タナカ(TANAKA)は、2023-24年秋冬コレクションを、2023年3月18日(土)に渋谷ヒカリエで発表した。タナカ初のランウェイショー今回が初のランウェイショー開催となるタナカは、「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ服」というブランドコンセプトを、今季のクリエーションを通して改めて表現。奄美大島の金井工芸や、徳島の藍師・染師「ブアイソウ(BUAISOU)」、岡山のデニム加工工場の西江デニム、そしてデニム生地のカイハラと、日本のものづくりを担う工房やメーカーと引き続きタッグを組みつつ、多彩な人々が行き交うニューヨークの街並みからインスパイアされた、生き生きとしたクリエーションを提示した。デニムウェアの多彩な表現長く紡いでいくことのできる服、性別や世代を問わず長く愛される服を提案するタナカが、ブランドスタート当初から作り続けているのがデニムウェア。ベーシックなデニムジャケットやジーンズから、ムラ染めのデニムウェア、ブラックデニムとインディゴデニムをパネルで切り替えたデニムジャケット、カラフルなペイントや、ニューヨークのアーティスト・フェイル(FAILE)のグラフィックを用いた賑やかなデニムのセットアップまで、様々なデニムウェアが登場。デニムをキャンバスのようにとらえ、表情豊かに仕上げたピースが多数展開されている。生花の押し花を装飾として施したホワイトデニムのコートは、ダメージ加工によってユーズド感をプラス。華やかさに加え、時の経過を感じさせる佇まいに仕上げた。また、たっぷりとした分量感に仕上げたセーラーカラーのデニムドレス、テーラードカラーのジャケット、ラップスカートなど、装飾だけでなくシルエットにおいても多岐にわたる表現を実践。幅広いデニムウェアの可能性を見せている。ヴィンテージスカーフや古着の再構築さらに、デザイナーのタナカサヨリがフランス在住の友人に見つけてもらったというヴィンテージスカーフを用いたウェアをはじめ、古着を再構築したウェアも散見された。袖が取れる仕様に仕上げたスカーフのブルゾンや、同じくスカーフをあしらったタナカの定番アイテム・パフィージャケットなども、サイドにスリットを施すなど、部分的に変形させることでフォルムに遊びを効かせている。また、スタジャンを解体しボリュームのあるレザーの袖をドッキングしたデニムジャケットなども目を引いた。1枚の布地をまとう“まとう”という、服の原初的な概念に立ち返り1枚の布地を大胆に使ったルックも印象的だ。デニムやチェック地などをパッチワークした、グラフィックプリントのキルティング地は、体に巻き付けるようにしてドレスとして着用したり、マントのように羽織ったりして、シンプルながらも存在感を放つ装いに。染色を施さないタナカのエッセンシャルな素材である生成り地のデニムをたっぷりと用いたドレスは、ドレープが優雅さをもたらす一方で、唐突にあしらわれた端切れデニムのパッチワークがラフな印象をプラス。また、生地自体に世界中の国旗をプリントするなど、デザインにおいても、素材においても多面性のある1着に仕上げた。
2023年03月21日リコール(RequaL≡)の2023-24年秋冬コレクションが渋谷ストリームの稲荷橋広場で2023年3月18日(金)に発表された。“歩きスマホ防止”をテーマにNTTドコモとのコラボレーションによって実現した今季のショー。社会問題にもなっている“歩きスマホ”の防止をテーマとし、人とスマートフォンとの関係性を見つめ直すきっかけになること目的としたコレクションを展開していく。ファッショナブルな人を見ると、人は歩きスマホをしていても、立ち止まって歩きスマホを辞めるのではないか?そんな可能性を見出したリコールのデザイナー・土居哲也。その言葉通り、コレクションでは思わず立ち止まって見入ってしまうであろうインパクト抜群のアイテムが繰り返し提案された。マキシ丈のブレザージャケットまず最初に注目したいのは、まるでロングコートのように丈を長く設定したブレザージャケット。クラシカルなジャケットをあえてマキシ丈で提案することで、プレイフルな一着へと昇華させている。一緒に提案された西陣織のオリジナルネクタイは、中綿を詰めてマフラーに。ダメージを施したようなセーター時の経過を感じさせるようなアイテムも目を引く。アランセーターは、ケーブルにダメージを施したような編み方で仕立てつつ、所々をブラウンで染め上げることで、長年着用したような風合いに。思わぬ場所にポケットとフードが配されたスウェットパーカーは、全体にダメージ加工が施されている。遊び心溢れるバッグウェアと同様にバッグにも、すれ違う人を振り返らせるような遊び心を散りばめて。リコールのロゴが入ったショルダーバッグは、よく見るとボタンが巨大化したような遊び心いっぱいのデザイン。超巨大なバックパックは、蝶ネクタイを模して手作りで製作された。ショーのラストには、“歩きスマホ”をする若者たちがランウェイに登場。ぶつかりあいながらもスマートフォンを見て歩くパフォーマンスを披露し、今季のテーマを改めて際立たせた。
2023年03月21日サヤカアサノ(SAYAKAASANO)の2023年秋冬コレクションが渋谷ストリームの稲荷橋広場で2023年3月18日(金)に発表された。“いとおしい”と“いたわしい”をキーワードにサヤカアサノは、デザイナー・浅野彩也佳が2020年にスタートしたブランド。日常ではあえて表現することのない違和感をデザインに落とし込んだ物作りを提案している。そんなサヤカアサノにとって楽天ファッションウィーク東京での初のランウェイショーとなった今シーズンは、“いとおしい”と“いたわしい”という相反する感情をキーワードにしたコレクションを展開していく。“寝起きの瞬間”にフォーカスクリエイションの出発点となったのは、他人を大切に思う“いとおしい”への疑問だという。何よりも“いとおしい”はずなのに、それを自らの手で消してしまいたくなる“いたわしい”感覚。隣り合わせでやってくる正反対の感情を、浅野は“かわいらしさ”と“だらしなさ”を持つ寝起きの瞬間に例えた。ルックには、自分の中では“だらしない”と感じることでも、相手にとっては“かわいらしい”と感じる寝起きの瞬間が随所に落とし込まれている。ブランケットを纏ったスカートたとえば、チェック柄のブランケットは、ミニ丈のプリーツスカートに纏わせてガーリーな一着へと昇華。バックにボリュームを持たせることで、よりいっそうドリーミーなムードを加速させる。パジャマ風セットアップ中には、パジャマを思わせるオンブレチェックのセットアップも。ボタンの一部だけを留めたシャツは、面倒で中々着替えることが出来ないとでもいうような愛らしいシーンを彷彿させる。シーツをドレスにさらに、布団から出たくなくてシーツを手放せない、そんな煩わしい寝起きの瞬間を落とし込んだドレスや、真っ白なタオルで構成されたキャミソールドレスも展開された。なお、サヤカアサノのショーはアキ マスダ(aki masuda)と合同で行われた。
2023年03月21日アキ マスダ(aki masuda)の2023年秋冬コレクションが渋谷ストリーム・稲荷橋広場で2023年3月18日(金)に発表された。夢と空想の旅デザイナー・増田愛樹が2021年春夏シーズンよりスタートしたブランド、アキ マスダ。楽天ファッションウィーク東京での初のランウェイショーとなった今シーズンは、テーマに“夢と空想の旅”を掲げた。コレクションを通じて提案されたのは、「天使」「流星群」「バルビアネッロ」の4つのキーワードを軸に作られたドレス。増田の頭の中にある願望や夢・妄想から創造する物語をオートクチュールに落とし込んでいく。白と黒の“天使”「天使」から着想を得たドレスには、従来はドレスの芯材に使われるシャー素材を表地として採用。“白い天使”と“黒い天使”、それぞれをイメージしてボリューミーなドレスを作り上げた。背中には羽根に見立てた立体的なパーツをセットし、見る者を圧倒させるインパクトのある一着に。「流星群」のドレス「流星群」を見たときの感動を分かち合うため、その時の感情や情景を投影したというドレスは、ウエストから裾にかけてのシルエットがユニーク。ドレスの裾に星のモチーフをあしらい、流星の後に続く残像を表現した。「豹」のボディスーツ「豹」を着想としたプレイフルなボディスーツは、夢と空想の旅をよりいっそう盛り上げていく。愛らしさ満点のこのボディスーツは、オリジナルワッペンを1つずつ手で取り付け、独自の豹柄を表現したというこだわりの一着だ。手には豹の手足を表現した遊び心溢れるグローブがはめられている。バルビアネッロの蔦イタリアのコモ湖に浮かぶ歴史ある別荘、バルビアネッロ。趣のある景色で人々を魅了する邸宅に思いを馳せたドレスには、壁に見られる蔦を大胆に落とし込んで。各ルックには、真っ赤なハットや黄色のロンググローブなど鮮やかな色味の小物を差し込んで、アクセントを効かせた。なお、アキ マスダのショーはサヤカアサノ(SAYAKAASANO)と合同で行われた。
2023年03月21日ヘヴン タヌディレージャ アントワープ(HEAVEN TANUDIREDJA ANTWERP)は、2023-24年秋冬コレクションを、 2023年3月18日(土)に渋谷駅西口タクシープールにて発表した。神経細胞“ニューロン”を出発点に今季のコレクションの出発点となったのは、脳の神経細胞“ニューロン”。情報を伝達し、処理する役割を担うニューロンを起点に、どうあっても完璧ではいられない人間の行動や感情に考えを巡らせた。デザイナーのヘヴン・タヌディレージャは、完璧さを求めることではなく、“予想外の出来事や失敗から逃れることはできない”、という事実を受け入れることこそが強さへと繋がっていくと考えたという。そのことから、今季のコレクションでは単に美しいテキスタイルを用いるのではなく、様々なテクスチャーの素材を混在させ、不完全さをも内包した美しさを追求した。細胞のように連なっていく装飾中でも目を引いたのは、きらめくボール状の装飾を連ねたピースだ。序盤ではドレスのネック周りをさりげなく彩る程度にあしらわれた装飾は、スカートのラッフルのように広がったかと思いきや、ケープやマントの如く複数に広がっていった。ボール状の装飾が増殖し、躍動する様子は、連なる細胞の形態を彷彿させる。ジュエリーデザイナーとしても活躍するヘヴン・タヌディレージャならではのユニークで大胆な発想が存分に発揮されている。多彩な装飾加えて、繊細なラインストーンが連なり全面を覆うロングドレスや、びっしりと赤いスパンコールをあしらったトップス、黒い丸型のボタンをドットのように並べたブルゾンやショートパンツなど、多彩な装飾が登場。しなやかなホワイトのファブリックで仕立てたドレスやブラウス、スカートには、ホワイトのビーズでフラワーモチーフの刺繍を施し、イノセントな佇まいに仕上げている。流れるようなシルエットシルエットは流れるような造形が印象的。クラシカルなネックレスを配したロングドレスは、落ち感のある素材を用いて繊細にギャザーを寄せることで、エレガントな雰囲気を漂わせた。光沢を備えたブラックのコートは、ウエストをマークするベルトによって緩急をつけながらも、曲線的な袖や襟のフォルムでリュクスさを演出している。また、シャツはサイドにスリットを施すことで合わせを中心からずらし、アシンメトリーな着こなしを可能に。形をあえて歪ませながらも、布地の流れを生かし、彫刻的な美しさを見せていた。
2023年03月21日シュタイン(stein) 2023-24年秋冬コレクションが、2023年3月17日(金)お台場・テレコムセンタービルにて発表された。“further”をテーマ毎シーズン、静けさや強さを内包した洋服作りを行っているシュタイン。今季は“further”をテーマに、その言葉が意味する通り、“より一層踏み込んだ”コレクションを展開する。今季を象徴するルックそんな今季のムードを最も体現したピースは、ピークドラペルが特徴的なマキシ丈のジャケットのルックだと、デザイナーの浅川喜一朗は語る。ブランドらしくゆったりと落ちるダウンショルダーでありながら、装飾性やワイドなシルエットを“より強める”ことで、存在感のある一着に。またアウターの下にも、エキストラワイドパンツを合わせたジャケットスタイルに加え、ハーフジップのトップスを複数重ねるなど、いつも以上に“オーバー”なレイヤードスタイルを提案している。異なるテイストのレイヤードスタイルこうした複数のアイテムを使用したレイヤードスタイルは、コレクション全体を通しても散見された。例えばスタンドカラーのジャケット×MA-1、ウールのロングコート×ムートンジャケット、トレンチコート×ダウンベスト‥・など、例を挙げれば数えきれないほどだ。異なるテイストがひとつのルックの中で交じり合いながら、野暮ったさを感じさせない──むしろミニマルを意識したスタイリングは、ブランドならではバランス感覚といえるだろう。多彩なニットウェア今季は秋冬らしいニットも充実。凸凹の不思議な表情を描くニットや、V字の鋭利さをわざと緩和させたようなアームラインを持つセーター、複雑なカッティングを持つニットベストなど。また首元をすっぽりと覆うハイネックのニットは、ジャケットスタイルと共に提案。下に重心を置いたルックが目立つ中で、上のラインも強調したこのスタイリングは、より一層ジャケットが持つ端正な縦のシルエットを引き立てているようにも感じられた。“そぎ落とした”テーラードスタイルウィメンズのウェアは、“静けさ”を深めるように、メンズアイテムから余分なものをそぎ落として制作。中でも好例は、ジャケットのアームをゴソッと繰り抜いてしまったようなテーラードスタイルだ。ゆとりのあるサイズ感ながらも、腰は華奢なベルトでウエストマークし、緩急のついたシルエットに。またワントーンで統一したシンプルなカラーリングも、ミニマルな表情をより一層強めている。ひとさじのブルーをパレットは、グレーやベージュ、カーキ、ブラックといった落ち着いた色調を基調に。唯一差し込まれた爽やかな水色のシャツは、60年代と90年代のデニム生地を重ね合わせたという、レイヤード風のユニークなデニムパンツと共に提案された。
2023年03月21日アンスクリア(INSCRIRE)の2023年秋冬コレクションが2023年3月17日(金)に渋谷ヒカリエ・ヒカリエホールで発表された。ブランド初のランウェイショーデザイナー・岡ゆみかが手掛けるブランド、アンスクリア。ブランド名には、岡が“いいな”と思ったものを自分や人々のワードローブに刻み込むようなブランドにしたい、また人々に“いいね”と思ってもらえるようなブランドにしたい、という願いが込められている。そんなアンスクリアによる初のランウェイショーとなった今シーズン。テーマには、“TRANSFORM”を掲げた。カジュアルとフォーマル散見されたのは、カジュアルとフォーマルが行き交うルック。サイドラインが入ったトラックパンツを取り入れたスタイリングはその好例だ。テーラードジャケットの下半分を切り取ったようなコルセットと厚手のネイビージャケットは、スポーティーなパンツを合わせることでミックス&マッチを楽しんでいる。時折差し込まれたデニムも今季らしい上品な着こなしで。デニムパンツにスウェットシャツを合わせたラフなコーディネートには、ロングスカートを投入。落ち着いたブラウンカラーと大胆なスリットによって、エレガントなムードに引き寄せた。クラシカルなスーツ地のジャケットに、プレイフルなアレンジを加えたアイテムも目を引く。たとえばストライプ柄のジャケットは袖をカッティングし、袖口は縫製せずにあえて切りっぱなしに。ジャケットの下には、レイヤードしているようなデザインのニットトップスを合わせた。カラーパレットは、ブラウン、ブラック、ネイビーといった秋冬らしい落ち着いた色味が基調。そこにレッド、オレンジ、ピンク、グリーンといった鮮烈な色味を取り入れ、コントラストを効かせた。
2023年03月20日ネイプ(NAPE_)の2023-24年秋冬コレクションが、渋谷・サーカス トウキョウにて発表された。テーマは“Interculturalism”デザイナー・山下達磨が日常的に考えている、“Interculturalism”がテーマのネイプ。異文化の相互理解や交流は、いまだ誰しもが足りていない要素であり、個々の文化が自立した上で交わるのが理想形だ。今季のコレクションでは、そんな多様性を受け入れる姿勢と自国・日本カルチャーの発信を、ファッションや音楽、ダンスを通じて体現している。アニメーションを実写化僧侶が奈良・薬師寺のお経を唱え、オリジナル楽曲の演奏開始とともにファーストルックが登場。日本のアニメカルチャーを体現するようなミリタリー調のセットアップは、デザイナー・山下が好む“攻殻機動隊”から着想を得ている。日本を代表するアニメ・マンガ文化を誤解されまいとフラワーマウンテンと共同でアニメーションから製作し、見事に実写化したウェアだ。立体的なポケットデザイン機能的なポケットがあしらわれたウェアも散見された。中でもブラック×グレーのスウェットセットアップには、ボア素材の立体的なポケットを、あらゆるパーツに配しているのが印象的だ。またこのスウェットのバイカラーは、“文化の違いにより2つに分かれている世界”を表しているようだが、ショーの中では言語の壁のないダンスを介すことで、隔たりがない世界を描いているようにも感じられる。デジタル×多様性砂嵐をかけたようなデジタル風デザインのウェアも登場。とりわけ、色違いのアウター&ハーフパンツを着用した男性モデル2名が抱き合う演出では、多様性を受け入れ、理解し、共存するネイプの強い信念が感じられた。そのほかラストルックとして、フラワーモチーフに砂嵐をかけたデザインを背面にあしらったロングコートもラインナップした。
2023年03月20日メグミウラ ワードローブ(MEGMIURA WARDROBE)の2023-24年秋冬コレクションが、渋谷駅西口タクシープールにて発表された。多様性の街「渋谷」を舞台に、初のフィジカルショー“羽織るだけで、360度美しいコート”をコンセプトに、ジェンダーレス、エイジレス、ボディポジティブなアウターを提案しているメグミウラ ワードローブ。今季は、渋谷駅西口タクシープールを舞台に、ブランド初のフィジカルショーを開催した。コレクションを紐解くキーワードとなるのは、「多様性」だ。ショー開始の10分前になると、サラリーマンやギャルの女子高生、ミュージシャン、買い物帰りの主婦、スケートボーダーなど、様々な職業の人に扮したエキストラが現れ、会場はさながら渋谷の街のようなムードに。また、ランウェイショー本番にも、人種や性別、体型、年齢の異なるモデルたちが次々に登場。カラフルなアウターを纏い、自由でプレイフルな世界観を構築した。着る人を選ばないシルエット特徴的なのは、生地をたっぷりと使ったオーバーサイズのシルエット。すっぽりと身体を覆うようなポンチョコートをはじめ、袖周りにふっくらと空気を含ませたパフスリーブのブルゾン、裾に向かって緩やかに広がっていくAラインのステンカラーコートなど、年齢・性別・体型を問わず羽織ることができるリラクシングなフォルムのピースが散見された。重厚感のある素材使いゆったりとしたシルエットや、ボンディングの手法による立体的な表現など、ブランドの核となる部分はそのままに、今季は素材使いでアイテムに幅を持たせているのが新鮮。温かみのあるモヘアやラメ糸を織り交ぜたツイード、マットな質感のスエードなどを用いて、秋冬らしい重厚感をプラスしている。プレイフルなレイヤードアウターにアウターを重ねた、遊び心のあるレイヤードスタイルにも注目したい。たとえば、瑞々しいブルーのスタンドカラーコートには、それとは対照的に襟を大きく開いたショート丈のコートをオン。首周りのデザインが異なるアイテムを自由に組み合わせることで、プレイフルな表情を引き立たせている。アイコンディテールを織り交ぜて刺繍ポケットと、ダッフルコートのトグルボタンを思わせるフロントのデザインは、“メグミウラ ワードローブらしさ”を強調するアイコニックなディテール。これらブランドのシグネチャーは、ベーシックなトレンチコートやパンキッシュなレザーベスト、ダブルブレストのロングコートなどありとあらゆるアウターに施され、コレクション全体に個性的なアクセントを付与していた。
2023年03月20日アヤーム(AYÂME)は、2023-24年秋冬コレクションを2023年3月17日(金)に発表した。精神の浄化「カタルシス」をテーマに“精神の浄化”を意味する「カタルシス」をテーマに掲げた今季。心の中にたまっていた苦悩や、無意識のうちに抑圧されていた感情から解き放たれ、本来の自分を取り戻していくイメージをデザインに落とし込んだ。花、光、水、クリスタルなど自然の中の要素を用いながら、生き生きとした佇まいを提示している。光や質感のコントラスト柔らかさと硬さ、光沢とマットな質感、といったコントラストが随所に落とし込まれている。対照的なエッセンスを共存させることで、“積もり積もっていく感情とその放出”といったカタルシスの、ある種両極端なプロセスを描き出しているかのようだ。例えば、淡く浮かび上がるような花柄のドレスには、グロッシーなパテントのブーツを合わせ、マットな光沢を備えたレザー調のジャンプスーツには、シアーなアームカバーをスタイリング。柔らかな起毛感のファーとスムースなレザーの対比を見せるスタイルや、ざっくりと編んだニットケープに繊細なレースインナーを合わせたコーディネートもまた、対照的な感覚を共存させている。生き生きとした躍動感加えて、躍動感のあるデザインも印象的。ギャザーを寄せることで、ふんわりと仕上げたスリーブのトレンチコートや、野花を思わせる装飾やクリスタルを散りばめるようにして配したハイウエストパンツ、蔦が繁っていくかのようにパールを這わせたブラックのレーストップスなどが登場している。また、ニットをベースにしたドレスには、鮮やかなブルーのオーガンザをたっぷりと配して幻想的な佇まいに。光を通すしなやかなチュールを、ランダムなフォルムを描くようにあしらうことで、軽やかな躍動を感じさせつつ、どこか余韻を残していくような装いに仕上げている。
2023年03月20日フェティコ(FETICO)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月17日(金)に渋谷ヒカリエで発表された。テーマは、“Unique Beauty”。個性=自分だけの美しさ今季のフェティコは、斬新なファッション×自由奔放なライフスタイルが魅力的な女性たちを表す“フラッパー”がインスピレーション源。1920年代に活躍したキャバレー歌手を演じた女優ライザ・ミネリなどの大胆かつ個性的なスタイリングを、女性の身体を美しく見せるシルエットやカッティングを用いて再解釈した。自分だけの個性や美しさを魅力に変え、自信がみなぎるコレクションを提案する。1920年の“フラッパードレス”着想コレクション全体を通して、1920年代のアメリカで流行したローウエスト&フリンジが特徴的な“フラッパードレス”のディテールを散りばめている。例えばレースをフロッキー加工で施したロングドレスには、ローウエストのシルエットを採用。一方フリンジは、テーラードジャケットやデニムスカート、ニットウェアにスリットを入れることで表現している。不完全な美またランダムな柄や編み地から、“ユニークな美しさ”を追い求めた今季。好例となるのは、京都の職人が手描きしたストライプ柄ドレスだ。不規則なストライプペイントが調和し、絶妙な美しい仕上がりに。さらにアシンメトリー模様で編み上げたニットウェアも、“不完全であるからこそ美しい”というデザイナー・舟山の価値観を体現している。シルエットが映える“ボディースーツ”フェティコらしい身体のシルエットを強調するアイテムも散見された。ランウェイには、特徴的な編み上げディテールのジャンプスーツをはじめ、くびれ部分を丸くくり抜いたボディスーツやクロップド丈のパワーショルダージャケットなどがラインナップ。上半身を大胆にカットアウトした透け感のあるドレスのラストルックが登場した後、ミラーボールから不規則な光線が放たれ、ショーは幕を閉じた。
2023年03月20日ジョウタロウ サイトウ(JOTARO SAITO)の2023-24年秋冬コレクションが発表された。夢幻のように、儚く躍動する「蝶」ジョウタロウ サイトウが掲げた今季のテーマは「夢幻(ゆめまぼろし)」。スモークを焚いた幻想的なランウェイで、叙情的なムード漂う全39ルックが披露された。散見されたのは、大小さまざまな“蝶”のモチーフ。たとえば、真夜中の静けさを思わせる漆黒の着物には、淡いピンクやブルーの蝶を配し、詩的で儚げなムードを演出。今にも消えてしまいそうな蝶は幻のようでありながら、確かな躍動感をプラスしているのが印象的だ。繊細なレースモチーフ繊細なレースモチーフをあしらった着物もまた、儚げなムードを纏った1着。やわらかなオフベージュをベースに採用したルックには、細やかなレースとドット模様を落とし込み、ロマンティックな印象に。フェミニンな柄使いながらもシックでモダンな雰囲気が漂っているのは、帯やバッグ、足袋に至るまでブラックで統一し、全体を引き締めているからであろう。いきいきとした植物柄植物モチーフのいきいきとした表現も散見された。淡いグリーンをベースにした着物は、生命力あふれる草花柄がフレッシュで可憐な佇まいを演出。裂け目のような柄を配した着物には、大輪の椿の花が描かれている。また、巾着バッグには、クラシカルな文様“縞模様”と大輪の花を咲かせる“牡丹”を融合させた、ブランドのアイコニックな柄「縞ボタン」をあしらった。大胆な幾何学模様でリズムを繊細な柄使いが際立つ中、コレクションに大胆なリズムをもたらしているのが、ダイナミックな幾何学模様だ。登場したのは、形の異なるパズルを組み合わせたかのような着物や、辛子色と黒のコントラストでグラフィカルに仕上げた着物など。メンズの着物には、ボーダー柄を様々な向きに切り替えたルックもお目見えした。“街の灯り”のように輝く帯スタイリングに華を添える帯デザインにも注目したい。中でもひときわ目を惹いたのが、「街の灯り」と名付けられたブルー×ブラックの帯。生地の表面にキラキラと輝く素材が重ねられているのが特徴で、モデルが歩くたびに煌びやかな表情を演出していた。コレクションを引き締める鮮烈なカラーカラーパレットは、ブラックやグレーといった深みのあるダークトーンが中心。時折、淡い藤色や若草色、さらには鮮烈なブルーやダイナミックなレッドを差し込んで、アクセントをプラスした。
2023年03月19日アキコアオキ(AKIKOAOKI)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月16日(木)、東京・渋谷のヒカリエホールにて発表された。「マリア」をキーワードに今季のアキコアオキのキーワードとなったのが、「マリア」、聖母マリアの謂いである。長いキリスト教信仰のなか育まれてきた、人びとに寄り添う姿、あるいは突如イエスを身籠ることになり、「聖母」としての役割を逃れ難く受け入れることになったその宿命的な態度という、いわばマリアの抽象的な位相をコレクションに反映させることを試みたという。コレクションの軸となるのは、アキコアオキが得意とするユニフォームウェアだ。それはテーラリングであり、ミリタリーであり、あるいはスポーティである。たとえばテーラリングおいては、フォーマルなストライプ柄のスーツ地を多用しつつも、それらをソリッドに仕立てるのではなく、解体・再構築的にショートジャケットやドレスへと仕上げている。また、コルセットを彷彿とさせるバックストラップを組み入れるなど、服飾史への目配せも感じさせる。解体・再構築的な手法は、コレクションに幅広く見られる。古着を用いたドレスもそのひとつだ。身体のシルエットに沿ったドレスには、プリントを施した古着を解体して使用しており、ドレスの華やぎがカジュアルさとスポーティさに屈折させられている。上述のテーラリングにも見られるように、ここにはいわばドレッシーの解体、フォーマルを日常へと溶け込ませてゆくというベクトルを見てとることができるだろう。聖母マリアが、突如聖母という位置を身に負うことになったという視点を反映して、ウェアには身体を束縛するという要素を随所に見てとることができる。その例として、フレアシルエットに仕上げたボンテージパンツや、両腕をベルトで拘束したコートなどを挙げることができる。カラーは、テーラードウェアを彷彿とさせるブラックやグレーを軸に、ブルーやライトピンクなどで彩りをプラス。また、素材においても、シンプルなフォルムのドレスに用いたレース、光沢を帯びたロングコートのビニール素材、ファー様の素材など、多様なテイストに合わせてさまざま質感を溶け込ませた。
2023年03月19日サポートサーフェス(support surface)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月16日(木)、東京国立博物館表慶館にて発表された。テーマは、「Texturefull」。素材の質感と表情「基本的に無地が好きです」と語るサポートサーフェスのデザイナー・研壁宣男は、しかし、今季の出発点に、質感と表情に富んだ素材のイメージがあったという。無地とは、単にさらりと平滑な平面を意味するとは限らない。手触りの豊かさ、あるいは譬喩的に「湿り気」を帯びた雰囲気が、今季のコレクションの基底にある。コレクションの基調となるのは、エレガントな佇まい。ドレスやブラウスは、大きくドロップさせたショルダーや大胆なラグランスリーブを採用することで、ゆとりのあるシルエットに。しかし、随所にギャザーを寄せ、あるいはバルーンスリーブの袖先は絞るなど、柔らかく丸みを帯びたフォルムを上品で華やかな雰囲気に昇華させている。あるいはパンツはワイドシルエットながら、センタープレスやウエストのダイナミックなタック、あるいは大胆な切り替えによるドレープ感により、やはり上品な佇まいを示している。さて、素材の「豊かさ」に移ろう。無地と柄を織り交ぜつつ構成されるなか、まず、柄にほいては大小さまざまな花柄や、格子柄が用いられている。ドレスやスカートなどに用いたほどよい光沢を帯びたファブリックには、油彩を彷彿とさせる大胆な花柄を。ブラウスなどに見られるシースルーのレースには、控えめながらも彩りが際立つ小花柄を。また、ラメ糸を織り込んだファンシーツイードは、クルーネックのドレスやブラウスなどに採用されている。一方、無地においても素材感の豊かさを見て取れる。たとえばオーバーサイズのベストやカーディガンには、複数の編み地のニットを組み合わせて採用。ケーブルニットにざっくりと透け感のある編み地などを組み合わせ、1着のなかでも表情の豊かさが際立つ1着に仕上げている。カラーは、シックなグレー、ブラックやホワイトに加えて、豊かな柄の彩り、そして鮮やかなピンクやマスタードイエローを採用。ダブルブレストのジャケットやロングコート、カシュクールニットなどに大胆に用いている。
2023年03月19日ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月15日(水)に発表された。自分自身の生活観や人生観を軸に今季のヨウヘイオオノは、デザイナー大野陽平自身の少し俯瞰した生活観や人生観を軸に制作。大野のアトリエの棚には、アーティストの作品やグッズ、ヴィンテージショップで手に入れたオブジェや海外のお土産、さらにはネットショップで買ったただのおもちゃまで並び、ラインナップは様々だ。今シーズンは、大野の棚に並ぶ「コレクション」のように、「平凡だがどこか愛おしいもの」から連想。「どこにでもありそうな古着」を題材としたコレクションを展開する。プレゼンテーションの会場は、小説家の澁澤龍彦のアトリエからインスピレーションを受けたという。大野のアトリエに並ぶ、価値が認められるものからガラクタのようでいて愛おしいと思えるアイテムの数々を展示し、「愛おしい世界」を構築。プロダクトをじっくりとフラットな目線で見てほしいという願いを込めた。使い古された“古着”という記号を扱ういわゆる“古着”をレプリカのように再構成するのではなく、あくまで自分の印象だけを頼りに、“古着”を形にすることを試みた。“古着”という記号を、ブランドらしい立体的な造形アイデアや、大野による自己流の仕立てを以て、「ユニークで、ある種美しい」ルックを生み出している。たとえば、重くボリューミーな毛皮のアウターや、ポケットが大きく膨らんだミリタリーテイストのパンツ、ハンティングジャケットなど。中でも、ドレスやトップス、Tシャツ型バッグにプリントされたデザインは、誰もが既視感を覚えそうなメタルバンドTシャツから着想を得ている。“目”のモチーフ散見されたのは、目と眉毛のモチーフ。こちらをじっと見つめる瞳と眉毛を、ジャケットの胸元に配したバッジもしくは、チェック柄のドレスの肩にかけたラグにあしらった。もともと身体の一部をモチーフに扱ってきたブランドにとって、目をピックアップするのは何ら不思議なことではなかったという。「本来顔にあるはずの目が肩や胸元の位置にあるのもいいな」という遊び心に溢れた発想を表現した。ブランド初のシューズを展開足元にも注目。今回、シューズの展開はブランド初となり、装飾性だけでなく実用性も意識したデザインが印象的だ。アッパーにダイヤモンドのカッティングを施したフラットシューズやブーツ、サイドにふっくらとした装飾を配したヒールなど3型がラインナップする。
2023年03月19日チョノ(CHONO)の2023-24年秋冬コレクションが発表された。テーマは「Color the monochromatic world」。モノクロームの世界で「服の本質」を問う今季のチョノが描くのは、クラシックな白黒映画を彷彿とさせる「モノクロームの世界」。究極にシンプルな白と黒のカラーリングの中で、衣服が持つ“本質的な美しさ”を表現した。多彩な柄&素材でリズムを注目したいのは、遊び心のある多彩なファブリックだ。たとえば、白黒のストライプブラウスには、艶やかなサテンのドットジャガードのワイドパンツ、エンボス加工でドット柄を配した重厚な三重織りのアウターをオン。異なる表情のテキスタイルを重ねることで、グラフィカルなスタイリングに仕上げている。ほかにも、星柄の幾何学模様のキルティングを配したブルゾンや、光沢のある糸とマットな糸を織り交ぜたグレンチェックツイードのジャケット、やわらかな星型の膨れジャカードを使用したドレスなど、ユニークな素材感のアイテムが勢ぞろい。質感のコントラストや、凹凸による光の陰影で、モノクロームの世界をリズミカルに彩った。クラシックとフェミニンを織り交ぜてモノトーンのクラシカルな雰囲気と、チョノらしいフェミニンなムードのバランス感覚も絶妙だ。大小異なるドットチュールを組み合わせたロマンティックなロングスカートには、白と黒のボーダーニット、さらにはシルクハット風の帽子を合わせ、甘すぎないシックな佇まいに。繊細な刺繍のスカラップレースを配したブラウスや、胸元のドレープがエレガントなロールカラーブラウスもまた、極太のベルトでウエストマークすることで、フェミニンな雰囲気を引き締めている。白黒の世界でひときわ輝くピンクコレクションの中でも異彩を放っていたのが、鮮やかなピンクカラーで彩られたファンシーツイードジャケットとサテンプリーツスカートのワントーンルック。モノクロームの世界に差し込まれたピンクは、ひときわ輝きを増し、ルック全体に鮮烈なアクセントをプラス。色彩豊かな表現では視覚的に気づくことのできない“有彩色の美しさ”を見事に表現してみせた。
2023年03月19日08サーカス(08sircus)の2023年秋冬コレクションが発表された。洗練されたムードで“静かなる強さ”を魅せる今季の08サーカスは、「静かなる強さと繊細さ」をキーワードに、緊張感のある洗練されたムードを衣服に纏わせた。ブランドが大事にするジェンダーレスな空気感は引き継ぎつつ、よりエレガントで流線的なルックを提案する。黒のバリエーションコレクション全体を覆うのは、ブラックのカラー。ひとえに1種類の黒を採用したわけではなく、少し緑がかった黒など、そのバリエーションは奥行きがある。たとえば、クリーンなシルエットのノースリーブのコートとマントを合わせたルックや、カットジャカードのトップス、サテン素材のアイテムから、異なる“黒”の色合いを見てとることができる。ハードさと柔らかさを併せ持つレザーよりリアルに見えるようフェイクレザーを使用したレザーアイテムは、ハードさと同時に柔らかな印象も与える。ジャージをボンディングすることで伸縮性と柔らかさを生み出したのである。ウエストをシェイプすることで、フェミニンなラインに変化させることができるカバーオールや、米軍のミリタリーウェア“ECWCS”のボリュームを再構築したジャケットなど、捻りのある洗練されたディテールが光る。ニット×濡れたようなレザーの質感表面が濡れたレザーのような質感のプリーツスカートやセットアップなどは、カレンダー加工を施したサテンを使用。プリーツスカートは艶やかな軋みを見せ、トップス、セットアップのシャツやパンツはミステリアスで妖艶な表情を見せている。プリーツスカートには、太番手のモヘアで編み上げたカーディガンを合わせることで、異なる質感による対比を浮き彫りにした。サテンが織りなす柔らかなシルエットコレクションに柔らかな空気をもたらすのは、ムラ染めのようなサテンだ。同色に色が抜けていくハーフトーン加工を施し、まだらに柄を作り上げた。細かなプリーツを配したスカートは、異なる丈のプリーツパーツを4パネルを組み合わせたアシンメトリーなシルエットが魅力。動きに合わせて柔らかくリズミカルに揺れている。
2023年03月19日ピリングス(pillings)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月16日(木)に東京・渋谷ヒカリエホールにて発表された。自分を守るためのニット"愛おしいニットを作る"ことをコンセプトとするピリングス。今シーズンの主役となるのは、自分をぎゅっと抱きしめるようなニットだ。それぞれフロントに手を収められるポケットを付けており、「ニットも自分を守るような存在であってほしい」と語るデザイナー・村上亮太の想いを反映させた。ややタイトなシルエットでシルエットは、「ベーシックに挑戦した」という、ややタイトめなフィット感が今季のムード。裾を極端に短くしたカーディガンは、同色系のクラシカルなシャツと合わせることで、洗練された佇まいに仕上げている。“どうしようもない”パンツタイトなシルエットのニットが展開される一方で、ボトムスはボリューム感をもたせて。「どうしようもないパンツを作りたかった」というデザイナー・村上亮太の思いから、ボトムスのインスピレーション源になったのは、彼が履いていた毛玉まみれのスウェット。わざと腰回りを強調させることで意外なシルエットを生み出しているのも面白い。存在感のある蛾のモチーフ見る者の視線を奪う、存在感のあるモチーフは今季も健在。精巧に作られた蛾のモチーフはニットの前面や背面にたっぷりとあしらわれて、やや不気味なムードを演出。また、楽譜のイメージやかわいらしい鳩の刺繍などもニットに落とし込まれて、ルックに遊び心を加えている。トーンを抑えたカラーパレットカラーは、これまでのポップでかわいらしい印象から、トーンを抑えて落ち着いた雰囲気に。ホワイトやブラウン、ネイビー、グレーなどのニュートラルなカラーを基調に、穴の開いたディテールが印象的なドレスの赤や肩回りがボリューミーなニットのブルーなどが、全体の色彩感を引き締めた。
2023年03月19日ヴィヴィアーノ(VIVIANO) 2023-24年秋冬コレクションが、2023年3月15日(水)にヒカリエホールで発表された。“愛”をテーマに「この世界にもっともっと愛を広げたい」と語るデザイナーのヴィヴィアン・ノスー。そんな彼が今季テーマに掲げたのは、その想いをダイレクトに表現した“愛”だ。鮮やかな“ピンク”から始まるランウェイは、ブランドが得意とするチュールを駆使したピースからスタート。ブラウスやジャケット、時にはラフなフーディーまでに、濃淡の異なるチュールを重ねて、ロマンティックなムードを描きだした。またピンクのロングドレスには、チュールのフリルを贅沢に重ねたヘッドピースをドッキング。ブランドらしさ溢れるクチュールスタイルに、観客の視線が釘付けになったことは想像に容易いだろう。ウェアに隠れる“ハート”のモチーフ今季のテーマを体現する“ハート”のモチーフも、コレクションを語るうえで欠かせない。オーバーサイズで仕上げた、ややラフなジャケット×スカートの2ピースは、ハート模様のキルティングを組み合わせた“甘辛ミックス”スタイルで。またランウェイに登場したジャケットの多くは、ハート型のボタンをさり気なく配すなど、細部にまでデザイナーの“愛”を感じる仕上がりとなっている。鮮やかなカラーのグラデーションピンクはやがてグラデーションを描くかのように、色が移り変わっていき、オレンジ、ブルー、レッドといった原色が主役を担っていく。また毎シーズン、異なる花柄を用いているというデザイナーのヴィヴィアン・ノスーは、今季はちょっぴりアンティークなバラの花をセレクト。これは子供時代に自分を大切に育ててくれた祖母を、ファブリックに重ね合わせたのだという。ハンサムなルックも色とりどりのボリューミーなピースが溢れる中で、ちょっぴりハンサムなパンツスタイルもランウェイに。ジャケットとボトムスを大胆に融合してしまったようなジャンプスーツは、煌びやかなゴールドで提案。またシースルーのセンシュアルなトップスに合わせた端正なパンツは、他で登場したドレスのように、裾だけふんわりとしたバルーンシルエットで仕上げているのがユニークだ。足元は力強くなお足元は、lost in echoとコラボレーションした、ラフなコンバットブーツをスタイリング。力強く闊歩するモデルの姿からは、“可愛い”だけではない、真の強さがにじみ出ているようだった。
2023年03月18日サートグラフ(SARTOGRAPH)の2023-24年秋冬メンズ&ウィメンズコレクションが発表された。モダニズム建築に見る「光と影」サートグラフが掲げる今季のテーマは、「Light and Shadow」。モダニズム建築に見られる“光と影の対比”から着想を得て、黒やカーキを基調としたダークトーンのミリタリーウェアに、コントラストを生む白いステッチやメタルのジップを重ね、機能的で洗練されたワードローブを創り出した。ミリタリーウェアを再解釈今季特徴的なのは、ライナージャケットやモッズコートといったミリタリーウェアを、テーラリングの手法とモダニズム建築的なアプローチで再解釈していること。たとえば、中綿入りのモンスターパーカは、ファスナーに取り付けた前開きベルトや、テーラードジャケットのラペルを思わせる前立てなどで、現代的なデザインへとアップデート。ロングベストもまた、フロントの黒の別生地による切り替えやパイピングといったミリタリーライナージャケットに見られるディテールを、テーラードベストに応用し発展させている。ハリ感のある機能性素材これらのアウターには主に、「含浸」という溶剤で特殊加工を施したポリエステル混ウールギャバジンを使用。軽量でハリ感のある素材感で、シャープな印象を演出した。黒と白のコントラストダークトーンの生地に映える白やメタルのディテールは、安藤忠雄の建築に見られる、“影の中に差し込む光”から着想を得たもの。スウェットワンピースやモッズコートに配された白いステッチやメタルファスナー、メタルボタンは、まるで影の中の光のように、歩くたびキラキラと表情を変えるのがポイントだ。
2023年03月18日クイーン アンド ジャック(Queen&Jack) 2023-24年秋冬コレクションが、2023年3月15日(水)に上野・東京国立博物館にて発表された。<コレクションライン>が始動日本・イタリアの共同制作を実現したウィメンズの高級制服ブランド・クイーン アンド ジャック。2022年春夏シーズンには、“日本の制服”を可愛くアレンジし、スクールユニフォームのムードやディテールをアップデートさせた<コスチュームライン>が誕生したが、今回はさらにそこから派生する<コレクションライン>が始動。「ラグジュアリー ユニフォーム(Luxury Uniform)」をキーワードに、“制服風ファッション”をモードへと昇華させたプレタ・クチュールを提案する。どこか“エッジィ”なユニフォームルックグレーの制服スタイルをベースに、サスペンダースカートやパーカー重ねたレイヤードルックから始まったランウェイ。目に留まるのは、こうした見慣れたユニフォームをベースにしながら、どこかエッジィで、同時にラグジュアリーなムードも感じられるピースの数々だ。例えば制服の定番であるシャツ×セーターのコンビネーションは、新しいバランス感覚で提案。ピンクのボーダー柄シャツには、裾のサイドに大きな切り込みが入ったリブニットをレイヤード。またアイボリーのシャツには、だらりとアームが落ちる程長いボーダー柄のモヘアを組み合わせた。いずれも端正なパンツ×艶やかな黒のローファーを合わせることで、ユニフォームライクでありながら、洗練された空気も宿している。アウターも再解釈秋冬の制服に欠かせないアウターも、デザイナーの視点を通してモダンに再解釈。本来“おりこうさんルック”を作るピーコートは、共布の細いテープを複数ぶら下げたほか、アームにも波打つようなシャープなディテールをあしらいモードライクに。一方、制服とは親和性の低いダウンジャケットは、“ケープ”をつけてクラシック風なテイストで。首元にはキラキラと煌めくスワロフスキーを飾ることで、ロマンティックなムードもプラスしている。解体・再構築を繰り返してショーの終盤へと差し掛かると、これまで提案されてきたユニフォームルックの解体・再構築が進んでいく。オーバーサイズのグレーのジャケットは、その内部の構造を露わにするような複雑なフォルムへとアップデート。またシャツの上に重ねたカーディガンは、その編み模様をダイナミックに解釈しただけでなく、無機質なチェーンも編地と共に巻き付けている。そしてラストルックは、全ての集大成。セーラーカラーをベースにしたケープコートは、制服を連想させる複数のチェック柄の布地に、イタリアから取り寄せたフランスレースを贅沢にコンビネーション。ウエストは細く、一方でバックデザインはマントのように広がる程ダイナミックさを持つ、アイキャッチな一着に仕上がっていた。
2023年03月18日ヴェイン(VEIN)の2023年秋冬コレクション「ニューノーマル(NEW NORMAL)」が、2023年3月15日(水)、東京の新国立競技場にて発表された。アタッチメント(ATTACHMENT)の2023年秋冬との合同ショーとなる。“黒”との対話による多様な表現今季のヴェインは、多層な黒色の彩りを描く画家・彫刻家のピエール・スラ―ジュや、光といった外的な要因によって時空感覚を変質させる現代彫刻家・アニッシュ・カプーアの作品に着想。「一着の服を介して対話が発生することが大切」とデザイナー・榎本光希が語るように、服をみる驚きや発見を織り交ぜながら、“Illusion of your eyes(幻視)"というテーマを表現した。個性を際立たせるブラックを基調にたとえば、ウールとポリエステルの質感の違いで色味、光沢にムラを出したブラックのランダムウールファーは、“黒”だけで多様な表現を行う作品で知られるピエールスラ―ジュの影響がうかがえる好例だ。また同時に“黒”というカラーは規律の中にこそ個性は際立つ、というブランドのミニマムかつ多彩な側面と呼応しているように感じられる。質感の変化で起伏のある表現を立体的なダウンジャケットやオープンカラーシャツ、まるで作品そのものを落とし込んだようなグラデーションが印象的なジャケットなど、黒い衣服の上で行われる表現は実に多様。手染めによる色ムラや絞りによる皴の入り方に至るまで、多彩な群像を生み出している。随所に煌めくアイコニックなジップディテールディテールもまた、黒に“色どり”を加える要素として大きな存在感を放つ。テーラードジャケットのラペルにあえて残されたほつれや、カーディガンやベストに配された光沢のあるアイコニックなジップディテールはその好例と言えるだろう。とりわけブランドのアイコニックなディテールとなりつつある後者は、今季において全体のムードを引き締めるように、洗練された統一感を演出していた。爽やかで奥深いコントラストを生む“青”のアイテムまた、こうしたモノトーンのカラーパレットに軽やかでリズムを加えるのが爽やかなブルーを基調としたアイテムだ。グラデーションジャカードデニムを使用した象徴的なリサイズデニムパンツは、レギュラーフィットの股ぐりに生地を足したようなデザインに。複数の色を混ぜ合わせてハケを用いた手染めのウールギャバ、生地を縮ませたブルーシャツには、色の移り変わりを見出すことができる。
2023年03月18日メゾン・ジー・シモーヌ(Maison J.Simone)の2023年秋冬コレクションが発表された。大胆不敵な“ヴィラン”に魅せられてメゾン・ジー・シモーヌは、フランス・パリ出身のデザイナー、ジュード・フェラーリが手掛けるウィメンズ&メンズのファッションブランド。シルエットは力強く、カラフルで、オリジナリティとユーモアを備えた、着る人に自信をもたらすようなウェアを提案している。そんなメゾン・ジー・シモーヌが今季のテーマに掲げるのは、アメリカン・コミックスなどに登場する悪役キャラクター「ヴィラン」。ジョーカーやシルバー・セーブル、ブラック・ウィドウ、ヴァーティゴといったキャラクターをインスピレーション源に、彼らのダークで大胆な美学と、ストリートファイターの美学を洋服に落とし込み、現代風にアレンジした。キャラクターのエッセンスを洋服にコレクションを構成するのは、各キャラクターのエッセンスを表現したという、エッジィで洗練されたアイテム。中でも目を引くのは、キャラクターを全面にあしらったボリューム感のあるコートだ。コートの内側は鮮やかなヒョウ柄で彩って、より大胆な印象に。さらに筋肉をデザインしたトップスやスカート、ロングブーツと組み合わせて、今季を象徴するような遊び心あふれるルックを完成させた。個性あふれるプリントを用いたアイテムは、ほかにも散見された。マーブル模様を全面に描いたホルターネックドレスや、不規則なドットを描いたワンピース、トラ柄のもこもことしたパンツなど、いずれも個性的かつエネルギッシュなデザインで、ゲームの中に登場するキャラクターを彷彿とさせる。大胆でいてエレガントなカッティング上品な肌見せを実現するディテールにも注目。裾や袖にファーをあしらったボディースーツは、胸元にカッティングを施して魅惑的なムードを演出。シャツ型のセットアップは、腰部分の左右を切り取ることで、女性らしさを感じさせるアイテムへと昇華させている。コレクションを彩る小物ユニークな小物使いも、今季のムードを加速させる。ブランドロゴが目を引くベルトや、鮮やかなタイ、フィーチャーリスティックなサングラス、マタドールを思わせる帽子など、存在感のあるピースがコレクションを引き立てていた。
2023年03月18日アタッチメント(ATTACHMENT)の2023年秋冬コレクション「ニューノーマル(NEW NORMAL)」が、2023年3月15日(水)、東京・新国立競技場にて発表された。ヴェイン(VEIN)の2023年秋冬コレクションとの合同ショーとなる。人に馴染み、個を際立たせる服今季のアタッチメントは、アメリカのビジュアルアーティスト、ロニ・ホーンの「鳥葬」に着想。作品にみられる“人と自然の距離”の視覚化を「服は人の付属品である」とするブランドの理念と重ねた。朽ちて調和する―刻々といずれ馴染み合う"distance(距離感)"の再発見は、ブランド元来の直線的・インダストリアルなイメージングを「しなやかで、人肌ほどの温かみ」へと誘引。しばしばヴェインの“動”に対しアタッチメントが”静”と形容されるような、静謐かつウィットに富んだ試みによってこれを表現している。自然素材やテキスタイルでクリーンなムードを演出たとえば、合繊と天然繊維を織り交ぜた多様なファブリックや、“人肌に触れる時の心地よさ”をイメージしたというテキスタイル。さらに木製品の木目を表現したヘリンボーン柄に至るまで、クリーンで上品なムードの中には温もりのある自然的な要素が散りばめられている。これらは「人のデザイン、人為的なものが未来の世界に還元されていくこと」に着想したものだ。ウィットに富んだディテールを織り交ぜてまたウールシャツに配されたピアスパーツやアシンメトリーに配されたジップなどのディテールは、モダンな遊び心をデザインへと織り交ぜる。こうしたミニマルで普遍的な製作とデコラディブな要素の絶妙なバランス感覚による表現は、今季で3シーズン目となる榎本光希によるアタッチメントの現在地を明確に示す一つの目安となる。アタッチメントは今季、一つの到達点を迎えた。そう感じさせるのは榎本が「ひと筆で変わる感覚」と捉えたカラーコートだ。クラシカルなシルエットを採用しながらも、素材にはあえて光沢のあるものをチョイス。テーラードアイテムならではの誠実さと、カッティングや素材使いによる色気の調合が見て取れる。二項対立から共存、そして未来へ2023年 春夏コレクションに引き続きヴェイン(VEIN)との合同ショーとして開催された今季のコレクション。時に接近し、離れていく両ブランドの関係性にについて榎本は「インテリジェンスや品をささやかに醸し出す様(アタッチメント)と、独特なエネルギーを内に秘めた存在感(ヴェイン)には常に惹かれます。しかし、右と左で語られるような二項対立は、そこには存在しないはずなのです」と語った。その言葉通り、クリーンで上品なムードの中には、決して極端なミニマリズムでくくられるような無機的なものではない、繊細さと温もりのあるブランドならではの表現が打ち出されている。
2023年03月18日テンダーパーソン(TENDER PERSON)の2023-24年秋冬コレクションが、2023年3月15日(水)に渋谷ヒカリエ ヒカリエホールAで発表された。悪夢と向き合う“通過儀礼”「Dreaming of me」をテーマに掲げる今季のテンダーパーソンは、悲しみや苦しみ、プレッシャーなどを抱えたデザイナー・ヤシゲとビアンカの2人が、自分たちの存在を証明するために創作を続けたコレクションを展開。ネガティブな感情や悪夢、すなわち自分自身と向き合う極限状態の“通過儀礼"をランウェイに置き換え、表現している。精神を守るプロテクターコレクション全体を通して、衣服に悪夢を連想させるディテールが散りばめられているのが特徴だ。中でも、テーラードジャケットとパンツのセットアップには、肘・膝部分に2023年春夏コレクションでも使用した武骨なプロテクターを採用。服が“喪失感などの負の感情から、自分自身の精神を守ってくれる存在”であることを暗に示している。幼い頃の記憶からまた、デザイナー・ビアンカの幼い頃の記憶を辿ったデザインソースも。例えば、空想をイメージしたラメを織り交ぜたスカラップのカーディガン、フリンジ付きのフーディーやニットは、祖母と母の手作りの服や自身のリメーク服がベースだ。鮮やかなピンクやグリーン、ブルーを用い、生きるためのエネルギーをカラーパレットで体現している。メキシコの映画監督 ギレルモ・デル・トロのグラフィックもグラフィカルな柄が目を惹くアウターには、メキシコの映画監督、ギレルモ・デル・トロが描いた架空の登場人物やヴィンテージの絵画、ポスターなどのコラージュをプリント。中綿入り生地のアウターに星型のキルティング加工を施し、遊び心を効かせている。そのほかランウェイには、ベストとパンツも登場した。カットした“炎”モチーフアイコニックな“炎”のフレームモチーフにも注目したい。今季は、フレーム刺繍をあしらった袖の羽織に加え、職人がフレーム型にカットした裾のシャツ&カーディガンを新たに用意。ファッション業界で今後も燃え続けたいという、デザイナー2人の強い闘志が感じられた。
2023年03月18日ヨーク(YOKE)の2023年秋冬コレクションが、2023年3月15日(水)、東京国際フォーラムにて発表された。抽象画家ベン・ニコルソンの作品をインスピレーション源に今季のヨークのインスピレーション源となったのは、20世紀で最も影響力があると言われているイギリスの抽象画家、ベン・ニコルソンによる作品。ベンは徹底して幾何学的な模様や、白く淡い色の作品を生み出し続け、イギリスの抽象芸術を牽引しただけでなく、ヨーロッパにおいても現代美術の発展に大きく貢献した。そんなベンの作品から、デザイナーの寺田典夫は、「重ねる」「陰影」「線」「幾何学」「カラーブロッキング」の5つのキーワードを連想。それぞれのキーワードを表現したルックを提案する。シンプルな線や図形、布の重なり印象的なのは、シンプルな線や幾何学的な模様の重なりだ。コートやセットアップなどの衣服の上に、シンプルな線や図形を配置した。いずれも作品から着想を得た境界線を持たない淡い色合いと、アクセントとなるレッドやブルーなどのカラーを差し込むことで幾何学的な模様を際立たせている。トレンチコートやダッフルコートに施された布の重なりも目を惹く。複数重ねた布地が、モデルの歩みに合わせて軽やかに揺れ動いている。また、ウォッシュドデニムのジャケットは、複数のジャケットを重ねて転写させることで独特な模様を作り出した。ボンディング加工により生まれる「陰影」目を凝らせば見えてくる「陰影」は、布に立体感を持たせるボンディング加工により生じさせた。ロングコートにあしらわれ、静かに、だがはっきりとその影を落としている。パーツの組み合わせで魅せる遊び心ダウンジャケットは、様々なフォルムや色の組み合わせで遊び心を反映。袖は肩から袖先にかけて何パーツにも切り離せるように、さらには丈も何段階にも分けて切り離せるように設計した。パーツを切り離していくと、ベストやミディアム丈など多様なシルエットだけでなく、異なる色を組み合わせてカラーブロックを作り出すこともできる。
2023年03月18日アブランクページ(ablankpage)の2023-24年秋冬コレクションが東京・渋谷ヒカリエで2023年3月14日(火)に発表された。アズ イヤーズ ゴーズ バイズ アブランクページ × エドウィンとの合同ショー2022年秋冬コレクションよりスタートした、タイ生まれのデザイナー ラロパイブン・プワデトが手掛ける気鋭ブランド、アブランクページ。“何もない空白のページ”という意味を持つアブランクページには、“偏見や固定観念にとらわれず自分自身で人生の物語を書き進めていく”という思いが込められている。今季はアブランクページに、メゾン シュン イシザワ(Maison Shun Ishizawa)を手掛ける石澤駿をゲストデザイナーに迎えたアズ イヤーズ ゴーズ バイズ アブランクページ × エドウィン(AS YEARS GOES BYS ABLANKPAGE X EDWIN)を加えた2ブランドの合同ショーを実施。活気ある学校の食堂を思わせるランウェイを舞台に、性別・年齢・体型などを気にせずに、誰もが自由に楽しめるユニセックスウェアを提案する。エドウインのアイテムを再構築アズ イヤーズ ゴーズ バイズ アブランクページ × エドウィンでは、エドウイン(EDWIN)のB品素材をモダンなアイテムへと昇華させたサステイナブルなウェアを展開。デニムウェアを解体再構築したアイテムは、ポケットを繋げて作り上げたワンピースをはじめ、上下で別々に着用できるジャンプスーツや、オーバーサイズのジャケットなどが登場した。解体再構築のアプローチは、デニムウェア以外にも見られる。柄や色味の異なるTシャツをパズルのように組み合わせて個性溢れる一着へと昇華させたトップスや、解体したシャツのパーツを繋ぎ合わせ、袖を驚くほど長く設定したシャツワンピースなどが披露された。カラフルなキャラクターアブランクページからは、デザイナーが小学生の頃に自作したというボードゲームのキャラクターを着想源としたアイテムが登場。ドレスのトレーンのようなディテールが印象的なシャツワンピースや、ジャンプスーツの下に忍ばせたTシャツなどにカラフルなキャラクターが生き生きと描かれている。羽を取り付けたテーラードジャケットラストルックを飾ったテーラードジャケットは、子供があえて大人の服を着たかのような大きめのサイズ感で。背中には、個性豊かなキャラクターをデザインした羽を取り付け、プレイフルでエネルギッシュなコレクションを楽しく彩った。
2023年03月17日まとふ(matohu)の2023-24年秋冬コレクションがが東京・表参道ヒルズで2023年3月14日(火)に発表された。タイトルは「共振する世界」。島根県松江市をフォーカス2019年春夏コレクションより、映像+プレゼンテーション形式でコレクションを発表しているまとふ。「手のひらの旅」と名付けらたこのプロジェクトシリーズが今回フォーカスしたのは島根県松江市だ。「スリップウエア」の模様を表現まず最初に注目したいのは、明治から続く焼物屋「袖師窯(そでしがま)」で特別に作ってもらったというオリジナルの陶製ボタン。ボタンには、粘土を水で溶いた化粧土を流しがけ、引っ搔くことで描いた「スリップウエア」の模様が表現されている。これらのボタンは、長着やジャケットなどにあしらい、まとふならではの日本の伝統美を感じさせる一着に仕上げた。「スリップウエア」の模様は、ジレやパンツに使用されたジャカードにも落とし込まれている。チェック柄を同時に表現することで、よりいっそう奥行きを感じられるデザインに仕上げているのも面白い。筒描きを施したブラウスやコートスタンドカラーブラウスにあしらったストライプ柄や、長着に描いた菊の葉と格子柄は筒描きによって表現。いずれも深みのある藍色の生地から浮き出ているように見える、立体感のある表情が魅力的だ。宍道湖の夕日を落とし込んでショーのラストを飾った「秩父銘仙」の長着とドレスは、「手のひらの旅」の道中に宍道湖で見たという夕日から着想。濃度の異なるピンクを幾度となく重ねたようなこの服は、見る者を壮大な夕日が沈む宍道湖へと誘うのだった。
2023年03月17日エズミ(EZUMi)の2023-24年秋冬コレクションが発表された。エドワーディアン時代から現代に思いを馳せて2023年春夏コレクションでテーマにした優美なヴィクトリア時代から続く今季のエズミは、1900年前後のイギリス・エドワーディアン時代の服飾文化が発想源。当時のファッションといえば、ヴィクトリア時代の曲線美を主張するスタイリングから、紳士服とスカートを合わせた着こなしへ、時代の変遷とともに服飾文化も転換期を迎えていた。“もし、そんなエドワーディアン時代の女性たちが現代にいたら…”という発想のもと、新たな女性像を表現する。“テーラード”にフィーチャーエドワーディアン時代を象徴するアイテムとして、デザイナー・江角泰俊が着目したのは、“プリンセスライン”と呼ばれる胸から肩まで続く縫い目が特徴の「エドワーディアン ジャケット」だ。この当時は珍しかった縫製技術を駆使したジャケットは、フェミニンかつ自然なボディラインを描き出す。さらに今季のコレクションでは、男性のスーツに見られるテーラード仕立てを採用することで、マニッシュな要素がプラスされた新しいジャケットに再構築している。男性服にフェミニン要素を男性と女性のファッションの要素が混在していたことでも知られるエドワーディアン時代。そんな当時のムードを体現するのは、異素材をドッキングしたフレアシルエットのワンピースだ。チェック×無地を掛け合わせたボディ部分は、女性らしく胸元を大きく開け、袖は当時のファッションで男性美を示すレース&フリルをデコレーション。またスカート部分は、レース×チェック×無地の切り替えで、絶妙なバランス感覚を提案している。オリジナルのデニム生地また、“デニム”も今季のキーアイテムだ。廃棄予定のデニムを割きツイード状にしたオリジナル生地は、ジャケットやワンピース、スカートへと変身。ライトブルーのデニムジャケットを着用したルックでは、今季らしいボリューミーな袖のブラウスに、チェックスカートを合わせたレイヤードスタイルが提案された。さらにコレクションには、ブランド初のデニムパンツも登場。リジッド調のインディゴカラーで上品な佇まいに仕上げている。バルーンシルエットコレクション全体を通して散見されたのは、スカートの裾がふんわりと膨らんだ“バルーンシルエット”。ピンクのワンピースやネイビーのジョッパーズなど、女性が動きやすいゆったりとしたフォルムに仕上げている。なお、カラーパレットは、ブラックやネイビー、ホワイトのベーシックカラーに加え、デニムのライトブルーやインディゴ、差し色のグリーンなど幅広い展開だ。
2023年03月17日ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)の2023-24年秋冬コレクションが2023年3月14日(火)に東京・グランドプリンスホテル高輪 貴賓館で発表された。ジェリー・シャッツバーグの写真集をヒントに着想源となったのは、写真家としてキャリアをスタートさせ、後に映画監督に転身したジェリー・シャッツバーグ(Jerry Schatzberg)の写真集『WOMEN THEN』。1954年から69年にかけて撮影された作品の中に登場する女性のふるまいとエレガンスが、今季の女性像を表現する上で大きなヒントとなったという。発表の舞台も『WOMEN THEN』に収録されているファッションショーの写真からインスパイア。マルク・ボアンがデザイナーを務めていた頃のディオールや、最初期のイヴ・サンローランのように、サロンのような雰囲気の中で観客の近くをモデルが歩いていくショーを「貴賓館」で再現した。モノクロからカラーへファーストルックはブラックのタートルネックトップスにロングコートを羽織ったシックなスタイリングからスタート。続くルックもブラックのロングドレスで、徐々にブルー、グリーン、ベージュ…と色づいていく。物語性を感じさせる『WOMEN THEN』のモノクロからカラーへと移り変わる構成が、ここにも落とし込まれている。煌めくフリンジ時折差し込まれたスワロフスキーのフリンジは、コレクションに漂うエレガントなムードを加速させていく。ノーカラージャケットとパンツのセットアップには、一筋の光がさすかのごとく、縦のラインに沿ってフリンジをあしらって。袖口から顔をのぞかせるデコラティブなブレスレットは、ブランドが大切にしている仕草で見せる美しさを体現している。ユニークな素材ユニークな素材が繰り返し提案されたのも今季の特徴といえる。たとえば、淡いグレーとブルーのバイカラーのケープコートには一捻り効かせたシルクを採用。繊細なシルクをわざと何度も毛羽立たせることで、やわらかいカシミアのような質感に仕上げている。本来スポーティーな印象を与えるダウンジャケットには、膨れ織ジャカードのシルクオーガンジーを使用。パターンへのこだわりも相まって、クチュールライクな一着へと昇華させている。キャップのようなルックスも楽しめるハット今季のルックを完成させる上で欠かせなかったというハットは、前方と比較して後方を長く設定したユニークなシルエットで。前後を逆にして着用すれば、キャップのようなルックスを楽しむこともできる。
2023年03月17日