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もし、子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、どうしたらいいのでしょうか? 学校に行かない選択をした子が通うフリースクール「花まるエレメンタリースクール」の校長“はやとかげ”こと、林隼人先生にお話を伺いました。
発達障害と診断され、小学校低学年の時に特別支援学級に通っていた息子を持つライター。そんな子どもが中学高校生になってどんなトラブルが起こったのか、そして母親は息子に伴走しながら考えたことを綴ります。
子どもを危険から守ってあげたい。子どもには夢を叶えて欲しい。そのためには子どもの人生の選択肢を増やしてあげたい。そんな深い親の愛がじつは子どもをつぶしてしまっていることもあると話すのは、花まる学習会の高濱正伸さん。高濱さんに、今の日本の子育ての現場で起こっている問題点についてお話を伺いました。
物価高、エネルギー高騰。でもお給料はあがらず、老後不安はますばかり。そんな閉塞感を抱えてるママたちに、家計のプロが今すぐできる対策を教えます。
時代が大きく変わっている今、「見えない学力」を身に着ければ「見える学力」も上がると話すのは、映画『みんなの学校』で「不登校ゼロ」の公立小学校として話題となった大空小学校初代校長・木村泰子先生。「母親としてここだけは外さないポイント」を聞きました。
●連載の目次は こちら から● 以前、< 「扶養の範囲」が変わる!2016 >でも書いたが、国のしくみは、「専業主婦優遇」から、「働く妻に対しても中立」の方向に変化している。そんな世の中の流れを受けて、今回の住宅ローンの基礎知識特集では、共働きの夫婦が住宅ローンの借り入れをする場合についても考えてみよう。 引き続き、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーの浅井秀一さんにお話を伺った。 ■「収入合算」と「ペアローン」 共働きの夫婦がマイホームを共同で購入する場合、住宅ローンの借り入れパターンは、大きく分けて2つある。 「収入合算」と、「夫婦ペアローン」だ 。 ■収入合算って、何? 「収入合算」とは、夫の収入に妻の収入を足して、住宅ローンを申し込む方法。収入が多くなるので審査は通りやすくなる。収入は合算するものの、夫が単独で住宅ローンを申し込むので、住宅ローン(債務)は1本だという考え方となる。 収入合算には「連帯債務者型」と「連帯保証人型」の2つがあるが、夫婦の場合は、法律的な違いをあまり気にする必要はないだろう。 大切なのは、 住宅ローンの種類や金融機関によって、どちらのタイプを取り扱っているかが違うという点。 「フラット35」は連帯債務型だが、民間住宅ローンは連帯保証型が多いので、しっかり確認する必要がある 。 ■収入合算のポイント では、収入合算の場合、どこに気をつけるべきなのだろうか? それは、「団信への加入(※1)」と「住宅ローン控除(※2)」だ。まず、下記の表を見てほしい。 連帯保証型の住宅ローンでは、妻はローン控除が受けられず、団信にも入れない 。 (※1)住宅ローン専用の生命保険。住宅ローンを組んだ人が死亡(高度障害状態)の際、残金分の保険金が支払われる (※2)住宅ローン残高に応じた一定額が、最大10年間、所得税などから差し引かれる(還付される)制度 「そのため、 連帯保証型の住宅ローンを扱う金融機関では、夫婦ペアローンの利用を勧めるはずです。夫婦ペアローンなら、ローン控除も団信もクリアできます 」(浅井さん) ■夫婦ペアローンって、何? ペアローンとは、夫と妻がそれぞれ自分の収入をもとに、1つずつ住宅ローンを借りる方法だ。つまり、世帯としての住宅ローン(債務)は2本ということになる。 夫婦ペアローンなら、夫婦ともにローン控除の恩恵も受けられるし、夫も妻も団信に入ることができる 。 ペアローンのデメリットとしては、収入合算と比べて、借りる際のハードルが高い点。妻の仕事がパートだと利用できず、年収が少ない場合も審査が通りづらい。また、2つの住宅ローン契約を組むことになるので、登記費用や印紙税など、諸費用の負担が若干多くなるという点も念頭に置いておこう。 ■夫婦ペアローンのポイント 「それでも、 夫婦ペアローンの『ローン契約が2本』という特徴は、資金計画の多様性という観点から見ると、非常に魅力的な可能性を含んでいます 」と、浅井さん。 どんな点が、魅力的なのだろうか? 1つ目は、 夫と妻の返済期間が違っても良い ということ。たとえば、夫の分を長めに借りて、妻のローンは「教育費負担が重くなるまでに完済」といった選択もできる。 2つ目は、 夫と妻で異なる金利タイプを選べる ということ。「家計を考えると金利が低い変動金利を選択したいが、将来的に金利上昇リスクが怖くて迷ってしまう」という場合、「夫は全期間固定金利型で、妻は10年固定」などのプランにすると、それぞれの金利タイプの「おいしいとこどり」ができる。 ただし、金融機関によっては「夫婦ペアローン」を取り扱っていなかったり、返済期間などが変えられなかったりする場合もあるので、事前に確認してほしい。 次回は、「あなたは、どの住宅ローンが借りられる?」について考えてみよう。
2016年08月13日●連載の目次は こちら から● 2016年の夏は、住宅ローンを組むのならチャンス! でも、家を買うなら、最初に必ず把握しておいてほしいことがある。それは、「自分は、いくらの住宅ローンだったら、払い続けられるのか?」ということ。「住宅購入で失敗しないための最大の秘訣は、借入金額の設定です」と言うのは、ファイナンシャルプランナーの浅井秀一さん。詳しく話を伺おう。 ■払える金額以上の金額を、借りられてしまう現実 今回、最も伝えたいことは、「借りられる金額」と、「払い続けられる金額」は違うということだ。この部分は、本当に声を大にして言いたい。 通常、住宅ローンを借りる際は「年収の○%」という感じで、年収に対して借りることができる限度額が決まる。 たとえば、理想の物件に出会ったとする。「ちょっと頑張れば、ローンは何とか払えそう」と思った。そんなときこそ、「本当に大丈夫? 35年間、『ちょっと頑張る』を続けられるの?」と、自問自答してみてほしいのだ。 最近では、住居費(住宅ローン+維持コスト)が年収の半分を占めてしまう借入ケースもあると言われている。たとえば、手取りが30万円なら、住居費が15万円を占めるというわけだ。残り15万円ですべての生活を賄っていけるだろうか? こんなふうに、具体的な金額に落とし込んで考えてみてほしい。そうしないと、「返済し続けられないローン」を組んでしまうということが起こり得る。 ■「現在の家計」をもとに「借りられる額」を算出 そこで、現在の家計から、年間で無理なく支払っていける額を算出してみよう。まずはそれを算出するために、ザックリとしたイメージとして、この公式を頭に入れよう。 ■(1)まずは、「購入後の住居費の上限」を把握する では、無理なく払える住宅ローン金額は、どうやったら割り出せるのだろう? 最初のステップとして、「購入後の住居費の上限」を確認することが必要だ。ここでは、「家賃9万円で、年間の貯蓄から30万円を減らせる場合」で計算してみる。 まず、毎月の家賃を12倍して、年間の家賃総額を出す。これに、「やりくり可能な金額」をプラス。やりくり可能な金額とは、いわゆる「ちょっと頑張る、でも無理はしない」額のこと。目安としては、年収の5%以内が無難だ。 最後に、住宅ローンを組むことで税金が毎年戻ってくる「住宅ローン控除額」も足す。住宅ローン控除は最大で「借入金額×1%」(ただし、支払っている年間の所得税+住民税の一部が上限だ)。 ■(2)「住宅維持コスト」を差し引く 上記の例では、年間170万円が購入後の住居費の上限だ。しかし、これがすべて住宅ローンの返済額に充当できるわけではない。マイホームの取得後は、固定資産税などの税金もかかるし、マンションなら管理費や修繕積立金の負担も重い。「フラット35」という住宅ローンを借りる場合は、団体信用生命保険の特約料も毎年かかってくる。 下の表は、「フラット35」を借りて新築マンションを購入する場合の一例だが、合計すると年間のコストは40万円にも上ることがわかるだろう。 ■(3)無理なく支払える住宅ローンの金額は、上記の「(1)−(2)」 最後に、(1)で計算した「購入後の住居費の上限」から、(2)の「住宅維持コスト」を差し引けば、「無理なく支払える住宅ローンの金額」が把握できる。 この例では年間130万円(170万円−40万円)だ。 返済期間によっても変わってくるが、返済額がこの程度に収まる範囲で、借入金額を設定することが大切だ。 ■「ローン借入額」は、本気を出して考えるべきこと! 家を買うには物件価格のほかに、登録免許税など「取得するための諸費用」もかかる。また、引越しをするのだから、エアコンや家具、カーテンといった「家具・家電・新調インテリア」類の出費も0円という訳にはいかないだろう。 だからといって、ローンの借入額限界まで借りてしまうと、それこそ「住宅ローン返済に追われる人生」になりかねない。 どうか、覚えておいて欲しい。 「住宅ローン借入額の設定は、本気を出す価値がある、大切な問題だ」ということを。ここが、読者の皆さんに伝わったのなら、本特集の意義はあったと思えるほどだ。 そのためには、本を読んでみたり(今回取材した浅井さんの著書『図解わかる 住宅ローン』」(新星出版社)は本当におすすめだ)、信頼のおけるファイナンシャルプランナーに試算してもらったりしてもよいだろう。 ところで、住宅ローンの負担感は、夫婦でローンを組むことで軽減できる。 次回は、最近増えている「共働き夫婦」の住宅ローンについて考えてみよう。
2016年08月12日「住宅ローンの取材なら、いい時期に来ましたね」と話すのは、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーの浅井秀一さん。2016年の夏は、住宅ローンを借りるのであればチャンスだと言う。初めてマイホームを買う人はもちろん、借り換えをする人も、この機会にぜひ住宅ローンについて考えてみては? ■35年の固定金利が1%で借りられる時代に 浅井さんの著者『図解わかる住宅ローン』(新星出版社)は、普通の人でも手にとりやすい内容ながら、クオリティの高さから「(お金のプロである)ファイナンシャルプランナーが資料として使っている」と言われるほど。 そんな「プロが頼る、住宅ローンのプロ」である浅井さんはこう言う。「住宅ローンは『最後の借り換えブーム』と言われて久しいですが、日銀のマイナス金利で、2016年8月に再度、下がりました。今なら全期間、固定金利1%でも借りられますよ」 全期間1%!? それはスゴイ!! ■1%の金利なら、利息はかなり少なくて済む しかし、なかにはピンと来ない人もいるだろう。「そもそも、全期間1%で借りられることが、そんなにすごいことなの?」と疑問に思う人がいるかもしれない。住宅ローンに初めて接する人ならば、なおさらだ。 そこで、少し私の体験をお話ししよう。「家は、生涯でいちばん大きな買い物」とよく言われている(ちなみに2番目に大きな買い物は、生命保険)。 ひと昔前なら、「3,500万円の物件を買ったのであれば、総支払額は倍(7,000万円)くらい」と言われていた 。 その原因となるのが、「金利」だ。 私が家を買った10年前(2006年頃)の住宅ローンの金利はおよそ3%。たとえば35年返済で3,000万円を借りた場合、下記の通り、11.5万円の返済額のうち、当初は3分の2近く(約7万5,000円)の利息を支払っていたのだ(涙)。 もし、金利が1%なら、同じ金額を借りたとしても、利息は2万5,000円。返済額も少なくなる一方で、元本部分への充当額は増えてくれる。 ■10年固定金利で借りるなら、どこの銀行がおすすめ? では、どこの金融機関で住宅ローンを借りるのがよいのだろうか? 「 三菱東京UFJ銀行が、勝負をかけてきましたね。10年固定で金利0.5%です。11年目以降も、そのときの基準金利から1.6%引いてもらえます 」(浅井さん) ■長期間の固定金利なら… 「 長期間の固定金利が希望ならば、ソニー銀行に注目です。20年超の返済期間はすべて0.954% 。ソニー銀行は手数料が安く、保証料も不要ですので、0.954%は実質金利です。この夏、最も魅力的な住宅ローンと言えるでしょう」(浅井さん) ただし、ソニー銀行は、自己資金が10%未満の場合や、借り換えで利用する場合は、金利が若干高くなる(+0.05%)。また、ローン実行までに通常は1ヶ月半ほど時間がかかるため、新規で物件を取得する場合は、そこがネックとなるだろう。 けれども、 借り換えであれば時間的な問題はない 。「昨年、一昨年借りた人でも、これだけ金利が下がっているのですから、固定金利型を中心に、借り換え効果がある人は、たくさんいると思います」(浅井さん) ■金利が0.3%~0.5%下がるなら、借り換え効果が出る可能性も! 一般的には、現在と借り換え後のローンの金利差が1%以上あれば借り換え効果が期待できると言われている。しかし、ローンがまだたくさん残っていて、残りの返済期間も長い場合は「0.3%~0.5%」の金利差でも十分なメリットが期待できるだろう。 ●「0.3%~0.5%」の金利差でも借り換え効果が出る住宅ローンの目安 1.ローンの残高が2,000万円程度以上ある 2.残りの返済期間が20年以上ある これよりもローン残高が少なく、返済期間が短い場合は、もう少し金利差がほしいが、それでも借り換え効果が出る人は多いだろう。 この記事を読んで「これだけ金利が低いなら、マイホームの購入を検当してみようかな?」と、少しでも思った人は次回の記事もぜひ読んでほしい。 次回は、「住宅購入で失敗しないための最大の秘訣」です。
2016年08月11日●連載の目次は こちら から● 「小学校受験って、どうなの?」特集も今回は最終回。早期英才教育は有効なの? という素朴な疑問を、幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さんにぶつけてみた。 ■早期英才教育は有効なのか? 「お友だちが文字を書けるようになった」「英語教室に通い始めた」そんな話を聞くと、「うちも何かしなきゃ!」と気持ちは急く。育脳やバイリンガル、早期英才教育といった言葉にも、無関心ではいられない。そこで、「早期英才教育は有効なの?」という素朴な疑問を、浅木さんにぶつけてみた。 「私の回答としましては、『子どもへの接し方が好ましいものであれば有効。好ましくなければ、やらないほうが良い』ということです。お子さまが嫌々やるのであれば、早期教育は百害あって一利なしだと考えています」 難関私立中学受験指導をしていた(1本目にリンク貼る)という経歴から、小学校受験が苦い経験となり、学業でつまづいてしまった生徒を数多く見てきたからこその思いなのだろう。 ■焦らないほうが、良い結果が出ている 今回の取材を通じて、浅木さんがとても強調していたことは、「 どうか、お母さま方、焦らないで欲しい 」ということ。 この記事を書いている私は息子の中学受験を体験したことがあるが、受験準備中は、「志望校に合格しないと、この子は(私は)、その先、どうなってしまうのだろう?」という気持ちになりがち。それが「合格しなければ!」となり、準備が思うように進まないと、「何かしなければ!」という、やみくもな焦燥感に繋がり、子どもをせっついてしまう。 「すんなり合格を手にするお子さまなど、1人もいません。志望校に合格した先輩を見て、『志望校に合格して、うらやましい』と思われるかもしれませんが、そんな方でも必ず、苦しい時期を過ごされています。『焦らないで欲しい』と申し上げても、焦ってしまうお気持ちは、現場にいればよくわかります。けれども、私の経験から鑑みても、焦らないほうが、良い結果が出ていることが多いのです」(浅井さん) 小学校受験は、対策期間は平均して1年~2年。親や指導者に怒られないために努力することで、何とか志望校には合格をする。けれども、そういった子どもたちのその後の学校生活は、苦しいものになりがちだそう。 ■大切なのは心の安定と自己肯定感 「 すべての学年のお子さまを見てきて、真に思うことは、大切なのは心の安定と自己肯定感です 」(浅木さん) 親の焦燥感から、嫌がっているにも関わらずに無理に課題をこなすことを強いられ、、何とか合格を手にしても、子どもの心には大きな傷が残る。不合格だったらなおさらだ。それが、子どもが自己肯定感を持てない原因になってしまうこともよくあることだという。 思春期に入っても自己肯定感が不足し、心が安定していない子どもは、成績が上がるまでに本当に時間がかかる。また学年が上がるほど、親も焦りを感じてしまい、子どもの心が満たされ自主的に努力するようになるまで待つことができないし、親子関係の立て直しも難しくなる。 「 そうならないために、幼少期に健全な親子関係を育んで欲しい、そのためにお子さまに接するお母さまのサポートにも力をいれております 」(浅木さん) ■子どもの人生を長い目で考えてみて欲しい 「つい子どもを叱り過ぎてしまうママに伝えたいこと」(リンク貼る)でも記事にしたが、現代は子育ての負荷がママに集中してしまい、追いつめられた気分になりやすい。だからこそ、私たちは「そういう時代に子育てをしている」ということを、きちんと意識する必要がある。 小学校受験をするとなると、ママ、あるいはパパたちは、「私が頑張らなければ!」とより一層、自分を追い込んでしまうこともあるだろう。私自身、「中学受験ママ」をやっているが、悲しいかな、すぐにテンパってしまう。最近、そんなときは浅木さんが取材で話してくれたことを思い出すようにしている。 「 小学校受験で花開く子もいれば、中学校受験や高校受験で花開く子もいます。子どものモチベーションを含めた適切なサポートができるよう、どうか子どもの人生を長い目で考えてみてあげてください。そして、焦ってしまうということは、それだけ真剣にお子様のことを考えていること。立派に母親業をこなしている自分をまずは認めてあげてください 」 受験は、親子にとってひとつの試練。でも、それを乗り越えた先には大輪の花が咲くと信じて、ゆったりと構えていられる親でありたいものだ。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月27日●連載の目次は こちら から● 私立小学校受験を前提に話を進めてきたが、「国立大付属小学校を受験って、どうなんだろう?」と、気になるご家庭もあるだろう。幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さんにお話を伺った ■「受験対応校ではない」ということを念頭に! 「国立小学校は、準教科担任制を採用している学校も多く、質の高い先進的な教育を受けることができます。そのため、教育熱心なご家庭に、とても人気がありますね」(浅木さん) ただし、国立小学校は国の研究機関の付属施設という位置づけのため、受験に対応することよりも先進的な教育の研究が優先されている。 「小学校入学時、併設中学、併設高校の高い進学実績を知り、学校のカリキュラムをこなすことで受験に対応できると考えているご家庭もあります。ですが、授業は受験に直結しない試験的なカリキュラムも多くあるということは、まず知っておいていただきたいことです」(浅木さん) ■中学進学時に外部進学を検討するなら とりわけ、小学校は国立でも、中学進学時に外部進学を検討する場合は、中学受験との両立について覚悟しておいたほうが良いだろう。なぜなら国立小学校の児童は、公立の小学校のカリキュラムよりも、調べ学習やレポートなど、 中学受験に直結しないが質・量ともに負担が大きいものをこなしながら、中学受験の勉強をしなければいけない からだ。 また、通学に時間がかかる(ことが多い)のも、ひとつ、ネックだと思う。この記事を書いている私は長男の中学受験を体験しているが、中学受験は、ある意味、時間との闘い。塾で出された課題をするには相当な時間がかかり、睡眠時間を削って勉強する子もいる(塾のない日の夕方~就寝までの時間管理は、多くの中学受験ママの関心事だ)。 ■教育実習生の授業が多い 「また、教育実習生の授業が多いことに不満を訴える保護者もいますが、そもそも、国立大学付属小学校は国の研究機関の付属施設という位置づけ。実習生の授業が多いのは、当然です」(浅木さん) ■国立大付属小学校に合格していくのは、どんな子? 「まずは、くじ引きで受験する権利を手に入れなければいけませんから、運が強い子ですね。そして行動観察やペーパー対策をしっかりした子、つまり私立小学校の受験対策をしていた子が、国立大付属小学校にも合格していっているという印象です。または幼児としての基礎力(6本目リンク貼る)がしっかりある子が、半年間くらい集中的に試験対策をして合格していくパターンが多いですね」(浅木さん) ■教育熱心な家庭の子が通っているのが魅力 学校のカリキュラムが受験対応ではなく、ハードルも私立小学校並みに高いとはいえ、教育熱心な家庭の子どもが通っているのは事実。意識の高い友達と、勉強や課外活動を通じて切磋琢磨できる環境が整っていることは、国立小学校の魅力と言えるだろう。 次回は、いよいよ最終回。「早期英才教育は有効なの?」です。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月26日●連載の目次は こちら から● 幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さんは言う。「志望校が決まったら、願書作成・面接の準備と並行してお子様の対策を始めましょう。でも、具体的な対策を始める前に、下記をチェックしてみてください」 ■幼児としての基礎力があるか? チェックする項目は、いわば幼児としての基礎力だ。この基礎力なくして、ペーパーテストや絵画の対策をしても、なかなか合格できない。習慣として定着させるのに時間を要することばかりなので、小学校受験を思い立ったら、まずはチェックしてみて、「わが子の現状」を把握したい。 ■チェック1 幼児のような言葉づかいはしていないか? 「ご家庭で、子どもを赤ちゃん扱いせず『きちんと教育する意思があるか?』という部分がチェックされています」(浅木先生) <チェック項目> □幼児語(ワンワン、にゃんにゃんなど)を使わない □自分のことを名前で表現せず「私、僕」と言える。(例:私は音楽が好きですと言える) □語尾を「です」「ます」と最後まで正しく聴き手に聞こえるように話せる ■チェック2 人の話を聞くことができるか? 「お話しが聞けるというのは、学習の基本になることです。ですから、とても重要視される項目です」(浅木先生) <チェック項目> □人の話を最後まで聞くことができる □幼稚園・保育園で先生のお話をきちんときくことができる ■チェック3 生活リズムが整っているか? 「生活リズムが整っていることが、すべての生活のベースになります。また、最近は、椅子にきちんと座っていられないお子さんが増えているのが、すごく気になっています」(浅木先生) <チェック項目> □早寝早起きをしている □平均的な幼児としての体力がある □よい姿勢をこころがけている □椅子に座ったときに足をブラブラしない(自宅で、常に足が床につく子ども用の椅子に座らせている) ■チェック4 基本的な生活動作が身についているか? 「ここにあげたものは、就学前に身につけておきたい基本的な生活動作です。」(浅木先生) <チェック項目> □着替えが1人でできる □脱いだものを1人でたためる □靴の着脱ができる(左右正しく履ける) □靴の紐をむすぶことができる □自分の荷物を所定の場所に置くことができる □帰宅後、自分が脱いだ履物をぬぎちらかさずに整えることができる □帰宅後、自分の荷物を所定の場所に置くことができる □帰宅後、手を洗うなどの衛生習慣がついている ■チェック5 集団生活になじむことができるか? 「集団の中で遊ぶことができるというのは、学校生活を送る上でとても大切な要素です」(浅木先生) <チェック項目> □集団の中で遊ぶことができる □お友だちと遊んでいるときの言葉遣いが乱暴でない □ケンカを親に報告できる □お友達とおもちゃをめぐってケンカしたときなど、話し合いで解決することができる ■チェック6 場をわきまえることができるか? 「小学校受験では、お行儀はとても重要視されます。公共の場できちんとしたふるまいができることは大切です」(浅木先生) <チェック項目> □「待ちなさい」と言われたら待つことができる □公共の場を認識し、場をわきまえることができる □公共交通機関を日常的に使用している 結果のほどは、いかがだっただろうか? ちなみに私の下の息子は小学校6年生だが、「チェック4 基本的な生活動作」がまだ危うい(涙)。このチェックは、子どもの基礎力を確認するためにも本当に有効だと思った。 次回は、「国立大付属小学校を受験するなら知っておきたいこと」です。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月25日●連載の目次は こちら から● 幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さんは、「小学校受験を思い立った時点で、最初に考えていただきたいのは志望校をどこにするかということです」と言う。志望校が決まったら、いよいよ本格的な受験対策が始まる。小学校受験の「もっとも大切な対策」とは? ■「学校が求めている子」とは? 「 小学校受験とは、いわば学校とご家庭のお見合いのようなものです。学校が求めている子とは、端的に言えば『学校の教育方針と一致したご家庭のお子さま』です 」(浅木さん)。 小学校受験が親の受験といわれる所以(ゆえん)は、家庭の教育方針や雰囲気が、さまざまな考査や面接を通じて試され、合否が決定されるところにある。 「ですから、志望校が決まり次第、志望校の教育理念と家庭の教育理念の一致点を明確にし、一致点を意識しながら、お子様の教育をしましょう」(浅木さん)。 ■家庭の教育方針を明確化させる 浅木さんが主宰する柊会では、毎月、保護者に願書・面接対策となる作文を提出してもらっているそう。入試直前ではなく、入試の数年前から家庭の教育方針を明確化することで、「こんな子どもに育ってほしいけれども、今、わが子はこういうことができていない」「わが家の教育方針では、○○を子どもにしてあげたいけれども、時間的にしてあげる余裕がない。その代わりに、△△をしてあげよう」など、さまざまな思いが出てくる。これがとても効果的な面接対策となるようだ。 「志望校を決定し、家庭の教育方針を深く考える作業は、幼児教室に通うより早く始めても良いくらいで、早すぎるということはありません」(浅木さん) ■両親の教育方針のすり合わせも大切 願書作成や面接対策のために考え抜いた教育方針で子どもに接することで、入試当日の子どもの言動と、面接での保護者の回答が一致する。家庭の教育方針を明確化する時には必ず、パパとママの意見のすり合わせも必須だ。 両親の意見が異なると、子どもは混乱する。特別な時間をとらずとも、仕事の合間にメールでやりとりをするなどして、できるだけお互いの負担にならない工夫をしよう! 次回は、「小学校受験をするならチェックしたい6つのこと」です。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月24日●連載の目次は こちら から● 幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さんは、「受験をするかどうかを決めるのはご家庭ですが、その判断をできる限り後悔のないものにしていただくために、小学校受験のメリットとデメリットを事前にお伝えしています」と言う。メリットとデメリットをしっかり把握した上で、小学校受験を決意したら最初にすべきことについてお話を伺った。 ■志望校により選抜形式が違う 「 志望校をどこにするか? これは、小学校受験を思い立った時点で、最初に考えていただきたいことです 」(浅木さん) 小学校受験は、学校によって入試の選抜方式が違う。選抜方式と入試傾向を知ることにより子どもにかかる負担を軽減することができるからだ。 ■志望校の選抜形式にそった対策を立てる たとえば、慶応幼稚舎を第一志望にするのであれば、行動観察と絵画制作に特に力を入れ、余力を巧緻性(こうちせい:第2回<※リンク貼る>を参照)と運動、知識補充を目的とする簡単なペーパー対策にまわす。暁星小学校が第一志望なのであれば、まずはペーパー(分量、速さに対応できるレベルまで)を徹底的に仕上げ、その後、行動観察、制作、運動に取り組む。 このように効率良く対策を立てることで、子どもへの負担を軽減できる。「志望校の選抜形式にそった対策を取りつつ、様々な実体験をさせ、場をわきまえられるお子様にしてあげることが合格への近道になります」(浅木さん) ■志望校が決まらない場合はペーパー対策から とは言え、なかなか志望校が決まらない場合もあるだろう。 「そんな時は、ペーパー対策から始めましょう。以前に比べ、多くの学校でペーパーテストのウェイトが低くなりました。けれども、ペーパー対策をしておくと併願校を選びやすくなります。また、入試直前の志望校変更が可能になります」(浅木さん) いよいよ小学校受験対策が始動した。 次回は、「小学校受験における、もっとも大切な対策とは?」です。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月23日●連載の目次は こちら から● 幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さんが見てきた中では、小学校から高校までの一貫教育をしている90%以上の学校で、主席は小学校からの内部進学者だそう。小学校受験を「人生の糧」にしているご家庭もある一方で、小学校からの内部進学者の学業成績が平均以下となることも珍しくない。 ■小学校の内部進学者の成績低迷理由 「内部進学者の成績低迷の理由は、ほとんどが、その子の地頭の悪さではありません。ご両親の教育熱心さが良くない影響を与え、学力が下がったケースが多く、そういうケースを相当数見るにつけ、本当に心が痛みました」(浅井さん) 生まれ持った学力のポテンシャルがあるにも関わらず、学業不振に陥ってしまう。それはなぜなのだろうか? ■幼少期の自己否定感は負の連鎖を引き起こす 「 小学校受験のリスクは、両親や講師が、指導中に望ましくない態度で子どもに接した結果、子どもに自己否定感を受け付けてしまうことです 」(浅木さん) 模試の結果や勉強の進み具合で親の機嫌が頻繁に変わったり、子どもが問題を間違えた時に叱責(しっせき)したり、志望校にご縁をもらえなかったときに親が落ち込んでしまったりすると、子どもは自己否定感を強めてしまう。 「人格の基礎を形成する幼少期に、子どもの自己否定感を強めないよう、ご両親や指導者は、配慮をしなければいけません。ゆったりとした気持ちで子どもに接し、ご家庭は『子どもが安心できる居場所』であって欲しいと思います」(浅木さん) ■合格だけでは不十分 「 志望校にご縁をいただけるように指導することは当然ですが、それだけでは不十分です。幼児教育指導者は、長期的スパンで、子どもの健やかな成長により良い影響を与える必要があります 」 そのためには、小学校受験のリスクをきちんと伝えていくことも、幼児教育指導者の一つの仕事だと考えている。 「受験をするかどうかを決めるのはご家庭ですが、その判断をできる限り後悔のないものにしていただくために、小学校受験のメリットとデメリットを事前にお伝えしています」(浅木さん) 次回は、「小学校受験を決意したら最初にすること」です。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月22日●連載の目次は こちら から● 「皆さまが考えているほど小学校受験は難しくありません。 難関と言われる幼稚舎、早実、青山学院、暁星、雙葉でも同様です 」と言うのは、幼児教育研究所柊会(ひいらぎかい)代表の浅木真里さん。子どもの現状を的確に把握し、正しい対策を行えば、おのずと志望校からご縁をもらえる確率は上がるという。 ■小学校受験の特徴 「小学校受験は、模試の合否判定があてにならないという点で、ほかの受験(中学、高校、大学)に比べると特殊です」(浅木さん)。 小学校受験の場合、入試の合否判定は、ペーパーテストだけでなく、巧緻性(こうちせい)や行動観察、親子面接などが含まれる。巧緻性というのは、一般的には手先の器用さや指先を使う能力のことだが、小学校受験の場では箸の扱いが正しいか、雑巾をきちんと絞れるか、のりやはさみの扱いが正しいか? といったことを指す。また、行動観察というのは、友だちと仲良くできるか、自分の意見を明確に言えるか、ゲームを楽しみつつもルールが守れるか、などだ。 学校ごとに合否基準も異なるため、一概に模試の結果が合否の判定材料にならない。このように合否基準が曖昧なので、親がさまざまな噂に振り回されてしまいがちなのだ。 ■小学校受験をして得られること 浅木さん自身、中高生の受験指導をしていた頃は、そんな小学校受験に対して良いイメージを持っていなかったそう。 「でも、実際に小学校受験の指導をしてみて、考えが変わりました。 小学校受験は正しいアプローチで取り組めば、子どもは学ぶ喜びを知ります。また、人格の基礎を形成する幼少期に『自分はやればできる』という自信をもつこともできます 」(浅木さん)。 この記事を書いている私は、長男の中学受験を体験したことがある。受験は、ともすれば「志望校に合格できるか?」が唯一最大の関心事になりがちだ(もちろん、『合格』は大事なことだが)。 けれども、「受験という体験」を、もっと有意義なものにするためには、「知ること、経験することは楽しい」「努力すれば自分は前に進むことができる」といった感覚を子どもが感じられるようにしないと、もったいないと思う。 ■主席卒業生は、大抵、小学校からの内部進学者 ちなみに浅木さんが見てきた中では、小学校から高校までの一貫教育をしている90%以上の学校で、主席で卒業する生徒は小学校からの内部進学者だったそう。おそらく、主席で卒業していった生徒は、「小学校受験という体験」を、合否という枠だけにとらわれず、人生の有意義な経験値として糧にできるご家庭で育ったのではないだろうか? 次回は、小学校受験のリスクについて考えてみます。 今回取材を受けてくださった浅木真里さんの著書 『名門小学校受験 合格する「家族力」(浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月21日小学校受験。そんな言葉に、あなたはどんなイメージを持ちますか? 今回は、「小学校受験って、どうなの?」という素朴な疑問について、幼児教育研究所柊会・代表の浅木真里さんにお話を伺いました。 ■浅木さんが幼児教室を始めた理由 浅木さんは、灘、ラ・サールなどの難関私立中学受験指導や医学部受験をメインとする学習塾の教務部長、役員を経て、幼稚園・小学校受験指導を行う柊会(ひいらぎかい)を設立した。 「思春期以降の子どもを指導して感じていたことは、幼少期の親子関係は、その後の人生に大きく影響するということです。ですから、少しでも多くの親子に小学校受験対策を通じて、より良い親子関係を育んで欲しいと思い、柊会を設立しました」(浅木さん) ■オリジナル教材が必要だと思っていたが… 小学校受験と聞くと、「お受験」という言葉で揶揄(やゆ)されるように、高額な幼児教室に通わせないと合格しないのではないか? というイメージがある。 「私自身、小学校受験に携わっていなかった頃は、『合格するためには幼児教室の特殊なオリジナル教材が必要だ』と考えていた時期もありました。けれども、実際に指導に携わってみると、そのようなことはありませんでしたね」(浅木さん) ■大切なのは子どもの現状把握と正しい対策 「 皆さまが考えているほど、小学校受験は難しくありません 。大切なのは、お子さまの現状を的確に把握し、正しい対策を行い、志望校からご縁をいただける確率を限りなくあげていくことです」(浅木さん) 過去の入試情報については、大手幼児教室が毎年夏に発行する私立小学校の入試問題集にすべて掲載されているそう。また、学校の求める児童像については、学校のホームページや学校説明会で知ることができる。 幼児教室の先生から聞いた、学校が求める児童像を鵜呑みにするのではなく、保護者が学校説明会、公開行事の日程を自ら調べ、足を運び、学校を知ろうという姿勢を持つことが合格につながるとのことだ。 「過去の入試問題と学校が求める生徒像を正確に知ることできれば、わが子を志望校に合格させるために何をすべきか? という問いの答えは、おのずと導き出されます」(浅木さん) 次回は、「小学校受験で得られるメリットとは?」です。 今回取材を受けてくだ下さった浅木真里さんの著書 『 名門小学校受験 合格する「家族力」 (浅木真理・著/エール出版社)』 ●浅木真里 1981年、東京都生まれ。関西学院大学総合政策学部卒業。灘、ラ・サールなどの難関中学、医学部受験指導を行う学習塾の設立に携わる。名古屋在住時より、慶応幼稚舎、早実、雙葉、暁星小学校などの難関校への圧倒的な指導力の高さから指導依頼が絶えず、東京で小学受験指導を行う。その後、幼少期の母子関係の重要性を痛感し、幼児教育研究所柊会を文京区に設立。
2016年07月20日●連載の目次は こちら から● 発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。 けれども、知識があったとしても、やっぱり発達障害の子を育てるのは大変! 最終回の今回は、私のそんな心境を綴ってみます。 ■「発達障害」の子育ては疲れます 発達障害についての特集記事を、さもわかったように書いている私。けれども、私自身、いまだに「発達障害の子を育てること」と完全に折り合いがつけられているわけではない。 発達障害の子を育てるのは、普通の子育てより疲れる。それは、紛れもない事実だ。少し息子の調子が良いと、その事実を忘れてしまう。そして、普通の子のようなつもりで接していると、ある日ドカンと現実を突き付けられ奈落の底に突き落とされる。そんなことの繰り返しだ。 ■専門家と繋がろう 子どもに親が「キレる」ことが多くなったら、そろそろ限界値。赤信号が点滅していると思い、早めに周囲にSOSを出すよう心がけている。私が頼りにしている方々は、今のところこんな感じだ。 ・家族 ・保育園の園長をしている友人(専門知識のある一般人) ・司馬先生(専門知識のある医師) ・小学校の担任の先生 ・小学校の特別支援学級(通級)の先生(専門知識のある教員) 最初に相談する相手は、発達障害についての知識がある人のほうが良いと思う。たとえば、ママ友に愚痴を言ってガス抜きをするのは大切なことだが(私も、よくやっている)、それはあくまで、「ガス抜き」でしかない。 「うちの子、発達障害かも!?」と気になっているのであれば、 しかるべき相談窓口 に、一度行ってみたほうが回り道をすることなく、適切な対応策に辿り着けるのではないかと思う。 ■1人で抱え込まないで! 「周囲に助けを求められるかどうか?」は、発達障害の子育ての肝だと思う。繰り返すようだが、「発達障害」の子育ては疲れる。「キレイごと」では、どうにもならない現実の毎日がそこにはある。「もうイヤだ!」と思うことがあるのは、当たり前だ。 そんなときは「良いママでなければ!」と一人で抱え込まず、周囲に助けを求めよう。私は、夫や長男に「ママを閉店します」と言い置いてプチ家出をしたり、小学校に行って、「最近、大変です」と状況を正直に話して、担任や通級の先生に支援を仰いだりしている。月1回の司馬先生の診察は、自分を客観視できる良い機会になっている。 先日、保育園の園長をしている友人にSOSを出したところ、物言いのストレートな彼女からは、「(虐待だと)通報されない程度に、頑張れ!(笑)」と言われた。「すごい励まされ方だなぁ」と笑ってしまったが、しんどいときは、うんとハードルを下げて自分の生活を眺めてみることも効果がある。 「頑張りすぎないようにしよう」。そう日々、自分に言い聞かせている。頑張りすぎて、母の心が不安定になるようでは、本末転倒。 お母さんの一番大切な役割は、毎日、機嫌よく過ごすこと。そして、わが子をいつくしむことだと思うから。
2016年07月17日●連載の目次は こちら から● 発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。 今回は、私が質問されて答えに困った「発達障害の診断」について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。 ■診断はレッテルを貼るのではなく、対処法を知るため 私は息子を支援学級に通わせていたので、ママ友から子育ての相談を受けることがある。そのときに、よく聞かれることは、「発達障害の診断を受ける必要ってあるの?」ということだ。 発達障害は病気ではなく、「脳の発達のかたより」。そうだとすれば、「診断は本当に必要なのか?」と思ったり、「わが子に、発達障害のレッテルなんて貼りたくない」と思ったりするのは当然のことだと思う。 「 診断は子どもにレッテルを貼るためのものではなく、それによってどんなことで困っているのかを教えてくれるものです 」(司馬先生) 診断は、いわば大きな方向つけ。「これから何をするのか?」「どんな対処方法があるのか?」を考え始めるスタート地点の指標のようなものだ。もちろん、わが子を育てる作戦(司馬先生は、よく“作戦”という言葉を使われる)を立てるのに、診断を受けるだけでは充分ではない。 ただ、ADHDといってもどんなタイプなのか、その子の能力のどんなところにどう影響しているのか、それらがわかればわかるほど作戦(対策)は立てやすくなる。また診断することによって、子どもが専門家から的確なアドバイスを受けられるほか、親が本や勉強会などから、ピンポイントで情報を得ることもできるようにもなる。 ■診断を受けるための一般的な経路 「発達障害かどうかが気になるのだけれど、誰にどんなふうに相談すればよいかわからない」これも、よく相談される内容だ。 一般的には、まずは学校の担任の先生に相談するのが良いだろう。学校には、週に1~2回ほど来て、子どもや保護者の相談に乗ってくれるスクールカウンセラーという職種の人もいる。 また、自治体の教育相談所や教育センターなどで、相談業務を行なっていることもある。最近では、発達障害の診断や治療の経験がある小児科の先生も増えているので、かかりつけの医院の先生に相談してみてもよいだろう。 ■大切なのは、早く気づいて二次障害を防ぐこと 私が相談を受けたときに必ず言っていることは、「発達障害の子を育てるのは、すごく大変だし、一緒に生活するのはしんどいよね。でも、発達障害の子を育てる上で、一番大切なのは、二次障害を防ぐことだと私は思っている。診断を受けることで、子どもの特徴に早く気づければ、必要とする支援がわかり、より二次障害を防ぎやすくなると思うよ」ということ。 二次障害とは、発達障害に対する対応が十分に行われないために、二次的に起こる問題のことだ。 たとえば、学校に行くのをイヤがったり、学校に行けなくなったり、うつ状態になって元気がなくなったり、親にひどく反抗したりというのが二次障害だ。 発達障害の子は何かにつけて叱られることが多く、「ぼく(私)はダメなんだ…」というように自尊心が低下しがち。いったん二次障害が起きると、もともとの発達障害そのものへの対応以上に、扱いが難しいこともよくあると言われている。 次回は、最終回。「発達障害の子育ては疲れます」です。
2016年07月17日●連載の目次は こちら から● ひとことで「発達障害」と言っても、その状態はさまざま。基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。今回はさまざまな発達障害について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。 「 発達障害って、何? 」で、発達障害には、おもに以下の3つがあるとお伝えした。今回はその内容を、もう少し詳しく見ていこう 1.不注意・多動性・衝動性が目立つ 「ADHD(注意欠如・多動性障害)」 2.人との関わりが難しい「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」 3.特定の領域の学習がうまくいかない「LD(学習障害)」 「発達障害のわが子」と向き合う本(司馬理英子/大和出版) ■ADHD(注意欠如・多動性障害)とは? 不注意・多動性・衝動性を特徴とする。たとえば、忘れっぽくて集中力が乏しく、宿題などをしているときに気が散りやすい。落ち着きがなく、いつもそわそわしていて、順番を待てずなんでも我先にとやりたい。 こんなふうに、年齢に応じた「注意力や行動・衝動などのコントロール」がうまくできない。そのため、毎日の生活習慣や学校での活動を行うのに苦労をする。 ■「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」とは? 「アスペルガー症候群」を含む「自閉症スペクトラム障害」の特徴はおもに「人との関わりの困難さ」にある。言葉やしぐさなどコミュニケーションをする力にかたよりがあり、興味を持つ範囲が狭く、興味のない活動には取り組めない。 こうしたこだわりの強さがあるため、毎日の生活がスムーズに進まないこともある。 「広汎性発達障害」や「自閉症」も「自閉症スペクトラム障害」に含まれ、なかでも言葉の遅れが見られないものは「アスペルガー症候群」と呼ばれている。 ■LD(学習障害)とは? LDでは特定の学習能力の困難さが見られる。全体的な知的発達に遅れがないのに、特定の学習能力での遅れが、小学校の低学年では1年程度、高学年では2年程度見られる場合に診断される。 文章を読むことが困難な状態を「読字(どくじ)障害」、鏡文字が多く見られ、漢字や作文などを書くことに関する遅れを「書字(しょじ)障害」、計算または文章問題など算数の学力がほかの科目に比べて低い場合「算数障害」と言いわれる 発達障害は決してまれなものではなく、多くの子どもにみられる。ADHDは5%、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害の子どもは1~2%、LD(学習障害)は10%程度いると言われている。 わが子に、こういった傾向を感じるとしたら、まずは本などから子どもへの対応の仕方を学んでみるのも一手だ。 たとえば、『「発達障害のわが子」と向き合う本』(司馬理英子/大和出版)は、「ADHDの子どもの特徴」「ADHDの子育てのヒント」「アスペルガー症候群の子どもの特徴」「アスペルガー症候群の子どもの子育てのヒント」と、こどもの傾向別に説明と対処法の項目が分かれており、とても読みやすい。 本などから得た情報で、少しでも子育てが楽になったら、ハッピーなことだと思う。また、本を読むことが、子どもへの支援を次の段階に深めるキッカケになるかもしれない。 <次回は、「発達障害の診断を受けることは必要?」です。>
2016年07月17日●連載の目次は こちら から● 正しい自己認識を持つこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。そこで、「発達障害って、何?」という基本的な疑問について、軽度の発達障害クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。 ■発達障害は「しつけ」や「育て方」が悪いわけではない ほかの子に比べ、手のかかるわが子。「やっぱり、私の育て方が悪いのかしら?」と思ってしまうママもいるだろう。 「夫に『子どもを甘やかすからだ』と言われる」「忙しくて充分にかまってあげられないからかな?」など、子育てがうまくいかないと、ママは自分を責めがちだ。 けれども、「 発達障害は、しつけの問題ではありません。多くの場合、生まれつきのものです 」と、司馬先生は言う。 生まれつきといっても、もちろん、生まれてすぐわかるわけではない。たとえばADHDなら幼稚園や保育園くらいまでは「活発で元気な子」という印象で、小学校に入り、生活の中心が勉強になってくると特徴が目立つ。 また、アスペルガー症候群の場合は、赤ちゃんの頃から手がかかる子もいるが、「ちょっと違和感があるな」くらいの子も多い。 だからこそ、難しいのだと思う。 なぜなら、早い段階から障害に気づければ、親の側も「そういうものだ」と思い、ある意味、納得して育てられる。 けれども、「ちょっと変わっているかな?」くらいだと、子どもの問題なのか、親側(しつけ)の問題なのか? というあたりで、ママがひとりで問題を抱え込み、グルグルと悩んでいることも多いからだ。 ■発達障害は病気ではない 前回 でも話したとおり、「発達障害とは、脳の発達のかたより」だ。発達障害の子どもは、すべての能力に問題があるわけではなく、“特定のある部分の発達だけ”がほかの子どもに比べて遅れている。 「 発達障害は、病気というわけではありません。脳の発達にかたよりがあったとしても一生がそれで決まってしまうというものでもありません 」(司馬先生) ■わが子の特徴に気づいて、必要なサポートをする 一般的な発達をとげている子ども(定型発達の子ども)に比べて、ある能力の発達のかたよりが目立っていて、そのために子どもが「生きづらさ」を抱えている場合、学校や家庭での状況、発育歴などのさまざまな情報を元に、発達障害かどうか?を見てみよう。 たとえば、「忘れ物」。ADHDの子によく見られる忘れ物は、どの子も多少あるものだが、毎日いくつも忘れものをしていれば、そのために困ることがたくさん出てくる。個性といって片付けてしまうには困難さが際立っている場合、発達障害の診断がつけられる。 「 発達のかたよりに気づき、早く対処することによって、日常において困ることをずいぶんと減らすことができます 」(司馬先生) 発達のかたよりは、裏を返せば長所となる場合も少なくない。かたよりに早く気がつけば、子どものいい部分を生かしたり、得意な分野をしっかり伸ばしたりすることに、親子でエネルギーを使うことができる。 「 だからこそ、早めにわが子の特徴に気づいて、必要としているサポートをしていくことが大切なのです 」(司馬先生) 次回は、「発達障害のさまざまな種類」を少し詳しくみていこう。
2016年07月16日●連載の目次は こちら から● 正しい自己認識を持つこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことで、当事者(母や子ども)は、随分と楽になる。それは私が実体験を通じて感じていることだ。そこで「発達障害って、何?」という基本的な疑問について、軽度の発達障害専門クリニックの院長である、司馬理英子先生にお話を伺った。 ■発達障害は、いわば「発達のかたより」 育てにくいわが子。私の気にし過ぎかもしれないけれど、ちょっと心配。ママ友に相談すると「うちもそうよ。大丈夫」なんて言われて、「そうかな?」と安堵する。けれども、また別の日には、「これって、やっぱり普通じゃないよな」と思う。「でも、これはこの子の個性で、私の我慢が足りないのかもしれない」。そんな無限のループを、頭の血管が擦り切れるほど何年もグルグルと考え続けていた私。 そうした状況にあった私に、司馬先生の発達障害の説明は、非常に腑に落ちるものだった。 まず、発達障害の定義だが、 「 発達障害とは、いわば“発達のかたより”です。 最近の考え方としては、全体的な知能の発達には問題がなく、以下のような特徴がある子どもを発達障害としています」(司馬先生) 1.不注意・多動性・衝動性が目立つ 「ADHD(注意欠如・多動性障害)」 2.人との関わりが難しい「アスペルガー症候群」など「自閉症スペクトラム障害」 3.特定の領域の学習がうまくいかない「LD(学習障害)」 「発達障害のわが子」と向き合う本(司馬理英子/大和出版) 発達「障害」と書くと、「障害」という言葉から重々しい感じがするが、症状の度合いは重いものから、「診断名をつけるほどではないけれど、特徴が見られる」という軽いものまで幅がある。 ■「発達障害の特徴があるかもしれない」という見方をしてみる ママたちがいちばん気になるのは「うちの子が発達障害なのかどうか?」ということかもしれない。けれども、発達障害であったとしても、なかったとしても、子育てがうまくいかないのであれば、子どもの特徴を把握し、ちょっとした工夫をすることで、日々の生活は随分と楽になる。つまり、「 もしかしたら発達障害の特徴があるかもしれない 」という見方をしてみるのだ。 ■子どもの特徴に合わせた丁寧な関わり方 司馬先生が教えてくださった「発達障害の子育て法」は、子どもの気持ちを尊重し、子どもの特徴に合わせた、子どもへの、より丁寧な関わり方だ。発達障害のない子どもは、さほど手をかけなくても自力で成長していけるが、それでも関わり方を丁寧にしてやることに越したことはない。 つまり、子どもが発達障害でなくても、ちょっと似た部分はあるけれど診断されるほどではないというレベルでも、発達障害であっても、同じように使っていける子育て法なのだ。 「 発達障害かもしれないと怖がってばかりいないで、その子の特徴を見極め、その子に合わせたオーダーメイドの子育てしてみては? 」というのが、司馬先生からの提案なのである。 <次回は、「発達障害は、“しつけ”の問題なの!?」です。>
2016年07月16日●連載の目次は こちら から● 息子を、発達障害専門クリニックである司馬クリニックで診てもらうことにした私。クリニックを受診するための問診票を書いて、診断日当日を迎えた。診察を受けて、いよいよ診断を「宣告」されると思っていたが…。 ■診断を受けたときの様子(私の場合) 軽度の発達障害専門クリニックである司馬クリニックで、わが家は以下のような流れで診断を受けた。(クリニックによって違いがあると思うので、参考程度に) ・臨床心理士の親への聞き取り:約30分 ・子どもの認知力検査:約1時間~1時間半 ・医師と子どもの面談、診察(親が同席):約20分 ・親への話:約30分 すべての診察が終わって、親への話の時に、司馬先生は、こんなふうにおっしゃった。「湧太くんをフォローする方法は、いろいろありますよ。クリニックに通って、少しその方法をお勉強してみますか?」 いよいよ診断名を宣告されると思っていた私は拍子抜けして、思わず聞いた。 「あの、先生、うちの子は発達障害なんでしょうか?」 「まぁ、そういうことではありますね」 と、サラリと先生はおっしゃった。 ■診断は、対処法を知るためのもの 後になって、司馬先生に聞いてみたことがある。 「最初の診断時、先生は私が聞かなければ診断名をおっしゃいませんでしたよね? あれはなぜですか?」と。 先生曰く、「診断名を親御さんにお伝えするかどうかは、ケースバイケース」なのだそうだ。 発達障害をフォローする方法論は、かなり確立されている。診断があることで「これから何をするのか?」「どんな方法があるのか?」が見えてきやすくなる。 司馬先生は言う。「診断名をお伝えするということは、たとえるならば、“ここにいけば、便利な道具がたくさん売っているよ”という○○商店というお店屋さんの名前を紹介するような感じです」 けれども、診断がついた(お店の名前を教えてもらった)ということに、とてもショックを受けるお母さんも、もちろんたくさんいる。 「いろいろなお母さんがいらっしゃいますから、とくに診断名をお伝えしないのが私のスタイルなんですよ」と、先生は優しく教えてくれた。 ■いちばん最初に抱いた感情は「安堵」 私自身は、診断を受けてどう思ったか? それを思い出そうとすると、ある情景が思い浮かぶ。それは、診察(診断)を受ける日の朝の景色だ。 司馬クリニックは、ビルの4階にある。4階分の階段を上るので、私はちょっと息切れしていた。階段を上り切って、クリニックの扉が見えた。季節柄だったのだろうか、クリニックのドアが少し、風が入るような感じで開いていた。 もし、あのとき、クリニックのドアがピッチリ閉じていたら、私は扉を開く気力があっただろうか? 多分、そんな気力はなかったと思う。深い森の淵にひとりでいるような、そんな心細さがあった。 「できうる限りの方法で、湧太をフォローしたい」という気持ちは芽生えていたものの、それは余りにも頼りなく柔らかい“芽”でしかなかった。 それでも、私は自分から息子の診断名を聞くことを選んだ。「思わず聞いてしまった」という方が正しかったのかもしれない。 私が息子の診断を聞いたときの気持ちを、的確に表現している文章があったので、引用しておこう。 人間は、大人も子どもも、自分自身の欠陥について知ると、なぜか安心する。なぜなら、生まれて初めて、自分が学校や上司などの欲求に対応できずに苦しんでいた理由と、その問題を克服するにはどうすればよいかがわかるからだ。彼らは自分を許せるようになり、(中略)自分を罪人視しなくなった。 正しい自己認識は開放であり、許しなのだ。 メル・レヴィーン・著/『ひとり ひとり こころを 育てる』より 正しい自己認識は開放であり、許し 。まさに、そんな感じだった。ずっと、ずっと、「どうして、(この子の子育ては)上手にいかないのだろう?」と思っていた理由がわかったとき、一番、最初に感じた感情は「ああ、だから、そうだったんだ」という安堵感だった。 この経験を通じて、私は正しい自己認識を持っておくこと。つまり、発達障害についての基本的な知識を持っておくことは、当事者(母や子ども)の気持ちを落ち着かせるためにとても重要だと思うようになった。 次回以降は、司馬先生の協力を得て「発達障害の基礎知識」について書いてみる。
2016年07月15日●連載の目次は こちら から● 「就学相談のお知らせ」に書いてある電話番号(市役所の教育支援課)に電話をして、市の発達相談の窓口である教育支援センターに電話をした私。支援センターで検査をし、結果と今後のサポートについて聞いたが、何となく心もとない。そこで、軽度の発達障害を専門とするクリニックである、司馬クリニックを受診することにした。 ■診断結果を知りたい! 教育支援センターで検査を受けて、検査結果と、湧太に対してのサポートの方法はわかった。けれども、私が知りたかったのは、「湧太が発達障害かどうか?」という「診断」だということに、自分で気がついた。教育支援センターで得られる検査結果だけでは、当時の私には心もとなかったし、支援センターは医療機関ではないので「診断」ができないのも知っていた。 このあたりになってくると、表現は変かもしれないが「毒を食らわば、皿まで」という気分になっていた。「この状態が何なのか知りたい。知ったうえで、私ができうる限りの方法で湧太をフォローしたい」という気持ちが芽生えていた。 そこで、教育支援センターの方に、軽度の発達障害の専門クリニックである司馬クリニックを紹介してもらったのだ。 ■「特別支援学級(通級)」と「発達クリニック」 ここで「特別支援学級(通級)」と「発達クリニック」について、少し触れておきたい。特別支援学級の保護者会で、そこにいるママ友から、よく「発達クリニックに通っているの? どうして?」「発達クリニックに通って、何をしているの?」といったことを聞かれた。 そのとき、私が思ったのは「子どもが特別支援学級に通っているからといって、発達クリニックを受診している家庭というのは、意外と少ないんだな」ということ。私は最初から発達クリニック受診まで突き進んだが、そうでないママたちもたくさんいる。 「就学相談のお知らせ」に電話をすると、「発達障害の専門病院に行くのを勧められるのではないか?」と思っている人もいるかもしれない。でも、支援学級に通う子でも、必ずしも発達クリニックを受診しているわけではない。このことを知っていると、「就学相談のお知らせ」に電話をする心のハードルは、少し下がるのではないか? と思う。 話を、私のクリニック受診に戻そう。 ■発達クリニックの診断の流れ(私の場合) 司馬クリニックを受診するためには、診察の前に14ページにも及ぶ問診表を書いた。診断のためには、小さい頃からの発達の様子、学校での適応などを詳しく知る必要があるからだ。 その資料を事前に送った上で、当日は下記のような感じで検査が進んだ。クリニックによって違いはあるだろうから、「こういった流れもあるんだな」という参考程度にして欲しい。 ・臨床心理士の親への聞き取り:約30分 ・子どもの認知力検査:約1時間~1時間半 ・医師と子どもの面談、診察(親が同席):約20分 ・親への話:約30分 <次回、「息子が発達障害の診断を受けたとき」に続きます。>
2016年07月15日●連載の目次は こちら から● マイペースで癇癪(かんしゃく)持ちの湧太の育児は大変で、「これって、普通なのかな? それとも…」というモヤモヤを、ずっと胸に抱えていた私。年長さんの7月のお泊り保育で、集団の和を乱した湧太を見て、副園長先生から「彼は気をつけてあげないと」と指摘を受けた。 ■もしかしたら発達障害かもしれない 何となく「発達障害」という単語は気になっていたが、実際に調べてみることはなかった。「そうだったら、どうしよう」と怖かったからだ。でも、副園長先生に「彼は気をつけてあげないと」と言われ、このときばかりは、「怖いとか言っている場合じゃない!」という気持ちになり、初めてインターネットで「発達障害」について検索をしてみた。 ネットで調べれば調べるほど、湧太の普段の状態は、発達障害の子そのもの。その日、子どもを寝かしつけた後、どれくらいネットサーフィンをしていたのかは記憶にない。気がついたら、夜が白々と明けていた。明け方、寝ている夫の枕元で、「ねぇ、パパ。湧太は発達障害かもしれないよ。調べれば調べるほど、湧太の状態にそっくりなの」と言いながら、泣き崩れた。 ■「就学相談のお知らせ」に電話をしてみる そのときに夫は「だったら、何なの? 湧太は湧太だろう」と、しっかりと受け止めてくれた。翌朝、夫の言葉に勇気づけられて、以前、幼稚園からもらった「就学相談のお知らせ」に記載されている電話番号(市役所の教育支援課)に電話をしてみた。 電話口の対応は、「よくお電話してくださいましたね」と優しく包み込むような感じだった。けれども、そのときに感じたことは「発達障害の子どもがいる親だと思って、優しくされているんだ。かわいそうだと思われているに違いない」というものだった。 電話はしてみたものの、「その先」に進むのはためらわれ、相変わらず気持ちは行ったり来たりしている。何の悪気もない(というか、むしろ気遣ってくれている)教育支援課の人の言うことに、わけもなく過敏に反応している。今、思えば、すごく、すごくナーバスになっていたと思う。 「もしかしたら、わが子が発達障害かもしれない」という方向に一歩足を踏み出したこの頃は、心理的な葛藤が強く、つらかった。このあたりの話を書き出したら長くなるので、話を進めよう。 ■「WISC-III」という検査をする さまざまな葛藤の後、再度教育支援課に電話をし、子どもの発達が心配な人の受け入れ窓口である、市の教育支援センターで面談を受けることになった。 専門家に湧太の日常の話を聞いてもらうと、「まずは知能検査をしてみましょう」という提案を受けた。 湧太が受けた検査は、「WISC-III」といって、検査時間は100分程度。「言葉の理解や表現力」「注意や集中を保つ力」「記憶力、作業を正確に早く行う力」「持っている知識や得た情報をまとめて考える力」などを測定することができるそうだ。 テストの結果を見ると、湧太には年齢相応の発達をしていない部分があった。検査をして下さった臨床心理士さんからは、「こういった部分が足を引っぱり、本人もつらいのではないか?」という指摘と、湧太をサポートするための具体的な方法を教えてもらった。 ●サポートの提案例● ・相手に言われたことを理解することが苦手 →手順や方法を教えるときは、一つひとつ短く伝える →言葉を教えるときはカテゴリー分けやパターン分けをしてあげる ・同時にいくつものことを行うことが苦手 →手順を整理して、ひとつできたら次の行動に移れるようにしてあげる <次回、「息子が軽度の発達障害クリニックを受診したときの話」に続きます。>
2016年07月14日「うちの子って本当に手がかかって大変!」ママをやっていれば、そう思うことは多々ある。でも、そんな気持ちが続くと「これって普通なのかな? それとも普通じゃないのかな? もしかしたら、うちの子、発達障害かも!?」そんなふうに心配になることがあるかもしれない。 ■「通級で良い先生に出会えて良かった!」自身の経験から語る発達障害 わが家には、小学校6年生の双子の男の子がいる。双子のうちの1人、湧太(仮名)は、幼稚園の年長の秋、「広汎性発達障害」の診断を受け、小学校1年生~2年生の間、特別支援学級(通級。以下「支援学級」)に通っていた。 今は通常学級のみの在籍で、楽しそうに毎日学校に通っている。そんな今、思うのは、「早い段階で、専門知識のある先生に出会えて良かった!」ということ。本気でそう思っているので、今回は自分の経験から、子どもの発達障害についてお話ししたいと思う。 ■「就学相談のお知らせ」がすべての始まり 湧太が幼稚園の年長だった年の6月あたり。「就学相談のお知らせ」という紙が幼稚園のお便りに交じっていた。その紙を見たときに私自身、なぜだかとても引っかかった。ほかのプリントと一緒に捨てるのがためらわれ、幼稚園関係の保存用ファイルにとっておくことにした。 その後、幼稚園関係の書類を探すたびに、目に入る「就学相談のお知らせ」。ここに電話してみたら、ずっと胸にモヤモヤしている「何か」の解決になるのだろうか? でも、電話をするのは怖い…。「就学相談のお知らせ」を目にするたびに、気持ちは行ったり来たりして揺れた。 ■わが子はマイペースでかんしゃく持ち その書類が気になったのは、湧太がマイペースで癇癪(かんしゃく)持ちだったからだ。幼稚園では周囲への関心が薄く、集団行動をすると、とんちんかんな動きをすることが多いと保育士さんから指摘を受けていた。輪の中に入るのが嫌いで、幼稚園に登園すると1人で絵本を読んでいることが多いので、友達はほとんどいない。 そのくせ家庭では、気に入らないことがあると地団駄を踏んで大泣きし、母や兄弟が辟易(へきえき)して折れるまで我を押し通す。そんな湧太を育てることに、当時の私は疲れ切っていた。 ■お泊り保育で集団の輪を乱す 湧太が年長時の7月、幼稚園でお泊り保育があった。園をあげての行事なので、担任以外の先生とも生活を共にしたようだった。翌朝、お迎えに行くと、副園長先生から、こんな言葉をかけられた。 「湧太くん、ビックリしたわ。すごく大変ね。お母さん、彼は気をつけてあげないと学校に入ったら大変よ」 ■ネットで発達障害を調べてみる 「やっぱり、そうか……」。長男を育てたときとは違う湧太の子育てには、ずっと不安があった。幼稚園の担任の先生にも何度か「湧太、大丈夫でしょうか? 何か、違和感があるんです。しかるべき機関に相談に行ったほうがよいでしょうか?」と相談はしていた。 けれども、ベテラン保育士のその先生は、「お母さん、考えすぎよ。大丈夫、もう少し大きくなれば落ち着くわよ」と、いつも笑って受け流してくれていた。 「ベテラン保育士さんが、そう言うんだもの。大丈夫」。ずっと、そうやって自分に言い聞かせていた。今から思えば、もっと早くに自分で調べることもできたと思うが、調べることが怖かった。「もしそうだったら、どうしよう」と思ったからだ。 <次回に続く>
2016年07月14日働く主婦の皆さん、「扶養の範囲」が変わるのを知っていますか? パートが社会保険に入る条件 パートが社会保険に入って採算がとれるラインとは の続きです。 制度のことはわかったけれど、私の場合はどうなる? そんなケース・バイ・ケースで違ってくる部分を、Q&A形式で社会保険労務士の守屋三枝先生に伺った。 ■Q.今回の制度改正、妻の私は自営業ですが関係ありますか? クリエーターとして、ネットでアクセサリーを販売しています。私も年収106万円を超えると、夫の扶養から外れてしまうのですか? A.妻が自営業やフリーランスの場合で社会保険の被扶養者になるための収入ラインは、年収130万円超のままです。 今回、制度が改正になったのは、「企業に勤めるパート労働者(短時間労働者)が社会保険に入る際の条件」です。妻の働き方が、自営業やフリーランスの場合は、今まで通り、社会保険に入る(被扶養者の範囲)ラインは年収130万超です。 ■Q.夫がひとりで会社をしており、妻の私は役員です。この場合は、どうなりますか? 夫がひとりで立ち上げたPR会社を経営しています。夫が社長、妻の私は専務です。会社を立ち上げたばかりなので、私のお給料は100万円未満。この場合は、どうなりますか? A.妻は常勤役員になるので、社会保険加入が必須です。 夫が社長、妻が専務で、2人で毎日仕事をしていますという場合は、通常の勤務をしている役員なので年収に関係なく、社会保険加入が必須です。今回、改正があった「年収106万円未満」という線引きは、あくまでパート労働者(短時間労働者)の場合です。 ■Q.パート勤務ですが、収入や勤務時間に波があります。この場合は、どうなりますか? スキー専門の旅行会社でパートをしているので、繁忙期の冬は忙しく、月20時間以上働き、収入も月額12万円程度です。ただ、夏はそれほど忙しくないなので該当しません。その場合は、どうなりますか? A.1年間の平均的な勤務日数、勤務時間で加入の可否を見ます。 この様な場合、現状の基準(労働時間、労働日数が一般社員のおよそ4分の3以上)では、1年間の平均で加入の可否をみます。労働契約が加入しない条件だった場合でも、実際に1年後に超えていて、それが続くと思われる場合は加入することになります。今年10月からの適用拡大に該当する大企業は、勤務日数や時間など労働条件が労働契約で明確に定められ、その通りに運用されると思います。 今回は社会保険のしくみの話だったが、税法も「配偶者控除」が「夫婦控除」になることが検討されている。今後、国のしくみは、「専業主婦優遇」から、「働く妻に対しても中立」の方向に変化していくようだ。子育ての時期など、ライフサイクルとのバランスを考えながらも、ママも自分の可能性にトライしてみては?
2016年06月29日働く主婦の皆さん、「扶養の範囲」が変わるのを知っていますか? パートが社会保険に入る条件 の続きです。 平成28年(2016年)10月から、パートが社会保険に入らなければならない条件が引き下げられる。社会保険料は大きな金額なので、パートなのに社会保険料を支払うとなると、一定の年収までは「社会保険料を支払わなくてよいラインギリギリ」よりも手取りが減ってしまう。引き続き、社会保険労務士の守屋三枝先生にお話を伺った。 ■パートなのに社会保険に入ったら損!? 平成28年(2016年)10月にパートが社会保険に入るラインが引き下げられた後、「では、引き下げられた条件でパートが社会保険に入った場合、いくら稼げば採算がとれるのだろう?」といった議論が巷ではすでに始まっている。 結論から言うと、収支の黒字ラインは世帯ごとに違う。目安としては、「年収106万円に引き下げらえた後、収支が黒字になるラインは、125万円~130万円あたり(※1)でも、ここは本当にギリギリのラインで、年収200万円くらいになってやっと社会保険を支払ってでも、その分働いた方が良いといいう気持ちになると言われています」(守屋先生) これは、あくまで目安。この数字は、一番のボリュームゾーンである「夫の年収が500万円」の場合をもとに、妻の社会保険料を適宜設定して試算した数字にすぎない。 一般論の数字なのに、この数字を、あたかも絶対に破れない「ガラスの天井」のように捉えるのは、もったいない と私は思う。 (※1)夫の年収が500万円で妻が協会けんぽに入った場合で試算 ■目安は、「自分の社会保険料分をクリア」 夫の年収が500万円の場合は、妻がパートで社会保険に加入しても黒字になるラインは125万円~130万円。では、「我が家の場合」を考えるにはどうしたら良いのだろうか? その目安として提案したいのが、夫の年収に関わらず、「 可能な範囲で勤務時間を調整したとき、自分の社会保険料分を支払っても(クリアしても)、以前の収入と変わらない額を保てるかどうか 」という考え方だ。 具体的な例として、年収が106万円の場合で考えてみよう。 第1回目 で紹介したとおり、年収106万円の場合、社会保険料の月額は13,460円になる。 時給1,000円で、自分の社会保険料分である月額13,460円をクリアする(=社会保険料分を差し引いても、それまでの収入を保つ)ためには、今までより14時間多く働く必要がある。今まで毎日4時間だったところを毎日5時間働けば、1ヶ月で合計22時間となり、社会保険料はクリアできて、世帯の収支は黒字となる ママでもある主婦にとって、「働く時間を1日4時間から5時間に伸ばす」というのは現実的ではないのかも。けれども、自分で限界を決めてしまわず、「社会保険に入った先」つまりは、「ガラスの天井の先」を具体的にイメージしてみても損はないと思う。 実際に社会保険に入れば、お給料明細を見て、具体的に自分の社会保険料が計算できる。 社会保険料=厚生年金保険料+健康保険料+雇用保険料 ■「パート仕事」は、2極化していく どうして、パートが社会保険に入ることを具体的に想像してみたほうがよいかというと、「長い目で見ると、おそらくパート仕事(女性の働き方)は、2極化していくと思われる」(守屋先生)から。 守屋先生は、パート仕事が将来こんなふうに分かれていくのでは? と予想している。 1.企業は、社会保険料を負担したくないので、「扶養の範囲」で働いて欲しい。 2.企業は、有能な働き手の数は限られているので、有能な人は囲い込みたい 前者の層が請け負う仕事は、できるだけコストを抑えたいから賃金は安くなる。後者の層が請け負う仕事は、人を囲い込みたいので、必然的に賃金は高くなる。 今までは何となく一括りになっていたパートだが、これから先、2極化していく可能性があるのだ。そんな未来図を前に、ママたちは、どんなことを考えておけばよいのだろうか? 御自身も3世代同居の専業主婦から社会保険労務士になった守屋先生 は、こんなふうにアドバイスをしてくれた。 「ひと口に“働く主婦”といっても、置かれている状況はさまざまだと思います。 “扶養の範囲”というガラスの天井で限界を決めてしまわず、自分に許される最大の公約数の働き方を探してみては? 子育ては、いずれ終わります。その時に自分を支えてくれる“夢中になれる何か”は、仕事をする中で見つかるかもしれませんよ」 次回は、「ここが知りたい! 扶養の範囲Q&A集」です。
2016年06月28日働く主婦の皆さん、「扶養の範囲」が変わるのを知っていますか? の続きです。 平成28年(2016年)10月から、いわゆる「扶養の範囲」の条件が変更される。実は、扶養の範囲の中で主婦が気をつけなければいけないのは、「社会保険に入らなければならないライン」。今回の改正では、そのラインが変更となった。注意すべきポイントを前回に引き続き、社会保険労務士の守屋三枝先生に伺った。 平成28年10月から、パート(短時間労働者)が社会保険に入らなければならない条件は以下の通りとなる。 1.週の労働時間が20時間以上 2.賃金月額が 月8万8,000円以上 (年106万円以上) 3.1年以上雇用されることが見込まれる 4.従業員501名以上の勤務先で働いている 上記の条件をすべて満たす場合、社会保険への加入が必須となる。 ■配偶者控除改正の3つのポイント <ポイント1>週20時間以上働いてはいけない 今回の改正の一番のポイントは、パート(短時間労働者)の社会保険に入る対象者の条件が、 「週の労働時間が20時間以上」 になったこと。今までは、正社員の4分の3以上(週30時間労働、およそ16日以上労働)だったので、働く時間のラインが引き下げられたわけだ。 扶養の範囲というと、とかく「年収106万円」と収入の話がクローズアップされがちだが、今回の改正の重点は、年収ではなく働く時間だ。「 扶養の範囲で働きたいのであれば、一番のポイントは、週20時間以上働かない という点です」(守屋先生) <ポイント2>お給料が月8万8,000円以上になってはいけない 上記に加えて、 「給料が月8万8000円以上」になってはいけない ことも条件となっている。 ところで週20時間働くというのは、どんな働き方だろう? 平日は毎日出勤するとなると、1日4時間勤務する計算になる。たとえば時給1,000円で、6月の平日(22日ある)毎日4時間勤務すると、「賃金月額が月8万8000円以上であること」はクリアすることに。 1,000円より時給が低い場合、たとえば千葉県の最低賃金時給817円(※1)で試算してみると、7万1,896円なので、もう少しだけ働ける。 つまり、「週の労働時間が20時間以上」という条件をクリアしていると、 「月8万8,000円」というのは、わりと簡単にクリアする金額である ということは気にとめておきたい。 (※1) 厚生労働省最低賃金サイト より <ポイント3>社会保険加入者が501名以上の会社に勤務し1年以上働くことが見込まれる 今回の条件が導入されるのは、従業員501人以上の大企業で1年以上働くことが見込まれている人。だから、たとえば「近所のカフェで働いていて、働いている人はバイトも含めて20人くらい」という職場であれば、条件の導入はまだ先の話となる。 「平成31年10月以降は500人以下の企業にも導入が予定されていますので、社会保険料は労使折半ですから、零細企業、中小企業にもこの制度が導入されるとなると、企業側の負担感は相当です。」(守屋先生) 今回の改正でパートが社会保険に入るハードルが下がったものの、大企業から順次導入されていくので、「あなたの職場」は、まだ先の話なのかもしれない。 けれども、目の前までやってきている、「パートの働き方が変わる波」。その波に対して、いまママたちは、どんなふうに考えておくべきなのだろうか? 次回は、「パートが社会保険に入るかどうか見極める目安」というところから考え始めてみたい。 ※内容に誤りがございましたので、記事の一部を訂正いたしました。(2016年9月23日14時40分)
2016年06月27日いわゆる「扶養の範囲」。ママならば、何となく気になるワードだろう。扶養の範囲とは、妻の収入が一定額を超えないことで、「夫の税金」や「妻の社会保険料」に配慮をしてもらえる制度のことだ。 ■平成28年10月から「扶養の範囲」が変わる 「扶養の範囲」の線引きが、平成28年(2016年)10月から変わることはご存じだろうか? これを知っているのと知らないのでは大違い。パートのシフト申請の出し方が違ってくるかもしれない。詳しい内容を、社会保険労務士の守屋先生に伺った。 守屋先生は、元・専業主婦。結婚後、3人の子どもを授かり、3世代(一時期4世代)同居7人家族の専業主婦として13年間を過ごした。一番下の子が幼稚園に入った頃、いわゆる「ミドルエイジクライシス」(※1)と思われる脱力感に襲われ、朝起きても、力が入らない、何もやる気が出ない状態に陥った。そして、こんなふうに思ったそうだ。 「今まで、“良い娘、良い妻、良い嫁”と、ずっと誰かのために生きてきたけれど、私自身の人生の足跡はつけられたのだろうか? 後半の人生、私らしく生きるとは、どういうことだろうか」 そこから、いろいろと考え始め、勉強をスタート。1999年に社会保険労務士資格を取得し、開業されたという経歴の持ち主だ。 (※1)精神科医・心理学者のユングが提唱した、中年期に気持ちや体調面で「今までの生活」を続けることが難しくなること。「中年の危機」と訳されることがあるが、「後半人生を見直すための転換期」という意味で、「きわめて正常なこと」とも言われている。 さて、「扶養の範囲」に話を戻そう。 ■「扶養の範囲」がもたらす2つのメリット 「扶養の範囲」について知りたいと思ったら、まずは大きな2つのメリットを知っておくのがよいだろう。 1つ目のメリットは、 夫の税金が安くなる 点。独身の人と家族を養っている人とでは、税金を払う力は後者の方が弱い。そこを考慮し、「配偶者を養っている人(妻が扶養の範囲で働いている人)は、税金の負担を軽くしてあげます」という優遇措置(配偶者控除)を夫が受けることができ、税金が安くなる。 2つ目のメリットは、 サラリーマンの妻の場合、年金、健康保険や介護保険(社会保険料)を支払わなくて良い 点。自営業者の妻の場合は、もともと個人で独立して社会保険料を支払っているので2つ目の話は残念ながら関係ない。 今回の改正は、2つ目のメリットである「妻の社会保険料が免除になること」に関わる話だが、全体像を理解するために、「扶養の範囲」の2つの収入ラインを知っておこう。 ■扶養の範囲内、2つのライン <ライン1>税金のライン:妻の年収103万円以下 最初の線引きは、夫の税金が安くなる「税金のライン」。 妻の年収103万円以下なら配偶者控除が受けられて、夫が支払うべき税金が安くなる 。安くなる税金の目安としては、夫の年収が約600万円なら、1年間で約6万円(月額およそ5,000円)程度。 また、 夫の会社に家族手当がある場合。支給要件が、「(家族の収入が)年収103万円以下」というところも多い ので、こちらも注意が必要だ。 <ライン2>社会保険のライン:妻の年収130万円超 次の線引きは、今回の改正に関係する「社会保険のライン」。実はサラリーマンの妻が「扶養の範囲で働きたい」と考える場合、一番気をつけなければならないのは、この社会保険料のラインだ。なぜなら、 パート勤務などの場合、妻の収入がこのラインを超えると、自分で社会保険料を支払わなければならない から。 パートが社会保険のラインを超えてしまった場合、どれくらいの額の社会保険料を支払わなければならないのだろうか? 仮に、妻のお給料が106万円とした場合の社会保険料を守屋先生に試算してもらった。 ●パートが社会保険料に入った時の負担額 厚生年金保険料 毎月約8,700円 健康保険料(介護なし)毎月約4,400円 雇用保険料 毎月約360円 合計 13,460円 (注)計算は40歳未満・東京都協会けんぽの場合。 こんなにお金を支払わなければいけないの!と、驚いたアナタ。 次回は、今回改正となる、この「社会保険ライン」の条件を具体的に解説します。
2016年06月26日寝具の切り替えの季節は、「はぁ~、面倒くさい!」と、タメ息のひとつもつきたくなるもの。そうかと言って主婦としてスルーはできないので、「面倒な理由」を探り、解決策を具体的に考えてみました。 ■寝具の衣替えを面倒だと感じる理由 =やることが一杯あるから 「まんま、やん!」という突っ込みは、どうかなさらず…。あるとき、「なぜ、寝具の切り替えが、こんなにも大変な仕事なのか?」を、真剣に考えたことがあります。そこで思ったのは、工程の多さでした。「寝具の切り替え」と、ひとくちに言っても、じつは工程がたくさんあります。 <寝具の衣替えの工程> 1. 冬物の寝具を収納する場所を確保する 2. 夏物の寝具を出してくる 3. 寝具カバーを、「夏物」から「冬物」へ取り替える ――ここで一旦ゴール―― 4. 「冬物」の寝具カバーと、毛布を洗濯する 5. 羽毛布団を干す 6. 冬物の寝具をしまう ■「ゴール」後の仕事は、ゲッソリするもの 始める前に「夏物の寝具を出して、カバーを取り替える」くらいのイメージしか抱いていないと、付随する仕事の多さにゲッソリするはず。「想定していたより、仕事が多い」というのは、何より人を疲れさせるものです。 ちなみにわが家は5人家族。シーツを5人分取り替えるのだって、かなりの大仕事です。しつこいようですが、「ゴールだと思っていたのに、その先もあった」というのは、本当に心が折れてしまいます。 ■解決策 その1・工程を分け、1日で全部やらない 私が考えた解決策のひとつが、「これらの工程を、1日で全部やろうと思わない」こと。そもそも、寝具カバー洗濯と毛布の洗濯は、干す場所の関係から同じ日にはできないことが多いもの。「(寝具の衣替えは)ダラダラと、日数のかかる仕事なのだ」と、最初から思っておけば、少なくとも「私、まだできていないよ!」という自己嫌悪とは無縁でいられるはずです。 ■解決策 その2・寝具小物は収納ケースに入れる あるときから、「洗濯の終わった毛布、寝具カバーはケースに入れる」というルールを作りました。こうすることで、「ここは終わった」という区切りをつけることができるのです。これは、意外と心理的に大切なポイント。 また、収納ケースの種類によっては立てて収納できることも発見! それ以来、寝具の小物類は、限りある押入れスペースではなく、ロフトに上げることにしました。私が使っているのは写真のような羽毛布団が入っていた空ケースですが、無印良品に似たコンセプトのものがあるようです。 ■解決策 その3・工程の順序を考える なぜ、前ページの工程表の1番目に、「冬物の寝具を収納する場所を確保する」を入れたのか――その理由をここで語らせてください。冬物寝具は厚手のものが多く、容積が大きいため、それを出した後は、ぽっかりとスペースが空きます。私はその「空いたスペース」に毎年、何かしらの物を突っ込んでしまっていたのです。 それをすっかり忘れたまま、すべての寝具の取り換え&洗濯を終え、「さぁ、冬物寝具をしまおう」と思ったときに初めて、しまうはずの場所に物があったことを思い出すという…。そのときの徒労感と言ったら! これを何度か繰り返した結果、片付けを工程の最初に持ってくることにしたというわけです。 皆さんもご自身のやりやすい方法に合わせて、工程を見直してみてもよいでしょう、 ■解決策 その4・寝具カバーを定番シリーズで揃える 主婦として19年間家庭を運営してきて思うのは、「思いつきで寝具を買っていると、チグハグ感が出てしまう」ということです。 たとえば、シーツ。3年前に買った花柄とシーツと、去年買ったチェックのシーツ。どちらもお気に入りだけれど、横に並べてみると「何だかな?」という気持ちになるもの。「あ、いいな」という気持ちだけで買っていると、家族5人分の寝具を揃えたときには何の統一感もなくなってしまい、そんなビジュアルを想像することで、寝具の切り替えが一層ブルーな仕事になることは否めません。 上記のような失敗を繰り返した挙句、私が辿り着いたのは「次の季節に、きちんとした寝具小物がスタンバイしていると、“アレを出そう!”と思えて気分がアガる」という結論でした。 最近では、寝具カバーは無印良品で買うと決めています。定番シリーズがあり(色違いになることはあるけれど、ちぐはぐ感はない)、費用対効果も高く、白いごはんのような無難さもある無印良品の寝具カバーを揃えることで、衣替えが多少苦ではなくなりました。「定番で揃えられること」の大切さをひしひしと感じています。 ちなみに、わが家では寝具カバーを数年に一度、大人買い的に「全部買い替え」をしています。大名気分で買い物ができるよう、寝具切り替えの年は、ボーナスで予算を計上しておくのです(今年は夏のボーナスに予算3万円を計上)。こうすることで、チマチマ寝具カバーを買い足し、使用感がマチマチになってしまうより、管理がラクになるという一面もあります。 主婦の仕事は、ちゃんとやったからといって誰に褒められるものでもありません。でも、だからこそ、ひとり静かに「何が問題で、どうすればいいのか?」を考える時間は持ち続けていきたい。今回、寝具の衣替えを見直したことで、あらためてそう感じました。
2016年06月10日現代のママはテンパって当たり前 夫は「ママの感性」を理解できない? ママを「支えてくれる人がいない」という大問題 の続きです ママが子どもを叱りすぎてしまうのは、子育ての負荷が集中して追いつめられているから。「それは、現代の社会構造としての問題である」と言うのは、花まる学習会代表の高濱正伸さん。私たちは「そういう時代に、ママをやっている」ということを、きちんと意識する必要がある。引き続き、お話を伺った。 ■「心がけ」や「アドバイス」ではどうにもならない不安感 ―ついつい不安で、子どもに過度な干渉をしてしまうんです。 高濱:「不安だ」と思っているのは、不安の方に気持ちが傾いている状態です。不安や恐れに気持ちがとらわれてしまっているときは、「心がけ」とか「アドバイス」などでは、どうにもならない心理状態になっているわけです。 そんな心理状態の中で、「でも、この中で上手にやらないと」と思っていても、なかなかうまくはいきません。まずは、「不安だ」という気持ち自体を、何とかしないといけない。 ―ズブズブと蟻地獄に足をとらわれていくような不安感があります。 高濱:いちばん効果があるのは、「いろんな人に支えられて、気遣ってもらっている」という感覚です。それがあれば、スッと「安心」の側に行ける。 ■ママを取り巻く環境の問題 ―支えてくれる、いろんな人…。そんな人間関係を持っていない人は、どうすればよいのでしょう? 高濱:そもそも、30年前に孤独なお母さんに育てられた人が、お母さんになっているから、頼り方を知らないし、人を支える支え方も知らない、というのも仕方ありません。そういう頼り、頼られるというネットワークが、なかなかできていかないということが、問題なんですよね。 大らかなボスママでもいればいいけれど、最近のボスママは、単に意地悪をするだけのような人もいます。友達の家に遊びに行くのにアポイントをとって、手土産を持っていかないと、ママ同士の会話で、「あの人は手ぶらで来るのよね」と言われてしまう時代ですから。 ―もはや、子どもの問題ではない気がしてきました。ママを取り巻く環境の問題? 高濱:そうですよ。僕は塾を始めた当初、女性のことはまったくわかりませんでした。たとえば、塾の人間として「お姉ちゃんに、キツく言いすぎですよ」と保護者にお伝えしたとします。そのときは、「わかっているんです。本当にそうですよね! 気をつけます」と、本気で言っているのに、毎回、毎回、毎回(←力を込めて)、会うと注意をしたくなる。内心、「(塾の最初の拠点である)埼玉県のママ、みんな大丈夫なのかな?」と、思っていました(笑)。 けれども、だんだん活動の範囲が広がっていき、「東京都のママもおかしい!?」「あれ? 神奈川県も!?」「日本全国!?」みたいになったときに、「これは現代の母の病なんだ」と今の日本全体が抱えている課題であることを悟りました。 ■ママが自分自身を大切にする ―そういう話を聞くと、「私だけではないんだ」と安心します。 高濱:「なぜママたちがそうなってしまうのか?」という話ですよね。だから繰り返し言いたいです。 「子どもを叱ってばかりいるのは、あなただけではないんですよ」ということ。そして、「ママというのは周囲の支えがないと、そうなってしまう生き物で、周囲の支えが期待できないのであれば、自分自身が意識して、自分で自分を支えていかないといけませんよ」と。 ―「良い母でいたい」と思うのであれば、まずは自分自身を大切に! ということですね? 高濱:子どもにとっての最大の支援は、ママの心が安定していることです。「お母さんが仕事で忙しい」みたいなことは、子育ての障害にはなりません。むしろ「頑張っているお母さんが誇りだった」という話は、必ず働く母親の子どもから出てきます。 子どもにとって、いちばんつらいことは、「ママが不安定でイライラしている」ということです。そこのところを肝に命じて、ママがニコニコできるような生き方を探してみてください。 ● 何万人というママ達を相手にしてきた高濱さんに、「子どもを叱りすぎてしまうのは、あなただけではないのですよ」と言ってもらうと、「私だけではないんだ」と、ものすごくホッとした。これぞ、究極の「ママのニコニコカード」なのかもしれない。 高濱さんの講演会が、「“おっかけ”をするママがいる」「講演のキャンセル待ち多数」なのがわかる気がした。 ●高濱 正伸(たかはま まさのぶ) 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。
2016年06月05日現代のママはテンパって当たり前 夫は「ママの感性」を理解できない? の続きです 「子育てをする上でもっとも大切なことは、ママの気持ちが安定していること」と言うのは、花まる学習会代表の高濱正伸さん。それができないのは、ママ自身の問題以前に、もっと大きな問題が背後にあるから。その構造を聞いて、「そうなのか」と、心がふっと楽になりました。 ■イライラしているママはあなただけではない ―「子どもにキツい言い方をしちゃう自分を止められない」と、みんなが思っている? 高濱:そうです。こちら側から見ると、どのママも「あなたも、あなたも、あなたも、みんなイライラしています。だから、あなただけではない。大丈夫ですよ」と、言いたいです(笑)。 本当に危ないです。ギリギリです。「キツい言い方をする自分を止められない」という状態のまんま、ママたちは生きている。「今、宿題を始めないと終わらないでしょ。そしたらアンタ泣くでしょ!」みたいな。日々こなさなければいけない段取りの中で、ママはギャーっとヒステリーになってしまう。 ―それは私のことですね(笑)。たしかに段取り、毎日大変です。 高濱:毎日、学校の宿題をさせて、忘れ物させないようにして。ママも子どもも、そういう段取りの中で暮らさないといけない。そりゃ、大変ですよ。 ■ママを支えてくれる人がいない? ―どうすれば良いのでしょうね? 高濱:今までお話ししてきたことの根っこには、「ママの孤独」という問題があります。核家族で「夫が働き、妻が家庭を守ることがスタンダード」という今の社会構造の中では、孤独なママが数多く出てきてしまいます。ママ1人が子育てを担うというのは、並々ならぬストレスです。 この社会構造がわかって、「今の社会の構造的にママは孤独になりがちで、そうなると追い詰められてギャー、ギャー言ってしまう。そう思わないほうが奇跡なんだ」くらいに思えると、ママたちはふっと楽になれる。 ―私自身、ダメな母親だなぁと落ち込むことも多くて 高濱:「古き良き母親像」みたいなものを、まだ、みんなどこかで背負っていますから。たとえば30年前は、「幼稚園のママが飲み会を開いている」などと言ったら、コメンテーターが「母として、何をやっているのだ!」みたいなことを平気でテレビで言っていました。 そんな感じが、今でも皆さんの気持ちの上では残っている。その時代と比べて、社会の構造が変わったことをわかっていない。「いやいや、ママ、大変なんですよ。誰も支えがいないんですよ」ということを、世の中の人の大半がわかっていない。 ■「ちゃんとしよう」なんて思わなくていい ―まずは、ママたちが「古き良き母親像」を自分自身で振り切る必要があるということですか? 高濱:まずはママが、自分自身の幸せを考えないといけません。 30年前、自分が育った時代の価値観を引きずって、「それと比べて自分は好きなことをやりすぎ?」などと思うかもしれませんが、そうではなくて、「子育てをとりまく状況が、本当に(力強く)まずいのですよ!」ということを強く言いたい。それを聞くと、お母さんは「あ、そっか」と、楽になる。「『私が悪いママなのかな?』と、ずっと思っていました」というママたちがたくさんいます。 ―「私は、ちゃんとやれない」「ちゃんとやれるママでいたい」という気持ちがあります。 高濱:「ちゃんとしよう」なんて、思わなくていい。僕に言わせれば、「そう思っている時点で、すでに危ないですよ」という感じです。今の時代は、「ちゃんとできない私ということを気にしていられる余裕」を持てる状況ではないのですよ。 ―そう言われても、「できない私はダメ」と思う気持ちは、自分ではいかんともし難く…。 高濱:僕もメディアを通じて、ガンガン言っていますからね。5年前のシビアさよりは、「わかっている人」は増えてきて、徐々に状況は変わってきていますが、「ママの孤独」「日本の子育て環境は、構造的に危ない」という、そこの根底の話はしっかり伝えていかないと。 「ヒステリーを起こしてしまうのは、ママが孤独だからである」という視点に、とても驚いた。 そんな時代に、「ママをやっていく」私たちは、どうすれば良いのだろう? 次回は、そんな「子育ての不安感」を払拭する方法について伺います。 ●高濱 正伸(たかはま まさのぶ) 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。
2016年06月04日現代のママはテンパって当たり前 の続きです 「ママがテンパってしまうのは、当たり前のこと」。そうおっしゃるのは、花まる学習会代表の高濱正伸さん。そんなママたちへの最高の処方せんは、周囲の人に話を聞いてもらったり、アイドルを追っかけたりといった「ママのニコニコカード」を増やすこと。でも、ママになると「自分が楽しむ」ということに、どこか罪悪感もある…。 ■今、もっとも大切なことは「ママの気持ちが、安定していること」 ―ママになると「子どもを差し置いて自分が楽しむ」ということに、どこか罪悪感があります。 高濱:今、もっとも大切なことは、「ママの気持ちが、安定していること」ですよ。今のママたちの置かれている状況は、本当に危ないんです。僕は「国家レベルで、対策を講じなければ危ない」というレベルの深刻さだと思っています。 そんな深刻な危うさに、当のママ自身が気づいていない。もちろん、夫も、その親世代である、今の60代、70代も気がついていない。そんな状況の下、ママ「だけ」に全面的に子育てを任せていたらいっぱいいっぱいになって、ママたちが怒鳴ってばかりいるのも当然です。 ■最近の子育て環境の危険性 高濱:僕は、「今の子育ての環境の危険性」ということを強くお伝えしたいのです。ここ50年くらいで子育て環境は激変した。そこまでは、赤ちゃんは、家族や地域のスターで、常に周囲にママ以外の大人の手があった。それが核家族になり、ママは孤立してしまったのです。 ―長い歴史の中で、この50年間の子育て環境に異変が起きていると? 高濱:そうですね。だからこそ、「ママという生き物は、わが子のことになると理性がふっとんでしまう」という意識を、子育てを取り巻く環境にいる全員で共有していかないといけない。 夫たちが、その意識を共有できていないのも大きな問題です。「自分の母親は、あんなに頑張っていたし」と良妻賢母幻想、専業主婦幻想みたいなものを持っている人は、今でも多いですから。かく言う私も、結婚する時に妻に「仕事をやめてくれ」と言ったので、本質的には変わりませんけれど(笑)。 ■ママがどれくらい追いこまれているか、夫はまだ知らない ―高濱さんもプライベートではそうだったこともあると伺い、妙に安心しました。 高濱:私は教育の仕事をしているので、「何で、今のママたちは、こんなにイライラしているのかな?」と、ジャングルを分け入るように見ていって、やっとわかりました。普通の男性だったら見えませんよ。だから「家の仕事は、お前の仕事だろう」くらいのことを、平気で言ってしまう夫がたくさんいるわけです。 ママがどれくらい追いこまれているかが、夫がわかっていない。男は、「ママの感性」が今ひとつ、ピンときていません。ガーッと、ものすごく心配になっちゃう感じとかね。そうなってしまっている妻に対して、「大丈夫じゃん?」と、軽く言ってしまう。 そうしたチグハグが積み重なって、もともと危ない状況のママが、余計に追いこまれてしまう。「夫がいること自体がストレス」みたいなママが出てくる。そこが教育者側からすると、壁ですね。 ―壁というのは? 高濱:健全な子育てを阻害する障壁です。「夫は何もわかってくれない」と追いこまれてしまっているママたちがたくさんいるということがね。 子どもにイライラしてしまうのは、私だけのせいではないのかも…。 次回は、さらに話の核心に迫ります。 ●高濱 正伸(たかはま まさのぶ) 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。
2016年06月03日毎日、子どもを叱ってばかり。「何で私、こんなに余裕ないんだろう…」。そう思っているのは、あなただけではありません! 「ママたちがテンパってしまうのは、当たり前のことなのですよ」と言うのは、花まる学習会代表の高濱正伸さん。お話を聞くだけで、「そうか、私だけではないんだ」と、心がスッと楽になるはずです!(取材・文:楢戸ひかる) ■ベストを尽くしたいのが、「ママという生き物」 ―私は3人の男児を育てているのですが、日々「私の子育て、これで大丈夫?」と、常にどこかで不安です 高濱:「ママという生き物」は、どうしても子育てに「正解」を求めてしまいます。うちの社員でも、仕事のときは大らかなアドバイスができていたのに、こと「わが子」となると、全然違いますよ。 ―さまざまな知識があり、勉強をされている方でも、そうなんですね。 高濱:わが子となると、想いがあふれてしまうのでしょうね。想いがあふれてしまうということは、人間なら誰しも経験があると思います。たとえば、「恋をして、失恋しました。でも、諦めきれない」みたいな感じです。「ベストを尽くしてあげたい、最高のものを提供してあげたい」という気持ちが抑えられないのは、それが「想い」だからです。 ■テンパって当たり前 ―子どもに対しての感情は、恋愛感情と一緒ということでしょうか? 高濱:そうです、一緒ですよ。だから、なかなか止めようがないのです。「ママとは本来、そういう生き物なんだ」ということを、まず知って欲しいですね。 今までは、ママたちの横に「ゆりかご軍団」(実家の母や近所のおばちゃんなど、子育て経験のある人たち)がいて、「わかる、わかる」、「大丈夫、大丈夫よ」と言い続けてくれることで、やっとママたちはニュートラルな気持ちになれたものです。 ―ゆりかご軍団がいない今は、テンパって、当たり前。それが、現代のスタンダード? 高濱:私がお伝えしたいのは、「イライラしてしまうのは、ママが至らないということでは全然ないよ」ということです。だから、僕は常々、「ママは、自分の母親や姉妹、夫など、周囲の人に話を聞いてもらって、ガス抜きをしなさい」と、言っています。 ■ママは「自分に甘くていい」 ―そういう相手がいない人は、どうすれば良いですか? 高濱:それは現代の課題ですよね。そういう人は、何でもいいんです。ヨガでも、お買い物でも、自分がそれをやっているときには、ありのままの自分でいられる、優しくなれる、大らかでいられる、そんなものを見つけてください。 エピソードで具体的にお話ししたほうがわかりやすいですね。たとえば、パート先で突然、周囲の人から、「Happy Birthday to you♪」と歌を歌ってもらって、ちょっとしたプレゼントをもらった日は、絶対に子どもに対して優しくできる、みたいなね。人から気にしてもらったり、心配してもらったり、愛してもらったり。そういうのを、ちょっとでも受けるとママも楽になる。 ―自分も含め、日々、いっぱいいっぱいの気持ちでいるママは多いです。 高濱:本当にそうですよ。わが子の生活を回す段取りで、精一杯ですから。しかし、「自分に優しく!? それどころではない!」ということになってしまうと、どんどん悪循環に陥ってしまいます。 ―この問題はかなり深刻ですね。 高濱:僕は「ママのニコニコカード」と呼んでいますけれど、スポーツでもいいし、おしゃべりでもいいし、買い物でもいい。アイドルなんて、そのためにいる存在だから(笑)。とにかく「ママがニコニコできること」を探してみてください。 そうは言っても、ママは「自分が楽しむ」ということに、どこか罪悪感もある…。 そして、そんな気持ちのママに追いうちをかけるものもある。 次回は、「夫は『ママの感性』を理解できない?」です。 ●高濱 正伸(たかはま まさのぶ) 花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。 1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。 保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30,000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」など多数メディア出演もしている。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』など、著書多数。
2016年06月02日「はあ~、疲れた」と、つい溜息をつきたくなるほど頑張っているママこそ、「夫がもっと手伝ってくれたら」と、夫へのイライラが募るばかり。でも、その「頑張り」が、実は夫を遠ざけている要因だとしたら!? 作家の本田健さんと、世界的な男女関係の権威の1人である、ジョン・グレイ博士の対談から、夫にイライラする妻への処方せんが見えてきました。 ●プロフィール ・ ジョン・グレイ博士 全世界で累計5000万部を突破した『ベスト・パートナーになるために』のベストセラー作家であり、世界的な心理学者。人間の心理の本質に最も精通した人物の1人として知られ、表面的な感謝ではなく、男女間の最高のコミュニケーションを世界中に伝え続けている。 ・ 本田健 神戸生まれ。経営コンサルタントを経て、29歳で育児セミリタイヤ生活に入る。4年の育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタート。代表作に『20代にしておきたい17のこと』(大和書房刊)などがあり、累計発行部数は700万部を突破している。 ■安心する夫、期待する妻 本田健(以降、健): 夫婦間のパートナーシップについて悩んでいる人は少なくありません。今日はパートナーシップの育み方について教えてもらえませんか? ジョン・グレイ博士(以降、グレイ博士): 夫婦に子どもが生まれると、2人の関係は一見安定したように見えます。すると夫は、 妻から何か言ってこない限り、「妻は満足している、大丈夫だ」と考える のです。一方、妻は 「夫は言わなくても自分の望みを察して与えてくれるはずだ」と、夫に期待してしまう のです。この先、2人に何が起きるのかは、想像できると思います。 ■「遠慮」が「期待」になっている グレイ博士: 多くの女性は、「自分からあれこれ望んではいけない」と教えられてきました。 健: 少しずつ世の中は変わりつつありますが、まだ「欲しいものをはっきりと口にする女性」を快く思わない人もいるのが現状です。だから、 女性は自分から男性に何かを求めることに遠慮して、その分、相手に期待してしまう のかもしれません。 ■自分でやりたくなる気持ちを抑え、「感謝と愛情」に重点を! グレイ博士: 女性に知ってもらいたいのは、 自分の望みを素直に表現して助けを求めた方が魅力的で、夫は妻を大切にできる ということです。自分でやりたくなる気持ちを抑えて、もっと夫に動いてもらうのです。そして、実際に夫が動いてくれた時は、最大限の愛情と感謝を示すことが大切です。すると、夫は自分が妻を幸せにしたのだと嬉しくなります。 ■イライラの原因は、頑張りすぎ!? 健: たしかに女性から素直に望みを表現してもらえたほうが、男性は何かしてあげたい、助けになってあげたいという気持ちになります。それによって、男性に「与える喜び」を教えることができるんですね! でも、このことを知らない女性は、 自分の悩みや問題を1人で解決しようとして、自分を助けてくれない男性にイライラし、男性はいわれのない責めを受けていると感じて、次第に関係が悪くなる のですね。 グレイ博士: そうです。 パートナーシップに限らず、人間関係すべてにおいてこの仕組みは通じます 。このカラクリを知っているかどうかで、運命はまったく違うものになるのです。 ■夫のことは「ゴムバンド」と思え! 健: このほかに、女性が知っておいたほうがよい注意点は何ですか? グレイ博士: 男性は、家庭を大切にしたい気持ちと、1人で息抜きしたい気持ち、相反する2つの気持ちを持っています。 女性は夫の行動を過度に制限しないこと。さもないと、多くの男性は女性からは信頼されていないと感じ、女性に対して反発してしまう でしょう。 健: たしかに、束縛されると自由を求めて離れたくなりますが、自由にしていいと言われると、その衝動はぐっと減りますね。 グレイ博士: 男性は、自分が受け入れられていないと感じると、より身勝手な振る舞いをしたくなるのです。ですが、実際に妻から離れたいと思っているわけではありません。 男はゴムバンドのようなもので、離れては戻るものだと知っておくこと です。男性は、一時的に妻から遠ざかることで、再び妻を大切にしたいという気持ちを取り戻します。夫を自由にすることが、お互いのためになるのです。 男と女、かくも違うものなのか! なるほど、この仕組みを知っているのと知らないのでは大違い。この処方せん、「息子にも使える!」と感じたのは私だけでしょうか? とかく、女性は頑張りすぎ。ふっと気を緩めて、周囲の「男たち」に甘えてみてもいいのかもしれませんね。 近々、グレイ博士の講演会があるそう。興味を持った方は参加してみては? 詳しくは、 こちら のリンク先を参照してください。
2016年05月18日