連載記事:榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議
「男の子はママ似、女の子はパパ似」遺伝子レベルの理由があった【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第7回】
■「男らしさ、女らしさ」成長過程で? 生まれつき?
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――先生。次は男らしさ、女らしさということについて教えてください。男女を「らしさ」でくくるのは時代錯誤な気もしますが、成長過程や大人たちからの期待で身に付けていく「後天的なもの」というイメージがあります。
榊原先生:性というものを考えたとき「生物学的な性差」と「社会的な性差」というものがあると思うんですね。
一般社会でいわれる「男・女らしさ」というものは文化的な意味合いが強いのでおっしゃるとおり、大人からの期待や育てられた方などによって認識していくものだと思います。
ただ、最近の研究では行動や性格に生物学的な性差があることが分かってきたんです。
――生まれたときから、すでに男女差があると…?
榊原先生:そうです。子どもに自由に絵を描かせる検査で、男の子は乗り物などを寒色系で、女の子は人や花、おうちを暖色系で描くことが分かりました。
これは周囲からの影響でそうなった可能性もありますが、さまざまな研究によって性ホルモンの作用が影響しているのではないか、と考えられるようになったんです。
――性ホルモンの影響…? 研究の内容について、もっとくわしく教えてください。
榊原先生:生まれつき、男性ホルモンが大量につくられてしまう病気があります。女の子の場合、この病気になると性器が男性化します。この女の子は女の子として育てられても、自由に絵を描かせると男の子のような絵を描く傾向があるんです。
――ホルモンが行動に影響している…?
榊原先生:まだ不確かですが「性ホルモンが直接、脳の神経細胞に結びついて作用する」という説があります。このとき、結びつくのが男性ホルモンなのか、女性ホルモンなのかで神経の機能が違ってくるようです。
――男の子は乗り物などを青や緑、黒い色で描く。女の子は人間やお花、蝶々を赤や黄、ピンクで描く。こうした行動には性ホルモンがかかわっているかもしれないんですね。
榊原先生:はい。それから乳児期にも男女の行動に違いがあります。1年を通した実験で明らかになっているんですが、男の子の赤ちゃんは平均してよく泣く。反対に女の子の赤ちゃんはよく笑うんです。
――「男の子のほうがよく泣く」というのは、男女それぞれを育てたことのあるママからもよく聞く話です…!
榊原先生:これは男の子の場合、お母さんのおなかの中にいるときと出生直後に血液中の男性ホルモンの値が一時的に高くなることに関係しているといわれています。この男性ホルモンの高値が脳に働いて、よく泣き、活発に動くといった行動の特徴をつくりだしているんですね。
――「男性ホルモンが多いとムダ毛が濃くなる」とか「女性ホルモンが多いと肌がきれいに」というような曖昧なイメージがありますが、赤ちゃんの場合は行動に影響することがあるんですね…。
榊原先生:そうです。生まれたときから男の子と女の子の行動に差があるのは、生物学的な性差が関係している、といえるでしょうね。
男の子で生まれるか、女の子で生まれるか…。性差が生まれる命の仕組みを知ったことで、改めて「人は生き物なのだ」と実感しました。
できれば良いところが似てほしい… というのが本音ですが(笑)、これからは興味を持って男の子、女の子の「違い」を楽しんでいこうと思いました。
参考図書:
『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)
榊原洋一著
子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。
どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。