元SMAPの香取慎吾が11日、自身のインスタグラムを更新。テレビ朝日系バラエティ番組『SmaSTATION!!』で共に司会を務めた大下容子アナウンサーとの2ショットを公開し、話題を呼んでいる。香取は「みなさん.こんばんは香取慎吾です!11月11日土曜日.現在ここ東京の天候は曇り.気温の方は13度」と、『SmaSTATION!!』の冒頭あいさつ風にコメント。「久々に大下さんと会えて.お食事しています!」と2ショット写真を添えて報告し、「大下さん愛してます!」とつづった。この投稿に、「スマステコンビ復活!!」「スマステコンビは永久不滅」「大下さ~~ん!! 嬉しすぎます」「やだ、泣ける」「スマステー素敵な2ショット久しぶりに見れてよかったー」「最高です」「慎吾も大下さんも大好き」「わぁ!!泣ける!!」などと感動の声が続出。「スマステ復活して欲しいです!!」「スマステ復活待ってまーす」と復活を願う声も上がっている。
2017年11月11日積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。9回目は、『身の丈に合った服で美人になる』(著:小山田早織)を取り上げます。著者の持論は「美人=努力家」。お金をかけたり背伸びをしたりすることなく、最大限おしゃれになる方法を、明解な小山田ロジックにより紐解きます。■美人=努力家身の丈に合った服を努力して着るこの本でいう“美人”とは努力家のこと。きれいになるためにベストを尽くせる人です。日頃、仕事で会うモデルたちを見ていて思うこと。それは、何の努力もせずにはきれいでいられないということです。私もアシスタント時代には人生の最高体重を記録し、お腹やお尻を隠すチュニックをよく着ていました。自分が努力を怠った結果とはいえ、着たいのに着られない服があるのはみじめで辛かったのを覚えています。その経験から、何よりも大切と痛感したのは、生まれ持った外見を活かしながら、理想の自分へと近づくための努力。その過程が自信となって表情にも表れ、女性を美しく見せるのだと思います。(9ページより引用)著者が考える身の丈に合った服、とは、無理なく買えるトレンド感のある服のことを指しています。着古して毛玉ができていたり、流行遅れになった高級服よりも、手の届く範囲でシーズンごとに流行を取り入れているほうがよっぽどおしゃれ。それを叶えてくれるのがユニクロ・ZARA・無印良品・GAP・H&Mの6大コスパブランドであるのだとか。さらに、シーズンごとに新しい服に挑戦していると、自然におしゃれの基礎力がつき、服を見る目が養われるといいます。服を着ていく上での気構えが、きれいになるために努力する姿勢。どんなに服を揃えても、きれいに着こなす努力を怠っては意味がありません。つねにベストコンディションな自分を目指して、旬の服を努力して着る。その姿勢こそが自信となって女性を美しく見せてくれるのかもしれません。■走り回る日こそ、ヒール靴朝起きて、「今日は忙しくなりそう」と思ったら、ヒール靴を選びます。この話をすると「忙しいなら、スニーカーやバレエシューズのほうがラクじゃない? 」と返されることが多いのですが、私は“忙しい日こそきれいを磨く日”と考えてヒール靴。はくだけでぺたんこ靴より1.5倍のカロリー消費できるという話を聞いたことがあるし、ふくらはぎの筋肉が鍛えられて美脚にも近づける。バランスだってよく見えるし、気持ちも引き締まる。そんな絶好の機会を見逃すなんて、私にはもったいなくてできません。(12ページより引用)何とも耳が痛い話で、走るときは楽なほうについ逃げがちなのが足元のおしゃれです。そのためにも、著者は走れるヒール靴を日常的にこまめに試着して探しているといいます。そして、足に合う靴に出会えたら運命の一足だと思って即購入。それほど、走れるヒール靴に出会える確率は低いようです。著者のおすすめはバビロンとプールサイド。はく前のクッション性、はいたときの甲やかかとのチェック、店内を最低二周して痛くないか、脱げないかを見極める。やはり、ここでも美人になるための努力が必要なようです。そうはいっても著者は、1日ヒールで足が痛くなるときのために、バッグにぺたんこ靴を忍ばせておくことも推奨しています。それだと気持ちに余裕も生まれますね。■ブランド物は思い出と一緒に買うデイリーなコーディネートを上品に格上げしてくれるブランドのレザーバッグは、私にとって欠かせないアイテムです。ただし、流行に任せて買うことはありませんし、少しでも安く買いたいからと、ネットで買うこともありません。たとえば、シャネルのチェーンバッグ。ココ・シャネルには伝記を読んで感銘を受けていました。なので、シャネルの精神が感じられるバッグは、スタイリストを目指していたときから、いつか絶対手にしたいと思っていました。それもパリのカンボン通りにある本店で。念願叶って買ったバッグは、私に自信を与えてくれました。孫の代まで受け継げるよう大切に使いたいと思っています。(38ページより引用)デイリーなプチプラブランドを上手に取り入れるとはいっても、良いものも一品は身に着けたいものです。そういう意味でも、やたらにブランド物を身につけるのではなく、志やストーリーを持った良品を末長く持ち続けたいものです。たとえば著者は、前述のシャネルバッグをスタイリストとして独り立ちした記念にパリのシャネル本店で購入しています。あるいは、初めて表紙を担当した記念にセリーヌのバッグを表参道の路面店で購入。どういう場所で、どういうものを、どんなタイミングで購入するのか……。物を見るたびに、そのときの状況や心持ちまで、鮮やかに蘇ってきそうです。身の丈に合った服を身にまとい、思い出がつまった良品を手に。今日も1日美しくがんばっていくエネルギーを発していきたいものです。『身の丈に合った服で美人になる』書籍情報出典:身の丈に合った服で美人になる著者:小山田早織発行:講談社単行本 : 128ページ発売日:2017/9/6価格:1200円+税[公式サイト]著者小山田早織さんプロフィール日本一忙しいスタイリスト・小山田早織。『with』『GISEL』をはじめ、各ファッション誌で活躍中。日本テレビ『ヒルナンデス!』では、流行を分かりやすく噛み砕いたコメントで人気に。自身のブランド「TOKYO STYLIST THE ONE EDITION」も手掛ける。Instagramのフォロワーは5.8万超え。
2017年10月05日『with』をはじめとするファッション誌やTV番組『ヒルナンデス!』で、“明日着られるリアルなファッション”を提案することで、多くの女性にファッションの楽しさを伝えてきたスタイリストの小山田早織さん。彼女の初のスタイリングブック『身の丈に合った服で美人になる』が、この度刊行に。ユニクロ、ZARA、GU、無印良品、GAP、H&Mと、自身も愛用する6大コスパブランドでのアイテムの選び方、高見えさせるコツ、さらに“美人になれる小山田持論”から私服スナップ、自宅のクローゼットの中身、スタイリストになった経緯などプライベートにまで迫った読み応えたっぷりの一冊です。しかも、紹介されている6大コスパブランドのアイテムは、今秋発売のものばかり。気になるアイテムがあればすぐに買えて、明日のファッションに取り入れられるのもうれしいポイントです。今やコスパブランドは、女性にとってとても身近な存在になっています。特に、時間やお金に制限があるママたちにとって、リーズナブルなだけでなく同じブランド内で家族の服がまとめて買えるところもポイント。そんなママたちの強い味方であるコスパブランドをオシャレに着こなす小山田メソッドを、本著から少しご紹介したいと思います。■無理なく買えるトレンド感のある服が“身の丈に合った服”まず、小山田さんの考える身の丈に合った服とは、無理なく買えるトレンド感のある服のこと。着古していたり、流行遅れになった高価な服よりも、手の届く範囲でシーズンごとに流行を取り入れていくほうがオシャレだと提案しています。そして、それを叶えてくれるのがコスパブランド。リーズナブルだからベーシックなアイテムもアップデートしやすく、トレンド服にも挑戦しやすいわけです。また、子育て中は常に洋服が汚れる可能性がつきまといます。高価な服が汚れるのを心配するよりも、気軽に買えてジャブジャブ洗える服の方が気がねなく着られますよね。近くの公園に子どもと出かけるときでも、トレンドを取り入れた新しい服を着るだけで、気分がぐっと上がります。■“高見え”の秘密と、失敗しないコスパブランド活用法小山田さんによると、コスパブランド服を安っぽく見せないポイントは配色にあるそうです。そこで、真似しやすい3つの配色をご紹介。1.カフェラテ配色ワントーンコーデは色の幅が狭いとただの地味な人になってしまうので、濃淡の幅を持たせると華やかな印象に。カフェラテから着想を得た“カフェラテ配色”では、カプチーノの泡をイメージして多めの白を配し、ブラウンの小物でシナモンパウダーのスパイスを添える。2.グレーのワントーン配色グレーのワントーンコーデは、成功すれば洗練して見える配色です。地味にならないよう、シルバー小物やアクセを加えたり、リブニットなど素材感があるアイテムを組み合わせたりして、メリハリを出して。3.黒×カーキクールで誰でもオシャレに見える配色。重い色同士なのでロゴや柄アイテムを投入することで、着こなしに軽やかさを出すのがコツ。少しフェミニンさを加えたいときは、ブラウン寄りのカーキを選ぶと挑戦しやすいそう。ベージュ、グレー、黒、カーキと、使いやすい色をベースにトップスタイリストらしい視点が効いたテクニックですね。ほかにも本著では、「メンズのトップスをオーバーサイズで着る」「華やかなパーティ服はZARAかH&Mで探す」「流行のアウターをコスパブランドで毎年買い替える」など、小山田さん流の活用法やオシャレのヒントがいっぱいです。そして、「大人は買ってはいけないプチプラアイテム」というドキっとするポイントも……。1.クロップトパンツ万人がはける仕様になっていて、特にヒップ~太ももがゆるめシルエットのものが多いので、後ろ姿をチェックして。2.パンプス靴は健康をも左右するので、大量生産モノではなく木型や中敷きにこだわって、足に合う靴を探すようにすべき。3.合皮の大きめバッグ大きめのバッグだと、合皮の風合いや縫製に良し悪しが顕著に表れてしまうので、大人にはNG。4.華奢アクセコーデを格上げしてくれる華奢アクセには本物の輝きが必要なので、金メッキは避けたいところ。 ■信念、生き方、暮らしぶりが“美人”を作るさて、小山田さんといえば、作り出すコーデも人気ながら、オシャレに対するストイックな姿勢も女性たちの憧れとなっています。小山田さん曰く「どんなに服をそろえても、きれいに着こなすための努力を怠っては意味がない」。美人とは努力家のこと。なんの努力もせずにはキレイではいられないと提言します。「走りまわる日こそ、ヒール靴」「コンビニへもすっぴんで出かけない」「ゆるい服こそ下着に気を抜かない」「食べ過ぎた翌日はいましめにスキニーをはく」これらは美人になるための“小山田持論”。いつなんどきも自分に厳しく、努力を怠らない彼女の強さが垣間見えます。また巻末では、小山田さんの学生時代のこと、スタイリストになった経緯、20代にどのような目標を持って仕事に取り組んできたのかも綴られています。それらを読むと、その時その時、真摯に仕事や自分と向き合ってきたことがうかがえます。先の小山田持論も含め、信念や生き方、暮らしぶりが、魅力的なスタイリングを作り、そして小山田早織さんという“美人”を作っているのだとわかります。本著は、オシャレを追求する女性にとってヒントになることはもちろん、ひとりの女性の生き方としても刺激をくれる一冊といえそうです。参考図書: 『身の丈に合った服で美人になる』 小山田早織/著 講談社ユニクロ、ZARA、GU、無印良品、GAP、H&Mの6大コスパブランドでのアイテムの選び方、高見えさせるコツ、さらに“美人になれる小山田持論”から私服スナップ、自宅のクローゼットの中身、スタイリストになった経緯などプライベートにまで迫った読み応えたっぷりの一冊。小山田 早織(おやまだ さおり)『with』を中心にさまざまな女性ファッション誌や、日本テレビ『ヒルナンデス!』で支持され、シンプルでリアルなスタイリングの提案で日本中の悩める女性を救ってきた。ショーや広告でも活躍し、女優やモデルからの指名も多い、新世代スタイリスト。(株)東京スタイルとタッグを組み自身がディレクターを務めるブランド「 TOKYO STYLIST THE ONE EDITION 」を立ち上げ、さらなる人気を博している
2017年09月25日NYを拠点に活躍する女優・小山田サユリさん。2010年10月から9カ月間、文化庁新進芸術家海外派遣制度の研修員としてNYの演劇学校で演技を学び、現在は新作映画『女が眠る時』に出演、資生堂のCMではレディ・ガガと共演するなど、活躍の幅を広げています。「NYで演劇を学ぶ」「海外で夢を掴む」なんて、自分にはマネできないすごいこと。そう思いがちですが、小山田さんも仕事に悩みながら「これでいいのかな」と手探りで前に進んできたのだそう。今の自分を作った30代の自分を振り返ってもらいました。30代前半まで、自分の力に自信を持てなかった20代前半にデビューして以来、映画を中心に活躍してきた小山田さん。「若さと勢いで」目の前の仕事に一生懸命だった20代を過ぎ、30代に入ると「長く仕事を続けるために」という視点で自分をとらえるようになったそう。そこで出てきた不安が、「このままでは限られた役しかできない女優になってしまう」ということでした。「私は華やかな顔をしているタイプではなく体も華奢な方だったからか、病弱な役や心に傷を負った役など、なんらか影を背負う女性を演じることが多かったんです。撮影が数カ月に及ぶ映画では役にどっぷり浸かることから、役の色が抜けきらず、プライベートでうつうつとすることも。加えて、『演技をしっかり学ばずに(スカウトをきっかけにして)女優になった』ということがコンプレックスで、実力がついていないという危機感を強く抱くようになりました。今振り返れば、もっと好奇心をもって仕事以外に新しい趣味を始めてみたら変わったのかもしれないのですが、愚直に仕事に向かうあまり、どんどん暗くなっていましたね」「楽しむ」ことを教えてくれた演劇学校ターニングポイントは「何か変えなくては」と、34歳で応募した文化庁新進芸術家海外派遣制度。若手芸術家を海外に派遣し、実践的な研修機会を提供する国の制度に見事合格し、NYで演劇を学ぶ道を選んだことが「仕事のとらえ方が180度変わる」大きな出来事になります。「新鮮だったのが、演劇の授業でもオーディション前でも先生や周りの仲間が『Have fun!』『Enjoy!』(楽しんで!)と口癖のように言うことでした。授業でも常に笑いがあり、演技をする際も、どうしたら面白くなるかを貪欲に追求する。緊張するオーディションでさえ、『チャンスがあるなんてとても素敵なこと。悔いがないように全力で楽しむのよ』と前向きな言葉で送り出されます。それまで女優という仕事に真面目に取り組もうと視野が狭くなっていた私にとって、『演技を楽しむ』『その場にいることを楽しむ』という姿勢は何よりも必要としていたことでした。演技の技術も理論も、人脈も、大切なことをたくさん得た演劇学校生活でしたが、『楽しむことを学んだ』のは、私の人生において、本当に貴重でした。いろんなことに興味がわき、人に会うことが大好きになってよく笑うようになると、周りにもポジティブな人が集まってくるんです」NYで作った人脈をいかして仕事をしたいと考え、NYに拠点を置くことを決めた小山田さん。2015年には婚約し、「私の人生はまだまだこれから!」と笑顔を見せます。「今後は国内外広く評価される女優でありたいし、プロデュース業にも興味があります。世の中は自分がどうとらえるかで景色が大きく変わるし、自分が楽しむことから道は開ける。これからの毎日に、自分が一番わくわくします」悩み、もがき苦しみ、一歩踏み出したからこそ、今がある。小山田さんの生き方は、今まさにその悩みの渦中にいる人たちにとっては勇気とヒントを与えてくれるものではないでしょうか。年齢や固定概念からの解放。それは、得ようと思えば誰にだって得られる自由なのです!【News】小山田サユリさん出演の映画『女が眠る時』全国の映画館で公開中。作家の清水健二(西島秀俊)は、編集者の妻・綾(小山田サユリ)とともに休暇を過ごすため郊外のリゾートホテルを訪れる。そこにいた、初老の男(ビートたけし)と若く美しい女(忽那汐里)の謎めいたカップルに目を奪われた健二は、少しずつ2人に近づいていく。監督:ウェイン・ワン出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品
2016年03月17日NYを拠点に活躍する女優・小山田サユリさん。2010年10月から9カ月間、文化庁新進芸術家海外派遣制度の研修員としてNYの演劇学校で演技を学び、現在は新作映画『女が眠る時』に出演、資生堂のCMではレディ・ガガと共演するなど、活躍の幅を広げています。プライベートでは2015年に婚約し、新生活をスタートさせた小山田さん。公私ともに充実した今に至るには、30代の大きなチャレンジがありました。体系的に学ぶ環境に、必死で食らいついた黒沢清監督『アカルイミライ』、行定勲監督『セブンス アニバーサリー』、森田芳光監督『わたし出すわ』など、日本映画界を牽引する監督作品に多く出演してきた小山田さん。映画に「自分の居場所」を見出し、順調にキャリアを重ねていた30代前半、ふと「自分には女優としての実力があるのだろうか」と不安を抱くようになったと言います。長く仕事を続けるためにきちんと演技を学ばなければと考えた小山田さんは、若手芸術家を海外に派遣して実践的な研修機会を提供する国の制度「文化庁新進芸術家海外派遣制度」に応募。35歳でNY留学を決めます。「派遣制度のことは、友人でもある演出家の長塚圭史さんに強く勧められていて知っていました。私が渡米する前年に『絶対に派遣制度で海外に行く』と言っていた長塚さんが有言実行でロンドンに行ったのを知り、私も行動に移さなくちゃと思ったんです」演劇学校では演劇の基礎理論をはじめ、シアター系の演技法、アクション技術など実践的な演技指導、オーディションに受かるためのノウハウ術まで幅広く体系的なカリキュラムが用意されており、日本との違いに驚きの連続だったと言います。「日本では『現場で仕事をしながら学べ』という感覚重視のやり方が一般的ですが、アメリカは非常に合理的。演技は理論から実践まで学ぶものという考えがスタンダードですし、どんなに有名な俳優でも演技のパーソナルトレーナーをつけて、日々の努力を欠かしません。演劇学校で知識やスキルを学ぶので、俳優や演出家などとして活躍したあとにパーソナルトレーナーとして指導する側に立つこともできる。演劇界に関わる人の層の厚さには、衝撃を受けましたね」自分では変えられないことで、悩むのはやめよう英語ができないまま演劇学校に入学した小山田さんは、演技法の授業のために日々セリフを覚えることで精一杯。加えて慣れない環境での一人暮らし、意志の疎通の大変さにノイローゼになったほどでした。「セリフを覚えなくちゃ、日本人特有のアクセントをできるだけ消さなくちゃ、欧米の学生たちに負けないように大きく振る舞わなくちゃ……など、さまざまなプレッシャーで、今思えば心がちょっとおかしくなっていました」そんな小山田さんを変えたのは「諦めて受け入れる」という物事のとらえ方。「どんなに背伸びをしたって私は私」と思えてから、すっと悩みがなくなったと言います。「英語を習得したのが35歳なんだから、アクセントがあるのは仕方がない。体が小さいのも仕方がないし、見た目を変えることはできない。自分ではどうしようもないことは諦めて、認めてあげよう。そう思ったら本当にラクになりました。発音は音でしかないのだから、演じる役の心の内、感情、秘めた思いをしっかり表現できる女優であろうと。自分ができること、やるべきことが明確になり、自分にないものをくよくよ考えることから解放されました」どんな質問にも、自身の考えをはっきり示しながら答えてくださった小山田さん。NYの演劇学校という厳しい競争社会に身を置き、そこで自分なりの答えを見つけてきたしなやかさに引き込まれ、「世界的に活躍する女優になりたい」という小山田さんのこれからが、ますます楽しみになりました。撮影:石田祥平ヘア・メイク:Hanjee スタイリング(デザイナー):Satoko Ozawa【News】小山田サユリさん出演の映画『女が眠る時』全国の映画館で公開中。作家の清水健二(西島秀俊)は、編集者の妻・綾(小山田サユリ)とともに休暇を過ごすため郊外のリゾートホテルを訪れる。そこにいた、初老の男(ビートたけし)と若く美しい女(忽那汐里)の謎めいたカップルに目を奪われた健二は、少しずつ2人に近づいていく。監督:ウェイン・ワン出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品
2016年03月13日NYを拠点に活躍する女優・小山田サユリさん。これまで、黒沢清監督『アカルイミライ』、行定勲監督『セブンス アニバーサリー』、森田芳光監督『わたし出すわ』など、日本映画界を牽引する監督作品に多く出演。2016年は、新作映画『女が眠る時』への出演、資生堂CMでのレディ・ガガとの共演など、活躍の幅を広げています。プライベートでは2015年に婚約し新生活をスタートさせた小山田さん。公私ともに充実した今に至るまで、どんな風に「自分」を育ててきたのか。小山田さんのこれまでを聞きました。実力をつけたい。その一心で、35歳で単身NYへ 都内の短大に通っていた20歳のとき、スカウトされたことをきっかけに女優の道を歩き始めた小山田さん。「地元・新潟に帰って、幼稚園の先生をしよう」と免許もとっていた矢先の、突然の転機だったと言います。「まさか自分が女優になるとは、想像もしていませんでした。華やかな競争社会に自分は絶対に向いていないと思っていましたが、目の前の仕事を一つ一つ進めていって得られる達成感が心地よく、気づけばがむしゃらに20代を過ごしていました。短期的な集中力が大切なCMの仕事、スピードが大事なテレビドラマの仕事、じっくりとものづくりを進める映画の仕事……それぞれを経験する中で映画に自分の居場所を感じられるようになり、もっと演技を学びたいという気持ちが芽生えていったんです」「このままでいいのだろうか」と足が止まったのは、30代になって数年が過ぎたころ。演技を“学んだ”経験がないことへの焦りや将来への不安から、35歳のとき文化庁新進芸術家海外派遣制度の研修員として単身渡米を決め、本場・NYの演劇学校に通うことにしたのです。これが今の小山田さんへ導く、最大のターニングポイントになります。「20代のころは『若くて透明感がある』と評価されることが多く、勢いだけで突き進んでいました。でもそんなのって、実力とは違う儚いもの。このままじゃ演技の幅が広がらない、しっかりとスキルを身に着けたいという思いが、日に日に強くなっていきました。幸運なことに、文化庁の派遣制度に応募したところ合格。9カ月間演劇学校に通い、ゼロから演劇を学びなおすことを決めました」日本で順調に仕事をしていた中での、渡米というチャレンジ。当時は英語を一切話せなかったそうですが、不安よりも「広い世界に飛び出したい」という衝動の方が大きかったと言います。「世界中から俳優を目指す人が集まり、演技を理論から実践まで体系的に学ぶ環境で、世界のレベルの高さを痛感しました。授業の半分を理解するのがやっと、言いたいことが伝えられないという環境で最初はノイローゼ気味でしたが、一方でいろんなことから解放されていく自分に気づいたんです」年齢は数字でしかない 「NYで居心地のよさを感じた理由の一つが、『私のことを、見たまま評価してくれる』ということでした。私は女優デビューが20代と比較的遅かったので、日本では演じられる役にかなり制限がありました。『この役は10代後半だから25歳の小山田はダメ』という風に、私を見ることなく履歴上の年齢だけで落とされることが何度もあり、すごく悔しかったんです。でも、NYに来たら誰も年齢のことを口にしません。私が35歳であろうと40歳であろうと、オーディションでプロデューサーが20代だと思えば役をもらえる。とてもシンプルで、ありのままの自分で勝負できるという自由さに、心も体もどんどん開放されていきました。オーディションで落ちることももちろんたくさんありますが、『実力がなかった』とすっきり前に進める。そんな経験から、年齢は数字でしかないと思えるようになりました」レディ・ガガと共演した資生堂のCMでも役の想定年齢は20歳だったものの、オーディションに行ってみると、15歳の中学生から40~50代の方まで幅広い層がいたそう。「チャンスの入口は広く、チャレンジすることに前向きな人ばかり。いくつになってもやりたいことに挑戦すればいいと思えたら、40歳の今もまだまだスタートラインに立ったばかりと思えます。世界で活躍する女優になりたいし、プロデュース業もやってみたい。30代だからこうすべき、40代になったらこうすべきといった考え方は、一切しなくなりました」スクリーンで魅せる透明感はそのまま、くるくると表情を変えながら話す小山田さん。35歳で英語もできないまま、NYで自ら厳しい環境に飛び込む……それだけを聞くと、なんて強くたくましい女性なんだろうと思いがちですが、「小さなきっかけに背中を押されただけ。無知だったから行けたんです」と笑顔を見せます。「年齢って、本当に誰も気にしないの。日本の常識が世界じゃ全然スタンダードじゃないんだ、なんだ、私は私でいいんだと思えたんです」そんな小山田さんの言葉に、聞いているこちらも、ふっと心が軽くなった気がしました。撮影:石田祥平ヘア・メイク:Hanjee スタイリング(デザイナー):Satoko Ozawa【News】小山田サユリさん出演の映画『女が眠る時』全国の映画館で公開中。作家の清水健二(西島秀俊)は、編集者の妻・綾(小山田サユリ)とともに休暇を過ごすため郊外のリゾートホテルを訪れる。そこにいた、初老の男(ビートたけし)と若く美しい女(忽那汐里)の謎めいたカップルに目を奪われた健二は、少しずつ2人に近づいていく。監督:ウェイン・ワン出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品
2016年03月09日ヤマトホームコンビニエンス株式会社による調査で、「帰省したとき、実家の片付けをしたいという気持ちになったことがありますか?と」いう質問に対して、約3人に1人が「ある」と回答しました。実家に荷物がたまって、足の踏み場もない……。もしくは荷物が多すぎてイライラする、そんな人が増えています。片付けたいのに、なんらかの理由があってできないという人も多いのではないでしょうか?事実、「片付けをしたいと思うが、時間的にできない」と悩んでいる人は50%もいるのだとか。また時間の問題だけではなく、なかなか物を捨てられない親の場合、片付け方針でもめることもあります。そこで、実家の片付けに関するさまざまなトラブルを回避するために読んでおきたいのが、『そのとき、あなたは実家を片付けられますか?』(安東英子監修、小山田容子漫画、扶桑社)。喧嘩になる前に、適切な言葉を使ってよい関係をつくりましょう。■1:「こんなに汚いのになんで汚れが見えないの!?」→「きれいにしたら気持ちいいよ。私も掃除、手伝うよ」高齢になると白内障などで視力が低下します。また来客も減るので、ますます汚れに無頓着になります。「汚い」という言葉には棘がありますので、親もカチンとくるでしょう。「私は傍観者ではなく協力者だ」ということをアピールするのが大切です。■2:「そんなゴミみたいなものをなんで取っておくの!?」→「お母さん(お父さん)がこのなかで特に大事なものはどれ?」古くてボロボロのものでも、親にとっては思い出の品かもしれません。なぜ捨てないのか理解できなくともここは静観しましょう。子どもの側がゴミとジャッジせず、親に選択させるべきだということ。■3:「ここに置いといちゃダメだといったのに、忘れたの!?」→「ここに物があると転んで怪我するよ。心配だから片付け手伝うよ」物忘れがひどくなっていることを責めるのはやめましょう。親は老化している自分に、憤りと不安を覚えています。どんな汚屋敷でも親の家。怪我が心配だというスタンスで接することが大切です。■4:「これいるの!?いらないの!?」→「とっておくならどこに置きたい?」詰問されると親は心を閉ざしてしまいます。たとえ「こんなもの」と思ったとしても、親にしかわからない価値あるものも存在するはず。親の気持ちを聞いて、定位置に置いてあげましょう。■5:「捨てるから!」→「これは十分働いてくれたと思うよ。もし今後必要になったら、新しいのを買ってあげる」不要品があふれかえっていると、イライラして怒鳴ってしまいがち。けれど頭ごなしに「捨てる」といわれると、親の執着心はますます強まります。「捨てる」「処分」「ゴミ」「いらない」「邪魔」「汚い」という言葉は、極力使わないようにしましょう。実際に新しいのを買ってあげなくとも、言葉だけで親は安心するのです。■6:「ボケないうちに、全部片付けてよ!」→「片付けが終わったら、ゆっくり温泉にでも行こうか」親は老化を自覚しています。ボケという言葉に恐れや不安を抱かない親はいません。そこを突かれると傷つき、素直になれなくなります。温泉以外でも親の好きなことをあげて、ポジティブな未来をイメージさせてモチベーションをあげましょう。■7:「昔はこんなにだらしない人じゃなかったのに……」→「私も年をとったってことね」苛立ちや悲しみからつい口に出してしまいがちですが、責めてもかつての親には戻りません。老人扱いされると、親も自分を情けなく感じます。親の姿は、未来の自分自身の姿です。人生の秋だと思って心を鎮めましょう。*とくに、「新しいのを買ってあげる」は効果絶大。本書の中で、この一言で「母が変わった」といった体験談も出てきます。誰だって、大切にとっておいたものを不用品扱いされたら悲しくなるもの。相手を尊重して、ポジティブな言い方をすることが大切。実家の片付けは、想像以上に大変な作業です。いざというときは上記の言葉を使って、親と揉めないよう最大限の配慮をしながら、気持よく実家を片付けましょう。(文/渡邉ハム太郎)【参考】※安東英子・小山田容子(2015)『そのとき、あなたは実家を片付けられますか?』扶桑社
2016年01月15日「Y.M.D.O.ショップ」OPEN11月11日(水)、森本容子率いるクリエイティブ集団がプロデュースするKariAng(カリアング)とBANKER tokyo(バンカートーキョー)の2ブランドをラインナップした「Y.M.D.O.オンラインショップ」がオープンする。森本容子と宮澤裕美のコラボで生まれたブランドKariAngとBANKER tokyoとも女性ファッション界をリードするプロデューサーの森本容子と、デザイナーの宮澤裕美のコラボレーションで生まれたブランドだ。KariAngは、着用する人本来の個性を引き立てる新しいスタイルを提案し、ただ単に飾り立てるだけはなく、マイナスコーディネートしていくスタイルコンセプトとなっており、新しいファッションスタイルへのチャレンジを手伝ってくれるブランドとなっている。また、BANKER tokyoは、2014年秋に誕生し、NYセレクトショップでデビュー。定番のデニムに加えて、オリジナルシルエットのJOKINNY PANT(ジョッパーズパンツとスキニーパンツをミックスした、BANKER tokyo オリジナルシルエットのパンツ)が人気(プレスリリースより)となっている。KariAngとBANKER tokyoで新しいファッションにチャレンジしてみてはいかが?(画像はプレスリリースより)【参考】・「Y.M.D.O.オンラインショップ」・プレスリリース「Y.M.D.O.オンラインショップ」オープン
2015年10月26日ノエビアは、東京都・銀座のノエビア銀座ギャラリーにて、銅版画家・山本容子が描いたポートレートを集めた作品展「山本容子のアーティスト図鑑」を開催している。会期は2015年8月24日~10月30日。入場は無料。本展は、1995年に創刊された小冊子『本の話』(文藝春秋刊)の表紙画として、銅版画家・山本容子が描き続けたアーティストの肖像画を集めた作品展。会場では、17年にわたって描かれた191名の銅版画のポートレートから、日本人アーティストをピックアップして展示するという。なお、展示される作品には、持ち主の印として蔵書に貼られる"蔵書票"を意味する「EX-LIBRIS」の文字が書き込まれるなど、すべてが蔵書票のスタイルで描かれている。古くは紋章や肖像画をあしらった図案が用いられた蔵書票だが、今回展示される作品は、山本が大切に考えたという「作家の人物としての空気感」に重点を置いて描かれているとのこと。
2015年08月24日公開初日を迎えたアニメーション映画『攻殻機動隊 新劇場版』の初日舞台あいさつが20日、東京・新宿バルト9で開催され、劇中音楽を担当したコーネリアスこと小山田圭吾、主人公・草薙素子を演じた声優の坂本真綾、黄瀬和哉総監督、脚本の冲方丁氏らが登壇した。第57回グラミー賞で、最優秀アルバム賞を受けた世界的なミュージシャン・Beckとのコラボレーションや、Salyuなど数多くのアーティストのプロデュースで知られる小山田は、2013年から全4話で劇場公開されたアニメーション作品『攻殻機動隊ARISE』から劇中音楽を担当。『攻殻機動隊 新劇場版』では劇中音楽に加え、素子を演じた坂本とのユニット「坂本真綾 コーネリアス」を結成し、主題歌「まだうごく」も手がけている。登壇した小山田は、「長編映画の音楽を作るのはこれが初めて。貴重な体験をさせていただきました」とあいさつ。続いて、MCから楽曲制作で気をつけたことを聞かれると、「アニメーションは、実写と比べると情報量が少ない。かといって、音の要素を入れすぎるとセリフや効果音とぶつかってしまうので、そのバランスには配慮しました」とコメントした。主題歌について話題がおよぶと、小山田と坂本とのやりとりに。小山田が「坂本さんは、歌入れが異常に早いんですよ。昼ぐらいに集まるんですけど、夕方には帰るみたいな。けっこう難しい曲だと思ったんですけど、練習したんですか?」と尋ねると、一方の坂本は、「この流れで練習してませんとは言えないですよ」と照れつつも、「難しさに燃えるんです。でも、小山田さんも2、3回歌うと『もういいですよ』って、すごく早いなと思いました」と返す。すると、小山田は「本当にバッチリだったので」とレコーディングの順調ぶりを振り返りつつ、歌手・坂本真綾について「すごく好きですよ。クセのない、きれいな声をされている」と絶賛した。曲を聞いた総監督の黄瀬氏は、「初めはサントラでいただいたんですが、やっぱりフィルムを通して聞くのは違うなと思いました」と語り、「川井憲次さんがよかったという方もいるでしょうし、菅野よう子さんがいいと言う人もいたんですけど、僕は小山田さんにやっていただいて満足しています」と称賛の言葉を贈った。『攻殻機動隊 新劇版』では、総理大臣暗殺事件をきっかけに、シリーズを通して謎に包まれていた全身義体の主人公・素子の生い立ちが明らかになるとともに、攻殻機動隊の誕生秘話が語られる。アニメーション制作はProduction I.G、監督は野村和也氏が務める。この日の舞台あいさつにはその他にも、ProductionI.Gの石川光久氏、野村和也監督らが登壇。また本作は、6月20日にフランスの「2015年アヌシー国際アニメーション映画祭」でも上映され、26日には同じくフランスの映画館・グランレックスでの上映を控えているという。(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
2015年06月20日銅版画家の山本容子が個展「山本容子展 アート イン ホスピタル」を伊勢丹新宿店本館7階催事場にて開催している。2005年から山本が新たなライフワークの一つとして取り組んでいる「アート イン ホスピタル」。これは、絵の持つ力で患者を始め看病する家族や医療従事者達が心穏やかに過ごせるよう病院内でアートを活用するという考え方だ。山本は自身の父の死をきっかけにアート イン ホスピタルに興味を持ち始め、福祉先進国のスウェーデンにて勉強した経験もある。まだ国内ではなじみの薄い病院でのアートについて山本氏は、「病院を訪れる患者の心情には治りたいという前向きな思いと共に、緊張や不安もある。心の底ではどこか怖い場所というイメージがあるかもしれない。実際に病院内でアートを取り入れているスウェーデンは、病院こそ最も美しく快適でなければならないという考え方だ。私もアーティストとして、アートを通じて日本での病院に対する意識を変えられないかと考えている」と話す。病院に飾られるアートに求められるものは「作品の善し悪しではなく、その環境や土地にふさわしいものでなければならない」と語る山本氏は、制作のオファーを受けると即現場に出向き、患者や病院スタッフとそこに何を描くかミーティングを重ねる。そこには彼女の「病院内のアート作品は自分の好きな世界観を描いてはダメ。その場で過ごす方々と会話を重ね、どんな絵が効果を生み出すのかを一緒に検討することが大事」という考えがあるからだ。同展示で入口すぐのスペースに展示される原画は、高松赤十字病院の西玄関に描いた作品のために制作したもの。同作品は2000年に描いた『愛の小径(Les chemins de L’amour)』というフランスのシャンソンをモチーフにしたエッチングをベースにしている。しかし、原画には元のエッチングには無い要素が描かれている。島や海、オリーブの木は現地での関係者達との会話の中で、直島や小豆島など瀬戸内海の島々と海やオリーブの木を描いて欲しいという声が上がったことから加えられた。また、病院のエントランスに飾られるという立地性から、子供の目の高さにはカエルを書き加えるなど通行者の目の高さも意識した工夫が凝らされている。高松で前述の作品を1週間掛けて描く間、患者やその家族だけでなく、病院で働く医療従事者にも日々変化する作品の制作過程を楽しみにする様子が見られたという。その経験から、彼女は「医療従事者にとって病院は日常生活の大半を過ごす場所。その場が殺風景だったら彼らも癒やされない。患者と同様、医療従事者の方にもリラックスするための空間は必要」だと考える。また、病院において求められるアートについて「環境音楽のようにさりげなく環境に溶け込み、見る人に静かに何かを語りかけてくれるものではないかと思う」と自身の考えを述べた。山本はこれまでにも同店で個展を開催してきたが、今回は百貨店で展示を行う意義を強く感じているという。「百貨店は人々が夢を求めて来る場所。買い物ついでに立ち寄って作品を見ていただき、病院におけるアートの在り方や医療現場に求められることを考えてみるきっかけになれば嬉しい」
2014年06月26日銅版画家の山本容子は、「山本容子展 アート イン ホスピタル」を伊勢丹新宿店本館7階催事場にてスタートした。会期は6月30日まで。彼女が病院におけるアートをテーマに大規模展を開催するのは今回が初。会場には、病院という場で過ごす患者や医療関係者が心穏やかに過ごせるようにと山本が手掛けた作品やその原画などが展示される。会場には山本が未来を感じたという病室で過ごす患者自身が病室に飾る絵を選ぶ「アートテイク」のためにセレクトした作品も展示され、その一部は購入することも可能だ。アートテイクゾーンの作品には、本を読むのもつらいという症状の子供のために、その絵があることで家族や看護師と会話が広がるようにと山本が選んだ作品もある。展示作品は、会場中央には同氏が初めて手掛けた病院におけるアート作品である中部ろうさい病院特別室2室の天井画『チューリップ』や和歌山県立医科大学付属病院母子医療センター治療室前の壁画『鳥の歌』『オーヴェルニュの子守歌』、エントランスには今年山本が手掛けた高松赤十字病院の西玄関に描かれた壁画『愛の小径(Les chemins de L’amour)』の原画など。この原画は、制作期間の限られた病院での作業を前に、山本のアトリエで描かれた現場と同サイズのキャンバスに描いた設計図とも呼べる下絵だ。山本は趣味人だった父が病院での闘病生活の末亡くなった後、そのベッドに横になってみたという。そこで病室のぶつぶつと穴の空いた白い殺風景な天井が目に入り、最期に見た光景はこの天井だったのかと悲しい気持ちになった。それ以降、病院におけるアートの力を問うべく、医療関係者に出会う度に「病院で天井画を描かせて欲しい」を語り続け、ある対談で出会った中部ろうさい病院院長が山本に賛同し、2005年に第一号となる天井画が生まれた。山本氏は、「今回は自分の世界観を一方的に伝える展示ではなく、病院環境の質という社会問題をアーティストの視点で捉えて制作した作品を展示している。アート イン ホスピタルには一つの正解がある訳ではないので、鑑賞者も知恵を出し合って様々な問題を解決できる社会になれば嬉しい」と語った。28日11時から12時の間、山本自身がキャンバスの仕上げをライブで見せる公開制作を実施。また、29日14時45分から15時45分にはサイン会を開催。会期中会場で書籍を購入した先着80名にサイン会整理券を配布する。
2014年06月26日