[前編]憲法学者・木村草太さんの子育て論「家庭においては妻がボスで夫が部下。そのくらいのほうがいいと思う」
「私も妻に『あなたはなんで心配じゃないの?』と言われるたびに『そうか……』と、毎回反省する。もう日々反省することばかりです。男女でここまで感覚に差がある理由は、やっぱりおおまかな傾向として、女の人より男の人のほうが勝手だからだと思います。ですから、妻に文句を言われて反論するなんて、考えられないですね」
家庭においては妻がボスで夫が部下
そのくらいのほうがいいと思う
常に子どもに対して心労の絶えないお母さん。しかし、お父さんはその心労を100%理解することはなかなかできない。であるならば、せめて単純な家事・育児は全面的に自分が担当したい、というのが木村さんの考えだ。
「お父さんが全力を尽くして、ようやくお母さんとトントン……までいかないくらいだと思います(笑)。もちろん父子家庭で、ひとりでお子さんを育てている立派なお父さんもいらっしゃいますから、あくまで一般的な傾向としてですけど」
一方、食料品や日用品の買い出しや、子どもの習い事についてなど「高度な政治的判断が必要になる知的な家事・育児」は奥様が担当している。
「だって、たとえば、子どもの通うスイミング・スクールをどこにするかを、お父さんが勝手に決めてきたら、お母さん、怒るでしょ(笑)。子どもが生まれて、成長していくと、そういう高度な政治的判断が必要になる物事って、すごく増えるんですよ」
妻が政治的判断を下し、そのもとで夫が単純労働をする。人によっては、お母さんがお父さんの上司的存在に見えるかもしれないけれど……。
「いや、そっちのほうが正しいというか。そっちのほうがいいと思います(笑)。で、それじゃあ、我が家はずっと今はいいバランスが取れているかといえば、そんなことはないです。子どもも家庭も変化していくものなので、不断の見直しが必要だと思います」
子育ての心労は時間では計れない
新しい“単位”を考えてみよう
現代社会では、男性も女性も同じように仕事をするし、結婚して子どもが生まれれば、夫も妻も同じように家事・育児をするのが当たり前。私たちの親世代とは隔世の感がある。
にもかかわらず、妻が「自分のほうが大変」だと感じてしまいがちな理由が、木村さんのお話を聞いているうちに、何となく分かってきたような気がする。
「やはり夫と妻の意識の違いなんですよね。家事・育児をやっている時間だけで見ると、夫婦対等っていうお宅は、けっこうあるかもしれない。