2014年、誕生から80周年を迎えた日本プロ野球。昨年のバレンティンの60本塁打や田中将大の24連勝といった華々しい記録はなかったかもしれないが、今年もさまざまな記録が生まれている。その中から、渋くて味わい深いものやちょっとした笑い話として使えそうな「珍記録」をセレクトしてみた。○続々と誕生した「1球」記録■DeNA・菊地の「1球敗戦」4月4日、広島戦の延長11回裏に登板したDeNAの菊地和正は、梵英心への初球をサヨナラ本塁打にされ、NPB史上26人目となる「1球敗戦投手」になってしまった。ちなみに、この次の登板となったのは4月9日の阪神戦。8回裏2死から登板し、1球で阪神・藤井彰人をサードゴロに打ち取った。9回表にDeNAは1点差まで詰め寄るも敗戦。もし、逆転していれば「1球勝利」の可能性もあった。この後、4月11日に登録抹消となり、今季は1軍で2球しか投げていない。そして、10月3日に戦力外通告を受けた。■巨人・土田、プロ入り初勝利が「1球勝利」6月15日、楽天戦の8回裏2死一塁で登板した巨人の土田瑞起。藤田一也が初球を打つと、ファーストゴロとなり、チェンジ。この直後、9回表に巨人が逆転したため、NPB史上35人目の「1球勝利投手」となった。ちなみに、土田はこれがプロ入り初勝利。プロ入り初勝利での1球勝利は、NPB史上5人目だった。■阪神・金田が「1球勝利」7月22日、巨人戦の延長12回裏1死一塁の場面で登板した金田和之。井端弘和への初球が併殺打となり、チェンジ。その裏に阪神がサヨナラ勝ちしたため、NPB史上36人目の「1球勝利投手」になった。■楽天・横山、プロ初登板、初勝利が「1球勝利」8月30日のソフトバンク戦、1-1の同点で迎えた7回2死二塁で登板した横山貴明。今宮健太への初球をタイムリーヒットとされたものの、二塁を狙った今宮が刺されてチェンジとなった。その裏、楽天が8点を奪って逆転し、9-4で勝利したため、横山はNPB史上37人目の「1球勝利投手」に。また、初登板での1球勝利はNPB史上初の記録だった。■ロッテ・益田が「1球勝利」9月9日、西武戦の延長11回2死二塁の場面で登板したロッテの益田直也。渡辺直人への初球がセカンドゴロとなり、役目を終える。その裏、ロッテがサヨナラ勝利したため、NPB史上38人目の「1球勝利投手」となった。○記憶に残る暴投の記録以前に比べると、「荒れ球」という言葉を聞かなくなった昨今のプロ野球。制球力は投手の必須項目だ。だからこそ、たまに生まれる暴投記録は悪い意味で目立ってしまう。特に印象深い2つの暴投記録を振り返ろう。■DeNA井納、新記録に「マジ? ありがとうございます」5月9日に行われたDeNAvsヤクルトの6回、DeNAの井納翔一がセ・リーグ史上6人目の1イニング3暴投を記録した。それでも、この試合で勝利投手になった井納。ヒーローインタビューで暴投のタイ記録であることを聞かされると、以下のように答えたことでも話題になった。「本当に? マジ? ああ、ありがとうございます」。■新垣渚、両リーグで"暴投王"に?8月16日、今季途中にヤクルトに移籍した新垣渚は、対中日戦でセ・リーグタイ記録の1試合4暴投を記録した。新垣はソフトバンク時代の2008年にNPB記録の1試合5暴投も記録。1試合4暴投以上を両リーグで記録したこと、そして通算3度も記録したのはそれぞれNPB史上初となった。また新垣は通算暴投数も「88」に伸ばし、NPB歴代3位になっている。○いぶし銀たちの偉大な記録プロ野球を面白くしてくれるのは、スター選手たちばかりではない。いぶし銀、バイプレイヤーと呼ばれる選手たちが作った偉大な記録にも目を向けてみよう。■走塁のスペシャリストが作った偉大な記録巨人の鈴木尚広は、5月26日に行われた日本ハム戦の7回無死一塁で代走の声がかかった。そして、NPB新記録となる「代走で通算106盗塁」に成功。また、今季の鈴木尚広は通算200盗塁も達成している。■ユーティリティープレーヤーが作った意外な記録DeNAの山崎憲晴は7月21日、中日戦に先発出場。4回の第2打席から延長10回の第5打席まで、4打席連続で犠打に成功した。これはNPB史上9人目となる日本タイ記録にあたる。■最後の阪急戦士の野球人生はまだまだ続く6月27日、日本ハムの中嶋聡が楽天戦の8回から出場。1軍実働年数を、自らの持つNPB野手記録を更新する28年に伸ばした。中島がプロ入りしたのは1987年のこと。阪急に所属した選手としては、最後の現役選手にあたる。来季も兼任コーチとして現役を続けることが発表されており、もし出場すれば、野村克也(元南海ほか)の持つ捕手の史上最年長出場記録も更新することになる。週刊野球太郎スマホマガジン『週刊野球太郎』では、今季のプロ・アマ、そしてメジャーリーグをランキング形式で振り返る『2014総決算! 野球界なんでもランキング』を発表中! また、現在販売中の『野球太郎No.012~2014ドラフト直前大特集号』では、横浜高校の元コーチ・小倉清一郎氏やプロ野球スカウトの生の声を紹介。ドラフトの結果をまとめた『野球太郎No.013~2014ドラフト総決算&2015大展望号』が11月25日発売となります。
2014年12月02日木南晴夏が家庭教師のアニー・サリヴァン、高畑充希が三重苦の少女ヘレン・ケラーに挑む舞台『奇跡の人』が、10月9日に開幕。上演前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、意気込みを語った。同作は、見えない、聞こえない、話せないの三重苦を抱えるがゆえに甘やかされて育ったヘレン・ケラーに、新米家庭教師のアニー・サリヴァンが指文字を教えることでヘレンに人生を取り戻してもらおうとする物語。ヘレンの両親や兄のジェイムズら家族の葛藤も描く。演出は、2014年読売演劇大賞で大賞と最優秀演出家賞を受賞した新鋭の森新太郎が務める。5年ぶりに同役を演じる高畑は、「5年前のことをもう1回やろうとしてもできないし、全部を取り壊して新しく立て直しました」と新たな気持ちで取り組んだことを明かした。そして、「かなりハードな舞台ですので、次の公演のことは考えずに全力で楽しんでやりたいと思います」と充実した表情を見せた。その言葉通り、ふたりの取っ組み合いのシーンは壮絶そのもの。森から「本当に戦っているように見せること」と「スピードアップ」を心がけた演出をつけられたというふたり。声を荒げながらヘレンに厳しく指文字を教えるサリヴァンと、感情を露わにしてそれを拒もうとするヘレンのぶつかり合いに観る者はハラハラさせられる。「慣れてくるとアザは少なくなってきたんですけど、スピードが上がってきているので息が上がるようになりました。200メートル走を全力疾走したみたい」(木南)。加えて木南は「アニー・サリヴァン役は本当に光栄なことですので、しっかりと受け止めて皆さんにお見せできたらいいなと思います」と意気込みを語った。初共演となるふたりは、お互いの印象を、「お家みたいな感じがします。(木南の)テリトリーにパッと入れました」(高畑)、「本当にヘレンのようにみんなに愛されていて、私も気遣いをまったくせずにすんなり入っていけました。印象はいいです!」(木南)と話し、舞台上の緊張感とは打って変わって、楽しそうに笑い合った。公演は、天王洲 銀河劇場(東京都)で10月19日(日)まで。大阪公演は10月21日(火)に梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪府)で上演。チケット発売中。
2014年10月10日ワールドは12月7日、スタイリスト百々千晴がディレクターを務めるウィメンズブランド「ジンジャーエール(GINGER ALE)」の1日限定ショップを代官山T-SITE蔦屋書店ガーデンギャラリーにオープンする。今回の限定店舗では、シューズブランド「ハルタ(HARUTA)」とのコラボローファーの新色を先行販売する他、コート、アウターを始めとするブランドのフルラインアップをそろえる。ジンジャーエールは今シーズンよりスタート。今年9月にはルミネ新宿ルミネ2に1号店をオープンした。
2013年12月04日人気急上昇中の若手実力派、木南晴夏が初の長編映画に主演した。新米学芸員(木南晴夏)と創作意欲を失った余命わずかな芸術家(ミッキー・カーチス)が、古い懐中時計に秘められた恋の物語を紐解いていくことで止まっていたそれぞれの時間が再びを動きだす心温まる物語。初挑戦へのプレッシャーや女優としての今後についてインタビューをした。■今回の役柄について教えてください。私が演じた涼香という役は自分でもびっくりするくらい、自然に演技に入り込むことができました。普段の私と涼香の境目がなくて、カットがかかってもあんまり変わらないから周りの方も驚いていました (笑)。■長編作品初主演というプレッシャーはありましたか? プレッシャーはありましたが、ミッキー・カーチスさんに色々な面で助けていただきました。ミッキーさんは不思議な魅力を持っている方で、自分が不安に思っていてもミッキーさんを見たら安心できるんですよ。撮影が長引いて疲れていても“役者は待つのが仕事だから”って、キャスト・スタッフのみんなを引っ張っていただいて、全ての面でサポートしていていただいていたように思います。■金子監督の印象はいかがでしたか? スタッフさんに対してもキャストに対しても真摯に対応してくれる、とても愛がある監督さんだと感じました。■初共演であるミッキー・カーチスさんの印象はいかがでしたか? お会いする前は、目上の方だし二人の芝居が多いので緊張もあったのですが、実際はすごくお茶目で可愛らしい方でした。今回、ほぼ自前の衣装で出演されているんです!行人さんの雰囲気にもピッタリで凄くおしゃれですよね! ■現場の雰囲気はいかがでしたか? ミッキーさんが現場の雰囲気を作ってくださって、皆さんと打ち解けるのにも時間がかからず、すぐに仲良くなれて本当に楽しい現場でした。オフの日もみんなでうどんを食べに行ったり、喫茶店に行ったり、一緒にいましたね。■撮影で苦労したことはどんなことですか? 苦労というほどではありませんが、制服を着たことですね。本当に恥ずかしくて! 24歳の時にも着る機会があったのですが、26歳でまた着るとは思いませんでした。周りのスタッフさんは“全然、問題ないよ! ”ってフォローしてくれたんですが、とにかく恥かしくて…(笑)。■香川オールロケ作品ということですが、香川県の印象はいかがですか? 高松市内は都会ですが、一歩外へ出ると山と海が共存していて凄く過ごしやすい場所でした。地元の方の協力も凄くて、サポータークラブができていて驚きました。皆さんとても親切でした。それと、うどん県ということで映画の中でもうどんを食べていますが、私自身もうどんが大好きなんです。香川は今回で2回目だったんですが、初めてプライベートで言った時もうどん巡りをしたくらい。今回も絶対うどんを食べようと決めていて、合計で6軒は回りました(笑)。■木南さん演じる涼香は学芸員ですが、木南さん自身はアート・美術に興味はありますか? 美術館やギャラリーに行ったりしますね。どちらかというと近代的な作品が好きです。でもこの作品でアートのイメージが少し変わりました。■役者として大切にしていることはありますか? 相手のセリフに対してのリアクションを大切にしています。だから、相手のセリフはあまり覚えないようにしています。そうしないと新鮮なリアクションができないので。私、無器用なんです(笑)。■目標にしている女優さんはいらっしゃいますか? 樹木希林さんです。どんな役でも自分のものにしているので、すごく憧れていると同時に目標にしています。■女優としてのターニングポイントになった作品はありますか? 『20世紀少年』ですね。あの作品を見てくださった方が多くて、“『20世紀少年』を見て決めたよ”とおっしゃってくれる監督さんもいたくらいです。■木南さんの理想の男性像はどういった方ですか? 最近気づいたのですが、少年っぽい人がタイプですね。そう考えるとミッキーさんが当てはまるかも(笑)。お茶目で、可愛らしい人が理想です。■最後になりますが見どころをお願いします。私はこの映画の“これまでとこれからの時間をあなたに捧げます”という台詞が大好きなのですが、“自分はこれからの時間を誰とどう過ごしていきたいのか”ということを改めて考えさせられました。琴電でのクライマックスシーンが一番の見どころですが、ラストに向かって涼香やミッキーさん演じる安藤行人がどんどん変わっていく姿を是非、見て欲しいです。■作品情報『百年の時計』 公式サイト 5月25日よりテアトル新宿にてロードショー、ほか全国順次公開(c)さぬき地産映画製作委員会/真鍋康正 小松尭 大久保一彦 金子修介 金丸雄一
2013年04月30日JR京都駅から東海道本線で5駅。そのJR山崎駅から、10分ほど歩くと現れるのが、日本初のモルトウイスキー蒸溜所「サントリー山崎蒸溜所」だ。1924年の竣工以来、ジャパニーズウイスキーをつくり続けている。タイプの異なる酵母、そして、木桶とステンレスタンクの発酵槽の使い分け、蒸溜時の加熱方法、形状の異なる複数の蒸溜釜を使い分けることなどで、個性豊かな、モルト原酒を生み出す蒸溜所として世界的にも知られている。そして、日本を代表するシングルモルトウイスキー「山崎」がつくられている場所だ。緑豊かな敷地内に足を踏み入れると、森林浴をしているような、すがすがしい気分にさせられる。天王山のふもと、霧が発生しやすい湿潤な気候が、モルトウイスキーの製造に適している。山崎は、桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流する場所。ウイスキーの仕込み水として使用するのは、ミネラルバランスがよい軟水。その昔、千利休が茶を点てたことでも知られる名水だ。蒸溜所では、蒸溜設備の見学と、モルトウイスキーがつくられる工程についての知識を深められる、ガイドツアーに無料で参加できる(平日、土・日・祝日の午前中実施。約60分。前日までに要予約)。木桶での発酵工程。温度管理が難しく、手入れも手間がかかるが、保湿性に優れるなど利点も多い。木桶内の乳酸菌や微生物の働きによって、優れたモルト原酒をつくり出す。大小、形状もさまざまな銅製の蒸溜釜(ポットスチル)が並ぶ。これらを使い、加熱方法を変えるなどして、ライトからヘビーなものまで、タイプの異なる原酒をつくりわける。樽に詰めた原酒を熟成させる樽貯蔵庫。オーク樽をメインに、種類、形状、サイズの異なる何万もの樽が、静かに熟成までの時間を過ごす。日本独自のミズナラ樽も使用。ビャクダンやキャラを想わせるオリエンタルな香りが特徴だ。貯蔵庫を巡ると、この地で最初に蒸溜した原酒を詰めた、1924年の樽を見ることもできる。ガイドツアーの最後には、「山崎」の試飲も。手間と時間をかけて育まれた、さまざまな原酒を合わせた琥珀色のしずく。背景を知った後での味わいは格別だ。ウイスキーライブラリーには約7000本もの原酒を展示。テイスティングカウンターでは、モルト原酒の香味の違い、経年によるモルト原酒の香味の比較なども体験できる(有料)。併設のショップでは、限定のウイスキーや貯蔵に使用した樽材を再利用したオリジナルグッズなどを手に入れられる。山崎蒸溜所ならではの日本のウイスキーづくりの歴史やこだわりに触れられ、さらには、味わうこともできる蒸溜所見学ツアー。京都や大阪など、関西方面への旅の計画に加えてみては。お問い合わせ:サントリー山崎蒸溜所 tel.075-962-1423大阪府三島郡島本町山崎5-2-1【工場見学】開館時間:10:00~16:45(最終入館16:00)休館日:年末年始・工場休業日(臨時休業あり)※要予約。 公式サイト 取材/はまだふくこ
2011年12月08日淀川長治さんと言えば「さよなら、さよなら、さよなら」水野晴郎さんと言えば「いやー、映画って本当にいいもんですね~」という決めゼリフが必ず出たものですが、お二人とも亡くなってしまい、今、テレビには老若男女が知っている映画解説者という人が存在しないですよね。ということは、水野晴郎さんは、日本の放送史上最後のメジャーな映画解説者と呼べるかもしれません。晩年はバラエティー番組でトリッキーなキャラクターをイジられたり、B級映画界の金字塔とも呼べる「シベリア超特急」シリーズで監督デビューしたりと才能をいかんなく発揮されていた水野晴郎さんですが、やはり彼の本職は何と言っても映画解説。しかし映画の本編はDVD化されて、時を越えても支持されるのに対し、映画解説はその時代にのみ有効なのか、もはや過去のVTRを観る機会がなくなってしまいました。うーん、もう見られないものだとすれば、もう一度あの映画解説を見たい気もするなーと思っていたら、なんと、水野晴郎さんの映画解説だけを100本も集めたDVD『水野晴郎 名画100解説』が7月17日に発売されたらしい。販売元のエースデュースさんに話を聞いてみました。そもそもどうして映画解説だけのDVDを出そうと思ったんですか?「弊社はもともと水野監督の『シベリア超特急』を作品化していたこともあり、追悼の意味を込めて発売することになりました」映画解説者の優劣というのは素人目には分かりづらいですが、水野さんの解説者と魅力は?「水野さんならではのゆったりとした聞き心地の良い語り口、名シーンが思い浮かぶようなシーンの解説、監督やヒロインを思い入れたっぷりに紹介する、などが魅力かと思います」(同)確かに映画に対する愛はただならぬほど感じる人ですよね。低予算のB級映画と言われることも多い「シベ超」を見ても、映画としてあと一歩な点は多々あれど、それをカバーする愛や勢いを感じます。わがコブス横丁も、ネット界のシベ超を目指したいところですが、100本もの解説の中でも、これは名解説中の名解説と呼べるものはありますか?「そうですねー、以下の3本ですかねー」■『西部戦線異状なし』……「これぞ名作の1本」と解説■『我等の生涯の最良の年』……水野さんが生涯で一番好きだと話していた■『荒野の決闘』……最後の決闘シーンの解説は素晴らしいですどれもこれも古い時代の名作が並びますね。水野さんの趣向が透けて見えるようです。もちろん、1解説ごとにチャプターが分かれているので、水野さんの解説を見終わった後に本編の映画を見るという『一人金曜ロードショーごっこ』もできます。この夏休み、空調の効いた部屋で名解説と名画ざんまいも良いですね。いやー、映画って本当にいいもんですね。(梅田カズヒコ/プレスラボ)【関連リンク】映画の放邦題って、どうやって付けてるの?秀逸な邦題。いったい誰が付けているんでしょう『トランスフォーマー/リベンジ』ワールド・プレミアに潜入!叶姉妹がコブス横丁に!!それだけでご飯何杯も食えます
2009年07月31日爽やかな二枚目役から熱血漢、そして陰のある男まで多彩な役柄をこなす坂口憲ニ。彼にとって俳優と並ぶもう一つの“職業”であり、自らの人生の一部として愛してやまないのがサーフィンである。10代の終わりに初めて波に向き合って以来、いろいろな国を旅してきた彼だが、あるとき、胸をよぎったこんな思い。「もっと日本を知りたい」――。その思いを実現すべく、サーフボードを片手に日本中を巡る彼の姿を追ったドキュメンタリーDVD、それが「海から見た、ニッポン」である。第3弾にして、最終章となった今回、坂口さんが訪れたのは小笠原諸島に四国、そして九州。そこで彼が見たものは――。インタビュー冒頭、こちらがサーフィンについて、全くの素人であることを明かすと「そういう人に、ぜひ楽しんでもらいたいです」と優しい笑みを浮かべて語った。この企画が始動したのは、数年前。海外のサーファーたちとの出会いを通じて坂口さんの中から浮かび上がってきたある気持ちからだった。「あるTV番組を通じて、海外を自分の目で見て回って、向こうで同世代のサーファーたちの話を聞くと、みんな自分の国にプライドを持ってるんですね。それがすごくかっこよかったんですが、じゃあ、自分はどうかって考えたとき、『俺は日本のこと詳しくない。日本の海といっても湘南か千葉か伊豆くらいしか行ったことない』って思い当たったんです。もう一度、自分が生まれたこの国を見たい、自分の好きなサーフィンを通してならまた違った見え方があるんじゃないか、と思ったんです」。坂口さんのこの言葉通り、そしてタイトルの通り、この作品では彼がサーフィンをする姿だけではなく、実際に現地に行くまでの様子や、地元の人々との交流が綿密に描かれている。「サーフィンというのは波に乗るだけじゃないんです。気の合う仲間同士での旅、その過程での様々な出会いや時にトラブルもある。いい波に出会えるときもあればひたすら待ち続けることもある。そういう側面的な部分にも面白さがあるからこそ、これだけの人気スポーツなんだと思う。世の中にはプロのサーファーがいて、そういう人たちが大きな波に乗る姿を撮ったDVDもあるけど、逆に旅や地元の人々との出会い、景色を映し出した作品というのはこれまであまりなかった。それこそ、普段は忙しくてなかなかサーフィンに行けない人が『久々に行ってみるか』って思うきっかけになるような作品になればいいな、という思いはありました」。劇中、ある人物の言葉として“サーフィンは進行形だ”という深い意味を持つ印象的な言葉が紹介される。実際、サーフィンのために赴いた現地で、お寺に行って座禅を組む坂口さんの姿を見ると、サーフィンというものの奥深さ、精神的な意味で与えてくれるものの大きさを感じさせる。「サーファーが対峙するのは、人間ではなく海。どうあっても人間の敵う相手じゃないんです。実は、常に死と隣り合わせの世界なんですよ。そういう自然を相手にするとき、人間はうそをついちゃいけない、全て見透かされてしまうんですね。逆に普段、陸で人間を相手に生活するとき、実はうそがつけたり、ごまかしが通ってしまったりする。こうした対極の世界が共に存在するのは、当然のことなんですが、自然の脅威や素晴らしさを肌で知っていれば、逆の世界にいるとき、人間に対して優しくなれると思うんです」。特に、誰かを“演じる”ことを仕事とする俳優であるからこそ、海と陸とのバランスが重要な意味を持つ、と坂口さんはうなずく。「いまは、いいバランスでいられているな、と思います。陸にいても、海から自然のエネルギーをもらえてるな、と。それは目に見えるものでもお金で買えるものでもないんだけど。だからこそ、この自然がくれる大きなものに対して、自分は何を返すことができるのだろう?って考えなくちゃいけないんだな、と強く感じます」。力強い言葉を通して、“俳優”坂口憲ニの力の源が垣間見えた。「海から見た、ニッポン 坂口憲二の日本列島サーフィン紀行 最終章」発売元:電通販売元:ポニーキャニオン価格:7,140円(税込)/2枚組発売中
2009年07月27日