『リング』シリーズの貞子と『呪怨』シリーズの伽椰子が競演する映画『貞子vs伽椰子』の劇場前売券が4月2日(土)から発売され、“呪いのフチの貞子”あるいは“呪いのフチの伽椰子with俊雄”のどちらかが特典としてプレゼントされることが決定した。その他の写真特典は、コップのフチ子を手がける奇譚クラブの公認アイテムで、貞子の髪の毛や、伽椰子についた血など細部まで丁寧に作りこまれている。また、全国の映画館やコンビニエンスストアなどで、『PUTITTO 貞子vs伽椰子』の発売も決定。ぶら下がり貞子、ひっかかり貞子、よじ登り貞子、ぶら下がり伽椰子、伽椰子with俊雄の全5種類が6月18日(土)から発売され、俊雄の金色ブリーフver、全身金色Verがレアアイテムで登場する可能性がある。映画は、呪いのビデオを観てしまった者の前に現れる長い髪が強烈な印象を残す貞子、呪いの家に棲みつき、そこを訪れた者を襲う伽椰子が激突するホラー作品。山本美月、玉城ティナらが出演する。『貞子vs伽椰子』6月18日(土) 全国ロードショー
2016年03月22日門脇麦が主演を務め、長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキーが出演する『二重生活』の予告編映像が公開になった。見ず知らずの他人を尾行し始めた主人公がいつしか禁断の行為にはまっていく様を描いた作品だ。予告編映像このほど公開になった映像にまず登場する主人公・珠(門脇)は、平凡な大学生だが、担当教授の篠原(リリー・フランキー)にすすめられ、ひとりの対象者を尾行して記録することに。相手は無作為に選ばれ、珠は隣人の石坂を“対象者”に選ぶ。妻と子と幸福に暮らしているように見える石坂の尾行をはじめた珠は次第に、彼の“秘密”を知るようになり、そのことが結果的に珠をも変えていく。珠と同棲している恋人・卓也(菅田)はその変化に気づくが、珠は禁断の行為にはまっていく。予告編は、対象者にバレないように尾行する珠の緊迫感、次第に明らかになっていく石坂の秘密、そして珠の日常が変容していく様が緊迫感のあるトーンで描かれ、物語の行方が気になる内容になっている。『二重生活』6月25日(土) 新宿ピカデリー他全国公開
2016年03月22日寒い日々が続き、ついつい消極的になっていませんか? アクティブに動くことが億劫になるとなんとなく体が固くなって、気持ちも停滞したり、お肌も心も乾燥してしまいがち。どんな美人でも表情がとぼしく、カサカサしていては魅力半減! 心に栄養を、それもとびっきりのカンフル剤を与えて、心身に浴びる感動のシャワーでうるおいを甦らせましょう。愛と官能に効く特効薬の映画を3本ご紹介します。ドキドキとワクワクで、今まで自分でも気づいていなかった「うるおいスポット」を刺激されるかもしれませんよ。「レッド・バイオリン」の波乱に満ちた運命に心がヒリヒリする▼「レッド・バイオリン」監督:フランソワ・ジラール出演:サミュエル・L・ジャクソン, グレタ・スカッキ, ジェイソン・フレミング1681年にイタリアの名工ブソッティ(カルロ・チェッキ)が製作したレッド・バイオリンという名器がたどる歴史と、それが出品されるモントリオールのオークション会場の現代が交互に描かれます。生まれてくる息子のために心血を注いで作ったのに、出産時に、妻子は亡くなってしまいます。なぜ赤いのか? 誕生からして秘密めいたレッド・バイオリンが数奇な運命に操られ、伝説の名器に魅せられた人々は翻弄されていきます。オーストリアの修道院に併設された孤児院で、神童のテクニックを持つ少年が見出され、この楽器でウィーンの宮殿でのオーディションを受けたり、海を越えて英国のバイオリニスト・作曲家のポープ(ジェイソン・フレミング)の手に渡り、彼が演奏しながら恋人と愛し合い、「君の美しさが僕の奥から音楽を呼び起こす」と霊感を受けたり、文化大革命時の中国では、「西洋主義、打倒!」と、無残にも紅衛兵に焼かれてしまったり…。オークションには、修道層が電話で参加するほか、ポープ財団の学芸員、著名なバイオリニスト、中国人夫婦、鑑定士モリッツ(サミュエル・ジャクソン)らが参加。「これに出会えるとは! まさに究極の芸術品だ。“科学と美”の完全なる結婚が生み出した傑作」と感嘆するモリッツは、DNAテストなど現代の修復技術も駆使して挑みますが…。4世紀にわたって描かれる美しく壮大なミステリーロマン。熱いドキドキが止まりません。 「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」ほどの恋愛を他に知らない▼「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」監督:マドンナ出演:アビー・コーニッシュ, アンドレア・ライズブロー, ジェームズ・ダーシー1936年、アメリカ人で40歳のウォリスは、ロンドンの友人宅のパーティーで出会った英国王エドワード8世と恋に落ち、再婚した夫がいる身で、パリや南仏でも逢瀬を重ねます。ことあるごとにサプライズで宝石を贈られ、王の誕生パーティーでは「恋ゆえに世界が失われても、誕生日おめでとう」というカードと、逆にプレゼントまで。そのサインは常に、WE(ウォリスとエドワード)でした。翌年、彼は王位を捨てて彼女と結婚。二人はウィンザー公夫妻となりますが、この恋は“20世紀最大のスキャンダル”と呼ばれました。この実話をもとにマドンナが映画化。オークション会社サザビーを結婚退社し、子作りに励みたいのに、医師の夫はかまってくれないウォリー(アビー・コーニッシュ)という現代女性が、ウィンザー公夫妻の遺品が展示された元職場のオークション会場で、故人であるはずのウォリスと出会います。めくるめく幻想の中でウォリスと交わっていくサイドストーリーが交互に描かれるのは、歴史的なヒロインを身近に感じてほしいと願う、マドンナの粋なはからいでしょう。英国王室を震撼させたロイヤル・スキャンダルに、“ヤンキーの売女”とまで呼ばれたウォリス。夫とうまくいかず「ウォリスは全世界を敵に回しても逃げなかった。なぜ?」と悩むウォリーの前に、突然ウォリスが現れます。「私、美しいと言われたことないの。女性が最大限に利用するのが“魅力”よ。私の武器は着こなしだった」と語り始めて…。時に実写フィルムが混じるのですが、実際のウォリスの装いは、個性的ながらエレガントの一言。エドワード(ジェームズ・ダーシー)の視線は常に彼女に釘づけでした。アメリカ人らしく自分の意見を自由に言い、ウイットに富み、もの真似やダンスが得意なところも彼を虜にしたとか。ウォリスの美意識が体現された、インテリア小物や宝飾品が並ぶオークション会場のシーンはため息もの。“美意識のレッスン”にもなる映画です。 「真珠の耳飾りの少女」の笑わない禁欲的な佇まいがエロティックすぎる▼「真珠の耳飾りの少女」監督:ピーター・ウェーバー出演:スカーレット・ヨハンソン, コリン・ファース, キリアン・マーフィ1665年、オランダの画家・フェルメール(コリン・ファース)の家で、メイド見習いとして働き始めた少女グリート(スカーレット・ヨハンソン)は、アトリエの掃除をするうちに、「これ、どう思う?」「色が合いません」と、次第に独自の感性を発揮し、やがて彼のモデルを務めることに。彼の妻は7人目の子を妊娠中で、夫と彼女の仲を疑うのですが…。17世紀のデルフトの街並みが見事に再現され、どのシーンもまさに絵になる美しさ。同時に、絵そのままのポーズで立つモデルたちに、名画の誕生を目撃する歓びも加わって、ワクワクしっぱなし。メイドは、頭を頭巾で覆って髪を見せなかった時代ですが、フェルメールに頼まれて頭巾を取り、豊かな髪を下ろすグリートのセクシーなこと。真珠の耳飾りをつけるため耳にピアスを開けられ、彼女の頬を一滴の涙がつたうシーンは圧巻です。「少しだけ口を開けて」「唇を舐めて」というフェルメールの要求に応えていく、いつも無口でほとんど笑わない禁欲的なグリートが、とんでもなくエロティックに見えてきます。「心まで描くの?」と彼女が驚嘆した絵には、他の画家には作れない、ラピスラズリを原料としたウルトラマリン色のターバンが描かれていました。真珠の耳飾りは実は妻のもの。それを知った妻は半狂乱で、ナイフを手に絵に飛びかかっていくのですが…。一枚の名画に秘められた至高の愛の物語。映画は基本、だまし絵だと思うのですけれど、その魅力が最大級に発揮された映画です。言葉では表せない濃密な官能に溢れていて、2004年の作品ですが、久しぶりに観たら興奮して寝付けなくなってしまいました(笑)。お薦めです。・ 「レッド・バイオリン」 ・ 「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」 ・ 「真珠の耳飾りの少女」
2016年02月20日あなたの周りにもいませんか? フツーにしているとカッコいいのに、お人好しだったり気弱だったり不器用だったり、そっちのキャラのほうが目立っているため、イケメン度が薄まってしまっている男性。自分がカッコいいとは思いもよらず、そのキャラゆえに、いろいろやらかしてくれます。せっかくイケメンなのにもったいない。でも、憎めない。そんな印象的なキャラクターが主人公の映画を観て、思わずクスクス笑っちゃってください。いえ、時にはゲラゲラ笑ってしまうかも。“困ったちゃん”な要素もありつつ、愛すべき魅力に溢れた彼らの映画は、私たちをほっこり和ませてくれるでしょう。心がしっとり潤う、おすすめの3本をご紹介します。高良健吾演じるイノセントな「横道世之介」に温かな幸福感で包まれる▼横道世之介監督:沖田修一出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮1987年、長崎県の港町から大学入学のために上京してきた世之介(高良健吾)は、真っ直ぐで、空気が読めなくて、頼まれたら嫌と言えないお人好しキャラ。同級生の倉持一平(池松壮亮)とサンバサークルに入って、太陽の塔みたいなコスプレで踊ったり、お譲様育ちの与謝野祥子(吉高由里子)に好かれたり、年上の女性、片瀬千春(伊藤歩)に頼まれて、男性との別れ話に弟として同席させられドキドキしたり、ゲイの同級生、加藤雄介(綾野剛)とつるんだり…。みんなの人気者になっていきます。スキーで転んで入院した祥子をお見舞いに行き、恐縮する彼女に「心配させてよ。心配しちゃうのが仕事っていうか…」とねぎらう人の好さ。夏は故郷の海辺で、冬は雪の降るクリスマス、下宿の前の庭で、世之介は祥子に「キスしていい? じゃ、ちょっと失礼して…」とキス。そんなこと聞く男って最低! と普段なら思うのですが、嫌味のなさはさすがイケメン。かっこいいのにもったいない。でも、空気の読めなさがいじらしい。こんなストーリーが16年後、友人たちが青春時代を回想するシーンとして描かれていくのですが…。高良健吾のイノセントさ、ある種トリックスター的な存在感が、基本的に“良いヤツ”世之介を見事に顕在化。彼の母親から祥子へ手紙が届くラストシーンは、きっと泣けると思います。派手さはないけれど、じわじわきて、心が清々しくなる映画です。「小野寺の弟・小野寺の姉」で向井理演じる気弱な弟キャラに胸キュン▼小野寺の弟・小野寺の姉監督:西田征史出演:向井理、片桐はいり、山本美月両親を早くに亡くし、二人で実家に暮らし続ける小野寺姉弟は、眼鏡店に勤める40歳のより子(片桐はいり)と、調香師で33歳の進(向井理)。一緒にスーパーに買い物に行ったり、朝晩食事をしたりと、とても仲良し。こだわりの強い姉に仕切られ、不服でも従ってしまう弟には、育ててくれた姉に頭が上がらないだけでなく、姉思いを決定づける過去がありました。姉は姉で、前カノの好美(麻生久美子)と別れて以来、恋に臆病になっている弟が心配で仕方ありません。ある日、誤配された郵便物を二人で届けに行ったことから、可愛らしい絵本作家の薫(山本美月)と出会い、より子は進に婚活を促します。のらくらしている彼に、「私は心配してるの。あなたも、もういい年だし…」「いい年は姉ちゃんも一緒だろ」「私のことはいいのっ!」とキレるより子。一方、眼鏡店に営業で訪れる浅野(及川光博)から、デートらしき誘いを受け、より子は舞い上がりますが、いざ、待ち合わせてみると…。弟思いでまじめで、時にエキセントリックな姉を演じる片桐はいりの、恐いほどの名演から目が離せません。始終、くすんでもっさりした引っ込み思案な弟を、これまた、もったいなくも、向井理が胸キュンな演技で魅せつけます。日本一、不器用な姉弟の恋と人生に、じーんとするハートウォーミングコメディ。観ると必ず、元気になれます。「舟を編む」の不器用すぎる編集者を演じる松田龍平の役者魂が神▼船を編む監督:石井裕也出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー名前からしてマジメでおかしい、出版社勤務の馬締光也(松田龍平)は、営業部で変り者扱いされていたのが、「右を説明できるか?」と辞書編集部のベテラン編集者、荒木(小林薫)に聞かれ、答えられたのが縁で辞書編集部へ異動。言葉の海を渡る舟に例えて「大渡海」と名づけられた新しい辞書のため、街に用語採集に出かけたり、語釈(言葉の意味)を書いたり、完成まで15年かけ、見出し語24万語の国語辞典作りに没頭していきます。学生時代からの古い下宿は、廊下まで本だらけ。家主のおばあさんと猫のトラだけが友達だったのに、おばあさんの孫娘、香具矢(宮崎あおい)と出会って恋に落ちます。編集部のノリの軽い西岡(オダギリジョー)にラブレターの添削を頼みますが、何と手紙は巻紙に筆文字。「何で筆選んじゃったの。戦国武将じゃねえんだぞ」と、のけぞる西岡。書き直すという馬締に「そのまま渡しちゃえよ。インパクトはあるから」とそそのかします。案の定、読めなくて怒る香具矢。謝る馬締。「手紙じゃなくて言葉で聞きたい、今!」と言われ、たじろぐ馬締に「今は今でしょ。辞書で調べたら?」と彼女。"今"を辞書で引こうとする彼に、「本当に調べなくていいの」。そして、馬締はおずおずと「好きです」と、やっと告白に至るのです。辞書が中止になりそうになったり、脱字が見つかったり、監修の松本先生(加藤剛)が病に倒れたり、様々な事態を乗り越え、27歳だった馬締は42歳になり、ようやく発刊へ。辞書(舟)を編集する(編む)人たちの感動エンタテインメントですが、私たちも感動の海を渡ること間違いありません。馬締を演じる松田龍平の歩き方に至るまで不器用な演技は、もはや神。そして、ブキッチョだけど誠実なこういう人、大好きだなあ、と思うのでした。
2016年02月13日実際に苦難を乗り越え、命の炎をきらめかせた女性たちの映画を観ると、生きる勇気がわいてきます。「もっと好きに生きていいんだ!」と、自由な追い風に身を任せて「がんばろう!」という気分になれるから不思議です。安定した穏やかな日々こそ宝物だとわかっていても、埋没してはもったいない。わくわくして感謝したくなる毎日をゲットするために、自分に“喝”を入れてみませんか? おすすめの映画3本をご紹介しましょう。「ピナ・バウシュ 夢の教室」が自分を解放して自信を与えてくれるピナ・バウシュをご存じですか? ドイツ生まれの世界的なコンテンポラリー・ダンサーで振付家。彼女が主宰する演劇的要素の強いヴッパタール舞踏団には、世界中から気鋭のダンサーが集い、2009年に彼女が68歳で急逝した後も、意欲的な活動を続けています。▼「ピナ・バウシュ 夢の教室」監督:アン・リンセル出演:ピナ・バウシュ, ベネディクト・ビリエ, ジョセフィン=アン・エンディコットこの映画は、ピナの代表的演目「コンタクトホーフ」を演じるため、ダンスは素人の10代の男女40人が集まり、10か月間の猛特訓後に舞台に立つという、無謀とも思えるピナの企画を実現したもので、ピナの生前最後の映像が収められた感動のドキュメンタリー。「笑いながら全力疾走なんてできない!」と涙目になると、「自分を解放することを楽しみなさい」と言われたり、まだ10代だから男女で身体を近づけることに戸惑ったり、父親の死とダンスが重なったり、ピナに恋バナを聞かれ正直に応えたりしてレッスンを重ねるうちに、彼らは人見知りが消えて心がオープンになり、自分に誇りを持てるように…。だんだん惹き込まれて、まるで自分がレッスンを受けているような気分になってきます。最後の圧巻の舞台を観て、「みんながんばったわ。愛してる。ミスはいいの。努力が大事なのよ。子どもたちの作品への愛に感謝するわ。私は幸せよ」と静かに語るピナの言葉が胸に染み入ります。自分を内省して、目の前を明るく導いてくれる映画です。「永遠のマリア・カラス」で史上最高のディーヴァの生き様に心が揺さぶられる伝説のオペラ歌手マリア・カラス(1923ー1977)は、移民の子としてニューヨークに生まれ、母国ギリシャで音楽を学び、ヴェローナ野外劇場でイタリア・デビューを飾って以来、世界のディーヴァに。私生活でも、イタリアの実業家メネギーニと結婚後、ギリシャの大富豪オナシスと出会って彼のもとに出奔。夫と離婚し、オナシスがケネディ大統領未亡人ジャッキーと結婚後も愛人関係を続けるなど、美声、美貌、華麗な人生が注目の的に。▼「永遠のマリア・カラス」監督:フランコ・ゼフィレッリ出演:ファニー・アルダン, フランコ・ゼフィレッリ, ジェレミー・アイアンズまだ若い53歳で思うように声が出なくなり、愛するオナシスをも亡くした失意の中、引退してパリのアパルトマンで暮らすカラス(ファニー・アルダン)を、かつての仕事仲間ラリー(ジェレミー・アイアンズ)が訪ね、彼女の全盛期の録音を用いて映画を製作しないか、と持ちかけます。最初は「悪魔に魂を売れというの?」と否定するものの、映像が残っていない「カルメン」ならと心が動き、イケメンの若いテノール、マルコ(ガブリエル・マルコ)とは疑似恋愛も…。彼女の晩年が虚実ないまぜにドラマティックに描かれます。監督は、カラスの親友で、オペラ演出家としても著名な名匠フランコ・ゼフィレッリ。カラスを演じるフランス女優のファニー・アルダンが、どんな時も毅然とした史上最高の歌姫のプロ根性と悲哀、そして、少女のような恋心をも演じきります。歌声はカラス本人、衣装がシャネルと、聴きどころ、見どころともに満載。心が揺さぶられる映画です。「フリーダ」の愛に生き、芸術に生きる波乱万丈の生涯が胸を打つメキシコの画家フリーダ・カーロ(1907ー1954)を演じるのは、ハリウッドの人気女優サルマ・ハエック。眉毛がつながったエキゾティックな顔とカラフルな民族衣装をまとったフリーダの姿を、どこかで見た方は多いと思うのですが、メキシコ出身のサルマは、157cmと小柄でフリーダにぴったり。まさにフリーダが生きて動いている姿に感動します。▼「フリーダ」監督:ジュリー・テイモア出演:サルマ・ハエック18歳の時、右半身から膣まで鉄棒が貫通するバス事故に遭い、一生を痛みとともに生きたフリーダにとって、絵を描くことは生きることでした。著名な画家ディエゴ・リベラ(アルフレッド・モリーナ)と出会い、「俺が描いたのは外の世界だ。君のは心の世界だ。素晴らしい」とプロポーズされます。彼の女癖の悪さは有名でしたが、「貞節さが大事か?」と問う彼に、「私に忠実なら」と返し、彼が「それなら永遠に」と誓って結婚。しかし、彼の浮気癖は治まらず、フリーダの妹とまで関係を持ち、ひどく傷ついた彼女に「セックスは小便と同じ。握手より軽い」とうそぶくリベラ。それが、彼女が実家でロシアの革命家トロツキー夫妻を匿うことになり、トロツキーと関係すると「俺は深く傷ついた」と訴えるダブルスタンダードぶり。監督のジュリー・テイモアが、「この映画で強調したかったのは、あまりにも有名な存在の二人が、人間臭い人物だったことよ。孤高の画家とかでなく、身近に感じて欲しかったの」と語っているのがうなづけます。どんな悲惨な状況でもユーモアを忘れないフリーダの姿は、私たちに生きることの意味、幸せとは何かを問い直させてくれるでしょう。実在の女性3人の生き方が鮮烈で、ただ生きていられることに感謝したくなる映画たち。これらの映画を観て、どうぞ日常生活をキラキラさせてください。
2016年01月24日食べることはお好きですか? 美味しいものを食べると幸せな気分になりますよね。どんなにいたたまれない悲しみや、とげとげしい苦しさで打ちひしがれていたとしても “美味しいもの” を口に運んでいるうちに、少しづつ気持ちがほぐれていく。そんな心持ちは誰しも味わった体験があるでしょう。とくに人の手がかかった料理を賞味することは、人生を愉しむことと似ていると思います。食べる人を喜ばせたいという料理人の気持ちが、魂レベルで舌を通して全身に伝わってくる。理屈抜きで幸せを感じるひとときです。味わい深いそんな思いを共有できる映画を、3本ご紹介しましょう。空腹時に観てお腹が鳴っても責任は持ちませんよ(笑)。 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」の異文化交流は星三つインドでレストランを経営する家に生まれたハッサン(マニッシュ・ダヤル)は、料理の師匠である母に「食材にはすべて魂がある。料理は魂の味よ」と基本から叩き込まれます。政変で店を焼かれ、母を失った一家はヨーロッパへ。父の運転する車がたまたま故障した南フランスで、インド料理店を開くことになりますが、向いがマダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営するミシュラン一つ星・名門フレンチレストランだったから、さあ大変!インド音楽が騒音だと苦情を言われたり、互いに食材を買い占めたり、壁に人種差別的な落書きをされたり…。そんな中、フレンチレストランのスー(副)シェフを務めるマルグリット(シャルロット・ルボン)は、料理人として努力し続ける彼に好意を持ち、協力的に。「マダム・マロリーは、シェフ採用試験では本人に会うことすらしないの。オムレツを一口、食べるだけ…」と、マダムの厳しい舌の話題も提供します。いつか、自分の作ったオムレツをマダムに食べてほしいと願うハッサン。その夢は意外に早く実現しますが…。いつもハッサンを助けてくれるのは、ママが遺した数々のスパイス。魔法のスパイス仕込みの調理法が、彼を凄腕料理人へと導きます。ハッサンとマルグリットの恋物語も含め、“美味しい奇跡”が次々と起こるハートウォーミング・ストーリー。余談ですが、マダムのスーツ、マルグリットのワンピース姿がとても魅力的で、そちらも必見です。「宮廷料理人ヴァテール」で絢爛豪華なフランス料理の源流を知る「ブリア・サヴァラン」や「エスコフィエ」の名前は知っていても、「ヴァテール」をご存じの方は少ないのでは?16世紀、フランスの宮廷料理として発展したフランス料理ですが、17世紀、ルイ14世の時代、ソムリエの原形を生み、クレームシャンティイ(ホイップクリーム)の創作など、現在に続く偉業を成したのが、フランソワ・ヴァテール。これは、コンデ公爵の元で料理長を務める彼が、ルイ14世と一族を招いた大饗宴を仕切った3日間を描いた映画です。歴史に残る豪華な饗宴で、山海の食材が国中から集められ、噴水、花火、氷の彫刻、宙づりのゴンドラで歌姫が歌うなど、壮大なスペクタルが展開されます。創造力溢れるヴァテール(ジェラール・ドパルデュー)に好意的な女官アンヌ・ド・モントージエ(ユマ・サーマン)は、彼女に横恋慕するローザン侯爵(ティム・ロス)を通じて、国王から「あなたとショコラを飲みたい」と誘われます。それは、一夜をともにする合言葉でした。コンデ公の痛風治療に小鳥の心臓が必要なため、アンヌのカナリアが没収されそうになったのを、自分の愛鳥と引き換えに助けるヴァテール。厨房を訪れ、彼に「なぜ助けてくれたの? 」と迫るユマ・サーマンの眼技が麗しい。禁断の一夜を過ごす二人。運悪く国王に呼ばれアンヌが駆けつけると、陛下はおらず、ローザン侯爵が「どこにいたか知ってるけど黙っててあげたよ。陛下に知れたらヴァテールは破滅。僕、あなたとショコラを飲みたいな」と。意外な結末を迎えますが、料理人の命がけの真摯さに心を打たれるでしょう。「バベットの晩餐会」に “おもてなし” の神髄を見た!舞台はデンマークにある海辺の小さな村、コトランド。牧師と美しい二人の娘、マチーネとフィリッパが暮らしていました。若い頃は、姉のマチーネに将校ローレンスが思いを寄せたり、パリからヴァカンスで訪れたオペラ歌手パパンが、妹フィリッパに恋焦がれたりしたものの、父の死後も、姉妹二人の清貧な暮らしを続けて35年後の1871年。パパンの紹介で、パリの革命を逃れたバベット(ステファーヌ・オードラン)が、家政婦として置いてほしいと訪ねてきたところから物語は展開します。雇う余裕がないと断る姉妹に「お金はいりません。置いていただけなければ、後は死ぬだけです」というバベットが同居して14年。フランスとのつながりは、友人が買ってくれる宝くじだけだったバベットに、1万フランの宝くじが当たります。彼女は姉妹の今は亡き父親の誕生日に、費用は自分持ちで晩餐会をさせてほしいと願い出ます。「だめよ。費用はこちらで…」といっていた姉妹も彼女の情熱に負け、バベットは準備に奔走。迎えた当日、村人たちに加えて将軍となったローレンスと彼の叔母も参加した晩餐会。キャビアの載ったオードヴル「ブリニのデミドフ風」、海ガメのスープ、ウズラのバイ詰め石棺風、ヴーヴ・クリコのシャンパン、銘醸ワインに驚き、感激するのはパリを知っているローレンス。そこで、バベットの素性が明かされていくのですが、彼女は12人分のディナーに1万フラン使い切ります。それは、彼女の姉妹への心からの贈り物だったのでしょう。最高の “おもてなし” に感涙をもよおす傑作。映像の美しさも見逃せません。3本に共通するのは、食する人たちが笑顔になること。不安におののいたり、いがみあったりしていても、だんだん表情が和らぎ、黙りこくっていたのが饒舌になっていきます。食べるものが人間を作るわけですが、愛情という精神的な部分もなんと大きいのだろう、と思わずにはいられません。美味映画の醍醐味を、どうぞ思う存分味わってください。
2016年01月16日「世紀を超えて愛され続ける服には、とてつもないパワーがある」と常々思っていました。天才デザイナーたちの映画を観ていると、なぜかすごく元気になれるのです。服を着るということは、何気ない習慣でありながら、肉体を守ることであり、自己表現であり、それをまとわないと外へ出られないという、社会生活を送るための装置でもあります。つまり着ることは生きること。いつだって違う自分になりたい! そんなチャレンジングな気持ちを鼓舞してくれる映画を観て、自分をリフレッシュしませんか? お薦めの3本をご紹介します。その結果、あなたももれなくファッショニスタ(お洒落上級者)に…。媚びない女らしさに開眼「ココ・アヴァン・シャネル」1883年生まれのガブリエル・ボヌール・シャネル(本名。ココは愛称)が、1909年、帽子のアトリエを開いて創業したシャネル。100年以上経った今も大人気なのはご存じの通り。「アメリ」で人気を得たオドレイ・トトゥ演じる本作は、1971年に87歳で亡くなったシャネルが孤児院で育った子供時代から、男性遍歴を経て、起業して成功するまでの若い時期を描いています。だからこそ、生きる息吹とピュアなエネルギーが素晴らしい。将校エティエンヌ・バルサン(ブノワ・ポールブールド)は、上流生活を体験させてくれたけれど、彼女の出自を恥じて周囲に隠し、実業家ボーイ・カペル(アレッサンドロ・ニボラ)が彼女に夢中になると、嫉妬してプロポーズ。「誰とも結婚しない」と彼女は宣言しますが、愛するボーイは事故死してしまい…。男の庇護なしに女性が生きられなかった時代、媚びない彼女がかっこいい! でも、愛する男から尊敬され愛されるのですよ。衣装がシャネル全面協力なのも魅力的。女性は羽飾りの付いた帽子にロングドレスが全盛の時代、海辺で見かけた漁師のボーダーTシャツに、男物を半端丈にカットした黒いパンツ、ツイードのジャケットというスタイルは、今すぐ真似したいほど。彼女のシーンだけ現代に見えるのが、さすがシャネルです。初めて老舗メゾンのアトリエが公開された「ディオールと私」1947年、クリスチャン・ディオールがメゾンを設立以来、輝かしい歴史と伝統を誇るディオール。2012年、ジル・サンダーでメンズ担当だったラフ・シモンズがクリエイティブ・ディレクターに就任し、パリ・コレまでの8週間を描いたのがこの映画です。フェミニンでエレガントなディオールに、シンプルでミニマリストといわれる彼が抜擢されたのはかなりの驚きでした。しかし、ラディカルなアプローチを貫いて、果敢に挑むラフ。衝撃的なのは、ディオール全面協力のもと、グラン・メゾンの中枢であるアトリエに初めてカメラが入ったこと。ディオールと刺繍された白衣のスタッフたちの動きが、ドキュメンタリーとは思えないほど見事です。現在もオートクチュールの伝統を守り続けるのは、シャネルとディオールだけですから、彼らの誇りも当然なのですが…。オートクチュール・ディレクターのカトリーヌが大事なフィッティングに欠席し、「穏やかな僕も限界」と嘆くラフに、「シーズンごとに5000万円注文する顧客の要請で出張していたの。お金がないとコレクションどころかメゾンも存続できない」と主張する彼女の言葉が印象的でした。全身全霊を傾けてドレスを作り上げる人々の緊張感に満ちた日々に密着した、感動のファッション・ドキュメンタリー。必ずやパワーをもらえるはずです。「イヴ・サンローラン」ピエール・ニネの緻密な演技がスゴい!1957年、ディオールの死後、21歳で後継者となったイヴ・サンローラン。彼を描いたこの映画も、イヴ・サンローラン財団率いるピエール・ベルジェによる初公認作品です。つまり、本物の衣装がふんだんに登場し、しかも当時のモデルは小柄で服が小さいため、そのサイズに合うモデルを選んで登場させ、それどころか、サンローランの住居や仕事場が提供され撮影が行われたという、奇跡のような映画なのです。何よりも感動するのは、イブ・サンローランを演じるピエール・ニネの役作り。伝記やドキュメンタリーで学び、デッサンやモード全般、素材の触り方まで特訓を受けたほか、毎日、3、4時間はサンローランの肉声を聞いて5か月、話し方を徹底的に叩き込んだそう。50年にわたって繊細な彼を公私ともに支え続け、実際の恋人でもあったベルジェが「似てるというより彼そのもの。仕草や声に至るまで…」とインタビューで語っているのですから驚きます。同性愛が非常に違和感なく描かれているのも特徴的で、新しいと思いました。「男同士でラブシーンを演じるのはどんな気分? とよく聞かれるけど、この物語に感動したからこそ、自然に演じられたと思う。ただのラブストーリーといえるほどね」とニネ。サンローランの革命的なデザイン、波乱の人生、知られざる私生活に息を飲む貴重な作品です。また、2015年12月からベルトラン・ボネロ監督の映画「サン ローラン」(主演/ギャスパー・ウリエル)も公開されました。見比べてみるのも楽しいかもしれません。いかがでしたでしょうか? ブランド品なんて興味ない…という方もおられるかもしれませんが、この3本を観ると、デザイナーへのリスペクトを感じてしまうから不思議です。着る喜び、生きる楽しさを謳歌して、明日の美しさへと紡いでいけたらと思います。
2016年01月06日トム・クルーズ、ジョニー・デップ、ブラッド・ピット……浮き沈みの激しいハリウッドで、スターの称号を手にいれた数々の俳優たち。その中で、アラフォー世代の代表といえば、やはりレオナルド・ディカプリオ、レオ様でしょう! コメディ、ラブロマンス、政治もの、西部劇などあらゆるジャンルの映画で、常に圧倒的な演技力をみせてくれるレオ様。近年の渋いレオ様ももちろんステキですが、遡ること約20年前。『タイタニック』(1997)で一世を風靡することになるレオ様ですが、そこに至るまでの彼の美しさといったら! 今見ても、キュンとしてしまうはずです。今回は、そんな若かりしレオ様の美しさが詰まった、代表的な3作品をピックアップ。改めて魅力を掘り下げていきましょう。“少年と大人の魅力” を併せ持つレオ様は必見!『バスケットボール・ダイアリーズ』『ギルバート・グレイプ』(1993)で演じた、知的障害を持つ少年・アーニー役で高い評価を得てから約2年後。少年の中に、大人っぽさをまといはじめたレオ様が挑んだ作品が『バスケットボール・ダイアリーズ』(1995)。ビートニクの詩人であり、ロックミュージシャンでもあるジム・キャロルの自叙伝「マンハッタン少年日記」の映画化で、レオ様が演じたのは主人公のジム役。ミッションスクールに通い、バスケットボールのチームメートとやんちゃに過ごしていたジム。最初はちょっとした不良少年でしたが、やがてドラックに手を出すとどんどんハマり、退学、家出、そしてホームレスにまで堕ちていき……。衝撃的なストーリーで、かなりヘビーなシーンも。それでも、少年と大人の魅力を併せ持つ、この時期ならではのレオ様の美しさ、存在感は鮮烈! 制服姿も新鮮でクール。スターへの階段をのぼりはじめた彼の輝きが詰まっています。レオ様史上NO.1の究極美が堪能できる『太陽と月に背いて』大人っぽさに加え、色気も漂う究極の美しさを発揮した作品が、『バスケットボール・ダイアリーズ』と同年、1995年に日本で公開された『太陽と月に背いて』。19世紀のフランス象徴主義の代表的詩人、アルチュール・ランボーと、ポール・ヴェルレーヌの宿命的かつスキャンダラスな関係を描いた本作。妻がありながらも、レオ様演じるランボーの才能と美貌に心を奪われ、その魅力にのめり込んでいくヴェルレーヌ(デヴィッド・シューリス)。2年間に及ぶふたりの蜜月、そして破滅的な別れが描かれていくのですが、ヴェルレーヌ同様、見ている私たちをも虜にしてしまうランボー(レオ様)! 海辺のシーンで、華奢なからだにひらひらとなびく、純白のシャツをまとったレオ様はハッとするほど儚げで美しく……。レオ様史上、最も美しい瞬間を閉じこめた作品、といっても過言ではありません。王道ラブストーリーで魅力全開!『ロミオ+ジュリエット』1997年、日本で公開された『ロミオ&ジュリエット』も、レオ様の魅力が際立つ作品。シェイクスピアの名作を、バズ・ラーマン監督が時代設定を現代に置き換えて映画化したもので、作品としても見応えたっぷり。対立するロミオのモンタギュー家と、ジュリエットのキャピュレット家の抗争シーンでは、スタイリッシュな映像の中、クールでカッコいいレオ様にキュン。また、ロミオ(レオ様)とジュリエット(クレア・デインズ)が、水槽越しに初めて出会うシーン、プールでのロマンティックなキスシーン、ふたりの結婚式のシーン…… どのシーンを切り取ってもレオ様の美しさが全開!悲劇のクライマックスまで、目が離せないレオ様版ロミオ。何度もリピートして観たくなること必至です。今回紹介した作品は、美しさはもちろん、その確かな演技力にも感動させられるものばかり。当時観た! という方も多いと思いますが、改めて美しいレオ様の作品、楽しんでみてはいかがでしょうか!?
2015年12月30日せつない恋愛小説の名手、山田詠美さんを取材した時、「女ってね、30過ぎたくらいから年下とも楽しめるようになってくるのよ」と、飲みものを運んできた六本木のカフェのイケメンウェイターの手をサッと握って唇に押し当てたのを見て、日本にもサガンの小説みたいなことができる女性がいるんだ! と衝撃を受けましたが、それって真理かも。寒々とした外気に冷え切って帰宅したら、温かい食べものやお風呂もいいけれど、イケメンが登場する映画を観て、縮こまった細胞を生き生きさせませんか? 美人もそうだと思うのですが、イケメンはノーリーズン。寒くてつい凹みがちな季節、年下のイケメンくんが理屈抜きにテンションをアゲてくれるでしょう。そんな映画を3本ご紹介します。「真夜中の五分前」の三浦春馬のピュアな透明感に癒される▼真夜中の五分前監督:行定勲出演:三浦春馬, リウ・シーシー(劉詩詩), チャン・シャオチュアン(張孝全)彼が演じる主人公は、上海の時計店で修理士として働く孤独な青年・良。上海の街並を、仕事が終わるとバイクでプールに通う日常で、印象的な音楽とともに、たゆたうような時間の流れが魅力的な映画です。美しい双子の姉妹(リウ・シーシー)と出会った彼は、清楚で優しい姉ルオランとつきあい始めます。映画を観ながら、恋人同士の握り方で手を握ったり、たどたどしい中国語で「君のために作った」と、時計をはめてあげたり…。それが次第に、妖艶で奔放な妹ルーメイに振り回されていくことに…。この姉妹、キャラ以外は外見も趣味もまったく同じ。たまに入れ替わって遊んでいるのに、ルーメイの夫ティエルン(チャン・シャオチュアン)も気づかないほど。そんな姉妹が旅先で事故に遭い、一人だけ帰国する、というミステリアスな展開。タイトルの時間帯通り、仄暗い照明が幻想的で、三浦春馬のピュアな透明感が際立ち、彼の優しさに包み込まれるでしょう。「恋の罪」にチョイ役で登場する深水元基がめちゃカッコいい▼「恋の罪」監督: 園子温出演: 水野美紀, 冨樫真, 深水元基深水元基を知っていますか? 俳優、モデル、デザイナーで身長187cm、35歳。NHK BSプレミアム「京都人の密かな愉しみ」に、老舗和菓子屋の若女将(常盤貴子)が好意を寄せる雲水役で登場したのを見て初めて知り、素敵だなあと思いました。彼が出演している映画を探して「恋の罪」を観たのですが、ここでの役柄はなんとAV男優! ストイックな雲水と180度違う濃厚なベッドシーンに、逆にすごく上手い役者さんだなあと感動しました。この映画、実は彼だけに言及している場合じゃないくらい話題満載の作品で、鬼才・園子温監督が、1996年に起きた東電OL殺人事件にインスパイアされて作った問題作です。自分を持て余していた人妻のいずみ(神楽坂恵)が、AVにスカウトされ、渋谷・丸山町のラブホテル街で、昼は大学教授、夜は娼婦の美津子(冨樫真)と出会い、その殺人事件を担当する刑事・知子(水野美紀)も不倫をしていて…というものすごい設定。刺激の強いシーンもあるので万人向けではありませんが、深水元基のカッコよさは保証します。キスが上手い福士蒼汰の「好きっていいなよ。」のキスが絶妙▼「好きっていいなよ。」監督: 日向朝子出演: 川口春奈, 福士蒼汰, 市川知宏高校生の学園ラブストーリー? 勘弁してよ! と思われることでしょうね。お気持ちはわかりますが、この映画を観た後はそうは言わせませんよ。きっと納得していただけるはず。もともとはTVドラマ「きょうは会社休みます。」で、綾瀬はるかとの恋愛シーンを観た時、若そうなのに余裕あるキスをするなあ、と思ったのが最初の印象でした。この時、彼は21歳で学生アルバイトの役。同年、高校1、2年生を演じたのがこの映画です。モテる男子役なのですが、小学生の時、友達に裏切られてから誰ともつきあわずに地味に生きてきた同級生の女の子めい(川口春奈)に、スカートに触ったと勘違いされ回し蹴りされて以来、関心を抱きます。本屋で他校の男子に待ち伏せされた彼女を、キスすることで助けたことがきっかけで、つきあうモードに。実は、彼にも心の傷があるのですが…。圧巻なのは「大勢の女の子とキスしてるんでしょ」とめいに言われて、「僕はしたいって思った子としかしない」と言った後、彼女に「今のは挨拶代わりのキス。今のは可愛いなあと思った時のキス。今のは進展したいなあのキス。今のは目の前にいる人に対する気持ちのあるキス。まだいっぱいあるけど、違いわかる? 俺のこと好きになれ。何も言わないと本気チューしちゃうぞ」とキスを繰り返すシーン。まいりました。寒さが厳しさを増す時節柄とはいえ、心まで冷え込んではいけません。冷え防止にイケメンを配備して、さあ、この冬も温かく心豊かに過ごしましょう。・ 「真夜中の五分前」 ・ 「恋の罪」 ・ 「好きっていいなよ。」
2015年12月24日「女ってわからない…」と男性たちは思っているでしょうが、「男ってまったく…」と女性たちもつぶやいているわけで、どんなにITが発達しようと他の惑星へ行こうと、両者間の深淵がなくなることはないでしょう。違うからこそ愛し合える、ともいえますけれど。男と女の問題でイラッときたら、いや、キレそうになったら、監督歴半世紀、酸いも甘いも噛み分けたウディ・アレンの映画を観て、楽しみながら男女の深淵を学んでみませんか? 人生での実体験も人一倍濃い彼のこと、きっと私たちに素敵なヒントを与えてくれるはず。恋愛関係のプロフェッショナルともいえる彼の映画から、お薦めの3本をご紹介しましょう。「恋のロンドン狂騒曲」が自分の一番大切なものに気づかせてくれるアラフォー世代の迷いとも重なりますが、子供を産めるであろう最後の年代、恋愛ができるであろう最後の年代…といった、いわゆる区切りの時期、人はジタバタあがいてしまうのかもしれません。熟年離婚したアルフィ(アンソニー・ホプキンス)とヘレナ(ジェマ・ジョーンズ)。アルフィはまだまだブイブイいわせたくて、ジムに通い、若いコールガールと再婚へ。ヘレナは前世も占うヒーラーに通い、オカルト書店店主と出会い…。娘のサリー(ナオミ・ワッツ)は、夫で売れない作家のロイ(ジョシュ・ブローリン)の“負け犬”モードに愛想が尽きかけ、勤め先の“勝ち組”オーラがムンムンの画廊オーナー、グレッグ(アントニオ・バンデラス)の「妻とうまくいってない」という言葉を信じそうに…。二転三転する中、それぞれが、自分にとって一番大切なものが見えてきます。できるなら、お互いをあまり傷つけないうちに気づきたいものですね。勉強になります。「ミッドナイト・イン・パリ」でロマンティックな相性がカギだと知る脚本家でありながら小説家を夢見るギル(オーウェン・ウィルソン)と、お譲様育ちで現実的な婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)は、イネズの父親の出張に便乗してパリ旅行中。ゴージャスなランチや母親とのショッピング三昧、偶然出会ったインテリ友人夫妻との美術館巡りなどに夢中なイネズと、次第に別行動をとり始めるギル。深夜12時の鐘の音とともに、どこからともなく現れたクラシックカーに乗ると、到着したのは1920年代、ジャン・コクトー宅のパーティー。コール・ポーターが奏でるピアノが響く中、現れたのはゼルダとスコットのフィッツジェラルド夫妻。彼らから憧れのヘミングウェイを紹介されます。「最高の女を抱いたことはあるかい? その瞬間は死の恐怖を忘れらる。真実の愛は一時、死を遠ざけるんだ」と、ヘミングウェイが語り始めて…。そんなめくるめく世界が夜ごと展開し、現実との狭間でイネズとズレていくギル。男女って、ロマンティシズムの相性も大切な要素だと思いませんか? 必ずしも女性ばかりが現実的とは限りません。互いのロマンをどれだけ許容できるか、一緒に楽しめるかがカギ。そこが合わないなら無理してつきあうことはないし、合えばこんなに幸せなことはありません。自分も相手も自分らしくいられるために、大事なことを教えてくれる映画です。「地球は女で回ってる」から学ぶ浮気性な男をコントロールする術結婚していても子供がいても、他の女性とセックスしたいと願う男性の本能を、おもしろおかしく描き、ホロリとさせる傑作映画です。作家のハリー(ウディ・アレン)は3回離婚歴があり、あることないこと小説に書いて激怒した元妻から撃ち殺されそうになったり、一人息子に会わてくれない別の元妻からは、色情狂呼ばわりされたり。「浮気相手は本当に彼女だけ?」『神かけて誓う!』「あなた、無神論者じゃなかったの?」『神の不在は俺のせいか?』などと、お得意の自虐ネタ満載の台詞に、修羅場でもつい笑ってしまいます。そんなチャラ男な主人公が抱える、ぞっとするような孤独感。それをどう癒し、笑い飛ばせるかが、女性のキャラや度量にかかっていると思いました。女優のナオミ・ワッツがインタビューで、ウディ・アレンの魅力を「ものすごく優秀なのにバカにもなれるの」と語っていますが、それは女性にも当てはまるのではないでしょうか。ウディ・アレン映画を愉しんで、男と女の溝をちょっぴり埋めてみませんか?
2015年12月01日たくさん旅をしている友人と、映画をたくさん観ている友人を、わたしは心からリスペクトしています。両者とも、世界の森羅万象に通じ、人間的に達観している人が多いと思うから。映画好きな友人、それもハリウッド映画のみならず、フランスのヌーベルバーグなどにも造詣の深い友人を招いてのホームーパーティー …あなたなら、どんなBGMを選びますか? せっかくなら「おおっ!」と思わせて、映画談議に花を咲かせたいですよね。ゴージャスなご馳走はなくとも、好きな映画の話題で盛り上がるほど楽しいことはありません。シンプルなお料理と映画気分を満喫できるひとときを、BGMで演出してはいかがでしょう。今回は、映画通の友人もきっと満足するお薦めのCD3枚を、わたしの定番ホムパ料理とともにご紹介します。さあ、とびきり素敵な音楽を、ボナペティ!前菜は、親しみのある “ジョルジュ・ドルリュー” でトリュフォー映画のヒロイン気分わたしがよく作る簡単なオードブルは、柿かイチジクとゴルゴンゾーラチーズを、生ハムかスモークサーモンで包んだもの。数年前、ニューヨークのクラブで流行っている、という記事を読んだのですが、その話題を振るだけで、カンバセーションピースになりそう。早めに作って冷蔵庫に寝かせておき、客人が到着したらまず、これとサラダなど、冷たいものをサーブ。その間、お酒を準備したり料理の温めに入ると、会話がとぎれません。そんなパーティーの始まりには、ジョルジュ・ドルリューのこの一枚がおすすめです。▼ジョルジュ・ドルリュー「le cinema de Francois Truffaut musiques de Georges Delerue」生涯に350曲以上の映画音楽を作曲し“映画界のモーツァルト”とも呼ばれる、フランスのジョルジュ・ドルリュー。フランソワ・トリュフォー監督の主要な映画音楽を担当し、名作「突然炎のごとく」「恋のエチュード」「アメリカの夜」など、映画は観ていなくても、どこかで聴いたことのある親しみやすい美しいメロディが印象的です。前菜にぴったりの軽妙な味わいが、会話を生き生きと弾ませてくれるでしょう。メイン料理にふさわしいゴダール映画のオリジナル・サウンドトラック前日から作っておけて便利なので、メインはスペアリブのブルーベリー風味。スペアリブを赤ワインとブルーベージャムに浸して、醤油とバルサミコ酢、お好みですりおろしニンニクを加え、一晩冷蔵庫へ。当日、2時間ほど弱火で煮込んだら出来上がりです。ブルーベリージャムの酸味が美味ですが、もちろんポピュラーなオレンジマーマレードでも。ガツンと肉を食べると、なぜかフランス女優の力強さを思い出します。フランス映画で最も有名なジャン=リュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」「アルファヴィル」「軽蔑」のサントラ集がこちら。▼ジャン=リュック・ゴダール「ジャン=リュック・ゴダール作品集」「気狂いピエロ」で主演した名女優アンナ・カリーナの意外に可愛い歌声が聴けるのが貴重です。ちなみに、「軽蔑」の作曲はジョルジュ・ドルリュー。ちょっぴり哀愁が加わって、どんどんお酒が進みそうです。デザートでは、ミシェル・ルグランの洒脱な余韻を楽しんでデザートは、マカロンがお気に入り。フランボアーズ、ピスタチオ、カフェ、シトロン…、様々な色と味を堪能できるのが楽しくて、ついいろんな色を買ってしまいます。シャンパンやワインを飲み続けていてもいいし、気分を変えて、コーヒーや紅茶を丁寧に淹れてもいいですね。そんな時、ジャズィなミシェル・ルグランが似合います。▼ミシェル・ルグラン「RCAイヤーズ」フランス人の彼が、アメリカのレコード会社RCAに在籍していた時の曲を集めているので、「RCAYears」というタイトルなのですが、それこそ名画中の名画「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「華麗なる賭け」などのテーマ曲が収められています。賑やかだったり、しっとりしていたり、ドラマティックで洒落たBGMが、味わい深いひとときを、さらに忘れがたい余韻で満たしてくれることでしょう。
2015年11月02日ヴィヴィアン・マイヤーという写真家のことは、もちろんご存じありませんよね? 生涯で15万枚以上の作品を残しながら、一度も発表することなく、乳母や家政婦として働き、2007年、オークションで偶然ネガが発見されるまでは、その存在をまったく知られることなく、2009年に83歳でこの世を去った、変わり者の女性のことは。彼女のネガを競り落とした青年が、写真の一部をブログにアップすると爆発的な人気が出て驚き、プリントを売って製作費を稼ぎながら、謎だった彼女を探す旅に出て、彼女を知る人々のインタビューも含め、ドキュメンタリーで描いたのがこの映画。まさに、事実は小説よりも奇なり! 今まで、こんな不思議な魅力の映画は観たことがありません。乳母だった彼女が死後、写真家として脚光を浴びるまでの旅路その青年がシカゴ在住の監督、ジョン・マルーフです。歴史の資料としてシカゴの風景写真を探している時、地元のガラクタや中古家具を扱うオークションハウスで、古い革張りの箱に入ったネガを落札。撮影者はヴィヴィアン・マイヤーとあるけれど、知らない名前で、検索してみても1件もヒットなし。初めてヒットしたのは、それから2年後、彼女がつい数日前に亡くなった、という死亡記事でした。そこから、彼は生前のヴィヴィアンを知る人物を探し当てるのですが、その人はなんと「彼女は僕のナニー(乳母)だった」と…。乳母だった人が、なぜこんなに優れた写真を撮影できたのか? 彼のヴィヴィアンを探す旅が始まります。生涯独身だった彼女の晩年の生活を援助していたのは、かつて彼女が乳母を務めていた家族でした。彼らのおかげで、さらに膨大なネガ、未現像フィルム、8mmや16mmの映像素材、カセットテープ、それどころか、ブラウス、コート、帽子、靴、レシートに書いたメモの類いまでを入手。そして、ジョンの旅はフランスにまで及びます。20世紀最高のストリート写真家の謎めいた数奇な人生彼女を知る人々は、口々に「変り者」「秘密主義」「孤独な人だった」と語りますが、彼女が写真を大量に遺していたことは誰も知りません。フランス訛りから、フランス人だとも思われていたヴィヴィアン。彼女の両親は、彼女が幼い時に離婚しているのですが、ある時期、ヴィヴィアンは母親の母国であるフランスと行き来していたことが判明します。ジョンが南フランスの村を訪ね、彼女が現像屋に「光沢でなくつや消しで」などと、プリントの指示を細かく出していたことを知り、発表するつもりがなかった写真を世に出してしまって悪かったかも… と懸念していた彼が勇気づけられるシーンは印象的でした。プロの写真家たちから「彼女は真の写真家」「驚くべき洞察力」「発表していれば成功できたのに…」と評されるヴィヴィアンの写真。ニューヨーク、ロンドン、パリを始め、世界各地を巡回中の展覧会は、その美術館史上最高の動員となったり、全米での写真集の売り上げNO.1を記録したり。なぜ発表しなかったのか、謎は深まるばかりです。引きこもって溜め込んだ新聞紙に埋もれて暮らした晩年ザンバラ髪に男物のシャツとだぶだぶのコート、足元はアーミーブーツで、愛機ローライフレックスを首から下げ、ファインダーを上から覗き込み、被写体に体当たりで撮影していたヴィヴィアン。彼女が好んで撮るのは、スラム街の人々、泣いている子供、堵殺場など、人間の負の側面を思わせる写真。ただの浮浪者にしか見えない男の写真を購入した、俳優ティム・ロスの「最貧の姿の男なのに幸せそうなんだ」という言葉が刺さります。ハッとさせられる視点や構図は、ダイアン・アーバスやブラッサイを思わせますが、長く住まわせてもらっていた部屋には、美術関係の書籍はなく、足の踏み場もないほど新聞が堆積していたとか。グロテスクで不条理な事件、人間の愚かさが露呈した事件に興味津々だったという彼女には、ジャーナリスティックな感性、作家のカポーティめいた好奇心があったのかもしれない、と思ったり。アーティストとしてはアウトサイダーだったヴィヴィアンの人生が、ミステリアスなまま、心の奥底に沈殿して離れません。作品を公表していたら、20世紀の写真史を変えていたかもしれないヴィヴィアン・マイヤーを、この映画を観て、あなたも探す旅に出てみませんか? 「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」▼予告編監督:ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル出演:ヴィヴィン・マイヤー、ジョン・マルーフ、ティム・ロス 他2015年10月10日(土) シアター・イメージ・フォーラムほか全国順次ロードショー
2015年09月29日ファッション雑誌を見始めた頃、日本の雑誌は「1ヶ月間着回しコーディネート術」とか「痩せて見えるパンツスタイル」といった実用的な記事が多いのに、外国雑誌は「不思議の国のアリスのお茶会に招かれて」「鳥の背中に乗って世界を巡る旅」といったファンタジックな特集が載っていてびっくり! 5キロ痩せて見える、5歳若く見えるハウツー記事も役立つけれど、もっと違う美意識のレッスンがあるんだなあ、と思ったものです。そんな記事を載せる最たる雑誌がVOGUEでした。1892年、アメリカで創刊以来、世界各国で発売されているハイファッションの最先端、ファッショニスタ垂涎の雑誌。歴代の名物編集長は映画にもなっていて、セレブ並みの人気者に。そんなカリスマ編集長の登場する映画を3本ご紹介しましょう。この秋のお洒落心に火が点くこと、間違いありません。元フレンチ・ヴォーグ編集長カリーヌ・ロワトフェルドの生き方が潔く美しい▼マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ監督:ファビアン・コンスタン出演:カリーヌ・ロワトフェルド, スティーブン・ガン, カール・ラガーフェルドその美貌から18歳でモデルとしてのキャリアをスタート、20代で「ELLE」の編集者、スタイリストに転身し、40代でフランス版「VOGUE」の編集長に就任以来、2011年まで10年間務めたカリーヌの顔は、どこかで見たことがある人が多いのではないでしょうか?50代になってもスッと伸びた美脚にピンヒール。パリコレのフロントロー(最前列)の常連で、パパラッチされるスナップ写真では、爪先をやや内側に向けた立ち姿が有名でした。そんな彼女が、新雑誌「CR」を創刊するまでのドキュメンタリーがこの映画。「大勢が足を引っ張ろうとする」業界で、「ファッションは夢の世界。ファンタジーは私の本質よ」という姿勢からブレずに、苦心しながら夢を実現していく彼女の生き方が素敵です。夫がいて2児の母。「仕事も夫も愛してる」と言いながら、世界中のデザイナーたちからミューズとあがめられるエレガントでセクシーなカリーヌの魅力は、実は素直でピュアな人間性。そこが伝わる映画です。「誰にでも敬意を払うのが素晴らしい。自分が特別で重要な存在だと感じさせてくれるの。だから、みんなが彼女に尽くしたくなる」とは、彼女のアシスタントの弁。「いつか飽きられるわ」とサラッと笑いながら、ハイヒールで歩き続けるカリーヌの姿は、私たちに生きる勇気と美意識を問い直させてくれるでしょう。現アメリカン・ヴォーグ編集長アナ・ウィンターはファッション界のリーダー▼THE SEPTEMBER ISSUE ファッションが教えてくれること監督:R.J.カトラー出演:アナ・ウィンター, グレイス・コディントン, シエナ・ミラーショーを見る間も外さない黒いサングラス、金髪のボブヘア、女性らしい色合いのヒザ下丈のワンピースかプリーツスカート…アメリカ版ヴォーグ編集長、アナ・ウィンターも、常にスタイルが決まっている女性です。イギリス出身ですが、アメリカのハーパース・バザーやイギリス版ヴォーグでもキャリアを積み、1988年から現職。映画「プラダを着た悪魔」に登場する鬼編集長のモデルにもなった彼女は、同時に、3000億ドルのファッション産業で最も重要な人物、映画スターよりも注目の的、といわれています。この映画は、アナを中心にニューヨークのヴォーグ編集部が、2007年、ファッション誌の新年号といわれる重要な9月号を出版する様子を描いたドキュメンタリー。アナの片腕のクリエイティブディレクター、グレイス・コディントンと写真をめぐって対立したり、シエナ・ミラーの表紙撮影では豪華なヨーロッパロケが組まれたり、締め切り5日前にグレイス担当の特集が撮り直しになったり、ハラハラドキドキで目が離せないおもしろさ!“氷の女”と呼ばれるほどクールで仕事第一のアナですが、映画内のインタビューで「強みは決断力、弱みは子供たち」と答える一面も。セレブ文化が世界的流行になることを予見し、ファッションも生き方の一部だと示し、30年近く編集長を務め続けるアナ。垣間見せる情熱的な笑顔が美しく、生き方にもインスパイアされます。それにしても現在、アナは60代、グレイスは70代で現役バリバリ。そこからして元気になれると思いませんか?元アメリカン・ヴォーグ名物編集長ダイアナ・ヴリーランドがぶっ飛んでる!▼ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ監督:リサ・インモルディーノ・ヴリーランド出演:ダイアナ・ヴリーランド真紅のドレスで赤いソファに横たわる真っ赤な部屋は、彼女のリビングルーム。そのDVDのカバーからして、ただならぬ異才を放っているダイアナ・ヴリーランドは、1989年に亡くなるまでアメリカのファッション界に君臨した、まさにアイコン的存在です。キャリアのスタートは戦前。シャネルを着てセントレジス・ホテルで踊っていたら、ハーパース・バザーの編集長、カーメル・スノウから「お洒落ね。仕事しない?」とスカウト。ハーパース・バザーの黄金時代を築き、良妻賢母風で退屈だったファッションを一変させます。ハーパース・バザーで25年間、ファッションエディターを務め、オードリー・ヘプバーン主演の映画「パリの恋人」に登場する編集長のモデルにも。1962年、ライバル誌ヴォーグへ。彼女自身が芸術品といわれるほどクリエイティブな企画で、エジプトロケやヒマラヤロケ、モデルを象と撮影したり、モデルに豹を演じさせたり、ミック・ジャガーを初めてファッション誌に起用したり、垢抜けない娘を女王に仕立てたり、ヌード撮影も…。信じられないほど斬新でダイナミックな企画は、未だに語り継がれるほど。そんなダイアナが1983年、80歳の時、作家のジョージ・プリンプトンに回顧録を依頼した時のインタビュー映像を中心に、周囲の人々へのインタビューで構成されたのが、この貴重な映画です。「自分で磨かなきゃダメよ。肌もポーズも歩き方も、興味の対象も教養も」「新しい服を着ているだけではダメ! その服でいかに生きるかなの」「人生は一度きりよ。やりたいことをやらなきゃ」と、彼女の力強い言葉が背中を押しまくります。人生で迷った時や落ち込んだ時に、間違いなく“活”を入れてくれる1本です。
2015年09月14日100年後の私たちの食べものって、どうなっているの? 大林千茱萸(おおばやし・ちぐみ)監督の映画『100年ごはん』は、そんな不安や疑問に、ある答えを提示してくれます。先日、銀座で行われたホールフード協会主催(タカコナカムラさん主宰)の映画上映会では、 “奇跡のリンゴ” で知られる農業家の木村秋則さんも駆けつけ、未来の食について熱く語ってくださいました。木村さんが伝えようとしていること、映画『100年ごはん』のこと、大林監督とタカコナカムラさんのトークショーなど、イベントの内容とともにご紹介します。木村秋則さんが語る「土と、愛情が育むほんものの食」「すべての農作物は、太陽、水、土、そして愛情が必要なんです。愛情は見えないかもしれない、でもこれが一番大事なんです」何度も挫折を繰り返しながら、自然栽培によるリンゴを生み出した木村秋則さんの言葉には、ズシリと響く重みがありました。農薬や除草剤、化学肥料を使わない果樹の生産は不可能と言われながらも、さまざまな困難を乗り越え成し遂げた木村さん。その夢の実現の秘密は、土にありました。「雑草があるから、土ができているんだ。それに気づくのに6年かかりました」雑草によって土は夏の間も適温を保ち、冬は腐葉土となってフカフカになる。大豆を一緒に植えることで土中の微生物が育つ、そんな自然のままの土のサイクルが、りんごを育ててきたといいます。また木村さんが昔ながらの農法にこだわるのには、理由がありました。「農薬や化学肥料に頼って作る現代の作物は、栄養価も下がっているのです。科学技術庁の『日本食品標準成分表』でもそれは明らかです。たとえば1951年と2000年で比較すると、ほうれん草のビタミンAは8,000IUだったのが、約50年後には700IU、1/10以下に。ミカンのビタミンCは、2,000IUから33IUに。私たちは昔のように食物から栄養を摂ることが難しくなっているんですね。これは大変なことです」今、私たちがやるべきは「次世代に伝える畑を作ること」だと木村さん。大分県臼杵市の、土からはじまる畑づくり木村さんの奇跡が、少しずつ全国に拡がりをみせているなか、大分県の臼杵(うすき)市では、次世代の畑のための土づくりが行われています。無化学合成農薬・無化学肥料の野菜作りを推進するため、2010年から元気な土づくりを始めたのです。映画『100年ごはん』は、その過程を描いたドキュメンタリー映画です。「健康な土で育った “ほんまもん農作物” を、未来の子供たちのために作っていきたい」という市をあげての情熱が、さまざまな人たちを動かしていきます。※「ほんまもん農作物」=臼杵市で認定している農産物の認定制度上映方法が実にオリジナルで、【映画を観て + 共に食事をし + 語り合い + 土に触る】という、五感で体験する上映会を、全国100カ所近くで行っています。100年後の未来も、おいしいごはんが食べられるのかな?あの大林宣彦監督の長女で、料理家でもある大林千茱萸(おおばやしちぐみ)監督が、映画撮影を開始したのは2009年。自ら汗を流してほんものの野菜作りに奔走する前市長からのラブコールに応え、監督することを決めたそう。映画は4年がかりで、120時間の撮影を経て完成されました。映画では、臼杵市役所、市民、教育委員会、給食センター、農協、有機JAS認定機関、加工業者、飲食業者、実際に土を耕す生産者、野菜を買う消費者、そして野菜を食べる子供たち…取り組みの経過とともに、それぞれの日常で少しずつ変化していく人たちが登場します。そしてリアルなドキュメンタリーと同時平行で、現在の「ワタシ」と、100年後の未来の「アナタ」がファンタジーのように言葉を交わし、私たちにいくつもの疑問を投げかけます。はたして100年後の未来も、おいしいごはんが食べられるのかな? と。農薬のこと、気候変動、農家の担い手減少と食料自給率の問題など、いま、私たちの食にまつわる不安はいろいろ。だからこそ、100年後の未来のために、いまからできることを始めなくては。そんなことを考えてしまいます。「映画にさまざまな立場の人が登場するのは、ご覧になった皆さんの立場に寄り添い、他人事ではなく、“自分事”として捉えてもらえたら…という想いから。これから私たちは未来ために何をどう選択していけばいいのか? 臼杵市の例を描いていますが、各地でこうした力強い動きが始まっていることを知って欲しいのです。『はじめの1歩は100歩分!』がこの映画のキーワードなのですが、まずは “知ること” が “はじめの1歩” 。そして映像の行間にある “何か” を感じて、皆さんが暮らしを考えるきっかけとしていただけたら嬉しいです」(大林千茱萸監督)「食だけでなく、食と暮らし、環境まで広い視野で考えて欲しいとの気持ちから活動を続ける私たち。この映画には、まさに同じテーマが描かれていると共感しました。ぜひこの機会に、これからの食のあり方について関心を持っていただけたら」(ホールフード協会 タカコナカムラさん)映画鑑賞のあとは、ホールフード協会 タカコナカムラさんによるオーガニックフードをつまみながら、参加者みんなで意見交換しながら交流も。五感で楽しみ、感じるイベントとなりました。映画『100年ごはん』の予告編はこちら。全国各地で、自主上映会が開催されています。開催情報および予告編はHPにて。 映画『100年ごはん』【プロフィール】木村秋則(きむらあきのり)1949年、青森県中津軽郡岩木町生まれ。木村興農社社長。弘前実業高校卒。川崎市のメーカーに集団就職するが、「農業を手伝ってほしい」という父の説得により、1年半で退職する。1971年から家業のリンゴ栽培を中心に農業に従事。農薬で家族が健康を害したことをきっかけに無農薬・無肥料栽培を模索する。10年近く無収穫、無収入になるなど苦難の道を歩みながら、ついに無農薬・無肥料のリンゴ栽培に成功し「奇跡のリンゴ」と呼ばれている。現在はリンゴ栽培のかたわら、全国、海外で農業指導を続けている。 大林千茱萸(おおばやしちぐみ)東京都生まれ。「天皇の料理番」元宮内庁東宮御所大膳課主厨・渡辺誠氏に師事し、料理家としても活躍。西洋食作法講師・ホットサンド倶楽部主催と様々な肩書きを持つ。11歳で『ハウス/HOUSE』(1977)原案。14歳より映画感想家として、文筆業開始。大林宣彦監督作品では、メイキングや音楽コーディネートなどを担当。AKB48の「So long!」(2013) MVでは数エピソードの脚本・演出を行う。うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテストでは審査員を務める。本作が単独監督初デビュー作品となる。著者に「ホットサンドレシピ100」(シンコーミュージック刊)、責任編集本には「リュック・ベッソン」(キネマ旬報社刊)など。 大林千茱萸 Facebookページ タカコナカムラ日本CI協会リマ・クッキングで桜沢里真にマクロビオティック料理を師事。渡米。全米を遊学後、Whole Foodの概念に出会う。2003年東京・表参道にて「Brown Rice Café」のメニュープロデュース。2006年7月独立後、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ、「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を開校。「塩麹」「50℃洗い」のブームの火付け役としてテレビ雑誌で活躍。2013年「ベジブロスをはじめよう」(角川マガジンズ)をきっかけに、「ベジブロス」ブームを起こしている。食と暮らしと環境を次の世代へバトンを渡す活動として、2008年5月「ホールフード協会」も設立。一般社団法人ホールフード協会代表理事。近著は『AGEためないレシピ』(パンローリング)など話題の著書多数。
2015年09月11日カンヌ映画祭グランプリ受賞作「夏をゆく人々」がいよいよ日本でも公開となりました。監督は、1981年イタリア生まれの女性監督、アリーチェ・ロルヴァケル。「夏をゆく人々」は、心の奥底に分け入る繊細なみずみずしさと、ダイナミックに場面を切り取る斬新なセンスで、私たちをまったく違ったイメージのイタリア体験に連れ出してくれる話題作です。イタリア映画なのですが、ミラノのお洒落なモンテナポレアーネ通りも、ローマの美味しいピッツェリアも、フィレンツェの有名美術館も登場しません。トスカーナの田舎の村に暮らす、昔ながらの製法で蜂蜜を作る養蜂一家の物語。ひと夏の日常が描かれただけなのに、どこかノスタルジックで人間味あふれる展開にグイグイ惹きこまれていきます。「自然養蜂」にこだわる頑固な父、ひと夏の家族の物語寝る時はどんなに寒くても裸で寝る、という主義らしく、パンツ一丁で寝る父ウルフガング(サム・ルーウィック)は、自然農法ならぬ自然養蜂にこだわるドイツ人。なかなかの頑固親父で、優しいイタリア人のお母さん・アンジェリカ(アルバ・ロルヴァケル)は、たまに腹に据えかねて言い争うことも。4人姉妹と居候の女性ココを含む一家で、光と緑あふれる大地のもと、蜂蜜作りを営む日々。長女ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)は13歳にしてその製法に精通し、父親の片腕的存在です。映画の中で登場する、養蜂のプロセスに思わず目がクギ付けに。リアルなミツバチの大群の映像を、最初は「ひえ~っ」と思いながら観ていたのですが、ジェルソミーナの慣れた反応、家族のように接する愛情深い姿勢に、だんだん愛らしく大事な存在に思えてきたから、あら、不思議! 監督自身、ジェルソミーナと同様に、同郷で養蜂家の家に育ち、父親はドイツ人で母親はイタリア人、幼少時からミツバチが最も慣れ親しんだ生きものだったとか。「ジェルソミーナ役のマリア・アレクサンドラ・ルングには、ハチに慣れてもらうため、多くの時間を費やしたわ。役柄になりきってもらうために、養蜂の仕事をマスターしてほしかった。何度かハチに刺されても、マリアはくじけずにがんばってくれたの」と監督。ハチを手づかみはおろか、口の中から出して顔面を歩かせたりするシーンが! 撮影当時は11歳で、それまでは演じた経験が全くなかったという、彼女のプロ根性に脱帽です。 テレビ番組出演と非行少年の同居が、家族の変化の始まりある日、この村に、お国自慢を紹介するテレビ番組「ふしぎの国」の撮影隊が訪れます。司会を務めるミリー(モニカ・ベルッチ)は妖精のように美しい女性。彼女に憧れたジェルソミーナは、番組に出演したくてたまりません。でも、仕事熱心だけれど頭の固い父親は猛反対。考えあぐねた末、彼女はこっそり応募してしまいます。この一家にもうひとつ、14歳の非行少年・マルティンを、少年更生プランのプログラムで預かる、という事件が起こります。身体に触れられることを極端に恐れ、言葉を話さず、言葉の代わりに巧みな口笛を吹く彼は、カラヴァッジオ描く天使のようなお顔立ち。「ふしぎの国」に出演中、マルティンの美しい口笛に合わせて、ジェルソミーナが顔の上でミツバチを操る芸を見せるシーンが、とても印象的でした。淡い胸騒ぎも、父親との軋轢も、ジェルソミーナのひと夏の体験として鮮烈に過ぎ去っていきます。家族の生活臭いっぱいにあふれた家も、家族の在りようも、ずっと同じでは決してない。そんなせつなさが胸を締めつけるラストシーンが見事です。心に鮮やかな刻印を残す。夏の思い出に、この映画をシャイで不器用でカッコ悪い、大人が勝手に思うほどにはキラキラしていない微妙な思春期を、ユニークな関係でありながらも、二人が絶妙なぎこちなさで演じ、胸が熱くなりました。下の双子の妹二人が、実際の姉妹というキャスティングだったり、母親のアンジェリカは、監督の実姉であったりと、要所要所が家族の実感を伴わせるリアリティで下支えされ、この映画の等身大な魅力に結実させています。2014年のカンヌ映画祭審査員には、ソフィア・コッポラとジェーン・カンピオンという、それぞれ強烈な個性を持つ二人の女性監督が参加。異なるジャンルの作品を手がける二人ともがこの作品を評価したのは、「“人間であること”に対する関心が共通していたからではないでしょうか」と、ロルヴァケル監督は語ります。一人の少女の成長記であり、一つの家族の物語でもある「夏をゆく人々」。ジェルソミーナという名前がフェリーニの名画「道」のヒロインを思い出させたり、ミツバチの飼育、父と娘の葛藤というモチーフがビクトル・エリゼの傑作「ミツバチのささやき」を思い起こさせたりするものの、若い監督のアグレッシブなバワーに満ちたこの作品は、新たな名画の扉を開きました。夏の思い出になるであろう名作、ぜひご覧になってみませんか?『夏をゆく人々』2015年8月22日(土)から岩波ホール等 全国ロードショー監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル出演:マリア・アレクサンドラ・ルング、モニカ・ベルッチ 他 アリーチェ・ロルヴァケル1981年12月29日 イタリア・フィレンツェ生まれ。ドイツ人の父とイタリア人の母を持つ。母親役として本作に出演のアルバ・ロルヴァケルは実姉。ドキュメンタリー作品等から映画製作をスタートし、2011年『天空のからだ』(イタリア映画祭 上映題)で長編映画デビュー。長編2作めの『夏をゆく人々』で2014年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞という快挙を成し遂げた。映画写真 © 2014 tempesta srl / AMKA Films Pro ductions / Pola Pandora GmbH / ZDF/ RSI Radiotelevisione svizzera SRG SSR idee Suiss
2015年08月31日ギラギラ照りつける真夏の太陽を浴びると、身体の奥底からプリミティブなリズムが湧きあがってきて、本能のままに踊ってみたくなりませんか? えっ、紫外線は気になるし、ただでさえ夏は弱いのにとんでもない? いえいえ、エアコンの効いた涼しいお部屋でお楽しみください。人間が本来、持っている“踊りたい!”という欲求を、余すところなく満たしてくれるダンスシーンが見事な映画たち。特に、狂おしいほど魅力的なラテンのステップが、これでもか!これでもか! と楽しめるマンボ、フラメンコ、タンゴは、ダンスに興味がなくてもその肉体美に目がクギ付けに! お薦めの傑作映画を3本をご紹介します。セクシー&官能的なダンスで、マンボの魅力に開眼▼「マンボ・キングス わが心のマリア」監督:アーネ・グリムシャー出演:アーマンド・アサンテ, アントニオ・バンデラス, キャシー・モリアーティキューバからニューヨークへ、アメリカンドリームを夢見てやってきた歌手のセサール(アーマンド・アサンテ)と、作曲家でトランペッターのネスター(アントニオ・バンデラス)兄弟。彼らが、アメリカのショウビズ界でスターダムに上りつめる様子が、情熱的なラテンのリズムに乗って、スタイリッシュに描かれます。1950年代、マンボ全盛期のニューヨークを背景に、アメリカの伝説的なコメディ番組「ルーシー・ショー」に二人が出演するシーンも。1992年製作で、これが英語圏の映画初出演となるアントニオ・バンデラスが、恋に悩む初々しくも激しい青年を好演。“最高にセクシーで、狂おしいほど官能的”という謳い文句通り、圧巻なダンスシーンが見物です。音楽好きにはたまらない、ラテンミュージックのトップスターたち、セリア・クルーズ、ティト・プエンテ、リンダ・ロンシュタット、ロス・ロボスらが、なんと実際に登場! ノリノリで歌い踊るシーンからは、本場の熱気がムンムン伝わり、一緒にステージを囲んでいるような気持ちになることでしょう。思わず腰が動いちゃう1本です。一流アーティストたちが華麗なる共演を果たした鳥肌もののドキュメンタリー▼「フラメンコ・フラメンコ」監督:カルロス・サウラ出演:パコ・デ・ルシア, サラ・バラス, マノロ・サンルーカル, ホセ・メルセー, ミゲル・ポペダ「血の婚礼」「カルメン」「恋は魔術師」のフラメンコ3部作が有名なスペインの巨匠カルロス・サウラ監督と、アカデミー賞撮影賞に輝く“光の魔術師”ヴィットリオ・ストローラが、スペインを代表する一流アーティストたちをドキュメンタリーで描いた傑作。フラメンコはともかく、ダンスシーンを延々見せられるのはちょっと…という方、ご心配なく! 1曲ずつ独立した21幕で構成され、ダンサーと歌手とバンド、ダンサーとギタリスト、ピアニスト2人、群舞など、それぞれが個性豊かに登場するオムニバス的な演出。美術館で個々の展示室を巡るように優雅に鑑賞でき、決して暑苦しくありません。フラメンコ界の“神”と称される、ギターのパコ・デ・ルシアを始めとするマエストロたちと、新世代の豪華なダンサーたちの華麗な競演は鳥肌もの。ダイナミックなダンスを最高に美しく見せる美術や衣装も秀逸で、本国スペインで“最高の芸術作品”と讃えられた本作。スペインに次ぐフラメンコ人口を誇る日本でも、きっとロングセラーになるはず。見事なダンスシーンと望郷のせつなさ…踊ることは生きること▼「タンゴ ガルデルの亡命」監督:フェルナンド・E・ソラナス出演:マリー・ラフォレ, フィリップ・レオタール1976年の軍事クーデターで、誘拐、拷問、虐殺が日常化したアルゼンチンから、パリに亡命した女優のマリアナ(マリー・ラフォレ)は、同じく亡命してきたバンドネオン奏者や仲間たちと、音楽劇「ガルデルの亡命」を上演しようと腐心中。ところが、官憲の眼を盗んで祖国から送られてくるはずの台本の結末が、いつまでたっても届かなくて…。ガルデルとは、不世出のタンゴ歌手、カルロス・ガルデルのこと。人気の絶頂期にあった1935年、アメリカから故郷ブエノスアイレスへ帰る途中、飛行機事故で早逝。この映画では、彼の録音した2曲の音源が使われ、アルゼンチン人の漂白の悲しみが伝わります。本作で新しい音楽を担当したタンゴの革命児、アストル・ピアソラは、試写でガルデルの歌を聴いて泣き出してしまったとか。音楽劇のリハーサルが進行していくストーリーで、見事なダンスシーンが続き、まるでミュージカルのような展開にワクワクしっぱなし。とはいえ、電話線だけでかろうじて祖国と繋がっている人たちのせつない思いも胸に迫って…。同じく亡命を体験しているフェルナンド・E・ソラナス監督が、望郷の念、愛、明日への希望をユーモアと詩情を散りばめて描き、数々の映画賞を総なめにした1985年の傑作。ぜひご堪能ください。美しいだけでなく、生きることと踊ることが一体化した“命のダンス”は、人生を浄化してくれる清流のように、私たちを癒し昂揚させてくれるでしょう。人間ってすごいな! そんな人間賛歌を感じるダンスで、心身を思う存分リフレッシュさせてください。・ 「マンボ・キングス」 ・ 「フラメンコ・フラメンコ」 ・ 「タンゴ ガルデルの亡命」
2015年07月31日フリーダ・カーロという画家を知っていますか? 1907年メキシコ生まれ。6歳の時に小児マヒを患って右足は短いまま、18歳で電車とバスの衝突事故に遭い、バスの折れた鉄柱が下腹部を貫通。脊椎、鎖骨、右足、骨盤の骨折で一時は医者にも見放され、生還しても47歳で亡くなるまで後遺症に苦しみ、それでも情熱的に描き続けたフリーダのことを。死後50年を経て、フリーダ・カーロ博物館からの依頼で彼女の遺品を撮影することになったのが、原爆で亡くなった人々の衣服を撮影した写真集「ひろしま」などで著名な世界的写真家、石内都さんでした。石内さんをテーマに映画を撮りたいと念願していた小谷忠典監督が、メキシコで石内さんに同行してカメラを回し、さらにメキシコの歴史や文化にも分け入って撮影した映画が、この魅力的で貴重な「フリーダ・カーロの遺品」です。遺品なのに、まるでフリーダが生きているかのよう! 偉大な画家というより、一人の女性としてフリーダを甦らせた石内さんは、普遍的な“女の人生”を私たちに突きつけます。女性として芸術家として、共通点を持つこの二人を、生と死の境を越えて活写した小谷監督にお話を伺いました。自分の傷に気づかせてくれた石内さんをテーマに、映画を撮りたい学生の頃から石内さんのファンで、いつか彼女の映画を撮りたいと思っていた小谷監督がインスパイアされたのが、石内さんが身体の傷を撮った写真集「scars」でした。「10年位前、結婚したいと思ったバツイチの女性に子どもがいて、その子の父親になりたいと思った時、引っかかるものがあったんです。それが何かはわからなかったけれど、石内さんの写真を見た時、自分の傷に気づかされて。自分には、父親がアルコール依存症という問題がずっとあったのですが、そのことと向き合わないと進めないんだなと」父親の理想像を追い求め、実際の父親とぶつかっていた自分が、石内さんの写真を見たことによって理想が崩れ、父親を一人の人間として受け容れられるようになったとか。その変化は非常に大きく、後に小谷監督は、自身の家族を撮った映画「LINE」のパンフレットで石内さんにコメントを依頼します。今回、彼女をテーマに映画を撮りたいと連絡した時は、たまたま石内さんがメキシコに旅立つ2週間前だったとか。「まさか、メキシコへ行ってフリーダを撮ることになるとは、全然思ってなかったです。こんなすごいプロジェクトを見過ごすわけにはいかないでしょう! とプロデューサーを説得し、石内さんの到着した2、3日後、どうにかメキシコに降り立ちました」フリーダ個人の奥にあるメキシコの歴史や文化を投影青く塗られた壁が印象的な、通称“青い家”。フリーダ・カーロの生家であり、夫の画家ディエゴ・リベラと結婚生活を送り、最期の時を迎えた場所、フリーダ・カーロ博物館の陽光の当たる中庭や、風通しのよさそうな明るい室内で、石内さんが撮影しています。何万点もある遺品の中から、即決で選び、撮らないものは「アディオース!」と除けていく姿勢の軽々と楽しげなこと。そのキュレーションの見事なこと。「石内さんも、最初はフリーダ個人を捉えていたんですけれど、遺されたものの中にある色彩とか質感、ディテールから、フリーダ個人より、もっと奥にあるメキシコの歴史とか文化に、どんどん着眼されていったんです。ただの記録では映画にする意味がないので、そういった石内さんの目には見えない仕事も可視化するというか、映像で伝えたいなあという思いがあったので、翌年、もう一度メキシコを訪れたんです」フリーダの母親の出身地オアハカで死者の祭りを撮影し、フリーダが日常的に愛用した伝統衣装テワナドレスを作る刺繍家の女性たちを取材するなど、映像に民俗色豊かな色彩感と文化の奥行が加わりました。テワナドレスは母から子へと受け継がれるとか。女性の手仕事も脈々と受け継がれ、「着物と同じね」と石内さんが撮影中に共感するシーンも。フリーダの強さは日常をちゃんと送っている生命力の強さ「フリーダは衣装持ちですが、その中でもテワナドレスは圧倒的に多い。痛みをあれだけ抱えた人だったので、衣装に守られているという感覚があったんじゃないでしょうか」1937年ヴォーグに載った時に着ていたグリーンのブラウスが、お洒落で驚きました。「自分をアピールするために、戦略的だったとは思うんですけれど、それだけじゃなく本当に大事にしていたんでしょうね。ただ、彼女はセルフプロデュースが本当に上手い人だと思います。本人は身長150cm足らずなのに、あれだけ大きく見せるというか、強く見せるというのは、衣装の力が大きいと思いますね」フリーダは、洗練された独自の感覚でテワナドレスを注文していたので、現地の刺繍家たちからは、あれは伝統本来のものではない、と言われているようです。「センスいいですよね。石内さんも着物を着崩して着るんですけれど、本当にかっこいいと思います」石内さんが淡々と撮影した写真は、光や風と柔らかく重なり合って、まるで家族の遺品をファミリーで見ているような親密な日常感に繋がってくるから不思議です。「石内さんもおっしゃってましたが、フリーダはいろいろセンセーショナルな物語を抱えていましたけれど、彼女の強さはそういうものじゃなく、あれだけの障害を抱えながら、ちゃんと日常生活を送っていた強さだと。映画でも、フリーダの日常の生命力を描きたいと思っていました。彼女は衝撃的な絵を描いていますが、タッチとか見るとすごく繊細で可愛らしかったりするんですよね。実物を見ると、よりそれは感じました」そんなフリーダの遺品を、あちらのスタッフが「こんなところで撮るの?」と驚くほど、石内さんはカジュアルに撮影していたとか。「ものを撮ってる感覚ではなく、身体としてものを撮れる人だから、フリーダ像を一回とっぱらって、もう一回、普遍的な女性というものを立ち上げるんだという意識は、最初から持っていたと思うんです」と小谷監督。撮影中も、「フリーダ、そうだったの」と話しかけながら撮影していたという石内さん。メキシコに行く前から話しかけていたそう。「フリーダ、呼んでくれてありがとう」と。そんな女性二人の息吹が伝わってくる「フリーダ・カーロの遺品」、自分に投影して観てみませんか? きっと新しい発見があり、生きる勇気が湧いてくるはずです。ドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 ― 石内都、織るように』2015年8月からシアターイメージフォーラムほか 全国順次公開監督・撮影:小谷忠典 出演:石内都 予告編: 小谷忠典(こたに・ただすけ)1977年大阪出身。絵画を専攻していた芸術大学を卒業後、ビュジュアルアーツ専門学校大阪に入学し、映画製作を学ぶ。『子守唄』(2002)が京都国際学生映画祭にて準グラン プリを受賞。『いいこ。』(2005)が第28回ぴあフィルムフェスティバルにて招待上映。初劇場公開作品『LINE』(2008)から、フィクションやドキュメンタリーの境界にとらわれない、意欲的な作品を製作している。最新作『ドキュメンタリー映画100万回生きたねこ』(2012)では国内での劇場公開だけでなく、第17回釜山国際映画祭でプレミア上映後、第30回トリノ国際映画祭、 第9回ドバイ国際映画祭、第15回ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭、サラヤ国際ドキュメンタリー映画祭、ハンブルグ映画祭等、ヨーロッパを中心とした海外映画祭で多数招待された。映画写真 ©ノンデライコ2015
2015年07月24日大人の純愛…という言葉からどんな恋愛を思い浮かべますか。淡々と落ち着いた節度ある感情? 激しくドラマティックな官能? ワケありで他人に言えない関係? 大人の事情が絡んで複雑に交錯しているかもしれません。純愛の定義は難しいけれど、でも、決して駆け引きをしないこと、そして安全地帯に逃げ込まないのが純愛ではないでしょうか。酸いも甘いも噛み分けられるからこそ、ピュアさの純度が高くならざるを得ない恋。せつなさで胸が締めつけられる感覚は、私たちをダイレクトに刺激してくれるキレイの源だと思うのです。枯れるには早すぎる! 乾きがちな心と身体に潤いを行き渡らせてくれる、大人の純愛映画を3本ご紹介しましょう。タンゴとともにほとばしる恋▼ 愛されるために、ここにいる監督:ステファヌ・ブリゼ出演:パトリック・シェネ.アンヌ・コンシニ.ジョルジュ・ウィルソン離婚して一人暮らしをしている、人生に疲れた中年男ジャン=クロード(パトリック・シェネ)は、裁判所の司法執行官。医者に運動不足を指摘され、オフィスの窓を開けると音楽が聞こえてくる近所のタンゴ教室に通い始めます。そこで出会ったのが、結婚を控え、ウェディングパーティーでタンゴを踊るため、レッスンに通っているフランソワーズ(アンヌ・コンシニ)。彼女の婚約者は小説の執筆に追われていて、二人はすれ違ってばかり…。堅物で不器用なジャン=クロードが、アルゼンチンタンゴの調べとともに、フランソワーズと恋に落ちていく様子が自然で美しく、ぎこちなく踊るシーンから目が離せません。ジャン=クロード演じるパトリックが、インタビューで「主導権を握るのは女性です。男は居心地の悪さを感じながらも女性について行く。自分が何を求めているかわからないこともあるのに、女性は常に自分の感情に素直なんです」と語っているのも興味深いものが。一見、地味な恋愛映画ですけれど、セザール賞に主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞と3部門もノミネートされた、フランス人好みの名作。やるせない哀愁と孤独、そして、シンプルな感情が心を打つ純愛映画。心の水脈がヒタヒタとみなぎってくるでしょう。女性作家ジョルジュ・サンドと年下の詩人ミュッセの恋愛▼ 年下の人監督:ディアーヌ・キュリス出演:ジュリエット・ビノシュ, ブノワ・マジメル, ステファノ・ディオニジ, ロバン・レヌッチ, カリン・ヴィアール19世紀、ロマン主義花咲くフランス。男尊女卑だった時代に、奔放で恋多き女性作家ジョルジュ・サンド(ジュリエット・ビノシュ)と詩人アルフレッド・ミュッセ(ブノワ・マジメル)の激しい愛の葛藤が描かれます。1999年の作品で、当時25歳のブノワ・マジメルがセクシーで美しい。役柄では6歳年上、実際は10歳年上のジュリエット・ビノシュと、この共演がもとで結婚するのですから、いかにドラマティックな映画かわかるはず。ディアーヌ・キュリス監督は、「私はジョルジュ・サンドを通して、すべての自由な女性を讃えたかった。ある日、『もうたくさんよ!』と言って立ち上がることのできるすべての女性を」と語っています。クリスチャン・ラクロワの衣装も美しくゴージャスで圧巻。文学好きでなくとも愉しめる、現代にも通じるせつない恋をぜひ堪能してください。キレッキレの純愛のせつなさに酔いしれる▼灯台守の恋監督:フィリップ・リオレ出演:サンドリーヌ・ボネール, フィリップ・トレトン, グレゴリ・デランジェール“世界の果て”と呼ばれるブルターニュの小さい島。そこで生まれ育ったマベは、灯台守の夫イヴォンと暮らしていますが、そこにアルジェリア帰還兵のアントワーヌが、新人の灯台守として赴任してきて…。最初の視線で、何かを感じ合う二人。閉鎖的な過疎の村という環境と、荒れ果てた海の中に立つ灯台という絶景なロケーションの中、絡み合う視線だけで描かれていく禁断の恋が見事です。マベを演じるサンドリーヌ・ボネールは、派手な美人ではないのに、女の人っていいなあ、と同性にも感じさせる魅力で惹き込まれます。穏やかだけれど何かを秘めているアントワーヌとの恋が夫に知られてしまい…。嵐の夜、二人一組で灯台守をすることになったアントワーヌとイヴォン、荒れ狂う波に飲まれそうになるアントワーヌを、イヴォンは助けるのか? ドキドキが止まらない、これぞまさしく大人の純愛! お薦めです。この3本に共通するのは、恋する視線の清冽さ。視線が語る純愛は、大人度が高くてせつないです。恋していてもいなくても、濃密で繊細な感覚が美意識を研ぎ澄ませてくれる映画たちで、感性の潤い美人になりましょう。
2015年07月23日「アポロ11号着陸映像は捏造で、キューブリックが製作したらしい」という都市伝説を題材にしたコメディ映画『ムーンウォーカーズ』が11月に公開されることが決定した。その他の情報アポロ11号は1969年に月面に到着し、その模様は中継されて全世界の人々を驚かせた。しかし、この中継映像はねつ造だったという陰謀説を信じている人はいまだに存在する。本作はそんな陰謀説を題材にしたコメディで、月面着陸を成功できないNASAに愛想をつかしたアメリカ政府が映画『2001年宇宙の旅』を手がけた巨匠スタンリー・キューブリック監督に月面着陸映像のねつ造を依頼するため、CIA諜報員・キッドマンを彼が住むロンドンに送りこむところから始まる。しかし、ベトナム戦争帰りで映画にまったく詳しくないキッドマンは、偶然、キューブリックのオフィスにいたダメ男のジョニーに金をダマしとられ、その金を奪還する過程で、なぜかジョニーとタッグを組んで“ねつ造計画”に挑むことになる。このほど公開された画像は、新聞の号外風のデザインで、映画が壮大にしてブラックな笑いに満ちた作品であることを感じさせるデザインだ。アポロ計画、ねつ造、キューブリック、CIAとダメ男のコンビ……などコメディ映画ファンには気になる要素が揃った本作は11月から公開になる。『ムーンウォーカーズ』11月14日(土)より 新宿シネマカリテほかでロードショー
2015年07月21日そろそろ夏休みが視野に入ってきましたね。ヴァカンスといえば旅! 旅には常に憧れがありますが、ただの観光旅行ではない、アラフォーだからこそ愉しめる、一癖も二癖もある旅にまつわる映画で、一足早いヴァカンスを体験してみませんか? 旅先では、どこに宿泊するかが重要な要素。大人だから味わえるホテルライフの魅力は、私たちを非日常へと誘ってくれるはず。今回は、「ホテル」がキーワードの映画3本をご紹介しましょう。それでは、行ってらっしゃい! Bon Voyage♪世界のラグジュアリーホテルを満喫▼はじまりは五つ星ホテルから監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ出演: マルゲリータ・ブイ、ステファノ・アコルシ、レスリー・マンヴィル 40歳、独身。職業は超高級ホテルの覆面調査員。仕事は5つ星、でも私生活は1つ星…!?と紹介される主人公は、ローマ在住のアラフォーど真ん中、イレーネ。世界に名だたる5つ星ホテルが、星の数にふさわしいサービスを提供しているかどうを調査するため、彼女が実際に宿泊して世界中を巡るという、そこだけ聞くと夢のようなストーリーです。そこに、彼女が独身でいることを心配する妹で、二人の娘を持つシルヴィア、元婚約者だけれど今は親友化していて、若い女性と“できちゃった婚”しそうなアンドレア、旅先での出会いと別れなどが重なり、自分の生き方を模索しながらドラマティックに物語が展開していきます。世界80ヶ国、430軒以上のホテルが加盟するザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールドの協力のもと、フランスのオテル・ド・クリヨン、イタリアのフォンテヴェルデ・タスカン・リゾート&スパ、スイスのグシュタード・パレス、モロッコのパレ・マラケシュなど、実在ホテルでのロケが眼福です。ホテルの従業員に“ミステリーゲスト”と畏れられるホテル調査員の“秘密のチェック10項目”に従って、映画を観るのも一興かも。魅惑のインドで繰り広げられるドラマと、心に響く言葉たち▼マリーゴールドホテルで会いましょう監督: ジョン・マッデン出演:ジュディ・デンチ、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソンイギリス人の熟年男女7人が、インドの豪華リゾートホテルで魅惑の日々を…という謳い文句に惹かれて来てみたら、将来、豪華になる“予定”の個室に扉もないホテルだった…という地味~な設定なのですが、これが予想を裏切るおもしろさ!インドの異文化の渦に飛び込んで、違和感からすぐイギリスに帰りたいと嘆く人、あちこちを訪れて現地に溶け込もうとする人、インドに特別な思いを持つ人など、7人の反応は様々。これって、私たちの普段の生活にも当てはまりませんか? そして、初めての長旅だけれど「何事もチャレンジ! 何事も楽しまなければ!」という姿勢を持つ主人公イヴリンを、オスカー女優のジュディ・デンチが好演。悲喜こもごもが織り成されます。それぞれのドラマと、インドの光、色彩、動物、すさまじい数の人々、子供たちの笑顔などが交じり合い、「“生”を権利ではなく、恩恵と思うインドが心に響いた」と語る登場人物の言葉がそれこそ心に響いたり、同じく「リスクを嫌って冒険を避ける者は何もせず、何も得ない」という言葉に考えさせられたり。インドは、“インドに呼ばれた人しか行けない”…と聞いたことがありますが、この映画を観て、初めて行ってみたくなりました。ミステリーに巻き込まれる“伝説のコンシェルジュ”▼グランド・ブダペスト・ホテル監督:ウェス・アンダーソン出演: レイフ・ファインズ、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジュード・ロウヨーロッパ最高峰と謳われたグランド・ブタペスト・ホテルの“伝説のコンシェルジュ”グスタフ・Hが主人公。高齢マダムの夜のお相手までこなすプロフェッショナルですが、ある日、彼の長年のお得意様、マダムDが殺されたことから事件に巻き込まれて…。ヨーロッパ大陸を逃避行しながら真犯人を探す、というミステリータッチのストーリー。愛弟子のベルボーイ、ゼロの協力と、コンシェルジュの秘密結社ネットワークを駆使するグスタフ。危機一髪のときに電話で助けを求めると、世界の高級ホテルのコンシェルジュたちがどんなVIPと応対中でも、彼の電話には出るシーンにワクワクしました。美しい風景に囲まれた優雅なホテルのインテリアとゴージャスな衣装にうっとり。主演のレイフ・ファインズはじめ、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ジュード・ロウ、ティルダ・スウィントンら豪華スターが勢揃い。ウェス・アンダーソン監督らしいポップなスパイスも効いて、見どころ満載。まさに5つ星のミステリーコメディです。この3本で、忘れられない旅のホテルをぜひ堪能してください。・ 「はじまりは五つ星ホテルから」 ・ 「マリーゴールドホテルで会いましょう」 ・ 「グランド・プダペスト・ホテル」
2015年06月29日毎日が変わり映えのしない生活のように思えてきたら、パリが舞台の映画を観て、気分をリフレッシュさせませんか? 美しい街並みもさることながら、世界有数のお洒落都市なのに、常に自分らしくあろうとする自然体な人々が魅力です。ウィットに富んだ会話や、ちょっとしたスカーフの巻き方やコートの着こなしのこなれていることといったら!何気ないシーンを観ているだけで世界観が広がります。相手の自由を尊重し、距離感の取り方が大人なのに、自分の意見も素直に主張し、それが、時には相手の人生に大きく食い込むことも。そんな生き生きした会話の妙が楽しめる映画を3本、ご紹介しましょう。美しく由緒あるパリの街並みに、旅する気分に!▼モンテーニュ通りのカフェ監督:ダニエル・トンプソン出演:ヴァレリー・ルメルシエ, セシル・ド・フランス, アルベール・デュポンテルパリ8区。どこからでもエッフェル塔が見えるモンテーニュ通りは、劇場、高級ホテルのプラザ・アテネ、有名メゾンなどがひしめくスノッブな地区。その通り沿いの由緒あるカフェで、地方からパリに憧れてやってきたジェシカがギャルソンとして働き始めます。カフェに集うのはクラシックに疲れたピアニスト、資産すべてをオークションにかけようとしている美術コレクター、自分のキャリアにあきたらない女優など、多彩な面々。彼らの人生が交錯する中、ジェシカの素直なキャラと笑顔がみんなを和ませるのですが…。彼女が客と交わす会話から垣間見る “見栄を張らないピュアさ” が印象的です。美術コレクターからブランクーシの有名な彫刻「接吻」を見せられて、「素敵ね。見てると恋したくなる」、ピアニストにミント水を運んだときに「コンサートには行かないの?」と聞かれて、「教養がないからクラシックはわからないの」と答えるジェシカの素朴な佇まい。演じるセシール・ド・フランスのボーイッシュな魅力に、きっと元気をもらえます。“飾らない”トレンチコートの着こなしを学ぶ▼僕の妻はシャルロット・ゲンズブール監督:イヴァン・アタル出演:シャルロット・ゲンズブール, イヴァン・アタル, テレンス・スタンプ監督はシャルロットの実の夫、イヴァン・アタル。彼がスポーツ記者役を演じ、女優を妻にしてしまったヤキモチ焼きの夫の悩みを描きます。両親がジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールという生まれながらのセレブで、どこにいてもサイン責めに合う妻。撮影現場を訪ねれば濃厚なラブシーンや全裸シーンが…。リアル過ぎてちょっと心配になるストーリー。気取らず自然に振る舞う1971年生まれのシャルロットがカッコいい!きちんとドレスアップしてヘアメイクも決めて、ネイルもばっちり…みたいな日米の女優さんを見慣れていると、シャルロットのあまりの飾らなさに驚くかも。とはいえ、わたしにとっては、彼女はファッションアイコンです。かつて映画を観終わった後、彼女のトレンチコートの着こなしにインスパイアされ、その足でバーバリーに飛び込みました。“いかにもイイ女風”じゃない、ユル~い着こなしが素敵! ぜひご確認ください。フランス人らしさが際立つ小粋な映画。パリジェンヌの神髄がわかります。ブラッド・メルドーの音楽も素敵なので、サントラもお薦めです。大人の男女の会話にドキドキ▼シェフと素顔と、おいしい時間監督:ダニエル・トンプソン出演:ジュリエット・ビノシュ, ジャン・レノ, セルジ・ロペス舞台は、ストで飛行機全便が飛ばなくなったシャルル・ド・ゴール空港。DV彼氏から逃げてきたローズ(ジュリエット・ビノシュ)は、トイレに携帯電話を落としてしまうというアクシデントがきっかけで、フィリップ(ジャン・レノ)に出会います。化粧が濃く感情的なタイプのローズは、繊細で不器用なフィリップの好みとは正反対。追いかけてきたDV彼氏から助けてあげた行きがかり上、二人は空港近くのホテルで一夜を過ごすはめに…。ルームサービスでディナー中、出会って数時間とは思えない、ドキドキするような男女の会話が繰り広げられます。ずっと前から別れを意識し、DV彼氏に置き手紙をして出てきたと話すローズに「じゃあ、その間、もう愛してない男と感じたフリをしていたの?」と思わず聞いてしまうフィリップ。「本当のことを言うわ。私はとても長い間、感じたフリをしてたのよ。まだ愛してる男と…」と応じるローズ。その後、オリーブオイルが顔にかかり、バスルームで素顔になって戻ってきたローズを見たときの、フィリップの顔は見逃せません。ガーリーなスッピンの顔は、フィリップのもろ“タイプ”だったのですから!そこから展開する大人のラブストーリーが必見。フランスを代表する國際的トップスター二人の初共演という触れ込み以上に、心が深く満たされるハッピーエンドは見事です。たったワンシーンで、人生を味わい深いものにしてくれる映画たち。パリが舞台のこの3本は、迷いがちな私たちの感性と美意識をキレイに磨いて癒してくれるでしょう。・ 「モンテーニュ通りのカフェ」 ・ 「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」 ・ 「シェフと素顔と、おいしい時間」
2015年06月25日4月はやる気満々だったのに、5月を迎えたら、何となく気持ちが晴れない…ということはありませんか? あまりに不調であれば専門家に相談すべきですが、ちょっと落ち込んでいるくらいなら、気分をスカッと爽快にしてくれるDVDを観て、モチベーションをアゲましょう。“よっしゃ~っ!”っと弾みがつけばしめたもの。お薦めの映画3本をご紹介します。あり得ない展開に快哉を叫びっぱなし▼最強のふたり監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ出演:オマール・シー、フランソワ・クリュゼ2012年公開のフランス映画ですが、“フランス映画界 歴代1位”という呼び声を聞かなければ、普段なら観ないかもしれないマッチョな邦題。原題はというと「intouchables」で、直訳だと「触れることのできないものたち」という意味です。舞台はパリ。不慮の事故で首から下がマヒした、大富豪フィリップの介護者選びの面接に、スラム街出身の黒人青年ドリスが、生活保護の申請に必要な不採用通知を目当てに訪れるところからスタートします。おためごかしを一切言わないドリスに新鮮味を感じたフィリップは、彼を採用。そこから展開する、背景も趣味も真逆の二人が織りなす破天荒な冒険譚のおもしろいこと! 最初は衝突ばかりだった二人が、次第に共犯者意識を深め、驚異のカーチェイスやパラグライダー体験も。「彼だけは私を対等に扱う」というフィリップの言葉が刺さります。おすすめは、フィリップが招いたオーケストラ演奏の後に、ドリスがアース・ウィンド・アンド・ファイアーをかけてダンスを見せつけるシーン。ドリス役のオマール・シーは、最初はテレていたのにいざとなったら体が自然に動いて、奇跡的なダンスシーンをワンテイクで決めたそう。実話がもとになっているというのが驚きの、元気になれる1本です。不自然なほど多発するホームラン数にスカッ!▼ナチュラル監督:バリー・レヴィンソン出演:ロバート・レッドフォード、ロバート・デュバル野球に特に関心もなく、スポーツオンチのわたしが唯一、ハマッたスポーツ映画が『ナチュラル』です。名優ロバート・レッドフォードが若い頃、といっても40代前半、訳あって30代半ばでメジャーリーガーになる夢を叶え、“伝説の人”となった野球選手を演じています。アメリカの作家バーナード・マラマッドの小説を映画化した、1984年の作品。天才野球少年だったロイは20歳になり、愛する女性アイリスにしばしの別れを告げた後、プロ球団のテストに向かう途中、とんでもない事件に巻き込まれます。10数年のブランクを経て、ようやくスカウトに見いだされ、最下位の球団に入団した彼は、とにかくホームランを打って打って打ちまくり、球団はトップに。ところが、なぜか女性の色香に迷うと打てなくなり、彼本来のナチュラルな生き方に戻ると、またホームラン…という展開。どこか神話めいたファンタジーを感じながらも、投げる球全部をホームランで打ち返すという、文句なしにスカッとする映像から目が離せません。アイリスとの再会、最後のバッターボックスの奇跡…レッドフォードゆえの誠実さ、真摯さがリアリティをもたらす感動映画です。武闘派シャーロックのカッコよさに脱帽▼シャーロック・ホームズ シャドウゲーム監督:ガイ・リッチー出演: ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウロバート・ダウニーJr.扮するホームズ、その相棒ワトソンはジュード・ロウと、イケメン二人が登場する『シャーロック・ホームズ』(2009年)。『シャドウゲーム』(2011年)はその2作目となります。わたしはもともとコナン・ドイルの原作への思いが深く、「イマドキのチャラい映画だったら許さないぞ」みたいな色眼鏡で観たのですが、とんでもない! すっかりファンになってしまいました。1作目を観ていなくても問題なく楽しめます。世界各地で多発する連続爆破事件を追う、天才的名探偵ホームズは、“もう一人の天才”宿敵モリアーティ教授との決戦へ。書斎派探偵のイメージが強かったホームズが、武闘派のやんちゃさが強調され、ダイナミックな展開は007も真っ青のカッコよさ。ガイ・リッチー監督のセンスに度肝を抜かれたのは、銃口から向こう側を覗くなど、細部からズームする独特の映像美。そして、今まで見たことがないエッジの効いた森の中の銃撃シーン。全編をエキゾティックに彩るロマ(ジブシー)風の魅惑的な音楽。新感覚アクション・エンタテインメントと謳われるのも納得です。気分がアガること間違いなし!もちろんこの3本、五月病でない方もぜひご覧くださいね。・ 「最強のふたり」 ・ 「ナチュラル」 ・ 「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」
2015年05月21日すっきりとシンプルな雑貨、大胆な色使いのテキスタイル、自然がモチーフの小物など、北欧のモダンなデザインが、私たちの生活に浸透してからずいぶん経ちますよね。日本的な美意識にもどこか通じ、お洒落の代名詞のひとつ、といっても過言ではないかもしれません。女子はみんな北欧デザインが大好き!見ているだけで癒されるのですから。そんな北欧が舞台で、しかもお洒落なだけでなく、ライフスタイルや生き方にもコツンと一石を投じてくれて、心に深く響く映画を味わってみませんか?スウェーデン、デンマーク、フィンランドで撮影された選り抜きの映画を3本、ご紹介します。自分を貫き、夢をあきらめない生き方▼ストックホルムでワルツを監督:ペール・フライ出演:エッダ・マグナソン、スベリル・グドナソン、シェル・ベリィクヴィストほか1960年代、スウェーデンの田舎町で電話交換手をしながら、娘を育てるシングルマザーのモニカはジャズシンガー志望。両親に娘を預かってもらう度、厳しい父親に叱られ、娘に寂しい思いをさせつつも、シンガーへの夢を実現していきます。偶然、歌を聞いてもらったエラ・フィッツジェラルドに「人真似はやめたら」と鼻で笑われ、落ち込むモニカ。英語でなく母国語でジャズを歌ったらそれが当たり、巨匠ビル・エヴァンスと彼の「ワルツ・フォー・デビー」を、ジャズの聖地ニューヨークで共演するまでに。世界が注目する中、ずっと反対していた父親から電話がかかるシーンは涙なしには観れません。実在したモニカ・ゼタールンドという歌手の存在を、この映画を観るまで知りませんでした。彼女を演じるエッダ・マグナソンのきれいなこと!歌が上手いこと!時に傲慢なまで自分を貫き、傷ついても夢をあきらめないひたむきさに打たれます。60年代の北欧デザイン、それこそお洒落なインテリア、雑貨、ファッションにもインスパイアされるはず。愛と孤独を描く大人のラブストーリー▼アフター・ウェディング監督:スサンネ・ビア出演:マッツ・ミケルセン, シセ・バベット・クヌッセン, スティーネ・フィッシャー・クリステンセン ほかコペンハーゲンに暮らすヘレネは、優しく裕福な夫ヨルゲンと結婚を控えた娘アナ、まだ幼い男の子たちと幸せな日々を送っていました。ヨルゲンが、仕事の関係で出会った男ヤコブを、たまたま娘の結婚式に招待するまでは・・・。ヤコブはヘレネが20年前に別れた恋人で、実はアナの父親だった、という衝撃の設定がデンマークの美しい風景を背景に描かれます。果たして夫の意図とは?忘れられない過去を持つ男性と、幸せな家庭に突如訪れた容赦ない現実。ドンデン返しの続く展開から目が離せません。時に残酷と評されるくらい、人間の深く鋭い描写に定評のある女性監督、スサンネ・ビアの映画は、人生の酸いも甘いも噛み分けたアラフォー女性だからこそ共感できる傑作揃い。アカデミー外国語映画賞受賞の「未来を生きる君たちへ」、ロマンティックコメディの最新作「愛さえあれば」もお薦めです。風景も人間も。北欧の魅力をすべて教えてくれた!▼かもめ食堂監督:荻上直子出演:小林聡美, 片桐はいり, もたいまさこ ほか「イタリアならパスタとピザ、インドならカレー、ではフィンランドなら?」「サーモン?!」という会話のやりとりが映画の中にあるのですが、サケを愛好する日本との共通点から、ヘルシンキで食堂を開くことにしたというサチエ(小林聡美)。旅行で訪れたミドリ(片桐はいり)とマサコ(もたいまさこ)がひょんなことで集い、店を手伝い始めます。大事件が起こるわけでもないのに、小さな出来事が淡々と紡がれる日常が魅力的。ゆるいようで一本通った生き方が潔いサチエを筆頭に、役者陣の存在感が光ります。この映画のもう一つの主役は何といっても料理。日本のソウルフード、おにぎりを始め、焼きザケ、トンカツ、焼き立てのシナモンロールは、美味しい匂いが漂ってきそうで生ツバもの。「この国の人は、どうしてこんなにのんびりして見えるんでしょうね?」という問いに、「森があるから」と答えるフィンランド人。ストーリーとともに、白夜、森、マルシェ、トナカイの肉…と、観光気分も味わえます。客の全く訪れなかった店に少しずつ人が集まり始め、満席になった時は思わず拍手したくなりました。オールフィンランドロケが美しい心温まるヒューマンドラマ。どこを見ても北欧の魅力に開眼させてくれるでしょう。美しいビジュアルも楽しみながら、人間や人生にふと思いを巡らせたくなる映画ばかり。北欧ならではの爽快感と深い人生観を、この3本でぜひ堪能してください。
2015年04月23日カラリと乾いた爽やかな風と、キラキラ輝く新緑。春はピクニックに最適なシーズン。日差しをたっぷりあびながら、美味しいワインを飲んで友だちとおしゃべり…。そんなステキな体験をしてみたいですよね。今回はピクニックにぴったりなワインをひもとく映画を3本紹介します。カリフォルニアのワイナリーを巡る“中2病”な男たちに乾杯!▼サイドウェイ監督:アレキサンダー・ペイン出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャージほか 【ストーリー】2年前の離婚のショックから立ち直れない、小説家志望のワインオタクな主人公マイルス(ポール・ジアマッティ)は、大学時代からの悪友ジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)から結婚前に独身最後の旅行へ行きたいと連れ出され、カリフォルニアワインのワイナリーを巡ることに。旅先では出会いあり、ハプニングあり、素敵なワインがあり、マイルスの人生にささやかな希望の光が見えてきます…。【見どころ】マイルスとジョージのふたりの珍道中がとにかく笑えます。女好きのジョージの破天荒さと、それに振りまわされるマイルスは、まさに中2病そのもの。そして、劇中でマイルスが披露するピノ種やカベルネ種に対するワインのうんちくの凄さにも驚きます。さらにプレミアがついているワインも次々登場するので、ワイン好きにはたまらない1本です。ピクニックシーンも素敵なので、ぜひ参考にしてください!フランス・ボルドーの危機は意外なところに!▼世界一美しいボルドーの秘密監督:デヴィット・ローチ、ワーウィック・ロスナレーション:ラッセル・クロウ【ストーリー】フランスワインの産地ボルドーの歴史と現状を紹介するドキュメンタリー映画。長らく富と権力の象徴とされてきたボルドーワインは、時代とともに欧米の顧客は激減。その反面、中国などでは価格が高騰し、需要と供給のバランスが取れなくなっていた。そんな異常事態にボルドーの醸造家たちは頭を悩ます…。【見どころ】日本でもボルドーワインは有名ですが、そのボルドーで今、何が起こっているのかをワイン作りの現場だけでなく、中国での取材も交えて紹介しています。さらに、ワイン評論家や、ワインコレクター&ワイナリーのオーナーでもあるフランシス・F・コッポラ監督らなどの著名人も登場。ナレーションはラッセル・クロウが担当しているのも注目です! 北海道でワイン造りに燃える兄弟の物語▼ぶどうのなみだ監督:三島有紀子出演:大泉洋、安藤裕子、染谷将太ほか【ストーリー】北海道・空知に父が遺した小麦畑と葡萄の樹のそばで、兄のアオはワインをつくり、ひとまわり年の離れた弟のロクは、小麦を育てている。アオは“黒いダイヤ”と呼ばれる葡萄“ピノ・ノワール”の醸造に励んでいるが、なかなか理想のワインはできない。そんなある日、キャンピングカーに乗ったひとりの女性が現れ……。 【見どころ】コミカルさが人気の大泉洋ですが、本作ではピノ・ノワール作りに奮闘する真面目男子を好演。小麦を育てている弟役の染谷くんもキュート。そして、注目なのが兄弟ふたりで作るご飯がどれも美味しそうで見ていてお腹が空いてきます。そして美味しそうな料理とワインを外に持ち出し、キャンドルを灯しながらディナーを楽しむシーンは、みていてうっとりしてしまう美しさです。この映画のモデルとなったのは、北海道にある「宝水ワイナリー」。積雪2mを超える雪国でワインを作り続けているワイナリーで、RICCAブランドなどを展開しています。4~5月はワインの試飲イベントなどが各地で開催されます。イベントに行く前に映画で知識を学んでおけば、さらにワインを楽しく深く味わえるはず。お気に入りのワインを持って、ピクニックに出かけるもよし、イベントで試飲を楽しむもよし。カラッとした気候はすぐに終わってしまうので、ステキなワイン体験は今こそ狙い目です!
2015年04月21日アメリカでアカデミー賞授賞式が開催され、映画熱が高まっている人も多いはず。今回は、アカデミー賞ノミネート作のなかから、学者をテーマにした映画をピックアップ。学者の偉業を知ることができる作品ではありますが、注目すべきは彼らを支える女性たちの存在です。強く優しく、愛する男性をサポートする女性の魅力を学んでみましょう。 繊細な男性には、ひたすら寄り添ってサポート!▼「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」監督:モルテン・ティルドゥム 出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイまずは、「SHERLOCK」で人気沸騰となった、ベネディクト・カンバーバッチ主演映画からご紹介。ベネティクト・カンバーバッチが演じるのは、実在の数学者アラン・チューリング。キーラ・ナイトレイは、彼を支える女性ジョーン・クラーク役として登場します。 【ストーリー】数学者のアラン・チューリングは、ドイツ軍の暗号エニグマを解読するという政府の極秘任務に就く。自信家で不器用なチューリングは解読チームの協力を拒み、ひとりで電子操作の解読マシンを作り始めます。暗号読解をゲーム感覚に捉えていたチューニングは、次第にこれはゲームではなく人の命を救うことに気づきます。そして彼は秘密の作戦に身を投じることに……。【ココが“内助の功”】チューリング(ベネティクト・カンバーバッチ)は自分で「私は世界一の数学者」と公言するほどの自信家。そんな彼を支えるのが、解読チームの一員のジョーン(キーラ・ナイトレイ)。彼女はチューリングの論争相手でもあり聡明な科学者です。そんな志の高いジョーンはチューリングの良き理解者となっていきます。 彼が恐怖と落胆に震えていれば優しく寄り添い、自信をなくせば手を取って励ます。同じ数学者であるジューンがチューリングの気持ちどう寄り添っていくのかを見ていくことで、ナイーブな男性の励まし方がわかるはず。一生支えるという覚悟を持つべし!▼「博士と彼女のセオリー」監督:ジェームズ・マーシュ出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ続いては、物理学者ホーキング博士を描いた作品をピックアップ。ホーキングを演じるのは、「レ・ミゼラブル」でマリウス役を熱演したエディ・レッドメインです。ホーキングの妻、ジェーンは「アメイジング・スパイダーマン2」で注目度を上げたフェリシティ・ジョーンズが演じます。【ストーリー】ケンブリッジ大学大学院で理論物理学を研究するスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は、パーティでジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出逢います。ふたりは互いに引かれあい恋に落ちます。しかし病魔が彼を襲い、彼は寮にこもってしまう。そこで立ち上がったのがジェーン。彼女はホーキングとの愛を貫く覚悟を決め、やがてふたりは結婚します。しかし、彼らを待地構えてのは数々の試練だった…。【ココが“内助の功”】 見所は、ホーキングを支えるジェーンの生き方。中途半端な気持ちでは決してできない大きな決断をジェーンは何度もするのですが、愛する男性をサポートすると覚悟したら、どんな試練をも乗り越える。この作品からは、にこにこハッピーな幸せだけではない、厳しく険しい愛の一面を知ることができます。 ジェーンをそこまで強くさせたのは、苦悩しながらもキラキラと輝きながら、ひたすら研究にいそしむホーキングがいるからなのでしょう。才能あふれる男性に女性はともに夢を描き「私が支える!」という覚悟が芽生えるのかもしれません。 学者のそばに強いオンナあり!▼「ビューティフル・マインド」監督:ロン・ハワード出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリーアカデミー賞受賞作つながりで紹介すると、ラッセル・クロウ主演の「ビューティフル・マインド」もアカデミックな男性を支える女性が登場します。94年にノーベル経済学賞を受賞した実在の人物、ジョン・ナッシュの半生を描いたドラマ。2001年にアカデミー賞作品賞など全4部門を受賞しました。【ストーリー】「この世のすべてを支配する真理を見つけ出したい」という欲求にかられ、ひとり研究に没頭するナッシュ(ラッセル・クロウ)は大学のクラスメートからも好奇の目で見られる存在。しかし、ナッシュは画期的な“ゲーム理論”を発見。やがて希望する研究所に採用され、愛する人アリシア(ジェニファー・コネリー)と結婚。しかし、米ソ冷戦下、彼の頭脳が暗号解読という極秘任務に利用され、彼の精神は次第に大きなプレッシャーに追いつめられていく……。【ココが“内助の功”】ナッシュは次第に精神的に追い込まれていくのですが、注目したいのはそんなナッシュを支える妻アリシアの献身さです。天才は時にもてはやされますが、人から避難の目を集めることもあります。そんな時に一緒に立ち向かってくれるのが愛する人の存在。アリシアもナッシュが心を病んでも、ひたすら信じて寄り添う、周りから反発されても信じる。この強さがアリシアのスゴイところです。アカデミックな男性は繊細で自信家で、研究に没頭したら他のことが手に付かない。そんな腕白な少年のような一面があります。そんな大きな少年を支えるには、強さと優しさが必要です。でもその強さと優しさを発揮する相手を間違えると、相手が単なる甘えん坊になっちゃうので要注意!相手をよく見極めて発揮してみてくださいね。
2015年02月19日年齢を重ねると恋愛に対するスタンスが固まってしまっていること、ありませんか?恋愛感情はもう関係ない…なんて思っている人もいるかもしれません。でも、いわゆる“胸キュン”な気持ちは、いかなる時も大切な生きる源ではないでしょうか。人生の酸いも甘いもを噛み分けた大人の女性だからこそ愉しめる恋愛映画3本をご紹介します。年下男子と恋愛するなら?▼「ぼくの美しい人だから」監督:ルイス・マンドーキ 主演:スーザン・サランドン、ジェームズ・スペイダー年下の男性って好き? という話題になると「自分はいいけれど、相手がどう思うか…」と答える女性が多いように思います。自分がどう思うか以前に、年下男のオシリを追いかけるなんてはしたない、という刷り込みがあるのでしょう。でも、この映画のノラは、つい先ほど自分が働くハンバーガーショップの客だった彼とバーで再会すると、酔っている彼の隣りに座り、やがて一夜をともに過ごすことに…。いわゆるワンナイト・スタンド。行きずりの恋?とも言えないような出会いから始まる二人。27歳のエリート広告マンで、教養がありクラシック音楽を愛し、インテリア雑誌から抜け出たみたいなモダンな家に住むキレイ好きな彼、マックスをジェームズ・スペイダーが、43歳で教養もなく部屋はぐちゃぐちゃのノラを、スーザン・サランドンが好演。あり得ないはずの二人の関係が、燃えたり冷えたりしながら進んでいくプロセスがリアルで、だらしない中年女だと思われていたノラが、最終的には、誰にも媚びない凛とした生き方を貫くカッコよさ! 衝撃的なハッピーエンドに年上女性は快哉を叫ぶでしょう。1990年代、マックスに近い年齢で観た時は、「こんなオバサンとアリ?」と感じました。現在は年上女性と付き合うカップルも増えてきたこともあり、まったく違和感を感じません。ただ、自分からいつでも別れを切り出せる、潔い年齢の重ね方をしている真に大人の女性だけに許される恋愛なのかな、と思います。男女間の絶妙な会話術を学ぶ▼「ビフォア・サンセット」監督:リチャード・リンクレイター 主演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー前作「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」では、ユーロトレインの車内で偶然出会い、ウィーンで一夜だけをともにしたアメリカ人のジェシー(イーサン・ホーク)とフランス人のセリーヌ(ジュリー・デルピー)が、別れ際に約束した半年後の再会を果たせないまま、その9年後…という設定の続編がこの映画。作家になったジェシーが、パリの書店で新著「This Time」(あの一夜を描いてます)のプロモーション中、セリーヌと再会し、ニューヨーク行きの飛行機に乗るまでの85分間で、9年間を語る様子が描かれます。前作同様、ほとんど二人の会話だけで進行しますが、セリーヌのアパルトマンを訪れ、彼女がギターを弾いて歌ったり、最初は常識的なきれい事を含んでいた会話がどんどん剥き出しになっていったり…、自然なテンポから目が離せません。主演の二人が、会話のシナリオに関わっているのが納得の素晴らしい展開です。男女の会話の妙味だけでこれほどおもしろいとは! 実際にはセックスしていないのに実にセクシーで、“これぞ極上のエロティシズム”と思っていたら、アメリカの雑誌で「セクシーな映画トップ25」の10位にランクインしていて驚きました。男女の間で、肉体関係はもちろん大事だけれど、一番大切なのは会話ではないでしょうか? 大人の女性なら魅力的な会話がしたい、そういう会話ができる関係でありたい、と思わずにいられません。この映画は、第3作「ビフォア・ミッドナイト」に続くので、そちらもお楽しみに!ピュアな愛情の生命力を教えてくれる▼「ラブソングができるまで」監督:マーク・ローレンス 主演:ヒュー・グラント、ドリュー・バリモア1980年代に一世を風靡したバンド、「ポップ」の元ボーカルで、現在は落ち目のスター、アレックスを演じるのがヒュー・グラント(これだけで既に笑えます)。彼が人気歌手の新曲を作るため、ピアノに向かって苦心する中、植物の水やりのバイトで訪ねてきたソフィー(ドリュー・バリモア)が、ふと口ずさんだ歌詞がアレックスのハートを直撃!そこから恋が始まるラブロマンスの王道映画です。ソフィーの姉ロンダが「ポップ」の大ファンで彼に会って狂喜乱舞したり、遊園地で歌うバイト中のせつない彼をソフィーが励ましたり、ソフィーの過去の失恋が絡んだり、音楽業界の内幕に触れたりと、それこそポップな音楽とともに展開する珠玉のストーリー。すれ違いながらも、真摯にピュアな愛情を注ぎ合う二人の姿勢がダイレクトに刺さりました。ピアノすら弾けなかったというヒュー・グラントの見事な歌と演奏も、さすが役者!と感心させられる見どころのひとつです。実は、これを初めて観たのは、東日本大震災から3日後の深夜のテレビでした。自粛で通常の番組はオンエアされず、あの怖ろしく悲しい映像と金子みすずの言葉ばかりが流れ、被災地のことを思うと仕事がまったく手につかない、一字も書けない、と懊悩していた時、なぜか深夜2時から突然、この映画が放映されたのです。すがりつくような思いで観て、そして、生き返りました。後年、何度観てもその感動は変わらず、サントラCDも購入し、未だに視聴しています。恋愛以前、生きる意味さえわからなくなった時に救われ、愛の力で生きる勇気を与えてくれた映画です。これらの映画で、大人の女性ならではこそ味わえる愉しみを満喫してみませんか?
2015年02月17日2月14日はバレンタインデー。学生時代のように片思いの相手に告白するドキドキ感も素敵ですが、大人の女性たるもの、心を豊かにする恋にときめきたいもの。ちなみに、人はときめくと美に関わるホルモンが分泌されて肌にツヤが出てくるのだとか。現実に恋愛をしていなくても、イイ男を映画やテレビで見るだけでも効果があるのだそう。ということで、今回はアラフォー世代がときめく、素敵な男性が登場する映画を紹介します。“心に傷のある男”に、母性本能くすぐられます!▼「世界にひとつのプレイブック」監督:デヴィッド・O・ラッセル 主演:ブラッドリー・クーパーまずは注目のイケメン俳優、ブラッドリー・クーパー出演作「世界にひとつのプレイブック」から。ブラッドリー・クーパーは、TVドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」でデビュー。二日酔い男の日々を描いたコメディ「ハングオーバー!」シリーズにも出演。ピープル誌の「世界一セクシーな男」にも選ばれたことがあります。最近では「アメリカン・ハッスル」や、全米で公開中の「アメリカン・スナイパー」にも出演。今やハリウッドでひっぱりだこの俳優です。 【ストーリー】両親と暮らしながら妻との復縁を夢見るパッド(ブラッドリー・クーパー)は、ある日、ティファニー(ジェニファー・ローレンス)という女性と出会います。ティファニーはものすごい美人なのに、過激な発言&行動が目立つ難ありな女性。そんなアウトサイダーな二人が出会い、人生に希望の光を見いだすためにダンスコンテストに出場することに。 【ときめきポイント】見逃せないのが、ブラッドリー・クーパーの肉体。写真を見てもわかりますが、がっちりした体つきがセクシー。そんな肉体を持ちながらも、人生に行き詰まって苦悩する。そのギャップに母性本能をくすぐられること必至です。そして、愛する人を失うという深い悲しみを抱えた姿に、心が痛くなるほど切なくなります。大人になるほどつらい気持ちを正直に表現できない、色々なしがらみの中で生きて行かなくてはならない。その壁を必死に乗り越えようとする二人。思わず「がんばれ!」と応援したくなる、そんな映画です。“影のある孤独な男”の純愛にハラハラ▼「ドライヴ」監督:ニコラス・ウィンディング・レフン 主演:ライアン・ゴスリング続いては、ライアン・ゴスリング主演「ドライヴ」を紹介しましょう。ライアン・ゴスリングは、人形の女性に恋をする「ラースと、その彼女」など、個性的な作品から「きみに読む物語」「ラブ・アゲイン」などの恋愛映画にも多数出演。本作では、裏社会に生きる孤独な男を熱演しています。 【ストーリー】昼はハリウッドのスタントマン、夜は巧みなドライビングテクニックを駆使し、強盗たちを逃がす闇の仕事で生活している通称“ドライバー”。誰とも接することなく孤独に生きる彼は、ある日、同じマンションに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)とその息子と知り合います。次第に惹かれていくドライバーとアイリーン。しかしアイリーンの夫が出所。ドライバーは裏社会の抗争に巻き込まれてしまいます。【ときめきポイント】ドライバーの名前は作中に一度もでてきません。まずそこがクール。それに彼はスタントマンですからドライブテクニックも抜群で喧嘩も強い。そして恋した女性とその息子にはとびきり優しい。強くて優しい男性は女性の永遠の憧れです。そこに孤独という影が加われば、大人の女心を掴まないわけがありません。この映画は、バイオレンス&アクションなシーンもたくさんありますが、純愛作品としても楽しめます! 寂しい夜を癒してくれる“大人なジゴロ”にうっとり▼「ジゴロ・イン・ニューヨーク」監督・主演:ジョン・タートゥーロ最後は、ウディ・アレンとジョン・タトゥーロという個性的な二人が共演している「ジゴロ・イン・ニューヨーク」を。ウディ・アレンといえば、「アニー・ホール」などN.Y.を舞台にした映画を多数撮っている監督。本作は、アレン作品にも出演したことのある、ジョン・タトゥーロが監督・脚本・主演。そしてタトゥーロと友達でもあるウディ・アレンは俳優として出演しています。ほか、シャロン・ストーンやヴァネッサ・パラディなどの大人な女優さんも出演しています。【ストーリー】ブルックリンの本屋をつぶしてしまった店主(ウディ・アレン)が花屋でアルバイトをしている友人(ジョン・タトゥーロ)をジゴロにして、男娼サービスをはじめます。口数が少なく、仕事はきっちりこなすクールなジゴロに女性達はイチコロ。彼の評判は瞬く間に広まります。そんななか、ジゴロはある未亡人からの依頼を受けます。どこか悲しげな彼女にジゴロは心惹かれ、恋心を抱きます……。【ときめきポイント】見所はジゴロを演じるジョン・タトゥーロの渋い演技。見た目はくたびれたおじさんですが、寡黙で必要な時に必要なことしか言わない、女心を掴む台詞が際立ちます。時にタンゴを踊ってくれたり、時に背中を優しくなでてくれたり、彼のジェントルな態度に、気を張ってがんばっている自立した大人女性たちはメロメロに。心を許せる男ってこういう人を言うのでしょうね。そして、シニカルでウィットに富んだ大人たちの会話もこの映画の魅力。「好き」、「愛している」なんて軽く口には出しません。そして、感情の機微を静かに自分の心で消化していく、そんな大人な行動も心を打ちます。過去に傷を負った人、孤独な人、心優しい人、と様々な男性を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。皆さんの心をぎゅーっと鷲づかみにする男性がこの3作で見つかりましたか?パーフェクトじゃなくても、女心をぐっと掴むポイントがあれば、女性はいつだってときめくことができます。素敵な映画と出会って、ときめきホルモンをどんどん増やして、身も心も美しい女性を目指しましょう!
2015年02月03日アジアを中心に芸術性の高い作品を上映し、映画ファンから絶大な支持を得ている東京フィルメックスの本年度ラインナップ発表会見が15日に都内で行われ、特別招待作品としてオープニング上映される『野火』の塚本晋也監督をはじめ、廣木隆一、篠崎誠、高橋泉ら上映作品を手がけた監督4人が出席した。その他の写真塚本監督の『野火』は、第二次世界大戦末期のフィリピン戦線を舞台に、ひとりの日本兵の視点から戦争の恐怖を訴えかけ、今年のヴェネチア映画祭で絶賛された一作で「戦争を描いているが、映画は思想ではなく、あくまで芸術でなければいけない。日本が急速に戦争に傾く恐ろしさに、フィルメックスが共感してくださった」と縁深い映画祭での上映に、強い思いを語った。廣木監督は前田敦子と染谷将太が共演する『さよなら歌舞伎町』、篠崎監督は震災後の心の傷に葛藤する女性をスリリングに描く『Sharing』をそれぞれ上映。「涙あり、笑いあり、裸あり(笑)でフィルメックスの中では一番ラフな作品かもしれない」(廣木監督)、「11年に審査員をさせてもらい、映画を観ることからエネルギーをもらった。作品の上映は(第1回以来)14年ぶりなので、いささか緊張している」(篠崎監督)と心境を明かした。一方、コンペティション部門はイスラエル、イラン、フィリピン、韓国などから9本がエントリーされ、唯一の日本映画『ダリー・マルサン』のメガホンを執った高橋監督は「吐き出す思いでつくった作品を、拾ってくれる熱をフィルメックスに感じる。作品をしっかり観ていただける映画祭」と敬意を表した。同映画祭のディレクターを務める林加奈子氏は「コンペ作品の共通したテーマを強いて挙げれば、闇を描いているという点。世界、時代、心の闇を深く掘り下げ、明日への光明を求めている」と指摘し、「特別招待も含めて、濃厚で深い映画ばかり。ぜひご期待していただければ」と自信を示した。コンペティション部門の審査委員長を、中国が世界に誇る名匠ジャ・ジャンクーが務めることも決定し「長年の念願だったので、本当に光栄で嬉しい」と話していた。第15回東京フィルメックス11月22日(土)から30日(日)まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇にて開催取材・文・写真:内田 涼
2014年10月15日美しさの表現のひとつに“クールビューティー”という言葉がありますが、その元祖といえば……? 真っ先にあげられるのが、1950年代にハリウッドで活躍した女優、グレース・ケリーです。ヒッチコック監督の映画『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』『泥棒成金』などでヒロイン役を務めた彼女は、まさに気品溢れるクールビューティー。そんな彼女は人気絶頂の最中、モナコ大公レーニエ3世と恋に落ち、結婚。モナコ公妃となり、きっぱり女優業から引退したことも有名ですよね。残念ながら、突然の事故により52歳の若さで亡くなりましたが、その生き方や美貌は、今も世界中で語り継がれています。グレース公妃の知られざるエピソードが映画に女優としてのグレース・ケリーは作品の中で楽しむことができますが、モナコ公妃としての彼女の活躍は、これまでもあまり知る機会がなかったと思います。そんな中、彼女が公妃となってから6年後の、感動秘話を描いた映画『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』が10月18日(土)より、いよいよ日本で公開されます。 彼女の結婚までの道のりは、シンデレラストーリーといわれていました。でも実際は、なかなか王室のしきたりに馴染めずに苦労していたそうです。本作はそんな中、存亡の危機に立たされたモナコ公国を救うために、グレースが公妃として立ち向かう姿を描いたもの。見どころたっぷりのストーリーと共に、グレース・ケリーという女性の芯の強さ、人間らしさ、その魅力に触れられる作品になっています。グレースを演じるのは、アラフォー世代憧れのハリウッドスターもうひとつ本作で注目したいのが、グレース役を演じる女優、ニコール・キッドマン。現在47歳で、年齢を重ねてもなお美しく輝き続けている彼女は、まさにアラフォー世代の憧れ的存在ですよね!グレース・ケリーを演じるにあたり、大量の資料や映像でリサーチを重ね、グレース独特の立ち居振る舞い、話し方などを習得したというニコール。さすが、グレース公妃を見事に体現しています。オリヴィエ・ダアン監督は、現場で常に真剣に耳を傾け、最高の答えを見つけようとする彼女の仕事熱心さを絶賛しているとのこと。そんなニコールの仕事に対する真摯な姿勢、ひたむきな努力もまた、内面から溢れる美しさにつながっているのでしょう。演技やメイクで近づけているだけでなく、ニコールもやはり気品溢れるクールビューティー。その持ち前の凛とした美しさはグレース本人と重なります。ルックス的にいえば、ブロンドヘア(2人とも天然のブロンドではないようですが)や、真っ白で陶器のように美しい肌もリンクします。ちなみにグレース本人は帽子とサングラスを愛用していたそうで、劇中にもそうしたファッションが度々登場しますが、ニコール自身も普段からつばの広い帽子やサングラスを欠かさず身につけているとか。余談ですが、オーストラリア出身の彼女の場合、幼い頃から徹底した日焼け対策で、自慢の白い美肌を守ってきたといわれています。美意識の高さも昔から一流なのですね!見習いたい! センス溢れるファッションエルメスのケリーバッグの由来としても知られるグレース・ケリーは、当時、ファッションアイコンでもありました。本作ではそんな彼女のセンス溢れるファッションを参考にした衣装が目白押し。華やかなドレスの数々、普段着の少しカジュアルな装いなど、存分に楽しめます。もちろんニコールの着こなしはすべて完璧! 豪華なドレスは難しくても、小物使いなど参考にできそうですよ。本作のシーンと実際のグレース・ケリーを並べて紹介していている海外サイトも。是非チェックしてみてはいかがでしょうか。 Scarlet Boulevard(海外サイト) 2人の美しさは次元が違いすぎるかもしれませんが、外見だけでなく、内面的な部分や、芯を持った生き方含め、少しでも近づけるようになれたらいいなと、この映画を観れば改めて感じるのではないでしょうか。・ 『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』 10/18(土)より、TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー。
2014年10月10日ブレないつもりでいても人の言葉に気持ちが揺らいだり、がんばったことが裏目に出て自分が心もとなく思えたりする時、意志的な主人公の映画を観るとシャキッとしますよね。単純に、映画と自分を比較はしないかもしれませんが、劇中の女性の潔い生き方や毅然とした態度から刺激を受けることってありませんか? そんな凛とした佇まいの魅力に満ち、100年以上をも遡った時代に、強い意志を持ち続けていた女性たちが主人公の映画を3本、ご紹介いたします。アナ・ムグラリスがカッコいい「シャネル&ストラヴィンスキー」20世紀最大のファッション・デザイナー、ココ・シャネルは、生きていたら今年131歳。カール・ラガーフェルドに引き継がれた今も圧倒的な人気を誇ると同時に、シャネル自身が生き方のアイコンとして、現代の女性たちに影響を与え続けている存在です。「アメリ」のオドレイ・トトゥが若きシャネルを演じた「ココ・アヴァン・シャネル」、名女優、シャーリー・マクレーンが演じる「ココ・シャネル」、本物のシャネルが登場する「シャネル シャネル」など、彼女はいくつもの映画で描かれています。その中でもおすすめなのは、芸術支援に力を注いだシャネルが作曲家ストラヴィンスキーと恋に落ちる、この映画です。シャネルのCFモデルも務めた主演のアナ・ムグラリスは美しいの一言!印象的なのは、ストラヴィンスキーの生活をバックアップしてあげて、彼にお礼を言われるシーン。口角をちょっと上げただけでサッと踵を返して立ち去るのですが、このシーンだけで、シャネルならこうだろうな! と実感させる凄みがあります。恩着せがましさの一切ないクールさにしびれました。 サウンドトラックが全世界で300万枚以上のセールス >>続きを読む 言葉でなくピアノで伝える「ピアノ・レッスン」の主人公船から運ばれたピアノが海辺に置かれる印象的な冒頭シーンから始まるこの映画の主人公は、6歳の時に自分の意志で話すことをやめた女性。言葉でなくピアノで自己表現をする謎めいた主人公をホリー・ハンターが好演。 ピアノを通じて、ハーヴェイ・カイテルが演じる現地の男性と、愛と官能の世界へ・・・とめくるめく内容です。 どこにもないようなストーリーなのに、「自分が体験したいと思う映画を作ったの。物語にすっと入れて、夢中で見終えてしまうような…」と語るジェーン・カンピオン監督の術中にまんまとはまってしまいます。ハッピーエンディングに驚いてしまうくらい不思議な映画ですが、独特な味わいの映像とともに、サウンドトラックを全世界で300万枚以上セールスしたという、マイケル・ナイマンの音楽も筆舌に尽くしがたい魅力があります。 イサム・ノグチを芸術家に育てた女性の人生を描く >>続きを読む イサム・ノグチを芸術家に育てたシングル・マザー「レオニー」キャッチコピーは「お母さん、私はこの子を連れて日本という国に行きます。」世界的に有名な天才彫刻家、イサム・ノグチは、ある2人の出会いによってこの世に生を受けます。その2人とは、20世紀初頭のアメリカで売り出し中の詩人、野口米次郎(ヨネ)と、その翻訳を手伝う作家志望のインテリ女性、レオニー・ギルモア。未婚のまま出産をし、100年前の日本で戦争や人種差別、偏見に艱難辛苦の日々を送る母子。そんな中でも、レオニーは幼少からイサムの芸術性を見抜き、成長した彼がコロンビア大学医学部で学ぶのをやめさせてまで、芸術家への道を歩ませます。一人の男を愛したという運命を潔く受け容れるレオニーの生き方は、日米合作という大作をまとめあげた松井久子監督の生き方にも通じ、世界中でロングラン中。主演は「マッチポイント」などで著名な英国女優、エミリー・モーティマーと中村獅童。美しい陰影が特徴的な撮影監督は「エディット・ピアフ」でセザール賞受賞の永田鉄男、余韻を残す絶妙な音楽は「ネバーランド」でアカデミー賞受賞のヤン・A・カチュマレクと、キャスト、スタッフともに恵まれた傑作。迷える女性に光を与えてくれるエンタテインメントです。・ 「シャネル&ストラヴィンスキー」 ・ 「ピアノ・レッスン」 ・ 「レオニー」
2014年09月25日