教科書にも掲載されている《空也上人立像》をはじめ、京都・六波羅蜜寺の名品が一堂に会する特別展『空也上人と六波羅蜜寺』が東京国立博物館で5月8日(日)まで開催されている。《空也上人立像》は東京では50年ぶりの公開となる。2022年は、空也上人の没後1050年にあたる年。空也上人は疫病が蔓延していた平安時代中期に活躍した僧侶で、各地を遍歴し、「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽浄土に行けるという阿弥陀信仰を民衆に広めた。また、六波羅蜜寺の前身となる寺院、西光寺を開山した人物でもある。同展では、重要文化財である《空也上人立像》をはじめ、六波羅蜜寺が所蔵する寺宝を展示している。左右4体重要文化財《四天王立像》平安時代・10世紀増長天のみ鎌倉時代13世紀/ 中央重要文化財《薬師如来坐像》平安時代 10世紀いずれも六波羅蜜寺蔵六波羅蜜寺の前身、西光寺の創建は951年、平安時代半ばのことだ。《四天王立像》は、鎌倉時代に模刻された増長天を除き、西光寺の創建時に合わせて造られたと伝えられるもの。180cm弱の大きさがあり、重厚感に満ちている。四天王に挟まれた形で配置された《薬師如来像》は、空也上人の没後、弟子である中信が造像したと伝えられている。中信は西光寺を六波羅蜜寺に改名した僧侶で、この薬師如来像を本尊とした。また、六波羅蜜寺には、2体の地蔵菩薩も伝えられている。平安時代と鎌倉時代に制作されたそれぞれの菩薩像からは、時代による様式の変遷をしっかりと見て取れる。やわらかく華やかな印象を与える立像と、運慶による衣のひだまで繊細に作り込まれた坐像を見比べてみるのもおもしろい。重要文化財《地蔵菩薩立像》平安時代 11世紀京都・六波羅蜜寺蔵重要文化財 運慶作《地蔵菩薩坐像》鎌倉時代12世紀京都・六波羅蜜寺蔵重要文化財 《伝平清盛坐像》は慶派の仏師の手によるものと考えられている。僧侶の姿で巻物を持つ、他の同時代の像にはないポーズを取っている。なぜこの姿なのか、なぜ作られたのか、いまだにわかっていないミステリアスな本像だが、おそらく清盛の魂を鎮めるために作られたとも考えられている。重要文化財 《伝平清盛坐像》鎌倉時代13世紀京都・六波羅蜜寺蔵そして、なんといっても本展の目玉は空也上人立像。透明ケースに入り、360度どこからでも鑑賞することができる。空也の口から飛び出した6体の阿弥陀仏は、彼が「南無阿弥陀仏」と唱えたことで、念仏の文字の数だけ仏が生まれていたことを表している。この像は空也が亡くなった約250年後に制作されたもので、制作したのは運慶の四男、康勝と考えられている。重要文化財 康勝《空也上人立像》 鎌倉時代 13世紀京都・六波羅蜜寺蔵インパクトの強い口元と阿弥陀仏に注目が行きがちな立像であるが、この像は空也の体つきや、まとっている袈裟、握っている杖など、すべてが細部まで写実的に作り込まれていることも特長。正面だけでなく、横や後からもその姿をしっかりと眺めてみよう。腕に浮き出た血管や、薄いわらじなど、極めて写実的な描写に息を飲む。重要文化財 康勝《空也上人立像》(部分) 鎌倉時代 13世紀京都・六波羅蜜寺蔵重要文化財 康勝《空也上人立像》(部分) 鎌倉時代 13世紀京都・六波羅蜜寺蔵重要文化財 康勝《空也上人立像》(部分) 鎌倉時代 13世紀京都・六波羅蜜寺蔵コンパクトな会場のなかに、《空也上人立像》をはじめ、強く目を引きつける寺宝がならぶ『空也上人と六波羅蜜寺』。平安から鎌倉時代にかけての名品を、この機会にしっかりと目にやきつけよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】『空也上人と六波羅蜜寺』3月1日(火)~5月8日(日)、東京国立博物館本館特別5室にて開催
2022年03月08日重要文化財《空也上人立像》を、東京で半世紀ぶりに公開。さらに平安・鎌倉彫刻の宝庫、六波羅蜜寺の名宝を一堂に公開する特別展『空也上人と六波羅蜜寺』が、3月1日(火)より東京国立博物館 本館特別5室にて開催される。平安京に疫病が流行した際、念仏をひろめた空也上人。その念仏をとなえ歩いた姿を目の当たりにするような、写実的な像である《空也上人立像》は、運慶の四男である康勝の代表作とされ、つねに市井の人々と共にあった上人への畏敬の念と、口から6体の阿弥陀仏が現れたという伝承を表したもの。平安時代中期の僧・空也上人が、《十一面観音菩薩立像》を本尊として京都・東山の地に創建した六波羅蜜寺(創建時は西光寺と称した)・宝物館に安置されている《空也上人立像》を、同展ではぐるりと360度存分に鑑賞することができる。そのほか、六波羅蜜寺の創建時につくられた《四天王立像》、定朝の作と伝えられる《地蔵菩薩立像》など、平安から鎌倉時代の彫刻の名宝を一堂に公開。数々の作品を通じて、大きく歴史が動いた平安から鎌倉の仏像の移り変わりも紹介する。重要文化財 《四天王立像のうち持国天立像》平安時代・10世紀京都・六波羅蜜寺蔵写真:城野誠治重要文化財《薬師如来坐像》平安時代・10世紀京都・六波羅蜜寺蔵六波羅蜜寺写真:浅沼光晴【開催概要】特別展『空也上人と六波羅蜜寺』会場:東京国立博物館 本館特別5室会期:2022年3月1日(火)~2022年5月8日(日)時間:9:30~17:00休館日:月曜日(3月21日、3月28日、5月2日は開館)、3月22日(火)料金:一般1,600円、大学900円、高校600円※事前予約(日時指定券)推奨※関連展示として本館11室にて六波羅蜜寺所蔵の作品を公開展覧会公式サイト:
2022年02月14日