舞台『子午線の祀り』が、2月21日(日)よりKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて開幕した。『子午線の祀り』は、木下順二が『平家物語』を基に“天”の視点から人間たちの葛藤を描き、平知盛や源義経をはじめとする源平合戦にかかわった登場人物たちを躍動感をもって浮き彫りにし、心理描写も巧みな壮大な歴史絵巻に仕立て上げた戯曲。日本語の“語り”の美しさと荘厳な響きを引き出す群読という独特な朗誦スタイルを随所に用い、演劇史に確固たる地位を築いてきた作品として広く知られてきた。その戯曲を受けて宇野重吉、観世栄夫、木下順二らの演出による初演が1979年。能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフがジャンルを越えて創り上げ、高く評価された。その後、幾たびもの上演を経て、この伝説的な舞台が、野村萬斎の新演出により世田谷パブリックシアターで上演されたのが、3年前の2017年のこと。世田谷パブリックシアターとKAAT神奈川芸術劇場の共同制作となる今回は、2017年版をベースにした新演出で、野村萬斎が再び作品を立ち上げた。初日を終えた野村は、「『子午線の祀り』という戯曲そのものが持つ宇宙観を生かしながらも、より凝縮した“ドラマ”になった」と手応え十分の様子。成河は、「簡単には越えられない山に全員でタックルして、立ち向かっているという感じですね」と全員が一丸となって舞台に挑んでいることを明かす。若村麻由美は「劇場に共にいる喜びを分かち合い一期一会のタイムトラベルを千穐楽迄果たします」と感染症予防対策に努めながら来場した観客に向けて、感謝のメッセージを送った。本舞台は神奈川公演に続き、名古屋、久留米、兵庫、東京と3月30日(火)まで上演される。『子午線の祀り』作:木下順二演出:野村萬斎音楽:武満徹出演:野村萬斎、成河、河原崎國太郎吉見一豊、村田雄浩、若村麻由美ほか企画制作:世田谷パブリックシアター共同制作:KAAT神奈川芸術劇場
2021年02月24日『平家物語』を題材に、2017年に野村萬斎の新演出で上演し、数々の演劇賞を受賞した舞台『子午線の祀り』。世田谷パブリックシアター開場20周年記念として、本舞台が戯曲の芯をとらえ直し、ダイナミックかつテンポ感を増した2021年版として新たに生まれ変わり上演されることが分かった。『子午線の祀り』は、木下順二が『平家物語』を基に“天”の視点から人間たちの葛藤を描き、平知盛や源義経をはじめとする源平合戦にかかわった登場人物たちを躍動感をもって浮き彫りにし、心理描写も巧みな壮大な歴史絵巻に仕立て上げた戯曲。日本語の“語り”の美しさと荘厳な響きを引き出す群読という独特な朗誦スタイルを随所に用い、演劇史に確固たる地位を築いてきた作品として広く知られてきた。その戯曲を受けて宇野重吉、観世栄夫、木下順二らの演出による初演が1979年。能・狂言、歌舞伎、現代演劇で活躍する俳優、スタッフがジャンルを越えて創り上げ、高く評価された。その後、幾たびもの上演を経て、この伝説的な舞台が、野村の新演出により世田谷パブリックシアターで上演されたのが、3年前の2017年のこと。世田谷パブリックシアターの芸術監督として長年にわたり、作品を数多く演出してきた野村の集大成のひとつともいえる2017年版の上演は、宇宙的な視座を持つ作品の深い考察、個人と全ての人間の運命を包み込む宇宙の対比、群読による日本語の美しい響きと身体性を活かしたダイナミックな演出が高く評価され、読売演劇大賞最優秀作品賞をはじめ、数々の演劇賞を受賞。そして2021年初頭にこのコロナ禍の中で再び上演するにあたり、あらゆる試行錯誤を繰り返した結果、2017年版をベースにしながらも、演出の濃度を増し、機動力のある舞台を新たに目指すこととなった。また今回の2021年版は2017年には果たせなかった、各地での上演も実施するはこびとなる。2月にKAAT神奈川芸術劇場で幕を開け、その後、愛知、久留米、兵庫と各地をまわり、最後に世田谷パブリックシアターの舞台へ戻ってくるという、その間1カ月以上に及ぶ公演となる新たな『子午線の祀り』の誕生に期待したい。配役は以下の通り。野村萬斎……新中納言知盛(しんちゅうなごんとももり)成河……九郎判官義経(くろうほうがんよしつね)河原崎國太郎……大臣殿宗盛(おおいとのむねもり)吉見一豊……梶原平三景時(かじわらへいぞうかげとき)村田雄浩……阿波民部重能(あわのみんぶしげよし)若村麻由美……影身の内侍(かげみのないし)2017年版の出演者31名から今回は17名に再編成を行い、群読チームの若手の中から伊勢三郎役への抜擢や、また新たに梶原平三景時に吉見一豊を迎え、さらに機動力を増した布陣で挑む。野村は、今回の公演を「『子午線の祀り 2021』withコロナバージョン」として、以下のコメントを寄せている。「1979年の初演より半世紀を過ぎて尚輝く名作。2017年の新演出では、数々の賞を頂きました。何故この作品がこれまで息長く、また時代に合わせたアップデートに耐えて輝き続けるのか。それは木下順二が、日本の普遍の名作「平家物語」に、世界の普遍の名作「ギリシャ悲劇」「シェイクスピア」を掛け合わせ、宇宙の目線から見つめるというハイブリッドな戯曲(レクイエム)を書き上げたからに他ならない。数百年、数千年の普遍を掛け合わせれば、それは絶対普遍とも言えるのではないか。後は、現在に生きる我々が、いかにアップデートするかにかかっている。この1年間、世界はコロナウイルスという大きな波に揺れている。しかし我々は、足を波に掬われようとも自分の座標軸をもち、すっくと現在この時に立っていなければならない。この『子午線の祀り』も、早くも大きなアップデートを迫られている。戯曲を圧縮し、言霊を磨き、舞台美術を変え、役者の身体性をより強固にアグレッシブにして、演出の濃度を上げる。それは再演という括りでは収まらない、新たな旅立ちである。コロナ禍だからこそ我々は、現在、何処に、何故に、どのように生きているのか?あなたの目前に漂う「生と死」と、歴史の波に漂う源平壇ノ浦合戦の「生と死」が合致してオーバーラップする時、あなたは自分の存在を宇宙の目線から知り、自らをアップデートするのである。そして「満々とひろがりひろがる現在という時空の海面に、あなたはすっくと立っている。」ことを自覚するのである。戯曲の主人公の一人である平知盛を演じるのは4度目である。「見るべき程のことは見つ」とまさに世の中を俯瞰して千尋の海に沈む知盛の目線は、時空の闇を超えて今を生きるあなたの目線に、影身として寄り添うのである」<神奈川公演>KAAT神奈川芸術劇場ホール2021年2月21日(日)~27日(土)6回公演(全14:00開演)<名古屋公演>日本特殊陶業市民会館ビレッジホール2021年3月3日(水)18:30、4日(木)12:00<久留米公演>久留米シティプラザザ・グランドホール2021年3月7日(日)16:00、8日(月)13:00<兵庫公演>兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール2021年3月13日(土)12:00/18:00、14日(日)13:00
2020年12月25日2月15日東京・日本消防会館(ニッショーホール)で開催された舞台「遙かなる時空の中で3」トークイベント内にて、2020年6月に上演される「遙かなる時空の中で」シリーズ20周年企画・舞台「遙かなる時空の中で3 再縁 」のメインビジュアル解禁とキャスト配役&公演スケジュールの公演詳細が発表された。【チケット情報はこちら】主役・白龍の神子(みこ)春日望美役は、前作と同様、吉川 友。神子を守る八葉は、前作からの続投メンバー、ヒノエ役・杉江大志、有川譲役・千綿勇平、リズヴァーン役・村上幸平。今回からの新メンバーはそれぞれ、有川将臣役・小南光司、源九郎義経役・鐘ヶ江洸、武蔵坊弁慶役・正木 郁、梶原景時役・君沢ユウキ、平敦盛役・古賀 瑠らが演じる。平家の武将・平知盛を演じる中村誠治郎、梶原朔を演じる野本ほたるは前作からの続投。白龍役は、今作では小谷嘉一が演じる。物語の舞台は平安末期の源平合戦が繰り広げられる時代に似た異世界。不朽の名作、大人気ネオロマンスゲーム『遙かなる時空の中で3』舞台の再縁(再演)舞台。内容は2018年の初演から一部リニューアルされる予定だ。オフィシャル最速先行が本日2月17日(月)12:00からスタートし、3月1日(日)23:59まで受付ける。
2020年02月17日12月6日(木)から10日(月)まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、14日(金)から16日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼで上演される舞台『遙かなる時空の中で3』。同作のメインキャスト12名のキャストビジュアルが公開された。【チケット情報はこちら】同公演はコーエーテクモゲームス原作の人気シリーズ「遙かなる時空の中で」舞台化10周年企画。今回は2004年に発売された同名の女性向け恋愛アドベンチャーゲームを原作に、源平合戦が繰り広げられる異世界を舞台にした物語が描かれる。出演は吉川友、井上正大、早乙女友貴ら。チケットの一般発売に先駆けて、チケットぴあではキャスト先行を実施。選択キャストの非売品ブロマイドが特典となる同先行の受付は9月8日(土)昼12時から17日(月・祝)午後11時59分まで。■舞台『遙かなる時空の中で3』12月6日(木)~10日(月) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)12月14日(金)~12月16日(日) サンケイホールブリーゼ(大阪府)脚本:坪田文演出:西森英行キャスト:春日望美:吉川友有川将臣:井上正大源九郎義経:早乙女友貴ヒノエ:杉江大志武蔵坊弁慶:石渡真修有川譲:千綿勇平梶原景時:輝馬平敦盛:星元裕月リズヴァーン:村上幸平梶原朔:野本ほたる白龍:稲垣成弥平知盛:中村誠治郎(特別出演)
2018年09月07日今夏、世田谷パブリッシアター開場20周年記念公演として上演される『子午線の祀り』。1979年初演の、木下順二による不朽の名作に、同劇場芸術監督の野村萬斎が満を持して演出に挑む。舞台『子午線の祀り』チケット情報「『子午線の祀り』は、いわば僕の演劇の原体験なんです」と萬斎は語る。父(野村万作)が初演から出演していたこともあり、1979年の初演時から折あるごとに観劇していたと言う。そして1999年、32歳で平知盛役に初めて抜擢され、2004年の再演にも出演した。「古典的な『平家物語』の世界と現代劇との融合、歌舞伎や新劇など色んな出自の方々が己のスタイルをぶつけあって最終的にひとつの作品をつくりあげる、今の僕のすべての精神は『子午線の祀り』から始まったと言っても過言ではありません」萬斎にとって今作を演出するのは初めて。「今回の新しい演出の重要なテーマは“レクイエム”です。作品を通じて、観客は歴史や宇宙の運行という自分ではコントロールできない大きな世界と出会い、人はただ生かされているということを知る。それはひとつの“弔い”の儀式と言えるのではないかと思うんです。生も死も、等しく肯定せざるを得ない」主人公の知盛は13年ぶりに演じる。「クライマックスでの知盛の“見るべき程の事は見つ”という台詞は死が見えていない人には言えないものです。年齢を重ねた今なら、より真に迫って言えると思う。抗えない老化もひとつの無常ですから。諦念を持ちながらも、自分の生を全うしたという思いを持たないと、この台詞に真実味を持たせるのは難しい」。共演は、近年活躍目覚しい成河をはじめ、前進座の河原崎國太郎、実力派俳優の今井朋彦、村田雄浩、若村麻由美らが名を連ねる。「今回成河君にお願いする義経は、私の父や歌舞伎俳優の市川右近さんなどが演じてきた、古典的様式美が必要とされる役でした。でも今回は様式性よりも(萬斎がモーション・アクターを務めた)『シン・ゴジラ』ならぬ“シン・義経”にしたかった(笑)。成河君は身体にキレがあるし声も高くてよく響く。新しい義経像を作っていただけると期待しております」最後に、世田谷パブリックシアター20周年に寄せて、自身の芸術観を語ってくれた。「現代のアートは、ほとんどの作家が一代限りですよね。古典芸能は後継者に自分のDNAを入れこみ、無形文化財という伝統の厚みをつくる。芸術監督たるもの、パブリックに文化を担っている意識で、狂言が滅びないようにするのと同じように、現代演劇の天才たちのつくる演劇文化を残していきたいです」東京公演は7月1日(土)から23日(日)まで。世田谷パブリックシアターにて。なお、チケットぴあでは5月1日(月)よりインターネット先行申込みの受付けを開始する。チケットは5月14日(日)一般発売。取材・文:落 雅季子
2017年05月01日日本を変えた戦いの場所で思う日本を変えた戦いの場所や、有名な武将が戦った場所には、戦いの舞台となったそれなりの理由があります。戦う男たちに思いをはせてみたい古戦場をマイナビニュース会員の男性403名にアンケートしました。トップは天下分け目のあの合戦が行われた場所!>>女性編も見るQ.行ってみたい日本国内の古戦場は?(複数回答)1位関ヶ原の戦い徳川家康VS石田三成岐阜県不破郡関ケ原町46.4%2位島原の乱天草四郎VS板倉重昌、松平信綱長崎県南島原市9.7%3位一ノ谷の戦い源義経VS平知盛、忠度神戸市須磨区7.7%4位三方ヶ原の戦い徳川家康VS武田信玄静岡県浜松市7.2%5位元寇(弘安の役)鎌倉幕府VS蒙古軍九州博多湾沿岸元寇防塁7.0%■関ヶ原の戦い徳川家康VS石田三成岐阜県不破郡関ケ原町・「天下分け目の決戦だから」(26歳/医療・福祉/事務系専門職)・「有名な戦いなので、実際に見に行ってみたいと思う」(25歳/人材派遣・人材紹介)・「戦国時代を終わらせたという歴史を感じたい」(43歳/電機/事務系専門職)■島原の乱天草四郎VS板倉重昌、松平信綱長崎県南島原市・「天草四郎が何に思いをはせたのか考えながら眺めてみたい」(29歳/その他)・「悲しい歴史に思いをはせることができる」(43歳/自動車関連/技術職)・「江戸初期において一番大きな一揆がおこった場所で、どんなところで籠城(ろうじょう)戦をしていたのか自分の目で見てみたい」(26歳/不動産)■一ノ谷の戦い源義経VS平知盛、忠度神戸市須磨区・「やっぱり天才義経の戦いが見たい」(31歳/金融・証券/営業職)・「義経が好きなので、この中では一ノ谷が行きたいです」(45歳/情報・IT/事務系専門職)・「がけから降りるところがみたい」(41歳/電機/技術職)■三方ヶ原の戦い徳川家康VS武田信玄静岡県浜松市・「あの家康が脱糞したとされる戦いだから」(33歳/医薬品・化粧品/事務系専門職)・「戦法でどれほど違うのか確認したい」(37歳/情報・IT/販売職・サービス系)・「信玄最後の戦場だから。戦国のクライマックスといっても過言じゃないね」(41歳/ソフトウェア/営業職)■元寇(弘安の役)鎌倉幕府VS蒙古軍九州博多湾沿岸元寇防塁・「御家人たちが必死で撃退して、日本を守ったたいせつな場所だと思うから」(31歳/学校・教育関連/専門職)・「海際の戦闘で石塁など見ごたえがありそうだから」(24歳/電力・ガス・石油/技術職)・「国防をかけた戦いをどんな気持ちで挑んだのか。思いを巡らせてみたいので」(29歳/学校・教育関連/事務系専門職)■番外編:好きな戦国武将が戦った場所・姉川の戦い浅井、朝倉VS織田、徳川滋賀県長浜市「織田信長の合戦場は見たい」(32歳/運輸・倉庫/事務系専門職)・田原坂の戦い西郷隆盛VS明治政府軍熊本県熊本市「西郷さんのファン」(48歳/学校・教育関連/事務系専門職)総評1位は「関ヶ原の戦い徳川家康VS石田三成岐阜県不破郡関ケ原町」でした。徳川の世になることが、この戦いでほぼ決定したメジャーな戦い。また、小早川秀秋の寝返りや大谷吉継の奮戦など、エピソードが多いことも人気の理由です。2位は「島原の乱天草四郎VS板倉重昌、松平信綱長崎県南島原市」でした。天草四郎時貞に同情し、その気持ちに触れるため訪れたいという意見をいただいています。天草四郎の見た景色を見てみたいものですね。3位は「一ノ谷の戦い源義経VS平知盛、忠度神戸市須磨区」。この戦いは源氏の大将源義経が一ノ谷の断崖を馬で駆け下りた奇襲戦法により、勝負がついたと言われています。実際そんなことができるのかどうか確かめたいという回答が多く寄せられました。4位は「三方ヶ原の戦い徳川家康VS武田信玄静岡県浜松市」。徳川家康が武田信玄に完敗した戦として印象深いというコメントが多かったのが特徴です。5位は「元寇(弘安の役)鎌倉幕府VS蒙古軍九州博多湾沿岸元寇防塁」。鎌倉武士がどのような気持ちで元軍を迎え撃ったのか、現場で思いをはせたいとの回答も。番外編では、好きな武将が戦った古戦場を取り上げました。織田信長、西郷隆盛などが高い人気を誇っています。教科書に出てくるものや、ドラマや映画でも取り上げられることが多い戦いの人気が高かったですね。2位の天草四郎、3位の源義経はどちらも悲劇を背負っていることから、同情心も手伝い、上位にランクインしたと言えるでしょう。(文・OFFICE-SANGA秋田茂人)調査時期:2013年1月11日~2013年1月16日調査対象:マイナビニュース会員調査数:男性403名調査方法:インターネットログイン式アンケート■関連リンク【男性編】お参りしたい歴史的有名人のお墓ランキング【男性編】日本の歴史の中で一番好きな時代【男性編】今の日本をつくったといえる幕末の偉人ランキング完全版(画像などあり)を見る
2013年02月14日ほぼ毎年異なる土地に仮設劇場を設え、江戸時代の芝居小屋の熱気を感じてもらおうと、中村勘三郎を中心に公演を行ってきた平成中村座。今回は12年目にして旗揚げの地であると同時に、江戸時代の中村座が隆盛を誇っていた猿若町にほど近い浅草に帰ってきた。さらに話題のスカイツリーも目の前で、“伝統”と“いま”を併せ持つ平成中村座にはぴったりのロケーション。勘三郎や中村勘太郎、中村七之助ら中村屋ファミリーはもちろん、それぞれの月に看板役者を迎えて来年5月まで贈る本公演。11月1日の初日は勘三郎が病気療養を乗り越えての東京復帰でもあり、場内はこの日を待ちわびた観客で埋め尽くされた。『平成中村座』チケット情報今月の演目は、昼が『双蝶々曲輪日記 角力場』『お祭り』『義経千本桜 渡海屋/大物浦』、夜が『猿若江戸の初櫓』『伊賀越道中双六 沼津』『弁天娘女男白浪』。まずは昼の部、勘三郎演じる鳶頭がイナセに踊る『お祭り』に注目だ。いよいよ勘三郎が登場すると、客席から「待ってました!」の声がかかり「待っていたとはありがたい」とお決まりのやりとりが。鳴り止まない拍手のなか、江戸の男の粋や愛嬌、色気をたっぷりとふくんで踊る勘三郎。ラストにはなんと後ろの扉が開け放たれ、真後ろにそびえ立つスカイツリーが出現!客席から大きなどよめきが起こった。さらに『渡海屋/大物浦』では、碇を担いで入水する平知盛役の片岡仁左衛門がさすがの風格。大関の濡髪長五郎(中村橋之助)と幕下力士・放駒長吉(勘太郎)の睨み合いがコミカルな『角力場』など、それぞれに見どころ満載だ。夜の部で見逃せないのは、やはり『沼津』。生き別れの親子、雲助の平作(勘三郎)と呉服屋十兵衛(仁左衛門)が偶然出会い、客席を街道に見立てて歩きながらのアドリブも楽しい前半から、哀しい別れを選ぶラストまで細やかな芝居が続く。貧乏暮らしながら心を尽くして客人をもてなす平作の素朴な温かさ、洗練された商人だが言動の端々に優しさをにじませる十兵衛など、勘三郎と仁左衛門ならではの造形が胸に迫る。他にも初世勘三郎が芝居小屋の櫓を上げるまでを綴る『猿若江戸の初櫓』、女装の盗賊・弁天小僧を七之助が少年らしさを残しつつ艶やかに、南郷力丸を勘太郎が男くささを漂わせて演じる『弁天娘女男白浪』など、理屈抜きに楽しめる演目ばかり。藁の匂いや着物の衣擦れの音など、舞台と客席が近いからこそ得られる感覚も貴重。まさに歌舞伎の醍醐味をまるごと味わえる機会といえるだろう。取材・文佐藤さくら11月興行は11月26日(土)まで上演。その後2012年5月まで、ひと月ごとに演目を変えて公演が行われる。チケットは12月興行まで発売中。
2011年11月02日