能楽に親しんだらいいのでしょうか?ぜひおすすめの見方など教えてください。あくまでも自分で実践してみて一番すんなりいった方法になりますが、3つのステップを提唱したいと思います。ステップ1は、メモとペンを持って行ってください。前半、舞台の内容に連動させないで、自分の悩みをただメモ帳に書き出してみます。能楽堂は暗転しないのでぜひメモしていただきたいですね。後半ではその悩みに対して、解決法を考えてみてください。続くステップ2では、メモ帳を取りはらって、ステップ1で行ったのと同じことを、今度はご自身の頭の中でやってみてください。――あれ、舞台を観ていないですね(笑)はい(笑)。最初はそれでもいいと思っています。実際に公演に通ってくださっている方で、デザイナーの方がいます。その方は上演中ずっとラフを描いたりしているそうなんです。曰く、「能楽堂に来るとどんどんアイデアが浮かんでくる」そうで。それを言われたとき、僕はすごく嬉しかったんです。ボーっと音を聞き、能を観ながら、浮かんでくるアイデアって、何にも代えがたかったりします。そういう贅沢な時間を過ごすのも良いのではないかと。まずは能楽堂の空間を楽しむことが大事──なるほど。まずは能楽堂での時間の過ごし方を知るわけですね。ステップ3では何をすればいいのでしょうか?ステップ3が一番大事です。まず予習をしてきてください。そして舞台が始まったら、その中に自分の人生を投影してみましょう。物語に出てくる登場人物の立場になったとき、自分だったらどう考えて、どう行動するのか。正義が対立する話であれば、善と悪とは何なのか。そこまで考えたら、観ることがもっともっと楽しくなります。可能であれば、謡(台詞)の意味まで理解してみると、詠まれた歌の情景まで想像を広げることができるし、自分の身近な世界や記憶とつなげていくこともできる。そうなると、もっといろいろな曲を観たくなっていくと思います。──演目の予習は学びたくなってからで良いということでしょうか?最初からステップ3に行かなくても良いんです。なぜならば、先ほどお話したように、能楽というもの自体が、エンターテインメントのセオリーから外れているからです。「面白い」の基準がそもそも違うのです。興味深いということを「面白い」と感じられるかどうかが、問題になってきます。たとえば、「面白いよ」と人から勧められて見にきたときに、エンターテインメントの基準で見てしまうと、きっと期待外れだと思われてしまうんです。ちょっとお茶しに来ただけだったのに、がっつりステーキが出てきて、なんだか胃もたれしちゃったな……というような(笑)。まずはエンターテインメントの概念から外れて、能楽の楽しみ方とはステップをひとつずつ踏み固めていくようなものなのだと、知っていただけたらと思っています。■7/28開催「和の会」公演のテーマは「祝祭」──「和の会」は今年でグランドフィナーレを迎えられるとか。今回の演目『七人猩々(しちにんしょうじょう)』の見どころについてぜひお聞かせください。毎年「和の会」の公演では、テーマがシンプルで、一言で表せるような曲を上演していまして、今年の『七人猩々』でいえば「祝祭」です。「猩々(しょうじょう)」という水の精霊が出てきて舞うという、メッセージ性はほとんどない曲です。ただ、お祝いがだんだんと形式的になってきている現代で、「祝う」ことのひとつの在り方が提示されています。相手の幸せを自分の幸せのように感じて、祝うなかで自分も一緒に楽しんでしまう。まだコミュニティが小さかった古代のお祭りに近い感覚があると思いますね。水の上を歩いていることを表す独特な足遣いもしますので、ぜひそちらも注目してみてください。──シテ(主役・猩々)が7人いるそうですが……舞台上で狭くはないんですか?狭いです(笑)。シテ(主役)が7人もいると、演者にとってはやはり狭いらしい──7人もいると舞を合わせるのも大変そうです。これがまた能楽の独特なところなのですが、ショーと違って完璧にシンクロするということは求めていないんです。能楽は身体のリズムに合わせてやっていますが、人の心拍数は人それぞれなので、自然とずれてくるところがあるわけです。ここを100%合わせてしまうとかえって面白くなくなってしまいます。輪唱のように、そのときの互いの空気で、あえて外すということをしたりします。あえて外す人間臭さというか、「気持ちのいい違和感」を創りたいと思っていますので、お客様にもぜひ遊び心をもって見ていただければ。──最後にDRESS読者に向けてメッセージをお願いします。現代は生き方の多様性が認められている一方、逆に「こうあるべき」という意見も多すぎる時代だと思います。ひとつの枠組みにはめてしまうのはあまりにもったいないですし、なにか「理想像」があったとしても、それは自分でしか作れません。だからこそ一旦立ち止まって、自分を大切にする時間を持つことが必要なのだと思います。これは自分自身の経験からなのですが、自分のペースをつかむというのは、30代になってからできることのように思います。そこで生まれたゆとりを、忘れたり上書きしたりするのに使うのではなく、あえて立ち止まって向き合う時間に使うということは、僕自身とても大事にしていることです。さまざまな情報の中から自分に必要なものを取捨選択するために、能楽堂で過ごす時間、能楽を観る時間を利用していただけたら、こんなに嬉しいことはありません。宝生和英氏が主宰する「和の会」グランドフィナーレ公演は7月28日(土)開催。DRESS観劇部でも参加者を募集しています。まだ能楽を観たことがないという方、ぜひ能楽デビューしてみませんか?
2018年07月11日