アルツハイマー研究の第一人者語る「論文捏造問題と治療薬開発の最前線」
国内に700万人ほどいる認知症患者のうち、約7割がアルツハイマー型だと推定されている。アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が減っていくことで、脳が萎縮し、認知機能が衰えていく疾患だ。患者の脳にはアミロイドβとよばれるタンパク質が蓄積することが確認されている。
アミロイドβは健康な人の脳内にも存在していて、体内の酵素の働きによって分解され排出されている。だが、何らかの理由で正常な分解がされなくなると、複数のアミロイドβが結合したオリゴマーという物質が生まれて脳内に蓄積していってしまうという。
このアミロイドβオリゴマーによって、アルツハイマー型認知症が起きるという「アミロイドβ仮説」が、もっとも有力視されてきた。
■アミロイドβ仮説の根拠論文に捏造疑惑
しかし、7月22日に、米国の科学誌『サイエンス』は「アミロイドβ仮説」の根拠のひとつだった重要な論文が捏造である可能性が高いという記事を掲載したのだ。
捏造が指摘されたのは、2006年にミネソタ大学のシルヴァン・レスネ氏らが英国の学術誌『ネイチャー』で発表した論文。
この論文によると、レスネ氏らの研究グループは認知症を引き起こすアミロイドβのオリゴマーを見つけ、Aβ*56と名付けた。