出版社生まれの香水「葡萄色の日記」24年クリスマス限定で、“赤ワイン”着想のジューシーな香り
ストーリー
一年がおわろうとしている。
街はいっせいに色めいて、ジュエリーボックスをひっくりかえしたように煌めいている。
葉がすっかりおちてしずかに佇んでいるだけだった木々でさえ、何連ものイルミネーションをまとってきらめいていて、粉雪が、きらめく明かりと戯れては溶けてゆく。
街ゆく人々は、誰もが華やいでいるように見える。いくつもの音楽が重なって鳴り響いては風に流れ、音楽と競うようにして哄笑がわきおこる。
ひとりだけ置き去りにされてしまったようで、胸のまんなかがざわめく。
さびしいのかな。さびしい。
でも、ひとりでいることがとてもさびしい、というのではない。華やいだ風のなかで、ぽつんととり残されてしまったかのような、それはちょっとしたさびしさだ。
古いビルの奥にあるバーの扉を押す。
カウンターにすわって古い日記帳をとりだし、赤ワインをひとくち飲んで日記を開く。
この一年間の自分の感情のゆらぎが綴られている。泣きたいほどにしあわせを感じたときも、かなしくて涙がかれるほどに泣いたこともあった…。
古びたランプの灯りをうけた赤ワインはやさしい色にかわり、日記帳に色を注いでいる。
ひとつひとつに想いを馳せているうちに、こころがしんとしずまってくる。