専門家・プロ:松井美香「運動会」が苦手な子に対しての関わり方今年も運動会のシーズンがやってきました。親であるわたしたちも、運動会当日は子どもたちが自分の実力を発揮できるよう、一生懸命応援したくなるものですね。毎年楽しみにしている保護者の方も多いことでしょう。さて、どの学校(幼稚園・保育園)でも、種目として採用されているのが「徒競走」や「かけっこ」。でも、走ることについては、得意不得意、あるいは好き嫌いが比較的はっきりと分かれるように思います。お子さんはいかがでしょうか?もしも、お子さんが急に「運動会で走りたくない」と言い出したら、あなたはどんな声かけをしますか?スポーツは勝敗がつくものいつでしたか、「順位がつくことに問題がある」と、一部の幼稚園や学校で、徒競走やリレーに順位をつけないルールを作ったという話がありました。確かに、なんでもかんでも競争させるのは意味がないと思いますが、そこまで気にする必要もないのではないかと思います。なぜなら、スポーツは競技(ゲーム)だからです。勝敗がつくからこそ楽しい、と感じることもあります。それを認識した上で、真剣に取り組むことは決して悪いことではないのです。ただし、ここで少し気をつけたいことがあります。走ることが苦手、と感じている子に対して、「頑張りなさいよ、○○ちゃんに負けちゃダメよ!」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は1位だったのよ。だからきっとあなたも1位を取れるはず!」「ちゃんと練習しないと、速く走れるようにならないよ!」などの言葉は、避けたいものです。勝敗や結果にこだわりすぎると子どもは力を発揮できない勝敗は目に見えやすいものです。「オンリーワン」よりも「ナンバーワン」の方がわかりやすいので、多くの人がそれにこだわるのもわかります。けれども、スポーツに限らず、勉強などにおいてもそうですが、勝敗や結果だけがすべてではないはずです。おとなが偏った価値観で育ててしまうと、子どもたちは影響を受けてしまいます。まるで、勝敗や結果がすべてであるように感じてしまうかもしれないのです。人生は勝ち負けで決まるものでもありませんし、結果が全てではありません。そういったことを、親であるわたしたち自身が気をつけていないと、子どもたちを苦しめることにもなりかねません。でも、どうぞご安心ください。わたしたちが偏らないよう意識し、言葉かけを工夫することによって、子どもたちは健全に育ってくれます。アドラー流子育てでは、まず子どもの気持ちに共感します話を元に戻しましょう。「運動会で走りたくない」と言う子どもにどう声かけをするか。「何でそんなことを言うの!そんなことできるわけがないじゃない!ダメに決まってるでしょ!今さら、そんな勝手なこと言うんじゃありません!」と言いたくもなりますが、このような言葉を言ってしまったら、子どもは親に対して本音を言えなくなってしまいます。そこをぐっとおさえて、まずは、子どもの言い分をすべて聞いてあげましょう。走るのが苦手だった保護者であれば共感もしやすいですが、ご自分が得意だった場合は、子どもの気持ちはなかなか理解しにくいものかもしれません。「やってみなければわからないじゃない!そんな弱気でどうするの!ビリになっても恥ずかしくないよ。一生懸命走ればいいんだよ!」これはどうでしょう。子どもは「頑張って走ってみよう!」と思い直すでしょうか?多くの場合は違います。親は励ましのつもりで言っているのですが、子どもの心には残念ながら届いていません。正論を語るだけでは、子どものやる気は起きない保護者の言いたいことは、とてもよくわかりますし正論です。でも、子どもだって、本当はよくわかっているのです。それでも、「走りたくない」という気持ちになってしまうのです。だったら、その気持ちに寄り添ってあげましょう。「そうなんだ、なんだか心配になっちゃったんだね。もしもみんなより遅かったり、転んだりしたら恥ずかしくなっちゃうもんね。嫌になっちゃうね。」このように、まずは否定せず、弱気になっているお子さんの気持ちに共感してみるのです。言いたいことを全部言わせてあげることも大切です。そして、全部受け止めたあと、あなたが伝えたいことを伝えてほしいのです。「本当に心配だよね。でも頑張って走れるといいね。勇気を出して走ることが速く走ることよりとても大事だと、お母さんは思うよ。」と、アイメッセージ(「わたしは」を主語にする言い方)で言ってみてください。お子さんはきっと「お母さん(お父さん)は自分の気持ちをわかってくれた」と安心し、運動会では大いに力を発揮してくれることでしょう。走り終わってからのフォローも忘れずに運動会が終わったあとの子どもへの声かけにも、注意したいものです。やはりここでも、人と比較しないこと。そして、勝敗や結果だけに注目しないことが重要です。「やったね!○○ちゃんより早く走れたね!」「○位が取れたね!すごいね!速かったね!」ではなく、「頑張ったね!(あなたが)勇気を出して走れたこと、お母さん(お父さん)、とってもうれしかったよ。」と伝えます。本人が望んでいた結果が出なかった場合も、「残念だったね、惜しかったね、悔しかったね!」と、まずは共感します。そのあと「でも、一生懸命走ったあなたを、お母さん(お父さん)は誇りに思うよ。」と言ってあげてください。お子さんはきっと、勇気を出して走ったことで、少しずつ自分に自信をつけていくことでしょう。苦手なことは誰にでもあるものです。でも、こうして少しずつ困難を乗り越えていくことで、自信は生まれてくるもの。走ることに限らず、わたしたち親は、子どもの心に届く勇気づけの声かけを、日頃から心がけたいものです。松井美香(まついみか)東京音楽大学ピアノ専攻卒業。「勇気づけの音楽家」。大学卒業後約10年間公立中学校に勤務。その頃偶然、教員研修でアドラー心理学に出会い、岩井俊憲氏の元で学び約25年が経過。自身のピアノ教室や子育てにおいてアドラー心理学を実践する中、子どもたちが音楽や部活動を続けながらも有名大学に続々と合格し夢を叶えている。長男(21歳)と双子(18歳)三人の男子の母。現在、保護者や音楽指導者に向け、執筆やセミナーを通して「勇気づけの指導法」を広める活動をしている。*学研「おんがく通信」にて、コラム「勇気づけのピアノレッスン」連載中。*学研プラス出版「あなたの想いが届く愛のピアノレッスン」にて、手記「ある教室のささやかなサクセスストーリー」を執筆。松井美香公式ホームページ:
2018年10月02日スポーツの秋、もうじき運動会が控えているご家庭も多いはず。運動が得意な子も、そうでない子も「少しでも速く走らせてあげたい」「何より自信を持って楽しく走らせてあげたい」と思うのが親心ですね。「0.01秒でも速く走るために」をコンセプトに、子どもからプロアスリートまでを対象に走り方を指導する『0.01』が主催するスプリント教室で、子どもが速く走るためのコツを聞いてきました。運動会目前、いきなりたくさんのことを子どもに言って混乱させてしまっては元も子もありません。今回はポイントを絞り、子どもに伝わりやすいアドバイスをいただきました。そのキーワードはなんと、「焼き鳥」と「モグラ」。■走る時は、焼き鳥になったつもりで体を1本の串のように真っすぐ時おり小雨が降りしきる中、小学生10数人を教えていたのは、十種競技出身の船場大地コーチ。子どものフォームをじっくりとチェックしながら指導していました。船場コーチによると速く走るために一番大切なのは正しい姿勢で、「体が、焼き鳥の串になったように、真っすぐな姿勢で走る」ことだそう。「手を大きく振ること」「大きなストライド」などのアドバイスを予想していた筆者にとって、ちょっと意外なアドバイスでした。「姿勢が悪いと、どの動きをしても効率的に力を使えません。一生懸命、足を高く上げようと思っても、足がつかえてしまったり、そもそも足が上がりにくかったりしてスピードが出にくいのです」(船場コーチ)。まず、自分が焼き鳥の串になったイメージで、足から頭まで一直線になることを意識してみます。そして、その真っすぐな姿勢のまま、進行方向斜めに倒れた姿勢で走ることが理想だそう。一直線の美しい姿勢だとパワーを生かし効率よくスピードが上げられます。走り始めるといつの間にか頭が下がってしまう子も多いそうなので、「頭が下がって、焼き鳥の串が折れたみたいにならない」ことも大切。頭が下がってきたら、「串が折れちゃったよー」と注意してあげましょう。■地下で眠るモグラを起こさない! 軽やかにはずむ感覚で走る「地下にいるモグラさんを起こさないように走ってね~」「アリさんを踏まないように走ってね~」スプリント教室の最中に、さかんに船場コーチが子どもたちにアドバイスをしていたのは、軽やかに走ること。地下にもしモグラがいたら、モグラを起こさないように音を出さないで静かに走る。地面にアリがいたら、足をベタベタつけず、アリを踏まないように、つま先は指先ではなく拇指球(ぼしきゅう:親指のつけ根のふくらんだ部分)周辺が地面に接するようにする。そのような感覚を、声がけで子どもたちに意識づけていました。かかとを地面にベタっとつけて走ったり、ひざを曲げすぎてドスンドスンと重い感じで走ったりすると、やはりスピードが出ないそうです。軽やかに走る動きは、縄跳びを跳ぶ動きに似ているそうで、縄跳びをしたり、その場でピョンピョンと真っすぐ跳ねてみると、子どもたちはその感覚を理解しやすいようです。 ■スプリント教室だけで終わらない! 家でできる練習はコレ速く走るのには、姿勢とはずむ感覚が大切なのはわかりました。それでは運動会目前でも、自宅で気軽にできる効果的なトレーニングはあるのでしょうか? なかなか口で伝えるだけではわかりづらい感覚を、子どもに理解させる練習方法を教えてもらいました。1.縄跳びやその場でのジャンプではずむ感覚を身につける背筋を伸ばし、腕を軽く回しながらピョンピョンと跳ぶ縄跳びは、走る時の体の使い方と共通点が多いそう。「走る動作は縄跳びのジャンプの動きの連続と考えることができます。縄跳びをすると、はずむように軽やかに走る感覚が身につきます」と船場コーチ。縄跳びなしでそのままピョンピョンと軽く跳ぶのでもOKだそうです。あるいは、家の前などにある段差を利用して、段差を前後にピョンピョンと跳ぶのでも、自分の体をバネのようにはずませて走る感覚を理解しやすい、とのことです。2.いい姿勢を意識できる練習をする子どもが跳ぶ時に肩を押さえてあげると、体がぶれにくく姿勢を崩さずに跳ぶ感覚が身につきやすくなります。このほかにも、正しい姿勢を意識しながら、おへそのちょっと下あたりまでひざを上げる、もも上げの運動も効果的です。■もう間に合わない! 運動会直前の一夜づけにはスタートの姿勢を変える1~2週間前から地道に先ほどあげたようなトレーニングをしたいところですが、「本当に一夜づけだったらどうしたらいいですか? 」と図々しい質問もしてみました。「うーん、そうですねえ…」とちょっと困りながらも船場コーチが教えてくれたのは、「一番即効性があるのは、スタートの姿勢を変えること」だそう。スタートの姿勢はあまりきちんと教えられていないことが多く、同じ側の手足を前に出していたり、足の幅を大きく開きすぎて構えていたりするそうです。おすすめのスタートの姿勢は、1.「気をつけ」の姿勢からしゃがみこみ、前に置く足の土踏まずの横に後ろ足の膝を置く。2.そのまま体を串のようにピンとした姿勢を意識しながら立ちあがる。スタート姿勢を作る際には前の足のひざはつま先の上にくるくらいまで曲げてしっかり前の足に体重をかける。3.スタートの合図がなったら真っすぐの姿勢のまま前の足をけって飛び出す。このかっこいい、いかにも速そうなスタート姿勢をマスターできたら、子どものモチベーションもあがりそうですね!取材協力:0.01速く走るためのスプリント指導をするプロフェッショナル集団。様々なプロスポーツの選手から小学生まで幅広く指導。 取材・文/まちとこ出版社
2017年09月22日