●拝観再開となった鎌倉大仏、"健康診断"で何が分かった?鎌倉のシンボル"鎌倉大仏"こと高徳院本尊「国宝 銅像阿弥陀如来座像」(神奈川県鎌倉市)の、およそ半世紀ぶりとなる本格的な調査・清掃作業が3月18日に完了した。今回は清掃を終えてきれいになられた大仏さまをお参りし、その後は大仏周辺の長谷の街でお土産を選んだり、ランチをいただいたりと、ぶらり半日旅を楽しんでみたい。○大仏は「おおむね良好」江ノ島電鉄の長谷駅から鎌倉大仏を本尊とする高徳院までの通りは、両側に食事処や土産物屋が並び、途中には「長谷観音」を本尊とする長谷寺があるなど、とてもにぎやか。駅から高徳院の門前までは、ゆっくり歩いておよそ7分だ。新聞などで「大仏さまの健康診断」などとも伝えられたので、ご存じの人も多いと思うが、大仏は1月13日~3月18日まで、約2カ月にわたる大がかりな調査・清掃作業を終えたばかり。このような大仏の本格的な調査は、昭和34年(1959)から2年半かけて行われた、いわゆる「昭和の大修理」以来、およそ半世紀ぶりとなった。今回の作業に当たった東京文化財研究所の森井順之(まさゆき)主任研究員によれば、心配された進行性の腐食生成物(サビ)の存在は小さく、経過観察で十分と結論付けるなど、大仏の状態は「おおむね良好」とのこと。緊急の修理は必要なく、調査で取得したデータは解析を進め、4月以降に論文等で発表していく予定だ。○ガムの付着が130カ所以上調査・清掃作業の完了を受けて、高徳院の佐藤孝雄住職は、「無事に終えてホッとした」と語る一方で、「安閑としていられない部分もある」という。世界的な問題となっている大気汚染や、海に近い鎌倉ならではの「塩害」の問題に加え、今回の作業でクローズアップされたのが、像の外周に30カ所、内部(胎内)に100カ所以上見つかった、拝観者によるものと思われるチューインガムの付着だ。付着後かなり時間が経過しているものもあり、像を傷つけないようメス等により少しずつガムの表面を削っていき、溶剤(酢酸エチル)を浸した綿棒で拭き取るという手間のかかる作業が必要なため、除去にかなりの時間を要したという。佐藤住職は、「大仏は国宝仏として希有(けう)な存在。ガムの件は一部の心ない拝観者の所業と思われるが、現在のような(胎内拝観も許す)拝観が今後も続けられるかは、ひとえに拝観者の良心にかかっている」と話す。大仏を改めて拝観してみて、「きれいになられたな」という印象を受けた。桜シーズンにあわせ、この機会にぜひお参りされてみてはいかがだろうか。そんな大仏を楽しんだ後は、鎌倉の魅力を伝えるお土産選びもいいだろう。続いては、和風カフェを併設した小休止にもぴったりなお店を紹介したい。●information鎌倉大仏殿高徳院住所: 神奈川県鎌倉市長谷4-2-28アクセス: 江ノ島電鉄「長谷駅」徒歩7分●「鎌倉に根付いたブランドでありたい」優しさが詰まったお土産たち○身体に優しく、鎌倉らしいお土産を高徳院を出たら、長谷駅に向かって戻るように少し歩いて行こう。100mほど先の左手にオリジナルの「あぶらとり紙」などを販売する「鎌倉四葩(よひら)」がある。鎌倉を代表する花といえば初夏に咲くアジサイだが、「四葩」はアジサイの別名。店名には鎌倉に根付いたブランドでありたいという願いが込められているという。同店は「あぶらとり紙」の専門店としてスタートしたが、現在はコスメ製品のラインナップも充実しているほか、隣の店舗で展開しているテイクアウトスタイルの和風カフェ「カフェ四葩」の"甘酒"や"モッフル"が人気だ。「四葩」の商品に共通するのは、身体に優しい自然の原料・素材にこだわること。まずは、「あぶらとり紙」から見てみよう。販売されている「あぶらとり紙」に触れてみると、とてもなめらかで、しっとりとした肌触りだが、これは絹の繊維を大量に何割も漉(す)き込んだ、独自の紙を使うことで実現しているのだという。実は、社長の三木慎也さんの実家が四国で製紙会社を営んでおり、紙を漉くところから一貫して自ブランドで行っているからこそできることなのだ。「あぶらとり紙」は、定番商品の鎌倉の名所・名物がデザインされた「鎌倉パッケージ(鎌倉散策シリーズ)」(400円)のほか、季節の絵柄がデザインされたもの、香り付きのものなど様々なラインナップがある。次は、コスメ製品を見てみよう。特製美容液と浸透シートのセットや、食用と同じ素材にこだわっているので食べることも可能という「洗顔こんにゃくスポンジ」など様々な商品が並ぶ。その中で三木さんは、「とうふ石けん」(1,200円)がイチオシという。「とうふ石けん」は、コラーゲン、豆乳、ハチミツ、オリーブ油、ヒアルロン酸、ローヤルゼリーなど天然素材の保湿成分がぜいたくに配合された石けん。敏感肌の人などから、ボディー用の高級石けんがほしいという声が寄せられて開発した商品で、自分用のお土産として買って帰る人や、外国人観光客の需要も増えているそうだ。○鎌倉名物「しらす」の新食感さて、お土産を手に入れたら、「カフェ四葩」に移動しよう。こちらの人気商品は、「しらすモッフル」(400円)だ。モッフルとは、表面がワッフルのような形をした餅(モチ)を焼いたもので、表面はサクサクしているのに中はやわらかいおモチという独特の食感が楽しめる。また、お米が原料なので身体にもやさしいオヤツとして密かなブームになっている。鎌倉といえば"しらす"が人気だが、最近はあまりにも"しらす丼"を出す店が増えてしまったので、ちょっと変わった"しらす"の楽しみ方ができることも人気の秘密かもしれない。お土産を選んだりカフェで休んだりしたら、そろそろおなかもすいてくる頃だろう。続いて紹介するレストランは、食材はもちろん、お店のコンセプトそのものも味わい深さが詰まっている。ゆったりとした時間にぴったりなひとときをここで過ごしてみてはいかがだろうか。●information鎌倉四葩/カフェ四葩住所: 神奈川県鎌倉市長谷1-15-16アクセス: 江ノ島電鉄「長谷駅」徒歩6分●古民家のぬくもりに包まれながら、「イタリアン×鎌倉」なランチを○古民家レストランでランチを大仏や長谷観音などの人気観光スポットが集まるメイン通りから、今度はちょっと一歩路地へ。住宅地の一角にあるのが、築約90年という古民家をリノベーションしたレストラン「0467 Hase kamicho」だ。オーナーの加藤圭吾さんはもともと鎌倉の出身で、鎌倉で店をはじめるまでは、東京でレストランなどの店舗プロデュースをされていたという。そのようなバックグラウンドもあり、「0467 Hase kamicho」の空間デザインには、こだわりと卓越したセンスが感じられる。天井や柱などは元の民家のものをそのまま利用しているが、壁や床などは白と黒を基調にリノベーションされ、木のぬくもりと都会的な洗練が調和した、見事な空間が広がっている。なぜ、レストランをはじめるにあたって「古民家」という素材を選んだのかをうかがうと、「鎌倉は、東京からの距離が近く、普段からクオリティーの高いお店に慣れ親しんでいる都会的な人も多く訪れる土地柄。鎌倉が本来持つ歴史や伝統を活かしながら、そうした人々にも十分に満足していただける洗練された街という『こうあってほしい鎌倉のイメージ』を表現する場として、古民家を現代的にリノベーションすることが最適」だったのだという。また、鎌倉でも景観破壊が問題になっている中で、「もとからその場所にある古民家を再生することは、その『場所の記憶』をとどめつつ、新しい風土をつくるという意味でも意義のあること」と語る。○鎌倉野菜に地元の鮮魚もさて、今回いただいたのは同店の人気メニュー「ランチプレート」。一皿(プレート)に魚や野菜等のサイドディッシュ、主菜、サラダが盛り合わせになったものに、ご飯またはパン、スープ、食後の飲み物がついている。「ランチプレート」にはAプレート(3,780円)とBプレート(2,700円)があり、それぞれ主菜の内容が異なり、Aプレートは副菜が1品多くなっている。同店のコンセプトは「地産地消」。鎌倉野菜や相模湾の鮮魚など地元の食材を中心に使った、イタリアンをベースに和のエッセンスを加えたおいしい料理をお手頃な値段でいただけるのが、オススメのポイントだ。●information0467 Hase kamicho住所: 神奈川県鎌倉市長谷3-8-17アクセス: 江ノ島電鉄長谷駅より徒歩5分定休日: 火曜日「0467 Hase kamicho」からちょっと足を伸ばすと光則寺という寺院がある。桜のほか、春先には本堂前の見事な海棠(かいどう)の古木が花を咲かせることで知られる。また、長谷寺にも本数はさほど多くはないものの桜がある。境内からの海の眺めも抜群で、のんびり境内散策を楽しむのをオススメしたい。※記事中の情報は2016年3月時点のもの。価格は税込○筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)旅行コラムニスト。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に撮影・取材を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。
2016年03月31日大須(おおす)商店街といえば名古屋の中でも、とびっきり元気な商店街だ。大須観音の門前町として発達したこの商店街は下町風情を残しつつ、家電店や古着屋、サブカル、エスニックなどが混然一体となって独自のカルチャーを形成。休日にもなると多くの人が押し寄せる。そんなカオスさがウリの大須商店街で、毎年10月に行われるのが「大須大道町人祭」だ。その名の通り、日本中から名うての大道芸人が集まるストリートパフォーマーの祭典。しかし、名古屋人はこの「大道町人祭」の名を出す時、頭の中であるコトバと必ず結びつけて顔がニヤニヤし始める。「ああ、金粉ショーのねぇ」と。この金粉ショー、大道町人祭の代名詞となっているほどの恒例出し物。しかし実際に見るとアゴが外れる程の衝撃を受ける。局部だけを隠した「ほぼ全裸」の男女ダンサーが全身に金粉を塗りたくり、公衆の面前で舞踏パフォーマンスを行うのだ。男性ダンサーはまぁいい。問題は女性ダンサーだ。初めて見た時は、胸には超ミニのビキニかニプレスでも付けていると思っていた。しかしよく見ると女性は完全におっぱい丸出し。それを隠そうともしない。下もTバックを通り越して、ほとんどヒモ状態。時には男が女の身体を持ち上げ、プロペラのように振り回したり燃え盛るトーチを振り回したりすることも……。ダンサーはアングラの世界では知らぬ人はいない、「大駱駝艦(だいらくだかん)」の艦員(メンバー)。世界的に知られるこの舞踏集団のパフォーマンスがタダで見られるのは素晴らしいことだけれど、よくぞまあ公然わいせつ罪でタイホされないものだと思う。もちろんカメラ小僧もわんさかで、この希少な被写体をバシャバシャと撮影している。この金粉ショー、踊る場所もすごい。なにせ大須商店街内にあるお寺の境内で踊るのだ。そのクライマックスであるショーが行われるのが、大須観音の中央階段ステージ。日のとっぷり暮れた大須観音に浮かび上がる6体の金ピカダンサー。光に照らされたゴールデンボディーが暗闇に浮かび上げる。BGMは民族音楽とハウスミュージックが融合したような異次元的なサウンド。そして背景は、いかにも日本的な朱塗りの伽藍(がらん)や大ぢょうちん。どこを切り取ってもアングラでシュールなのだ。このショー見たさに2時間前から場所取り合戦が発生し、場所にあぶれた人々もショーを ひと目見ようと、境内には黒山の人だかりが出現する。そこでは、アングラとは縁もゆかりもない子どもから老人までの善良な市民が、ぷるんぷるんと揺れる金色のおっぱいやおしりを眺めているのだ。この狂気さえ感じさせる混沌(こんとん)とした熱気は、その場でないと分からない。それにしても観音様の御前である。人間界では罪に問われなくても、観音様には罰当たりではないのだろうか?しかしこのショー、観音様への奉納とも見えなくもない。奉納とは、神仏を敬うために「価値のあるもの」を供物として神仏にささげる宗教的な行為のことをいう。供物には、金銭や食べ物はもちろん、歌舞音曲も含まれる。たゆまぬ鍛錬を積んだ大駱駝艦のしかも黄金に光り輝く舞踏だ。そう考えると、もしかしたらこれ以上の奉納はないかもしれない。さらに、この半裸ショーは当然ながらセクシャルなエネルギーもみなぎっている。そこで連想されるのが、チベット仏教の秘仏ヤブユム(歓喜仏)だ。ヤブユムは男女合体仏像で、日本の仏教では考えられないことだが、男女の仏様カップルがまぐわっている。性行為を宇宙エネルギーの根源と表現しているのだ。そう考えるとこの金粉ショーは、日本におけるリアル・ヤブユムなのかもしれない。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月07日