乳がん手術を受けた女優の南果歩が22日、退院後の検診でがんの転移がなかったことをTwitterで報告した。南さんは、人間ドックで早期の乳がんが見つかり今月11日に手術を受けていた。退院してから初めての検診を受け、「病理検査の詳細が出て、転移なしとのことでした」と報告。4月からは舞台稽古が始まる予定であるだけに、「これでひとまず安心」と胸をなでおろした。乳がんが見つかったのは、夫で俳優の渡辺謙に早期の胃がんが見つかったことがきっかけだった。渡辺さんが主演を務める米ブロードウェイ・ミュージカル「王様と私」に向けて渡米する前に、南さんが人間ドックを受けることを勧め、そこでがんが見つかった。そして南さんも手術を受ける夫をサポートするため寝泊まりしていた病院で検査を受けたことで、早期の発見につながった。がんが見つかった際、「『まさか、私が』これがその時の正直な気持ちです。しかし、人間ドックを偶然受ける機会があった私は幸運なんだ」と心境をブログにつづっていた南さん。今回のツイートでも「当たり前の事など、何ひとつない」とした上で、「まず一歩。そして明日も」と前向きな気持ちを記した。(花)
2016年03月23日慶應義塾大学、日本医療研究開発機構(AMED)、科学技術振興機構(JST)は3月22日、乳がん、卵巣がん、肝がん、肺がん、膵臓がんなどの難治性がんを含む多くの悪性腫瘍で高発現している膜結合性ヘムタンパク質「PGRMC1」の構造を解明したと発表した。これにより、がん細胞が増殖を活性化する仕組みと、抗がん剤に対する耐性を獲得するメカニズムが明らかになった。同成果は、慶應義塾大学 医学部 医化学教室 加部泰明講師、末松誠教授(研究当時、現:AMED理事長)らの研究グループによるもので、3月18日付けの英科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。今回の研究では、X線結晶構造解析を行うことにより、PGRMC1がタンパク質中のチロシン残基を介した珍しい様式でヘムと配位することがわかった。この配位したヘムはタンパク質表面上に突出した構造を取っており、PGRMC1は分子中のアミノ酸残基をほとんど介さずに突出したヘム同士が重なり合った特異なヘム重合体構造を形成している。PGRMC1はヘムのない状態ではアポ体としてモノマー構造で存在するが、今回の生化学的な解析から、ヘムと結合することにより二量体化することが明らかになった。このようなタンパク質中のヘムを介した重合化が見い出されたのは、真核生物では初めてだという。また、生体内ガス分子である一酸化炭素(CO)は、がん細胞が抗がん剤や放射線治療、低酸素などにさらされると増加することが知られているが、同研究グループは今回、このCOがPGRMC1上のヘムに結合すると、ヘム同士の重合が解離してPGRMC1の機能が消失することを見出した。さらに解析を進めた結果、PGRMC1はヘムにより重合化し、がん増殖に関わる上皮成長因子の受容体(EGFR)と会合して、これによるがん増殖シグナルを増強することが明らかになった。重合化したPGRMC1は薬物代謝酵素であるシトクロムP450とも会合し、抗がん剤の分解活性を増強して、がん細胞の薬剤耐性を促進することもわかった。以上の結果からPGRMC1は、がん細胞内のヘム濃度に応答し重合化することによって活性化し、がん細胞の増殖促進や抗がん剤耐性獲得に関与するという、ダイナミックな構造変換によって機能していることが明らかになったといえる。同研究グループは、PGRMC1に結合してその機能を阻害する化合物が見つかれば、新たな抗がん剤の開発につながる可能性があると説明している。
2016年03月22日【ママからのご相談】小学生の子どものママです。子どもが昔からキウイが苦手です。私は酸っぱい味が苦手なのかなと思っていたのですが、キウイを食べると喉がイガイガして気持ち悪くなるからだと言われました。私や夫はキウイを食べても特に何も違和感はないのですが、子どもは食べ物アレルギーなのでしょうか。●A. お子さんが花粉症などのアレルギー体質であれば、口腔アレルギー症候群の可能性があります。ご相談ありがとうございます。健康・美容ライターのMAKIです。ご両親が食べても特に問題ないのに、お子さんが喉の違和感を訴えられる食べ物があると心配ですよね。実は、特定の果物や野菜を食べると喉がイガイガして気持ち悪くなったり、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状が現れたりする方は結構おられます。これを、口腔アレルギー症候群 と呼びます。今回は、果物や野菜と口腔アレルギー症候群の関係や、花粉症との関係、そして対策についてご紹介しましょう。●口腔アレルギー症候群とは?口腔アレルギー症候群とは、花粉症の患者さんが果物や野菜を食べることで、口腔内にアレルギー症状が起こり食べ物が直接触れた口や舌、喉がかゆくなったり腫れたりする症状のことです。口腔内だけでなく、じんましんや吐き気、腹痛などの症状が出る場合や、まれに喘息発作やアナフィラキシーショック が起こることもありますが、症状の現れ方には個人差があります。●口腔アレルギー症候群の原因は?口腔アレルギー症候群の原因は、原因となる食べ物が直接、口腔粘膜に触れることで起こるアレルギー反応と言われています。花粉症の方は、花粉が飛ぶ季節だけアレルギー症状を起こすと思われている方も多いのですが、実は普段食べている果物や野菜の中にも花粉症の原因となるアレルギー物質(アレルゲン)が含まれている場合も多いのです。そして、ある特定の花粉にアレルギーを持つ花粉症の方が同じアレルゲンを含む果物や野菜を食べると、花粉症と同様のアレルギー症状が出てしまう のです。これが口腔アレルギー症候群の原因です。●口腔アレルギー症候群の原因となる主な食べ物花粉症の原因物質がさまざまあるように、口腔アレルギー症候群を起こす食べ物もたくさんありますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介しましょう。●(1)イネ科の植物にアレルギーがある場合バナナ、トマト、メロン、セロリ、オレンジ、スイカなど。●(2)ブタクサにアレルギーがある場合メロン、スイカ、バナナ、きゅうりなど。●(3)ヨモギにアレルギーがある場合キウイ、ニンジン、セロリ、りんごなど。●(4)シラカバにアレルギーがある場合りんご、さくらんぼ、すもも、桃、イチゴ、なし、きゅうりなど。●(5)スギ、ヒノキにアレルギーがある場合トマトなど。●口腔アレルギー症候群の治療法や対策果物や野菜を食べると現れるため、食物アレルギーと勘違いされる場合もありますが、口腔アレルギー症候群は口腔内で症状が出るので、たくさん摂取することが少なく重篤化する可能性が比較的低い のが特徴です。そのため、口腔アレルギー症候群の予防は、原因となる果物や野菜の摂取を控えることです。喉の違和感や腫れなどは時間の経過とともに治ることも多いのですが、じんましんや発作など症状が重い場合は医療機関を受診し、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、ステロイド薬などを使って治療します。----------いかがでしたか。今回は口腔アレルギー症候群についてご紹介しました。花粉症の程度や食べ物に反応する度合いによってもアレルギー症状の現れ方には個人差がありますので、気にならない方も中にはおられるでしょう。しかし、花粉症をお持ちの方で、果物や野菜を食べていて違和感があるという方は、血液検査でアレルギーの反応が出る食べ物を調べることができますので、アレルギーに詳しい専門の医療機関 を受診されるといいでしょう。小さなお子さんの場合は、まずは小児科を受診するようにしましょう。【参考リンク】・口腔アレルギー症候群 | 中野こどもクリニック()●ライター/MAKI(健康・美容ライター)
2016年03月20日女優の南果歩が、今月11日に乳がん手術を受けていたことが分かった。17日(木)に自身のブログで明かした。南さんに乳がんが見つかったのは、奇しくも夫で俳優の渡辺謙に人間ドッグを勧めたことがきっかけだった。その人間ドックで渡辺さんは早期の胃がんが見つかり今年2月に手術を受けた。奇跡的とも言えるほど早期の発見だったことに、当時渡辺さんはTwitterで人間ドックを勧めてくれた妻への感謝の言葉をつづっていた。しかし南さんは、今回のブログで「私の助言から人間ドックを受けたことで謙の命を救ったのではなく、私の方こそ謙の病から救われた命です」と夫への感謝の言葉をつづった。南さんは渡辺さんの入院中、病院で寝泊まりする合間を縫って、自身も人間ドックを受けたという。それはこれからニューヨークでのミュージカル出演のため海外へ発つ夫を安心させるためにと受けたものだったが、検査の結果、乳がんステージ1の診断が下った。「『まさか、私が』これがその時の正直な気持ちです」とその当時の思いをふり返った南さん。「しかし、人間ドックを偶然受ける機会があった私は幸運なんだ、見つけて頂いた事が奇跡なんだと自分に言い聞かせドラマの収録を終えた後、病院に速やかに体制を取って頂き3月11日に手術を受けました」と報告した。早期発見ではあったが、手術を受けたことでの心身のダメージは決して小さくはないようで、「乳癌という病には病巣を取り除いただけでは済まないデリケートな問題を多分に含んでいることを、実際に自身が当事者になって初めて理解しました。まだまだ乳癌という現実を受け入れるのには時間が必要です」と、気持ちの整理はまだついていない様子。「『命には限りがある』ということを、身をもって知る機会にもなりました。皆さんもご自身で機会を作り検診を是非受けてください、大切な人を悲しませないためにも」と呼びかけた。(花)
2016年03月17日東京大学は3月16日、東京大学分子細胞生物学研究所の中村勉講師らの研究グループが、ヤコブセン症候群患者が発症する自閉症の原因は、脳の神経細胞の活動を抑えるGABA受容体の運搬に関与するたんぱく質「PX-RICS」だと特定したと発表した。今後、自閉症の新薬の開発につながる期待が持てるという。自閉症は発達障害の一つ。厚生労働省によると、発達障害にはアスペルガー症候群や注意欠如・多動性障害(ADHD)などもあり、自閉症は80~100人に1人の割合で発症すると言われている。「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「限定的な興味や強いこだわり」などの症状を特徴とする。「社会認知機能」と呼ばれる他者の心情を推し量ったり、他者に共感したりする脳の機能の障害が自閉症の原因であると考えられているが、発症の詳しい仕組みはこれまでにわかっていなかった。研究グループは大脳皮質や海馬など、脳の認知機能に関連する領域の神経細胞に豊富に発現しているたんぱく質・PX-RICSを同定し、その遺伝子を欠損するマウスを作製した。そのマウスは外見的には正常だったが、他のマウスに対する興味が少ないことを確認。具体的には、「他のマウスに対する反応や超音波域の鳴き声を使った母子コミュニケーションが少ない」「反復行動が正常なマウスよりも多い」「習慣への強いこだわりを持つ」など、自閉症の症状に特徴的な行動異常を示していたという。さらに解析を進めたところ、PX-RICS遺伝子が「ヤコブセン症候群」(11番染色体長腕末端部の欠失に起因する先天異常疾患)患者の半数以上が発症する自閉症の原因となる遺伝子であると特定できたとのこと。中村講師はこの結果を受け、「今回、私たちはGABA受容体の輸送が自閉症の発症に関係することを明らかにしました。この輸送メカニズムを標的とした薬剤を開発するなど、今回の成果は自閉症の新たな治療戦略へ貢献できる可能性があります」とコメントしている。
2016年03月17日【女性からのご相談】私は高校生です。最近母がうつ病になってしまい心配なのですが、うつ病が遺伝するのか心配です。私も母みたいにうつ病になってしまうのでしょうか?●A. うつ病が遺伝することはありませんので安心してください。こんにちは。メンタルフリーライターの木田あゆみです。お母様がうつ病とのこと、さぞかし心配ですね。ご相談のうつ病が遺伝しないか心配とのことですが、うつ病は遺伝することはありませんので、まずはご安心ください。これは多くの精神科医が認める事実です。●うつ病が遺伝することはないが、うつ病になりやすい家庭環境に要注意うつ病が遺伝しないことを案内しましたが、むしろ、うつ病になる原因は、本人の気質と家庭、仕事環境などのミスマッチ にあることが多いと言われています。相談者様のお母様がうつ病とのことですが、高齢になってからのうつ病は珍しくありません。逆に子育てが一段落したお母様だからこそ、今までのストレスの反動でうつ病になった可能性があります。まずは主治医の指示に従って、お母様を相談者様が支えてあげることが大事と言えます。相談者様は恐らく健康であると思われますので、うつ病に関する正しい知識をお母様の主治医から聞いて、その通りにお母様に接すればよいでしょう。うつ病は遺伝しませんが、うつ病のお母様との接し方を間違えると、それがストレスになり、家族もうつ病になってしまう 可能性もありますので、主治医の指示に十分に従うことが重要と言えます。例えば、フィンランドでは家族や友達同士の会話によるコミュニケーションを重視したうつ病の治療法を実践しているそうです。うつ病になってしまったお母様のためにも、家族で正しいうつ病の知識を身に付け、今まで頑張ってきたお母様を家族の会話で支えてあげることが肝要と言えるかもしれません。----------うつ病は悪化することもありますが、寛解することも多い病気です。お父様と一緒に家族でお母様を支えて、暖かい家庭でうつ病を克服してもらいましょう。【参考リンク】・諸外国の精神保健医療福祉の動向 | 厚生労働省(PDF)()●ライター/木田あゆみ(メンタルフリーライター)
2016年03月05日ABC Cooking Studio、オムロン ヘルスケア、ドコモ・ヘルスケアが設立した「女性のカラダ・ミカタ宣言」コンソーシアムはこのほど、「いつかママになるためのカラダづくり」プログラムの成果を発表した。同プログラムは20~30代の働く女性33名を対象に実施した。同プログラムでは、全3回(2015年11月21日、2015年12月12日、2016年1月23日)にわたりワークショップを開催。専門家による妊活(妊娠活動)に関する食事や生活習慣の講義、ABCによる栄養に関する講義と調理デモンストレーションを行ったほか、体重やBMI(体格指数)などの体組成測定や食物摂取頻度調査(FFQg)、生活習慣や体調に関する調査などを実施した。さらに参加者は、約3カ月間にわたりオムロン ヘルスケアの婦人用電子体温計「MC-652LC」と、ドコモ・ヘルスケアのアプリ「カラダのキモチ」を使用し、毎朝基礎体温を測定。アプリに記録し、月経周期に沿ったアドバイスや、自分のカラダの状況を知るきっかけづくりを行った。参加者が測定した基礎体温データを分析したところ、測定データから排卵していることが推定できる17名のうち、月経周期が正常できれいな二相性の基礎体温パターンを示した人(正常群)は約67%と、3人に1人の割合で異常が見られたという。正常群と異常群を比較すると、正常群の方が異常群に比べて1日に必要な栄養量を摂取している「エネルギー充足率」が約19%高いことがわかった。中でも、炭水化物とレチノールの摂取量が高いという。また、体組成データの比較では、異常群の方が体重やBMIが有意に高く、肥満傾向であることも明らかになっている。肥満を伴う月経異常は、卵子をうまく排出できない婦人科疾患である「多嚢(のう)胞性卵巣症候群(PCO)」の可能性もあり、不妊の原因の一つとも考えられている。そのため、早めに婦人科を受診し、適切な指導・治療を受けることが重要になるとのこと。第1回目のワークショップ参加時点では、参加者の約95%がエネルギー摂取量不足の状態にあり、食物繊維および鉄分は100%が不足、カルシウムは81%が不足、塩分や脂質は半数以上が過剰摂取状態にあることがわかった。一方、76%の参加者がバランスのよい食事を「だいたい取れている」「十分に取れている」と考えており、意識差があることも明らかとなった。また、女性に必要な1日の摂取エネルギーは、身体活動レベルが「ふつう」の18~29歳女性では1950kcal、30~49歳女性では2000kcalとされている(厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2015年版」より)。第1回目のワークショップ参加時点では、参加者の平均摂取エネルギーは1597.1kcalと大きな差が見られたが、3回目のワークショップ参加時点では平均1727.5kcalまで改善した。意識調査では、バランスのよい食事が「取れていない」と考えた人は2倍以上増加し、自分の食生活を客観的に正しく評価できるようになったと考えられる。プログラム実施後に行ったアンケートでは、「ホルモン周期から、イライラや調子が分かるので気持ちの揺らぎを客観的に見ることができた」「月経前のドカ食いはホルモンのせいだと気付き、コントロールすることができました」などという声が寄せられたとのこと。
2016年03月04日愛犬の死で注目を集めている釈由美子さんに、「代理ミュンヒハウゼン症候群なのでは?」という疑問の声が上がっています。2016年3月2日に自身のブログで「私の命よりも大切な愛犬のこころが2月25日の深夜、亡くなりました」と、愛犬が亡くなったことを報告した釈由美子さん。愛犬の死亡は「日本酒のおちょこに顔を突っ込んで目を離していたすきに、少量舐めていた」ことが原因だとしており、自身の過失に後悔しながら「十字架を背負って生きていきます」と綴りました。これに対し、ネット上では愛犬家たちが大激怒。『ペットの命を軽く見すぎてる。こういう人はペットを飼っちゃダメだろ』『十字架を背負う?失った命はもう戻らないんだぞ』『子犬を虐待して殺したも同然。ペットを飼う資格ナシ』などと辛辣な言葉が飛び交っています。●自分に酔ってる!? “代理ミュンヒハウゼン症候群”の可能性が浮上釈由美子さんは、前日の3月1日にもブログで『筆舌に尽くしがたい悲しみにずっと襲われています』と意味深な発言をして、さまざまな憶測を呼びました。真相は上述の通り“愛犬の死”だったわけですが、わざわざ2回にわけて報告したこと、ブログの文章が同情を誘うような書かれ方をしていること、以前にも愛犬が3か月半で亡くなっていることなどの理由から、「代理ミュンヒハウゼン症候群なのでは?」と疑問視されています。代理ミュンヒハウゼン症候群とは、自分の身近な人をわざとケガさせたり病気にさせることで、他者からの関心を集めて精神的満足を得ようとする病気のこと。ネット上では、『「十字架を背負って生きていきます」って、まるで悲劇のヒロイン気取りだな』『愛犬の死より悲しんでる私がメイン』『ブログの閲覧数は金になる。それが答え』『前にも犬死んでるって代理ミュンヒハウゼン症候群だろこれ』と愛犬の死因に含みを持たせる意見が多く見られます。また、『犬のつぎは……』などと釈由美子さんの第一子を心配する声も見られました。----------とはいえ、同じようにペットを事故で亡くした方々からは、『気持ちは痛いほどわかる』『負けないで!』と同情の声も多く上がっています。愛犬の死で思わぬ波紋を呼んでしまいましたが、悲しみに負けず無事に第一子を出産してほしいですね。【画像出典元リンク】・釈由美子オフィシャルブログ 「本日も余裕しゃくしゃく」Powered by Ameba/(文/パピマミ編集部・上地)
2016年03月04日北海道大学病院(北大病院)は3月2日、「がん遺伝子診断部」を開設したと発表した。同部署は、がん患者のがん遺伝子情報を解析し、患者個々人に最も適した抗がん剤の情報を提供する専門部署で、同部署にて「がん遺伝子診断外来」が開始される。開始時期は4月1日を予定。同外来では、自由診療で、研究ではなく医療サービスとして網羅的ながん遺伝子検査を行う。同院によると、独自の院内がん遺伝子解析システムを利用することで、高い検査精度を担保しつつ、検査結果が得られるまでの期間が2週間にまで短縮されるところが特徴であるとしている。最終的な治療については、遺伝子解析担当医、主治医、腫瘍内科医などからなる専門チームがカンファレンスにて決定し、患者が納得したうえで行うという。
2016年03月03日子宮頸がんワクチン、乳がんなどの話題から、女性特有の疾患について関心が高まる昨今ですが、月経前症候群(PMS)について、聞いたことがある人はどのくらいいらっしゃるでしょうか。女性特有の「生理」にまつわる体調・精神面の不調、ハードワークに陥りがちな女性クリエイターには身に覚えのある方も多いかもしれません。症状に見舞われる本人の創作が阻害され、さらには当事者だけでなく周辺にも影響を与えることもある「PMS」。いったいどんな特徴があり、どんな「治し方」があるのでしょうか。この連載では、忙殺され身体を酷使しがちなクリエイターが「健康的に創り"続ける"」ための知識を公開。敷居が高いイメージになってしまった「健康」を広く手の届くものにすべく活動されている鍼灸師・若林理砂さんが、忙しいクリエイターにもできる「健康への第一歩」につながるエピソードを語ります。第9回は、「生理前症候群(PMS)」が起こる仕組みや実態、症状を和らげる方法について語っていただきました。若林理砂1976年生まれ。鍼灸師・アシル治療室院長。高校卒業後に、鍼灸免許を取得し、エステサロンの併設鍼灸院で、技術を磨く。早稲田大学第二文学部卒。2004年、アシル治療室開院。著書に「養生サバイバル」「安心のペットボトル温灸」など。好きな漫画/アニメは「進撃の巨人」「FSS」「おそ松さん」。一昔前は腐っていました。「どの宮崎アニメにも必ず出演している」顔立ちといわれています。夫はクーロンズ・ゲートの人。TwitterID: @asilliza月経前症候群(PMS)というものをご存じでしょうか。女性の月経周期にまつわる不調は「生理が重い」など感覚的に言われがちでしたが、症候群としての認知は少しずつ広がりつつあります。2014年にはゼリア新薬から「PMS」治療のための薬が発売され、CMを流すなどしていたので、それで目にした人もいるかもしれません。○忘れた頃にやってくるPMSPMSの症状としては、月経前の数日から一週間ほどの間、イライラしたりちょっとしたことで悲観的になったり。それ以外に身体的な症状としてはお腹が痛い・張る、乳房が張って不快、便通が悪くなる、頭痛が出るなどなど。女性は一カ月の3分の1程度、このような不快感を抱えて生活しているのです。ただ、これだけ認知は広がったものの、女性自身が「体調不良はPMSが原因」と気づきにくいのものまた事実、だったりします。というのも、私自身が最近 「なんとなくイライラする」症状に襲われたからなのですよ。何が原因でイラついているのかわからないまま、数日が経過 ……そして、月経が再開しました。ここに至って、「ああ、なんだPMS(月経前症候群)か!」と思いだしました。私は現在1歳児の子育て中で、妊娠から出産を経て産後11カ月になるのですが、妊娠中~産後までおよそ2年近くも月経が止まっていたので、PMSがどんな感覚だったかをすっかり忘れていたのでした。産後は月経が止まっている、ということをご存知ない方も多いかもしれません。母乳育児を続けていると、早い方でも産後数カ月、長い場合は授乳が終わる1歳~2歳前後まで月経が停止するのです 。そうでなくても、月経は女性にとって毎月のことで、よくも悪くも「いつものこと」になりがち。生活に支障があるレベルの強い症状がでない限り、つい見逃しがちになります。○PMSの症状と原因PMSの原因は、月経前に大きく変動する女性ホルモンです。女性ホルモンには大きく二種類、エストロゲンとプロゲステロンがあります。排卵前にエストロゲンが多くなり、月経直前にはプロゲステロンが多くなり、月経になると両方とも急激に減少します。ホルモンは変動する際に体内の環境がかき乱されやすくなるのですが、特に排卵・月経直前のプロゲステロンに絡む変動が、自律神経失調を起こしやすいのです。PMSが知られるようになる前は、月々の体調不良から出血量までひっくるめて「生理が重い人、軽い人」という言われ方が主流でした。表現としては曖昧なところはありますが、体調面はもちろん、月経血の量にもこうした個人差は確かに存在しています。とはいえ「個人差」に関して、確かめるのは至難の業ですから、「いったいどのくらいの月経血の量で異常だって考えたらいいんだろう?」という疑問を持っていらっしゃる方は多いようです。月経血に関して、夜用ナプキンでも全然もたなくて寝具を汚してしまう、日中1時間もたない、貧血を起こしてしまう……なんてことがあったら必ず一度病院へ行くことが大切です。腹部の痛みも、鎮痛剤なしでは過ごせない、動けなくなるほどの痛みがあるなら病院へGo!です。○「なんとなく調子が悪い」に東洋医学で対処する病院へ行くほどの不調ではないけれど、毎月どうもPMSの不調がはっきり出て困るという方は、東洋医学の出番かもしれません。このような症状にはお灸や漢方がよく効くことがあります。お灸は、拙著「ペットボトル温灸」の「生理痛・月経不順」の項目を利用します。症状が出る前でも、PMSの予防として、同じ経穴(ツボ)を使っていただいてOKです。およそ排卵前後から施灸をしてやったほうがPMS軽減にはよく効くのですが、なんとなく不調が出始めたくらいから始めてもそれなりの効果はあります。ペットボトル温灸のやり方は簡単。ホット専用ペットボトルに水を3分の1入れてから、沸騰直前まで沸かしたお湯を3分の2入れます。これを、三陰交→腎兪→血海→帯脈、この順番に当てましょう。じーっと当て続けるのでなく、数秒当てて「アツッ」と感じたら離すのを数回繰り返します。めんどくさかったら三陰交だけ毎日やってください。一穴だけ使い続ける場合は、毎日行うことが大切です。また、漢方を利用する場合は、婦人科の医師か漢方を取り扱っている薬局の薬剤師に相談するのが大切です。婦人科三大処方と言うのがありまして。この三つです。・加味逍遥散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散これらは婦人科の医師の処方があれば保健調剤が可能。非常に古くから使われている処方ですが、適切に体質を判断した上で処方すると、シャープな効き目を表すことがしばしばあります。PMSを軽減するための手段として低用量ピルもありますが、飲むのに抵抗がある方は、漢方から試してみるのも手ではないかなあと思います。最後に。PMSは、ひどい月とそうでもない月があるな……と感じていらっしゃる方も多いかと思われます。これはストレスや生活習慣の乱れが、月経前のホルモンバランスによる自律神経失調を助長するから。東洋医学的に考えるなら、夜更かしや、過労、ストレスが多かった場合にPMSが悪化する傾向が出ると判断します。ですから、月経と諸症状だけに意識を向けるのでなく、ワークライフバランスや生活習慣を見直してみることも大切ですよ。○参照リンク日本産婦人科学会「病気を知ろう:婦人科の病気/月経前症候群」
2016年02月25日皆さんは“ストックホルム症候群”という言葉を聞いたことがありますか?ダメ男にハマる女性の心理に対しても、最近はこの名前を使います。あなたももしかしたら“ストックホルム症候群”かも?ぜひ一緒にチェックして、ダメ男人生から脱却しましょう!!■ストックホルム症候群とは?1973年に、スウェーデンの首都ストックホルムで実際に起こった事件から命名されました。銀行で強盗が人質を取って立てこもった、凶悪な事件なのですが、なんと、人質は警察ではなく、犯人をかばう行動を起こしたというのです。さらに、犯人の解放後、なんと人質の女性と犯人が結婚までしてしまいました。このように、人質が犯人に特別な感情や愛情を抱くことを、この事件から「ストックホルム症候群」と呼ばれるようになりました。恐怖体験や死地を共有した者同士に愛情が芽生えることはよくあることですが、この場合、犯人が悪いことをしたという事実を忘れ、感情に共感し、愛情が芽生えていますね。■恋愛ストックホルム症候群とは?上でも説明しましたが、明らかに悪いことをしている男性に対して、特別な感情や愛情を持ってしまうことを言います。恋愛に置き換えて例えると・・・付き合っている彼から暴力(いわゆるDV)を受けている。だけど、彼は普段はとても優しく、暴力を振るったあとも、泣いて謝ってくる。「本当はこの人は、きっと優しい人なんだ」と、彼に対して“守ってあげなければいけない”という気持ちが芽生える。こういった心理に陥ることが、典型的な症状と言えます。「彼は本当はいい人だ」「彼は不器用なだけで優しい人だ」「私しか彼の良さをわかってあげられない」そんな風に考えやすい人は、ストックホルム症候群を疑うべきでしょう。■まずは自分の恋愛を見つめ直そう!とは言っても、自分の恋愛を客観的に見つめ、改善していくのは難しいことです。では、実際に自分の恋愛感覚を見つめ直すために、今の恋愛状況を書き出してみましょう。1:今、付き合っている彼、もしくは今好きな人がいる場合はその彼を思い浮かべて、彼の性格や特徴を書き出してみましょう。2:自分はきっとこんな人と一緒にいたら幸せだろうな、こんな恋愛ができたらいいな、と思える人物を想像し、書き出してみましょう。さあ、いかがでしたか?1で好きな人を冷静に着目することで、彼に対して今までとは見え方が変わってきます。さらに、1と2で挙げた男性の性質の差が大きいほど、あなたはダメな男性とわかりながらも、気にかけてしまう、ダメ男好き女子かもしれません。■客観性が大切ですこのように、「好き」「彼を守りたい」という気持ちだけで突っ走らず、本来自分が寄り添いたいと思える人物を客観的に見つめていくことが大切です。相手の弱さを受け入れてあげることも確かに必要なこと。ですが、彼を成長させるために、ダメなことはしっかり伝えてあげることも大切ですね。それが出来ない相手であれば、今のあなたではその彼と恋愛をして行くことは難しいのかもしれません。相手の良いところ、悪いところをそれぞれしっかり知って、しれじれに向き合う形をとって行きましょう。■おわりに心の弱さが、相手への依存や、ストックホルム症候群を生み出してしまいます。男性を支えるのは女性の役目!男性を良くするも悪くするも、女性の力次第とも言えます。彼を許すだけでなく、マイナスポイントをプラスに持ち上げてあげる強さが、女性の輝きをさらに高めてくれるでしょう。そのために、今のダメ男恋愛から遠ざかり、自分を成長させる時間も必要かもしれません。(あやか/ライター)(ハウコレ編集部)
2016年02月17日国立がん研究センター(国がん)は2月15日、がん患者の免疫状態(ADCC活性)を測定する新手法を開発したと発表した。同成果は、同先端医療開発センター臨床薬理トランスレーショナルリサーチ分野の濱田哲暢 分野長の研究グループと、同中央病院先端医療科の北野滋久 医員の研究グループの共同研究によるもの。英科学誌「Scientific Reports」に1月27日付けで掲載された。抗体薬には、がん細胞の表面に発現する標的分子に結合し抗腫瘍効果を示す直接的な作用のほか、患者自身の免疫細胞を介して抗腫瘍効果を発揮する作用がある。そのため、標的分子の発現量だけでなく、患者自身の免疫状態、特に抗体薬ががん周囲に呼び寄せた免疫細胞を活性化するADCC活性をどの程度誘導できるかが治療効果に大きく影響すると考えられている。現在、抗体薬の投与においては標的抗原の発現量や遺伝子変異を確認することで治療効果の予測が行われているが、従来のADCC活性測定法は測定結果が不安定のため患者の免疫状態を把握することは困難だった。同研究グループが開発した測定方法では、あらかじめ標的がん細胞に緑色色素を取り込ませて、標的がん細胞(緑色色素を取り込ませたもの)と免疫細胞(緑色色素取り込みなし)を区別できるようにする。さらに、生きている細胞と死滅した細胞を区別できる色素で標識し、フローサイトメーターという装置を用いて測定することで、がん細胞と免疫細胞をそれぞれ別々に、生きている細胞と死んだ細胞に細胞一個単位で区別することができるようになった。同手法は、従来の測定法と比べて1/100以下の低濃度の抗体でADCC活性が測定可能だという。また、従来の測定法では血液検体をいったん凍結保存してしまうと測定結果のバラツキが大きくなり、不安定で再現性が乏しくなってしまっていたが、新しい測定法では凍結検体を用いても1カ月以上にわたり再現性をもってADCC活性が測定することができた。新しい測定法は、従来の測定法よりも高感度にADCC活性を検出できることから、個々の患者の免疫状態をより詳細に把握することで、抗体薬の治療効果予測に役立つことが期待されるほか、凍結保存した検体でもADCC活性を安定して測定できるため、他施設で採取した血液検体をいったん凍結した後、国立がん研究センターに輸送し、後日、測定することが可能となる。また、新規薬剤開発の面からも多施設共同臨床試験が可能となるため、効果の期待できる患者の選別や開発を進めるか中止するかの判断などに役立ち、抗体薬の効率的な開発につながることが期待される。
2016年02月16日2013年11月に鼻に皮膚がんの一種“基底細胞がん”ができ、手術で取り除いたことを公にしていたヒュー・ジャックマン。それから鼻3回、肩1回のがん除去術を受けたことを「People」誌に明かしていたが、今月9日(現地時間)、鼻にがんが再発し、5度目の手術を受けたことをSNSでファンに報告した。大きな絆創膏を鼻に貼った画像をインスタグラムとツイッターに投稿し、「日焼け止めを塗らないとこうなっちゃうっていう見本だよ。お願いだから日焼け止めを使ってね!」とファンに日焼け止めの使用を呼びかけている。また、ヒューは呼びかけるだけでなく、小さい子どもでも積極的に日焼け止めを塗るよう、容器に『スパイダーマン』や『アナと雪の女王』がペイントされた日焼け止め「Pure Sun Defence」の販売にも携わっており、日常での紫外線ケアの重要性を訴えている。日本形成外科学会のHPによると、基底細胞がんは皮膚がんの中で最も頻度が高いものの、悪性度は低く転移は稀とのこと。誘発因子として紫外線が挙げられるという。始めは撮影中にできたちょっとした傷だと思っていた鼻のできものが、まさかのがんでとてもショックを受けたというヒュー。彼が勧める予防策は、日焼け止めを塗るという決して難しくないことなので、私たちでもすぐに始められそうだ。(Hiromi Kaku)
2016年02月09日国立がん研究センター(国立がん研)は2月4日、朝食摂取回数が少ないと脳出血のリスクが高くなることが明らかになったと発表した。同成果は、国立がん研究センター がん予防・検診研究センターと大阪大学の研究チームによるもので、米科学誌「Stroke」2016年47巻に掲載された。これまでに、朝食を欠食すると肥満、高血圧、脂質異常症、および糖尿病のリスクが上がることが多くの研究で示されてきたが、脳卒中および虚血性心疾患のリスクを上げるのかという点に関してはほとんど研究されていなかった。そこで同研究チームは、朝食欠食と脳卒中および虚血性心疾患との関係を検討するため、1995年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、1998年に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内に在住していた45~74歳の男女のうち、循環器疾患およびがんの既往がなく、アンケートの朝食に関する項目に回答した8万2772人(男性:3万8676人、女性:4万4096人)に対して調査を行った。同調査では、週に0~2回、週に3~4回、週に5~6回および毎日という4つの群に分けて、その後の脳卒中および虚血性心疾患発症との関連を分析。2010年まで追跡した結果、3772人の脳卒中発症と870人の虚血性心疾患発症が確認された。朝食を毎日摂取する群と比較して、朝食を週に0~2回摂取する群の発症リスクは、脳卒中と虚血性心疾患を合わせた循環器疾患で14%、脳卒中全体で18%、脳出血で36%高くなっていたという。同研究チームは、脳出血の最も重要なリスク因子は高血圧だが、朝食を欠食することで朝の血圧が上昇し、毎日朝食を摂取する人に比べて脳出血のリスクが高くなっていた可能性が考えられるとしている。
2016年02月05日国立がん研究センター(国がん)は1月20日、食道がんの前がん病変だと考えられているバレット食道での幹細胞の存在を明らかにしたと発表した。これまでがんの前がん病変において組織を維持する働きを持つ幹細胞の存在は明らかになっていなかった。同成果は国がん研究所分子細胞治療研究分野の山本雄介 主任研究員によるもので、1月19日に米科学誌「Nature Communications」に掲載された。バレット食道とは、食道と胃上部の接合部に発生する粘膜組織の変化で、主に逆流性食道炎などによる炎症が原因で発生する。これまで統計的な解析や病理学的な知見により、バレット食道が食道がんへ進行していくことは知られていたが、実際の細胞がどのように遺伝子異常を蓄積し、悪性度の高い細胞へ進展していくかはわかっていなかった。今回の研究では、さまざまな進行状態の12症例のバレット食道から内視鏡で生検組織を採取し、新しく開発した培養手法を用いて、幹細胞を単離・培養することに成功。培養したバレット食道由来の幹細胞と正常食道由来の幹細胞にがん遺伝子を導入し、強制的にがん化させたところ、バレット食道由来の幹細胞は食道腺がん様の腫瘍を形成したのに対し、正常食道由来の幹細胞は食道扁平上皮がんに類似した腫瘍を形成した。これにより、バレット食道は食道腺がんの前がん病変であることが確認され、前がん病変においても幹細胞が存在し、病変を維持している可能性が示された。また、ゲノム変異解析を行った結果、より進行したバレット食道においてより多くの変異が認められた一方で、25%の症例においてゲノム変異が認められなかったことから、バレット食道の発症に遺伝子変異は必須ではなく、その後進展していく過程でゲノム変異が蓄積し、より悪性度の高い腫瘍へとなっていくと考えられるという。今回の成果をベースに、さらに前がん病変の性状明らかにすることで、前がん病変の早期検出による早期診断や、前がん病変の幹細胞の除去など新たな治療の開発につながることが期待される。
2016年01月20日国立がん研究センターは1月20日、「全国がん(成人病)センター協議会」(全がん協)の協力を得て、加盟施設での診断治療症例に関する部位別10年相対生存率を集計したと発表。その結果を全がん協のホームページ上にて公開したと明らかにした。同センターによると、国内においてこれほどの規模でがんの10年相対生存率が公表されるのは初めて。がんの生存率は治療による効果を表す指標で、がん診療評価などにおいて重要な要素となる。一方で、信頼できる生存率を算出するには、精度の高い予後調査の実施などの課題があった。同センターの研究開発費に基づく研究班は、1999年診断症例より部位別施設別5年生存率を公開。さらに2012年からは、グラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を公開するなどしていた。今回、部位別施設別5年相対生存率については、2004年から2007年に診断治療を行った14万7,354症例を集計。10年相対生存率については、1999年から2002年に診断治療を行った3万5,287症例を集計した。個々の数値をみていくと、全部位全臨床病期の5年相対生存率は68.8%で、1997年の62.0%から徐々に改善している傾向にあるという。同センターは「化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられます」としている。生存率が高いのは「前立腺(100%)」「乳(92.9%)」「甲状腺(91.6%)」など。一方、「胆のう胆道(28.9%)」「膵(9.1%)」は3割以下にとどまっている。今回が初集計となる全部位全臨床病期の10年相対生存率は、58.2%だった。同じデータベースの5年相対生存率は63.1%となっており、5年間で4.9%の減少がみられる。10年生存率において高い生存率をみせた部位は、「甲状腺(90.9%)」「前立腺(84.4%)」「子宮体(83.1%)」など。逆に「食道(29.7%)」「胆のう胆道(19.7%)」「肝(15.3%)」「膵(4.9%)」などは低い数値となっていた。国内において死亡者数が多い部位に関しては、「胃(69.0%)」「大腸(69.8%)」「気管・肺(33.2%)」「乳(80.4%)」という結果が出ている。なお、研究班は今回の結果をKapWebに反映させて公開。「がんの種類」「病期」「治療法」などの条件設定で検索でき、5年もしくは10年までの生存率年次推移をグラフで見られるようにしている。
2016年01月20日国立がん研究センター(国がん)はこのほど、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)の加盟施設での診断治療症例について、部位別10年相対生存率を全がん協のWebサイト上で公開した。○乳がんは長期間のケアが必要生存率には実測生存率と相対生存率があり、実測生存率ではがん以外の死因も含まれる。一方、がん患者について計測した実測生存率を、対象者と同じ性別・年齢・診断分布をもつ日本人の期待生存率で割ったものを相対生存率と呼ぶ。相対生存率は、がん以外で死亡する可能性に影響する要因(性別・年齢など)が異なる集団で生存率を比較することができ、世界と生存率を比較する場合でも用いられる。今回発表された部位別10年相対生存率は、1999年から2002年に診断治療を行った16施設3万5287症例を対象としたもの。全部位を対象とした10年生存率は58.2%だった。部位別がんでは胃がんが69%、大腸がんが69.8%、乳がんが80.4%、肺がんが33.2%、肝臓がんが15.3%となった。同センターは2004年から2007年に診断治療を行った14万7354症例を対象とした5年相対生存率も集計。こちらでは全部位が68.8%、胃がんが73.1%、大腸がんが75.9%、乳がんが92.9%、肺がんが43.9%、肝臓がんが34.8%となった。なお、今回発表した10年相対生存率と5年相対生存率は対象となるデータが異なるため、一概に比較することはできないとしているほか、公表されたデータは新しくて2007年のものであり、治療技術の向上により現在はもっと改善していると考えられるという。また、5年相対生存率では施設別のデータも全がん協のホームページ上で公表した。施設別のデータでは、同じ部位でも対象期間や早期がんと末期がん患者の比率などが施設ごとに異なる点に注意してほしいとする。国がんはこれまで、部位別5年相対生存率は発表しているが、10年相対生存率は初集計となる。10年相対生存率について国がんの堀田知光 理事長は「5年は治療効果を判定する1つのポイントとなる。10年はそのがんがどのような経過を辿るか、どこまでフォローすれば良いかが分かるデータとなる」と説明。10年相対生存率により、例えば胃がんでは5年を過ぎると相対生存率は横ばいになるため5年が治療効果を計る大きな目安となるが、乳がんなどでは第I期に治療を開始した場合でも5年を過ぎても相対生存率が下がり続けるため、より長期間の経過を見る必要があることがわかる。○治療法選択の助けに今回の集計結果は国がんなどが開発した生存率解析システム「KapWeb」にも反映されている。KapWebはがんの種類、病期、性別、年齢、初回治療などの条件を組み合わせて相対生存率を見ることができるシステムで、2012年10月より一般公開されている。今回、10年相対生存率のほか、新規診断症例、治療法の選択項目が追加され、より詳細な条件設定が可能となった。千葉県がんセンターがん予防センターの三上春夫氏は「どの治療法を選んだら生存率が高くなるかを知ることができる。治療法選択の判断の目安になる」と説明し、治療に同システムを活用するよう呼びかけている。
2016年01月20日東京都墨田区は2015年12月、同区内では初となるがん教育のモデル授業「がんのことをもっと知ろう」を、墨田区立業平小学校の6年生を対象に実施した。保健学習の一環として行われたこの授業に用いた教材は、がん教育を検討する過程で区や教育委員会らが共同して作成したもので、このようなケースは全国的にみても珍しいという。教員やがん患者、区、教育委員会が一丸となってモデル授業を実施した目的は何なのか。墨田区 保健計画課の松本静さんに伺ったので、2回にわたって紹介する。○モデル授業のきっかけモデル授業のそもそものきっかけは、2012年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」にがん教育の推進が盛り込まれたことだった。それとは別に、2013年における墨田区のがんの死亡率は、男性が23区中7位で女性が同1位と、がんの死亡率が高いという素地もあった。これらの現状を受けて、区は2014年に「墨田区がん対策基本方針」を新たに策定。「がんによる死亡者数を減らす」などの基本目標を達成させるため、4つの個別目標を設定した。その中の一つに「がんに関する正しい知識を持つための健康教育・普及啓発活動の推進」も盛り込んだ。複数の目標を達成させるため、区長の付属機関として「がん対策推進会議」を設置。その下部組織として「がん教育部会」を設け、子どもたちへのがん教育の在り方を検討していった。教育部会ではがんの有識者やがん患者、教育関係者らが一堂に会し、何度も検討を重ねて教材作りを進めていった。「がん教育部会にはがんに詳しい日本女子体育大学の助友裕子先生をお招きして、先生からいただいた資料をベースに、墨田区に見合った教材を作成していきました」。○話し合いやクイズでがんの知識を深めるそして迎えた2015年12月3日、業平小学校でモデル授業が実施された。多くの子どもたちはがんにまだ接したことがないため、「予防」という観点を子どもたちとがんをつなげる"架け橋"として、理解を進めてもらうように工夫したという。「授業は、がん予防につながる生活習慣やがんの死亡率が高いこと、今は2人に1人ががんになる時代だということなど、できるだけがんを科学的に理解してもらうよう進めていきました」。「がん予防をするために大切なこと」というテーマで複数グループに分かれて話し合いをしたり、授業で学んだことをクイズ形式で復習したりして、がんについて正しい知識を深めていった。○がん経験者の話で命や家族の大切さを知る授業内容は「机上」だけにとどまらなかった。同11日には、乳がんを患った経験があるがん教育部会の委員が、自身の体験談を子どもたちの前で告白。子どもたちにがんについて語るのは初めての経験だったそうだが、「命の大切さについて、きちんと子どもたちへとメッセージを送ってもらえました」。授業後に実施した子どもたちへのアンケートでも、「家族を大切にしたい」「家族と一緒にいることが大事」などの回答が目立ったそうだ。紙の教材だけではなく、実際のがん体験談という「生きた教材」に触れることによって、子どもたちはがん検診の大切さやがんの治療、緩和ケアまで踏み込んで学べた。「がん患者の話を聞いて命の大切さを知り、がんに対する偏見を緩和・減少してもらえば」と願っていた松本さんも、体験談授業に手ごたえを感じているようだ。ただ、業平小学校での授業は、墨田区が掲げる目標の序章でしかない。次回は、モデル授業の今後の展開について紹介する。※写真と本文は関係ありません
2016年01月19日理化学研究所(理研)と熊本大学は1月18日、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスである「HIV-1」が細胞から細胞へと感染拡大する際の新たなメカニズムを解明したと発表した。同成果は、理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループの大野博司 グループディレクター、環境資源科学研究センター ケミカルバイオロジー研究グループの長田裕之 グループディレクターと熊本大学 エイズ学研究センター・国際先端医学研究拠点施設(鈴プロジェクト研究室)の鈴伸也 教授らの研究グループによるもので、1月15日付けの米科学誌「Journal of Immunology」に掲載された。免疫系細胞は、細胞膜が細長く伸びた細胞膜ナノチューブ(TNT:Tunneling NanoTube)を作り、離れた2つの細胞を物理的に連結して、細胞間で物質交換を素早く確実にやりとりする機能を持っているが、この性質を逆手に取り、エイズウイルスなどのウイルスやウイルスの病原タンパク質が細胞から細胞へと移動することで、感染を拡大させたり、免疫機能を抑制して病態を悪化させたりすることが知られている。HIV-1は、CD4という表面分子を持つTリンパ球(CD4+Tリンパ球)とマクロファージという2種類の免疫細胞に感染し、これらの免疫細胞の中で増殖。未感染のCD4+T細胞やマクロファージへと感染することで、免疫細胞の機能不全や減少を引き起こす。このようにHIV-1が感染拡大していく経路には、一度HIV-1が感染細胞の外に出て周囲の未感染細胞に感染する経路のほかに、TNTを介してHIV-1が感染細胞から未感染細胞に移る経路が知られていたが、そのメカニズムは明らかにされていなかった。今回の研究では、ヒト血液由来のマクロファージにHIV-1を感染させ、TNTの形成促進を観察した。この結果、ウイルスタンパク質であるNefを欠損した変異HIV-1を感染させるとTNTの形成促進は観察されなかった。一方、HIV-1をCD4+Tリンパ球に感染させても、このHIV-1によるTNTの形成促進は見られなかった。そこで同研究グループは、マクロファージには発現しているが、CD4+Tリンパ球には発現していないTNT形成因子「M-Sec」に着目。マクロファージ細胞株にNefを強制的に発現させるとTNTの形成促進が見られたが、M-Secの発現を抑制したマクロファージ細胞株では、Nefを強制的に発現させてもTNTの形成促進が見られなかったことから、NefによるTNTの形成にはM-Secが必要であることを明らかにした。同研究グループはさらに、理研の化合物バンクを用いて、6800の化合物の中から、M-SecによるTNT形成の抑制活性を指標として、TNT形成を可逆的に阻害する「NPD3064」という化合物を見いだした。この化合物を用いたTNT形成の抑制により、HIV-1の産生は約2分の1に減少したという。このメカニズムが解明されると、HIV-1の感染やそれによる病態形成の詳細がわかり、エイズの治療や発症予防に貢献すると考えられる。さらにTNTの形成阻害薬が、これまでの抗エイズ薬と異なる作用メカニズムにもとづく、新たなエイズの治療薬の開発につながる可能性があると同研究グループは説明している。
2016年01月18日今月10日に1年半ものがんとの闘病の末に69歳で亡くなったロック歌手デヴィッド・ボウイさんは、死の数週間前にはがん克服に前向きな姿勢を見せていたという。デヴィッドさんの友人であり映画や舞台プロデューサーのロバート・フォックスは、前月デヴィッドに会った際には、長生きするために希望をかけて実験的な新薬を試す準備をし、前向きに治療をしている様子がみられたことをザ・タイムズ紙に明かした。「デヴィッドは具合が悪かったみたいだけど、それについて悩んではいなかったよ。かなり実験的だけど、何人かで成功例がみられた新たな治療を始めようとしているところだったね」「新たなよりよい治療法がまた出てくるという希望と共にそれで命を延ばすことができると前向きだったよ」そんな中、デヴィッドさんは肝臓がんで命を落としたと、舞台『ラザルス』でデヴィッドさんと仕事をしていたイヴォ・ヴァン・ホーヴェ監督が発言。「1年はこのことを知っているよ。僕らの舞台『ラザルス』でのコラボが始まって、ある時に病気のためにいつもいることができないと伝えてきたよ。僕に、がん、肝臓がんを患っているって言っていたよ」「出演者はこのことを最後まで知らなくて、『ブラックスター』を一緒にレコーディングしたミュージシャンたちさえも知らなかったよ。この2つのプロジェクトを時間内に終わらせるために、病気が勝ってしまわないように、デヴィッドはできるすべてのことをしていたよ」と語っていた。(C)BANG Media International
2016年01月14日国立がん研究センターは1月13日、これまでがん化との関連が解明されていなかった「IER5遺伝子」が、がん細胞の増殖に関与していることを発見したと明らかにした。IER5遺伝子は腎がんや大腸がん、膵(すい)がんなど複数のがんで発現上昇することも示された。これにより、IER5を分子標的として阻害することで、がんを抑制できる可能性が示唆されたという。同研究成果は、国立がん研究センター研究所希少がん研究分野の大木理恵子主任研究員の研究グループが行ったもので、英科学誌・ネイチャー系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。正常細胞では、「HSF1(Heat Shock Factor 1)」と呼ばれる転写活性化因子(DNA上の特定の塩基配列に結合し、他の遺伝子の発現を強めるタンパク質)の活性が低く保たれている。HSF1は熱ストレスなどにより活性化し、「ヒートショックプロテイン(Heat shock protein: 熱ストレスなどによって構造が壊れた他のタンパク質を修復するタンパク質)」を誘導することによって、ストレスから回復することがこれまでにわかっている。近年はがんの発生や悪性化にHSF1が関わっていることが報告されていたが、そのメカニズムは明らかとなっていなかった。同研究では、「IER5遺伝子」と呼ばれる遺伝子が腎がんや大腸がんなどのがんで発現上昇し、HSF1と結合してHSF1を活性化、後にヒートショックプロテインを誘導し、ストレスを回避することでがん細胞の増殖に寄与することが示された。また、IER5の発現を抑制するとがん細胞の増殖が抑制されること、さらにはHSF1と結合できないIER5はHSF1を活性化できないことも示された。これらの事実から、IER5とHSF1の結合を阻害する化合物の探索によって、がん治療薬の開発につながることが示唆された。同センターは、「現在、ヒートショックプロテイン阻害剤をがん治療薬にする開発が進んでいますが、本研究成果を応用した、その上流にあるIER5を阻害する化合物の開発により、より効果の高いがん治療薬の創出につながることが期待されます」とコメント。そのうえで、今後は「動物モデルを使った研究により、IER5ががんの浸潤転移にどのように関わるかを明らかにする」予定としている。
2016年01月14日病気の怖いところはひとつの病気によって、また別の病気にかかってしまうことがある点です。いわゆる合併症ですが、睡眠障害も例外ではありません。そこで今回は睡眠時無呼吸症候群と併発しやすい病気を紹介します。睡眠時無為呼吸症候群とは?睡眠障害のひとつに睡眠時無呼吸症候群というものがあります。これは睡眠中に呼吸が止まってしまう病気で、睡眠の質が低下する可能性があると言われています。目安として1時間あたり20回以上、10秒以上の呼吸停止がある人は睡眠時無呼吸症候群と診断されるそうです。呼吸が止まっても、一定時間で再度呼吸がスタートするので安心…と安易に考えてはいけません。呼吸が止まると血液中の酸素濃度が下がるので、高血圧や動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの重大疾患のリスクが高まると言われています。睡眠時無呼吸症候群の人は夜に熟睡できないため、日中に強い眠気が生じることがあるそうです。みなさんは大丈夫ですか?睡眠時無呼吸症候群の合併症ランキング1位は?*睡眠時無呼吸症候群の怖いところは冒頭にも挙げたように合併症を招くリスクがある点です。一般的に、睡眠時無呼吸症候群の患者は脳血管疾患のリスクがもっとも高いと言われていますが、今回はかかりやすい合併症ランキングを紹介します。1位脳血管疾患2位虚血性心疾患3位高血圧4位糖尿病ある調査では上記のような結果になっています。これ以外にも、夜間に熟睡できないため、日中に眠気に襲われて居眠り運転で交通事故につながるなどのリスクも指摘されています。試しに、呼吸を数秒間止めてみると、脈拍が高まり、頭に血がのぼってくるのがわかると思いますが、それだけ心臓には大きな負担がかかっているということなのです。小顔の人や太ってる人は要注意!?一般的には肥満の人が睡眠時無呼吸症候群になりやすいと考えられています。その理由は、舌も体と同様に太るからです。太った舌は気道をふさぎ、呼吸を止めてしまうのだそうです。実は、太った人と同様に睡眠時無呼吸症候群になりやすいのが顔の小さい人だそうです。顎が細く小顔な人はもともと気道が狭いため、少し太っただけでも呼吸がしづらくなるからです。日本人で睡眠時無呼吸症候群の疑いのある人は4人に1人、全国で合計3,000万人近くいるそうです。すごい数ですよね。これだけ広がりのある病気なので、自分は絶対にかからないと思いこまず、睡眠に悩みがある場合は医師に相談しましょう。photo by acworks
2016年01月13日2015年の世界自閉症啓発デーで、米国のオバマ大統領は「アメリカでは68人に1人の子どもが自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群なども含む、わずかに自閉症の特性が見られる状態から典型的な自閉症までを幅広く含めたグループの名称)を持つ」と述べました。68人に1人とは驚きですが、日本自閉症協会のホームページによると、日本でも自閉症は100人に0.9人程の発症率で、生まれつき脳の機能になんらかの障害を持つ発達障害のひとつだといわれています。人や物との変わった関わり方をしたり、大人や同年代の子どもとのコミュニケーションがうまくとれなかったり、興味や関心が非常に偏っており、同じことを繰り返したがることが特徴。自閉症者だからといって知能に障害があるわけではありませんが、少し奇妙にみえる行動から、自閉症の内面は誤解されることが多いようです。今回、ご紹介する一冊は、自身が自閉症者である作家の東田直樹さんと、精神科医の山登敬之さんとの往復書簡のやりとりをまとめた『社会の中で居場所をつくる 自閉症の僕が生きていく風景〈対話篇〉』(ビッグイシュー日本)です。東田さんは、自閉症者であると同時に、すでに世界的な作家でもあります。彼の著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール)は、20ヶ国以上で翻訳され、世界的なベストセラーになっています。一般的な会話ができない東田さんが、社会のなかで居場所をつくっていけたのは、小さいころから言葉や文字に対する興味があった東田さんを、それを活かすかたちで導いていったご家族のおかげかもしれません。しかしそれを差し引いても、本書のなかの東田さんの言葉は名言だらけです。東田さんの瑞々しい言葉を中心に、本書をご紹介していきたいと思います。■1:「自分のことを好きだと言える人は幸せです」いまの時代、障害があってもなくても、自分のことをちゃんと「好き」といえる人が少ないように感じます。また、特に恵まれない生い立ちでなくても、自己肯定感をうまく持てずに大人になってしまう人も多いですよね。東田さんは子どものころ、人と違う自分がいやでたまらなかったそうです。ですが、「自分の人生の主人公は僕でも、この世界の主人公ではない」ことを両親から学び、知識によって、世界にはたくさんの人たちが暮らしていて、それぞれ困難に向き合いながら生きていることを知りました。そして、成長していくにつれて、他人のなかにいるときに感じていた疎外感はなくなっていったそうです。その理由を、「社会の一員として僕らしく生きていこうという気持ちになれたから」だと語っています。「誰からも、そう言ってもらえなくても、自分で自分を好きになれれば、人は生きる意味を見失わないからです」「自分を好きになるためには、自分自身と向き合う気持ちも必要になってくるのではないでしょうか」まだ二十代前半の彼の言葉を、どう受け止めますか?■2:「強くなくても生きられる」東田さんは、自閉症者ということで、よく他人から励まされることがあるそうです。ところが、励ましてくれている人の意見に耳を傾けていると、だんだんと自分自身の話にすり替わっていくのがわかり、「人というのは自分のことをわかってもらいたい動物なのだと、つくづく感じる」といっています。東田さんを励ます人は、東田さんのことを弱い立場だと思って励ますのでしょうが、当の東田さんは、冷静に自分を励ます人の内面をみているということですね。少し滑稽ですが、こうなると、なにが強くてなにが弱いのかわからなくなってきます。「弱いから生きていけないのではなく、心が満たされないから生きづらいのではないでしょうか」という彼の問いかけに、はっとする人も多いのではないでしょうか。■3:「自分らしさとは、手を伸ばせば届く心地いい芝生のようなもの」「自分らしく」という言葉は、ヒットソングなどでもよく聞かれる、悪くいえば手垢のついた言葉ですが、そもそもなぜ、人は自分らしく生きたいと願うのか、東田さんは問いかけます。「自分らしさに条件や基準はいらない」と東田さんはいいます。「こんな自分ではだめだと思うのであれば、その人が追い求めているものは、自分らしさではなく目標ではないでしょうか」なるほど。外へ、外へと自分らしさを求めていっても、もしそれが手に入らなければ、つらくなってしまいそうです。「僕が考える自分らしさとは、はるかかなたの山の頂上に咲いている珍しい花ではなく、手を伸せばすぐ届く、心地いい芝生みたいなもの」という言葉に、安らぎを覚えるのは筆者だけではないはずです。*本書は10回ごとに先攻後攻が入れ替わるかたちで、東田さんと山登さんのやりとりが進みます。もともと東田さんの本のファンだったという山登さんの名キャッチャーぶりもさすがです。自閉症のイメージにとらわれることなく、生き方を模索していて砂漠でオアシスにたどりつくような東田さんの言葉に、ぜひ触れてみてください。(文/Kinkiii)【参考】※一般社団法人 日本自閉症協会※Presidential Proclamation — World Autism Awareness Day, 2015-whitehouse.gov※東田直樹・山登敬之(2016)『社会の中で居場所をつくる 自閉症の僕が生きていく風景〈対話篇〉』ビッグイシュー日本
2016年01月13日国立がん研究センター(国がん)は1月12日、同センターの中央病院にがん診療に網羅的な遺伝子診断に基づく診療の本格導入を目指し、「遺伝子診療部門」を開設したと発表した。これまでも同病院では、遺伝的にがんになりやすい人に向けたゲノム診療である「個別化予防」を遺伝相談外来で行ってきたが、もう一方のゲノム診療である個々のがん患者の遺伝子異常に基づいた「個別化治療」については、検査の品質管理、遺伝子解析情報の臨床的意義付け、患者への伝達方法、情報の取り扱いなどさまざまな課題が残されており、本格的な日常診療への導入には至っていなかった。そこで同病院は2013年より、個々の患者の治療選択における網羅的遺伝子検査の有用性を検証する目的の研究「TOP-GEARプロジェクト」を進めてきており、2015年末には十分な精度管理が担保された網羅的遺伝子検査室を院内に設置するに至り、個別化治療としてのゲノム診療を開始するための体制が整ったことから、今回の開設に至ったとする。同センター中央病院の荒井保明 院長は、「飛行機の進歩は1903年より始まったが、当初は冒険、挑戦という位置づけであった。しかし、数十年を経て、人々が自由に活用し、好きなようにどこでも行きたいところに行くために利用することができるようになった。遺伝子の研究も、長年にわたって進められてきたが、いまだに手軽に自由に診療の現場で活用できるまでには至っていない。今回の取り組みは、すぐに民間で活用できる段階に至ったというわけではないが、がん診断の際に、遺伝的な可能性が生じた場合、がんを専攻してきた医者であっても、現状はその内容を完全に理解できるのは極一部であり、その専門性を診療レベルに翻訳してくれるプロが間に入ることで、遺伝子に関する情報を整理して提供するという仕組みができるようになった。今回の部門開設によって、これからの日本のがん診療の新たな1ページが開かれたことを感じてもらいたい」と語り、ゲノム診療を日常診療に導入する第一歩が始まったことを強調した。具体的には、国がんが中心となって開発した約100遺伝子の異常を1回で網羅的に調べることが可能な検査キット「NCCオンコパネル」を用いて、2015年11月に中央病院内に開設した「SCI-Lab」にて検査を行うことで、実際の診療で活用可能なレベルの速度を実現する。とはいえ、リソースには限りがあるため、すぐに同病院のすべての患者に実施というわけにはいかないともするほか、遺伝子異常に効果がある阻害薬の多くが認証に至っておらず、保険適用ができないこともあり、対象はまずは、治験や臨床試験に参加する患者から、という形になるという。ただし、同センターでは、医師主導治験をセンター外の病院でも実施して、幅広い連携を進め、最終的には薬事承認まで持っていきたいとしており、ゲノム診療に基づく保険適用の実現を目指すとしている。なお同部門は、中央病院のほか、研究所などの各部門におけるゲノム診療や研究に関わるメンバーで構成されており、専門家チームによる最終診断、解析結果レポートの作成、診療コンサルテーション、遺伝相談外来併診など、中央病院の全診療科のサポートする形で運営されるという。
2016年01月13日広島大学は1月8日、不整脈により突然死を起こすブルガダ症候群(ポックリ病)の発症リスクが低減する遺伝子を発見したと発表した。同成果は広島大学病院の中野由紀子 講師、同大大学院医歯薬保健学研究院の木原康樹 教授、越智秀典 講師、茶山一彰 教授と理化学研究所らの研究グループによるもの。米科学誌「Circulation:Arrhythmia and Electrophysiology」に掲載された。ブルガダ症候群は、2000人に1人発症する病気で、普段は全く症状がなく、致死的不整脈により突然死を起こすため、ポックリ病と呼ばれる。近年、検診時の心電図(ブルガダ型心電図)などで症状の無い(無症候性)ブルガダ症候群患者を早期発見できるようになり、無症候性ブルガダ症候群患者の一部に対し、突然死予防のために植え込み型徐細動器というデバイスの埋め込みが行われている。しかし、無症候性ブルガダ症候群の突然死のリスクの予測判断材料が確立されているわけではない。今回の研究では、ブルガダ症候群患者は健康な人に比べHEY2遺伝子多型(rs9388451)の変異型が多いことを確認。中でも無症候のブルガダ症候群に多いことを初めて発見した。また、HEY2遺伝子多型の変異型を有するブルガダ症候群患者は、平均63カ月の観察期間内に致死的不整脈を起こす割合が有意に少なく(変異型有6% vs 変異型無19%)、この遺伝子がブルガダ症候群の発症を抑える役割を果たしている可能性が示唆された。同研究グループは「今回の結果は、突然死を起こすブルガダ症候群のリスクの層別化に有用であり、突然死の予防や不要な治療侵襲の抑止に役立つ可能性があり、患者さんに大きなメリットとなります。」とコメントしている。
2016年01月08日先日声帯に腫瘍が発見されたことでがんの検査中だと噂されていたジャネット・ジャクソンが6日、ツイッターを更新し、「アンブレイカブル・ワールド・ツアー」延期の理由ががんの危険性によるものではないとコメントした。ジャネットはツイッターに投稿したビデオで、「私の口からきいたことだけを信じることを忘れないで。噂は真実じゃないわ。私はがんじゃない。私は今回復中よ」と説明。「お医者さんたちはヨーロッパでのコンサートを予定通り行うことを承認してくれているし、約束通り延期された公演については日程を組み直すわ。みんなからの祈りと愛情に感謝しているわ」と話した。ツアー延期の発表の際、ジャネットはオフィシャルサイトで「ねぇみんな・・・幸せなホリデーをね!今日私の医師団から手術がすぐに必要だと言われたことをみんなにお伝えしなくちゃいけないわ」「それで春まで『アンブレイカブル・ツアー』を延期しなくてはならなくなったことをみんなにお伝えするのはとても心が痛いんだけどね」「このつらい時期に私と家族、そして私たちの会社のすべての人たちのために祈ってください...これ以上はコメントを出さないわ」とメッセージを投稿していた。(C)BANG Media International
2016年01月08日国立がん研究センター(国がん)は1月8日、全国がん登録および院内がん登録を推進する「がん登録センター」を開設したと発表した。全国がん登録とは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する仕組みで、1月1日よりスタートしている。全国どこで診断を受けても、がんと診断された時点のがん情報が病院などから都道府県に届出され、国のデータベースで一元管理されるようになる。全ての病院などに届出義務が課せられ、都道府県をまたがった受診や転居による重複や漏れも伏せぐことができるため、今まで集計できていなかった正確な全国のがん罹患数を把握し、収集したデータを用いることで国や都道府県で効果的ながん対策の立案につながると考えられている。一方、院内がん登録ではがん診療連携拠点をはじめとする約1000病院で約90項目にわたる詳細な情報を収集し、より正確で詳細な施設別のデータが比較できるようになっている。全国がん登録で国・地域の状況がもれなく把握された結果が、がん対策に活かされ、院内がん登録で得られる病院ごとの状況が比較されて病院のがん診療が向上していくことが期待される。国がんが新設した「がん登録センター」では、全国がん登録において都道府県に提供されるがん情報を一元的に集約し、都道府県と国のがん対策の基盤として用いられるようにデータベースを整備、データの提供・分析を行う。また、院内がん登録についても、データの収集・分析と提供、院内がん登録実施医療機関の支援について機能強化を図る。いずれのがん登録も情報の収集には人材の育成と収集のルールや手順の標準化が不可欠であり、標準化作業においても国がんならびに同センターがリーダーシップを発揮し標準化事業を推進していくとしている。
2016年01月08日広島大学はこのほど、不整脈により突然死を起こすブルガダ症候群(ポックリ病)の発症リスクを低減させる遺伝子を発見したことを明らかにした。広島大学大学院 医歯薬保健学研究院の木原康樹教授らの研究グループによるもので、突然死の予防や不要な治療による体へのダメージ抑制への期待が持てるという。2,000人に1人が発症するとされるブルガダ症候群は、普段は全く症状がなく、致死的不整脈によって突然死を引き起こすため、「ポックリ病」とも呼ばれる。近年は、検診時の心電図(ブルガダ型心電図)などで症状のない無症候性のブルガダ症候群患者を早期発見できるようになっている。だが、突然死のリスクの予測判断材料として確立されたものはないとのこと。今回、研究グループはブルガダ症候群の患者は、健康な人に比べて「HEY2遺伝子多型(rs9388451)」の変異型が多いことを確認し、特に無症候のブルガダ症候群に多いことを初めて発見したという。研究グループは、ブルガダ症候群の患者(ブルガタ群)95人と健康な人(健常群)1,978人でHEY2遺伝子多型変異型の保有の有無を調査した。その結果、HEY2遺伝子多型変異型の保有率はブルガタ群(69%)が健常群(57%)よりも高かった。しかも、致死的不整脈既往のある有症候ブルガダ症候群(59%)よりも、既往のない無症候ブルガダ症候群(74%)のほうが高かったという。また、ブルガダ症候群の患者を63プラスマイナス28カ月にわたり経過観察したところ、HEY2遺伝子多型変異型を有する患者では、有意に致死的不整脈の発症が少ないことも確認した(変異型有: 6%、変異型無: 19%)。心電図指標では変異型を有する症例の方がQTc時間が長く、HEY2mRNA発現量が少ない点も確認したことから、HEY2遺伝子多型変異型は心臓の活動電位を修飾することで、ブルガダ症候群における致死的不整脈の発症を抑える役割を果たしている可能性が示唆された。これまでブルガダ症候群の発症リスクと考えられていたHEY2遺伝子が、実はブルガダ症候群において心室細動の発症リスクを低減し、予後を改善する役割があるとわかった点が、同研究の大きな意義と研究グループは見ている。今回の発見は突然死予防のための創薬、遺伝子治療につながる可能性があり、今後は心電図指標などと組み合わせて、より精度の高いリスク評価の方法を確立することを目指すとしている。
2016年01月08日近年、子宮頸(けい)がん検診や予防ワクチン接種などの情報提供がされるようになり、広く予防の重要性が訴えられるようになってきた。一方で、一度も検診を受けたことがない人や、定期的には受けていない人も多いのではないだろうか。そこで今回、子宮頸がんがどういう病気で、なぜ予防が大切なのか、そして女性の人生にどんな影響を与えるのかについて、女性ライフクリニック銀座の対馬ルリ子院長に伺った。前編と後編にわたってお届けしよう。○異変に気づいたら、もう初期ではない「子宮頸がん」は、子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんで、20~40代でかかる人が多い病気だ。これに対し、子宮の奥(子宮体部)にできるがんを「子宮体がん」といい、閉経後の50代に多く見られる。恐らくどんな病気でも、気になる症状があってから初めて病院に行く人が少なくないはずだ。子宮頸がんの場合は、下腹部痛や不正出血、おりものの異常などの異変を見逃さなければ、初期の段階で発見できると思っている人がいるかもしれない。しかし、「症状が出てからでは、もう初期ではありません」と対馬院長は語る。「"症状があったら病院へ行きましょう"では、私はよくないと思います。子宮頸がんは、がんになる前に定期的な検診で見つけることが大切。症状があってから病院に行って、子宮頸がんが見つかったときには、それはもう初期がんではなく進行がんであることがほとんどですから」。○原因は主に性交渉によるHPV感染子宮頸がんの原因は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染ということが明らかになっている。ただしHPVに感染しても自然消滅してがん化しない人と、数年から10年ほどの潜伏期間を経てがん化(突然変異)してしまう人に分かれることがポイントだ。「一生の中で80%ぐらいの女性が一度はHPVに感染しているといわれています。その中で自然に排除されずに持続感染する人は、約10~20%です」。また、どのタイプのウイルスに感染しているのかも重要だ。HPVはさまざまな型があるが、16型と18型はがん化しやすい"ハイリスク型"に該当する。ハイリスク型は20~30代の女性に多い傾向があるため、子宮頸がんは若い女性が特に注意すべき病気として扱われ、検診の重要性が叫ばれているのだ。○1回のセックスで感染することもそして、主に性交渉によって感染するといわれるHPV。このことからか、世間には「子宮頸がんになる女性は性交渉の回数が多い」という偏見もある。しかし、対馬院長は次のように正す。「性交渉を1回でもしたことがある女性であれば、子宮頸がんになる可能性はあります。逆に言うと、生涯で一度も性交渉をしない人でない限り、子宮頸がんにならないとは言えません」。さらに、HPVは性器以外にも手指などいたるところに存在しているため、コンドームでは感染を防ぐことができないという。性交渉の経験がある女性であれば誰にでもHPVに感染するリスクがある、と認識しておこう。○子宮頸がんのステージと手術内容HPVに持続感染すると、「異形成」というがん化する前の異常細胞(前がん病変)が生じ、異形成の中でもっともがん化する確率が高くなっているものを「高度異形成」という。がん化すると、進行に応じて0期~4期に分類される。0期は上皮(子宮頸部の表面)内に、1期は子宮頸部内にがんがとどまっている状態で、2期以降は子宮周囲の組織まで広がっていくことになる。また、0期は「上皮内がん」、1期以降は上皮以外にがんが広がっていることから「浸潤がん」と呼ばれている。治療では、高度異形成や上皮内がん(0期)で見つかった場合は、子宮頸部の一部を切除する「円錐(すい)切除術」が行われる。子宮が温存できるため、その後の妊娠・出産も可能だ。一方、通常の浸潤がんの治療では、子宮のほかに卵巣や卵管、リンパ節など子宮の周囲の組織も摘出する「広汎(はん)性子宮全摘術」が選択される。手術に、放射線治療や化学療法を組み合わせることもある。○たった1センチ進んだだけで……対馬院長は、子宮頸がんの治療を「ほんの数カ月の違いで運命が変わる」と表現。「子宮頸がんは膣の壁を這(は)うようにして進行し、がんがたった1センチ進んだだけで骨盤の底までえぐるように取らなければならなくなります。出血も多く、婦人科の手術の中でもっとも大きな手術です」。さらに、手術後の生活にも深刻な影響があると語る。「リンパの流れが悪くなることでリンパ浮腫(ふしゅ)を起こして下半身が極端にむくんだり、感染にも弱くなるので、蚊に刺されただけでも下肢全体が腫れたりします。また、広汎性子宮全摘術では、膀胱(ぼうこう)や直腸につながっている神経を切らなければならないので排尿障害や排せつ障害を起こします。尿意を感じない、上手に排便ができないなどといった普段の生活に支障が生じる障害と、一生付き合わなければなりません」。子宮頸がんは、がんのステージによって手術や治療の内容が大きく変わることをお分かりいただけただろうか。後編では、子宮頸がんの予防ワクチン接種と検診についてお伝えする。※画像は本文と関係ありません○記事監修: 対馬ルリ子(つしま・るりこ)現職対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長産婦人科医、医学博士専門は周産期学、ウィミンズヘルス経歴1984年、弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック(現 対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座)を開院、院長を務める。2003年には女性の心と体、社会とのかかわりを総合的に捉え、健康維持を助ける医療(女性外来)をすすめる会「NPO法人 女性医療ネットワーク」を設立。理事長として、全国450名の女性医師・女性医療者と連携して積極的に活動しているほか、女性の生涯にわたる健康のためにさまざまな情報提供、啓発活動を行っている。現在、東京大学医学部大学院非常勤講師(母子保健)。「ウーマンウェルネス研究会 supported by Kao」の代表も務める。
2016年01月07日虐待死のニュースで時折指摘されることがある「乳幼児揺さぶられ症候群」。赤ちゃんが激しく揺さぶられることによって脳に障害をきたす疾患のことを指す。親たちはどのようなことがきっかけで、赤ちゃんを揺さぶってしまうのか。そしてどうしたら、被害を防ぐことができるのか。同疾患に詳しい国立成育医療研究センター研究所・社会医学研究部部長の藤原武男氏に聞いた。○赤ちゃんが「泣きやまない」ことが引き金に「乳幼児揺さぶられ症候群」は、赤ちゃんが激しく揺さぶられることによって脳の周りの血管や神経が引きちぎられ、さまざまな障害が起こる疾患のこと。言語障害や失明、最悪の場合には死に至ることもある。最近では、児童虐待の死亡事故を報じるニュースで耳にするケースも多くなっている。これらの事態を重く受け止め、厚生労働省は2015年から死亡事故事例の検証結果(子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について: 第11次報告)の調査項目に「乳幼児揺さぶられ症候群の有無」を追加した。検証結果によれば、平成25年4月1日から平成26年3月31日までに発生した児童虐待による死亡事例(心中以外)のうち、最も多かった直接死因は「頭部外傷」。このうちの6割が「乳幼児揺さぶられ症候群」(疑い含む)だった。判明した加害動機のうち多くを占めたのは、赤ちゃんが「泣きやまないことにいらだったため」で、「実母が泣きやまない女児をあやそうと両手で持って揺さぶり、意識障害とけいれんで救急搬送されている」「実母が外出している間、実父が食事中泣きやまない女児にいらだち暴行を加えた」などのケースが報告されている。○イライラしたら赤ちゃんから離れても構わない死亡事故に至らないまでも、赤ちゃんが泣きやまないことにイライラしてしまった親は少なくないのではないか。藤原氏によれば、イライラしたときに赤ちゃんを激しく揺さぶる衝動をコントロールするために必要なのは「泣き」についての知識なのだという。「これまでの研究で、赤ちゃんにどのような関わり方をしても、生後1~2カ月頃には泣きのピークを迎えることがわかっている。そのときは何をやっても泣きやまない。1日に合計5時間以上泣くこともあり、それでも正常ということを知ってもらいたい」と話した。「抱っこをする」「授乳する」「おくるみでくるんであげる」「ビニールをくしゃくしゃさせた時に出る音を聞かせる」などを試した上で泣きやまないときには、「自分がイライラする前に、赤ちゃんをベビーベッドなど安全な場所に寝かせてその場を少しの間離れても構わない」とのことだ。○「泣き」の知識があれば被害は予防できるしかし親たちがこのような知識を持っていることで、本当に虐待は予防できるのか。この点については、藤原氏が行った興味深い研究がある。調査は、千葉県鎌ヶ谷市で生後4カ月の子どもを持つ母親1,594名に対して実施したもの。2010年6月から2012年1月の間に市が開いた乳幼児健診に参加した人を対象とした。市では、(1)妊娠8カ月のクラスで幼児の泣きの特徴と推奨される行動についてのDVDを見せる、(2)乳児期の家庭訪問の際、幼児の泣きについての情報を載せたパンフレットを配るという2つの施策を実施。藤原氏は、(1)も(2)も体験した母親、(1)(2)のいずれかを体験した母親、(1)も(2)も体験した母親の3グループにわけて分析を行った。その結果、幼児の泣きの知識に関しては体験した施策の数が多い母親ほど定着が見られた。さらに、「泣きやまないときには赤ちゃんから離れる」という行動をとった回数も、同様に多くなったのだ。公的な施策が、虐待を防ぐための行動を実践するために効果を発揮していることがわかる。この調査結果に加えて、藤原氏は「周囲が育児に関わることの大切さ」も指摘。「夫の協力も含め、さまざまな人が育児に関わることで日常生活のストレスは軽減される」と話してくれた。赤ちゃんの泣きの特徴や対処の仕方については、母親だけでなく周囲の理解も必要となってくるだろう。※写真と本文は関係ありません
2016年01月05日