シングルマザーの6割が貧困という推計もあるように、経済的に厳しい状況になりがちな母子家庭。公的な支援制度はあるものの、管轄の省庁や窓口がバラバラだったりして、信頼できる情報をまとめてチェックしにくいのが現状です。
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そこで、シングルマザーへの手当や支援について「これを読めば全部わかる!」という総まとめを作成しました。シングルマザーの方も、これからなる予定の方も、ご自身とお子さんのためにぜひチェックしてください!
日本のシングルマザーは6割が貧困
シングルマザーの生活実態として、最初に知っておくべきことがあります。それは「日本の母子家庭は6割が貧困状態」という事実です。
『子どもの貧困――日本の不公平を考える』という本で、著者の阿部彩さんは2004年の調査をもとに母子世帯の貧困率を「66%」と推計し、次のように述べています。
国際的にみても、日本の母子世帯の貧困率は突出して高く、OECDの24か国の中ではトルコに次いで上から2番目の高さである
出典:『子どもの貧困――日本の不公平を考える』阿部彩(2008年岩波新書)
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最新の調査も同じような結果になっています。
収入で比較すると、子どものいる世帯の平均年収が600万円以上なのに対して、母子世帯は200万円程度。シングルマザー世帯の95%以上が、日本の全世帯の平均所得以下で生活しています。
・各種世帯の所得等の状況|厚生労働省
・平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
■仕事や生活状況
シングルマザーの8割以上は仕事をしていますが、その半数近くがパートやアルバイト。3割程度が親と同居しています。
同居の場合、両親が元気なうちは育児や家事をサポートしてもらえますが、高齢になると子どもの養育と親の介護の板挟みになるケースも多いようです。
このように、シングルマザーの生活、とくに経済状況はかなり厳しいのが現状です。ご自身やお子さまのためにも、これからご紹介する支援制度や手当について、しっかり把握しておきましょう。
シングルマザーがもらえる手当その1:児童扶養手当と児童育成手当
まずは、ひとり親家庭だけがもらえる手当についてご紹介しましょう。なお、ここでいう”児童”とは、18歳未満(正確には18歳になってから最初の3月31日まで)をさします。
■児童扶養手当とは
国が定めた制度で、離婚、未婚、死別などでひとり親になった家庭に支給される手当です。住民票のある自治体の窓口で申請します。
支給額はお子さんが1人の場合、最大で42,330円。2人目はさらに1万円加算され、3人目以降は1人につき6,000円が加算されます。
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たとえばお子さんが3人いて満額が支給される場合は、42,330円+10,000円+6,000円=58,330円となります。
ただし、児童扶養手当には所得制限があります。扶養家族の人数によって限度額は変わってきますが、たとえば扶養家族が1人のシングルマザー家庭(お子さん1人とママ1人)の場合、所得が57万円(収入なら130万円)までは最大の“全部支給”となります。
所得がそれ以上の場合は”一部支給2”となり、以下の計算で金額が決まります。
手当額=42,330円―(受給資格者の所得額―所得制限限度額)×0.0186879+10円
■児童育成手当とは
おもに東京都が実施している制度で、ひとり親家庭を対象に手当が支給されます。
東京都の制度では支給額は児童1人あたり月額13,500円で、所得制限があります。申請先は各自治体の福祉担当窓口や子ども担当窓口ですが、市区町村によってことなります。
シングルマザーがもらえる手当その2:児童手当
児童手当は、シングルマザーに限らず支給されます。
中学校卒業まで(15歳の誕生日後最初の3月31日まで)の児童を養育している方に支給される手当で、1人あたりの月額支給額は、以下のようになっています。
・3歳未満の児童:一律15,000円
・3歳~小学生:10,000円(第3子以降は15,000円)
・中学生:一律10,000円
ただし制限額以上の所得がある場合は【特例給付】となり、お子さんの年齢や人数にかかわらず1人あたり月額5,000円となります。とはいえ、かなり高所得でないと制限にひっかかることはないでしょう。
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申請先は住民票のある自治体の窓口です。支給のタイミングは毎年6月、10月、2月で、それぞれ前月分までの手当が振り込まれます。
また、離婚して支給対象が元夫になっている(振込口座が夫名義)場合は、早めに変更の手続きをしてくださいね。
シングルマザーがもらえる手当その3:生活保護
生活保護は、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するため国がおこなっているセーフティーネットの1つです。
生活困窮者に対して、世帯や住んでいる地域の状況などを考慮して一定の【保護費】が支払われます。ただし、支給には次のような条件があります。
・活用できる資産(土地や持ち家など)がない
・病気やケガなどで働けない
・親族などから援助が得られない
・収入はあるが、厚生労働省がさだめる”最低生活費”に満たない
申請や相談は、住民票のある自治体の福祉事務所が受け付けています。本当に困っている方は、1人で悩まず、福祉事務所で相談してみてください。
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資格取得をサポートしてもらえるって【就労支援】
シングルマザーの就職や資格取得を支援する制度もあります。3つご紹介しましょう。
■マザーズハローワーク
シングルマザーに限らず、育児をしながら働きたいママの就職をサポートしてくれる施設です。広いキッズスペースや授乳室がある、託児施設のある求人を集めているなど、育児中のママ向けに特化しているのが特徴。
マザーズハローワークは東京をはじめ全国に21カ所あるほか、一般のハローワーク内にも子連れで相談できる【マザーズコーナー】が全国163カ所で設置されています(2016年現在)。
■自立支援教育訓練給付金
ひとり親を対象にした教育訓練の補助制度です。各自治体が指定する【教育訓練講座】を受講すると、修了後に経費の6割相当(1万2,000円~上限20万円)を給付してもらえます。
講座の内容は自治体にもよりますが、情報処理、医療事務、ホームヘルパーなど、就職に結びつきやすいものが中心です。
ただし、対象となるためには「児童扶養手当の給付を受けている、もしくは同等の所得水準」「他に有利な資格がない」といった条件を満たしている必要があります。
■高等職業訓練促進給付金
ひとり親の経済的自立を助けるような資格を取るための補助金制度です。
看護師、調理師、保育士、介護福祉士、作業療法士などの資格取得のため1年以上養成機関(学校など)に通う場合、生活費の補助として月額3万円(住民税課税世帯は月額7万500円)を、最大3年間給付してもらえます。
こちらも、給付には「児童扶養手当の給付を受けている、もしくは同等の所得水準」といった条件があります。
シングルマザーは、生活のために労働条件があまりよくないパートやアルバイトを掛け持ちして、体調を崩してしまうことも少なくありません。
長い目で見れば、こうした制度を利用して資格をとり、条件がよく長く続けられる仕事を選ぶというのも賢い選択です。
住むところや医療費のサポートも!
シングルマザーにとって、医療費や住宅費用は大きな負担です。これらについても、各自治体にサポート制度があります。
■ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭の児童(一般に18歳まで)と保護者の医療費自己負担分を、一定額負担してもらえる制度です。子どもの医療費は無料となる自治体も増えていますが、保護者も対象となるのはありがたいですよね。
所得が限度額以上の家庭や生活保護を受けている家庭は対象にならず、入院時の食事などが対象外となることも多いので、詳しい条件は各自治体に確認しましょう。
■母子生活支援施設
シングルマザーやそれに準ずる母子(DVからの保護が必要なケースなど)が入居でき、自立と生活をサポートしてもらえる施設です。ママとお子さんの個室のほか、学習室や集会室などがあり、生活や仕事の相談を受けてくれる相談員も常駐しているので安心です。
費用は所得税・住民税などによって個別に決まります。申し込みや相談は、自治体の福祉事務所で受け付けています。
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■公営住宅への優先入居
一般の賃貸より家賃が安いことが魅力の公営住宅。運営する自治体や地域の状況にもよりますが、高齢者世帯や障害者世帯と同じく、シングルマザー世帯も優先入居の対象です。
さまざまな支援団体や窓口も。迷ったらまずは相談してみて!
シングルマザーにはこのようにさまざまな支援制度や手当があり、サポートしてくれる窓口や団体もたくさんあります。
各自治体の福祉関係窓口、家庭生活支援センターなどのほか、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、ハンド・イン・ハンドの会などのコミュニティが各地で活動しています。困ったことや不安なことは1人で悩まずに、気軽に相談してみてくださいね。
・しんぐるまざあず・ふぉーらむ
・ハンド・イン・ハンドの会
<参考>
・『子どもの貧困――日本の不公平を考える』阿部彩(岩波新書)
・ひとり親家庭等の現状について(平成27年)|厚生労働省
・平成23年度全国母子世帯等調査結果報告|厚生労働省
・児童手当制度の概要|内閣府
・母子家庭等関係|厚生労働省
・児童育成手当(育成手当)(東京都制度)|とうきょう福祉ナビゲーション
・ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)|東京都福祉保健局
・生活保護制度|厚生労働省
・公営住宅に係る優先入居の取扱いについて|総務省