佐村河内守の“ゴーストライター騒動”で、そのゴーストライターとして暗躍し、大きな注目を集めた作曲家・新垣隆が、今春公開される映画『ソロモンの偽証』の応援大使に就任したことが発表された。さらに、トークアプリ「755」で中学生から質問を受けつける“大人の相談室”を開設することも明らかとなった。映画『ソロモンの偽証』は、ベストセラー作家・宮部みゆきが構想15年・執筆に9年もの歳月を費やしたという同名ミステリー巨編を、成島出監督をはじめとする『八日目の蝉』チームが再結集し、2部作で映画化したもの。物語は大雪に見舞われたクリスマスの朝ーー雪の校庭に転落死した男子生徒、柏木卓也が発見される。警察は自殺と判断したが、殺人の目撃者を名乗る告発状が学校に届く。告発された容疑者はクラスメイト。過熱するマスコミ報道、無力な学校と親、新たな殺人計画…。そして犠牲者がひとり、またひとりと増えていく中、「もう大人たちには任せておけない」と、遺体の第一発見者である生徒のひとり、藤野涼子の発案で学校内裁判が開廷されることに…。本作では、真実を追い求め葛藤する中学生たちがメインとして描かれるが今回、新垣さんはそんな中学生たちを応援するための応援大使として公開初日まで活動することとなる。さらに、2月26日(木)より先述したトークアプリ「755」にて「ソロモンの偽証応援大使新垣隆」の名で登録。嘘にまつわる話や葛藤など、中学生からの質問を募集し、3月5日(木/18:30~19:30を予定)に本人自らが質問に答えていくとのこと。新垣さんは、今回の企画について「自分が中学生だった頃から30年の月日が経ち、髪の毛は随分薄くなってしまいましたが、心の気持ちはその頃と今とで何ら変わっていないという事に、今ふと気がつきました。皆さんと共に考えるという事は、自分の中に存在するかつての中学生の私と対話する、という事でもあります。ぜひ皆さんの思いを聞かせてください」とコメントを寄せている。嘘から逃げない男が、中学生たちの想いにどんな言葉で応えるのか…注目が集まりそうだ。『ソロモンの偽証前篇・事件』は3月7日(土)より、『ソロモンの偽証後篇・裁判』は4月11日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ソロモンの偽証前篇・事件 2015年3月7日より全国東宝系にて公開(C) 2015「ソロモンの偽証」製作委員会ソロモンの偽証後篇・裁判 2015年4月11日より全国にて公開(C) 2015「ソロモンの偽証」製作委員会
2015年02月26日六本木ヒルズ「森美術館」は、企画展「村上隆の五百羅漢図展」を開催する。期間は2015年10月31日から16年3月6日まで。スーパーフラット理論を提唱し、現代美術展「GEISAI」を開催するなど、日本を代表するアーティストの1人として知られる村上隆。今回はその近年における活動を紹介したもので、日本では数少ない村上作品を扱った展覧会となる。中でも、代表的な作品となるのが、東日本大震災をきっかけとして2012年に制作された絵画「五百羅漢図」だ。この作品は高さ3m、幅100mにも及ぶキャンバスに修行僧の姿を描いたもの。そこには、有限の生と無限の宇宙、自然が交錯しており、宗教を超えた祈りが込められている。芸術はわれわれの世界、人間のリアリズムにどれだけ肉薄できるのか。そんな村上の芸術観に迫る作品が、会場には数多く展示される。森美術館でも14年ぶりとなる村上の展覧会。アニメポップだけでない、村上のもう一つの顔を知る貴重な機会となりそうだ。【イベント情報】村上隆の五百羅漢図展会場:森美術館住所:東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53階期間:2015年10月31日から16年3月6日
2014年11月20日村上隆がプロデュースした初のカフェ「バー・ジンガロ(Bar Zingaro)」が、中野ブロードウェイ2階にオープンした。バー・ジンガロのテーマは「コーヒー」「カクテル」「アート」の3本柱。店内にはオーナー・村上隆によるアート作品の他、彼がセレクトしたアートも展示されている。現在展示されているのは、22日より中野ブロードウェイ4階の「Oz Zingaro」で「三人展」を行う陶芸作家の上田勇児、大谷工作室、熊谷幸治の作品。内装はノルウェーの首都オスロに本店を構え、東京にも出店するカフェ業界でグローバルに知られる「フグレン(Fuglen)」が手掛けた。コーヒーやエスプレッソを中心としたカフェメニューの他に、カクテルやビール、ワインなど酒類がラインナップ。パンやケーキなどの軽食も用意されている。今後は、現在中野ブロードウェイ内に4店舗展開しているギャラリー「Kaikai Zingaro」「Hidari Zingaro」「pixiv Zingaro」「Oz Zingaro」をつなげるコミュニケーションの場、イベントスペースとして展開していく考え。
2013年11月16日「スーパーフラット」(’00)、「ルイ・ヴィトン×村上隆」(’03)、「ムラカミ・ヴェルサイユ」(’10)などの作品を発表し、世界を驚かせてきたアーティスト・村上隆による初監督作品『めめめのくらげ』。このたび世界中がいまかいまかと公開を待ちわびる本作の待望の予告編とポスター・ビジュアルが遂に解禁となった。主人公の小学生・正志は、引っ越してきた新しい家に、見慣れない段ボールを見つける。中から出てきたのは、くらげの様な不思議な生き物!どこか愛くるしいその生き物を“くらげ坊”と名付け、次第に仲良くなっていく。リュックにくらげ坊を連れて転校先の学校に行くと、ほかの生徒も、くらげ坊と同じく大人には見えない不思議な生物=“ふれんど”を連れていて…。今回、解禁となったポスターには「あの村上隆が映画監督はじめました」と堂々とした“監督宣言”アピール!周りには村上隆の代表的デザインの“目”のアイコンが浮かぶ中、中央に本作のストーリーのメイン的な存在のキャラクター“くらげ坊”がひょっこりと頭を出している。同時に公開となった予告編でも、くらげ坊が空に高く舞い上がり、街を全速力で飛ぶ姿が確認できるが、そのキュートな表情はかなりの存在感だ。この予告編でも流れている、主題歌「Last Night,Good Night」を歌っているのは日本のみならず海外でも話題を巻き起こし続けているヴァーチャルアイドル・初音ミク。村上さんが直々にオファーをしたという、「livetune」というソロプロジェクトでも活動している、いま最も注目を集めるクリエイターの一人・kzが手がけた楽曲を伸びやかに歌い上げている。TOHOシネマズ六本木ヒルズ10周年作品となる本作。アーティスト・村上隆の初監督作は日本で、そして世界でどのように受け入れられるのだろうか?公開を楽しみに待ちたい。『めめめのくらげ』は2013年4月26日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開。※こちらの予告編はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:めめめのくらげ 2013年4月26日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開© Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
2012年12月18日仏教の開祖は釈尊。いわゆるお釈迦(しゃか)様です。釈迦(しゃか)というのは部族の名前と言われています。(諸説ありますが)釈迦族の王子・シッダールタは出家し、菩提(ぼだい)樹の下で悟りを開き、人々に教えを説きます。このお釈迦(しゃか)様という人には面白い話が結構ありまして……。■お母さんの脇の下から生まれた!?偉大な人物の伝記には、後世にどんどん創作されたエピソードが追加されるものですが、お釈迦(しゃか)様の話にもそれが濃厚です。仏典によれば、生まれてすぐ、立ち上がって7歩歩き、天と地を指さして「天上天下唯我独尊」と叫んだと言われています。「世界の中で私だけが正しい」という意味ですから、ちょっとイヤなガキですね(笑)。また仏典の記載をそのまま信じると、マーヤー夫人という母親の右脇の下から生まれたことになっています。■サイコロばくちはお釈迦(しゃか)様が広めた!?教えを広めるために、人を集めようとしたのですがなかなかうまくいきません。また、もうひとつ盛り上がりに欠けるのでお釈迦(しゃか)様が一計を案じます。俗にチンチロリンという、まあサイコロばくちを開帳して人が集まったところで……「私の話を聞きなさい」(笑)。落語の枕なんかで使われる話なんで、本当なワケはないんですが、こういう話を許容してしまうというのは、お釈迦(しゃか)様の教えの寛容さ、また伝わっている人格、優しさによると思いませんか。■『西遊記』のお釈迦(しゃか)様も賭けをします三蔵法師が天竺にお経を取りに行く一大冒険スペクタクル『西遊記』にもお釈迦(しゃか)様が登場します。実は西遊記の世界観は、中国の道教思想と仏教が混交した妙なモノなのですが、ここではお釈迦(しゃか)様は西方浄土におわしますということになっています。お釈迦(しゃか)様の登場場面で最も有名なのは、天界で暴れる孫悟空と賭けをするところでしょう。●悟空はマッハ176,000で飛び出すが……お釈迦(しゃか)様は手のひらに悟空を乗せ、「私の手のひらから飛び出せるか?」と問います。「もしそれができたら、私が話してお前を天上界の王にしよう」と言うのです。ふざけるなとばかりに悟空は、金斗雲で飛びます。ちなみに金斗雲は、物語の設定では「ひともんどり打てば10万8,000里を飛ぶ」ということになっていますので「マッハ176,000」換算(秒速6万km)になります。十分に飛んで世界の果てまで来たなと思った時に、目の前に巨大な柱が現れます。よし、ここまで来た証しとして柱に「斉天大聖到此一游」(意:天にも等しい大いなる聖がここに来たぞ)と書き、戻ってきました。●悟空は500年後に助かります得意になってお釈迦(しゃか)様に告げると、お釈迦(しゃか)様は「お前は私の手のひらを出ておらぬ」と仰る(おっしゃる)。ふと見るとさっき書いたはずの文字がお釈迦(しゃか)様の指に。「お前の負けだ」という言葉と共にお釈迦(しゃか)様の指が岩山に変じ、五行山となって悟空を動けないように封じます。この五行山にはお札が貼(は)ってあって、「そのお札をはがす人が現れるまで、お前はここを動けない」とお釈迦(しゃか)様が言います。それが三蔵法師になるわけですが、三蔵法師が五行山にやって来るのは500年後。●去り際に悟空に罰ゲーム!?悟空を封じて天界が平和になったので、お釈迦(しゃか)様は西方に去るのですが、その際に「悟空を哀れに思って」として、「もしその化け猿が渇いたら煮えたスズ汁を飲ませてやりなさい」とヒドイことを言います(笑)。慈悲あるふれるお釈迦(しゃか)様でも、これは拷問です。天界で不老長寿の仙丹をむさぼり食ったので悟空は死ぬわけないのですが、お釈迦(しゃか)様の与えた罰ゲームだったのでしょうか。■仏様の特徴は……仏像は、お釈迦(しゃか)様の吉相を映して製作されます。お釈迦(しゃか)様には32個のすぐわかる特徴があったとされているのです。それぞれの吉相には意味があります。面白い、もとい興味深いのでいくつか挙げてみましょう。●足下安平立相(そくげあんぴょうりゅうそう)足の裏が平らで、歩く時には大地とぴったり密着する。●手足指縵網相(しゅそくまんもうそう)手足の各指の間に水かきがある。これは金色の膜で、すべての人を漏らさず救えるようにあると言われます。●足趺高満相(そくふこうまんそう)足の甲の部分が亀の甲羅のように大きく盛り上がっている。●伊泥延しつ相(いでいえんしつそう)伊泥延というのは鹿の種類です。ふくらはぎが鹿のように盛り上がって丸くなっている様子です。●正立手摩膝相(しょうりゅうしゅましっそう)直立したとき両手がひざに届くくらい長い。手でひざをなでることができる。ちなみに同様の相があったとされるのが『三国志演義』の主人公の1人、劉備玄徳です。●陰蔵相(おんぞうそう)ペニスが体内に密蔵されている。密蔵っていうのはちょっとヘンな表現ですが、関取のようにめり込んでいるってことなんでしょうか。これも吉相なんだそうです。●身広長等相(しんこうじょうとうそう)身長と両手を広げた長さが同じ。レオナルド・ダ・ヴィンチの絵で有名ですが、人間も大体そうですかね。●一一孔一毛相(いちいちくいちもうそう)体にあるすべてのすべての毛穴、一つ一つから、必ず1本ずつ毛が生えている。しかもその毛穴からは良い香気が出ていて、毛の色は美しい青瑠璃色である。●毛上向相(もうじょうこうそう)体毛の毛先がすべて上を向いている。しかもすべて右巻き。色は紺青である。●両腋下隆満相(りょうやくげりゅうまんそう)脇の下が盛り上がっていてくぼみがない。●四十歯相(しじゅうしそう)白く美しい歯が40本ある。普通の人間は(親知らずを入れて)32本。●大舌相(だいぜつそう)舌が大きく、髪の生え際に届くほど長い。しかし、口の中が舌で一杯にはならない。矛盾してるような気がするんですが(笑)。●金色相(こんじきそう)体が黄金色に輝いている。●丈光相(じょうこうそう)四方へ各一丈(約3m)の光が体から出ている。仏像に背面に付いている「光背」(こうはい)は単なる飾りではなくて、このお釈迦(しゃか)様の吉相を表現しているのです。●頂髻相(ちょうけいそう)頭頂部の肉が隆起している。仏像の頭がぼこっと二段になっていますが、あれは髪を盛っているのではなく、お釈迦(しゃか)様の頭の肉が盛り上がってるのを表現しているんです!●白毫相(びゃくごうそう)眉間に伸ばすと一丈五尺(約4.5m)にもなる白毛があって、これが光を放っている。仏像のみけんに何か丸いものが付いていたりますが、あれはこの毛を表現しているのです。いかがでしょうか。菩提(ぼだい)樹の下で悟りを開いた時に、顔が変わって、このような32の特徴を備えた相になっていたということになっています。姿形まで変わってしまうとは、やはり「悟る」とは大変なことのようです。(高橋モータース@dcp)
2012年12月03日劇場版“クレヨンしんちゃん”20周年記念作品『映画クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』に、ココリコ(遠藤章造・田中直樹)、土田晃之、藤井隆の4人がゲスト声優として出演することになり、アフレコ終了後、インタビューに応じた。その他の写真遠藤ら4人は『クレヨンしんちゃん』のTV放送が始まった1992年にデビューし、今年で芸歴20年を迎えた同期芸人。実生活ではそれぞれ、子どもを授かり“パパ芸人”としても知られる彼らが、今回、その育児経験を買われて、しんちゃんの妹・ひまわりのお世話をするヒマワリ星の“イケメンDEイクメン軍団”役に抜てきされた。遠藤は「滑舌があまり良くないし、もう40歳なんで老眼がきちゃって、台本が見えづらかった」と思わず苦笑い。「僕と田中君はアゴがしゃくれているので、どうしても空気が抜けてしまって…。僕はサ行が苦手」(土田)、「僕はラ行が、斜めに逃げてしまう」(田中)とこちらも四苦八苦の様子。一方、藤井は収録にテンションが上がり過ぎたといい「新感覚のアフレコを提案したかった」と自信満々!?それでも、ぐずるひまわりを必死にあやそうと悪戦苦闘するシーンには、4人とも実体験が活かされたと口を揃える。実際の“イクメン”ぶりを聞いてみると、遠藤は開口一番「諸事情で(笑)娘とは一緒に住んでいないんですよ。でも週に1~2度はうちに泊まりにくるし、お弁当を作ることもある」と自虐的なコメントで、他の3人から「何かあったの?」と白々しい指摘。相方の田中は「子どもに対しては、友だちという感覚がある」。ただ、持ち前の動物愛が強すぎて「まだ、言葉を話し始めた頃、イヌを見て『ワンワン』って言っていたのを『違う、あれはジャック・ラッセル・テリア!』と注意してしまったことがある」と反省する場面も。藤井は「できるだけ一緒に遊ぶようにしています。でもお母さん(タレントの乙葉)にはかなわないですね」。4人の子どもを持つ“子だくさん芸人”の土田は「子育てってついつい難しく考えがちですが、いわば“生活”なので特別なことじゃない」と説得力ある持論を披露。「もううちは一番上が中学生で、サッカーやろうって誘っても全然乗ってこない。まあ僕が本気を出しちゃうからなんですけど(笑)。子が親を見て育つのはもちろん、親が子を見て成長するんです」と育児論を熱弁すると、遠藤、田中、藤井の3人も大きくうなずいていた。本作は、しんちゃんこと永遠の5歳児・野原しんのすけが、ささいなケンカをきっかけに「オラ、妹なんていらないゾ!」と口走ったことから、ひまわりが宇宙にある“ヒマワリ星”のプリンセスとして迎えられ…。野原一家が家族の絆と全宇宙の存亡をかけた大騒動に巻き込まれる姿が描かれる。『映画クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』4月14日(土)から全国ロードショー(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2012取材・文・写真:内田 涼
2012年04月13日映画やドラマで静かに、しかし確かな存在感を感じさせたかと思えば、一転、舞台の上ではこれが同一人物かと見まがうようなコミカルな一面を見せる。吹越満とは何とも不思議な俳優だ。その奇妙な(失礼!)佇まいはインタビューで対峙してもやはり、変わらない。そんな彼が主演を務める映画『冷たい熱帯魚』がまもなく公開となる。メガホンを握ったのは、日本の映画監督の中でも数少ない“鬼才”という形容が似合う監督・園子温。吹越さんは堕ちて、堕ちて、ひたすら堕ちる、救いようのない主人公・社本を演じている。園子温vs吹越満――。タッグを組むのは今回で3度目、主演としては初めてとなったが、吹越さんはこの強烈極まりない作品に何を感じ、どのような思いで臨んだのか――?「楽しかった。現場で監督が一番面白い存在だったから(笑)」監督自身の経験と、90年代に起きた愛犬家殺人事件やほかの猟奇事件からインスパイアされて製作されたという本作。小さな熱帯魚屋を営む主人公が、ある出会いをきっかけに、たったひとつの“破滅”という名の道を進んでいく姿が映し出される。「ひと言で言うと楽しい」とは園組の撮影の印象。3度も組むぐらいだから当然、と思いきやその内容は映画さながらなかなか激しいようだ。「撮影は3週間ぐらいかな。おそらくは十分な時間がない中で、クランクイン前には1週間のリハーサルがあって、クランクインの日は朝から深夜、2日目が朝から次の日の朝まで…24時間以上か。いや、もうウワァって始まりだったんですが、なぜかホントに最後まで全然イヤじゃなかった。それは監督の人柄もあるのかな?やっぱり面白いね、監督が現場で一番面白い存在だっていうのは(笑)」。吹越さんから見た園監督というのは…?「作品の感じから、何となくどういう人か分かる気がするでしょ?でも、結構きちんとしてる。作品からすると意外なくらいね(笑)。酒癖が悪いってのは本当で(笑)、でもそれを認識してるから、ちゃんとお酒を飲まない時間を作って…ってそりゃそうか、大人だし(苦笑)。で、何より監督本人が言うのが『役者のお芝居を撮りたい』ということ。美術も照明も音もカメラもアングルももちろん必要で大切なんだけど、一番大切なのは役者の芝居だと謳ってる。だから、ずっと大切に“見られていた”という感覚はありますよ」。一見、人のよさそうな同業者の村田(でんでん)の恐るべき“裏”の顔を目の当たりにしつつも、抗うことすらできずに絶望へと引きずり込まれていく社本。この2人の関係を吹越さんはこう語る。「村田はものすごい悪だけど、いま考えると社本にも裏があって、『みんなによく思われたい』とか『責任を負いたくない』とか考えて、何とか取り繕うとしてもそれが全部悪い方向に行っちゃう。そういう人間だからこそ、村田は社本のことを狙ってたのかな、というのが僕の解釈。分かりやすい悪人が村田なら、社本は問題になる人間ですね。村田を見ながら僕も『そっちの方が良いなぁ』って思ってましたもん。『お前が考えてる地球はツルっとした丸い石だろう?おれが考えてるのはゴツゴツした岩だ』なんてセリフとしてかっこいいしね(笑)。やってることはひどいけど、すごい人間だなぁって」。「この映画に出て思ったのは“作りモノなめんなよ!”ってこと(笑)」まさに、吹越さんが引用したセリフではないが、破滅への一本道をスルスルと堕ちつつも、要所要所でグサリと突き刺さる何か――単に猟奇殺人事件を映画化したのではない、あえて言うなら“異物感”をこの映画の物語は感じさせる。「観てる側が『こう進む』と思ってるところをカクっと外して、また『こうかな?』と思うとカクっ、カクって全部外していく。それは裏を返せば実は、全部あっているということなんですね。昔、知り合いでビートルズの曲を聴いて、ジョンが歌ってるのか、ポールなのかが分かるっていうヤツがいて。試しにこれはジョン、これはポールってやってみたら、全部外れてた、ということがあったんだけど(笑)。それは、全部聞き分けてたってことなんだよね。それと同じで、園さんは全部“ちゃんと”外してるんですよ。それがエンターテイメントだな、と思います。“事実は小説より奇なり”って言うけど、逆にこの映画に出て思ったのは“作りモノなめんなよ!”ってこと(笑)」。そこで“絶妙”という言葉しか思い当たらない演技を見せている吹越さんもやはり、エンターテイナーだろう。もうすぐ46歳。不惑の40代も半ばを過ぎて、自らをどのように見つめているのか。その言葉は興味深い。「(観客が自分を)ダメというよりは良いと思ってくれているのかなぁ…でも、それを真に受けて自信を持ってよいものかなぁ…?という感じでしょうか(笑)。『俺、良い演技したよね』って言ってもいいかな…と思わなくもないような…と言うのは冗談ですが(笑)。ひとつ、自分で思っているのは『俳優になりたい』ということ。俳優になりたいんですよ、僕(笑)。そのためにこうやって映画やTVや舞台で仕事してるのかな。“良い俳優になりたい”というのでも“俳優を続けたい”でもなくて、あくまでも俳優になりたい。いつなれるのか分からないけれど、このままこうして続けていればなれるのかな…と思って仕事してます。その俳優になりたいって気持ちがなくなったら終わりですよ」。そう言って笑うこの男は“いま”一体何者なのか?もしかしたら、この映画を観たらもっとそんな謎が深くなるかもしれない――。■関連作品:冷たい熱帯魚 2011年1月29日よりテアトル新宿ほか全国にて順次公開© NIKKATSU■関連記事:三池崇史×園子温×吹越満がほろ酔い&タバコ片手に過激発言で映画界をメッタ斬り!鬼才・園子温監督最新作『冷たい熱帯魚』試写会に25組50名様ご招待満島ひかり主演の未公開作も上映!園子温監督作品の特集上映開催決定
2011年01月21日