赤ちゃんの頃は「元気に育ってくれれば、それで十分」と思っていたのに、子どもが成長するにつれ「あれもこれもできる子になってほしい」とついつい願ってしまうのが、親の常。でも、世の中にはさまざまな幼児教育があふれ、どれを選べば正解なのか、わからなくなりますよね?そんなママのお悩みを、シンプルに解決してくれるのが、『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文嚮社)が10万部を超えるベストセラーとなった脳医学者・瀧靖之先生。つねづね「子どもを賢く育てるには、図鑑が一番!」と話し、自らも図鑑を使った子育てを6歳の息子さんに実践している瀧先生が総監修した「MOVEはじめてのずかん みぢかないきもの」(講談社)が発売されました。「図鑑を作るのが夢だった」と話す瀧先生の「こんな図鑑が欲しかった」のエッセンスがたっぷり入ってできあがった一冊。制作での思いや、図鑑の効果的な使い方などを瀧先生にお聞きしました。瀧靖之先生 プロフィール1970年生まれ。医師。医学博士。 一児の父。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長・加齢医学研究所 教授。東北大学加齢医学研究所および東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めている。『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)は10万部を超えるベストセラーに。■「はじめてのずかん」が子どもの好奇心の入り口にまずは最初に、瀧先生が提唱する「どうして図鑑が脳にいいのか?」をご紹介しましょう。・「わくわくする」好奇心を育てれば、自分の力で学べる「ぐんぐん伸びる子」に育つ。・いろいろな情報に触れられる図鑑は子どもの好奇心を育てる。・絵や写真があるので、言葉をつかさどる領域だけでなく、図形や空間を認知する領域など複数の脳の領域を同時に活性化できる。・図鑑で見たもの(バーチャル)を実際に見る(リアル)ことが子どもの好奇心を広げ、知識を定着させる。上記をふまえたうえで、インタビューはスタートしました。── 今回、図鑑の総監修をしてみていかがでしたか?瀧靖之先生(以下 瀧先生):小さな子どもでも楽しめるけれど、中身は本格的という図鑑があればいいのにとずっと思っていました。子どもは暗記力もすごいし、大人以上に好奇心が旺盛なので、はじめて触れるからこそ本物を見せたあげたいという気持ちを出版社と分かち合えました。今回、まだ形のない段階から関わり、何度も何度も出版社とやりとりを重ね、かなりイメージ通りの「図鑑の入り口となる図鑑」ができあがりました。── 「はじめてのずかん」というだけあって、図鑑に触れる入り口となる図鑑なんですね?瀧先生:図鑑というと小学校入学のプレゼントというイメージがあり、そのくらいの時期に初めて手にするお子さんも多いと思います。今までは、小学校入学前後の子どもに向けた本格的な図鑑か、子どもっぽいおもちゃのような図鑑しか出ていませんでした。昔の僕みたいに図鑑が好きな子どもは初めから本格的な図鑑から入ればいいけれど、そうではない子どもでも興味をもって手に取り、図鑑の入り口になる1冊があればと思っていました。ここから先は、恐竜や昆虫、動物などの図鑑につながっていける「初めての図鑑」を作りたかったんです。そのためにも、ただ「チョウ」とか「ゾウ」とかではなく、「クロアゲハ」とか「アフリカゾウ」などきちんと名前を伝えて、興味を持ってもらえるようにしています。子どもは機会的な暗記力がすごいので、あっという間に覚えてしまいますから。そして、デザインもほかのシリーズとそろえ、本格的な図鑑にしました。── 「2歳からの脳に効く!」と帯にありますが、2歳くらいでこの図鑑を手にするのがいいのですか?瀧先生:言葉を吸収し、周りに対する好奇心もどんどん出てくるのが2歳くらいですが、もちろん、0歳からでも1歳からでも、3歳、4歳でも図鑑を楽しんでもらって構いません。ただ、「好き嫌い」がまだあまり出ていない早い時期からいろいろ見ておくと、大きくなってからも好奇心の対象を広く保てます。できれば早い時期から図鑑でいろいろな情報に触れていただきたいと思っています。■図鑑が苦手な親子だから楽しめる“しかけ”が満載──「読み聞かせ図鑑」というのもおもしろいですね。図鑑というと見るイメージがありますが、読み聞かせができるんですね。瀧先生:子どもが楽しむためには親がまず楽しむことがとても大切なのですが、世の中のお父さんお母さんがみんな図鑑好きというわけではないと思うので、今まで図鑑にあまり触れてこなかった方でも気軽に子どもと楽しめる工夫にこだわりました。── それは世の中のパパママにとてもありがたいですね。瀧先生:好奇心だけではなく、乳幼児期に愛着形成をすることは、その後の精神安定に非常に大切だと言われています。ぬくもり、声、笑顔など親子の愛着掲載がとても大事な時期なので、子どもひとりで読むのではなく、親子でコミュニケーションをとりながら楽しめるようになっています。── 具体的にはどのようなしかけがあるのでしょうか?瀧先生:ほかの図鑑ではあまりないと思うのですが、写真の動物が吹き出しで話しています。もともとMOVEシリーズの特長である動きのある写真も子どもを引きつけますが、生き物が話すことで子どもの興味をよりひきつけやすくしています。そして、その吹き出しを読めば、誰でも簡単に読み聞かせができるんです。それ以外にも、親子の会話のきっかけづくりになるコラムがあったり、子どもが大好きなクイズが載っていたりして、親子の愛着形成や言葉を覚えるコミュニケーションが簡単にできるようになっています。── たしかに「ゾウの足音ってどんな音」というコラムなど自分も知らないことが載っていておもしろかったです。 ■知的好奇心を育てるのは「図鑑で見たアレ」を「実際に目にする」── 親子のコミュニケーションのほかにこだわったことはなんでしょうか?瀧先生:図鑑に載っていた動植物を目の前で見られたら「これが図鑑で見たアレなんだ」と興味が深まりますね。知的好奇心をいかに伸ばすかを考え、あえて身近なところを前半に取り上げました。── パッと目をひきそうなパンダやキリンなどではなく、ダンゴムシとかチョウなど「まちのいきもの」から始まっているところに挑戦を感じます。瀧先生:あまりにも遠い世界のことを入れてもつながらないので、図鑑を見た後に身近なところで本物を見る、あるいは本物を見て「これは何だろう」と図鑑を見る、ということを双方向で繰り返すことで、知的好奇心は伸びるんです。そして題材は身近だけど内容は本格的。子ども扱いして幼稚じゃないことが大事です。■図鑑の正しい使い方、NGな使い方── ついつい、脳への効果を期待してしまいますが、この図鑑はどうやって使ったらいいでしょうか?瀧先生:一番大切なのは、親自身が楽しむこと。「子どもに興味を持たせなければいけない」と重荷を感じる必要はまったくなくて、親自身が興味を持つところをパラパラめくって、ペンギンが好きならペンギンを、猫が好きなら猫をと興味をもったページを楽しんでいれば十分です。── 大人が楽しんでいれば、子どもも「楽しそう」と思ってくるわけですね。反対に、NGな使い方もありますか?瀧先生:子どもに押しつけることは避けたいですね。勉強もそうですが、「やりなさい」というと子どもは嫌になりますから。あとは、本棚の飾りにせず、テーブルなどいつでもパッと手に取れる場所に置いておくことです。そうすれば、外でチョウを見かけたり水族館に行ったりしたら、帰ってから「なんだろうね」とすぐに調べられます。本棚にしまいっぱなしでは、「なんだろうね」と疑問を持ちながらも調べずに終わってしまうので、せっかくの好奇心が伸びずにもったいないですよね。── やはり「疑問に思ったことを調べる」ということが大切なんですね。忙しい時などつい子どもの「なんだろう」を聞き流してしまう自分としては反省します。瀧先生:疑問に思ったことを調べる、というのは一生使える勉強の基本ですよね。「調べようね」と言って調べるのは、子どもにとってとても楽しいことです。まだ「勉強を勉強と思わない」小さな頃から調べる習慣がつくと、勉強しなければいけなくなった時に自分からどんどん調べることに抵抗がなくなります。── 最後にこの図鑑をぜひ手に取ってほしい、乳幼児のお父さん、お母さんにメッセージをお願いします。瀧先生:いろいろなことに好奇心を持てるようになると、将来どんな道に進んでも、きっと役立ちます。身近な動物や植物にもちゃんと名前がついていて、おもしろい特徴があったりする。そんなことを教えてくれるのが図鑑で、図鑑は世の中の広がりを知り、世の中に興味を持つ最初の一歩になります。その「最初の一歩」として楽しめる図鑑が完成したので、ぜひ親子で楽しんでみてください。参考図書: 「MOVEはじめてのずかん みぢかないきもの」 (講談社)総監修に脳研究者・瀧靖之先生、生きものの監修に動物学者の今泉忠明先生をむかえ、読みきかせできる図鑑として親子で楽しむこともでき、小学校低学年のひとり読みにも最適です。 ファースト図鑑として、小さなこどもが出会う身近な生きものを網羅。 カブトムシ、ダンゴムシ、ゾウ、キリン、ドングリ、はっぱ…子どもたちの好きなものが詰め込まれています。 クイズやコラム、巻末には生きものが登場する昔話も! はじめて出会う自然の世界を、季節を感じさせる本格的なイラストとダイナミックな写真、NHKの貴重なアーカイブ映像で紹介します。文・取材/まちとこ出版社 石塚由香子
2018年04月30日「並河靖之七宝展」を、東京都庭園美術館にて開催。会期は、2017年1月14日(土)から4月9日(日)まで。明治期に盛んに作られた工芸品「七宝」。金属の器や壺の下地の上に釉薬をのせ焼くことで、美しい色彩を施す金属工芸の一つだ。明治期の七宝家・並河靖之は、この七宝が持つ鮮やかな色彩の効果や、優美で繊細な線を見事に操り、その美しさの頂点を極めた。本展は、彼の生涯と、最初期から晩年に至るまでの七宝作品140点を一堂に紹介する初めての大規模個展だ。並河の作品でまず目を引くのは、その鮮やかな色彩だろう。釉薬を使って彩色する七宝では、まるで金属の中に色とりどりのガラスが埋め込まれたように、色彩そのものが輝いている。さらに、その美しい色を際立たせるのが、並河作品の大きな特徴である、地に使われた透き通るような黒だ。漆黒の背景に浮かフッと浮かび上がるように舞う黄金の蝶や、藤色の花々はため息が出るほど美しい。さらに、七宝のわかり易く、日本らしさを強調したデザインには、誰もが美しいと感じずにはいられない。もともと明治期に主にヨーロッパへの輸出工芸品として隆盛した七宝は、西洋人にも分かりやすいモチーフで技巧を凝らした装飾的なものが多い。そんな時代背景と、並河自身が生まれ持った圧倒的なセンスが相まって、出展される作品は、特別な知識がなくてもパッと観ただけで私たちを虜にするほどの華やかさを持つ。さらに、会場になった東京都庭園美術館にも注目したい。昭和初期に朝香宮邸として建てられたこの美術館。アール・デコ様式を用いた展示室は、曲線を使った有機的なタイルや壁、草花のモチーフを思わせるガラス装飾やランプで彩られ、華やかな七宝にふさわしい。優雅な空間で、贅沢なひと時を味わえる展覧会だ。【詳細】並河靖之七宝展会期:2017年1月14日(土)〜4月9日(日)会場:東京都庭園美術館 本館・新館ギャラリー1住所:東京都港区白金台5-21-9開館時間:10:00〜18:00 (入館は17:30まで)※3月24日(金)、3月25日(土)、3月26日(日)、4月1日(土)、4月2日(日)、4月7日(金)、4月8日(土)、4月9日(日)は、20:00まで開館。(入館は19:30まで)入館料:一般 1,100(880)円 / 大学生(専修・各種専門学校含む) 880(700)円 / 中学生・高校生および65歳以上 550(440)円※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金。※小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳の提示で、介護者一名を含め無料。※教育活動として教師が引率する都内の小中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)。※第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は無料。※前売り券e+(イープラス)にてオンライン販売。◼︎巡回予定・兵庫展伊丹市立美術館 2017年9月9日(土)〜10月22日(日)・三重展パラミタミュージアム 2017年10月28日(土)〜12月25日(月)
2016年12月03日1920年に大分県で生まれ、現在96歳の梅木信子先生。18歳のときに出会った夫梅木靖之さんと23歳に結婚しますが、結婚式は遺影と行うことに。婚約者だった夫は、戦死してしまったからです。その後「戦地に赴き、死んで婚約者と一緒に靖国に往く」ことを目的に、東京女子医科大学に入学。それから壮絶な人生を経て女医となり、いまなお現役でいらっしゃいます。先生が新著『ひとりは安らぎ感謝のとき』(KADOKAWA)のなかで語る健康や食についての考え方は、現代を生きる私たちにも必見です。■梅木先生が語る「ドクターの選び方」50年も地域医療に向き合った梅木先生から見ると、日本ではどうしても大病院志向の人が多いのだとか。たとえば夜中に卒中発作を起こしたとき、いつもかかっている大病院が遠い場合、救急隊員が必死に診察を受け入れてくれる近くの病院を探します。しかし、そうして受け入れられた病院では病歴がわからないため、改めて検査をすることに。ところが、その間に亡くなってしまうことも多々あるそうなのです。そのため、梅木先生はホームドクターを持つことを強くすすめています。常に全身を診てくれて、でも専門外はさっさと紹介状を書いてくれる先生がいいと。また、病院やドクター選びの注意点として、先生自身なら「患者さま」と呼ぶ病院はまず敬遠するそうです。そういう病院は、経営面ばかりが前面に出ているものだから。かといって、患者に気が回らない病院もダメ。まったく診察に呼んでくれなかったり、フォローがなかったりするドクターはその典型だそうです。そして、診察のときにパソコンばかり見ている先生もNG。なぜなら診察室に入ってくるときの患者の歩き方や顔色を見るだけで、だいたいの診断はつくものだからだといいます。これは、すぐにでも参考にできるポイントですね。■梅木先生が考える「食で大切なこと」そして梅木先生は、人生を健康で豊かに楽しむため食にもこだわっています。といっても、食との向き合い方はいたってシンプル。できる限り自然のものを、あまり手を加えず食すことがモットーなのだといいます。また自然に任せ、空腹になれば食べる、空腹にならないと食べないそうです。さらに料理をするという行為は段取りや分量のことで頭を働かせるので、認知症予防にもつながるといいます。そして、好き嫌いはあってもOK。バランスよく食べることが健康にいいのはたしかだけれど、「健康にいいから」と無理して好まないものまでを食べる必要はないというのですから驚き。その前提として大切なことは、「不足しているものは自然に体が要求するから、その自然の声に耳を傾けて従う」ということなのだそうです。現代の私たちは忙しすぎて、体や自然の声に向き合うことがなかなかできません。しかし、それがいちばんの問題かもしれません。著書のなかには、ときに厳しい言葉も並びます。しかし、先生の歩んでこられた険しい人生の上に並ぶこの言葉たちは、これからも伝えられていくべきもの。本書を通じ、「愛とは?」「老いとは?」「健康とは?」ということをいま一度考えてみていただければと思います。(文/料理家・まつながなお) 【参考】※梅木信子(2016)『ひとりは安らぎ感謝のとき』KADOKAWA
2016年04月04日