連載記事:「幸せ力」の育て方
保育園や幼稚園の選び方で学力に差が出る!? 保育形態の違いによる差(「幸せ力」の育て方 Vol.9)
2010年7月、文部科学省の幼稚園課が気になる調査結果を公表しました。
「幼稚園卒の子どものほうが、保育園卒の子どもよりも、学力テストの成績が高い」というものです。
本当でしょうか? 本当だとしたら、なぜでしょうか?
この発表を受けて、発達心理学や保育学が専門の内田伸子先生が詳しい調査を行いました。
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親の経済格差が子どもの学力格差につながる?
文部科学省の発表に対し、一部で「学力格差は経済格差を反映している。保育園に通わせる家庭は低所得者が多いため、学力も低いのではないか」という意見が出されました。
そこで内田先生は、経済格差が子どもの発達や親子のコミュニケーションにどのような影響をもたらしているのか、日本、韓国、中国、ベトナム、モンゴルにて各国の3~5歳児3,000名を対象に調査しました。
「日本では、世帯所得が700万円以上を高所得、700万円未満を低所得とし、子どもの『読み書き能力』を比較しました。
その結果、文字を書く能力、読む能力のどちらにも、親の経済力による差はありませんでした」
子どもの教育に配慮している家庭の子どもは、語彙が豊富
「ただし、知能テストと相関が高い『絵画語彙検査』では、所得の高い家庭の子どものほうが成績が高いという結果になりました」
「絵画語彙検査」とは、絵を見せ、その絵が示す言葉を知っているか尋ねるテストです。
語彙の豊かさは知能と相関しているので、語彙の多い子ほど知能が高いと言われています。
「所得が高い家庭は子どもに習い事をさせていることが多いので、それが影響しているのではないかと思い、調べました。
すると、習い事をしている子のほうが、していない子より絵画語彙検査の得点が高いという結果がでました。
ただし、運動系の習い事をしている子と、学習系の習い事をしている子の間に成績の差はありませんでした」
ということは、習い事の内容が知能を高めているわけではないようです。
習い事によって、友だちや先生などとコミュニケーションを取る機会が増えるため、語彙も増えるのではないかと推察されます。